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【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第54回

(2018年5月21日)

※ eJudoメルマガ版5月21日掲載記事より転載・編集しています。
【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第54回
国民体育といえば、国民の大多数のための体育という意味であって、ただ一部分の者が物好きに行うような種類のものであってはならぬ。
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資料提供 公益財団法人講道館
copyright:Kodokan Judo Institute

出典:「国民体育の大方針について」
中等教育 69号 昭和6年3月 (『嘉納治五郎大系』8巻58頁)
 
今年の4月、「日本体育協会」の名称が「日本スポーツ協会」に変更されました。

この「日本体育協会」の前身である「大日本体育協会」の創設者であり、初代会長であったのが、ご存知のとおり、嘉納治五郎師範です。
大日本体育協会は、対外的には日本のオリンピック参加を、国内的には「国民体育」の発達を目的として組織されました。オリンピック参加は分かりやすいのですが、国内の目的である「国民体育」の発達とはどういうことでしょうか。そもそも、「国民体育」とは?その答えが、今回の「ひとこと」と言えるでしょう。

ここで師範のいう「体育」とは教科名ではありません。講道館柔道・三大目的の1つである「体育」とも、ほんの少し違います。ここでいう「体育」は<身体を鍛えること>とその手段・方法(運動種目等)をあわせた言葉といったところでしょう。
 
では、嘉納師範が一番良いと考え推奨しようとしていた「国民体育」は、何でしょうか?

「講道館柔道」・・・と言いたいところですが、残念ながらそうではありません。今回の「ひとこと」にあるように国民体育は国民の大多数、つまり老若男女の区別なく行えるものでなければなりません。そのためには、場所や用具、人数に制限されないことも大切です。ここでいわゆるスポーツの多くが脱落してしまいます。柔道・剣道といった武道も同じです。
当時学校で行われていた体操はどうでしょうか。これも全身をバランス良く鍛えるためには、よく出来ています。また、場所は人数の制限もありません。ですが、師範は学校に通っている間は、強制されて行うが、面白みがないため、卒業後はやらなくなり、継続が難しいと言っています。体操も違うようです。

では、そろそろ答えを・・・師範が推奨した「国民体育」それは「徒歩」です。あの歩く徒歩です。

柔道修行者としては、何か納得できませんが、当時、師範が試行錯誤の上、たどり着いた国民体育として、最も適したものが、これだったようです。歩くことは誰でも出来ます。強度も人それぞれで調整が出来ます。道具もいりません。また、様々な場所を歩き景色等を見ることにより、歩く楽しみを増すことも出来るといいます。
師範が、国民体育として「徒歩」、今で言う「ウォーキング」を考えていたとは・・・。意外に思われるのは筆者だけではないはずです。

しかし、ここに師範の偉大さが見られるのではないでしょうか。心血注いだ講道館柔道に対する自負はかなりのものがあったでしょう。であれば、大日本体育協会を背景に、講道館柔道を国民体育として奨励しても不思議ではありません。にもかかわらず、相手や畳が敷かれた場所が必要な講道館柔道の国民体育としての欠点を分析し、奨励対象から除外しています。その上で、当時の社会や国民の状況を分析し、多くの国民が継続的に行うことができ、その身体を鍛えることが出来る方法は何か?を考え、「徒歩」という結論を導き出した。目的に合致しなければ、自らの創作物ですら除外する、合理的かつ冷静な思考と意志には驚きを禁じ得ません。
 
もっとも、師範は徒歩の推奨だけで満足していたわけではありません。その後も国民体育の研究を続けた結果、後年、自信の生涯の作品である講道館柔道を基にした「攻防式国民体育」、さらに、その改良版である「精力善用国民体育」を作成しました。

師範の「国民体育」すなわち<国民の大多数のための体育>への熱意が伝わってきます。


※読みやすさを考慮して引用は『嘉納治五郎大系』から行っています。

著者:元 敏季(ハジメ・トシキ)
1975年生まれ。柔道は中学校から始め、大学までは競技を中心に行うが、卒業論文を機に柔道の文化的側面に関心を持ち、大学院へ進学。凡そ10年、大学院・研究機関に所属するも、研究とは異なる分野の仕事に就き現在に至る。ライフワークとして嘉納治五郎に関する史料を蒐集・研究し、その成果を柔道振興のため発信しようとしている

※ eJudoメルマガ版5月21日掲載記事より転載・編集しています。

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