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【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第53回

(2018年5月7日)

※ eJudoメルマガ版5月7日掲載記事より転載・編集しています。
【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第53回
旅行から十分の利益を得ようと思えば、自分の力の及ぶかぎり各方面のことに心を配って、なるだけ多くの得物をしようと心掛けねばならぬ
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資料提供 公益財団法人講道館
copyright:Kodokan Judo Institute

出典:「柔道の修行はその各方面の練習を兼ねて行うてこそ真の意義を有するのである」
 有効の活動 7巻9号 大正10年9月 
(『嘉納治五郎大系』2巻80頁)
 
「実業之日本社」という出版社があります。

そこから「実業之日本」という雑誌が刊行されていましたが、明治45年(1912)1月に発行された号に「余の最も好むもの・最も厭(いや)なもの三つ」というアンケート結果の記事が掲載されています。そこに高橋是清(首相、日本銀行総裁など歴任)や下田歌子(女子教育の先駆者・歌人)などの著名人と並んで嘉納師範の回答も掲載されています。師範の好きなもの・嫌なものが一体何か、気になりますが、好むものの最初にあげられているのは「責任を有せざる旅行」です(※)。旅行がお好きだったのですね。

旅行には、いろいろな目的や方法があるでしょう。人に会ったり、現地でしか食べられないものを食べたり、景色や史跡を見たり、あるいは単純に現実からの逃避が目的ということもあります。移動方法や宿泊先等も様々でしょう。

ただ、<心身の力を最も有効に使用する>ことを掲げ、実践に努めた師範にとって、旅行も心身の力を無駄に使うものであってはならない、と考えたであろうことは簡単に想像できます。その旅をより充実したものにすること(≒心身の力を有効に使うこと)ためには、事前に様々な準備や調査を行い、少しでも多くのものをその旅行から得ようとするべきだとしています。

今回の「ひとこと」、実は次のような内容が続きます。<(旅行に対するのと同じ)心がけで柔道の修行をすれば、智徳の修養もおのずから出来るのである>と。

旅行と柔道の修行。普通はなかなか結びつかないでしょうが、道場における修行とその社会生活における応用に、垣根がない師範の発言と考えれば不自然でもなんでもありません。

柔道の修行を通して出来る限りメリットを得ようと心掛け、修行することにより、智徳の修養という精神面での成果もより充実したものになるということです。逆を言えば、普段からそういった心掛けを持って、修行にのぞまなければ、その成果は不十分ということです。
 
今回の出典タイトルは「柔道の修行はその各方面の練習を兼ねて行うてこそ真の意義を有するのである」です。講道館柔道の本当の意義を得るために、どのように修行すべきかについて論じたものです。今回の「ひとこと」一見、旅行についてに見えますが、実は、講道館柔道のあるべき修行態度を旅行に例えた一節であったわけです。
 
柔道と人間形成、よく結びつけられますが、ただ、漠然と道場での修行を行うことが、どういうことか。事前に何の目的も準備もなしに行った旅行がどのようなものになるか、想像していただければ分かりやすいのではないでしょうか。

※他のものも紹介しますと
好むもの:「風景の好(よ)き所で閑日月を送る事」「閑暇あるときに気に入った人と談話し気に向いた書を読むこと」
嫌なもの:「ぶること」「下手な音楽」「酒に飲まるる人」

※読みやすさを考慮して引用は『嘉納治五郎大系』から行っています。


著者:元 敏季(ハジメ・トシキ)
1975年生まれ。柔道は中学校から始め、大学までは競技を中心に行うが、卒業論文を機に柔道の文化的側面に関心を持ち、大学院へ進学。凡そ10年、大学院・研究機関に所属するも、研究とは異なる分野の仕事に就き現在に至る。ライフワークとして嘉納治五郎に関する史料を蒐集・研究し、その成果を柔道振興のため発信しようとしている。


※写真、記事の無断転載および転用を厳に禁じます

※ eJudoメルマガ版5月7日掲載記事より転載・編集しています。

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