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両軍の決戦布陣ここに定まる、国士舘は圧勝、天理は快勝で決勝へ・第67回インターハイ柔道競技男子団体試合レポート④準決勝

(2018年8月26日)

※ eJudoメルマガ版8月25日掲載記事より転載・編集しています。
両軍の決戦布陣ここに定まる、国士舘は圧勝、天理は快勝で決勝へ
第67回インターハイ柔道競技男子団体試合レポート④準決勝
文責:古田英毅
取材・撮影:eJudo編集部

■ 準決勝
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先鋒戦、藤永龍太郎は淡々と優位を取り続けて3つの「指導」を確保。

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次鋒戦、安藤稀梧が宇賀神圭太から小外掛「技有」

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安藤が送足払、あっという間に叩き落として2つ目の「技有」

国士舘高(東京) 4-0 白鴎大足利高(栃木)
(先)藤永龍太郎〇反則(3:13)△溝口宗志
(次)安藤稀梧〇合技(1:59)△宇賀神圭太
(中)酒井陸×引分×長谷川明伸
(副)道下新大〇優勢[技有]△河村祥克
(大)斉藤立〇大外刈(0:57)△齋五澤航介

先鋒戦は左相四つ。組み合いたい藤永龍太郎と組ませたくない溝口宗志という構図で試合が進むが。藤永は自信があるのか無理やり持ちには行かずむしろ鷹揚な試合運び。1分18秒、両者に消極的との咎で「指導」。藤永が左内股で溝口を伏せさせ、ローリングから抑え込みを狙った直後の2分9秒、溝口にこれも消極的との咎で「指導2」が追加される。以降も藤永が押し込み、溝口が陣地を譲りながら耐える展開が続く。藤永が左方向への支釣込足で相手を畳に這わせた3分13秒に主審が試合を止めてインカムで3審の合意を確認、溝口に「指導3」を宣告して試合終了。藤永はリスク少なく、地力の差をじっくりスコアに反映させんとの意図を完遂、国士舘が先制。

次鋒戦は安藤稀梧が左、宇賀神圭太が右組みのケンカ四つ。安藤は釣り手を巧みにコントロールして常に内側から持ち、一方的に組み勝っては左内股を打ち込んで自信満々試合を展開。1分6秒には宇賀神に消極的との咎で「指導」、宇賀神は安藤の巧みな組み手捌きにちょっとついていけない様子。1分35秒には安藤が内股フェイントの左小外掛で浴びせ倒して「技有」。さらに1分59秒にはタイミングの良い送足払で「技有」を追加し合わせて「一本」。国士舘があっという間の2連勝。

中堅戦は酒井陸が右、長谷川明伸が左組みのケンカ四つ。引き手争いが続いて44秒、両者に片手の咎で「指導」。1分24秒には組み手争いから自らに場外に出てしまった長谷川に場外の「指導2」が与えられる。後のなくなった長谷川は左内股で攻勢に出、2分13秒には酒井にも消極的との咎で「指導2」。以降は大枠としては長谷川が前に出て優位も、決定的な場面はないまま4分間が終了。この試合は引き分けに終わる。

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道下新大が絞られた袖を大きく振ると、河村祥克片膝を着いて崩れる。

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道下見逃さず乗り込み、左大外刈「技有」。

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この試合も相手は軽量選手の齋五澤航介、斉藤立は大きく両手を上げ、持ちどころを制限して迫る。

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斉藤の左大外刈「一本」で全5試合が終了。

副将戦は左相四つ。この試合から投入された白鴎大足利・河村祥克は両袖を絞った形から左袖釣込腰、さらに横変形にずれた状態から右袖釣込腰を放って道下新大を畳に這わせる。背中について抑え込みを狙うがここは道下が余裕を持って守り、38秒「待て」。奥襟を得て勝負をしたい道下だが、河村に釣り手を絞られ自分の形を作れない時間帯が続く。ここまでは河村が健闘。しかし1分40秒、道下が相手に袖を絞らせたまま巻き込む形で釣り手を振ると、河村崩れてぶら下がるように膝を着く。道下この機を見逃さず左大外刈で追撃、乗り上げるように投げ切り「技有」。以降も道下は大枠危なげなし、試合終了間際には「横三角」で相手を捲りってあと一歩体を起こせば抑え込み、というところで終了ブザー。道下の優勢勝ちでスコアは3-0、この時点で国士舘の勝利が確定する。

国士舘は大将斉藤立が登場、軽中量級の巧者齋五澤航介に粘ること許さじとばかりに、両手を高く挙げて試合を開始する。齋五澤が巴投で引き込むと足を抱えて回り込んで抑え込みを狙うが齋五澤が凌ぎ切り44秒「待て」。直後の57秒、斉藤は奥襟を得るなり左大外刈。齋五澤が畳に埋まると、体格差のある相手を潰さぬよう自ら前回り受け身の形で前に飛んで立ち上がり、文句なしの「一本」。エースの斉藤が試合をまとめ、国士舘は4-0の快勝で決勝進出決定。

対戦相性もあり、彼我の戦力差がこれ以上ないほどまっすぐスコアに反映された試合。大差の試合にはなってしまったが、とはいえ白鴎大足利の殊勲が色あせたわけではない。高校選手権、金鷲旗とチーム構成に不向きなレギュレーションでの評価の低さに甘んじた格好の1年だったが、「雌伏」は無駄ではなかった。最後の最後に栄光のインターハイベスト4達成、胸を張って栃木に凱旋してもらいたい。

国士舘としては力関係をリスク少なくスコアに反映させる、という「仕事」をしっかり果たした試合。中堅酒井陸が敵方のポイントゲッター長谷川明伸に対して一種あっさり「引き分けで良し」としたことは次戦に向けて若干気に掛かるが、周囲の状況に比すれば打倒。国士舘は初戦からここまで、チームの勝敗に関わるような危機一切なく「すべて圧勝」と言って差し支えないスコアで決勝へ。

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大一番に臨む桐蔭学園高。

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天理高はここで先鋒をスイッチ、キーマン山中瞭を畳に送り込んだ。

天理高(奈良) - 桐蔭学園高(神奈川)
(先)山中瞭 - 安藤健志
(次)植岡虎太郎 - 中野智博
(中)井上直弥 - 高山康太
(副)中野寛太 - 千野根有我
(大)水上世嵐 - 村尾三四郎

高校選手権準決勝の再現カード。山場の一番だ。

天理はここで動いた。前戦で国士館が手駒の酒井陸を中堅に投入したことを見極め、ここまで取り置いたジョーカー・山中瞭を先鋒に投入。決戦の布陣ここに定まった。

配列を眺めて、あらためてマーカーペンで網掛けすべきは天理の副将中野寛太、そして桐蔭学園の副将千野根有我と大将村尾三四郎の3名。桐蔭学園はここまで前が耐え、後ろ2枚が勝つというほぼ1種類のシナリオのみで勝ち抜いてきたが、今回はその「一の矢」であるポイントゲッター千野根に昨年度インターハイ王者、3年生代最強選手中野寛太がかちあってしまっている。ここは中野の得点を計算しておくのが妥当な評価、千野根がなし得る仕事の最高到達点は引き分けまでと見ておくべきだろう。ここまで全勝して来た後ろ2枚で天理戦で想定される星取りは1勝1敗、最高でも1勝1分け。かつ代表戦で中野に勝つことが難しい(村尾の対中野戦は1敗1分けで内容的にも分が悪い)となれば、桐蔭学園勝利の条件は前3枚を「1勝2分け」で乗り切ることしかない。ここまで3敗1分けの先鋒安藤、1年生次鋒の中野が無敗でここを凌ぐのはかなり難易度が高い、率直に言ってしまえば現実的ではないミッションだが、ここを乗り越え、中堅高山に期待して1点のリードを得るという一本道に縋るしか勝利に繋がるルートはないと断言して良いだろう。たとえば1-1、あるいは2-2で代表戦に繋いで最終的に村尾が勝利する、というシナリオがあったとしてこれはあくまで例外、変化球。「出来得る戦術を積み重ねて勝利に到達することを考える」ことが本筋の事前戦略として考えるべきではない。もしも、百に一つのこの細い糸に賭けると言うのであれば、村尾-中野戦の成算とは関係なく「賭けねばならない」というその前提自体が戦略論的には負け戦だ。

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先鋒戦、山中瞭が安藤健志からあっという間の内股「一本」。

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次鋒戦、植岡虎太郎がひときわ深く右背負投

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みごと中野智博を投げ切り「一本」

先鋒戦は安藤健志が右、山中瞭が左組みのケンカ四つ。山中組み合うとやや間合いを図るなり左内股、ファーストアタックのこの一撃に安藤耐えられず宙を舞って「一本」。

試合時間は20秒。前述の「読み」からすると桐蔭学園勝利への僅かな希望は、試合開始からわずか20秒で早くも絶たれたこととなる。一本道しかないシナリオ、早くも閉塞。

次鋒戦は桐蔭学園・中野智博が左、天理のポイントゲッター植岡虎太郎が右組みのケンカ四つ。植岡は軸足から回転を起こす低い右背負投を連発、中野は体側を合わせるように体を預けてこれを凌ぎ続けるが、1分32秒には中野に「指導」。植岡の連続攻撃は止まず、手首を反り返らせて襟を引っ掛けた右背負投、右小内刈、軸足回転の右背負投と威力高い技を連発。中野1分51秒には鋭い出足払で反撃を試みるが、植岡はこれにも右背負投をかち合わせて投げに掛かり、中野にはもはや打つ手なし。1分55秒2つ目の「指導」。

続く展開、もはや仕留めるのみと踏んだ植岡は立ち位置をコントロール、相手と正対すると釣り手側に相手を振りながら正面突破、ひときわ低く右背負投。襟に絡ませた釣り手の指の拘束きわめて強く、いったん胸を張った植岡が次いで頭を大きく下げると中野の頭が引き込まれてその体は密着したまま前傾。植岡両膝を伸ばして決め切ると中野植岡の体を抱え込んだまま大きく一回転「一本」。試合時間2分5秒、スコアはこれで2-0となった。副将戦における中野寛太の存在を考えれば、事実上の終戦である。

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中堅戦、高山康太が左大内刈

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井上直弥が崩れるとその上を転がって投げ切り「一本」

中堅戦は桐蔭学園・高山康太が左、天理の井上直弥が右組みのケンカ四つ。高山が釣り手を突いて前に出ると井上突き返し、両襟で圧を掛けて右大外刈で攻撃。しかし攻防の隙間を縫って染み込んでくる高山の突進を捌き損ね、1分3秒井上に場外の「指導」。高山さらに前に出、井上は場外に向かっての払腰で凌ぐことが続く。高山が前に出ると重心の高い井上は腰が浮く様子で窮屈そう、どうやら高山、井上には相当相性が噛み合う模様。高山嵩にかかって前に出ながら釣り手を高く、引き手を絞って高低差を利かせた大内刈を連発、井上は疲労激しく1分52秒には2つ目の「指導」失陥。

このあとは奮起した井上と高山が両襟を掴みあっての技の打ち合いとなるが、高山がふたたび両手で高低差を利かせて斜めから左大内刈を差し込むと腰高となっていた井上ドウと崩落。高山押し込み、左後隅に崩れた井上の体の上を転がって決め切り「一本」。大勢の天理優位は動かずも、桐蔭学園が1つ押し返してスコアは2-1。試合は双方の得点ブロックである副将以降に繋がれる。

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副将戦、中野寛太が小外掛で千野根有我を叩き落とし「一本」

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天理はこの時点で決勝進出決定。

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大将戦、村尾三四郎が押し込んで左内股、水上世嵐が内股透を狙う

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村尾の内股が決まって「一本」、最終スコアは3-2となった。

副将戦は桐蔭学園の千野根有我が右、天理・中野寛太が左組みのケンカ四つ。千野根が両襟を掴み、中野が引き手で袖を掴み返して試合がスタート。しかし強気の組み手とは裏腹に両者慎重な立ち上がり、38秒双方に「指導」。これを受けて千野根大内刈に打って出るが中野は出足払で抑え、さらに左小内刈へ繋ぐ。千野根大きく崩れて「待て」。

1分過ぎから試合やや加速、千野根が右大外刈に右内股と思い切った技を継ぐ。しかし中野が送足払に左大内刈、左小内刈と足技を入れ始めるともともと一発狙いの散発傾向がある千野根ほぼ1シークエンスすべて形上沈黙、1分53秒に2つ目の「指導」を失う。

中野は勝負どころと見たか送足払、左大外刈と加速。この大外刈を受けた千野根は右内股に飛び込むが中野は姿勢良く迎え撃ち、左小外掛で弾き返す。試合時間は2分15秒、意外なほどにあっさり畳に沈んだ千野根の前で主審高々右手を挙げて「一本」を宣告。

スコアは3-1。この時点で天理の勝利と、桐蔭学園の敗戦が決まった。

大将戦は桐蔭学園・村尾三四郎が左、天理の水上世嵐が右組みのケンカ四つ。開始20秒、村尾の側におそらくは組み手のミスで「指導」宣告。村尾苦笑して首を傾げるもすぐに気を取り直して前に出、左大外刈と左内股で攻める。43秒に村尾の内股を水上が得意の背負投様に腕をまとめた内股透で狙うが不発、直後水上に消極的との咎で「指導」。続いて1分2秒には場外の「指導2」も加えられる。村尾淡々と攻めて水上の出口を塞ぎ、1分37秒には左小内刈、左大外刈と技を継ぐとトドメの左内股一閃「一本」。これで全5試合が終了した。

天理高(奈良) 3-2 桐蔭学園高(神奈川)
(先)山中瞭〇内股(0:20)△安藤健志
(次)植岡虎太郎〇背負投(2:05)△中野智博
(中)井上直弥△内股(2:36)〇高山康太
(副)中野寛太〇小外掛(2:15)△千野根有我
(大)水上世嵐△内股(1:37)〇村尾三四郎

スコア上は3-2と接戦だが、一貫して天理の優位が揺らいだ場面はなし。先鋒戦開始20秒という早い時間で飛び出した山中の内股「一本」でほぼ終わった試合だった。

高山が井上に勝利して反撃の狼煙を挙げた中堅戦は双方の計算を超える結果であったかもしれないが、勝敗を揺らすほどの影響はなし。ほぼ事前予測通りに進んだ試合であったと言える。

天理としては、ここで突っ込んだ山中が開始20秒の「一本」とこの上ない戦果を発揮して決勝への加速装置になり得たことは好材料だが、「残した」井上が危うさを見せての一本負けとマイナス要素もともに飛び出した一番。しかし総体的には山中、植岡と揃った前衛の破壊力アップが印象に残った試合であった。

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入学時最強が謳われた桐蔭学園の3年生代、今シーズンはタイトルなしに終わった。

昨年度手にした三冠を1つでも獲ろうと「連覇」を合言葉に今年を戦って来た桐蔭学園だが、目標は果たせず。ただし、3位入賞という戦果、そしてベスト4敗退という結果は戦力と作戦意図に比して妥当であったと評したい。むしろ最大限の戦果である。このレポート記事ののっけの「配列分析」で書かせて頂いた通り、桐蔭学園今回のオーダーは、「格上に勝つ」、具体的には天理と国士舘を倒すことを期した配列にはなっていない。国士舘が斉藤立、天理が中野寛太という超大駒を持ちかつ後衛配置が確実という中では、どうしてもこの2チームに勝ちたければ虎の子の村尾・千野根の2枚を前衛に置いて後ろに「捨て駒」を作るというようなギャンブル配置が十分あり得たはずだ。厳しい言い方になるかもしれないが、桐蔭学園の今回の配列は「格下相手に取りこぼさず、いける範囲内で最大限上位を狙う」オーダー順であり、同時に「格上相手に大敗なきようスコアをまとめる」配列である。強豪なきブロックをポイントゲッター2枚の得点力でしっかり勝ち上がり、優勝候補の天理を相手に3-2と形上の接戦を演じて3位入賞という結果は、実はこのオーダーで望みうるもの全てを手に入れた、満足すべきものであるはず。よってこの段落冒頭にあるとおり評価は「妥当」ということになる。

作戦の是非を云々することに本質はない。ポイントゲッター賀持喜道を中途で、相手の悪質な反則という理不尽な形で失って「階級の違う超高校級3枚のそろい踏み」という今代の個性を根こそぎ奪われてしまった桐蔭学園の現有戦力では、総体的に見てこれしか採り得る作戦はなかったと考えるべきだろう。残念なのは、「階級違いの強化選手レベルを3人揃える」という史上珍しい組成のチームの全国大会における躍動を1度も見られなかった(高校選手権での賀持は靭帯断裂の重傷が判明せぬまま、稽古を積まぬままの強行出場であった)ことと、この個性と激突が期された「絶対のエース1枚を押し立てる国士館」との全国大会でのマッチアップがついに今シーズン1度も実現しなかったこと。昨年のインターハイにおける桐蔭学園の「三冠」獲得決定後、国士舘高の名将・岩渕公一監督は「俺も本気になった。来年はお返しする」と桐蔭学園とのリベンジマッチに向けて胸躍る名言を吐いてくれたのだが、これが「対戦なし」に終わってしまったことは非常に残念だ。

結果決まった平成30年度インターハイ柔道競技男子団体戦の決勝カードは、高校選手権、金鷲旗大会の再現。

国士舘高(東京) ― 天理高(奈良)

となった。

※ eJudoメルマガ版8月25日掲載記事より転載・編集しています。

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