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山梨学院大が5連覇達成、龍谷大、桐蔭横浜大ら新興勢力の躍進際立つ・平成30年度全日本学生柔道優勝大会女子5人制マッチレポート

(2018年7月09日)

※ eJudoメルマガ版7月9日掲載記事より転載・編集しています。
山梨学院大が5連覇達成、龍谷大・桐蔭横浜大ら新興勢力の躍進際立つ
平成30年度全日本学生柔道優勝大会女子5人制マッチレポート
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開会式に臨む昨年優勝の山梨学院大・泉真生主将

日時:2018(平成30)年6月23日
於:日本武道館

文責:林さとる/eJudo編集部
撮影:辺見真也/古田英毅・eJudo編集部

団体戦で学生柔道日本一を争う全日本学生柔道優勝大会(女子27回)、女子の最高峰カテゴリである5人制(先鋒・次鋒57kg級以下、中堅・副将70kg級以下、大将体重無差別)の競技は、今年も聖地・日本武道館に全国の厳しい予選を勝ち抜いた精鋭33校が集って行われた。

戦前の評判では、5連覇を狙う山梨学院大を筆頭に筑波大、環太平洋大、龍谷大を併せた昨年度のベスト4チーム、つまりは今大会の「四つ角シード校」がそのまま優勝候補。ただし、各校の選手名簿を見るとイキの良い新戦力が加入した東海大や桐蔭横浜大、スター選手不在ながら総合力の高さでブロック予選を制した東京学芸大や仙台大、福岡大など、現在上り調子の好チームが目白押し。大混戦が予想される。例年通り選手の実績と陣容で他を圧するものの全員がなかなか突き抜けられない山梨学院大、対照的に育成力抜群ながらどうしても駒の絶対値に難のある環太平洋大と、長年大学女子柔道シーンを引っ張った2強にもそれぞれ付け入る隙はあり、優勝の行方は予断を許さず。

本稿ではまずトーナメントをAからDの4つのブロックに割り、ベスト4までの戦いを簡単に振り返ってみたい。

■ 1回戦~準々決勝
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オープニングゲームで山梨学院大の先鋒・大和久友佳が鹿屋体育大の盛安寿紗から左内股「技有」

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3回戦、山梨学院大の中堅・新添左季が大阪体育大の井原千佳を左内股「一本」で一蹴

【Aブロック】

優勝候補筆頭の山梨学院大が第1シード。他のブロックに比べると比較的勝ち上がりやすい組み合わせだが、トーナメント表の直下には九州地区の強豪・鹿屋体育大が配されており、初戦(2回戦)からタフな一番が組まれることとなった。

[Aブロック2回戦]
山梨学院大 4-0 鹿屋体育大
(先)大和久友佳○合技[内股・横四方固](2:11)△盛安寿紗
(次)谷川美歩○優勢[技有・内股]△濵野未来
(中)新添左季×引分×牧田朱加
(副)瀬戸口栞南○優勢[技有・巴投]△飯野鈴々
(大)泉真生○優勢[技有・大内刈]△桒原佑佳

結果は山梨学院大の圧勝。先鋒の大和久友佳が左内股と横四方固の合技「一本」で先制すると、次鋒の谷川美歩も右内股「技有」で優勢勝ち。中堅戦はエースの新添左季が牧田朱加と引き分けてしまったものの、副将の瀬戸口栞南が巴投「技有」で飯野鈴々を下してチームの勝利を確定させる。最後は泉真生が皇后盃出場の難敵・桒原佑佳から大外刈「技有」を得て試合をまとめ、最終スコアは4-0だった。4勝のうち一本勝ちは1つのみとそれぞれの試合は競った内容だったが、得点上は一方的な大勝。本来得点源であるはずの新添が煮え切らない戦いで引き分けてしまったことが不安要素だが、難敵を無失点で下してまずは危なげなく3回戦進出決定。

勝負どころを勝ち抜いた山梨学院大は勢いを得、3回戦の大阪体育大戦も4-0の圧勝。前戦では冴えない姿を見せた新添も左内股「一本」(0:41)の快勝で、どうやらチーム全体が軌道に乗った模様。順調にベスト8に勝ち上がることとなった。

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3回戦、帝京科学大の大将・荒谷莉佳子が岡山商科大の岩崎未歩から左大内刈「一本」

一方、下側の山を勝ち上がったのは帝京科学大。こちらも山梨学院大と同じく初戦(2回戦)に山場が設定されていた。戦うは同じ東京地区の強豪・淑徳大。

[Aブロック2回戦]
帝京科学大 2-1 淑徳大
(先)神田澄香○反則(1:44)△廣澤未来
(次)石岡美樹△優勢[技有・一本背負投]○福井朱乃
(中)西尾直子×引分×野口あずみ
(副)幸田奈々○反則(3:05)△山内もも
(大)荒谷莉佳子×引分×井上舞子

帝京科学大は先鋒・神田澄香が相手の反則で勝利。これでリードは得たものの、次鋒の石岡美樹が福井朱乃に一本背負投「技有」で敗れると、「階級落ち」で出場した中堅西尾直子も野口あずみと引き分けてしまう。内容差でリードしてはいるものの、決して良いとは言えない流れ。しかし、ここで奮起した副将の幸田奈々が山内ももから「指導」3つを引き出し値千金の1点を獲得、この時点でチームの勝利を決める。消化試合となった大将戦、荒谷莉佳子と井上舞子による大型対決は引き分けに終わり、スコア2-1で帝京科学大の勝利が決まった。

大一番を制した帝京科学大は、続く3回戦では岡山商科大に4-0で快勝。Aブロックの準々決勝カードは山梨学院大 - 帝京科学大となった。

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Aブロック準々決勝、山梨学院大の先鋒・大和久が帝京科学大の神田澄香から右背負投「技有」

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山梨学院の大将・泉が帝京科学大の荒谷から右小外掛「技有」

[Aブロック準々決勝]
山梨学院大 3-0 帝京科学大
(先)大和久友佳〇裏投(3:56)△神田澄香
(次)谷川美歩×引分×石岡美樹
(中)新添左季〇反則[指導3](2:38)△西尾直子
(副)瀬戸口栞南×引分×幸田奈々
(大)泉真生〇合技[小外掛・横四方固](1:50)△荒谷莉佳子

先鋒戦は山梨学院大の大和久友佳、帝京科学大の神田澄香ともに左組みの相四つ。1分20秒にまずは神田が左大内刈で「技有」を先行する。しかし、ここから大和久は右袖釣込腰と左大外刈で激しく攻め、残り33秒に右背負投「技有」を得てポイントをタイに戻すことに成功。さらに引き分けが濃厚となった残り4秒に相手の左大外刈を豪快な裏投にとらえて勝ち越しの「一本」。大和久の地力が神田の覚悟と、帝京科学大の勢いを弾き返したという一番であった。これで山梨学院大が1勝を先行。

次鋒戦の引き分けを受けての中堅戦では、両校ともにエース格が出動。新添左季と西尾直子が登場するが、この日は両選手ともに調子はいまひとつ。圧を掛けながら前に出る新添を西尾が凌ぐという形で試合が進み、大きな動きがないまま淡々と軽量の西尾に「指導」が積み重なっていく。結局、この試合は「指導3」による西尾の反則負けで新添が勝利。3試合を終えて山梨学院大が2-0と大幅リード。

副将戦は一本負け以外ならチームの勝利が決まるという状況をよく心得た瀬戸口栞南が幸田奈々と手堅く引き分け、大将戦を待たずに山梨学院大の勝利が確定。続く大将戦では泉真生が実力者荒谷莉佳子から小外掛と横四方固による合技「一本」で快勝、最終スコアは3-0まで伸びた。山梨学院大は完勝、無失点のままベスト4入り決定。

[Aブロック2回戦]

山梨学院大 4-0 鹿屋体育大
大阪体育大 4-0 星槎道都大
帝京科学大 2-1 淑徳大
岡山商科大 4-1 東北福祉大

[Aブロック3回戦]

山梨学院大 4-0 大阪体育大
帝京科学大 4-0 岡山商科大

[Aブロック準々決勝]

山梨学院大 3-0 帝京科学大

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2回戦、同点で迎えた副将戦で桐蔭横浜大の杉山歌嶺が環太平洋大・青柳麗美から内股返「技有」を獲得

【Bブロック】

Bブロックでは2回戦でジャイアントキリングが発生。第4シードで昨年3位、戦力の充実具合から今年度の対山梨学院大一番手に挙げられていた環太平洋大が、桐蔭横浜大にロースコアゲームを強いられた末にまさかの初戦敗退を喫した。

[Bブロック2回戦]
桐蔭横浜大 1-0 環太平洋大
(先)若藤唯×引分×山内美輝
(次)櫻井眞子×引分×小倉葵
(中)嶺井美穂×引分×田中志歩
(副)杉山歌嶺○優勢[技有・内股返]△青柳麗美
(大)山口凌歌×引分×井上あかり

昨年のレギュラーが多く残る環太平洋大は中堅以降に全日本強化選手3枚を並べた強力布陣。一方の桐蔭横浜大は先鋒に新戦力の若藤唯、中堅には先月の関東学生柔道優勝大会から本格的な競技復帰を果たした2016年グランドスラム東京63kg級2位の嶺井美穂を置き、2014年に高校2年生で全日本ジュニア70kg級を制した杉山歌嶺、中学・高校カテゴリで重量級の強者として活躍した山口凌歌の上級生コンビが後衛を固めるというなかなかの好布陣。

先鋒戦、次鋒戦は両チーム一歩も譲らぬまま2戦連続の引き分け。エース同士が激突した嶺井と田中志保による中堅戦も引き分けに終わり、3戦を終えて両チーム得点がないまま試合は後半戦へと突入する。

桐蔭横浜大の副将は3年生の杉山歌嶺。昨年講道館杯3位の大型新人、朝飛七海を抑えての起用だ。一方の環太平洋大は昨年の全日本ジュニア選手権70kg級王者の青柳麗美。ポイントゲッター同士の対戦であるが近年の実績では青柳が上、環太平洋大としてはここで確実に1勝を上げておきたいところだったが、この日の杉山は絶好調。1分すぎに青柳が場外際で仕掛けた左内股を体を捨てながら捲り返して内股返「技有」を先行する。リードを許した青柳は怒気を発して組みかかるが、杉山はこれを捌きつつ右内股を中心に攻め続け、最終盤には右内股と右大内刈であわやポイントかという場面も作るなど優勢のまま試合を終える。ついにスコアボードに得点が刻まれ、1試合を残してスコアは1-0。

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環太平洋大の大将・井上あかりが桐蔭横浜大の山口凌歌を寝技で攻める

桐蔭横浜大が「技有」優勢による1勝をリードしての大将戦は、桐蔭横浜大の山口凌歌、環太平洋大の井上あかりともに右組みの相四つ。
分ければチームの勝利が決まる山口は重心の低さを存分に生かして組み手争いと袖の絞り合いに相手を引きずり込み、危うい形になれば担ぎ技で掛け潰れるという典型的な凌ぎの姿勢。昨年度講道館杯78kg超級の覇者である井上は寝技の巧者だが立ち技の切れ味に欠け、山口の仕掛ける「手順に時間を掛ける攻防」に嵌められて試合は膠着。両者にポイントがないまま試合は2分30秒過ぎまで進行する。2分40秒、ついに寝勝負のチャンスを得た井上は脇を掬いながら相手の下に潜り込み、肩固で抑え込む得意の形を狙う。これがこの試合最大の山場であったが、山口必死に拘束を逃れ、井上はあと一歩決め切ることができず無念の「待て」。直後の攻防で山口に首抜きによる「指導1」が与えられたものの、以降はポイントの変動がないまま試合が終了。この大将戦は引き分けとなり、結果スコア1-0で桐蔭横浜大が3回戦進出を果たすこととなった。

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勝利決定の瞬間の桐蔭横浜大ベンチ

優勝候補の環太平洋大はまさかの初戦敗退。青柳がヘルニアから復帰したばかり、「試合中、技を掛けたときに『ここまで力が入らないのか』と気づいた」とのことで台所事情は相当厳しかったようであるが、これはあくまでディティール。敗因は最強の挑戦者というポジションであったはずの同校が受けて立つ立場に回ってしまったこと、そして桐蔭横浜大の戦力と勢いがそれを飲み込むに足るものであったという2点に尽きるだろう。

桐蔭横浜大は全員が殊勲者、チームがまさに一丸となって金星を得た。杉山の得点も素晴らしかったが、講道館杯王者を相手に気持ちで引かず値千金の引き分けをもぎとった山口の働きも出色であった。高校時代、強さ十分ながらここぞという場面で精神的に閉塞しむしろチームの状況と噛み合わない柔道を繰り広げることが多かった山口の人が変わったような「フォア・ザ・チーム」の献身ぶり、必死の戦いぶりには桐蔭横浜大のチームマネジメントの高さが良く表れている。山口にとっては全国中学校大会個人戦制覇以来の、ベストゲームだったのではないだろうか。

劇的な勝利で勢いに乗る桐蔭横浜大は3回戦でも好チーム日本大を3-1で撃破。準々決勝ではBブロック下側の山を2回戦で天理大に5-0、3回戦で金沢学院大に4-0と無失点で勝ち上がってきた帝京大を迎え撃つこととなった。

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Bブロック準々決勝、桐蔭横浜大の副将・杉山が帝京大の工藤七海の右大外刈を谷落で返して「技有」を奪取

[Bブロック準々決勝]
桐蔭横浜大 1-0 帝京大
(先)若藤唯×引分×郡司風花
(次)櫻井眞子×引分×栗田ひなの
(中)嶺井美穂×引分×西村満利江
(副)杉山歌嶺〇優勢[技有・谷落]△工藤七海
(大)山口凌歌×引分×奥本華月

桐蔭横浜大の勢いと東京学生優勝大会における帝京大の敗戦の内容、そして前衛の並びからすればワンサイドゲームというシナリオすらありえたこの試合だが、帝京大の前衛が良く凌いだことで中堅戦まで終わって両チーム得点なし。しかし、迎えた副将戦でこの日好調の杉山が2分55秒に工藤七海の右大外刈を谷落に切り返して「技有」を奪い、ついに試合が動く。杉山はこのまま優勢勝ちを収め、1試合を残して桐蔭横浜大が1勝をリード。ビハインドを負っている帝京大は大将戦で最低でも「技有」が必要な状況に追い込まれる。続く試合はこのバックグラウンドを背景に奥本華月が積極的に前に出るも、試合巧者の山口は両袖を絞り込んでこれをしっかりブロック、際を作らないまま「指導1」を失ったのみでしっかりと引き分ける。結果最終スコア1-0、接戦をものにして桐蔭横浜大がベスト4進出を果たすこととなった。杉山が取り、山口が凌ぎ切るパターンは前戦同様。両者ともまたもや素晴らしい働きであった。

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2回戦、帝京大の中堅・西村満利江が天理大の中林絢から右内股「技有」

[Bブロック2回戦]

桐蔭横浜大 1-0 環太平洋大
日本大 ①代-1 武庫川女子大
帝京大 5-0 天理大
金沢学院大 4-1 富士大

[Bブロック3回戦]

桐蔭横浜大 3-1 日本大
帝京大 4-0 金沢学院大

[Bブロック準々決勝]

桐蔭横浜大 1-0 帝京大

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3回戦、国士舘大の先鋒・松井恋が筑波大の柴田理帆から内股透「技有」

【Cブロック】

シード校は昨年度準優勝の筑波大。2回戦から出場した同校はまず高岡法科大をオール一本勝ちの5-0で一蹴。3回戦では初戦(2回戦)でこちらも別府大を5-0で破って勝ち上がってきた国士舘大とマッチアップすることとなった。

[Cブロック3回戦]
国士舘大 2-0 筑波大
(先)松井恋○合技[内股透・崩袈裟固](3:20)△柴田理帆
(次)萩野乃花×引分×明石ひかる
(中)齋藤百湖×引分×中江美裕
(副)池絵梨菜○優勢[技有・背負投]△都留麻瑞
(大)斉藤芽生×引分×粂田晴乃

先鋒戦、斬り込み役を任された筑波大の主将・柴田理帆が松井恋に内股透「技有」から崩袈裟固で抑え込まれてまさかの一本負け。さらに筑波大はここから次鋒の明石ひかると中堅中江美裕が試合を壊すリスクを恐れてか状況に比して淡白な戦いで4分を消費してしまい、大事な中盤戦を2戦連続の引き分けで終えてしまう。残り2戦のこの時点でスコアはいまだ0-1。対戦配列を眺めれば筑波の勝利シナリオは柴田と中江が取って他が分けることにあったはずで、この2人が畳から下がった時点でのビハインドというこの状況は、もはや完全に国士館の試合。

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国士舘大の副将・池絵梨菜が打点の高い右背負投で筑波大の都留麻瑞から「技有」を奪う

続く副将戦、国士舘大はエースの池絵梨菜が登場。対する筑波大は1年生の都留麻瑞が畳に上がる。1点ビハインドという状況ではあるが実力差と柔道の相性を考えれば筑波大としてはむしろこれは守りどころ。大将戦のカードはこれまでの実績から引き分け以外の結果が考え難い、かつどちらかというと国士舘大有利の斉藤芽生-粂田晴乃であるが、事ここに至れば筑波大サイドに出来得る現実的な最善は都留がなんとか引き分け、大将戦で相手方に「失敗すれば敗戦」のプレッシャーを掛けること。引き分けを狙って攻めるうちに流れを掴み、1点を得て追いついて襷を繋ぐのはあくまでその先にある「足し算」のボーナスシナリオだ。

池が左、都留が右組みのケンカ四つ。国士舘大としてはエースの池でなんとしても試合を決してしまいたいところ。一方の筑波は前述の通りしっかりとここを分けて実力者粂田晴乃が控える大将戦での逆転に可能性を繋ぎたい。結果から述べるとミッションを達成したのは池。序盤に片襟の右背負投で打点高く投げ切り「技有」を獲得、以降は事故が起きないよう慎重に試合を進め、都留の右内股を中心とした猛攻を受け止めきってチームの勝利を決める2勝目をマークした。続く大将戦は国士舘大の斉藤芽生が失意の粂田と引き分けて終戦。最終スコアは2-0、好チーム国士舘大が、先鋒松井の上げた1勝を橋頭堡にしぶとい戦いぶりで昨年の準優勝校筑波大を下した。

筑波大は先鋒戦の敗戦をきっかけにチームが機能不全に陥った感あり、実力を出し切れないまま畳を去ることとなった。評としては「柴田が取られる」という負のシナリオ分岐に対して心理的、作戦的な準備が十分ではなかったのではないかということになる。柴田の敗戦が攻めに攻めまくった中で一発食った「ポカ負け」という衝撃度が高いものであったことで、頭と体が固まってしまったのではないか。盤面を考えれば「指導3」でも何でも遮二無二もぎ取りに行かねばならないはずの中江が、じっくり戦いながら技を散発することで「引き分けで十分仕事になる」立場の相手を結果的に利してしまった中堅戦などは状況と戦い方がまったくマッチしておらず、この「負のシナリオの準備不足」が端的に現れた試合と観察できる。衝撃から立ち直るのに2戦を費やしてしまい、気が付いたときにはもはや逆転不可能なところまで戦況が進んでしまっていたという印象だ。ベンチが中江の仕事を明確に整理して送り出すところまでは必須のはずであるが、柴田が主将であり指導陣の評価と信頼が極めて厚い選手であったことまでを考えると、ひょっとすると敗戦の衝撃はベンチワークにまで及んでいたのかもしれない。

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3回戦、東海大の次鋒・香川瑞希が国際武道大の岡茉里から右体落「一本」

一方、Cブロック下側の山を勝ち上がったのは昨年ベスト8の東海大。1年生に富沢佳奈と香川瑞希という、インターハイと高校選手権それぞれの57kg級王者が加わり前衛の戦力が大幅アップ。さらに70kg以下のポジションには2016年グランドスラム東京3位で昨年のブダペスト世界選手権時には世界ランク1位まで上り詰めた強豪エルビスマーロドリゲスがエントリーされ、非常に豪華なメンバーを擁して大会に臨むこととなった。

東海大は2回戦で松山東雲女子大を5-0、3回戦で国際武道大を4-0でそれぞれ下して準々決勝に進出。前戦でアップセットを演じて意気揚がる国士舘大とベスト4進出を懸けて戦うこととなった。

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Cブロック準々決勝、国士舘大の中堅・池絵梨菜が東海大の多田隈玲菜から左内股「技有」

[Cブロック準々決勝]
国士舘大 ②-2 東海大
(先)松井恋〇合技[大外刈・袈裟固](3:25)△富沢佳奈
(次)萩野乃花△優勢[技有・袖釣込腰]〇竹内鈴
(中)齋藤百湖△合技[小外掛・横四方固](0:35)〇エルビスマーロドリゲス
(副)池絵梨菜〇合技[内股・袈裟固](1:02)△多田隈玲菜
(大)斉藤芽生×引分×田中伶奈

先鋒戦、筑波大撃破の立役者である国士舘大・松井恋が、富沢佳奈から右大外刈と袈裟固による合技「一本」(3:25)を獲得。まずは国士舘大が1勝をリードする。東海大はこれまでの得点源であった先鋒戦を落とした格好だが、次鋒の竹内鈴が右袖釣込腰「技有」で優勢勝ちを収めると、中堅のロドリゲスも僅か35秒で右小外掛と横四方固による合技「一本」を奪って逆転に成功。2試合を残した時点でスコア2-1とリードは東海大。

国士舘大はここで副将のポイントゲッター池絵梨菜が登場。逃げ切りを図りたい東海大は実力者多田隈玲菜を畳に送り込んでおり、得点必須の池にとってミッション達成のハードルは決して低くない。しかしここが勝負どころと心得た池は集中力極めて高し、引き分けを狙う多田隈玲菜から左内股と袈裟固で僅か1分2秒の秒殺劇、合技「一本」で値千金の勝利。大将戦を前に内容差によるリードを作り出す。続く大将戦は国士舘大の斉藤芽生が体格差を生かした巻き込み攻勢で田中伶奈に柔道をさせず引き分け。結果、2-2の内容差で国士舘大の準決勝進出が決まった。

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今年から東海大に所属しているエルビスマーロドリゲス

東海大はここで終戦となったが、強豪復活を予感させる逞しい戦いぶり。IOCの支援プログラムによって今年から加入したロドリゲスは既に20歳だが今春入学したばかりで学年はまだ1年。今後他校にとって大きな脅威となることだろう。

[Cブロック2回戦]

筑波大 5-0 高岡法科大
国士舘大 5-0 別府大
東海大 5-0 松山東雲女子大
国際武道大 3-1 立命館大

[Cブロック3回戦]

国士舘大 2-0 筑波大
東海大 4-0 国際武道大

[Cブロック準々決勝]

国士舘大 ②-2 東海大

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3回戦、龍谷大の副将・米澤夏帆が東京学芸大の吉本朝香から隅返「一本」。スコアをタイに戻す。

【Dブロック】

昨年3位にして近畿地区王者の龍谷大がシード配置。さらに東京王者の東京学芸大、九州王者の福岡大、東北王者の仙台大と、実に4地区の王者が1つのブロックに詰め込まれた、違いなく大会屈指の激戦区である。上記の4校はそれぞれ順当に勝ち上がり、3回戦の舞台で龍谷大 - 東京学芸大、福岡大 - 仙台大の対戦が組まれることとなった。

[Dブロック3回戦]
龍谷大 ①代-1 東京学芸大
(先)出村花恋×引分×髙野綺海
(次)黒木七都美×引分×伊澤星花
(中)小林幸奈△反則[指導3](3:15)○飯島彩加
(副)米澤夏帆○隅返(2:04)△吉本朝香
(大)村井惟衣×引分×佐々木ちえ
(代)村井惟衣○崩袈裟固(GS1:08)△佐々木ちえ

実力者をずらりと揃えた優勝候補龍谷大に、絶対的なエースは不在ながらもチーム力の高さで東京大会を制した東京学芸大が挑む。ともに学生柔道界屈指の「揚がる」チーム、間違いなく数年スパンの上げ潮の中にあるチームである。

先制したのは東京学芸大。引き分け2つを受けての中堅戦で飯島彩加が良く攻め、小林幸奈から「指導3」を引き出して勝利をもぎ取る。しかし続く副将戦では龍谷大主将の米澤夏帆がしっかりミッション達成、難敵吉本朝香を隅返「一本」に斬って落とし、再びスコアをイーブンに戻す。

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代表戦で龍谷大の村井惟衣が東京学芸大の佐々木ちえを巴投から引き込んで抑え込む

大将戦は龍谷大の村井惟衣が左、東京学芸大の佐々木ちえが右組みのケンカ四つ。村井は63kgと無差別枠としてはかなり小柄だが、ここで勝負を決めるべく78kg級の佐々木に対して積極的に脇を差しての接近戦を挑む。佐々木が怖じずに正面から応じたことで展開は拮抗。終盤には村井は巴投を中心とした組み立てにシフトしてさらに攻勢を掛けるが、両者に「指導1」が与えられたのみでこの試合は引き分けに終わる。

結果5戦すべてを消化してスコアは1-1のタイ。勝負は引き分けとなったポジションの再試合、ゴールデンスコア方式による代表戦に委ねられることとなる。

抽選の結果選ばれたのは大将戦、村井と佐々木の両名が再び畳に上がる。村井は本戦の終盤と同様に巴投から寝技という組み立てで試合を進め、GS1分8秒、場外際で巴投。一度止まったところから強引に技を仕掛け切って佐々木を伏せさせると、時計回りに被って崩上四方固で抑え込む。主審が「抑え込み」を宣言した直後、一連の攻防で負傷したか佐々木が「参った」を表明。結果、龍谷大が準々決勝進出を決めることとなった。

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3回戦、代表戦で福岡大の内野ややが仙台大の筒井志保から大外返「一本」

[Dブロック3回戦]
福岡大 0代-0 仙台大
(先)立川莉奈×引分×松尾光優
(次)坪根菜々子×引分×飯塚亜美
(中)座波吉子×引分×高橋仁美
(副)内野やや×引分×筒井志保
(大)中原爽×引分×廣谷姫奈
(代)内野やや○大外返(GS1:01)△筒井志保

直前に行われた龍谷大-東京学芸大戦の熱が冷めきらぬまま行われたDブロック3回戦の第2試合、福岡大と仙台大による一戦。立川莉奈と松尾光優による先鋒戦の引き分けを皮切りに両チーム一歩も譲らぬまま5試合連続の引き分けとなり、この試合も代表戦によって勝敗が決せられることとなる。

抽選で選ばれたカードは副将戦。この試合は福岡大の内野やや、仙台大の筒井志保ともに右組みの相四つ。内野が奥を叩いて右内股に右払腰と積極的に攻めるが、筒井の側も逆技の左一本背負投、左背負投と担ぎ技を要所で放って大きな流れは渡さない。しかしGS1分1秒、試合は劇的な形で終幕を迎える。筒井が片襟の低い右大外刈をしかけると内野がこれを抱き止め、相手の顎に掛かった右腕を返しながら大外落の理合で浴びせ倒して大外返「一本」。福岡大が大接戦を制してベスト8進出。龍谷大の待つ準々決勝へと駒を進めることとなった。

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Dブロック準々決勝、龍谷大の次鋒・出村花恋が福岡大の坪根菜々子から左袖釣込腰「技有

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中堅の冨田彩加も福岡大の内野ややを右払腰「一本」に仕留めて続く

[Dブロック準々決勝]
龍谷大 4-0 福岡大
(先)黒木七都美×引分×立川莉奈
(次)出村花恋〇合技[袖釣込腰・崩袈裟固](0:37)△坪根菜々子
(中)冨田彩加〇払腰(2:33)△内野やや
(副)米澤夏帆〇一本背負投(1:02)△座波吉子
(大)児島有紀〇優勢[技有・払巻込]△中原爽

いずれも接戦だった3回戦とは打って変わり、ワンサイドゲームで龍谷大が勝ち抜け。先鋒戦では昨年のグランドスラム東京52kg級2位の福岡大・立川莉奈が黒木七都美との強豪対決を引き分けたが、以降は龍谷大が一本勝ちを3つ並べる電車道であっさりチームの勝利を確定。大型選手同士の対戦となった大将戦でも児島有紀が払巻込「技有」で中原爽を破り、最終スコアは4-0まで伸びることとなった。

激戦区Dブロックの勝者は龍谷大。シード校に恥じぬ堂々たる戦いぶりでしっかり準決勝へと辿り着いた。

準決勝カードは以下のとおり。

山梨学院大 – 桐蔭横浜大
国士舘大 – 龍谷大

山梨学院大は他を寄せ付けぬ強さで、残る3校はいずれも強敵との接戦を勝ち抜いてのベスト4入り。桐蔭横浜大と国士舘大の両校はそれぞれ優勝候補を相手にアップセットを演じており、どのチームも勢いは十分である。

[Dブロック1回戦]

福岡大 3-0 中京大

[Dブロック2回戦]

龍谷大 3-0 平成国際大
東京学芸大 4-0 広島大
仙台大 3-0 徳山大
福岡大 2-1 日本体育大

[Dブロック3回戦]

龍谷大 1代-1 東京学芸大
福岡大 0代-0 仙台大

[Dブロック準々決勝]

龍谷大 4-0 福岡大

■ 準決勝
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準決勝第1試合、山梨学院大の大和久友佳が桐蔭横浜大・若藤唯から左背負投「技有

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そのまま横四方固で抑え込み合技「一本」を獲得する

【準決勝】

山梨学院大 2-1 桐蔭横浜大
(先)大和久友佳〇合技[背負投・横四方固](3:19)△若藤唯
(次)谷川美歩×引分×櫻井眞子
(中)新添左季×引分×嶺井美穂
(副)佐藤史織△優勢[技有・大外刈]〇杉山歌嶺
(大)泉真生〇大外返(1:34)△山口凌歌

ここまで全試合でチームに先制点をもたらして来た山梨学院大の大和久友佳がこの試合でも躍動、若藤唯を一方的に攻め続ける。なんとか耐え続けた若藤であるがあまりに分厚い攻めの前に終盤ついに決壊、大和久が右背負投「技有」から横四方固に繋いで、残り41秒で合技「一本」。まずは山梨学院大が1勝をリード。

谷川美歩と櫻井眞子による次鋒戦の引き分けを挟んだ中堅戦は、山梨学院大の新添左季と桐蔭横浜大・嶺井美穂、両校のエースが直接激突することとなる。この試合は新添が左、嶺井が右組みのケンカ四つ。ファーストコンタクトでお互いに組み合ったところ、力関係ではどうやら新添が一枚上手の様子。以後は得意の左内股をひたすら狙い続ける新添と片手の攻防で時間の消費を図る嶺井という構図で試合が進み、1分20秒と2分35秒に嶺井に消極的との咎で「指導」が与えられる。追い詰められた嶺井は陥落寸前、残り24分には嶺井の「指導」を巡って3名の審判による合議が行われるも、ここは続行。結局3つ目の「指導」は与えられないまま4分間が終わり、中堅戦も引き分けとなる。

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桐蔭横浜大の副将・杉山歌嶺が山梨学院大の佐藤史織から右大外刈「技有」

山梨学院大の1勝リードで迎えた副将戦、ここでこの日絶好調の桐蔭学園大・杉山歌嶺が再びチームに流れを引き寄せる。杉山と佐藤史織、ともに右組みの相四つ。泥臭さが売りの佐藤は序盤から持ち味発揮、担ぎ技を連発して手数による攻勢を演出するが、杉山はいずれも姿勢良く立ったままこれを受け切り、残り1分の時点で両者の「指導」は杉山が「1」に対して佐藤が「2」。残り40秒、佐藤が両手で杉山の釣り手を抱えたタイミングで杉山が思い切りよく右大外刈を仕掛けると、両手をまとめられた佐藤は勢い良く背中から畳に落ち、主審は「一本」を宣告する。ケアシステムによる確認の結果これは「技有」に訂正され、そのまま試合が終了。桐蔭横浜大は追いつくことはできなかったものの「技有」優勢で貴重な1勝を獲得。1-1の内容差による山梨学院大リードで勝負は大将戦へともつれ込むこととなる。

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山梨学院大の大将・泉真生が桐蔭横浜大・山口凌歌を大外返「一本」に仕留めて試合を決める

大将戦は山梨学院大の泉真生、桐蔭横浜大の山口凌歌ともに右組みの相四つ。この試合を取る以外に勝利の目がない山口は攻めのきっかけを作ろうと得意の袖を絞った形を作るが、その状態で停滞してしまい33秒にブロッキングにより「指導1」失陥。以降は地力に勝る泉が奥襟を得て一貫して優位を維持し続ける。自身の勝利以外はチームの終戦確定、もはや玉砕覚悟で一発に掛けるしかない山口は思い切った片襟の右大外刈、乾坤一擲の勝負に出るが状況を心得た泉は冷静。豪快な大外返「一本」に仕留めてチームの勝利を決める。

最終スコアは2-1。桐蔭横浜大の粘りを山梨学院大が力でねじ伏せ、9年連続となる決勝進出を果たした。

桐蔭横浜大は杉山が取り、山口が粘るという必勝パターンにあと一歩条件が及ばず惜敗。しかし有望新人の加入に刺激を受けたか4年生の山口と3年生の杉山が復活、5人全員が「線」になっての3位入賞は見事。学生女子柔道界に新風を吹きいれたと形容して然るべき、今大会もっとも印象的なチームであった。

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準決勝第2試合、龍谷大の先鋒・黒木七都美が国士舘大の松井恋から右足車「技有」

龍谷大 2-0 国士舘大
(先)黒木七都美〇合技[足車・袈裟固](2:20)△松井恋
(次)出村花恋〇優勢[技有・小内刈]△萩野乃花
(中)小林幸奈×引分×齋藤百湖
(副)米澤夏帆×引分×池絵梨菜
(大)児島有紀×引分×斉藤芽生

先鋒戦は龍谷大・黒木七都美と国士舘大・松井恋ともに右組みの相四つ。松井が奥を叩くと黒木もこれに応じて極めて近い距離での攻防が続く。まさしく待ったなしの間合い、この息詰まる接近戦の中で1分すぎに松井がクロスグリップの右大外刈を仕掛けると黒木はこれを正面から抱え上げて裏投を狙う。一瞬体が浮いたものの、松井は「サリハニ」の形で堪え切って着地。同時に肩越しに釣り手を抱えたまま右大外刈を仕掛けると重心が一瞬後に残った黒木は崩落、1分10秒に松井が「技有」獲得。。しかしリードを許した黒木はここから攻め方を変え、クロスの形で背中に叩き込まれる相手の釣り手を脇を掬っていなしながら担ぎ技で攻勢、流れを掴む。じわりと主導権を引き寄せたこの戦いが2分過ぎに結実、片襟の右足車で「技有」を取り返すと、そのまま袈裟固で抑え込み合技「一本」。見事な逆転勝利、投げ合いを制して先にリードを得たのは龍谷大。

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次鋒戦、龍谷大の出村花恋が萩野乃花から左小内刈「技有」を獲得

次鋒戦は龍谷大の出村花恋、国士舘大の萩野乃花ともに右組みの相四つ。チームがビハインドを負っている萩は試合が始まるなり前に出て攻勢を掛け、残り2分までに消極と相手の足取りで「指導」2つを確保。出村は試合時間を大きく残して追い詰められた形だが、2分30秒に相手の釣り手を一本背負投様に抱えて低く潜り込むような左小内刈一撃、足に乗り上げるように浴びせ倒して「技有」を獲得。一転してリードを許した萩は怒気を発して3つ目の「指導」を奪いに掛かるが、出村は左右の担ぎ技を連発して相手に攻めのきっかけを与えず、残りの1分30秒をしっかり凌ぎ切る。次鋒戦も龍谷大の勝利に終わり、この時点でスコアは早くも2-0。

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池絵梨菜と米澤夏帆による副将戦

中堅戦は双方が減速する形で小林幸奈、齋藤百湖ともに無理をせず引き分け。いよいよ後のない国士舘大はエースの池絵梨菜が登場、対する龍谷大の副将は主将の米澤夏帆。

かつてチームメイトとして香長中、そして東大阪大敬愛高で全国優勝を果たした同門対決は米澤が右、池が左組みのケンカ四つ。池はポイントを得んと激しく前に出て左内股を軸に攻めるが、米澤は低く食らいついて担ぎ技と肩車で凌ぎ続けて陣地を譲らず。幾度か池が惜しい場面を作るも結局双方にポイントはなく、この試合も引き分け。4戦を終えてスコアは2-0となり、この時点で龍谷大の勝利が確定する。

大将戦は龍谷大の児島有紀が右、国士舘大の斉藤芽生が左組みのケンカ四つ。この試合は決勝に向けて良い形で試合を終えたい児島と一矢報いたい斉藤による激しい技の応酬となるが、どちらも決定打を欠き、両者ポイントがないまま引き分け。

最終スコアは2-0。勝負どころとなった先鋒戦の投げ合いを制し、以降そのリードを守り抜いた龍谷大が快勝、初の決勝進出を果たした。

■ 決勝
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先鋒戦、山梨学院大の大和久友佳が黒木七都美から左大内刈「技有」。終盤の猛チャージで「技有」ビハインドを追いつく

【決勝】

山梨学院大 2-1 龍谷大
(先)大和久友佳×引分×黒木七都美
(次)谷川美歩〇合技[内股・横四方固](0:41)△中内柚里
(中)新添左季〇合技[浮腰・崩袈裟固](2:39)△米澤夏帆
(副)瀬戸口栞南△大外刈(3:46)〇冨田彩加
(大)泉真生×引分×村井惟衣

先鋒戦は山梨学院大の大和久友佳が左、龍谷大の黒木七都美が右組みのケンカ四つ。両校ともにここは得点ポジションであり、後ろの組み合わせを考慮すれば特に龍谷大としてはなんとしても勝利しておきたい一戦。奥を叩いて近距離での勝負をしたい大和久に対して、これを良く心得た黒木は両袖の形で相手の釣り手を絞って対峙。33秒、袖の絞り合いに嵌まった両者に「指導1」が与えられる。続く攻防、黒木は先に右釣り手で相手の左釣り手を抑えると、引き手で相手の右襟を掴んで右小外刈。意識の外から刈り取るような一撃に大和久は体側から激しく畳に落ち、53秒、黒木の「技有」。

リードを得た黒木は釣り手で低い位置を突いて防御重視の構え、一方の大和久は組み際に脇を差して、さらに強引に腰を切ってとギアを一段上げて激しい攻勢に打って出る。この猛攻の前に黒木が攻め込まれる展開が続き、残り55秒でついに黒木に消極的との咎で2つ目の「指導」。リードしているのは依然黒木だが、試合の流れは完全に大和久。直後の3分30秒、黒木が相手を場外に追い込む形で得意の両袖の形を作るが、ここで大和久が袖を絞らせたまま抱きつきの低い左大内刈。両手を絞っていたことが仇となり黒木は縛り付けられた様な形で倒れ、同点となる「技有」が大和久に与えられる。勢いづく大和久はあとひとつの「指導」を積んで勝負を決めんと挑み掛かるが、ここは黒木がなんとか凌ぎ切ってタイムアップ。先鋒戦は引き分けに終わった。スコア上はタイだが、リードした状態から追いつかれた龍谷大サイドは流れを削がれた形。逆に土壇場で追いつき、相手を陥落寸前まで追い詰めた山梨学院大は勢いを得て次鋒戦に臨むこととなる。

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次鋒戦、山梨学院大の谷川美歩が中内柚里から開始僅か10秒に右内股「技有」

次鋒戦は山梨学院大の谷川美歩、龍谷大の中内柚里ともに右組みの相四つ。開始10秒、谷川は相手に絞られた釣り手を利用して低空の右内股に飛び込み「技有」を奪取、そこから相手の左腕を固めたまま頭側に回り込むと横四方固で抑え込む。中内抗せず「一本」、試合時間は僅か41秒だった。前戦の流れを引き継いだがごとく、そして後半大攻勢を掛けた先鋒戦の「続き」を戦うがごとく、早い勝負に打って出た谷川は見事。決めた技は高校時代から得意としていた「相手に絞らせておいての内股」、豊かな才能をテコに個人戦で2度全国制覇した高校時代を久々思い起こさせる素晴らしい一撃だった。スコアは1-0、山梨学院大が先制に成功。

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中堅戦、山梨学院大の新添左季が米澤夏帆から左浮腰「技有」

中堅戦、勢いづく山梨学院大はエースの新添左季が登場。一方の龍谷大もここまでの試合で相手のエースを相手にしっかり仕事を果たしてきた主将・米澤夏帆が畳に上がる。この試合は新添が左、米澤が右組みのケンカ四つ。新添はこれまでの試合と同様、腰を切ったまま圧を掛けて左内股を狙い続ける地力をベースとした柔道。対する米澤は相手にもたれかかるように低く構えながら、引き手争いから担ぎ技のチャンスを窺う。新添が両袖の形から左内股を放った1分ちょうど、米澤に消極的との咎で「指導1」。さらに新添は再び両袖の形で圧を掛けて前進、1分30秒には米澤の巴投と新添の出足払がかち合う形で新添に「技有」が宣告されるが、ケアシステムによる確認の結果これは取り消される。2分30秒、新添はこの試合で初めて一方的な形で引き手を得ると、相手を懐に抱き込むように釣り手を送り込み、真下に叩き下ろすような鋭い左浮腰で「技有」を獲得。そのまま崩袈裟固で抑え込み、2分39秒合技の「一本」へと辿り着く。地力の差を生かした新添がしっかり役割を果たした形で、スコアは2-0。山梨学院大は2戦続けての一本勝ち、一方の龍谷大はここから「一本」2つを奪って代表戦に持ち込むしかない、非常に厳しい状況に立たされる。

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副将戦、龍谷大の冨田彩加が瀬戸口栞南から右大外刈「一本」。大将戦に望みを繋ぐ。

副将戦は山梨学院大の瀬戸口栞南、龍谷大の冨田彩加ともに右組みの相四つ。一本負け以外ならチームの勝利が決まる瀬戸口は横変形にずれながら足を飛ばしてじっくりと様子を窺う。一方奥襟を得て勝負を掛けたい冨田だが、脇を掬い、奥を叩いてとトリッキーな組み手を展開する瀬戸口の前に攻めのきっかけをつかむことができず、袖の絞り合いに持ち込まれた2分2秒には反対に消極的との判断で「指導1」を失ってしまう。さらに2分45秒、冨田がクロスグリップの状態から引き手で相手の釣り手を抱き込むと、そのタイミングに合わせて瀬戸口が脇を掬いながら右大外落。相手にぶら下がられる形になった冨田は背中から畳に倒れ、主審は瀬戸口の「技有」を宣告する。瀬戸口のポイントリードである。

しかしこれで逆に気持ちが守りに入ってしまったのか、瀬戸口はこれまでの強気の組み手から一転、直後の攻防では冨田の奥襟を受け入れて腰を引いたまま後退し、畳に膝を着いてしまう。直後の50秒、冨田が再び前に出ると瀬戸口は引き手を突っ張って間合いを確保しようとするが、ここで冨田が突き出された相手の左手を釣り手で押し込み両袖の右大外刈。万歳の形に腕をまとめられた瀬戸口は勢いよく吹っ飛んでこれは「技有」。そのまま冨田は崩袈裟固を狙うが、ここは瀬戸口が反応良く逃れて「待て」。残り時間は僅か35秒、盤面状況もスコア的にも依然として優位は瀬戸口にあるが、この悪い流れにメンタル的な閉塞を起こしたか、再び瀬戸口は相手の奥襟を許し、あろうことか腰を引いたまま場外に向かって後退してしまう。試合の流れに完全に乗った冨田がこれを見逃すわけもなく、一度相手を前に引き出しておいて強烈な右大外刈一閃、相手の上に乗り上げながら投げ切り鮮やか「一本」。残り時間は14秒だった。龍谷大、まさしく首の皮一枚で畳に残ってスコアは2-1。勝負は大将戦へと持ち込まれる。

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大将戦、龍谷大の村井惟衣が山梨学院大の泉を激しく攻めるも「指導2」までで終戦

大将戦は山梨学院大の泉真生が右、龍谷大の村井惟衣が左組みのケンカ四つ。まずは村井が巴投で先制攻撃。以後も体格では一回り小さい村井が下から突き上げるように釣り手を突いて激しく前進、相手に攻撃の隙を与えず一方的に攻め続ける。1分32秒、泉に消極的との咎で「指導」。

このポイントを受けた泉は組み際に背中を叩いて自分の形を作ろうとするが、ここでも村井が強引な左釣込腰を仕掛け、両者もつれ合うように場外に出て「待て」。残り2分を過ぎたあたりから村井はさらに加速、泉の懐に潜り込みながら攻撃を重ね、泉の奥襟に村井が左大腰で応じた2分35秒には泉に消極的の咎で「指導2」が与えられる。あと1つの「指導」が泉に与えられればタイスコアで全5試合が終了、優勝の行方は代表戦に委ねられることとなるという鉄火場である。

小兵村井の猛攻に場内は俄然ヒートアップ。続く攻防でも村井は真っ向勝負を挑み、左背負投、左内股と連続で技を繰り出して相手を場外際に追い詰める。伏せた村井を泉が寝技で攻め、「待て」が掛かった時点で残り時間は52秒。村井はあとひとつの「指導」を奪おうとさらにペースを上げて泉に組みかかるが、残り37秒に不十分ながら泉が強引な右内股を放って展開を引き戻す。

残り26秒、リミッターを外した村井は体格差を無視、相手の脇を掬っての左内股で勝負に出る。しかし、これを泉に抱き止められて潰されてしまい、反対に相手に寝技による時間の消費を許す結果となってしまう。「待て」が掛かった段階で残り時間は僅か11秒。「はじめ」の声と同時に村井は再び脇を差して最後の勝負に出るが、泉が一度腰を切ってから上に被さるようにこれを潰して「待て」。試合が再開されると同時に終了のブザーが鳴ってこの試合は終了。大将戦は引き分けとなり最終スコアは2-1、ここで山梨学院大の大会5連覇が決まった。

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優勝決定に安堵の表情を浮かべる山梨学院大の選手たち

山梨学院大にとってこの試合最大の功労者は先鋒の大和久。一度失いかけた流れを自軍に取り戻し、続く次鋒戦と中堅戦の一本勝ちを引き寄せた。この日の山梨学院大の試合ぶりは率直に言って低調。それでもひとり気を吐いた大和久の活躍と、チーム全体の地力の高さで他校の猛追を振り切ったという恰好だ。

例年になく接戦、そして番狂わせが目立った今大会、わけても目を引いたのは新進チームの活躍ぶり。明るいチームカラーと育成力の高さで躍進した桐蔭横浜大と東京学芸大、高校カテゴリの鷹揚な指導に呼応するかのように伸びやかな柔道でベスト4に名乗りを挙げた国士舘大、こちらはやや古風な「錬磨型」ながら決勝まで進出して好素材をしっかり伸ばしていることを見せつけた龍谷大。形上優勝したのは山梨学院大であったが、平成30年度大会の主役と規定するべきはこれらニューウェイブチームたちであったと評しておきたい。

従来女子の強豪チームでは、有望な高校生を大量にスカウトし、互いに競わせて育成するスタイルが主流であったかと思われる。作る「いけす」のレベルの高低がそのまま競技結果に反映される、極端な言い方をすればスカウトでほぼ様相が決まってしまうという見方すら可能であった。しかし、今回主役となったチームの多くはこの類型には当てはまらず、いずれも密度の高い指導によって各選手の実力自体をしっかり伸ばしているという印象を受けた。今後は例えばこれまでの環太平洋大に代表されるような指導力と育成能力を売りとしたチームが、学生女子柔道の主流となっていくのではないだろうか。最高峰大会の団体戦タイトル獲得の有無は、選手の過去の実績の高低で測られる単なる「陣容」ではなく、育成力やチームマネジメント力、勝負論の進化と蓄積といった「勝者の条件を揃えているかどうか」のフィルタとして機能すべきであり(男子はこれがしっかり機能していると観察する)、「何が足りないのか」と各校が知恵を絞り、錬磨を重ねることが業界全体のレベル向上に寄与するはず。その意味ではこの同時多発的な「育成力が売りのチーム」の躍進は歓迎すべきことだ。

伝統校・山梨学院大の前人未到の5連覇という形で幕を閉じた今大会だが、同時に女子学生柔道界に新たな息吹が感じられた、新時代の幕明けと総括すべき大会でもあった。

入賞者と全試合の結果、山梨学院大・山部準々決勝以降の対戦詳細は下記。

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5連覇を達成した山梨学院大

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2位の龍谷大

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3位の桐蔭横浜大

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3位の国士舘大

【入賞者】
(エントリー33校)
優 勝:山梨学院大
準優勝:龍谷大
第三位:桐蔭横浜大、国士舘大

優秀選手:新添左季(山梨学院大)、冨田彩加(龍谷大)、杉山歌嶺(桐蔭横浜大)、池絵梨菜(国士舘大)

山梨学院大・山部伸敏監督のコメント
「何連覇しても学生たちにとっては『この代で勝ちたい』という初めての挑戦。加えて連覇を途切れさせてはいけないというプレッシャーも掛かる中で、よく頑張りました。うちは毎年、選手が自分たちで目標を決める。選手が、自分たちで立てた目標をしっかり達成してくれた大会です。決勝は先鋒戦がポイントでした。先鋒が負けてくるのと追いついて入るのでは全然違いますから。大和久は登録8人の中ではいちばん調子が良かったのですが、起用に応えて、取り返してくれて、あれで皆の気持ちが上がりましたね。泉は主将として勝たなきゃいけないと気負い過ぎていましたが、最後は気持ちで踏ん張った。主将の責任感を見せてもらいました。(―この大会に向けては?)連覇していると言っても1回1回全て『競り勝って』きたわけで、楽な試合は1つもない。『去年と同じことをやっていても難しいよ』『甘くないよ』とはアドバイスをしました。特別に何かを課したということはないですが、気持ちの部分を強調して、『競る』ことをテーマに稽古をしてきました。あとは、大きな怪我がなかったのが大きいと思っています。(―出口クリスタ選手がコーチとしてベンチに座りましたね?)先輩として一緒に稽古してくれている。すぐ近くに4連覇した先輩がいてくれたのは大きかったと思います。(―来年は6連覇に挑むことになりますね?)勝ち続けるのは精神的にきついですが、学生に引っ張ってもらっています。今年もそうでしたが、連覇のプレッシャーをどう力に変えるかが課題になるかと思っています。」

【1回戦】
福岡大 3-0 中京大

【2回戦】
山梨学院大 4-0 鹿屋体育大
大阪体育大 4-0 星槎道都大
帝京科学大 2-1 淑徳大
岡山商科大 4-1 東北福祉大
桐蔭横浜大 1-0 環太平洋大
日本大 1代-1 武庫川女子大
帝京大 5-0 天理大
金沢学院大 4-1 富士大
筑波大 5-0 高岡法科大
国士舘大 5-0 別府大
東海大 5-0 松山東雲女子大
国際武道大 3-1 立命館大
龍谷大 3-0 平成国際大
東京学芸大 4-0 広島大
仙台大 3-0 徳山大
福岡大 2-1 日本体育大

【3回戦】
山梨学院大 4-0 大阪体育大
帝京科学大 4-0 岡山商科大
桐蔭横浜大 3-1 日本大
帝京大 4-0 金沢学院大
国士舘大 2-0 筑波大
東海大 4-0 国際武道大
龍谷大 1代-1 東京学芸大
福岡大 0代-0 仙台大

【準々決勝】

山梨学院大 3-0 帝京科学大
桐蔭横浜大 1-0 帝京大
国士舘大 ②-2 東海大
龍谷大 4-0 福岡大

【準決勝】

山梨学院大 2-1 桐蔭横浜大
龍谷大 2-0 国士舘大

【決勝】

山梨学院大 2-1 龍谷大

※ eJudoメルマガ版7月9日掲載記事より転載・編集しています。

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