PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

国士舘不安抱えながらも大勝で勝ち抜け、激戦Bブロックからは白鴎大足利がベスト8に名乗り・第67回インターハイ柔道競技男子団体試合レポート①1回戦~3回戦(A・Bブロック)

(2018年8月16日)

※ eJudoメルマガ版8月15日掲載記事より転載・編集しています。
国士舘不安抱えながらも大勝で勝ち抜け、激戦Bブロックからは白鴎大足利がベスト8に名乗り・
第67回インターハイ柔道競技男子団体試合レポート①1回戦~3回戦(A・Bブロック)
文責:古田英毅
取材・撮影:eJudo編集部

■ 配列分析
eJudo Photo
新設の「サオリーナ」に全国から精鋭が集った。

eJudo Photo
選手宣誓を務めたのは地元三重の第一代表・名張高のエース山村陸斗。

夏の高校生の祭典、柔道競技に携わる全ての高校生にとっての最高の舞台であるインターハイ(全国総合体育大会)柔道競技、平成最後の大会となる第67回大会は8月8日に新施設「サオリーナ」(三重県津市)で開幕。まず最注目カテゴリである男子団体試合から競技が開始された。

優勝候補筆頭は2年生エース斉藤立の絶対的な強さをテコに3月の全国高校選手権と7月の金鷲旗大会を制した国士舘高(東京)。斉藤以外にもポイントゲッターとして急成長した90kg級の藤永龍太郎(2年)、大型の酒井陸(3年)と長谷川碧(2年)、100kg級のバランサー道下新大(2年)に、攻撃型の90kg級安藤稀梧(3年)と2年生中心ながら人材も厚い。金鷲旗大会で斉藤以外の戦力が高い攻撃力の一方取って取られての防壁の脆さを見せつけたことが不安材料だが、金鷲旗ではむしろそれを塗りつぶして優勝してしまえる戦力の厚みが際立っていた。1点の重みが段違いの点取り制でどこまでソリッドに戦えるかが今大会の課題。

対抗馬は高校選手権無差別の覇者、高校生にして全日本選手権出場という偉業を成し遂げた中野寛太を擁する天理高(奈良)。高校選手権、金鷲旗ともにエース対決の末に決勝で敗れたが、周辺戦力は国士舘とは対照的に手堅さと逞しさのある「大人」の選手が揃った。ラインナップはこの2つの特徴の結晶ともいうべき勝負師・植岡虎太郎(3年)に水上世嵐(3年)、池田凱翔、高校選手権73kg級の覇者中村洸登。いずれも担ぎ技と足技が利くこの4人に加え、重量級奥襟タイプには井上直弥(2年)と金鷲旗大会でその急成長ぶりを見せつけた山中諒(3年)とこちらも陣容非常に厚い。

斉藤が中野に一本勝ち2回という実績のほか、両軍の対戦歴および相性で織り込んでおくべきは、まず国士舘は酒井陸以外の全員が左組みであることと、天理の中野以外のこれまでの決戦兵力4枚(植岡、水上、池田、井上)が右組みであることだ。ケンカ四つの対戦の要素を挙げていけば、まずありていにいって凌ぐ側によってやりやすいこと、次に天理からは背負投の得意な植岡と内股透の得意な水上が、国士舘の側では背を抱いての送足払と大腰系の内股が得意な藤永に相四つパワー派の捌きに難がある道下がケンカ四つが得意な選手であること。そしてこの構図の中、金鷲旗大会で左の本格派重量選手である天理・山中瞭が非常な存在感を発揮したことは両軍の作戦思考に微妙な陰影をもたらすはず。

この2チームと他校の戦力はかなり差があるが、敢えてもう1チームを挙げるとすれば昨年度の覇者・桐蔭学園高(神奈川)。こちらは昨年度インターハイ90kg級王者の村尾三四郎(3年)に3年生代の全国中学校大会最重量級の覇者・千野根有我(3年)が2枚看板。個人戦81kg級優勝候補の最右翼となるはずだった賀持喜道が相手選手の悪質な反則で負った肘の怪我が重症、とうとう最後の夏に間に合わなかったが、組み合わせ配置の良さもあって村尾・千野根2枚の取り味は存分に発揮されるはず。周辺勢力の脆弱さから3点失陥によるゲームオーバーの悪夢は常につきまとうが、高山康太と1年生レギュラー中野智博の奮闘次第では十分2強と戦える位置にある。

さて、展望記事にも書かせて頂いた通り、この3校の力関係はそのままエース同士のそれと対戦歴で測られる。斉藤は高校生相手なら無敵、中野は斉藤以外には全員一本勝ちするだけの力があり、村尾はこの2人以外なら全員に勝利し得る。

ということで、オーダー配列固定の今大会、各校がもっとも注目するのは「どこが相手でも1点確実」の最強駒・斉藤のポジション。もし現実的に国士館に勝とうとするのであれば、斉藤に1点呉れてやり、かつ出来得ればここで失う人的戦力被害を最小限に抑え、残りの4枚で2点以上を確保するほか道はないからだ。

ややくどいかもしれないが大事なところなので、プログラム配布時の3校のオーダーをここで確認しておきたい。ちなみに登録選手は補欠を入れて6名、1人外せばもう1人を補充できるのでここに記載されていない1名を併せて実質的な総戦力は7名である。

[プログラム配布時オーダー]
国士舘高 - 天理高 - 桐蔭学園高
(先)藤永龍太郎 - 池田凱翔 - 安藤健志
(次)安藤稀梧 - 植岡虎太郎 - 奥田訓平
(中)長谷川碧 - 井上直弥 - 高山康太
(副)道下新大 - 中村洸登 - 千野根有我
(大)斉藤立 - 水上世嵐 - 村尾三四郎
(補)酒井陸 - 中野寛太 - 中野智博

事前情報通りに斉藤立と村尾三四郎は大将登録、中野寛太は補欠に取り置かれた。天理としては当然中野を斉藤との対戦から外し、「1点取り合っての残り3枚勝負」に持ち込むであろう。副将投入がまず確実。桐蔭学園は大将村尾が国士舘・斉藤立、副将千野根が天理・中野寛太がかちあってしまい。対2強戦で現実的に得点が期待出来るのはそれぞれ村尾(天理戦)、千野根(国士舘戦)の各試合1点ずつのみ。前衛3枚の圧倒的な戦力差を考えればこの時点で既に勝ち目はほぼなくなったと考えて然るべし。たとえば一点突破で優勝のみを狙うのであれば、「他校を相手に試合をまとめる」ことを捨ててリスクを冒し、2名を前にまとめる策もありえたはずで、このオーソドックス作戦は逆に意外といえば意外。格上に勝ちに行くことを期した配列とは、ちょっと捉え難い。

この中から、まず大会前日の監督会議で動いたのは天理。中野寛太を副将に入れ、補充の補欠には予想通り山中瞭を入れて来た。

さて、国士舘-天理。配列が出揃ったところでまず両軍のオーダーを分析し、さらに次の段階である「用兵」に踏み込んでみたい。

まず天理の側から眺めると。斉藤相手の「失う駒」には植岡に次ぐ周辺戦力2番手の水上が当たってしまった。戦力ダメージは相当に大きいが、もし代表戦を意識するのであれば斉藤の体力を削る駒としては最適のはず、とこれはいったん割り切るしかない。ただし、先鋒戦で池田凱翔と藤永龍太郎がかちあってしまったのは少々痛い。池田は斬り込み役としては最適の選手だが、ケンカ四つを得意とする藤永には金鷲旗で完封された末に一本負けを喫している。結果もさることながらその一方的な試合内容からは「分が悪い」と捉えるしかなく、逆に水上は藤永にいずれも内股透で2戦2勝と相性の差くっきり。これが逆なら勝利の可能性は段違いに高くなったはずで「最悪ではないが最善でもない」配列と言える。一方の国士舘としては、藤永-池田は十分勝利の計算の立つカード。不安要素があるとすれば次鋒戦の安藤-植岡戦で、これは12月の若潮杯で安藤得意の左小外掛に植岡の右背負投をかち合わせられ、決勝点を与えてしまっているカード。攻撃型ゆえのアクシデント側面の強いものではあったが、これをどう捉えて勝負させるのか、それとも安定カードに切り替えるのか。いずれ国士舘としては天理の配列を見て、おそらくは「最悪の事態(斉藤以外の最大の得点源である藤永に苦手の水上が当たり、メンタルが弱く担ぎ系に弱い長谷川にその条件をまっすぐ満たす植岡が当たってしまう)は免れた」と思ったのではないだろうか。若干国士舘の側に針の振れた配列である。

用兵。配列順が出揃ったこの時点から両軍が打てる手は手駒の投入位置のみ。

まず国士舘。手駒に貴重な右組み選手である酒井陸を残しているが、同じ重量巨漢の「重石」の駒である長谷川碧が座る中堅への投入であれば、対面が同じく重量巨漢タイプの井上直弥であることもあり、属性の大きな変更はない。諸刃の剣である安藤を安定属性の酒井に代えるか否か、これが用兵上最大のポイント。ちなみに酒井は、2戦目とはいえ金鷲旗大会では植岡を圧力で消耗させて引き分けている。植岡はケンカ四つを得意にしているが相四つの酒井相手には明らかにやりにくそうで、奥襟を嫌って「首抜き」に近い動作を見せるなど国士舘サイドがフォーカスしそうな隙を見せてもいる。1戦集中の植岡に手数で後塵を拝するリスクはあるが、これを安藤の「取られるが取る」攻撃性リスクとどう比較するかということになる。

一方の天理はこちらも貴重な左組みカードである山中瞭をどう使うか。最有力はまず先鋒。国士館でいまもっとも期待できる得点源でケンカ四つが得意な藤永龍太郎に対して、相四つでサイズがあって藤永の武器である機動力でもひけをとらない山中を当てることで「相手の得点」を潰し、同時に自軍のリスクを減らすことも出来る先鋒投入はかなり面白い策。なにより、「大将までに2点リード」が必須の天理としては、第1試合を国士舘に渡すようなことがあればその時点で試合は実質終わってしまう。
次の候補は中堅。春から負傷してやや減速している井上は3月に見せた突進力が減じた分、「攻めながら分けていた」あの結果オーライの安定感がなくなってしまっている。重心が低い長谷川の突進力は、むしろ自分より大きい内股・大外刈系の重量選手、つまりは井上のようなタイプには一定以上の効力を発揮する。山中は攻撃的かつ重心が低く、金鷲旗を見る限り「攻めながら守る」職責を全うするには周辺戦力最大の安定株、組み手と足技を連動させたあのやり口で長谷川を翻弄する絵は十分に想像できる。例えば先鋒枠の池田に対藤永戦の具体的な方策が立っているのであれば、この中堅位置への投入も十分ありえる。

すっかり長くなってしまったが、両軍の勝ち上がり、そして用兵を楽しむ上では必須の前提なのでここはご容赦願いたい。

もう1つ付け加えるとすれば今大会の傾向として「次鋒が濃い」ことが挙げられる。上位進出を具体的にイメージするチームが斉藤立の後衛配置を読み、エース格を前出しした結果「万が一にも斉藤と当たらぬ」「かつなるべく後ろ(先鋒以外)」というこのポジションに集中した感あり。このあたりも織り込んで、以降のレポートをお読みいただきたい。

前置きが長くなってしまったがここから本編開始。まずは準々決勝までの戦いを、トーナメントをAからDの4つのブロックに割って紹介していきたい。

■ Aブロック
eJudo Photo
優勝候補筆頭の国士舘高が早くも1回戦から畳に姿を現す

有力校 (上側):国士館高(東京)、沖縄尚学高(沖縄)、東海大仰星高(大阪)、東海大札幌高(北海道)
有力校(下側):作陽高(岡山)
ベスト8進出校:国士館高(東京)、作陽高(岡山)

まず上側の山から。優勝候補・国士舘の勝ち上がりを追ってみたい。

国士舘は1回戦で柴田高(宮城)とマッチアップ。スターティングは前述の通り藤永龍太郎、安藤稀梧、長谷川碧、道下新大、斉藤立である。この試合の重心は全日本カデ81kg級王者で大物と名高い菅原幸大を畳に迎える中堅戦にあり、この試合において金鷲旗大会決勝で「先鋒が秒殺負け」という失態を犯した長谷川碧の精神的復活なるか、そして全体としては、絶対の優勝候補の前評判を受けた国士館チームがどのように大会を滑り出すかが観察ポイント。

eJudo Photo
国士舘の先鋒藤永龍太郎が柴田高・佐藤友飛から隅落「技有」

eJudo Photo
長谷川碧が突進、片手技の増えた菅原幸大には次々「指導」が累積。

eJudo Photo
副将道下新大が遠藤滉太から小外刈でまず「技有」

eJudo Photo
大将戦、斉藤立が丹野康悦から大外落「技有」。

[Aブロック1回戦]
国士舘高(東京) 5-0 柴田高(宮城)
(先)藤永龍太郎〇合技(2:12)△佐藤友飛
(次)安藤稀梧〇反則[指導3](1:49)△牛木聖成
(中)長谷川碧〇反則[指導3](1:35)△菅原幸大
(副)道下新大〇合技(1:33)△遠藤滉太
(大)斉藤立〇合技(1:01)△丹野康悦

今大会は初めて1審制が採用され、「指導」判断の早さも国際大会基準に比してかなり妥当かつ正確。ざっくり言ってこれまでの高体連仕様よりはかなり「早い」、そしてテクニカルファウルに躊躇がない。オープニング2試合目のこの段階ではこれが非常に厳格に適用されており、柴田がこの方針に戸惑ううちに次々「指導」が累積。これが試合を決するもっとも大きい要素となった。

先鋒戦は藤永龍太郎が相四つの佐藤友飛から開始25秒早くも「指導」奪取。足元を蹴り崩しながらチャンスを探すと、佐藤が度々放つ左体落に狙いを定めて1分48秒これを抱き潰して隅落「技有」確保、そのまま縦四方固に抑え込んで一本勝ち。

次鋒戦は安藤稀梧が登場、ケンカ四つの牛木聖成は釣り手一本で体を開いて様子を伺うが、58秒、さらに1分17秒といずれも片手の咎で「指導」連続失陥。この間「一本」相当の小外掛を見せた安藤(反則付与のため「待て」が与えられておりノーポイント)だが、状況を考え冷静に「指導」奪取に舵を切って両襟圧力。1分49秒3つ目の「指導」を得て試合終了。

中堅戦は長谷川碧がサイズを存分に生かし、両足を畳に擦るように前へ。天才肌だが線の細い菅原はこれを捌きかね、25秒双方への片手の「指導」以降は、菅原にのみ同じく片手の咎で57秒、1分35秒と一方的に「指導」が積み重なる。ここまでの2戦から審判が「国士舘強し」との構図を大前提にし、かつ一発がある菅原の強さを織り込んでいなかった感はあるが、展開上これは文句の言えないところ。あっという間の「指導3」で試合終了。この時点で3-0、国士舘は早くも勝利決定。

副将戦は道下新大が遠藤滉太を相手にこれも17秒片手の「指導」、1分0秒消極的「指導」とあっという間に勝利の権利を得、1分10秒には左小外刈を当てるなり猛然と突進「技有」。1分33秒には相手の右小外掛に左大内刈を当て返して「技有」、合わせて「一本」で勝利。

大将戦は注目の斉藤立が畳へ。対するは身長173センチの丹野康悦、81kg級の選手だが斉藤と対峙するとまるで60kg級の選手、絵面は「大人と子ども」だ。丹野体を開いて距離を取るが斉藤は悠揚前進、29秒丹野に「指導」。59秒には左大外刈に捕まえ、前に倒れて逃れようとする相手の上半身を引っ掴まえて真裏に叩き落とし「技有」、そのまま横四方固に抑え込んで合技の「一本」。国士舘、まずは順当に5-0で大会を滑り出すこととなった。

eJudo Photo
沖縄尚学高を畳に迎えた2回戦、国士舘は先鋒藤永龍太郎が吉門辰哉を背負落「一本」に屠って先制。

eJudo Photo
沖縄尚学の中堅新垣翔二郎が長谷川碧から谷落「一本」。これでスコアはタイに戻る。

eJudo Photo
斉藤立が仲嵩爽由から僅か15秒で内股「一本」。国士舘は3-1で3回戦進出決定。

国士舘、つづく2回戦では高校選手権に続いて実力校・沖縄尚学高とマッチアップ。

[Aブロック2回戦]
国士舘(東京) 3-1 沖縄尚学高(沖縄)
(先)藤永龍太郎〇背負落(0:17)△吉門辰哉
(次)安藤稀梧×引分×山里健太
(中)長谷川碧△谷落(2:51)〇新垣翔二郎
(副)道下新大〇優勢[技有]△川崎康聖
(大)斉藤立〇内股(0:15)△仲嵩爽由

展開次第では相当に揉めることも考えられたカードだが、国士舘は先鋒・藤永龍太郎があっという間の背負落「一本」で快勝。大将に1勝確実の大駒・斉藤立を置く国士舘としてはとにかく先制点がありさえすればその時点で試合自体の勝利はほぼ確実になるわけで、藤永の仕事の大きさ比類なし。この勝利を受けた次鋒安藤稀梧は敵方のポイントゲッター山里健太と「指導2」ずつを失い合う危うい試合も最後はしっかり引き分けて襷を繋ぐ。

ところが中堅戦で様相一変。長谷川碧がケンカ四つの100kg級沖縄県代表・新垣翔二郎を相手に「指導1」ずつを失いあった2分51秒、抱きつきの一発を食って真裏に崩落。谷落「一本」でスコアをタイに戻してしまう失態。

副将道下新大の「技有」優勢、そしてまたもや81kg級の小型選手仲嵩爽由とマッチアップした斉藤立のあっという間の内股「一本」で試合自体は勝利したが、以後に少々不安の残った一番。国士舘としては金鷲旗終盤戦における周辺戦力の「取られて取る」試合展開をこのインターハイに持ち込まないことこそが三冠獲得を目指す上での最重要条件。あれは「抜き勝負」で敢えて勝ちを上積まんとしたために起こった1大会限定の現象であったとハッキリチーム内外に示すこと、明らかにモードを切り替えてみせてあの蛇行運転を「過去」に封じ込めて完全に蓋をしてしまうことこそこの序盤戦で為すべき最大のミッションのはずだ。その中にあって、誰がどうみても「続き」を宣言した格好のこの長谷川の「投げられての一本負け」はあまりにいただけない。どう立て直すのか、次戦に向けて宿題が1つ明らかになった一番だった。

eJudo Photo
2回戦、東海大札幌高の先鋒佐藤大輔が東海大仰星高・内村秀資の巴投をかわして崩上四方固「一本」。いきなりエースが敗れた東海大仰星は大ダメージ。

eJudo Photo
次鋒戦、越橋健介が福澤達矢を攻める。

[Aブロック2回戦]
東海大札幌高(北海道) 4-0 東海大仰星高(大阪)
(先)佐藤大輔〇崩上四方固(0:36)△内村秀資
(次)越橋健介〇優勢[技有]△福澤達矢
(中)小竹守〇一本背負投(2:35)△中村雄太
(副)加藤亘真〇反則[指導3](3:39)本原颯人
(大)中村亮介×引分×菅野晶仁

国士舘への挑戦権を争う2回戦、東海大札幌-東海大仰星は意外な大差。先鋒戦、東海大仰星のエース内村秀資が巴投を仕掛けるがこれが失敗、佐藤大輔に抑え込まれて僅か36秒で一本負けを喫する。73kg級ながら乗るか反るかの大技一発が持ち味の内村の特徴が悪い方に出た試合だが、虎の子というべき内村を前出しして先制以外に勝利のシナリオ考え難い東海大仰星は動揺。1回戦を勝利している相手方に対しこの試合がインターハイ初試合というハンデもあり、次鋒戦も右外巻込「技有」で東海大札幌・越橋健介が福澤達矢に優勢勝ち。中堅戦も東海大札幌のエース小竹守が中村雄太を圧倒、開始41秒での崩上四方固こそ7秒で逃したが、2分35秒には右一本背負投「一本」で勝利を決める。佐藤が先制し、越橋・小竹の得点ブロックで勝負を決めるという東海大札幌としては理想のシナリオ。東海大仰星は事態を収拾するはずの本原颯人が出動する前に試合を終えられてしまった。

結局副将戦も東海大札幌が取り、最終スコアは4-0。前衛への戦力集中がズバリ当たった形の東海大札幌、勢いを得て国士舘戦へと乗り込む。

eJudo Photo
3回戦、国士舘は次鋒安藤稀梧が東海大札幌・越橋健介から谷落「一本」、これで先制に成功。

eJudo Photo
国士舘は中堅長谷川碧がまたもや不首尾、小竹守の小外掛をまともに食って一本負け。

[Aブロック3回戦]
国士舘(東京) 3-1 東海大札幌高(北海道)
(先)藤永龍太郎×引分×佐藤大輔
(次)安藤稀梧〇谷落(2:48)△越橋健介
(中)長谷川碧△小外掛(3:27)〇小竹守
(副)道下新大〇大外刈(0:47)△加藤亘真
(大)斉藤立〇内股(0:21)△中村亮介

藤永龍太郎は課題の左相四つである敵方のポイントゲッター・佐藤大輔とマッチアップ、この試合はともに「指導1」ずつを失って引き分け。この日初めてリードなしで襷を受けた次鋒安藤稀梧はケンカ四つの越橋健介との切りあいの中から左内股、左小外掛と得意技で攻め続け、「指導1」対「指導2」リードで迎えた2分48秒に谷落「一本」を得て勝利。これで1-0、大将戦の1点獲得を織り込んで国士舘この試合も勝利が見えたと思われたが、どうしても中堅長谷川碧が波に乗れない。ケンカ四つの小竹守から32秒消極の「指導」を奪うって序盤は優勢だが、投げ切れないうちに消耗して下がり始め、かえって相手に手ごたえを与えるというこのところの悪いパターン。あと少しで引き分け、というところまで形上大過なく歩を進めたが、試合時間残り33秒に小竹が思い切った右小外掛に飛び込むとまたしても受け極めて脆し、剛体となって吹っ飛び「一本」。中堅戦までを消化したこの時点でスコアは1-1のタイ。

eJudo Photo
斉藤立が中村亮介から内股「一本」。国士舘は3-1でベスト8入り決定。

前重心布陣の東海大札幌の得点ブロックは既に過ぎ去っており、副将道下新大はケンカ四つの加藤亘真を相手に開始僅か47秒、左大外刈を決めて「一本」。これで国士館の勝利自体は決定。

大将斉藤立の相手は体重85キロの中村亮介。斉藤まったく問題にせず、開始21秒に左内股「一本」に仕留めて試合終了。国士舘はスコア3-1で勝利してぶじベスト8入り決定、競技2日目に駒を進めることとなった。

5-0、3-1、そして3-1。スコア自体に綻びは見出しがたいが、中堅長谷川碧の不調は深刻。長谷川、今季もともとチーム内の評価の高さに比するほどの圧倒的な試合を見せて来たわけではないが、金鷲旗大会準決勝での登場以降このインターハイ第1日までの星取りは実に1勝3敗1分け。この日は連敗のまま宿舎に引き上げることになり、高校生の、それもただでさえメンタルが強いとはいえない長谷川が己の力を信じられぬ疑心暗鬼状態に陥るは必定。結局金鷲旗同様「ミスを戦力の厚みで押し切る」形になった国士舘、翌日までに長谷川をどう立ち直らせるのか。大きな課題を抱えてのベスト8進出となった。

eJudo Photo
1回戦、作陽高の先鋒嵐大地が京都学園高・富原銀士から袖釣込腰「一本」。

eJudo Photo
2回戦、作陽の次鋒田中幸郎が川添幹斗から右大内刈「技有」

eJudo Photo
2回戦、作陽の中堅加藤韻が藤井興から左袖釣込腰「技有」

eJudo Photo
3回戦、1-1で迎えた副将戦で作陽高・高橋翼が羽黒高の佐藤凜太郎から大外落「一本」

下側の山からは作陽高(岡山)が勝ち抜け。

先鋒登録の丸鳩紹雲を初戦から入れ替え、スターティングは嵐大地、田中幸郎、加藤韻、高橋翼、宮城慧也。京都学園とマッチアップした1回戦はスコア4-0で勝利、内訳は嵐が富原銀士から右大外落「技有」に袖釣込腰「一本」(3:44)、次鋒田中が竹嶌真慧から右大外刈「技有」に隅落「一本」(2:00)、中堅加藤が櫻井秀虎から「指導」1つを得ての引き分け、副将のエース高橋が谷口稜太から「指導」2つを奪っておいての右大外刈と崩袈裟固の合技「一本」(2:15)、宮城が上田泰介から「指導」ひとつをリードしてからの崩袈裟固「一本」(2:22)。

結果、内容ともにほぼ完ぺきである。今代スタート時の不器用な戦い方を思えば考え難い出来、金鷲旗の活躍で一段チームが自信を深めていることが明らかにわかる好滑り出しであった。

2回戦は前戦で延岡学園高(宮崎)に競り勝った中京学院大中京高(岐阜)とマッチアップ。先鋒戦の引き分けを受けた次鋒戦で田中幸郎が川添幹斗から右大内刈「技有」を得て優勢勝ち。中堅戦は加藤韻が藤井興から左袖釣込腰「技有」優勢で勝利し、副将戦で高橋翼が村瀬賢心と引き分け、1戦を残したこの時点で勝利決定。ただし最終戦は宮城慧也が好選手進洸希に合技「一本」で屈して最終スコアは2-1であった。

桐蔭学園高(神奈川)を破ってベスト8入りした金鷲旗で得た自信、そして植え付けられつつあった「強豪」としての自己認識がやや揺らいだかと観察される接戦スコアであったわけだが、続く3回戦ではこれが加速、ダークホース羽黒高(山形)を相手に大苦戦。

[Aブロック3回戦]
作陽高(岡山) 2-1 羽黒高(山形)
(先)嵐大地〇優勢[僅差]△五十嵐勁太
(次)田中幸郎△横四方固(0:50)〇清和愛翔
(中)加藤韻×引分×辻颯斗
(副)高橋翼〇大外落(0:15)△佐藤凜太郎
(大)宮城慧也×引分×佐藤佑治郎

先鋒戦は拮抗も、残り30秒を過ぎてから嵐大地が立て続けに2つの「指導」を得て粘りの勝利。あくまで引き分けを拒否して1点もぎ取ったここまでは大過なし、むしろ出来良し。次鋒戦も田中幸郎が開始30秒で清和愛翔から払巻込「技有」を得るが、しかしなんとそのまま抑え込まれてしまう大チョンボ。この試合は横四方固「一本」で清和が勝利することとなった。沸き返る羽黒陣営、この時点でスコアは1-1、内容差で羽黒リードである。中堅戦は加藤韻と辻颯斗が引き分けに終わったが前戦の衝撃がいまだ畳に残り続け、試合のペースは明らかに羽黒。作陽にとってはこれまで自らが成し遂げてきたアップセット劇と立場を逆にした、まことに嫌な流れ。

しかし、羽黒が勝利に辿り着かんとするのであれば流れを得、かつ作陽が動揺していたこの中堅戦で是が非でも1点を手に入れておくべきであった。副将戦では作陽の2年生エース高橋翼が有無を言わさず釣り手をクロスに入れて佐藤凜太郎を掴まえ、開始15秒に大外落一撃。主審は「技有」宣告も、映像チェックが入りこれは「一本」に。

これで勝負決した感あり。大将戦は宮城慧也と佐藤佑治郎が「指導」2つずつを同時に失う形で試合が塩漬けられ、引き分け。スコア2-1で作陽の勝利と、ベスト8進出が決まった。

ターゲットを定めたときの作陽の強さは比類なし。しかし歴代、強豪ぎっしりの混戦ブロックを勝ち上がって周囲を驚かせることはあっても、最有力とされるブロックでは意外な脆さを見せることも多かったのが作陽だ。今代も実は全方位的な強さはなく、歯車が1つ狂えばどの時点でも敗退ありうる危ういバランスのチーム。中堅戦進行時点では勝負はどちらに転んでもおかしくなかった。

このところ挙動を慎み、かつてトレードマークであったオーバーアクションを控えていた川野一道監督が、高橋の勝利と宮城の引き分けの瞬間思わず拳を突き上げたその絵からは(もちろんチームを盛り上げんとする意図もあるだろうが)、作陽サイドが何よりこの事情を理解し、思わぬ敗戦を十分現実的なものと捉えて心理的な綱渡りをしていたことが良くわかる。ともあれ作陽は無事勝ち上がり決定、第2日のオープニングゲームで今大会最大の「的」である国士舘に挑戦する権利を得た。

[Aブロック1回戦]
東海大札幌高(北海道) 4-1 新潟第一高(新潟)
国士舘高(東京) 5-0 柴田高(宮城)
羽黒高(山形) 3-1 高松商高(香川)
作陽高(岡山) 4-0 京都学園高(京都)
中京学院大中京高(愛知) 2-1 延岡学園高(宮崎)

[Aブロック2回戦]
東海大札幌高(北海道) 4-0 東海大仰星高(大阪)
国士舘高(東京) 3-1 沖縄尚学高(沖縄)
羽黒高(山形) 2-1 前橋商高(群馬)
作陽高(岡山) 2-1 中京学院大中京高(岐阜)

[Aブロック3回戦]
国士舘高 3-1 東海大札幌高
作陽高 2-1 羽黒高

■ Bブロック
eJudo Photo
今代の全国ベスト8チームが3校詰め込まれたBブロック上側、最有力は関東大会王者の木更津総合高。

有力校 (上側):木更津総合高(千葉)、福岡大大濠高(福岡)、崇徳高(広島)、白鴎大足利高(栃木)
有力校(下側):名張高(三重)、新田高(愛媛)、埼玉栄高(埼玉)
ベスト8進出校:白鴎大足利高(栃木)、名張高(三重)

Dブロック下側と並ぶ、30年度大会最激戦区となった上側の山の勝ち上がりを順を追って追いかけてみたい。高校選手権と金鷲旗でベスト8に入った木更津総合高と福岡大大濠高の2校に加え、高校選手権ベスト8の崇徳高が配置された。エントリー6席の中に今代の「全国ベスト8チーム」が3校詰め込まれたという異常なブロックである。

eJudo Photo
1回戦、木更津総合高の先鋒井上泰司が石嵜信太郎から大外刈「技有」。

eJudo Photo
次鋒戦、中西一生が浅野史恩を攻めこみ「指導」2つをもぎ取る。

eJudo Photo
板東虎之輔は野田隆世の反則紛いの技を受けて終盤奮起、3つ目の「指導」を獲得。

[Bブロック1回戦]
木更津総合高(千葉) 3-1 福岡大大濠高(福岡)
(先)井上泰司〇合技(3:19)△石嵜信太郎
(次)浅野史恩△優勢[僅差]〇中西一生
(中)小宮大倭×引分×釘本陸
(副)板東虎之輔〇反則[指導3](3:50)△野田隆世
(大)北條嘉人〇優勢[技有]△岸川尚矢

「狙っているチームは次鋒が濃い」傾向がある今大会、その形に嵌る強豪2チームの対戦。
先鋒戦は右相四つ。井上泰司が釣り手で奥襟を叩いて内股、あるいは懐に潜りこんで背負投と石嵜信太郎を圧倒。この優位が終盤立て続けに結実、3分13秒にまず右大外刈で「技有」確保。さらに直後の3分19秒には右背負投で相手を転がし、ケアシステムの確認の結果これは「技有」認定。合技「一本」で木更津総合が貴重な先制点を得た。

次鋒戦は90kg級の強者中西一生が攻め込むも、体重120キロの木更津総合・浅野史恩とのサイズ差に苦戦、なかなかポイントにはつながらない。中西それでも集中を切らず、後半、消耗した浅野を幾度も足技で伏せさせ、残り33秒、そして残り25秒と立て続けに消極の「指導」奪取。指導差2の僅差優勢で福岡大大濠が1点を返す。これでスコアは1-1、内容差で木更津総合がリード。

中堅戦は左相四つ,小宮大倭と釘本陸の大型2人にともに「指導1」が与えられて迎えた終盤、小宮に2つ目の「指導」が宣せられて場がやや煮えるが、結局そのままこの試合は引き分け。

勝負どころの副将戦は81kg級の強者板東虎之輔が100kg超級九州新人王者の野田隆世を圧倒。ケンカ四つの野田をひたすら圧を掛けて押しまくる。しかし具体的に差をつけることはかなわず、40秒両者に消極的「指導」、1分34秒には両者に片手の「指導2」が宣告され、もはや双方1つのミスも許されない状況。2分56秒には野田が板東の釣り手を抱え込んだまま、引き手を持たず、相手を投げようのない形でおのが体を捨てるというあってはならない攻撃。現行ルールは「立ち関節」は全て反則。畳に落ちて腋固の形で痛められた板東が相手の腋固による反則をアピールするが、ケアシステムによる確認の結果これはなぜかスルー。この反則紛いの攻撃に板東奮起したかペースアップ。残り10秒まで辿り着いたところで板東の奥襟圧力に野田が潰れ、偽装攻撃による痛恨の「指導3」。試合はこれで決着、「指導」1つの差が「一本」相当のスコアとして反映されることとなり、スコアは2-1、内容差からこの時点で木更津総合の勝利が決定。

大将戦は73kg級の北條嘉人が体重107キロの岸川尚矢を圧倒、ケンカ四つから脇を差して密着を続けて常に攻勢。残り35秒には左袖釣込腰で「技有」を獲得してフィニッシュ、木更津総合がスコアを3-1にまで伸ばしてこの大一番を勝ち抜けた。

結果としては木更津総合の圧勝。福岡大大濠の得点はポイントゲッター対決をエース中西一生が制した次鋒戦だけだった。

eJudo Photo
2回戦、木更津総合の先鋒井上泰司が崇徳・篠原泰斗から隅落「技有」

eJudo Photo
篠原が谷落「技有」を取り返して先鋒戦は引き分け。

eJudo Photo
次鋒戦は浅野史恩が飯田恒星を良く攻め、「指導3」を得て木更津総合が先制。

eJudo Photo
副将戦、板東虎之輔が八木郁実をしっかり止める。

[Bブロック2回戦]
木更津総合高(千葉) 2-0 崇徳高(広島)
(先)井上泰司×引分×篠原泰斗
(次)浅野史恩〇反則[指導3](2:49)△飯田恒星
(中)小宮大倭×引分×福永夏生
(副)板東虎之輔×引分×八木郁実
(大)北條嘉人〇優勢[技有]△松岡大輝

木更津総合は2試合目、1回戦シードの崇徳はこれが平成30年度インターハイの初戦である。

崇徳は補欠登録で手駒に残しておいたエース八木郁実を1年生飯田恒星が座る次鋒ではなく、3年生の松尾理来に代えて副将に投入。相手方の板東虎之輔と浅野史恩を比べ、金鷲旗大会で不調だった浅野は好調が伝えられる飯田に任せて、より脅威レベルの高い板東に八木を手当てして潰しに掛かる作戦を採った形になった。歴代1年生の起用に慎重な崇徳としては少々珍しい陣構え。

先鋒戦は木更津総合・井上泰司が残り42秒に篠原泰斗の左内股巻込潰れを見逃さず、引き手を引っ張りながら相手の体を大きく乗り越え隅落「技有」を獲得。この戦力拮抗の試合において、それもポイントゲッター級がかちあった先鋒戦で得点生まれるとなればその効果は比類なし。あるいはここで勝敗の趨勢ほぼ決まってしまうかというところだったが、しかし篠原ここで譲るわけにはいかじと、残り19秒に意地の谷落「技有」奪回。この試合は引き分けに終わる。

崇徳の戦線が僅かに凹む次鋒戦は両軍にとって最大の勝負どころ。なんとかここを耐え切りたい崇徳だが、木更津総合・浅野史恩はさすがにここは意地の前進。一方的に「指導」を奪い続け、最後は2分49秒「取り組まない」との咎で飯田に3つ目の反則が与えられて終戦。木更津総合がまことに大きい1点を得る。

中堅戦は100kg級対決、身長170センチの小宮大倭が左、同180センチの福永夏生が右組みのケンカ四つ。小宮は背負投に体落、福永は左内股で攻める。試合は互いに危うい場面のない拮抗も、状況から考えれば福永は得点必須。引き分けで十分の小宮は決して無理をせず、なかなか間合いに入れない福永は足技、そして片手で崩す内股を多用する巧さを見せて機会をうかがうが、小宮はあくまで隙を見せない。福永が軸足を送り込んでの右内股など幾度か良い技も見せるが、小宮の堅陣を崩すには至らず。結局この試合は引き分けに終わった。

次鋒戦において得た1点のアドバンテージはまことに大きく、副将戦のポイントゲッター対決も木更津総合の意図通りに引き分けに終わる。体格に勝る崇徳・八木郁実はたびたび得意の抱き勝負にでるが板東虎之輔とりあわず、また自ら闇雲に距離を詰めるようなギャンブルも自重。双方が「取り組まない」咎による「指導」2つを失い、八木は勝負に乗ってこない板東に対しどうしても刃の入れどこを見出すことが出来ない。板東がうまくまとめる形でこの試合は引き分け。スコアは変わらず1-0、この時点で木更津総合高の本戦における負けはなくなった。

eJudo Photo
大将戦、松岡大輝の右払腰に北條嘉人吹っ飛ぶが、空中で回転してポイントは回避。

eJudo Photo
残り6秒、小兵北條が巨漢松岡を裏投に捉え「技有」。

大将戦は73kg級の北條嘉人、体重115キロの松岡大輝ともに右組みの相四つ。「一本」以外にチームが生き残る道がない松岡は払腰を中心に攻めこむが、北條は持ち前の機動力を生かして巧みに進退、あっという間に時間が過ぎ去る。中盤には松岡の払腰に吹っ飛ばされた北條が木の葉のように宙を舞うが、落ちたときには北條膝から着地。松岡攻めこみながらもどうしてもポイントに繋げられない。残り11秒、もはや勝負をかけるしかない松岡が一発逆転を狙って奥襟を持ったまま踏み込むと、北條狙いすまして裏投一発。低空で踏ん張り、大型選手の膝裏に胴を当てるような得意の形、これが決まって「技有」。

このポイントを持ったまま北條の勝利が決定。最終スコアは2-0まで開いた。相手の戦線の凹みに付け込んで確実に1点奪取、あとは手堅く戦い、焦った相手の一発勝負を待ち構えて追加点を得る。木更津総合は完璧な勝利だった。べスト8チームを2校立て続けに破り、最終日勝ち残りまであと1つ。

木更津総合高3回戦の相手は白鴎大足利高(栃木)。2回戦は箕島高(和歌山)を相手に先鋒澤口宗志から宇賀神圭太、長谷川明伸、杉之内暁と副将戦まで4連続一本勝ち。大将に座る73kg級ポイントゲッター齋五澤航介が武内佑之に試合終了直前に内股「一本」で屈したが、スコア4-1の大差でこの3回戦に勝ち上がって来た。

eJudo Photo
3回戦、白鴎大足利の次鋒宇賀神圭太が浅野史恩に袖釣込腰。殊勲の「一本」を得る。

[Bブロック3回戦]
白鴎大足利高(栃木) ②-2 木更津総合高(千葉)
(先)澤口宗志×引分×井上泰司
(次)宇賀神圭太〇袖釣込腰(3:30)△浅野史恩
(中)長谷川明伸〇合技(3:25)△小宮大倭
(副)杉之内暁△合技(2:36)〇板東虎之輔
(大)齋五澤航介△優勢[技有]〇北條嘉人

先鋒戦は木更津総合・井上泰司が右、白鴎大足利の澤口宗志が左組みのケンカ四つ。58秒、攻防の中で足を持ってしまった井上に「指導1」。以降は井上が右背負投を連発して猛攻も、澤口が紙一重で凌ぎ続ける。井上の攻勢が評価され、1分59秒に澤口に「指導1」が与えられたがこの試合は引き分け。

次鋒戦は81kg級の宇賀神圭太が右、木更津総合の前衛の要である最重量級浅野史恩が左組みのケンカ四つ。関東高校大会準決勝では浅野が「指導3」の反則で勝利しているカードだが宇賀神が粘戦、残り1分までに双方「指導2」ずつを失って、あと1つの「指導」があれば勝利が決まるところまで場が煮詰まる。互いが引いても、また例えば浅野の側は圧力、宇賀神の場合は手数攻撃と「指導」奪取に舵を切ってもいいところであったが、浅野の方針が定まらぬうちに宇賀神は残り30秒に右袖釣込腰。前衛戦でリードを得るしかないと肚を括ったこの一撃を中途半端に受けてしまった浅野はいったん頭から畳に落ちてストップ、しかし次いで襲った宇賀神の押し込みに屈して回ってしまいなんと「一本」。盤面全体を一気にひっくり返す大事件、先制は白鴎大足利。

eJudo Photo
中堅戦、白鴎大足利の中堅長谷川明伸が小宮大倭の横落を待ち構え、捩じり潰して「技有」。

中堅戦の重量級対決は白鴎大足利の長谷川明伸、木更津総合・小宮大倭ともに左組みの相四つ。長谷川の圧力が良く効き、小宮場外まで押し出されて37秒場外の「指導」。以降も長谷川の圧力がかかり続け、苦しくなった小宮横落を見せるが間合いに近づけず潰されて「待て」。しかし残り1分半を過ぎるあたりから長谷川の圧力が弱まって来たか、小宮が袖を持ってある程度の距離を取れるようになる。ここまで圧力に苦しんだ小宮、成算ありと踏んだか再び横落。しかし前段の攻防からこれを予期していた長谷川は余裕を持って対応。座り込んだ小宮を潰して捩じり返し、3分14秒決定的過ぎる「技有」獲得。ベンチの大歓声を背に長谷川悠揚袈裟固に抑え込み、3分25秒合技「一本」で試合終了。スコアは2-0、しかもいずれも「一本」という決定的状況。白鴎大足利はこの時点で本戦の負けがなくなり、木更津総合は残り2試合を一本勝ちして代表戦に持ち込む以外に生き残る方法がなくなってしまう。

eJudo Photo
副将戦、木更津総合は板東虎之輔が大技一発、「フロントスープレックス」で「技有」。このまま抑え込んで合技「一本」。

副将戦は板東虎之輔がケンカ四つの杉之内暁に対してやや怒気を発して前へ。1階級上の杉之内しかし肘を畳んで内側にこじ入れ、強豪板東に対して十分「やれている」印象。44秒双方に消極的との咎で「指導」。以降もなかなか決定的場面訪れず、業を煮やした板東は残り1分35秒で勝負に出る。正面から相手を抱き上げる「フロントスープレックス」で強引に取りに掛かる。そのまま揚げた右脚に引っ掛けて時計回りに振り投げようとするが杉之内も板東の一発密着は織り込み済み、そのまま板東の頭に蜘蛛宜しく覆いかぶさって浴びせに返しに掛かる。板東思わず左手の拘束を解いてバランスを取りにかかるが、それでも投げの意志は失わず危ういところで杉之内を背中から落として「技有」。そのまま横四方固に抑え込んでさすがの合技「一本」。これでスコアは2-1、木更津総合の生き残りにはあと1つの「一本」が必要、白鴎大足利は一本負けさえしなければベスト8入り決定という緊迫した状況のまま、勝負の行方は大将戦へと引き継がれる。

eJudo Photo
大将戦、序盤に北條嘉人抑え込み掛かるが、齋五澤航介巧みに脚を絡めて粘り切る。

eJudo Photo
北條が座り込みの小外掛で「技有」。

eJudo Photo
齋五澤は北條の猛攻をよく凌ぎ、タイムアップまで粘り切る。

eJudo Photo
白鴎大足利はベスト8入り決定、蓬田正郎監督は会心の表情。

大将戦は73kg級の強者対決、白鴎大足利・齋五澤航介が左、木更津総合の北條嘉人が右組みのケンカ四つ。齋五澤引き手を織り込んで引込返で先制攻撃、しかし北條体捌きよくかわすと抑え込みに掛かり、齋五澤の足を引き抜いてあと一歩で縦四方固完成というところまで歩を進める。しかし齋五澤が柔らかい体を一杯に使って耐え切り「待て」。齋五澤は以降も状況をよく弁え、まず袖をしっかり得、高い上背を生かしてリスク少なく遠間から北條を牽制、時折北條の予想を超える密着も織り交ぜ、あの手この手で巧みに時間を使う。1分8秒には齋五澤に袖口を絞り込んだ咎で「指導」1つが与えられるが大枠の構図は変わらず、接近戦で力を生かしたい北條だがなかなか自分の欲しいタイミングで距離を詰められず刻々時間が過ぎ去る。しかし北條ワンチャンスを生かし、2分23秒ついに一発密着、座り込みの右小外刈で「技有」奪取。以降齋五澤落ち着いて両袖の攻防に持ち込み逃げ切りを図るも、2分47秒には双方に消極の「指導」。残り時間はこの時点で1分13秒、齋五澤の累積反則はこれで「2」となり、あと1つの「指導」あるいはあと1つの「技有」があれば代表戦というところまで場が煮える。

北條は徹底して距離を詰めに掛かるが、齋五澤巧みな組み手と細かい技の弾幕であくまで間合いの中に相手を入れない。北條のスクランブルがことごとくその起こりではねつけられる中で刻々時間過ぎ去り、ついにタイムアップのブザーが鳴り響く。

白鴎大足利・蓬田正郎監督が「よし!」と小さく1つ手を叩いてアップセット完成。今代全国大会2大会連続ベスト8の木更津総合はここで陥落、スコア2-2に内容差を以て準々決勝進出の栄は白鴎大足利に輝いた。

白鴎大足利、冬季招待試合シリーズを見る限り今代の潜在力は高かった。同シリーズであと1歩でミスが出て勝ち切れず形上成績が残らなかったこと、ゆえにシードに選ばれなかったこと、さらに絶対的な大駒がいる組成ではないため抜き試合レギュレーションでは厳しい戦いを強いられた(点取り制では今大会とほぼ変わらぬ陣容で臨んだ関東高校大会で、木更津総合と大将戦までもつれ込む2-1の接戦を演じている)こと、といくつかの要因重なって世に出ることが出来なかったが、今大会はよほどモチベーション作りがうまくいったのか、全員が自信あふれる柔道でこれ以上ないほど勢いに乗った。先に斬りつけるほか道はなしと肚を括ったその戦いぶり、なによりまさしく冬季シリーズに足りなかった「自己を高く買う力」の浸透ぶり、見事であった。

一方の木更津総合は意外なステージでの敗戦。福岡大大濠、崇徳と続いた厳しい戦いを勝ち抜いた気持ちの緩みがあったか、「受けて立つ」形で試合を進めてしまったそのエアポケットを眦を決してこの一番に臨んだ白鴎大足利に突かれた形となった。

勝負のポイントはやはり次鋒戦、そしてその敗戦を受けた中堅戦。後に板東-杉之内という得点が計算できるカードがあるのであればじっくり試合を進める手もあったとは思われるが、両者ともに取らねばならないという使命感ゆえか浅野には迷いが、小宮には状況判断のミスが出た。とはいえ、以降のカードとこれまでの対戦歴を考えると木更津総合の面々が安閑としていられなかった事情も良くわかる。今大会大将戦で組まれた北條-齋五澤戦は関東大会で引き分けに終わったカードであり、代表戦となれば実現濃厚な板東-長谷川戦も同大会で長谷川の「指導3」による勝利に終わっている。木更津総合には、少なくとも性急な技で後の先の一撃を食ってしまった小宮には勝負を急かされるだけのプレッシャーが掛かっていたものと思われる。実績の差以上に拮抗していた正味の力関係を考えれば、先制点付与は決定的事態。まして前回対戦では「指導3」で1点得ている得点濃厚カードでの意外な失点である。木更津総合にとってはこの次鋒戦でゲームプランが根底から壊れた試合、順行運転を続けて「どこかで獲って勝てればよい」ステージから実力以上のものを振り絞らねば勝ち上がれないところまでいきなり追い込まれた一番だったわけだ。ベスト8校と立て続けに戦った後にこなせばならぬタスクとしては少々重すぎた。総体的には、強豪校との3連戦で「力尽きた」と評するべきだろう。ひときわ深々一礼して畳を去る近野貞治監督の、全てを受け入れたような、意外なほど険のない表情が印象的だった。

eJudo Photo
2回戦、名張高は大将中窪洸貴が引き分け、スコア2-2の内容差で新田高を下す。

eJudo Photo
2回戦、津幡高の大将室木修幸が埼玉栄高・蓜島創から内股「一本」。

下側の山は大激戦。まず2回戦では地元の第1代表・名張高(三重)が新田高(愛媛)を破り、寺島悠太と布目王雅を擁する津幡高(石川)が埼玉栄高(埼玉)を破った。

新田を畳に迎えた名張は、先鋒増田良生が井上太陽からまず内股で「技有」先制、あくまで「一本」奪取を狙い、残り1秒で腰車を押し込み2つ目の「技有」を得て一本勝ち。次鋒戦はエース山村陸斗が三好竜輔を鋭い小内刈に捕まえて鮮やか「一本」。中堅戦は山本亮我が信岡翔に残り32秒の内股「一本」で屈したが、副将藤井紀斗が相手方のエース熊坂光貴を相手に粘戦。残り3秒に食った払巻込「技有」で1点献上したものの一本負けを回避し、大将中窪洸貴が引き分けて試合終了。2-2の内容差で勝ち抜け決定。

津幡は1回戦で長崎日大高(長崎)とマッチアップ、先鋒から寺島悠太、本出達基、布目王雅と前衛に組んだ得点ブロックが3連続一本勝ちを果たし3-1で快勝。埼玉栄戦は寺島が西願寺哲平と、布目が山野井爽とポイントゲッター同士がことごとくかち合ったが、この2試合をしっかり引き分け。次鋒本出が吉田昴から僅差の優勢、副将大橋洸俊が梅野寛大から合技「一本」、大将室木修幸が蓜島創から開始20秒の内股「一本」と他カードの全てで得点、チームの総合力比べで完勝。3-0の圧勝で3回戦へと駒を進めて来た。

eJudo Photo
3回戦、津幡高の中堅布目王雅が名張高・山登爽介から払腰「一本」。

eJudo Photo
津幡の大将室木修幸が中窪洸貴から内股「技有」。

eJudo Photo
代表戦、開始早々に山村陸斗が布目王雅から小内刈「技有」

eJudo Photo
山村は背負投「技有」も追加して一本勝ち。名張は45年ぶりのインターハイ8強入り決定。

[Bブロック3回戦]
名張高(三重) ②代-2 津幡高(石川)
(先)増田良生×引分×寺島悠太
(次)山村陸斗〇反則[指導3](2:52)△本出達基
(中)山登爽介△払腰(0:21)〇布目王雅
(副)藤井紀斗〇反則[指導3]△大橋洸俊
(大)中窪洸貴△合技(3:51)〇室木修幸
(代)山村陸斗〇合技(1:21)△布目王雅

地元の大声援を背に行われた、この日のトーナメント全体を通じた最終試合。

先鋒戦は増田良生が相手方のポイントゲッター寺島悠太と「指導2」対「指導1」の粘戦の末引き分け。迎えた次鋒戦ではエース山村陸斗が得点必須と覚悟を決めた攻め、1分10秒両者に消極の「指導」、1分44秒に両者に片手の「指導2」と進んだ難しい試合でここからギアを一段アップ、2分52秒3つ目の「指導」を得て勝利決定。中堅戦は敵方のエース布目王雅に払腰「一本」で譲ったが、副将戦で藤井紀斗が「指導3」の反則で勝利。2-1のリードで迎えた大将戦でも中窪洸貴が1分45秒隅落「技有」を先制して勝利まであと一歩に迫る。

しかし津幡・室木修幸がここで奮起、残り1分4秒に右内股「技有」で追いつくと、試合終了まで9秒というところで右小外刈を合わせて中窪を大きく転がす。ケアシステムによる検証の結果これは「技有」となり、合技「一本」で試合終了。勝敗の行方は代表者1名による決定戦に委ねられることとなる。

双方のエース同士が畳に上がった名張・山村陸斗、津幡・布目王雅の代表戦は59秒に山村が小内刈。返そうとした相手の体の起こりにインパクトがかち合い、布目吹っ飛んで「技有」。角度によっては「一本」判定もありえる勢いある一撃だった。布目が体格差で圧力を掛けながら追撃、しかし気合十分の山村は続くシークエンスで思いきり右背負投。勢い十分の一撃も吹っ飛んだ布目が腹ばいに落ちたように思われたが、ケアシステムによるチェックの結果これは「技有」。今度は「ポイントなし」もありえた判定だが、これで合技「一本」が確定。地元・名張は実に45年ぶり、前回の三重県開催以来というインターハイベスト8進出決定。

[Bブロック1回戦]
箕島高(和歌山) 2-1 小杉高(富山)
木更津総合高(千葉) 3-1 福岡大大濠高(福岡)
新田高(愛媛) 4-0 高川学園高(山口)
津幡高(石川) 3-1 長崎日大高(長崎)
埼玉栄高(埼玉) 3-0 盛岡南高(岩手)

[Bブロック2回戦]
白鴎大足利高(栃木) 4-1 箕島高(和歌山)
木更津総合高(千葉) 2-0 崇徳高(広島)
名張高(三重) ②-2 新田高(愛媛)
津幡高(石川) 3-0 埼玉栄高(埼玉)

[Bブロック3回戦]
白鴎大足利高 ②-2 木更津総合高(千葉)
名張高(三重) ②代-2 津幡高(石川)

※ eJudoメルマガ版8月15日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る




supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.