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ヨーロッパ選手権2018・女子7階級レポート

(2018年5月24日)

※ eJudoメルマガ版5月24日掲載記事より転載・編集しています。
ヨーロッパ選手権2018・女子7階級レポート
European Judo Championsjhips 2018
日時:2018年4月26日~28日
於:イスラエル・テルアビブ

文責:林さとる/eJudo編集部

■ 48kg級・足技冴えたドルゴワが初優勝、昨年来の好調一段加速
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48kg級決勝、イリーナ・ドルゴワがエヴァ・チェルノヴィツキから左小内刈「技有」

(エントリー24名)

【入賞者】
1.DOLGOVA, Irina (RUS)
2.CSERNOVICZKI, Eva (HUN)
3.NIKOLIC, Milica (SRB)
3.CHERNIAK, Maryna (UKR)
5.JURA, Anne Sophie (BEL)
5.CLEMENT, Melanie (FRA)
7.STANGAR, Marusa (SLO)
7.LOKMANHEKIM, Dilara (TUR)

第1シードのイリーナ・ドルゴワ(ロシア)と第3シードのエヴァ・チェルノヴィツキ(ハンガリー)、実力的に頭一つ抜けている優勝候補2名が順当に決勝へと駒を進めた。

決勝はドルゴワが左、チェルノヴィツキが右組みのケンカ四つ。パワーで勝るチェルノヴィツキは背中を抱いて、あるいは両袖の形で力勝負に持ち込もうとするが、ドルゴワはしっかりと釣り手を突いてこれを許さず。1分18秒には強引に間合いを詰めようとしたチェルノヴィツキを反時計回りに引きずり回し、切れ味鋭い左小内刈で「技有」を獲得する。これ以降もドルゴワは相手の動作の起点に足技を合わせて主導権を握り続け、そのままタイムアップ。見事初優勝を飾った。

ドルゴワは以前からコンスタントにワールドツアーで成績を残している強豪だが、昨年の本大会で2位を獲得して以降一段と力を増している印象。ブダペスト世界選手権では表彰台を逃した(5位)ものの、それ以外の出場大会ではすべて決勝まで勝ち残っている。今大会での戦いぶりを見る限り、地力と投げの威力が明らかに強化されており、パワー自慢のチェルノヴィツキと対戦した決勝でも力負けはしていなかった。足技の切れ味にも一層磨きがかかっており、バクー世界選手権ではメダル候補のひとりに数えて良いだろう。

一方敗れたチェルノヴィツキも31歳の大ベテランながら得意技の右袖釣込腰で若手パワーファイターのディララ・ロクマンヘキム(トルコ)とミリカ・ニコリッチ(セルビア)をともに投げつけ、いまだ衰えぬ強さを見せつけた。

昨年の本大会王者であり現在ワールドツアー4連勝中のダリア・ビロディド(ウクライナ)は、今大会には出場しなかった。

【準々決勝】
イリーナ・ドルゴワ(ロシア)○合技[体落・縦四方固](3:46)△アンネ=ソフィー・ユラ(ベルギー)
メラニー・クレモン(フランス)○優勢[技有・大内刈]△マルサ・スタンガル(スロベニア)
ミリカ・ニコリッチ(セルビア)○優勢[技有・崩袈裟固]△マリーナ・チェルニアク(ウクライナ)
エヴァ・チェルノヴィツキ(ハンガリー)○合技[袖釣込腰・出足払](2:32)△ディララ・ロクマンヘキム(トルコ)

【敗者復活戦】
アンネ=ソフィー・ユラ(ベルギー)○GS技有・大外落(GS0:50)△マルサ・スタンガル(スロベニア)
マリーナ・チェルニアク(ウクライナ)○大内刈(2:51)△ディララ・ロクマンヘキム(トルコ)

【準決勝】
イリーナ・ドルゴワ(ロシア)○優勢[技有・出足払]△メラニー・クレモン(フランス)
エヴァ・チェルノヴィツキ(ハンガリー)○優勢[技有・袖釣込腰]△ミリカ・ニコリッチ(セルビア)

【3位決定戦】
ミリカ・ニコリッチ(セルビア)○GS横四方固(GS1:55)△アンネ=ソフィー・ユラ(ベルギー)
マリーナ・チェルニアク(ウクライナ)○内股(3:50)△メラニー・クレモン(フランス)

【決勝】
イリーナ・ドルゴワ(ロシア)○優勢[技有・小内刈]△エヴァ・チェルノヴィツキ(ハンガリー)

■ 52kg級・ベテランのクズティナが4度目の欧州制覇、頭一つ抜けた強さで全試合一本勝ち
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52kg級決勝、ナタリア・クズティナがディスとリア・クラスニキを豪快な裏投で引っこ抜く

(エントリー24名)

【入賞者】
1.KUZIUTINA, Natalia (RUS)
2.KRASNIQI, Distria (KOS)
3.PRIMO, Gefen (ISR)
3.TSCHOPP, Evelyne (SUI)
5.KORKMAZ, Irem (TUR)
5.PUPP, Reka (HUN)
7.STANGAR, Anja (SLO)
7.CHITU, Andreea (ROU)

決勝まで勝ち上がったのは、昨年のワールドマスターズ王者ナタリア・クズティナ(ロシア)と、直前に行われたグランプリ・アンタルヤ大会を制して勢いに乗るディストリア・クラスニキ(コソボ)の2名。

決勝は右相四つ。パワー自慢のクラスニキは奥を叩きながらがむしゃらに前に出るが、経験値で勝るクズティナは落ち着いて相手の釣り手を絞り落とし、巴投に左一本背負投とローリスクな技を繰り出しながら少しずつ試合の主導権を引き寄せていく。十分に場が煮詰まったGS36秒、攻め手を欠いたクラスニキが強引な外巻込で勝負に出ると、クズティナは待ってましたとばかりにこれを抱き止め裏投。ぶら下がる形から抱え上げられたクラスニキは抗えずに背中から畳に叩きつけられ「一本」。クズティナがベテランらしい落ち着いた試合運びで2013年以来4度目となる優勝を飾った。

クズティナの安定感は相変わらず。以前ほどの力強さはないものの、高い作戦遂行能力と階級トップクラスの寝技技術をテコに、今大会でも全試合で危なげなく「一本」を獲得してみせた。バクー世界選手権においても表彰台の有力な候補と考えて良いだろう。

準優勝のクラスニキは現在22歳。同国の先輩であるマイリンダ・ケルメンディ(コソボ)に引っ張られる形でメキメキと力をつけてきており、パワーに関しては階級最上位クラスにあると考えられる。その一方で組み手や具体的な投げの技術には乏しく、ここをいかに埋めるかがトップ層に食い込めるかどうかの鍵になるかと思われる。

ケルメンディは今大会も欠場。志々目愛(了徳寺学園職)に内股透「技有」で敗れたブダペスト世界選手権以来大会に姿を見せておらず、どのタイミングで復帰するのか、今後もその動向から目が離せない。

【準々決勝】
ナタリア・クズティナ(ロシア)○合技[隅落・一本背負投](2:49)△アニャ・スタンガル(スロベニア)
エヴェリン・チョップ(スイス)○合技[袖釣込腰・崩袈裟固](2:48)△ジェフェン・プリモ(イスラエル)
イレム・コルクマズ(トルコ)○優勢[技有・小外掛]△アンドレア・キトゥ(ルーマニア)
ディストリア・クラスニキ(コソボ)○反則[指導3](2:13)△レカ・プップ(ハンガリー)

【敗者復活戦】
ジェフェン・プリモ(イスラエル)○優勢[技有・小外掛]△アニャ・スタンガル(スロベニア)
レカ・プップ(ハンガリー)○GS技有・大内刈(GS1:40)△アンドレア・キトゥ(ルーマニア)

【準決勝】
ナタリア・クズティナ(ロシア)○合技[一本背負投・一本背負投](1:22)△エヴェリン・チョップ(スイス)
ディストリア・クラスニキ(コソボ)○反則[指導3](1:13)△ディストリア・クラスニキ(コソボ)

【3位決定戦】
ジェフェン・プリモ(イスラエル)○合技[大外返・隅落](2:53)△イレム・コルクマズ(トルコ)
エヴェリン・チョップ(スイス)○大外刈(0:22)△レカ・プップ(ハンガリー)

【決勝】
ナタリア・クズティナ(ロシア)○GS裏投(GS0:36)△ディストリア・クラスニキ(コソボ)

■ 57kg級・好調ヤコヴァが優勝、体力ベースに激戦階級を制す
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57kg級決勝、ノラ・ヤコヴァがテレザ・シュトルから右小外刈「技有」

(エントリー30名)

【入賞者】
1.GJAKOVA, Nora (KOS)
2.STOLL, Theresa (GER)
3.KONKINA, Anastasiia (RUS)
3.MONTEIRO, Telma (POR)
5.FILZMOSER, Sabrina (AUT)
5.CYSIQUE, Sarah Leonie (FRA)
7.MEZHETSKAIA, Daria (RUS)
7.KARAKAS, Hedvig (HUN)

強豪多数の激戦区。決勝にはノラ・ヤコヴァ(コソボ)とテレザ・シュトル(ドイツ)が勝ち上がった。
決勝は右相四つ。袖の絞り合いと奥襟を持ち合っての力比べを交互に繰り返しながら、拮抗のまま試合は終盤まで進行。3分10秒、がっぷり四つに組み合った形からシュトルが右大外刈。ヤコヴァは巧みな体捌きでこれを透かすと膝裏に右小外刈を当て、ハンドル操作を効かせて前に出ながら浴びせ倒し「技有」獲得。両者の体は場外に出ていたがヤコヴァの抑え込みが完成していたために攻防は継続、そのまま10秒間抑え込んで合技「一本」(3:20)で試合終了となった。昨年まで3年連続の3位に甘んじていたヤコヴァはこれがヨーロッパ選手権初優勝。

昨年までは中堅選手のひとりでしかなかったヤコヴァ。今大会では準々決勝で戦ったテルマ・モンテイロ(ポルトガル)以外にトップ選手とのマッチアップはなかったものの、パワーと足技をベースに粘り強く戦い抜き、見事トーナメントの頂点に立ってみせた。柔道スタイルはコソボ選手らしいパワー柔道。モンテイロ戦では先に「指導2」を得てから「指導2」を取り返されるなど決して良い出来ではなかったが、最後は得意としている組み付きながらの右大内刈で「技有」(GS3:17)を奪うという、非常にこの人らしい戦いぶりでこの大一番を乗り切っている。

準優勝のシュトルは昨年に続く2年連続の2位獲得。昨シーズンは出場した全ての大会で入賞を果たしており、近頃はすっかり階級の上位に定着した感がある。3月のグランプリ・トビリシ大会では優勝を飾っており、今年はトップ層を相手にどこまで食らいつくことができるのかに注目したい。

第1シードのネコダ・スミス=デイヴィス(イギリス)は初戦(2回戦)でサハ=レオニー・シーシク(フランス)に横車「技有」からの片手絞「一本」(3:49)で敗退。第2シードのエレン・ルスヴォ(フランス)も初戦(2回戦)でアナスタシア・コンキナ(ロシア)に左大外刈「技有」を奪われ、順位決定ラウンドに進むことなく姿を消した。

【準々決勝】
サハ=レオニー・シーシク(フランス)○内股(2:40)△ダリア・メゼツカイア(ロシア)
テレザ・シュトル(ドイツ)○GS技有・大外刈(GS0:50)△ザブリナ・フィルツモザー(オーストリア)
アナスタシア・コンキナ(ロシア)○内股(1:28)△ヘドウィグ・カラカス(ハンガリー)
ノラ・ヤコヴァ(コソボ)○GS技有・大内刈(GS3:17)△テルマ・モンテイロ(ポルトガル)

【敗者復活戦】
ザブリナ・フィルツモザー(オーストリア)○小外掛(3:10)△ダリア・メゼツカイア(ロシア)
テルマ・モンテイロ(ポルトガル)○出足払(3:20)△ヘドウィグ・カラカス(ハンガリー)

【準決勝】
テレザ・シュトル(ドイツ)○GS合技[小外掛・小外掛](GS0:16)△サハ=レオニー・シーシク(フランス)
ノラ・ヤコヴァ(コソボ)○崩上四方固(1:28)△アナスタシア・コンキナ(ロシア)

【3位決定戦】
アナスタシア・コンキナ(ロシア)○GS技有・内股透(GS1:04)△ザブリナ・フィルツモザー(オーストリア)
テルマ・モンテイロ(ポルトガル)○[出足払・出足払](1:31)△サハ=レオニー・シーシク(フランス)

【決勝】
ノラ・ヤコヴァ(コソボ)○合技[小外刈・崩上四方固](3:20)△テレザ・シュトル(ドイツ)

■ 63kg級・決勝は壮絶な投げ合い、アグベニューがトルステニャクとの頂点対決を制して3度目の優勝飾る
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63kg級決勝、クラリス・アグベニューがティナ・トルステニャクからGS延長戦で送足払「技有」

(エントリー22名)

【入賞者】
1.AGBEGNENOU, Clarisse (FRA)
2.TRSTENJAK, Tina (SLO)
3.RENSHALL, Lucy (GBR)
3.TRAJDOS, Martyna (GER)
5.SCHLESINGER, Alice (GBR)
5.VALKOVA, Ekaterina (RUS)
7.ZELTNER, Tina (AUT)
7.SHARIR, Gili (ISR)

今大会女子のハイライトとも呼ぶべき本階級。クラリス・アグベニュー(フランス)とティナ・トルステニャク(スロベニア)の世界王者2名が順当に勝ち上がり、決勝で相まみえた。

決勝はアグベニューが左、トルステニャクが右ベースの両組み。
先に仕掛けたのはトルステニャク。アグベニューに引き手を持たれたまま浅い左小内刈、次いで間髪入れずに左一本背負投に潜り込む。両手を抱えられる形になったアグベニューは堪らず転がり「技有」、ここまでの試合時間なんと僅か12秒。リードを得たトルステニャクは掛け潰れての逃げ切りを志向するが、アグベニューは両襟で引きつけそれを許さない。1分過ぎ、組み際にトルステニャクが相手を引き出そうと一歩下がったタイミングでアグベニューが一気に距離を詰め左大外刈。正面からまともに受けたトルステニャクは勢い良く一回転して肩から落ちるが、背中の接地が不十分と見なされたかこの段階ではポイントにはならず。しかし時計の針がかなり進んだ1分41秒、映像の確認を待ってアグベニューの「技有」が宣告される。これ以降も双方全く攻めの手を緩めず技を掛け続けるが、決定打が出ないまま本戦4分が終了。勝負はGS延長戦へと持ち越される。GS3分6秒、アグベニューは奥襟を得ると、これを嫌った相手の横移動の際を狙って切れ味鋭い送足払。思い切り抜き上げるとトルステニャクは半身で畳に落ち、アグベニューの「技有」が宣告される。アグベニューがライバルとの死闘を合技「一本」で制し、2014年以来3度目の欧州制覇を達成した。

アグベニュー、トルステニャクともにその強さはさすがの一言。両者とも勝ち上がりは今ひとつな内容であったが、決勝になるとギアを一段も二段も入れ替え、まるで別人のようなパフォーマンスを発揮してみせた。マルティナ・トライドス(ドイツ)にアリス・シュレシンジャー(イギリス)などほかにもトップ選手が数多く参加しているなかで、それらの選手を全て脇役に押しのけてしまうような熱戦だった。

【準々決勝】
クラリス・アグベニュー(フランス)○優勢[技有・大外巻込]△ルーシー・レンシャル(イギリス)
マルティナ・トライドス(ドイツ)○反則[指導3](3:47)△ティナ・ツェルトナー(オーストリア)
ティナ・トルステニャク(スロベニア)○GS技有・横四方固(GS2:56)△エカテリーナ・ヴァルコワ(ロシア)
アリス・シュレシンジャー(イギリス)○合技[外巻込・釣込腰](1:39)△ギリ・シャリル(イスラエル)

【敗者復活戦】
ルーシー・レンシャル(イギリス)○優勢[技有・内股]△ティナ・ツェルトナー(オーストリア)
エカテリーナ・ヴァルコワ(ロシア)○合技[隅返・横四方固](2:33)△ギリ・シャリル(イスラエル)

【準決勝】
クラリス・アグベニュー(フランス)○GS反則[指導3](GS1:00)△マルティナ・トライドス(ドイツ)
ティナ・トルステニャク(スロベニア)○反則(3:13)△アリス・シュレシンジャー(イギリス)
※立ち姿勢から腕挫脇固の形で体を捨てたことによるダイレクト反則

【3位決定戦】
ルーシー・レンシャル(イギリス)○不戦△アリス・シュレシンジャー(イギリス)
マルティナ・トライドス(ドイツ)○袈裟固(3:49)△エカテリーナ・ヴァルコワ(ロシア)

【決勝】
クラリス・アグベニュー(フランス)○GS合技[大外巻込・送足払](GS3:06)△ティナ・トルステニャク(スロベニア)

■ 70kg級・ポリングがオール一本で4度目の欧州王座を獲得
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70kg級決勝、キム・ポリングがサリー・コンウェイから右内股で2つ目の「技有」

(エントリー21名)

【入賞者】
1.POLLING, Kim (NED)
2.CONWAY, Sally (GBR)
3.POLLERES, Michaela (AUT)
3.HOWELL, Gemma (GBR)
5.MATIC, Barbara (CRO)
5.BERNABEU, Maria (ESP)
7.VAN DIJKE, Sanne (NED)
7.POGACNIK, Anka (SLO)

キム・ポリング(オランダ)とサリー・コンウェイ(イギリス)の強者2人が決勝に進出。

決勝は右相四つ。開始直後、組み際にコンウェイが仕掛けた右小内刈に対してポリングがカウンターの小内返。さらに崩れたコンウェイが体勢を立て直そうとしたタイミングで逆技の左背負投に潜り込み、12秒に「技有」を先行する。いきなりリードを許したコンウェイだが、1分間際に組み手争いからの右小内刈でポリングを転がし「技有」を奪還。以降、ポリングが強引な巻き込みに担ぎ技、コンウェイが足技に寝技と双方積極的に攻め合う流れが続き、決着がつかないまま勝負はGS延長戦へともつれ込む。GS1分6秒、ポリングは奥襟を得ると相手を釣り手側に引き出し右内股。引き手は離れてしまったが釣り手で強引に押し込んで「技有」を獲得する。結果、ポリングがヨーロッパ選手権4度目の優勝を飾ることとなった。ポリングは全試合「一本」(反則含む)での戴冠。

今大会での戦いぶりを見る限り、ポリングにかつてのような力強さはまだ戻っていない。柔道スタイルも担ぎ技の割合がより多くなっており、パワーの低下を技術で補っている形だ。ただし現在もパワー柔道時代の癖が抜けないようで時折力任せに投げを狙うことがあり、これが大きな隙になってしまっている。とはいえ、担ぎ技自体の精度と威力は大きく向上しており、下降期に見られた掛け逃げまがいの一本背負投を仕掛ける場面は減少。決勝でも左背負投でしっかり「技有」を奪っている。もともと出世期には腰技や捨身技を見せておいての左一本背負投が勝負技であった選手だが、なかなかコンディションが上がらない中で、担ぎへの傾斜を強めているということは言えるだろう。競った場面では強引な巻き込み技に頼ってしまうことも多いが、少なくとも今のポリングは担ぎ技の選手だ。

コンウェイは優勝こそ逃したものの、準決勝までの全試合で寝技によるポイントを獲得。寝業師としての挟持を存分に示してみせた。31歳のベテランながら寝技と足技を中心とした柔道スタイルであり、年齢の影響は限定的。世界選手権でも組み合わせ次第では十分に上位進出が狙えるだろう。

昨年の王者サンネ・ファンダイク(オランダ)は準々決勝でポリングに一本背負投と崩袈裟固の合技「一本」(0:51)で苦杯を喫して本戦から脱落。敗者復活戦でもミヘイラ・ポレレス(オーストリア)に小外掛「一本」(1:34)で敗れて表彰台に辿り着けなかった。

【準々決勝】
サリー・コンウェイ(イギリス)○GS片手絞(GS0:23)△ミヘイラ・ポレレス(オーストリア)
キム・ポリング(オランダ)○合技[一本背負投・崩袈裟固](0:51)△サンネ・ファンダイク(オランダ)
マリア・ベルナベウ(スペイン)○反則[指導3](3:45)△バルバラ・マティッチ(クロアチア)
サリー・コンウェイ(イギリス)○腕挫脇固(0:46)△アンカ・ポガクニク(スロベニア)

【敗者復活戦】
ミヘイラ・ポレレス(オーストリア)○小外掛(1:34)△サンネ・ファンダイク(オランダ)
マリア・ベルナベウ(スペイン)○反則[指導3](3:04)△アンカ・ポガクニク(スロベニア)

【準決勝】
キム・ポリング(オランダ)○GS反則[指導3](GS0:23)△ジェンマ・ハウエル(イギリス)
サリー・コンウェイ(イギリス)○合技[崩上四方固・内股透]△バルバラ・マティッチ(クロアチア)

【3位決定戦】
ミヘイラ・ポレレス(オーストリア)○優勢[技有・裏投]△バルバラ・マティッチ(クロアチア)
ジェンマ・ハウエル(イギリス)○片手絞(2:37)△マリア・ベルナベウ(スペイン)

【決勝】
キム・ポリング(オランダ)○GS合技[背負投・内股](GS1:06)△サリー・コンウェイ(イギリス)

■ 78kg級・マロンガがオール一本で戴冠、決勝で先輩チュメオを破る
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78kg級準々決勝、マドレーヌ・マロンガがパトリシア・サンパイオ(ポルトガル)を右大外刈「一本」に仕留める

(エントリー16名)

【入賞者】
1.MALONGA, Madeleine (FRA)
2.TCHEUMEO, Audrey (FRA)
3.WAGNER, Anna Maria (GER)
3.POWELL, Natalie (GBR)
5.STEVENSON, Karen (NED)
5.RAMIREZ, Yahima (POR)
7.SAMPAIO, Patricia (POR)
7.KUKA, Loriana (KOS)

決勝に進んだのはマドレーヌ・マロンガ(フランス)とオドレイ・チュメオ(フランス)。

この決勝は右相四つ。まずは25秒、チュメオが釣り手の絞り合いから左出足払を起点に相手を場外に押し込み、出されまいと無理な姿勢で耐えたマロンガを谷落で捲り倒して「技有」を先行する。しかし、ポイントを失ったマロンガはここからがむしゃらな前進を開始。リスクを顧みぬ猪突猛進で圧を掛け、41秒と1分10秒にチュメオから場外の「指導」を引き出す。ポイント上はリードしながらも後がなくなってしまったチュメオは右一本背負投を仕掛けて悪い流れを切りに掛かるが、直後に再び両者が袖を絞りあっての膠着状態に陥ってしまう。スコアを考えれば何らかの手立てを打たねばならない状況だが、チュメオはこれを受け入れてしまい、1分58秒に両者にブロッキングの咎による「指導」が与えられ決着。マロンガが持ち味のガツガツとした攻めで先輩チュメオを圧倒、初優勝を飾った。マロンガは全試合「一本」(反則含む)でのタイトル獲得。

この日のマロンガは気力体力ともに充実しており、準決勝までの3試合では強引に間合いを詰めてのパワフルな投げでいずれも早い時間帯に「一本」を獲得。ブダペスト世界選手権3位のナタリー・パウエル(イギリス)と対戦した準決勝でも開始僅か13秒に右大内刈「技有」を奪取、そのまま袈裟固で抑え込んでの合技「一本」(0:23)で快勝している。柔道スタイル自体は以前と変わらないものの、パウエルやチュメオをパワーで圧倒していることから観察すると、相当に地力が上がっているようだ。直近の大会で敗れている相手はいずれもケンカ四つの左組みであり、この辺りが今後の課題になるのではないだろうか。

敗れたチュメオは序盤こそ丁寧な試合運びでポイントを先行したものの、マロンガがペースを上げると途端に試合が雑になり、最後は袖を絞り合ったままあっさりと負けを受け入れてしまった。この人のムラ気は今に始まったことではなく、今回の敗戦もあくまで「今日は負けた」という評価に留めておくべきだろう。臆病さのために袖の絞り合いに嵌ってしまう(今大会の決勝がそのパターン)ことも多いが、相手の引き手を絞る形から展開する丁寧な組み手と、そこから繰り出される足技の威力はライバルたちにとって大きな脅威。実力が階級トップクラスにあることは間違いなく、バクー世界選手権では変わらず優勝候補のひとりと考えておくべきだ。

【準々決勝】
ナタリー・パウエル(イギリス)○合技[払腰・縦四方固](3:01)△アナ=マリア・ヴァグナー(ドイツ)
マドレーヌ・マロンガ(フランス)○合技[大外刈・大内刈](1:26)△パトリシア・サンパイオ(ポルトガル)
オドレイ・チュメオ(フランス)○合技[谷落・横四方固](0:48)△ロリアナ・クカ(コソボ)
カレン・スティーフェンソン(オランダ)○優勢[技有・一本背負投]△ヤヒマ・ラミレス(ポルトガル)

【敗者復活戦】
アナ=マリア・ヴァグナー(ドイツ)○内股(2:21)△パトリシア・サンパイオ(ポルトガル)
ヤヒマ・ラミレス(ポルトガル)○合技[出足払・崩上四方固](1:28)△ロリアナ・クカ(コソボ)

【準決勝】
マドレーヌ・マロンガ(フランス)○合技[大内刈・袈裟固](0:23)△ナタリー・パウエル(イギリス)
オドレイ・チュメオ(フランス)○大内刈(1:23)△カレン・スティーフェンソン(オランダ)

【3位決定戦】
アナ=マリア・ヴァグナー(ドイツ)○GS技有・大内刈(GS3:25)△カレン・スティーフェンソン(オランダ)
ナタリー・パウエル(イギリス)○反則[指導3](3:42)△ヤヒマ・ラミレス(ポルトガル)

【決勝】
マドレーヌ・マロンガ(フランス)○反則[指導3](1:58)△オドレイ・チュメオ(フランス)

■ 78kg超級・18歳のディッコが全試合一本勝ちで優勝、真っ向勝負で強豪を次々撃破
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78kg超級決勝、ホマーヌ・ディッコがラリサ・セリッチから右外巻込「技有」

(エントリー16名)

【入賞者】
1.DICKO, Romane (FRA)
2.CERIC, Larisa (BIH)
3.SAVELKOULS, Tessie (NED)
3.KALANINA, Yelyzaveta (UKR)
5.MARANIC, Ivana (CRO)
5.TARASOVA, Galyna (UKR)
7.KINDZERSKA, Iryna (AZE)
7.SAYIT, Kayra (TUR)

第1シードのラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)とノーシードのホマーヌ・ディッコ(フランス)が決勝に進出。

決勝、組み手はディッコが右、セリッチが左ベースの両組み。試合は一貫してディッコが優勢、腰を引いてケンカ四つに構えるセリッチを一方的に攻め、1分41秒には消極的の「指導1」を奪う。ここからセリッチは奮起して右組みで奥襟を持って勝負を挑むが、あっさり場外際まで押し込まれて自ら右外巻込で展開をリセットしてしまうこととなり、以降は再び腰を引いてのケンカ四つに構えて決着の引き伸ばしを図る。2分40秒、ディッコは相手を場外際まで引き出すと、セリッチが釣り手を持ち替えようとしたタイミングで右払巻込。引き手を離さず強引に投げ切って「技有」を獲得する。投げ終わりの時点で既に裏固の形がほぼ完成しており、ディッコ労せず足を抜いて抑え込み「一本」(2:52)。若干18歳のディッコが昨年の世界無差別選手権2位のセリッチを真っ向から粉砕、見事ヨーロッパ王者の座を手に入れた。ディッコは全試合「一本」(反則含む)での戴冠。

ブダペスト世界選手権団体戦での活躍以来、フランス期待の若手として注目されて来たディッコ。細かい技術ではなく正面から組み合って投げる、その荒削りな柔道のまま、ついにシニアのトップレベルまで辿り着いてしまった。今大会では1回戦で昨年の覇者であるマリーナ・スルツカヤ(ベラルーシ)に右払腰と右払巻込の合技「一本」(2:12)、準々決勝でカイラ・サイート(トルコ)に「指導3」反則(3:48)、準決勝でテッシー・サフェルコウルス(オランダ)に右払巻込「技有」を奪った末の「指導3」反則(2:11)と、世界選手権で表彰台を狙うレベルの強豪たちを全く相手にせずに一方的に攻めまくって破っている。組み手の技術や駆け引きなどはまだまだ発展途上だが、だからこそ非常に怖い存在だ。昨年の世界ジュニア選手権では初戦で素根輝(南筑高3年)に左体落「技有」、崩袈裟固「技有」、横四方固「一本」と立て続けにポイントを奪われ敗れているものの、この選手の成長速度を考えるともはや別人と考えて良いだろう。今年の世界選手権でどのような活躍を見せてくれるのか、前述の素根、ベアトリス・ソウザ(ブラジル)と並んで非常に楽しみなジュニア世代のスター候補だ。

【準々決勝】
ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)○横四方固(3:36)△イヴァナ・マラニッチ(クロアチア)
エリザヴェータ・カラニナ(ウクライナ)○GS反則[指導3](GS0:13)△イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)
テッシー・サフェルコウルス(オランダ)○反則[指導3](2:57)△ガリーナ・タラソワ(ウクライナ)
ホマーヌ・ディッコ(フランス)○反則[指導3](3:48)△カイラ・サイート(トルコ)

【敗者復活戦】
イヴァナ・マラニッチ(クロアチア)○不戦△イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)
ガリーナ・タラソワ(ウクライナ)○横四方固(4:00)△カイラ・サイート(トルコ)

【準決勝】
ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)○GS内股(GS0:59)△エリザヴェータ・カラニナ(ウクライナ)
ホマーヌ・ディッコ(フランス)○反則[指導3](2:11)△テッシー・サフェルコウルス(オランダ)

【3位決定戦】
テッシー・サフェルコウルス(オランダ)○反則[指導3](2:32)△イヴァナ・マラニッチ(クロアチア)
エリザヴェータ・カラニナ(ウクライナ)○優勢[技有・横掛]△ガリーナ・タラソワ(ウクライナ)

【決勝】
ホマーヌ・ディッコ(フランス)○合技[払巻込・裏固](2:52)△ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)

※ eJudoメルマガ版5月24日掲載記事より転載・編集しています。

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