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国士舘が2年ぶりの優勝、大将同士の激突は斉藤立が中野寛太から大外落「一本」・第92回金鷲旗高校柔道大会マッチレポート⑤決勝

(2018年8月7日)

※ eJudoメルマガ版8月7日掲載記事より転載・編集しています。
【eJudoメルマガ版】国士舘が2年ぶりの優勝、大将同士の激突は斉藤立が中野寛太から大外落「一本」
第92回金鷲旗高校柔道大会マッチレポート⑤決勝
取材・撮影:eJudo編集部
文責:古田英毅

■ 決勝
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酒井陸を入れて国士舘はフルオーダー完成

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天理は副将の「重量級枠」をより機動力のある山中瞭にスイッチ

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オーロラビジョンに配列が映し出される

決勝カードは全国高校選手権大会決勝の再現。日本武道館で激戦を繰り広げた同大会の覇者・国士舘高(東京)と準優勝の天理高(奈良)が再び、今度は福岡の地で相まみえることとなった。

国士舘は斉藤立、天理は中野寛太という絶対の大駒を保有。高校選手権決勝で副将に座った中野が3人を抜き、斉藤が中野ごと2人を抜き返して自軍を勝利に導いたという来歴が示すとおり、この2人の絶対性がチーム最大の特徴であり、両者の力関係がそのまま勝敗をダイレクトに左右する。

これを揺らす可能性があるのは、周辺戦力の力比べの如何。両軍、特に天理は少しでも多くの枚数を残して敵方の大将に臨みたい。

周辺戦力の力くらべ。ここまで国士舘は斉藤を取り置いたまま全7試合を勝ち抜いており、一方の天理は5回戦と準々決勝、そして準決勝で大将中野が畳に上がり、中野1枚の得点力で強引に試合を収拾している。この事実、そして高校選手権決勝の直接対決における中野出動までの勝敗が3勝1敗で国士館に分があった、という結果を考えれば国士館の戦力に軍配が上がりそうなものだが、国士舘は得点力の高さの一方で脆さも否めず、今大会ここまでの星取りは実に29勝10敗7分け。明らかに厳しい組み合わせの山を勝ち抜いてきた天理の戦いぶりの逞しさと比べると、むしろ脆さを抱えるのは国士舘の側ではないかという観察も成り立つ。

開示されたオーダー順は下記。

国士舘高(東京) - 天理高(奈良)
(先)長谷川碧 - 植岡虎太郎(先)
(次)酒井陸 - 池田凱翔(次)
(中)藤永龍太郎 - 水上世嵐(中)
(副)道下新大 - 山中瞭(副)
(大)斉藤立 - 中野寛太(大)

国士舘はこの日出来いまひとつの安藤稀梧に代えて次鋒に酒井陸を入れ、ここで初めて全員を使い切ったフルオーダー完成。天理は副将を最重量級の2年生井上直弥から今季成長著しい3年生の重量級選手・山中瞭に入れ替えた。

天理は周辺戦力の特徴である「手堅い逞しさ」を一段上げたという体。決勝の畳に上がる4枚は個々それぞれ長短あれどいずれも組み力が強く機動力があり、本格派の山中以外は足技と担ぎが利く練度の高い中量級型の選手だ。巨漢奥襟タイプの井上を下げて駒の凹凸が減じたぶん練度の高い選手をずらりと揃えて、我慢しながら相手の隙にはいつでも刃を入れる、緊張感ある「線」を作り上げたという印象。

一方の国士舘は高校選手権決勝で水上と池田の2人を抜き去った安藤という攻撃型のジョーカーを下げ、前衛に長谷川碧と酒井陸の重量級2枚をまとめた。4枚のうち、スクランブルの利く藤永龍太郎を中堅に置いてはいるが、まずは長谷川と酒井で手堅く試合を始めるという、結果としては安定志向の布陣。斉藤に任せず前で決めることを課題に掲げて来た国士館だが、オーダー順が発する戦略的メッセージはむしろ「手堅さ」に寄った形になっている。

破綻なく試合を進めて最悪でも大将斉藤に襷を渡せば勝利が見える国士館、一方国士舘の戦線の凹みに刃を入れてどうしてもリードを持って斉藤と対峙したい天理という構図がそのままオーダー配列に現れたと評したい。ともに攻めを標榜している両軍だが、おそらくより切迫感を持って「取る」覚悟を固めているのは天理の側だ。

盤面を眺めれば、まず懐に入られた際の受けに難のある長谷川、同じく典型的な重量級型で担ぎの連続攻撃をウォッチする危険性のある酒井に対し、まさしく懐への潜り込みを得手とする植岡と連続攻撃が売りの池田がマッチアップする前衛2枚の戦いぶりがひとつのみどころ。植岡のほうも高い攻撃力の一方で燃費の悪さかあるいはコンディション不良か、今大会は一貫して異常な消耗の早さを見せていてこのあたりは不安材料。植岡が相性噛み合うであろう長谷川と酒井に先に刃を入れるか、それともこの2人が体格と圧力で植岡の技を塗りつぶすか、まずこれが最初の山場になるはずだ。両軍ともに以降は追い掛けるよりは相手が出て来たほうが取りやすいというタイプの選手を揃えており、先制点の有無はまことに大きいはず。特に斉藤に対してどうしても複数枚を手当てしたい天理は、まず一撃を食らわせて試合の流れを掴んでしまいたい。

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先鋒戦、植岡虎太郎が長谷川碧に背負投

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事決まって「一本」、ここまで開始僅か14秒。

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岡が組み手の機を見て、酒井陸を背負投で攻める

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酒井の技を捌く植岡

先鋒戦は国士舘・長谷川碧が左、天理・植岡虎太郎が右組みのケンカ四つ。長谷川両襟を握ってまず左内股。植岡が引き手を切って体を開くと両襟を握ってじわりと圧を掛ける。しかし植岡引き手で袖を掴んで一瞬間合いを取ると軸足から回転を起こして右背負投。やや腰高に構えていた長谷川の股中にすっぽり植岡の腰が収まり、誰がどう見ても決定的過ぎる形。長谷川なす術なく右肩から畳に落下、さらに植岡の押し込みに屈してそのまま背中から畳に沈む。

主審の手が高々と上がって「一本」、なんと開始からここまでわずか14秒。長谷川両手を畳について主審を見やり、さすがにガックリ。一方の植岡は「秒殺」で出来たこの勢いを加速させんと、這いつくばる敗者長谷川に一瞥も呉れずまっすぐ開始線に戻る。92回大会決勝は衝撃的な幕開け、天理があっという間に1点先制。

植岡は早く次の試合を始めたい、とばかりに畳上で軽くジャンプを繰り返して敵の入場を待つ。迎えた第2試合は畳に残った植岡、国士舘の次鋒酒井陸ともに右組みの相四つ。体格に大きく勝る酒井はこれが今大会初出場とあって気合十分、引き手で襟を掴むと空いた釣り手を奥襟に叩き入れ続ける。植岡は叩かれる瞬間巧みに頭をずらして肩越しのクロス組み手を強いるが一瞬動作が遅れることが2度続き、33秒首抜きの「指導」。

手ごたえを得た酒井は前へ。植岡は引き手で相手の脇下を大きく突いて距離を取り、酒井が寄せるとこれを袖に持ち替えて相手の釣り手を殺すという定石通りの粘りの組み手。釣り手を落とされたまま組まされた酒井が焦れ、これを切り離そうとした瞬間に植岡が鋭く右背負投。これは酒井が膝から落ちて投げ切れなかったが、以降も植岡は組み手進行のジョイント部を狙って的確に右背負投を入れ、1分20秒からは3度この技をまとめる意欲的な攻め。酒井は右払腰に右払巻込と攻め返すが植岡は崩れず、組み合う形は体格のある酒井が一見有利も、試合の流れは植岡という印象。しかし残り1分半を切ると植岡に疲労が目立ち始め、両者ともにやや減速。植岡は釣り手を狭く保って右小内刈、出足払と良い攻めを見せるが獲り切るだけのバイタリティにはもはや欠ける印象。3分13秒双方に「指導」。以降はお互い足技と切り返しを狙いながら時間が過ぎ去り、この試合は引き分けに終わる。天理の1人差リードは継続。

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藤永龍太郎が池田凱翔の一瞬の隙をついて抑え込み、巧みなバランス操作で「技有」を得る。

第3試合は国士舘の中堅藤永龍太郎が左、天理の次鋒池田凱翔が右組みのケンカ四つ。藤永は引き手を襟、袖と狙いを変えて激しく動かし、池田がこれに的確に反応して袖の確保を狙うという体で引き手争いが続く。引き手を織り込まれた池田これを嫌って切り、左一本背負投。これが掛け潰れると藤永は横抱きに食いつき、ローリングをして被さる。絡まれた池田の足を引き抜き、上半身に乗り上げた膝で胸を押さえると縦四方固の形が出来上がって主審は「抑え込み」を宣告。池田慌てて体を捩じるが、藤永は不安定な体勢ながら釣り手で横襟を握ったまま浮固よろしくバランスをとり続け、巧みに時計の針を進める。「解けた」が宣告されたときには10秒が経過しており主審は「技有」を宣告。試合時間は1分7秒。

再開後も試合のベースは引き手争い。藤永は釣り手で下から前襟を確保、握った位置自体は低いが藤永は相手の肘を巧みに抱え、あるいはずらすことで脅威度を細かく上げ続け、池田に決して安住できる形を与えない。釣り手に神経を使わされる池田は本来の戦線である引き手争いでも後手を踏むこととなり、1分38秒池田に片手の「指導」。手が詰まって来た池田今度は引き手で袖を持ちあっての攻防に応じるが、背中を抱えてくる藤永の前進を捌きかねる印象。右背負投に入るもこれを左大腰に引きずり出されて、窮屈な試合運び。

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藤永が池田から内股「一本」

藤永は前進。池田は左一本背負投を交えながら引き手争いを続けるが、藤永構わずにじり寄り続け、場外際が近づいたところで左釣り手で右肩越しに背中、引き手で袖を持つ良い形をついに完成。池田は引き手を抱き込んで局所的な有利を作ってはいたが、これがかえって仇。藤永が腰を切ると返せると踏んだか背に手を回して抱きついてしまい、これは藤永得意の左内股の術中。藤永は大腰様の回旋に相手を巻き込みながら作用足を揚げて池田の重心を持ち上げると、ケンケンで体ごと左前隅に押し込む。最後は耐えた池田を引っこ抜くべく軸足ごとジャンプ、池田の両足が畳から離れて吹っ飛び「一本」。試合時間2分39秒、藤永が1人を抜き返し、これで両軍のスコアはタイとなる。

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藤永龍太郎と水上世嵐による中堅同士の対決

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1分以上にわたる組み合い、水上が右背負投を入れ続ける

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焦れた藤永の左内股を狙いすまし、水上の内股透「一本」

第4試合は中堅同士の対決、畳に残った藤永に、天理の中堅水上世嵐がマッチアップ。高校選手権では水上が内股透「技有」で勝利しているカード。

藤永が左、水上が右組みのケンカ四つ。水上激しく釣り手を振るが藤永構わず前進。水上の左内股も巧みに捌いて二本持ったまま接近を続け、まず左浮腰、さらに避けた相手をそのまま歩かせておいての左小内刈で先制攻撃。以降水上が右背負投、藤永が左体落と左内股のコンビネーションで攻め合うがともに効なく、攻めが止まった1分23秒双方に消極的との咎で「指導」。

これを受けて水上が抱きつきの右大内刈、しかし藤永が後帯を握って左体落に切り返してあわやポイントという攻防が一合。この時点で試合時間は1分48秒、そしてここから1分以上にわたり、お互いが組み合ったまま、切り離さないままの攻防が続くこととなる。水上は右背負投、右背負投、さらに低い右大内刈と散発ながら技を積み、敢えて切らぬまま捌き続ける藤永は形上後手を踏む。主審は的確に攻撃の準備動作と判断して試合を止めずに観察を続けるが、いつ藤永に「指導」が宣せられても文句の言えない状況。水上の技が止まると、双方が組み合って間合いを探る静かな状況が5秒、6秒。危機を感じた国士館の選手たちから「技を掛けろ!」「払腰とか掛けろ!」と声が掛かる。

我慢できなくなった藤永ここで吸い寄せられるように飛び込みの右内股。しかしこれは明らかに誘っていた水上の術中。水上上半身を預けたまま脚を高く揚げて見事に透かし、空転した藤永の体を巧みにコントロール。背負投様に腕を利かせて被さると藤永畳に沈んで文句なしの「一本」。天理、これで再び1人差をリード。国士舘は先鋒戦で負った負債がどうしても返し切れない。

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道下新大が水上から小外掛「技有」

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道下は小外掛「一本」も追加して完勝

第5試合は畳に残った水上が右、国士舘の副将道下新大が左組みのケンカ四つ。道下長身を利して水上の組み手操作を踏みとどまって止め、引き手を掴むと思い切った左足車。さらに左大外刈に飛び込んでとスケール感ある攻撃を継ぐ。手ごたえを得た国士館サイドからは「詰めて足車!」とこの戦い方を追認する形で檄が飛ぶ。道下が左払腰を2連発した1分3秒、水上に「指導」。続く展開も道下が水上を場外際に追い詰め思い切った左大外刈、水上潰れて「待て」。水上は組み際の大内刈に活路を見出すが道下が反応良く返し却って危機、ここから道下は背中に食いついて寝技を展開、めくられて抑え込まれかかった池田は力を振り絞って反転、なんとか「待て」を引き出す。
手が詰まった感のある水上、続く展開で組み合うなり思い切った右内股。しかしこれには池田本来の力感はなく、戻ったところに道下の左小外掛が襲い「技有」。道下はここから三角で攻め、池田は体力をさらに大きく削られてしまう。

もはや仕留める段階と踏んだ道下、近い間合いで組み合うと作用足の膝を揚げて数度前技の牽制。ここから左小外刈を当てると水上が右内股で反応、道下得たりとばかりに左小外掛で踏み込んで押し倒し「一本」。試合時間2分43秒、道下の勝利でまたもやスコアはタイに戻る。

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副将同士の対決、開始から激しい攻防

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山中瞭がペースを掴んで道下を攻める

第6試合は副将同士の対決、畳に残った道下、天理の山中瞭ともに左組みの相四つ。試合が始まるなり山中が左内股を放てば、応じた道下はクロス組み手から左大内刈、押し込まんと前進したところを背についた山中が後の先を狙って被るという激しい攻防で試合がスタート。山中は先んじて引き手を掴み、足技を交えながら奥襟を叩く迫力満点の戦いぶり。

以後は山中の鉈でたたき割るような攻撃を道下が持ち前の柔らかさで捌き、機を見て大外刈と寝技で攻め返すという構図で試合が推移。山中は技のパワーに加え機動力もありその攻めは重厚、しかし道下は安易に切らず敢えて片側の袖を与えたままリアクションを消し、図太く試合を進行。不思議な柔らかさで決定的な形を与えない。

残り1分17秒に山中の圧を片襟の払腰で剥がそうとした道下が両手を離して倒れてしまい、偽装攻撃の「指導」。しかし以降はなんとか耐え切り、この試合は結局引き分けに収着。ここまでの両軍の星取りはともに2勝2敗2分け、タイスコアのまま優勝の行方は大将同士の決戦に委ねられることなる。

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大将同士の決戦、斉藤立が大外刈で攻め立てる

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中野寛太の蹴り崩しに斉藤大きく崩れる

大将同士の対決は国士舘・斉藤立と天理・中野寛太ともに左組みの相四つ。互いの引き手の持ちどころを探る争いが一合あり、組み合うなり斉藤が釣り手の肘をあげて左大外刈。斜めから思い切り入り込むが、真裏に刈り込む最後の一段が足りず、中野が前に出て耐え切ってそのまま攻防継続。斉藤が落とされた釣り手を切り離さんとすると中野はそこに「小内払い」の形で足を入れ、足元を蹴られた斉藤が前に崩れて「待て」。試合時間は29秒。

中野やや横変形にずれ、斉藤の釣り手を落とすと思い切り支釣込足。さきほどの蹴り崩しに手ごたえを得ての一撃だが斉藤こんどは崩れず前へ。いったん離れた中野は組み際に片手の左背負投を狙うがすっぽ抜けて自ら畳を這う。

正面から組み合っては不利と判断した中野は再び横変形にずれて足を入れるが、斉藤は構わず両襟で接近、左内股を入れ、中野が耐えると数合のやり取りを経て思い切り左大外刈に入り込む。これは中野が技の戻りに合わせたハンドル操作で崩して凌いだが、直後の1分20秒中野に「指導」。

斉藤は引き手で襟を持つと奥襟を叩いて左内股、中野も思い切った左大外刈を一発見せて攻め返すがこれは斉藤が返しを狙って無力化。以後も両襟から大外刈、内股、さらに大外刈とことごとく「一本」を狙って大技を打ち続ける斉藤の攻撃姿勢に中野徐々に飲み込まれ、2分25秒にはついに2つ目の「指導」失陥。

中野これで肚を括ったか、近い間合いの組み合いに応じてほぼ正面からの近接戦闘。出足払を入れ、左大内刈、左大外刈と放って一発逆転のチャンスを狙う。しかし斉藤ほとんど切ることなくこれを受け切り、3分15秒に左体落に潰れたところで「待て」。

非常に珍しい斉藤の掛け潰れ。あるいは攻め疲れか、中野にもまだチャンスありかと思われたが、斉藤はやはりモノが違った。

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斉藤が左大外刈から大外落に連絡、中野が右引き手を背に持ち替えると拮抗が崩れる

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中野吹っ飛んで「一本」

ここで斉藤が引き手で襟、釣り手で奥を得て左大外刈に踏み込むと、察知した中野は先んじて膝車を軸足に当てる。しかし斉藤崩れ切らず、背筋を伸ばして体勢を直すなり左大外刈。近い間合いで受けてしまった中野、一瞬の膠着ののち覚悟を決めて相手の釣り手を抑えていた右引き手を肘から胴に抱き替えるが、この瞬間力の均衡が崩れて崩落。斉藤が大外落に連絡する形で前に体を倒すと頭を抱えられる形となった中野は背中から落下、バウンドした勢いで前回り受け身を取った体で立ち上がるが、振り向いたその先に見えたものは主審が高々掲げる右手。

3分30秒、熱戦ここに決着。斉藤の「一本」で国士館2年ぶりの金鷲旗大会制覇が決まった。

国士舘高○不戦1人△天理高
(先)長谷川碧△背負投(0:14)〇植岡虎太郎(先)
(次)酒井陸×引分×植岡虎太郎(先)
(中)藤永龍太郎〇内股(2:39)△池田凱翔(次)
(中)藤永龍太郎△内股透(2:52)〇水上世嵐(中)
(副)道下新大〇小外掛(2:43)△水上世嵐(中)
(副)道下新大×引分×山中瞭(副)
(大)斉藤立〇大外落(3:30)△中野寛太(大)

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試合終了、エース斉藤の帰還を待つ国士舘の面々

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優勝決定も岩渕公一監督は念入りな訓示

まず、斉藤は強かった。右膝に痛みが出たため追い込んだ稽古を行えていなかったという事情を抱えながら、しかも今大会初めての出動が決勝の最終戦というプレッシャーがかかる状況で、かつ相手が「最強の挑戦者」である中野寛太という三段重ねのハードルの中でしっかり力を出し、あくまで投げ切って「一本」で勝利した。昨年度大会、実力十分ながら精神的に閉塞して崇徳・長岡季空の袖釣込腰に沈んだあの戦いを思い起こすに、この一年の斉藤の成長はやはりすさまじいものがある。今大会強さの反面かなりの隙も見せた国士館チームであるが、「斉藤の強さ」という最大のストロングポイントは堅持、どころか一段その絶対性を増した感すらある。

そして、国士舘もやはり強かった。隙を見せた、と幾度も書かせて頂いたが、2年生中心のチームが、しかもこれだけ黒星を喫しながらあくまで「勝ち」を重ねることで全戦押し切ってしまったその層の厚さはやはり他校を圧するものがある。ただし、次に待ち受けるのは「点取り制」のインターハイ。斉藤がいかに強くても1点は1点、簡単に言って他の4戦で2点取ってしまえば大駒・斉藤の存在を無力化出来てしまうレギュレーションだ。この「斉藤以外を狙う」という点において、他校に希望を与えてしまった大会であるとの観察もまた否めない。決勝、先鋒という職責にありながら「秒殺」で畳に沈んだ長谷川の振る舞いなどは点取り勝負ならまさしく致命傷。三冠獲得には、一段チームを締めなおす必要があるだろう。

希望はMVP級の活躍を見せた藤永。勝ちもするが負けもするという今大会国士舘の典型のような星取りになってしまったが、藤永の場合は「なかなか引き分けられない」というよりもあくまで勝ちを狙い続けたがゆえとも解釈出来る。決勝で喫した内股透「一本」などにこれは端的。この敢闘精神、あくまで自分が仕事をやりぬくという強い意志で最後まで戦い抜いた経験は間違いなくインターハイに生きるだろう。

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敗れた天理だが、全国優勝に値するレベルの戦闘力を見せた

最後に、天理の強さ、逞しさがひときわ印象に刻まれる大会でもあった。3年生レギュラーの練度、士気、戦闘力とも極めて高し、2年生と1年生に将来有望な大型がおり、そしてエースには高校生にして全日本選手権出場という栄を得た高校無差別王者・中野寛太が座る。ざっくり言って国士舘がいなければ、いや、斉藤立の存在がなければ「三冠」獲得すらあり得た好チームではないだろうか。齋藤涼監督は大会前「天理は伝統的にインターハイ重視」と金鷲旗をその準備と位置付けるコメントを発していたが、であれば本番に向けて十二分に「仕込み」が出来た、手ごたえ十分の大会ではなかったか。インターハイの戦いぶり、まことに楽しみである。

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優勝の国士舘高

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岩渕監督が胴上げで宙を舞う

【入賞者】
(エントリー330チーム)

優 勝:国士舘高(東京)
準優勝:天理高(奈良)
第三位:日体大荏原高(東京)、大牟田高(福岡)
優秀校:西日本短大付高(福岡)、福岡大大濠高(福岡)、木更津総合高(千葉)、作陽高(岡山)

優秀選手:斉藤立、藤永龍太郎(国士舘高)、中野寛太、植岡虎太郎(天理高)、平山才稀(日体大荏原高)、森健心(大牟田高)、安部光太(西日本短大付高)、中西一生(福岡大大濠高)、板東虎之輔(木更津総合高)、高橋翼(作陽高)

国士舘高・岩渕公一監督のコメント
「春を勝っているので、この金鷲旗も絶対に獲りたいと思っていました。今は何よりホッとしています。試合前には全員で優勝しよう、その気持ちを試合で出しなさいと伝えました。 (―練習の成果は出せましたか?)良いところも悪いところもありますが、斉藤ひとりではなくチーム全員で戦うことが出来た。成果は出せたと思います。(―決勝は取って取られての展開になりましたね?)もっとガンガン攻める試合でも良かった。先鋒の長谷川は引き手争いからじっくり入る手もあったが、取りに行ったところが本人が硬くなっていて、一発食ってしまった。藤永は巧く試合をしていたが、あそこ(第4試合)だけ取ってやろうと思い切っていってしまった。ああいう状況でケンケンの内股ならともかく、追い込みで行くのは内股透のまさしく『餌食』。まだやるべきことがありますね。(―春に大活躍した安藤選手を下げましたね?)準々決勝、準決勝と試合を見て、春に見せた安藤の技のリズムは相手に読まれているなと感じましたね。だから代えたわけではないですが、彼もインターハイまでやることがまだまだあります。(―斉藤選手、初戦が大一番になりました)本当は1試合か2試合やってからでないと、実はスタミナを出しきれない。そこは不安でしたし、斉藤は右膝を少し痛めていて、下半身のトレーニングが出来ていなかった。それは試合に出てしまっていたなと思います。(―どんな状況での怪我でしたか?)彼は連続技が効くので『3発続けて掛ける』ことを続けていたのだけど、160キロの体重でこれをやり過ぎるとやっぱり痛めてしまう。もちろんこれは理想としては出来なければいけないので、これからですね。190センチという身長を考えると、もう5キロくらい絞ったほうがいいかなとも思います。(―対中野選手戦、前回と比べると?)組み手は中野君有利でしたね。(引き手で)襟を持ってしまって、そこが(時間が掛かった)理由だと思います。課題はまだまだ一杯、本人も良くわかっていると思います。(―三冠獲得まであと1つになりましたね?)チャンスはなかなか巡ってくるものではありません。チーム一丸となって、8月のインターハイで優勝します。」

※ eJudoメルマガ版8月7日掲載記事より転載・編集しています。

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