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東海大無失点のまま決勝へ、大熱戦の第2試合は筑波大が国士舘大に逆転勝ち・平成30年度全日本学生柔道優勝大会男子マッチレポート②準決勝

(2018年7月12日)

※ eJudoメルマガ版7月12日掲載記事より転載・編集しています。
東海大無失点のまま決勝へ、大熱戦の第2試合は筑波大が国士舘大に逆転勝ち
平成30年度全日本学生柔道優勝大会男子マッチレポート②準決勝
取材:eJudo編集部
文責:古田英毅
撮影:乾晋也、辺見真也

■ 準決勝
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東海大は本命オーダーで布陣

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天理大は再びジョーカー役のツェツェンツェンゲルオドフーを起用

第1試合は3連覇を狙う東海大と、そのライバルの日本大を下して4年ぶりに準決勝の舞台へと勝ち上がった天理大による一戦。開示されたオーダー順は下記。

東海大 - 天理大
(先)立川新 - 古田伸悟
(次)松村颯祐 - 河田闘志
(五)後藤龍真 - ツェツェンツェンゲルオドフー
(中)奥野拓未 - 高木育純
(三)太田彪雅 - 田中慎太郎
(副)村田大祐 - 白川剛章
(大)香川大吾 - 石山潤平

東海大はフルオーダー、配列もほぼ本命に近いと考えて良い手堅い陣形。

天理大も、準々決勝でいったん下げたツェツェンツェンゲルオドフーを再度投入して万全の布陣を敷いた。前衛は斬り込み役の古田伸悟に加速役としてツェツェンツェンゲル、後衛は勝負どころが来ると踏んだ副将に白川剛章、抑えの大将に石山潤平。要所に主役級を配した、前衛-後衛にそれぞれ重心のあるセパレート配置だ。

実績で一段上のレベルにある東海大の太田彪雅と香川大吾が負傷あがりでベストパフォーマンスを発揮できる状態ではないことを考えれば、両軍ともに絶対と言えるまでのポイントゲッターは不在。そして天理大は全員サイズがあり、大雑把に言ってどの選手も攻撃力の高さ以上に実は防御の凹みが少ない。月並みな言い方になってしまうが、両軍ともに抑えるべきところを抑え、取るべきところをしっかり取るという戦いを徹底するしかない布陣である。広がった前線の中でどれだけ密度高く弾幕を張り巡らせるか、そして突破口が開けた瞬間すぐさま矛を差し入れる集中力を保てるかどうか、総合力が試される戦いである。

この「長い戦線の拮抗」という大枠の前提に立って敢えて勝負のポイントを挙げていくとすれば。

まず両軍共通の山場として、天理勝ち上がりの原動力となったツェツェンツェンゲルオドフーに後藤龍真がマッチアップする五将戦が挙げられる。香川と太田が到底完調とは言えない現在の東海大を現場の畳で支えているのは、実は2年生の後藤。星勘定の上でも、そして「上り調子のニューカマー」というチームの勢いの加速器として機能しているその立場上も、東海大のキーマンになりつつある。一方のツェツェンツェンゲルは力関係を覆す抱きつきの一発が得手の模様、相手が誰であれ、そしてどんなに戦況不利であっても一発で試合を終わらせてしまう爆発力がある。「吹っ飛ばす」相手の自軍における立場が高ければ高いほど与えるダメージは増すわけだが、現時点の後藤はそのターゲットとしては申し分なし。この五将戦の帰趨はチームの勝敗に直接的に関わる天王山となる可能性がある。

挑む立場である天理大の側に立って理想のシナリオを考え、その思惑を分析してみる。最初の取りどころは軽中量級の選手である立川新に100kg級の古田伸悟がマッチアップする先鋒戦。立川は異次元級の組み手の練達者であるが変則組み手と防御姿勢に厳しい現行ルールであれば、3階級差の体格と力で塗りつぶすことは十分可能のはず。次鋒の河田は高校時代以来防御が脆いところがあり、壁一枚突破されると途端に崩れる可能性が高く、ここは前線の数少ない凹み。明らかに守りどころである。ここを耐えた上で、五将ツェツェンツェンゲルで一発食らわせてスコア上も雰囲気上も主導権を握ってしまいたい。この時点で最善シナリオであれば2-0か2-1。以降はどの選手も攻防のバランスが良く破綻の可能性は少ないはず、対太田戦を図太い田中慎太郎で乗り越えてしまい、スコア有利のまま白川剛章で突き放し、最後は石山潤平で手負いの香川を止める。勝負を掛けるべきは明らかに前半、ここで得たリードを背に勢いを保ったまま中盤を塩漬けて、後衛で試合をまとめてしまいたい。

一方の東海大としては、狙いどころの第一は相手方の防壁がもっとも脆い次鋒戦。幸いここには自身体重155キロの大型ながら典型的重量級選手狩りを得手とする松村が配されている。ここでしっかり取り、後藤が耐え、あとは奥野、太田、村田、香川の4枚ブロックで累計「プラス1」、最悪でもマイナスなしで乗り切ればいい。負のシナリオの極北は前衛ブロックでビハインドを負ってしまい、攻撃の組み立てが鷹揚な奥野が担ぎのある高木を追い掛け過ぎて失点、負傷明けの太田と香川が無理をすることになって焦って取り損なう、というところ。

と整理すると、両軍役者は前衛後衛にセパレート配置も、勝負のポイントはあくまで前衛にあるということがあらためてよくわかる。先鋒戦から五将戦までの3戦の勝敗が、直接試合の結果を左右するであろう。

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先鋒戦、古田伸悟が立川新の支釣込足を振り返す

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立川は巧みな組み手で古田に的を絞らせない

先鋒戦は東海大・立川新に天理大・古田伸悟ともに左組みの相四つ。古田は体格で圧すかと思われたが一手目にこだわり、立川と引き手側の確保を巡って手先の攻防を繰り返す。ついに釣り手で奥を得たところでがっぷりの組み合いに応じた立川が支釣込足、しかし古田呼び込みながら振り返して立川は大きく崩れる。力がダイレクトに伝わる組み方では、やはり体格に勝る古田が有利な模様。

この攻防を受けて古田がラッシュを掛けるかと思われたが、立川はここから巧みな位置取りと組み手で相手を減速。手を張って間合いを作り、引き手で襟を狙い、古田が奥襟を狙って釣り手を叩き入れると瞬間身をずらして肩越しクロスの「即座に攻めねば反則」の形を強いる。その後に「嫌なシナリオ」が待ち受けることを予感させる一手目、そしてやりたいことをことごとく一段ずらしてくる立川の威嚇と陽動を利かせた組み手の前に古田は慎重になってしまい、結果互いに組んでは切り、切られては組む「リセット」を繰り返すことになる。古田は明らかに付き合い過ぎ、1分31秒双方に「取り組まない」咎の「指導」。

その後も一手目の探り合いをベースに試合が進むが、2分過ぎに古田が支釣込足の形で立川の左を蹴り崩し、伏せた相手の後襟を掴み、脚に「足三角」に近い形で足先をひっかけてめくり回す。後襟の牽引が良く効き、手を持ち替えるとそのまま首を抱きかかえることに成功。体格差を考えれば抑え込みの完成が十分想起されるところだったが、立川は古田が首を抱く間に足を絡ませておりその形のまま耐える。古田が脚抜きを試みるが立川逆にじわじわ絡みを強め、ついに「待て」。この時点で残り時間は僅か1分7秒。

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次鋒戦、河田闘志が巻き込み潰れを図るが松村颯祐これを許さず

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引っこ抜いて豪快な裏投「一本」

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もはや「指導3」奪取は不可能な時間帯、古田はここでラッシュを掛けたいところだが、ゴールの見えた立川は引き手で襟を掴み、古田の奥襟襲来は瞬間巧みに首をずらしてクロスを強い、両手で突いて間合いを取り、と自在の進退。結局古田の見せ場は開始早々に支釣込足を振り返した一撃と、終盤に抑え込み掛けた「脚抜き」の、立ち、寝それぞれ1つのみに留まる。古田が的を絞り切れぬまま立川の巧さに捕まった格好で、この試合は引き分けに終わった。東海大が一段シナリオを引き寄せた形。

次鋒戦は東海大・松村颯祐と天理大・河田闘志ともに右組みの相四つ。松村が釣り手を高く両襟で組み、河田が応じる形で試合がスタート。組み合ったまま松村が前へ、正面で対峙することに心地悪さを感じた河田が位置をずらし、腰を切って牽制するという場面を経て、動きないまま40秒双方に消極の「指導」。

続く展開も双方が釣り手を高く持ち合うものの、前に出るのは常に松村。じわりと前進すると圧を感じた河田が右払腰を仕掛けるが、松村は二本を持ったまま揺るがず、さらに畳から足を離さぬままにじり寄るように前進。このあたりから河田はしきりに横変形に位置をずらし、あるいは釣り手を自らいったん切ることを繰り返し、明らかに松村の圧を捌きかねている印象。居心地の悪さに我慢できなくなった河田は右払腰、これが効かぬとみるや早々に釣り手をいったん離して内股巻込に入り直す。明らかに潰れて展開を切ろうとした技だが、松村は背筋を伸ばしたまま二本を持って崩れず。河田なりふり構わす両手を離して畳に手を着こうとするが、松村が崩れないためその手は宙を掻き、うつぶせにバンザイをしたまま宙吊りの形となる。ここで松村は二本脚を踏ん張って裏投一発。前に倒れようとする相手を後に根こそぎ引っこ抜く大技、両足を高く揚げて吹っ飛んだ河田は、体を「く」の字に曲げたまま頭から畳に真っ逆さま。迫力満点の一撃はもちろん「一本」、これで東海大が先制。勝利へのシナリオ分岐は2試合連続で東海大が取った。

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五将戦、後藤龍真がツェツェンツェンゲルオドフーの足元を蹴り崩す

そして試合は前衛の山場である五将戦へと引き継がれる。東海大は絶好調の後藤龍真、天理大は身長195センチの秘密兵器ツェツェンツェンゲルオドフーが登場。

左相四つのこの試合は、後藤が素晴らしい進退を披露。ツェツェンツェンゲルは長いリーチを利して相手の脇から背を抱えようと横変形のアプローチを試みるが、後藤は巧みな釣り手操作で正面に位置を直し、相手が回り込もうとするや瞬間支釣込足で蹴り崩し、決して脇を差させない。業を煮やしたツェツェンツェンゲルは肩越しに背中を引っ掴んで引込返を試みるが、十分心得た後藤はいったん両手を畳に着いて体を支えるとすかさず相手の足首を掴んでパス、抑え込みに掛かる。用意された出口に罠が仕掛けられていた体、かえってピンチを招いてしまったツェツェンツェンゲルがなんとか脚を絡んで耐え「待て」。

後藤はその後も組み手の手順を変え、片襟を交え、組み際の担ぎ技を入れ、引き手で裾を掴んで振り立ててと脇を差そうとするツェツェンツェンゲルの意図をことごとくその起こりで挫き続ける。ツェツェンツェンゲルは2分過ぎについに釣り手で脇を差すことに成功するが、後藤は瞬間その釣り手を脇に挟んで低く、かつ浅いまま固定。相手のバランスを不安定にさせたまま釣り手を振り立てると、嫌った相手の左を支釣込足で思いきり蹴り崩す。必殺の組み手に辿り着いたはずのツェツェンツェンゲル最後は棒立ちで場外に送り出され「待て」。抱えれば勝てるはずのツェツェンツェンゲルが、その必勝の形をそもそもまったく作り出すことが出来ない。2分半すぎにツェツェンツェンゲルが奥襟を叩く場面が生まれたが後藤早い判断でこれは潰れて流し、以後はあるいは釣り手を持って斜めにずれ、あるいは引き手で袖を制してと自在の組み手。残り23秒には焦ったツェツェンツェンゲルがクロス組み手のまま躊躇、大外刈を繰り出したときには既に「待て」が宣されており片襟の「指導」を食らう。

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残り6秒、後藤が左内股「技有」

続く展開、クロージングが見えた後藤は逆に釣り手で奥襟を叩く強気、引き手で袖を得ると頭を下げて、釣り手は高く、引き手は低くという完璧な形を作り出す。ここで取らねばチームの勝利なしと焦ったか、それともついに生まれた接近戦を絶好の機会ととらえたか、ツェツェンツェンゲルは後藤の釣り手を抱え込んで頭を上げると右小外掛を狙って体を相手の左後隅に進める。しかし瞬間これを呼び込んだ後藤が電光石火の左内股一撃、頭を下げて時計回りに体を捩じるとツェツェンツェンゲルの長い体が前屈して回転「技有」。

この時点で残り時間は僅か6秒。そのまま試合は後藤の優勢勝ちに終わることとなった。

相手の欲しい形に至るルートを全て封じ、焦った敵を誘い、思わずそれに乗った相手を呼び込んで一発投げることで試合を終わらせてしまう。後藤はまさしく120点の試合、大会ベストバウト級の出来栄えであった。

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奥野拓未は体格を利して図太く圧力、高木育純の背負投を潰す

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村田大祐が白川剛章の右内股を透かし鮮やか「一本」

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これで前衛3戦のシナリオ分岐は全て東海大が取ったこととなり、スコアは2-0。この時点で試合の趨勢はもはや決した。中堅戦は奥野拓未が高木育純を相手に「指導2」を失ったものの、長所である一種鷹揚な受けで試合を塗りつぶしてしっかり引き分け。続く太田彪雅もリスクを避け、ケンカ四つの田中慎太郎を相手に「指導1」対「指導2」のみに展開を減速したまま引き分け。

そしてスコア2-0のまま迎えた副将戦で村田大祐が美技を披露。ここで一本勝ちする以外にチームが生き残る術がなくなった白川剛章が1分43秒に右内股を当てる。村田が止めると、白川はいったん当てた作用脚をそのままに同じ軌道で力を籠めなおす。しかし村田は上半身の形を変えぬまま下半身のみを入れ替え、見事にこれを透かす。まさしく透かされることを避けるためにいったん当て、それから振り上げるというプロセスを踏んだはずの白川の作用脚は高くまっすぐ空を切り、村田が体を浴びせて鮮やか内股透「一本」。これでスコアは3-0、東海大の勝利が決した。

大将戦は負傷明けの香川大吾が石山潤平を相手に巧みに試合を塩漬けてスコアレスのまま引き分け。東海大は無失点試合を継続、ただの1点も失わぬまま決勝へ駒を進めることとなった。

東海大 3-0 天理大
(先)立川新×引分×古田伸悟
(次)松村颯祐○裏投(1:54)△河田闘志
(五)後藤龍真○優勢[技有・内股]△ツェツェンツェンゲルオドフー
(中)奥野拓未×引分×高木育純
(三)太田彪雅×引分×田中慎太郎
(副)村田大祐○内股透(1:43)△白川剛章
(大)香川大吾×引分×石山潤平

前衛3枚で事実上勝敗が決した一番。次鋒松村の裏投は圧巻だったが、なんといっても殊勲者は五将後藤。今大会最大のジョーカーを相手に試合を決定づける1点を挙げたのみならず、その完璧すぎる試合運びで感情的にも天理を沈黙させてしまった。戦術ロジックの高さ、それを実現させる具体的技術の巧みさと引き出しの豊富さは見事の一言。相手の本能に「位相の違い」を刷り込むような見事なパフォーマンス、以後の反撃の意志を摘むに十分の完璧な試合ぶりであった。

東海大は、戦力的にも対戦相性的にも、そして「再度挑戦を受ける側」という過去の因縁からももっとも嫌な相手であったはずの日本大との対戦がなくなったという幸運はあったが、それにしても無失点での決勝進出はやはり圧巻。過去の優勝チームを考える限り「苦戦ないままの決勝進出」は決して良い卦とは言い切れないが、そんな危惧すら塗りつぶすほどの安定感である。

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ここまで圧勝続き、準決勝の畳に姿を現した筑波大の面々

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オーダーが開示される

国士舘大 - 筑波大
(先)釘丸将太 - 野上廉太郎
(次)磯村亮太 - 石川竜多
(五)安田夢飛 - 鳥羽潤
(中)竹村昴大 - 田嶋剛希
(三)山下魁輝 - 佐々木健志
(副)飯田健太郎 - 佐々木卓摩
(大)久野壱虎 - 関根聖隆

準決勝のメインイベントともいうべき好カード。明治大との大一番を生き残った国士舘大と、ここまで圧勝続きの筑波大による決戦である。

両軍の陣容まことに分厚く、しかもちょっと珍しいほど盤面拮抗。試合展開の予想は非常に困難である。事前予測の段階で得点を確実に織り込めるのはまず副将戦における国士館大・飯田健太郎の勝利。これに続いて次鋒戦における石川竜多の得点、ここまでは前提条件として考えて良いだろう。エース相手に「失う駒」としては双方とも、少々語弊はあるがダメージが少ない。この両ポジションにおける両軍の星取り、損耗ともに互角。

残る5試合。安田夢飛と鳥羽潤による五将戦以外は、ともに攻撃型を揃えて単に「予想困難」というよりは「引き分けを考えるのが難しい」カードばかり。先鋒戦は釘丸将太に野上廉太郎ともに攻撃型で、斬り込み隊長役への自覚から攻め合いは必死。野上のリスク覚悟の吶喊柔道は試合を動かすこと間違いなく、対する釘丸は攻撃型ながら場合に応じて試合を塩漬けることも可能な巧者であるが、野上が前哨戦的な「ひとまず引き分け」の駆け引きに応じるタイプではなく攻撃的に来るであろうこと、また階級が2つ下の相手に対して「取れる」意識が前提条件として刷り込まれているであろうことから考えれば、無事に済む試合とは考え難い。中堅戦でマッチアップする竹村昂大と田嶋剛希は高校時代に全国制覇を経験した同窓生であるが、常の仲ならば「互いを良く知るゆえに勝負がつかない」こともあるこの同門同期という関係も、田嶋が一種空気を読まぬ超攻撃型であることと竹村が後の先が利いて重量級らしい一発と相手を嵌める試合巧者の面を併せ持つタイプであることを考えれば、試合が膠着することすら考え難い。全日本選手権でその高いポテンシャルを見せつけた山下魁輝にもっか絶好調の81kg級アジア大会代表の佐々木健志と互いの得点源がマッチアップする三将戦も、互いが危険すぎる相手であるゆえ「投げるしか生き残る方法がない」と双方腹をくくること必須。佐々木にすれば体格差を利して吹っ飛ばされる危機感が常にあり、一方の山下にしてみればどこからでも技に飛び込んでくる佐々木に懐で一発担がれる、あるいはハンパな技を裏投か横車に飛び込まれるという一種の危機感から、「投げて決める」勝負に出ることは間違いない。大将戦も、関根聖隆のアイデンティティが「片手であっても、大外落と背負投のコンビネーションで左右に攻めまくる」ことにある以上、久野壱虎もリアクションせざるを得ず、この試合が穏当に終わるシナリオもこれまた到底考え難い。まとめると、抑えの駒である安田夢飛が1階級下の鳥羽潤と戦う五将戦以外は、双方が、あるいは片方が極端な攻撃型であり現行ルール下では「点の取り合い」以外に考えられるシナリオがない、ということだ。

前述の通り、双方が前提にしていい得点は飯田と石川それぞれの「1」のみ。国士舘側に勝利の針が振れているのが体格差のある先鋒戦(釘丸-野上)で、あとはそれぞれの「勝負」に身をゆだねていくしかない。たとえば国士舘が先鋒戦でリードを得たとして、副将飯田による1点追加を織り込んで引き分け狙いで塩漬け試合を重ねる、ということは机上の星取り勘定的には可能だが、相手側に石川、田嶋、佐々木と極端な攻撃型が揃ったこの陣容ではロースコアゲームを狙って戦うこと自体が非常に危険。取りに行った結果としての引き分けは受け入れられるが、退いてしまうと相手方に取り返しがつかないほどの勢いを与えてしまう可能性がある。両軍ともにハイスコアゲームでの勝ちを考えるしかない、そして両軍双方に十分勝利の可能性がある、非常にタフな配列だ。

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先鋒戦、最終盤に釘丸将太が左背負投

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野上廉太郎吹っ飛び「一本」

先鋒戦は国士舘大・釘丸将太、筑波大・野上廉太郎ともに左組みの相四つ。双方一手目で袖を絞りたがり、絞っては切られ、切られては絞る厳しい組み手争い。野上が組み際に技に入り込む気配を見せるが釘丸巧みにブロック、55秒双方に「取り組まない」咎による「指導」。

直後釘丸が左大外刈から左背負投に連絡、相手の外側の回避ルートを塞いでからのこの一撃で低く潜り込むが、野上が跨いで腕挫十字固を狙った形のまま腹ばいに落ち「待て」。以後は厳しい組み手争いの中、釘丸が担ぎ技を狙い、野上が左一本背負投に払巻込で展開を切るという攻防が続く。一見拮抗だが、2分を過ぎたあたりから体格に勝る釘丸の圧力が目に見えて効き始め、野上はじわじわと防御戦に戦いのステージを押し込められていく印象。試合時間2分が迫るところで初めて両者がしっかり組み合うが、この形は釘丸有利。横変形のまま釣り手を高く持たれた野上は頭を下げられ、なんとか巻き込みで流して、じわりと苦境が続く。直後、釘丸が釣り手を片襟に入れてあおって左背負投、すっぽ抜けて野上が崩れ「待て」。かなり試合が煮詰まって来た印象あり。

残り時間1分、野上が引き手で相手の釣り手の袖を絞る形で二本を持ち、双方組み合っての攻防が現出。先に動いたのは釘丸、判断良く絞られた釣り手を片襟に差して左大外刈に脚を伸ばす。左に体を移すことを嫌った野上が背中側にぶらがって耐えると、釘丸得たりとそのまま左背負投。右に回り込んだ野上の体がすっぽ抜けるかとも思われたが、釘丸は相手の懐の中に入れた頭と肩のブロックで接触を保ち、これを支点に投げ切って「一本」。

釘丸は会心の表情で開始線に戻って服装を正す。無念の野上はしばし虚空を見つめたまま立ち上がれず。貴重な先制点は国士舘大の手に落ちる。

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次鋒戦、石川竜多が磯村亮太から大内刈で2つ目の「技有」

次鋒戦は国士舘大・磯村亮太が右、筑波大・石川竜多が左組みのケンカ四つ。動き良く引き手から先に掴んだ石川が牽制の大内刈を当てると、釣り手を突いて耐えていた磯村があっさり潰れ、やはり力関係は石川が上の模様。磯村なんとか間合いを確保したいところだが、リーチの長い石川が背中に腕を回して締めると一気に距離が詰まり、双方傷を負わずには終われない情勢。磯村下から釣り手を突くが、石川は一度前襟を上から持って相手の釣り手を落とし、次いで背中を確保、さらに今度は引き手で袖口を確保してほぼ完ぺきな組み手。ここから腰を切るとカウンターを狙った磯村が脇を差し、石川得たりとばかりに密着して体を開きながら左大内刈。磯村崩落、三審の合議があったがこれは「技有」。試合時間は38秒。

磯村再び釣り手を突いて間合いを取ろうとするが、石川が釣り手を首、さらに背中へ回して引き落とすと、引き手の袖も制されていた磯村耐え兼ねてほとんどバンザイをする形で潰れ「待て」。続くシークエンスでも石川が背中を確保すると、磯村は腰を引いたまま凌ぎ、石川はここに左大内刈、横走りに相手を動かしておいての左払腰と技を入れて揺さぶる。決して圧力を弱めず、しかも動きを止めずに移動を強いる石川に対し磯村は敢えてリアクションを控えることで必死に耐え続ける。しかし再三の陽動がさすがに堪えたか、石川が背に回した釣り手の位置を一段深めると我慢できずに脇を差してしまう。石川待っていましたとばかりに一瞬相手を引き出しての左大内刈、磯村は中途半端に相手の背を抱いたまま斜めに陥落「技有」。

試合時間は僅か1分23秒、石川の合技「一本」で試合終了。筑波大が追いつき、スコアは1-1のタイとなる。

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五将戦、まず鳥羽潤が安田夢飛から右背負投で「技有」先行

五将戦は国士舘大の安田夢飛と筑波大・鳥羽潤ともに右組みの相四つ。この試合は事前予測の空白域、ゆえにいずれかが1点を挙げれば直截に試合の行方を左右すること間違いなし。

絞り合いから、体格に劣る鳥羽がまず両袖の巴投から腕挫十字固に繋いで先制攻撃。さらに引き手を一方的に得て右一本背負投を放ち、潰れて「待て」。以後も機動力に勝る鳥羽が組み手を優位に進め、続く攻防も先に引き手で袖を得る。安田は釣り手から持った片手状態で応じてしまい、鳥羽は釣り手を片襟に差して激しく煽ると低い右背負投。安田これに引っ掛かって横転、「技有」。

リードを許した安田は奮起、引き手で襟、釣り手で奥襟を掴んで前へ。嫌った鳥羽は巴投、さらに相手の腕一本を抱え込んだ変則の巴投を放って展開を留保。以後も組んで前進圧力を掛ける安田、絞っては担ぎ技と捨身技で展開を流す鳥羽という同様の構図で試合が進むが、徐々に安田の圧力が効き始めてリードしている鳥羽の手が詰まり始める。3分を過ぎたところで安田が飛びついて奥襟を持つと、嫌った鳥羽が場外まで走って潰れて偽装攻撃の「指導」。試合時間は3分5秒、残り時間は55秒。

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主導権を奪回した安田が、ついに右大内刈「技有」で追いつく。

試合が再開されると安田再び飛びつきながら奥襟を叩いて右大内刈、鳥羽は思わず抱えて受けてしまう。安田は突進、釣り手で掴んだ首はすっぽ抜けたがそのまま投げ切って「技有」。
双方「技有」を得、累積警告は鳥羽に「1」。

ここからはもうミスが出来ない両者、やや失速して再び組み手争い。安田は度々飛び掛かるも前段の勢いはなく、これまでの内容からすれば少々意外なほど淡々と時間が過ぎる。袖の絞り合いから鳥羽が相手の釣り手を抱えて再び「一本巴投」に飛び込んで「待て」が掛かったところで残り時間は5秒。前段2戦の激しさを引き継ぐ形で投げ合いとなったこの試合は、結局引き分けに収束した。スコア1-1のタイ継続。

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中堅戦、田嶋剛希は竹村昂大を背負投で攻めまくる

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田嶋が相手の襟を釣り手に巻き付けて肘抜きの右背負投、しかし高く舞った竹村は腹ばいで着地。

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残り15秒、田嶋が右小外掛「一本」

中堅戦は国士舘大の竹村昂大が左、筑波大・田嶋剛希が右組みのケンカ四つ。重量級の巧者竹村、90kg級のファイター田嶋、2人は前述の通り国士舘高全国制覇時の同僚であり、互いの柔道を良く知る関係である。

まず田嶋が下から釣り手を確保、引き手を得て低く右背負投に潜り込むが、竹村やや崩れたのみで凌ぐ。竹村浅い内股で牽制、しかし田嶋は肩を入れる動作で竹村の釣り手を外して激しく煽り、右大内刈から右背負投。竹村の巨体大きく浮くが、脱力してぶら下がることで凌ぐ。

この攻防に以降の展開端的。田嶋はあるいは高く、あるいは座り込んで、あるいは肘を抜いてと次々異なる形で右背負投を繰り出し、竹村はこれをことごとく重心を抜いてぶら下がることで回避。竹村の側は体を捨てての左小外掛、田嶋の座り込みの背負投を待ち構えての左小外刈と要所で反攻し、田嶋圧倒的攻勢も試合の状況は予断を許さず。2分7秒、田嶋が肘抜きの右背負投を仕掛けた直後に竹村に対して消極的との咎で「指導1」。

直後、田嶋は釣り手を内側から持って高く抜くと、はだけた相手の襟を釣り手に巻き付けて肘抜きの右背負投。竹村の体が高い軌道で宙を舞う豪快な一撃、ポイントを想起した観客席どよめくが着地は腹ばい「待て」。試合時間は2分23秒、どうやらここまで主導権を取り続けた田嶋の分厚い攻撃が竹村の防壁を具体的に崩し始めた印象。

田嶋の連続攻撃は以後も止まず、一方の竹村は勇を鼓しての左内股と寝勝負志向で時間を使い、最終盤まで時計の針を進めることに成功。しかしこの終盤盛り返したことが逆に竹村の判断を鈍らせたか、残り15秒で背中を抱えての左内股、腰を入れて田嶋との接触を深くしてしまう。これまで周到に避けていたはずの、際に強い田嶋との密着「抱き勝負」。田嶋すかさず脇を差して受け止め、背中に回した釣り手で後襟を掴んで右小外掛。四指を襟に突っ込んだ引き落としが利き、グイと力を籠めると竹村の頭がガクリと滑り落ちて田嶋の眼下へ。田嶋胸を合わせて体を浴びせると竹村はバウンドする勢いで畳に落下、主審即座に右手を高く揚げて「一本」を宣告する。試合時間3分45秒、筑波大が2-1と勝ち越しに成功。

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注目の三将戦、山下魁斗が佐々木健志から支釣込足「技有」

そして迎えた三将戦の大一番は国士舘大の山下魁輝、筑波大・佐々木健志ともに右組みの相四つ。体格に勝り、かつ相四つというアドバンテージを存分に生かすべく山下は引き手で襟、釣り手で奥を握ってにじり寄る。佐々木は巴投で一旦この接近を剥がすとすぐに立ち上がり、引き手で脇下を突いて距離を取る。この「二本持って寄る山下」「引き手で脇を突いて間合いを作り、動きながら捨身技と担ぎ技に飛び込む佐々木」という構図がこの試合の基本構造。

山下は奥襟から片襟に持ち替えて煽って右大外刈、佐々木が場外に弾き出されて「待て」、続くシークエンスは佐々木が引き手で襟を握ると組み際に右背負投を2連発、小内刈から「巴十字」に繋いで応戦「待て」。山下は今度は引き手で襟を先に持って足車、釣り手から組み手を開始することを強いられた佐々木はしかし半身で相手の釣り手を捌きながら巧みに体勢を変え、山下に決定的な位置関係を与えない。

ここで佐々木が右背負投、さらに右小内刈と力強い連続技を披露、会場を沸かす。山下はこれを回り込んでかわしながらグイと奥襟を確保。佐々木は横変形にずれて、相手の釣り手を低く噛み殺しながら対峙。一瞬の拮抗。

前段の連続技に手ごたえを感じたゆえか、そこにリソースを注ぎ込んでしまったゆえ体が求めた一瞬の給油か、ここで数秒、佐々木は体格差のある相手とがっぷり組み合うことを受け入れてしまう。横変形ではあるが、いままで動き続けていた佐々木が初めて組み合ったまま止まったこのエアポケットを山下見逃さず、力感ある支釣込足一撃。頭を下げていた方向に一撃を食らった佐々木足元から根こそぎ掬われ、吹っ飛んで「技有」。佐々木素早く伏せて抑え込まれることは逃れたが、あまりにも決定的なポイント。試合時間は1分53秒。

勢いづいた山下は再び支釣込足、次いで2分5秒には思い切った右払腰を放つ。山下の作用足が利いたままその背後で佐々木が高く舞い、この瞬間はポイント確実かと思われたが、佐々木驚異的なバランスで畳に着地、間髪おかずに寝技で攻める。佐々木は以後体格差に怖じず猛追。2分半過ぎに佐々木が二段モーションの右一本背負投を放つと以後試合はやや膠着したが、2分50秒には山下の右大外刈を佐々木が敢えて受け入れ背中に食いついて裏投一発、両者きりもみ状に回転しながら場外に出て「待て」。

この攻防で佐々木はリミッターを外した模様、佐々木は以後引き手で脇を突かずに袖を持ち、リスクのあるがっぷり四つを敢えて受け入れて投げを狙う。佐々木の右大外刈を山下が振り返して「待て」、再びのがっぷり四つから山下が支釣込足、帯を持って佐々木を引き落として「待て」。

残り時10秒、佐々木最後の一撃は左一本背負投。しかし低く入ったこの技は山下にぶらさがる形となってしまい、山下が「腰絞め」に入り込んで「待て」。再開後、佐々木が組み付いて右大内刈を仕掛けたところで試合終了。この試合は山下の「技有」優勢による勝利に終わりスコアは2-2、内容差による筑波大リードに変わる。

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飯田健太郎が相手に横移動を強いて右背負投、佐々木卓摩はからくも腹ばいで着地

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飯田の右内股が「技有」

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飯田は右背負投で2つ目の「技有」、合技「一本」で快勝。

副将戦は国士舘大のエース飯田健太郎が右、筑波大の佐々木卓摩が左組みのケンカ四つ。
佐々木は釣り手を下から突くが、飯田は上から奥襟を掴んでしっかりこれを落とし、引き手も得て早々に優位を確定。釣り手の手首を立てて体を寄せていく。佐々木は股中に体落を落とす形で崩しに掛かるが飯田は動ぜず。場外に押し出そうとした佐々木を飯田が潰して「待て」。

続くシークエンス、飯田は組み手争いをせずに一発で横襟を確保。場外に出掛かった佐々木が戻ってくるとその動きに合わせて相手に右方向への移動を強い、スライドに合わせて低く右背負投。佐々木はたすき掛けに深く飯田の背に引っ掛かり、「おお!」という場内のどよめきとともに吹っ飛ぶ。しかしバランスの良い佐々木なんとか腹ばいで畳に落ちて「待て」。

佐々木は組み立てを変え、引き手を先に得て揺さぶるが飯田は動ぜず。落ち着いて二本を得ると右内股、さらに再度の内股で相手を跳ね上げると巻き込んでフィニッシュ「技有」。試合時間は1分5秒。

続く展開、組み手争いから飯田が抜け出し、釣り手を上から持って圧を掛ける。佐々木は左大内刈を仕掛けながら釣り手を高く揚げて背中を持ちに掛かるが、飯田は冷静にいなしてこれを防御。これを受けて持ちどころを探った佐々木の釣り手が離れた一瞬、飯田の右背負投が炸裂。低く潜り込んで膝を伸ばすと佐々木吹っ飛び「技有」。

1分53秒合技「一本」で副将戦終了。国士舘大が3点目を確保、1試合を残したこの時点でスコアは3-2となった。内容は国士舘大が「一本」2つと「技有」優勢1つ、筑波大が「一本」2つ。

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大将戦、関根聖隆は大外刈と背負投で久野壱虎を攻めまくる

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残り44秒、ついに関根の「一本大外」が決まって「一本」

大将戦は国士舘大の久野壱虎、筑波大の関根聖隆ともに左組みの相四つ。この試合の結果が及ぼすチームの勝敗の場合分けは、久野が勝利あるいは引き分けの場合は国士舘大の勝利、関根が「技有」優勢勝ちなら代表戦、関根が一本勝ちを果たせば筑波大の逆転勝利。

1年生の関根はこの場面にはまさしく適役、昨年桐蔭学園高を高校「三冠」に導いた大外落と背負投を組み合わせた一方的な攻めを繰り出して久野に迫る。試合が始まるとすぐさま引き手を持ち、「一本大外」、さらに左袖釣込腰で久野を崩す。続いて引き手で襟を掴んで左の「一本大外」から一本背負投に繋いだ26秒には久野に消極的との咎で「指導」。関根は以後も高低差をつけ、腕の抱え方を変え、大外落に大外刈、そして背負投に一本背負投と一方的に攻めまくる。組み手も巧み、必ず自身の右が相手の左半身を掴むところに帰結するシナリオに沿って一手目が設計されており、久野はほとんどなす術なし。二本持てば技のある久野だが、その前に片手状態から関根が技に入り続けるため、試合の様相はワンサイド。

58秒に三審が合議も、関根の技が片手状態からのものであることを考慮したかいったんスルー、しかし関根の技の厚みが増した2分9秒には久野に消極的との咎で「指導2」。

関根は以後も攻めまくり、片襟の左背負投で股中を潜り抜け、さらに釣り手で片襟を差して左大外刈、左一本背負投と繋いだ残り44秒で三審がまたもや合議。3つ目の「指導」確実かと思われたが、ここも意外や、試合は継続。

この合議の感、おそらく反則負けを覚悟していたであろう久野は命拾い。この中断で腹を括ったか試合が再開されると激しく前に出、組み付く。しかし迎え撃った関根が左大外刈。一本背負投の形に腕を抱えて背筋を反らした前技のフェイントが良く効き、こちらも体を反らした久野は後に踏ん張ったままこれを思わず抱きかかえてしまう。その死角から刈り足が襲った形、久野たたらを踏んで左後隅に崩れ、関根は背中でもたれかかるように追いかけ被さる。地響きを立てて久野の体が畳にバウンド、劇的「一本」。

拳を握りしめるガッツポーズを見せた関根が主審に注意を受ける中、国士舘サイドは淡々と敗戦を受け入れる。筑波大は劇的な逆転勝利、最高の形で決勝の畳に駒を進めることとなった。

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殊勲の1年生・関根を迎える筑波大の面々

筑波大 ③-3 国士舘大
(先)野上廉太郎△背負投(3:12)○釘丸将太
(次)石川竜多○合技[大内刈・大内刈](1:23)△磯村亮太
(五)鳥羽潤×引分×安田夢飛
(中)田嶋剛希○小外掛(3:45)△竹村昴大
(三)佐々木健志△優勢[技有・支釣込足]○山下魁輝
(副)佐々木卓摩△合技[内股・背負投](1:53)○飯田健太郎
(大)関根聖隆○大外刈(3:16)△久野壱虎

予想通りの投げ合い。7試合すべてで投技によるポイントがマークされるという死闘は筑波大の勝利に終わった。

両軍の戦力に差はなし、陣形から計算される双方の損耗も互角で、勝因敗因を軽々に語ることは難しい。国士舘勝利の配列上の「たられば」を探れば、飯田健太郎で取る駒のグレードを上げるということが考えられるが、連動して陣形が動くことを考えると、これですら決定的な要因にはなりにくい。後付けで試合を振り返れば竹村-田嶋戦であと十数秒竹村が我慢してくれれば、というシナリオ分岐が一瞬思い浮かぶが、田嶋がほぼ一方的に攻めた4分間の様相を思い起こす限り勝敗自体は妥当。

敢えて言えば、まとめの駒としての差か。少なくとも関根1枚の保有が筑波大を最後に救ったということは言って間違いないだろう。片手からでも前後左右に技が出せ、かつ、組み合わせのツールは全て大技、そして全ての技を攻勢演出ではなく「投げる」ために放つことが出来るという関根の柔道の団体戦への相性の良さが遺憾なく発揮された一番だった。桐蔭学園の高校三冠獲得の直接的な原動力となった「関根のやり口」が大学カテゴリでも十分通用することを証明した、筑波大にとってはこの試合のみならず以後の戦いに向けてもまさしく値千金の試合であった。

結果決まった決勝カードは、

東海大 – 筑波大

となった。

※ eJudoメルマガ版7月12日掲載記事より転載・編集しています。

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