PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

ヨーロッパ柔道選手権2018・男子7階級レポート

(2018年5月24日)

※ eJudoメルマガ版5月24日掲載記事より転載・編集しています。
ヨーロッパ柔道選手権2018・男子7階級レポート
European Judo Championsjhips 2018
日時:2018年4月26日~28日
於:イスラエル・テルアビブ

文責:林さとる/eJudo編集部

■ 60kg級・上り調子のヤシュエフがタイトルを奪取、ゲルチェフが2年連続の2位
eJudo Photo
60kg級決勝、イスラム・ヤシュエフがヤニスラフ・ゲルチェフから豪快な右内股「一本」

(エントリー20名)

【入賞者】
1.YASHUEV, Islam (RUS)
2.GERCHEV, Yanislav (BUL)
3.MUDRANOV, Beslan (RUS)
3.MCKENZIE, Ashley (GBR)
5.PAPINASHVILI, Amiran (GEO)
5.LESYUK, Artem (UKR)
7.GARRIGOS, Francisco (ESP)
7.SZABO, Csaba (HUN)

Aシード選手4名のうちベスト4に勝ち上がったのはアミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)のみ。決勝へはともにダークホースと規定されるイスラム・ヤシュエフ(ロシア)とヤニスラフ・ゲルチェフ(ブルガリア)が勝ち上がった。決勝は右相四つ、ヤシュエフの「指導2」リードのまま試合はGS延長戦へと突入し、最後はヤシュエフが縦回転の豪快な右内股「一本」で優勝を飾った。

ヤシュエフはリオデジャネイロ五輪後からワールドツアーに起用されるようになった選手。2016年11月のグランプリ青島で2位を獲得して以降、優勝こそないもののコンスタントに成績を残しており、昨年のグランドスラム東京7位、ワールドマスターズ7位、グランドスラム・エカテリンブルク2位と上り調子。今大会でついに本格的なブレイクを果たしたということになる。この日は初戦(2回戦)でパヴェル・ペトリコフ(チェコ)に右大内刈「技有」、準決勝でアシュリー・マッケンジー(イギリス)に延長戦での「指導3」の反則(GS0:28)、準決勝でアミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)に右大内刈「技有」と有力選手を立て続けに破っての決勝進出。25歳と遅咲きだが組み手が巧みで右内股に大右内刈と取り味のある技を持っており、その実力は本物と見てよいだろう。前任ベスラン・ムドラノフも欧州選手権優勝をテコに世界に乗り出した経緯があり、今夏はこの選手の世界選手権代表入りの可能性が高い。

一方ゲルチェフは2年連続の2位獲得。組み合わせに恵まれた感はあるものの、巴投を主体とした粘り強い柔道で決勝まで勝ち上がった。準々決勝では第1シードのフランシスコ・ガリーゴス(スペイン)からこの技で「技有」も奪っている。昨年同様ピンポイントでの戦果となるのか、それともこれを上昇のきっかけとするのか、次回以降の戦いに注目したい。

リオデジャネイロ五輪金メダリストのベスラン・ムドラノフ(ロシア)は、準々決勝で上位争いの圏外と目されたアルテム・レシュク(ウクライナ)に大内刈「一本」(1:30)で敗れて本戦トーナメントから脱落。それでも敗者復活戦でガリーゴスを小内巻込「技有」で下すと、3位決定戦ではアミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)とのベテラン対決を袖釣込腰「技有」で制して表彰台を確保した。なかなか調子が上がってこないが、後輩のヤシュエフが活躍を続ける中で世界選手権代表の座を掴むことが出来るのか、注目である。

【準々決勝】
ヤニスラフ・ゲルチェフ(ブルガリア)○優勢[技有・巴投]△フランシスコ・ガリーゴス(スペイン)
アルテム・レシュク(ウクライナ)○大内刈(1:30)△ベスラン・ムドラノフ(ロシア)
アミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)○優勢[技有・体落]△チャバ・サボ(ハンガリー)
イスラム・ヤシュエフ(ロシア)○GS反則[指導3](GS0:28)△アシュリー・マッケンジー(イギリス)

【敗者復活戦】
ベスラン・ムドラノフ(ロシア)○優勢[技有・小内巻込]△フランシスコ・ガリーゴス(スペイン)
アシュリー・マッケンジー(イギリス)○横落(1:26)△チャバ・サボ(ハンガリー)

【準決勝】
ヤニスラフ・ゲルチェフ(ブルガリア)○片羽絞(2:50)△アルテム・レシュク(ウクライナ)
イスラム・ヤシュエフ(ロシア)○優勢[技有・大内刈]△アミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)

【3位決定戦】
ベスラン・ムドラノフ(ロシア)○優勢[技有・袖釣込腰]△アミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)
アシュリー・マッケンジー(イギリス)○合技[体落・浮落](3:45)△アルテム・レシュク(ウクライナ)

【決勝】
イスラム・ヤシュエフ(ロシア)○GS内股(GS1:02)△ヤニスラフ・ゲルチェフ(ブルガリア)

■ 66kg級・強豪次々敗れる大混戦、昨年準優勝のゴンボッチが優勝飾る
eJudo Photo
66kg級を制したアドリアン・ゴンボッチ

(エントリー32名)

【入賞者】
1.GOMBOC, Adrian (SLO)
2.MEDVES, Matteo (ITA)
3.SHERSHAN, Dzmitry (BLR)
3.FLICKER, Tal (ISR)
5.SAFAROV, Orkhan (AZE)
5.GUSIC, Marko (MNE)
7.SHIKHALIZADA, Nijat (AZE)
7.CRISOSTOMO, Joao (POR)

第1シードのヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)が無名選手のミヘイル・アダム(ドイツ)に右袖釣込腰「技有」で敗れるという衝撃的な展開で幕を開けた本階級。これ以降も次々と強豪が敗れ去り、シード選手8名のうちベスト8に残ったのは僅か2名という大荒れのトーナメントとなった。

決勝へと勝ち上がったのは、マッテオ・メドヴェス(イタリア)とアドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)の伏兵2名。この決勝は右相四つ、奥を叩いて密着を狙うメドヴェスをゴンボッチが引き手で脇を突きながら捌き続け、1分29秒に相手が強引に前に出て来た際をとらえて右外巻込「技有」を奪取。リードを得たことで余裕が生まれたゴンボッチは以降、いなして、絞って、突いてと、様々な形でメドヴェスの攻めを封殺、ラスト10秒には相手の隅返を躱して寝技を展開、横四方固で抑え込む。ゴンボッチが合技「一本」(4:00)で勝利を収め、見事初優勝を飾った。

ゴンボッチは昨年のヨーロッパ選手権で2位を獲得するなどピンポイントで成績は残しているものの、その爆発力の高さに比して安定感がなく、全体としては今ひとつ存在感を示せずにいた。しかし今年に入ってからは3月のグランプリ・アガディールで優勝、同月のグランドスラム・エカテリンブルクでも5位入賞と比較的成績が安定してきており、これをきっかけに階級上位への定着を目指したいところ。今大会では準々決勝で昨年の世界選手権で3位を獲得しているタル・フリッカー(イスラエル)を隅返「技有」で破っており、しっかりとピークを合わせることができれば世界選手権で上位への進出も可能なはずだ。

昨年の覇者ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)は2回戦でニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)に肩車「一本」(3:03)で敗退。そのシハリザダも準々決勝でメドヴェスに大外刈「一本」(2:52)で敗れた。今大会で3大会続けて66kg級での出場となったブダペスト世界選手権60kg級準優勝者のオルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)は、準決勝でゴンボッチに大内刈「一本」(GS1:57)で敗れると、3位決定戦でもズミトリー・シェルシャン(ベラルーシ)に背負投と肩車の合技で苦杯を喫し、表彰台には手が届かなかった。本命イベントであるヨーロッパ選手権に66kg級で参加したことを見る限り、どうやら本格的に階級を上げるようだが、上位に定着するにはまだ時間がかかりそうだ。

eJudo Photo
66kg級決勝、ゴンボッチがマッテオ・メドヴェスから右外巻込「技有」

【準々決勝】
マルコ・グシッチ(モンテネグロ)○GS技有・内股透(GS1:19)△ズミトリー・シェルシャン(ベラルーシ)
マッテオ・メドヴェス(イタリア)○大外刈(2:52)△ニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)
アドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)○優勢[技有・隅返]△タル・フリカー(イスラエル)
オルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)○合技[大外刈・大外刈](2:20)△ジョアオ・クリソストモ(ポルトガル)

【敗者復活戦】
ズミトリー・シェルシャン(ベラルーシ)○大内刈(2:39)△ニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)
タル・フリカー(イスラエル)○肩車(2:58)△ジョアオ・クリソストモ(ポルトガル)

【準決勝】
マッテオ・メドヴェス(イタリア)○合技[払腰・横四方固](2:48)△マルコ・グシッチ(モンテネグロ)
アドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)○GS大内刈(GS1:57)△オルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)

【3位決定戦】
ズミトリー・シェルシャン(ベラルーシ)○合技[背負投・肩車](3:20)△オルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)
タル・フリカー(イスラエル)○合技[背負投・袈裟固](1:39)△マルコ・グシッチ(モンテネグロ)

【決勝】
アドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)○合技[外巻込・横四方固](4:00)△マッテオ・メドヴェス(イタリア)

■ 73kg級・躍進中のカラペティアンがみごと優勝、名実ともに強豪の仲間入り果たす
eJudo Photo
73kg級決勝、フェルディナンド・カラペティアンがヒダヤット・ヘイダロフから左小内巻込「技有」

(エントリー41名)

【入賞者】
1.KARAPETIAN, Ferdinand (ARM)
2.HEYDAROV, Hidayat (AZE)
3.CILOGLU, Bilal (TUR)
3.MACIAS, Tommy (SWE)
5.SHOKA, Vadzim (BLR)
5.GHAZARYAN, Arsen (ARM)
7.KHOMULA, Artem (UKR)
7.GJAKOVA, Akil (KOS)

決勝カードは、近頃好調のフェルディナンド・カラペティアン(アルメニア)と昨年の王者であるヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)という魅力的な顔合わせ。組み手は右相四つ、ともに密着しての戦いを得意とする両者の対戦は、双方背中を持ち合っての激しい打ちあいとなる。1分間際、相手の引き手を嫌ったヘイダロフがこれを切ったところにカラペティアンが左小内巻込。相手の組み手の直しに合わせて、かつ素晴らしいスピードで、しかもその速さを殺さず前技フェイントを利かせた手練れの一撃。ヘイダロフが尻餅で耐えたためにいったんはノーポイントで流されたが、映像による確認の末、手を畳についてのディフェンスと判断された模様で試合時間1分46秒に「技有」が宣告される。さらに2分20秒、カラペティアンはヘイダロフの強引な右内股巻込を抱き止めると、前のめりに身体を捨てて逃れようとする相手を無理矢理引っこ抜いて裏投。ヘイダロフは空中で身を捩るが背中を着いてしまい、これも映像による確認を経て「技有」が宣告される。結果、カラペティアンが合技「一本」(2:20)で2連覇を狙うヘイダロフを退け、初優勝を飾った。カラペティアンはオール「一本」でのタイトル獲得。

カラペティアンは直近のグランドスラム2大会で連続して表彰台に上がっている(デュッセルドルフ3位、エカテリンブルク2位)、現在の73kg級シーンで今最も旬な選手のひとり。密着した状態から強引に腰を差し入れて繰り出す左右の腰技が持ち味で、今大会でも準決勝でトミー・マシアス(スウェーデン)を豪快な右釣腰「一本」(1:59)で破るなど威力のある投げを連発して決勝まで勝ち上がった。昨年までは目立った成績がほとんどない無名選手であったが、25歳で迎えた今シーズンに一気に開花、今回の優勝で名実ともにトップ選手の仲間入りを果たした格好だ。この階級にはあまりいない典型的なパワーファイターであり、今後階級内でどのような活躍を見せるのか、非常に楽しみだ。

第1シードに配されていたブダペスト世界選手権2位のルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)は3回戦でアルテム・ホムラ(ウクライナ)にラスト5秒の右内股「一本」(3:55)で敗れ、決勝ラウンドに進出できないまま畳を去った。第2シードでリオデジャネイロ五輪銅メダリストのラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)も、初戦(2回戦)でイゴール・ヴァンドケ(ドイツ)に右大内刈「技有」(GS0:59)を奪われ初戦敗退に終わっている。

【準々決勝】
フェルディナンド・カラペティアン(アルメニア)○大腰(3:31)△アルテム・ホムラ(ウクライナ)
トミー・マシアス(スウェーデン)○合技[小外掛・大内刈](1:55)△ビラル・ジログル(トルコ)
ヴァジム・ショーカ(ベラルーシ)○優勢[技有・隅落]△アルセン・ガザリャン(アルメニア)
ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)○小外掛(1:40)△アキル・ヤコヴァ(コソボ)

【敗者復活戦】
ビラル・ジログル(トルコ)○GS小内巻込(GS0:39)△アルテム・ホムラ(ウクライナ)
アルセン・ガザリャン(アルメニア)○優勢[技有・隅返]△アキル・ヤコヴァ(コソボ)

【準決勝】
フェルディナンド・カラペティアン(アルメニア)○釣腰(1:59)△トミー・マシアス(スウェーデン)
ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)○合技[肩車・横四方固](3:58)△ヴァジム・ショーカ(ベラルーシ)

【3位決定戦】
ビラル・ジログル(トルコ)○優勢[技有・小内巻込]△ヴァジム・ショーカ(ベラルーシ)
トミー・マシアス(スウェーデン)○大腰(2:29)△アルセン・ガザリャン(アルメニア)

【決勝】
フェルディナンド・カラペティアン(アルメニア)○合技[小内巻込・裏投](2:20)△ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)

■ 81kg級・地元イスラエルのムキが優勝、シュシとの伏兵対決を制す
eJudo Photo
81kg級を制したサギ・ムキ。両手を上げて地元の大歓声に応える。

(エントリー33名)

【入賞者】
1.MUKI, Sagi (ISR)
2.CHOUCHI, Sami (BEL)
3.LAPPINAGOV, Aslan (RUS)
3.ESPOSITO, Antonio (ITA)
5.EGUTIDZE, Anri (POR)
5.GULDUREN, Ilker (TUR)
7.DJALO, Alpha Oumar (FRA)
7.CSOKNYAI, Laszlo (HUN)

決勝に進んだのはもと73kg級で地元イスラエルのサギ・ムキ(イスラエル)とサミ・シュシ(ベルギー)。組み手はムキが右、シュシが左組みのケンカ四つ。ムキは体格差を利して間合いを詰めてくるシュシの前に自分の形を作ることができず、押し込まれる展開が続く。しかし、組み際に片襟の左大外刈を仕掛けることで流れを完全には渡さず、ともに「指導1」を失った状態で勝負はGSへ。さらに両者に「指導」1つずつが追加されて迎えたGS2分19秒、シュシが乗り上げるようにして仕掛けた強引な左大外刈をムキが裏投に捉える。体が伸び切っていたシュシは勢い良く腰から畳に落ち、主審は「技有」を宣告。地元選手の優勝に会場は割れんばかりの大歓声、勝利したムキは両手を上げてこれに応えていた。

上位陣の層が厚く、かつ戦力が拮抗しているために大会のたびに混戦が続いている本階級。今大会もその例に漏れず、有力選手が次々と敗れる戦国トーナメントとなった。優勝したムキは73kg級の強豪だったが、リオデジャネイロ五輪後に階級を変更。以後昨年10月のグランプリ・タシケントを制した以外は目立った成績はなかったが、地元の大歓声に背中を押される形で一気に欧州王者の座を手にした。ムキがこの大会に優勝するのは、73kg級時代の2015年以来2度目。81kg級にあってはまだまだ線が細い印象だが、左右の技が利くことや組み手の上手さでこれをカバーしており、どうやら順応はほぼ完了という印象。ただし今回は有力選手が序盤で敗れたために組み合わせに恵まれた部分もあり、次回以降どのような試合を見せてくれるのかに期待したい。

第1シードのフランク・デヴィト(オランダ)は3回戦でシュシに裏投「技有」と左内股「一本」(2:54)を立て続けに奪われ、順位決定ラウンドに進むことすら叶わず。失意の大会となった。

eJudo Photo
81kg級決勝、ムキがサミ・シュシから裏投「技有」

【準々決勝】
サミ・シュシ(ベルギー)○合技[抱分・抱分](3:42)△アルファ=オウマ・ジャロ(フランス)
アントニオ・エスポージト(イタリア)○優勢[技有・隅落]△アンリ・エグティゼ(ポルトガル)
アスラン・ラッピナゴフ(ロシア)○出足払(1:40)△イルカー・グルドレン(トルコ)
サギ・ムキ(イスラエル)○合技[大内刈・釣込腰](2:26)△ラズロ・チョクナイ(ハンガリー)

【敗者復活戦】
アンリ・エグティゼ(ポルトガル)○小外掛(0:25)△アルファ=オウマ・ジャロ(フランス)
イルカー・グルドレン(トルコ)○優勢[技有・釣腰]△ラズロ・チョクナイ(ハンガリー)

【準決勝】
サミ・シュシ(ベルギー)○反則[指導3](3:58)△アントニオ・エスポージト(イタリア)
サギ・ムキ(イスラエル)○反則[指導3](3:39)△アスラン・ラッピナゴフ(ロシア)

【3位決定戦】
アスラン・ラッピナゴフ(ロシア)○隅落(1:00)△アンリ・エグティゼ(ポルトガル)
アントニオ・エスポージト(イタリア)○合技[小内刈・背負投](1:48)△イルカー・グルドレン(トルコ)

【決勝】
サギ・ムキ(イスラエル)○GS技有・裏投(GS2:19)△サミ・シュシ(ベルギー)

■ 90kg級・大物イゴルニコフが戴冠、現役世界王者マイドフは意地の2位滑り込み
eJudo Photo
90kg級決勝、ミハイル・イゴルニコフがネマニャ・マイドフを左内股で攻める

(エントリー38名)

【入賞者】
1.IGOLNIKOV, Mikhail (RUS)
2.MAJDOV, Nemanja (SRB)
3.SHERAZADISHVILI, Nikoloz (ESP)
3.TSELIDIS, Theodoros (GRE)
5.VARAPAYEU, Yahor (BLR)
5.VAN T END, Noel (NED)
7.EFEMGIL, Batuhan (TUR)
7.GVINIASHVILI, Beka (GEO)

現役世界王者のネマニャ・マイドフ(セルビア)と3月のグランドスラム・エカテリンブルク大会を制して現在売り出し中の新鋭ミハイル・イゴルニコフ(ロシア)が決勝に進出。組み手はイゴルニコフが左、マイドフが右組みのケンカ四つ。試合は終始イゴルニコフのペースで進み、防戦一方のマイドフに1分40秒までに「指導2」が累積する。3分過ぎ、イゴルニコフが左内股を仕掛けるとマイドフは足を高く上げて跨いで凌ごうとするが、イゴルニコフは両手を離さず頭側に抜けた相手を背負投のように投げ切り「技有」を獲得。これが決勝点となり、イゴルニコフがヨーロッパ選手権初優勝を飾った。

優勝したイゴルニコフは鉄柱が入っているかのように真っすぐ背筋を伸ばした姿勢から威力ある左内股と足技を繰り出す、いわゆる「本格派」。エカテリンブルク大会の決勝ではベイカー茉秋(日本中央競馬会)を切れ味鋭い燕返「一本」で破り日本でも非常に注目されていた。今大会では初戦でアクセル・クレルジェ(フランス)を僅か49秒の左大内刈「一本」で下すと、2回戦ではクエジョ・ナーバリ(ウクライナ)に左内股巻込で一本勝ち(3:00)。準決勝では昨年のワールドマスターズ王者・ベカ・グヴィニアシヴィリ(ジョージア)を相手の肩車を浴びせ倒しての隅落「技有」で撃破し、準決勝ではニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)を開始24秒の左内股「一本」で一蹴してみせた。今回破った顔ぶれを見ても既に実力が世界トップクラスにあることは間違いなく、バクー世界選手権でも優勝争いの一角を担うことは確実だろう。

一方2位のマイドフもしっかり結果を出して世界王者の面目を保った格好だ。組み合わせに恵まれてトップ選手との対戦はなかったものの、泥臭く食らいついて最後には勝利してしまう不思議な強さを存分に発揮、決勝でも「指導2」を失ってからの異様な粘りでイゴルニコフを苦しめた。派手なガッツポーズやビッグマウスの一方で柔道スタイルは地味で泥臭く、独特の世界観を構築している感あり。畳の中と外のギャップで作り出すこの不思議なキャラクターが試合では良い方向に作用しているようだ。今大会でも2回戦でイェスパー・スミンク(オランダ)から「変な技」(ケンカ四つクロスの内股を、頭から突っ込んでの肩車で強引に切り返す)で「一本」(3:21)を得るなどらしさを存分に発揮しており、連覇に照準を合わせて挑んでくるであろう世界選手権での活躍が楽しみだ。

前述のとおり優勝候補たちは枕を並べてイゴルニコフに敗退。グヴィニアシヴィリは敗者復活戦でもノエル・ファンテンド(オランダ)の変則片手スタイルの前に左袖釣込腰と左一本背負投で「技有」2つを立て続けに失って合技「一本」(3:51)で敗れ、表彰台にすら手が届かなかった。昨年のチャンピオンであるアレクサンダー・クコル(セルビア)はヤホル・ヴァラパエウ(ベラルーシ)を相手に開始22秒に失った横落「技有」を取り返すことができず、初戦(2回戦)敗退に終わった。

【準々決勝】
セオドロス・ツェリディス(ギリシャ)○合技[一本背負投・肩車](2:42)△ヤホル・ヴァラパエウ(ベラルーシ)
ネマニャ・マイドフ(セルビア)○GS反則[指導3](GS0:20)△バツハン・エフェムギル(トルコ)
ミハイル・イゴルニコフ(ロシア)○優勢[技有・隅落]△ベカ・グヴィニアシヴィリ(ジョージア)
ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)○優勢[技有・内股]△ノエル・ファンテンド(オランダ)

【敗者復活戦】
ヤホル・ヴァラパエウ(ベラルーシ)○GS合技[大内刈・隅落](GS1:26)△バツハン・エフェムギル(トルコ)
ノエル・ファンテンド(オランダ)○合技[袖釣込腰・一本背負投](3:51)△ベカ・グヴィニアシヴィリ(ジョージア)

【準決勝】
ネマニャ・マイドフ(セルビア)○釣込腰(3:09)△セオドロス・ツェリディス(ギリシャ)
ミハイル・イゴルニコフ(ロシア)○内股(0:24)△ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)

【3位決定戦】
ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)○隅落(3:13)△ヤホル・ヴァラパエウ(ベラルーシ)
セオドロス・ツェリディス(ギリシャ)○優勢[技有・一本背負投]△ノエル・ファンテンド(オランダ)

【決勝】
ミハイル・イゴルニコフ(ロシア)○優勢[技有・内股]△ネマニャ・マイドフ(セルビア)

■ 100kg級・好調ニキフォロフが最激戦階級を制覇、マレは悔しい2年連続2位に終わる
eJudo Photo
100kg級を制したトマ・ニキフォロフ

(エントリー31名)

【入賞者】
1.NIKIFOROV, Toma (BEL)
2.MARET, Cyrille (FRA)
3.PALTCHIK, Peter (ISR)
3.KOTSOIEV, Zelym (AZE)
5.BILALOV, Niiaz (RUS)
5.MUKETE, Daniel (BLR)
7.FARA, Aaron (AUT)
7.FONSECA, Jorge (POR)

最激戦階級。強豪ひしめくなかを決勝へと勝ち上がったのはトマ・ニキフォロフ(ベルギー)とシリル・マレ(フランス)。

決勝は右相四つ。マレが1分に右払腰で「技有」を先行するが、2分間際にニキフォロフが裏投失敗から得意の「ボーアンドアローチョーク」に持ち込み、片手絞「一本」(1:52)で逆転勝ち。見事ヨーロッパ選手権初優勝を飾った。2年連続の2位に終わったマレは「一本」の宣告後に唇を噛みながら畳を叩き、悔しさを隠し切れないといった様子だった。

昨シーズンは世界無差別選手権で2位を獲得するなど躍進したニキフォロフ。高い身体能力に豊富な立技のバリエーション、そして寝際の攻めの早さと攻守に隙がなく、まさに現在キャリアのピークを迎えているという印象だ。今大会では組み力を警戒して組み合おうとしない相手を、釣り手のみを持った状態からの左一本背負投や左「一本大外」で投げつける場面も多く見られ、柔道スタイルの幅もさらに広がっている模様。欧州王者として臨む9月のバクー世界選手権でも注目である。

一方敗れたマレも2月のグランドスラム・パリ大会に続いて表彰台に登り、30歳のベテランになっても変わらぬ強さを示してみせた。立って良し寝て良しのオールラウンダーぶりにも磨きがかかり、2回戦ではこれまであまり見られなかった左袖釣込腰でミクロス・サーイエニッチ(ハンガリー)から「一本」(1:20)を獲得。準々決勝と準決勝ではいずれも片手絞(いわゆる「腰絞め」)により一本勝ちを収めている。柔道の完成度が高く、かつ安定しており、ベストコンディションで臨めばまだ十分に世界選手権でも表彰台を狙えるのではないだろうか。

第1シードでブダペスト世界選手権2位のヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)は初戦(2回戦)でダニエル・ムケテ(ベラルーシ)に左内股「技有」(GS1:08)を奪われまさかの敗退。ムケテはグランドスラム・エカテリンブルクの3位決定戦でマイケル・コレル(オランダ)から鮮やかな送足払「一本」を奪うなど今年度々業師ぶりを見せつける場面があり、今後も要注目。

第2シードのキリル・デニソフ(ロシア)も2回戦で昨年のジュニア王者・ゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン)に横落と隅落で「技有」2つを失い合技「一本」(2:09)で敗れ、上位戦に勝ち上がることができなかった。マイケル・コレル(オランダ)は出場しなかった。

eJudo Photo
100kg級決勝、ニキフォロフがシリル・マレを裏投から寝技に引き込む

【準々決勝】
ダニエル・ムケテ(ベラルーシ)○浮腰(3:46)△アーロン・ファラ(オーストリア)
トマ・ニキフォロフ(ベルギー)○大外刈(0:48)△ニイアズ・ビラロフ(ロシア)
ペテル・パルチク(イスラエル)○優勢[技有・浮腰]△ゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン)
シリル・マレ(フランス)○片手絞(2:16)△ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)

【敗者復活戦】
ニイアズ・ビラロフ(ロシア)○優勢[技有・肩車]△アーロン・ファラ(オーストリア)
ゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン)○反則[指導3](3:26)△ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)

【準決勝】
トマ・ニキフォロフ(ベルギー)○GS技有・大外落(GS0:19)△ダニエル・ムケテ(ベラルーシ)
シリル・マレ(フランス)○片手絞(2:16)△ペテル・パルチク(イスラエル)

【3位決定戦】
ペテル・パルチク(イスラエル)○隅落(0:39)△ニイアズ・ビラロフ(ロシア)
ゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン)○大車(1:49)△ダニエル・ムケテ(ベラルーシ)

【決勝】
トマ・ニキフォロフ(ベルギー)○片手絞(1:52)△シリル・マレ(フランス)

■ 100kg超級・クルパレクが3度目の欧州王座を獲得、新鋭バシャエフが強豪次々と破って存在感示す
eJudo Photo
100kg超級決勝、ルカシュ・クルパレクがタメルラン・バシャエフから隅落「技有」

(エントリー20名)

【入賞者】
1.KRPALEK, Lukas (CZE)
2.BASHAEV, Tamerlan (RUS)
3.HEGYI, Stephan (AUT)
3.GROL, Henk (NED)
5.MEYER, Roy (NED)
5.TUSHISHVILI, Guram (GEO)
7.GORDIIENKO, Oleksandr (UKR)
7.SARNACKI, Maciej (POL)

2015年世界ジュニア王者のタメルラン・バシャエフ(ロシア)ともと100kg級金メダリストのルカシュ・クルパレク(チェコ)が決勝に進出。

決勝はクルパレクが左、バシャエフが右組みのケンカ四つ。上から被って捨身技を狙う長身のクルパレク、低身長で担ぎ技が主体のバシャエフと、両者のスタイルは対照的。序盤はバシャエフが脇を掬って、あるいは懐に潜り込んでと躍動。優位に試合を進めるが、1分半が経過した辺りからやや疲労し、クルパレクの圧が効き始める。2分半過ぎ、相手の圧を嫌ったバシャエフが場外際で苦し紛れに右背負投を仕掛けると、クルパレクはこれを見逃さず隅落で捲り返して「技有」を奪取。そのまま足を抜いて横四方固に抑え込み、相手の「参った」(3:11)を引き出す。クルパレクは100kg級時代の2014年以来となる3度目のヨーロッパ選手権制覇。

入賞者のなかに大型選手やアンコ型選手は一人もおらず、リオデジャネイロ五輪後から続いていたアスリート体型の動ける選手が活躍する傾向はいよいよ極まった感がある。新ルール下でスタミナの重要性が増していること、大型選手は総じて下半身が弱く担ぎ技を苦手としていることなど理由は多数考えられるが、少なくとも今年の世界選手権でこれらの「動ける、汗をかける」選手たちが主役となることは間違いないだろう。

準優勝のバシャエフは今年からワールドツアーに本格的に参戦し始めたロシアの注目株。昨年は23歳以下の欧州選手権で優勝を飾っており、3月に行われたグランドスラム・エカテリンブルク大会では昨年のワールドマスターズ王者のグラム・ツシシヴィリ(ジョージア)を右小内刈「一本」で破って3位を獲得する殊勲を演じている。今大会では1回戦でウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)、2回戦でオール・サッソン(イスラエル)、準々決勝でロイ・メイヤー(オランダ)、準決勝でツシシヴィリと、世界選手権で表彰台を狙うレベルの強豪たちを次々と撃破して2位を獲得。近年人材難に苦しめられてきたロシア100kg超級(アレクサンドル・ミハイリンが現役復帰するほどであった)の救世主になることができるのか、周囲にマークされて臨むことになる次回以降の戦いに注目したい。

ほか、第1シードで大会をスタートしたツシシヴィリは前述のとおり準決勝でバシャエフに敗退。試合終了間際に一瞬気を抜いたところを右袖釣込腰で転がされて「技有」失陥、礼をした後も一人畳に残って抗議を行うなどマナーに反する態度も見られ、メダルなしに終わったジョージアチームの不調ぶりを象徴するかのようだった。3位決定戦では明らかにやる気がない様子でフロルを相手に早々に「指導3」(2:28)を失い敗戦、正面に向かって過剰に礼を繰り返すなど、ここでも不貞腐れたような態度だった。

【準々決勝】
グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)○優勢[技有・袖釣込腰]△オレクサンドル・ゴルディエンコ(ウクライナ)
タメルラン・バシャエフ(ロシア)○GS技有・背負投(GS1:51)△ロイ・メイヤー(オランダ)
ルカシュ・クルパレク(チェコ)○GS大外刈(GS2:10)△ヘンク・フロル(オランダ)
ステファン・ヘギー(オーストリア)○優勢[技有・大外返]△マチェイ・サルナツキ(ポーランド)

【敗者復活戦】
ロイ・メイヤー(オランダ)○反則[指導3](2:59)△オレクサンドル・ゴルディエンコ(ウクライナ)
ヘンク・フロル(オランダ)○横四方固(1:19)△マチェイ・サルナツキ(ポーランド)

【準決勝】
タメルラン・バシャエフ(ロシア)○優勢[技有・袖釣込腰]△グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)
ルカシュ・クルパレク(チェコ)○合技[隅返・横四方固](1:41)△ステファン・ヘギー(オーストリア)

【3位決定戦】
ロイ・メイヤー(オランダ)○GS反則[指導3](GS3:32)△ステファン・ヘギー(オーストリア)
ヘンク・フロル(オランダ)○反則[指導3](2:28)△グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)

【決勝】
ルカシュ・クルパレク(チェコ)○横四方固(3:11)△タメルラン・バシャエフ(ロシア)

※写真は権利者の許諾を得て掲載しています

※ eJudoメルマガ版5月24日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る




supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.