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【バクー世界柔道選手権2018特集】髙藤直寿の力が突出、対抗馬は永山竜樹・男子60kg級概況×有力選手紹介

(2018年9月17日)

※ eJudoメルマガ版9月17日掲載記事より転載・編集しています。
【バクー世界柔道選手権2018特集】髙藤直寿の力が突出、対抗馬は永山竜樹
男子60kg級概況×有力選手紹介
→特設ページ・バクー世界選手権2018完全ガイド

文責:林さとる/古田英毅

■ 階級概況
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髙藤直寿(パーク24)の実力が突出しており、これを永山竜樹(東海大4年)を頂点としたトップグループの選手たちが追うというのが大きな構図。本来はこの永山が属するトップ層の厚さが60kg級を男子屈指の激戦階級たらしめているわけだが、今大会はアジア大会の直後ということもあり、この層の代表格であるアジアの強豪たちが揃って欠場。2015年アスタナ世界選手権王者のイェルドス・スメトフ(カザフスタン)を筆頭に、アジア大会を制したディヨルベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)、ダシュダヴァー・アマーツヴシン(モンゴル)、ガンバット・ボルドバータル(モンゴル)と実に4名ものトップ選手が出場を取り止めた。スメトフはアジア大会では不調、世界選手権にフォーカスしているゆえではとの観測もあったが、意外な事態。

結果トーナメントのレベルは大きく下がることとなり、永山を除いた参加者のなかで髙藤に伍しうる選手は、リオデジャネイロ五輪金メダリストのベスラン・ムドラノフ(ロシア)と、昨年大会2位のオルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)の2名くらい。ムドラノフは32歳の大ベテランであり、かつツアー復帰後まもないことからどの程度のパフォーマンスを発揮できるか全く読めないと。この状況から考えた場合、優勝争いは髙藤、永山、そして地元開催で意気上がるサファロフの3人に絞られることになる。永山とサファロフはともに髙藤を強く意識して試合プランを組んでいるはずであり、髙藤との直接対決、あるいは挑戦権を賭けた両者の激突が今大会最大の見どころと言えるだろう。

というわけで金メダルを争う役者が極端に絞られた一方、3位以下の争いは大混戦。平時の第2グループと第3グループが入り乱れて表彰台残り1つの席を奪い合うことになる。実力と最近の成績に鑑みるとシャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)とロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)が有力であり、ここにムドラノフを加えた3名までが現実的な意味での表彰台圏内だ。

■ 有力選手
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優勝候補筆頭は髙藤直寿

髙藤直寿(パーク24)
TAKATO Naohisa
25歳 1993/5/30
WR:4位 組み手:左組み
得意技:左小内刈、肩車、右袖釣込腰
使用技:左大内刈、右浮腰(やぐら投げ)、右浮腰、左内股、左背負投(韓国背負い)

現役世界王者。今年は念願の全日本選手権出場も果たした。髙藤の最大の武器は「相手が警戒していても投げられてしまう」切れ味抜群の左小内刈。かつては身体能力と反射速度を最大限に生かしたトリッキーなスタイルが持ち味であったが、昨年からは意識的にそれを抑制。ハイリスクな際の勝負ではなく二本持っての堅実な柔道を行うようになった。このことによって髙藤唯一の弱点であった「自爆」による失点は激減、勝負どころでの運動性能と優れた投げ勘はそのままに安定感を大きく上げた。かつては目を瞑ってアクセルを目いっぱいに踏み込んでいた場面でも、それを「必要なスピード」まで制限する冷静さが身に着いたことがこのところの好成績につながっていると見る。時速400km出せることはわかっているが、いつでも最高時速が必要なわけではない、ただしここぞの直線となればアクセル目いっぱい踏むことは躊躇せず、といったところか。髙藤がこの戦い方を身に着けたのは、後輩永山竜樹(東海大4年)の躍進により「失敗出来ない」立場の試合が激増したことが大きいと見る。今大会は優勝候補の大本命だが、唯一のライバルもその永山である。もし今大会に髙藤が勝てば今大会が東京五輪への「最後のシナリオ分岐」となる可能性が高い。人生掛かった1日。

【おもな戦績】
2017年 ブダペスト世界選手権 優勝
2016年 リオデジャネイロ五輪 3位
2014年 チェリャビンスク世界選手権 3位
2013年 リオデジャネイロ世界選手権 優勝

【最近の成績】
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 優勝
2018年3月 ヨーロッパオープン・プラハ 優勝 ※66kg級
2017年 グランドスラム東京 優勝

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背水の陣で臨む永山竜樹

永山竜樹(東海大4年)
NAGAYAMA Ryuju
22歳 1996/4/15
WR:1位 組み手:右組み
得意技:左一本背負投、右内股、裏投
使用技:右背負投、右大外刈、左袖釣込腰、右小外刈、左小外刈

昨年のワールドマスターズ覇者。最軽量級である60kg級においてもひときわ小柄な体格ながら、階級トップクラスのパワーをその殻の中に秘めている。得意技は一本背負投に内股、裏投といずれも大技ばかり。短い手足から生み出される機動力は特筆もの、この小回りの良さで一気に懐に潜り込み、豪快な一撃をお見舞いするスタイルで世界を沸かせてきた。優勝候補最右翼として臨んだ昨年のブダペスト世界選手権では3回戦で苦手としているガンバット・ボルドバータル(モンゴル)に敗れ、上位対戦に勝ち上がることすらできなかった。これでキャリアが潰れてしまってもおかしくなかったわけだが、ゆえに2枠目として2度目のチャンスを貰った今大会はまさに背水の陣。ミッションはただ1つ、髙藤直寿(パーク24)の連覇阻止だ。

【おもな戦績】
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 優勝
2016年 グランドスラム東京 優勝
2015年 世界ジュニア選手権 優勝

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 優勝
2018年4月 全日本選抜体重別選手権 1回戦敗退
2018年2月 グランドスラム・デュッセルドルフ 優勝

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オルハン・サファロフ

オルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)
SAFAROV Orkhan
27歳 1991/8/10
WR:25位 組み手:左組み
得意技:左大内刈、左内股、左背負投(韓国背負い)
使用技:左小外掛、左大外刈、左袖釣込腰、左背負投、引込返、浮技

昨年の世界選手権準優勝者。今年に入ってからは66kg級での大会出場を続けており階級変更を行ったものと思われていたが、地元開催の今大会に合わせて本来の60kg級へと階級を戻した。基本的な戦法は長身を生かした密着柔道だが、最も取り味があるのは組み際に仕掛ける左の「韓国背負い」。不十分な状態からでも走りながら強引に投げ切ってしまうため注意が必要だ。一階級上での武者修行でどのような強化がなされているのか、地元選手ということもあり、日本勢にとっては今大会最大のライバルと考えて良いだろう。

【おもな戦績】
2017年 ブダペスト世界選手権 2位
2016年 リオデジャネイロ五輪 5位
2013年 リオデジャネイロ世界選手権 3位

【最近の成績】
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 1回戦敗退 ※66kg級
2018年4月 ヨーロッパ選手権 5位 ※66kg級
2018年2月 グランドスラム・デュッセルドルフ 3回戦敗退

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ベスラン・ムドラノ

ベスラン・ムドラノフ(ロシア)
MUDRANOV Beslan
32歳 1986/7/7
WR:39位 組み手:左組み
得意技:左一本背負投、左袖釣込腰、左小内巻込
使用技:肩車、左小内刈、裏投、左内股、出足払

リオデジャネイロ五輪金メダリスト。今年3月のグランドスラム・エカテリンブルク大会でリオ五輪以来約1年半ぶりとなる競技復帰を果たした。32歳の大ベテランながら今年のヨーロッパ選手権で3位を獲得するなど衰えた様子はなし。ピーキングの上手さに定評のある選手だけに、久々の大舞台でどのようなパフォーマンスを見せてくれるかに注目したい。得意技は相手の懐に鋭く潜り込んで仕掛ける左一本背負投。組み際の技が戦術の中心であり、組み手争いがそのままムドラノフの間合いだ。足癖の悪さやカウンターの裏投にも要注意。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 優勝
2014年 チェリャビンスク世界選手権 2位
ヨーロッパ選手権 優勝3回(2012、2014、2015)

【最近の成績】
2018年4月 ヨーロッパ選手権 3位
2018年3月 グランドスラム・エカテリンブルク 3位

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ロベルト・ムシュヴィドバゼ

ロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)
MSHVIDOBADZE Robert
29歳 1989/8/17
WR:2位 組み手:右組み
得意技:なし
使用技:右払腰、右内股、右一本背負投、右背負投、右大外刈、右小外掛、肩車、支釣込足、隅返、隅落

昨年のヨーロッパ選手権王者。代名詞となるような得意技はないものの、様々な技を高いレベルで使いこなす。変幻自在の組み手で相手を翻弄する試合巧者でもあり、相手や状況に合わせて刻一刻と変化し続けるその戦いのさまはまさに「不定型」と呼ぶにふさわしい。最終的には奥襟を持っての圧殺に持ち込むことが多く、この形からは強引な腰技や小外掛を多用する。自身の優位を演出することにも長けており、一度この選手のペースに嵌ってしまうと抜け出すことは困難だ。投げによる決着が増えた現行ルール下においても「指導3」反則による勝利の割合が非常に高い。

【おもな戦績】
2017年 グランドスラム・アブダビ 優勝
2017年 ヨーロッパ選手権 優勝
2016年 グランドスラム東京 3位

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 3位
2018年5月 グランプリ・フフホト 5位
2018年2月 グランドスラム・デュッセルドルフ 2位

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シャラフディン・ルトフィラエフ

シャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)
LUTFILLAEV Sharafuddin
28歳 1990/9/9
WR:8位 組み手:左組み
得意技:左内股、左小外掛
使用技:右内股(やぐら投げ)、左大内刈、左小外刈、左小内刈

ワールドツアー表彰台常連の強豪。昨年は2年ぶりにワールドマスターズで3位を獲得した。実力者でありながら国内に階級のトップ選手であるディヨルベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)がいるため、世界大会への出場は2015年以来。ウロズボエフが出場しない今大会で結果を出し、少しでも差を詰めたいところだ。得意技は切れ味鋭い左内股。密着した状態からの左小外掛や右に腰を切っての「やぐら投げ」も得意としている。

【おもな戦績】
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 3位
2015年 ワールドマスターズ・ラバト 3位
ワールドツアー 表彰台18回(優勝3回)

【最近の成績】
2018年8月 ヨーロッパオープン・ミンスク 優勝
2018年2月 グランドスラム・パリ 2位

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アミラン・パピナシヴィリ

アミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)
PAPINASHVILI Amiran
30歳 1988/6/17
WR:3位 組み手:右組み
得意技:裏投、抱分
使用技:右背負投、右袖釣込腰、右小外掛、右大内刈、右小内刈、右内股

長くヨーロッパの軽量級を牽引しているベテラン選手。リオデジャネイロ五輪では準々決勝で髙藤直寿(パーク24)を隅返「一本」で破った。基本となる柔道スタイルは担ぎ技や足技を中心としたオーソドックスなものだが、最も得意としているのは裏投や抱分などの返し技。この選手を相手に不用意に密着したり体を捨てることは非常に危険だ。昨年来コンディションが安定せず全体として成績も下降傾向にあるが、パワーと際の強さは健在。経験に裏打ちされた上手さもあり、1試合限定で考えた場合には非常に厄介な相手だ。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 5位
2014年 チェリャビンスク世界選手権 3位
2013年 ヨーロッパ選手権 優勝

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 3位
2018年4月 ヨーロッパ選手権 5位
2018年3月 グランプリ・トビリシ 2位

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フランシスコ・ガリーゴス

フランシスコ・ガリーゴス(スペイン)
GARRIGOS Francisco
23歳 1994/12/9
WR:5位 組み手:左組み
得意技:寝技、肩車、隅返、巴投
使用技:出足払、左内股、左袖釣込腰

昨年のワールドマスターズ準優勝者。トップ選手への勝利歴はほとんどないものの、勝てる試合を確実にモノにすることでワールドラング上位をキープしている。上位陣とそれ以外を隔てる壁のような存在と言えるだろう。得意パターンは巴投や肩車といった捨身技で相手を引き込み、寝技で仕留める形。長いリーチを生かして相手を組み手の攻防に誘い込み、組み手争いから得意の捨身技を狙う。

【おもな戦績】
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 2位
2016年 グランドスラム・アブダビ 優勝
2014年 世界ジュニア選手権 優勝

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 5位
2018年4月 ヨーロッパ選手権 7位

その他有力選手

・グスマン・キルギズバエフ(カザフスタン)
・アシュリー・マッケンジー(イギリス)
・ヤニスラフ・ゲルチェフ(ブルガリア)
・エリック・タカバタケ(ブラジル)
・チョイ・インヒュク(韓国)
・フェリペ・ペリム(ブラジル)
・ベキル・オズル(トルコ)
・ルフミ・チフヴィミアニ(ジョージア)

■ シード予想
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60kg級シード予想。ドローではサファロフとムドラノフの位置が最大の焦点となる。

トーナメントの上側に重心が偏り、髙藤直寿(パーク24)と永山竜樹(東海大4年)は準決勝で対戦することとなった。ここが事実上の決勝と考えて良いだろう。昨年12月のグランドスラム東京大会では髙藤が隅返「技有」で勝利しているカードだが、この試合は先に「指導2」を失った状況からの逆転勝ちであり、これを根拠に今回の勝者を予測することは困難。今大会とグランドスラム大阪を制した選手には来年の東京世界選手権の内定が与えられることもあり、この戦いが2020年東京五輪に及ぼす影響は甚大だ。どのような結末になったとしても東京五輪の代表争いにおける重要なターニングポイントとなることは間違いなく、ファンとしては絶対に見逃せない最重要試合である。

また、忘れてはいけないのが髙藤、永山と並んで優勝候補に挙げられているオルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)とベスラン・ムドラノフ(ロシア)の配置。この両者がどこに割り振られるかでトーナメントの様相は大きく変わることになる。髙藤、あるいは永山のプールに配置された場合、仮に勝利したとしても大きく消耗させられることは必死。両者ベストな状態で雌雄を決してもらうためにも、是非ともプールCDの側を引いてもらいたい。

その他、プールCにはともに3位候補のロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)とシャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)が詰め込まれた。両者が対戦する準々決勝は是非見ておきたい好カードだ。

【プールA】
第1シード:永山竜樹(東海大4年)
第8シード:アシュリー・マッケンジー(イギリス)

【プールB】
第4シード:髙藤直寿(パーク24)
第5シード:フランシスコ・ガリーゴス(スペイン亜)

【プールC】
第2シード:ロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)
第7シード:シャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)

【プールD】
第3シード:アミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)
第6シード:グスマン・キルギズバエフ(カザフスタン)

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