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春日柔道クラブが7年ぶり2度目の優勝、2戦連続の代表戦を制す・第38回全国少年柔道大会即日レポート

(2018年5月5日)

※ eJudoメルマガ版5月5日掲載記事より転載・編集しています。
春日柔道クラブが7年ぶり2度目の優勝、2戦連続の代表戦を制す
第38回全国少年柔道大会即日レポート
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優勝の春日柔道クラブ

五人制団体で少年柔道日本一を争う第38回全国少年柔道大会が5日、講道館大道場で行われ、春日柔道クラブ(東京)が7年ぶり2度目の優勝を飾った。決勝で古賀塾(神奈川)を1-1の末の代表戦で破った。

3位には東福岡柔道教室(福岡)と宇治柔道会(京都)が入賞した。

入賞者、監督と選手のコメント、決勝トーナメント1回戦のスコアと準々決勝以降の対戦詳細を含む大会レポートは下記。

※編成は先鋒から5年生2人、6年生3人
※2017年12月まで適用されていた国際柔道連盟試合審判規定及び国内における少年大会特別規定(2018年3月1日改正、4月1日施行)採用。勝敗の基準は「技有」または「僅差」(「指導」2差)以上。代表戦は3分間、勝敗がつかない場合は旗判定実施。

文責:古田英毅
撮影:辺見真也、林さとる

■ 準決勝まで
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決勝トーナメント1回戦、春日柔道クラブの次鋒井上大智が有朋柔道塾・高原心輝から払腰「一本」。

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決勝トーナメント1回戦、東福岡柔道教室の副将野瀬貴隆が隠岐柔友会・中前元から袈裟固「一本」。

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予選リーグ、宇治柔道会の大将城本憲生が板野町柔道教室・大倉結奈から体落「技有」

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予選リーグ、古賀塾の副将鏑木克優が森道場・衛藤優作から大内刈「技有」。

3チームによる予選リーグと、決勝トーナメント2試合を経てベスト4に勝ち残ったのは春日柔道クラブ(東京)、東福岡柔道教室(福岡)、宇治柔道会(京都)、古賀塾(神奈川)。いずれも戦前から優勝候補に挙げられていたチーム、ほぼ順当な顔ぶれである。

昨年度大会の準優勝チーム・春日柔道クラブは予選リーグで舞鶴柔道クラブ (茨城)を4-0、真柔会(沖縄)を3-1で下し決勝トーナメント進出。以降は有朋柔道塾(広島)を2-1、宝道場(宮崎)を2-1と接戦を制してのベスト4入り。大将饒平名和貴を軸に試合ごとにヒーローが入れ替わる総合力の高さを見せつけ、勝負どころの有朋柔道塾戦では次鋒井上大智と副将畠山倖世が一本勝ち、宝道場戦では井上と饒平名が一本勝ちを果たして接戦を制した。

東福岡柔道教室は昨年度の覇者大刀洗豪武館を輩出した福岡県の代表、チームの軸は全国小学生学年別大会で圧勝V’(5年生40kg超級)を飾った本田里來だ。予選リーグは錬心舘岡野道場(千葉)を4-1、善通寺柔道会(香川)を4-0で下し、決勝トーナメント1回戦は隠岐柔友会(島根)を3-1、準々決勝は大石道場(愛知)を2-1で下して準決勝進出。本田はここまで4試合で3つの「一本」、1つの「技有」優勢と素晴らしい出来。

宇治柔道会はレギュラー5人のうち5年生2人が体重70キロ台、6年生2人が80キロを超えるという大型チーム。予選リーグは2試合ともに小兵揃いながら巧者を揃えた手ごわいチームとの戦いだったが、板野町柔道教室(徳島)を2-0、藤枝柔道クラブ(静岡)を4-0でそれぞれ突破。決勝トーナメントは桜木柔道クラブ(熊本)を4-1、未来塾(栃木)を4-0と圧倒的な強さで下してベスト4へ。

古賀塾は神奈川県予選決勝で朝飛道場を下しての初出場、このさい逆転を演出した副将鏑木克優の攻撃力をテコにこの日も前評判通りの勝負強さを発揮。予選リーグは森道場(大分)を3-1、旭日柔道場(長野)を4-0で下して突破、決勝トーナメント1回戦は岐阜北柔道クラブ(岐阜)を2-1で下す。一昨年度2位、昨年度3位の雄武館山中道場との準々決勝は、2-2で迎えた大将戦の終盤に竹内檜が藤井統司から払腰返「一本」で勝利。勝負どころを最高の形で制して準決勝へと進んだ。エース鏑木はここまで全試合一本勝ちでチームを牽引。

■ 準決勝
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準決勝に臨む東福岡柔道教室の面々。

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次鋒戦、春日柔道クラブの井上大智が永野漣斗から払腰「一本」。

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中堅戦、東福岡柔道教室の本田里來が中村成寿から大内刈「技有」。

春日柔道クラブ ②代-2 東福岡柔道教室
(先)太田透真×引分×髙倉朋大
(次)井上大智○払腰(0:34)△永野漣斗
(中)中村成寿△袈裟固(0:37)○本田里來
(副)畠山倖世△袈裟固(1:13)○野瀬貴隆
(大)饒平名和貴○袈裟固(3:33)△岩本瑠依
(代)太田透真○優勢[判定3-0]△髙倉朋大

第1試合は春日柔道クラブと東福岡柔道教室がマッチアップ。

ケンカ四つの先鋒戦は春日柔道クラブ・太田左真が得意の左小外掛を連発、高倉朋大が鋭い右大内刈で対抗する形で引き分け。次鋒戦は井上大智が体格差を利して前進、横落を潰された永野漣斗に偽装攻撃の「指導」が宣告されたのちの34秒、井上の右払腰一閃「一本」。

これで春日柔道クラブがリードだが、東福岡柔道教室・本田里來は試合展開を良く心得えた早い勝負を志向。開始14秒にケンケンの左大内刈から左内股に連絡、迫力の「技有」奪取。本田は場外に落下した相手をすかさず抑え込んで試合を切る暇を与えず、盤石の袈裟固「一本」。僅か37秒で試合をタイスコアに引き戻す。

続く副将戦も野瀬貴隆が畠山倖世を左大内刈「技有」から抑え込んで1分13秒袈裟固「一本」。ここでついにスコア逆転、東福岡柔道教室が2-1と1点をリードする。

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後のない大将戦、春日柔道クラブの饒平名和輝が岩本瑠依を袈裟固に抑え込む。

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最終盤、太田がギアを上げてもう一段の攻めを積む。

引き分けなら東福岡柔道教室の勝利が決まる大将戦は饒平名和貴と岩本瑠依ともに右組みの相四つ。岩本は釣り手の肘を上げての右払巻込を先んじて掛け続け、先手攻撃の逃げ切りを図る。ベンチの「無理せんでいい」との声を意識しすぎたか1分19秒にはこの技で自ら倒れ込んで偽装攻撃の「指導」を貰うが、両襟から組み手をスタートする手堅い試合ぶりで饒平名に付け入る隙を与えない。しかし残り1分が近づくあたりから饒平名がペースアップ、右大内刈と右大外刈で立て続けに髙倉を伏せさせる。直後不利を感じた高倉が払巻込に潰れると饒平名「フライパン返し」で捲り返し、拘束緩めず体を被せるとそのままガッチリ袈裟固。残り27秒で「一本」が宣告され、この試合は饒平名の勝利で終了。準決勝第1試合は5戦終わって2-2のタイスコア、試合の行方は代表戦に委ねられることとなった。

引き分け試合の再戦となる代表戦は先鋒対決。春日柔道クラブ・太田透真がケンカ四つの髙倉朋大に対し得意の前技フェイントの左小外掛をベースに左内股を再三放って主導権を獲る。しかし高倉は2戦目で太田の小外刈、小外掛を完全に見切った模様でその立ち姿に危なげなし、2分14秒には強烈な引き出しの左大内刈を入れてあわやポイントという場面も作り、試合の行方は読めず。しかしこの技に怖じずに太田が左内股に左大内刈、フェイントの左小外刈と残り30秒から再び技を積み、どうやら攻勢を確定させる。高倉良く見て小外刈に右内股を合わせ、大内刈で惜しい場面も作るが後手を踏む感は否めず、試合を心得た太田は残り10秒から再び技の密度を上げる。最後は太田の左内股を高倉が透かしてもろとも潰れたところでタイムアップ。旗判定は3本が太田に揃い、ここで春日柔道クラブの決勝進出が決まった。

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先鋒戦、宇治柔道会の西村和真が曽我健太から小外刈「技有」。

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古賀塾の中堅青木輝月が森本総司から左小外掛「一本」。

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古賀塾の副将鏑木克優が前田優生翔から大内刈「技有」。

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大将戦は宇治柔道会・城本憲生が袈裟固「一本」。勝敗の行方は代表戦へ。

古賀塾 ②代-2 宇治柔道会
(先)曽我健太△横四方固(0:54)○西村和真
(次)山口千弘×引分×池原壮
(中)青木輝月○小外掛(1:38)△森本総司
(副)鏑木克優○袈裟固(1:28)△前田優生翔
(大)竹内檜△袈裟固(0:50)○城本憲生
(代)山口千弘○横四方固(2:36)△池原壮

先鋒戦は体重83キロの堂々たる体躯を誇る宇治柔道会のポイントゲッター西村和真が古賀塾・曽我健太を圧倒。開始37秒に右小外刈で「技有」を奪うとそのまま横四方固に固めてあっという間の一本勝ち。ケンカ四つの次鋒戦は釣り手操作巧みに前に出る古賀塾・山口千弘とこれも85キロの体格を利して組み手不十分ながらも次々左払腰を仕掛ける池原壮が拮抗、55秒双方に消極的との咎の「指導」が与えられたのみでスコア動かず、この試合はそのまま引き分けに終わった。

1-0の宇治柔道会リードで迎えた中堅戦もケンカ四つの拮抗、古賀塾・青木輝月に「指導」1つが与えれたのみでこのまま終戦かと思われたが、残り22秒に森本総司が放った右内股に青木が素早く反応、反時計回りに身を捌いての左小外掛でこれを叩き落とし値千金の「一本」。これでスコアはタイとなる。

古賀塾は追いついたところでエース鏑木克優を畳に送り込む良い展開。鏑木は自信満々、前田優生翔を相手に47秒「指導」1つを奪うと、直後大内刈で「技有」。そのままガッチリ袈裟固で抑え込んで勝ち越しの「一本」。スコアはこの時点で2-1、古賀塾リードに移る。

引き分ければ古賀塾勝利という状況で迎えた大将戦はしかし、宇治柔道会のエース城本憲生が奮闘。竹内檜を相手に29秒左体落で「技有」を奪うとそのまま袈裟固に抑え込んで一本勝ち。これで両軍が得たスコアはともに一本勝ち2つ。2-2で5試合が終了し、決勝進出を掛けて代表者1名による決定戦が組まれることとなった。

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代表戦、古賀塾の山口千弘が浮落「技有」で先行。

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終盤山口が巧みに池原壮の体を制し、横四方固「一本」。

引き分け試合の再戦となる代表戦は次鋒戦の再現。宇治柔道会は身長157センチ体重85キロの池原壮、古賀塾は同153センチ62キロの山口千弘が畳に上がる。池原が左、山口が右組みのケンカ四つ。本戦では膠着したこの試合だが、開始13秒に山口が体捌き良く浮落、反時計回りに池原を捩じり落として「技有」を得る。

リードを得た山口は以後巧みな釣り手操作で体格に大きく勝る山口の攻撃を寄せ付けず。釣り手を下から内側に入れ、前襟を握った拳であるいは池原の顎を突いて押し込み、あるいは引き出して相手の釣り手を弾き、あるいは横襟を高く得て攻撃態勢を整えてと自在の働き。池原は両襟の左払腰に内股と必死に体を反転させるが、常に山口の釣り手が内側にある状態ではまったく力の圏内に入れず、その巨躯を生かせない。次第に池原の技が効かぬことが明らかになって掛け潰れが増え始めた終盤、池原の攻撃を完全に見切った山口が再び動く。相手の前技の掛け潰れに素早く反応して寝勝負、襟を引っ張ってその反転を半ばで止めると体を乗り越え、遠い腕の袖を捕まえて引っ張り寄せ、さらに体を沈めてこの姿勢を固定。池原は天井側を向いたまま動けず、2分36秒「一本」宣告。これで古賀塾の決勝進出が決まった。

■ 決勝
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先鋒戦、太田透真が曽我健太を攻める。

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太田は攻め手緩めず3つの「指導」を確保。

春日柔道クラブ ①代-1 古賀塾
(先)太田透真○反則[指導3](2:34)△曽我健太
(次)井上大智×引分×山口千弘
(中)中村成寿×引分×青木輝月
(副)畠山倖世△袈裟固(0:54)○鏑木克優
(大)饒平名和貴×引分×竹内檜
(代)中村成寿○判定[3-0]△青木輝月

先鋒戦は春日柔道クラブ・太田透真が左、古賀塾・曽我健太が右組みのケンカ四つ。太田は体をゆすって曽我の組み手を剥がし、一方的な組み手を作っては腰を切って前技の牽制。24秒には左大外刈で曽我を転がし伏せさせ優勢。その後もゆすり出しての左内股を仕掛けるがここで僅かに技が止まり、主審は58秒、やや意外にも双方に対して消極的との判断による「指導」。先手の攻撃をスコアに反映できなかった形となってしまった太田だがこれに奮起、直後前に出ると曽我が畳を割り、主審これに厳しく場外の「指導2」を与える。

なかなか技を出せるグレードの組み手が作れない曽我は奇襲の左大外刈で打開を試みるが太田取り合わず、残り1分を過ぎてから再度猛攻。左大外刈からの足車、左小内刈、再び左大外刈に左大内刈と攻めをまとめる。主審ここでは動かなかったが、太田は続いて前に出て来た曽我を迎え撃って左大外刈で潰し、続いて左一本背負投からそのまま大内刈に繋いで伏せさせてと攻めの手を緩めず。さすがにここまではっきり攻勢を見せられては主審動かざるを得ず合議を招集、2分34秒曽我に消極的との咎で3つ目の「指導」を宣告。先鋒戦は春日柔道クラブが得ることとなった。

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春日柔道クラブの次鋒井上大智はこれまでと一転慎重な試合ぶり、山口千弘に容易に組ませず。

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井上は組むと早々に攻撃、山口に作りの間を与えない。

次鋒戦は春日柔道クラブ・井上大智、古賀塾・山口千弘ともに右組みの相四つ。ここまで大活躍の井上だがしかしこの試合は山口の組み手を徹底警戒、左構えのスタンスで相手から離れたまま様子見。時折一気に組もうとしては、再び極端に離れることを続ける。前戦で見せた通り組み手の巧い山口だが体重74キロの井上にここまで警戒されてはそもそもなかなか組めず、31秒双方に「取り組まない」咎で「指導」

以降も井上は極めて慎重、相手から体二つ分離れては時折一方的に組まんと引き手で脇、釣り手で前襟を狙い、これが果たせずば、あるいは山口が組み手で良い形を作ると自ら離れることを続ける。山口は1分過ぎに2度組み合うチャンスを得、釣り手で首下を突いて前に出るがいずれも井上が早い判断で離れてリセット。井上は離れ、時折組んでは釣り手の肘をこじ上げての大外刈を放ち、またもや離れるという一撃離脱のヒットアンドアウェイ戦法。山口は組んでの作りを行うことがまったくできない。1分38秒、初めてしっかり持った井上が釣り手を高く支釣込足を放つと足元を蹴られた山口が潰れて「待て」。このあたりから井上がペースを掴み始めたか、2分21秒には引き手で袖を流して背中を掴むなど大胆なアクションに出始める。しかし組み合って山口が良い形を作り掛けると先んじて右大外刈を仕掛けて試合を切り、やはり慎重な試合ぶりは変わらず。井上が山口にチャンスを与えぬまま仕事を果たした体で、この試合は引き分けとなる。

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中村成寿が長い脚を差し入れて右内股を狙うが、迎え撃った青木輝月は揺るがず。

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副将戦は古賀塾・鏑木克優が畠山倖世から大外刈「技有」

中堅戦は春日柔道クラブ・中村成寿が右、古賀塾・青木輝月が左組みのケンカ四つ。ほぼ同体重、上背に勝り均整の取れた体型の中村がケンケンの右内股に大外刈で攻め、重心低く体幹の強い青木がこれを耐えては潰し、左内股で攻め返すという構図。中村の右内股と右大内刈は取り味十分、深く作用足が入ればどこからでも「一本」が生まれそうな予感十分だが、青木は両の足を踏ん張って揺るがず。1分22秒に放たれた中村の右大内刈、勝負どころを感じた青木が残り27秒で放った左の飛び込み内股と双方それぞれ良い技があったもののの取り切れず、この試合は引き分けに終わった。

春日柔道クラブの1点リードで迎えた副将戦は、畠山倖世が左、古賀塾のエース鏑木克優が右組みのケンカ四つ。鏑木は釣り手ではなくまず引き手で相手の袖を一方的に織り込む良い組み手、しかし作り不十分のまま右大内刈で性急に倒れ込んでしまい「待て」。

チームのビハインドという状況にやや入れ込み過ぎた感ありだが、鏑木はしかしあっという間に落ち着きを取り戻し、再びまず引き手で袖を掴むと、次いでほぼ完ぺきな形で釣り手を得て右大外刈。相手をいったん引き出し、押し戻しながら仕掛けたこの技で36秒「技有」、そのまま崩袈裟固に抑え込んで盤石の「一本」獲得。試合時間は僅か54秒、これで試合は1-1のタイスコアとなる。

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大将戦、古賀塾・青木輝月が饒平名和貴の攻めを両襟で耐える。

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饒平名加速も、青木が踏ん張り続けて引き分けをもぎ取る。

大将戦は春日柔道クラブのポイントゲッター饒平名和貴、古賀塾・竹内檜ともに右組みの相四つ。饒平名鋭い支釣込足で先制攻撃、以後も前に出て大外刈を狙うなど投げて勝負を決める気満々だが、竹内は引き手で相手の脇を突き、両襟の堅陣で対峙。饒平名に接近を許さぬまま肘を上げての右払腰と後の先の対応で粛々、敢えて展開を減速させて試合を進める。業を煮やした饒平名も両襟で遮二無二接近、大内刈に払腰で攻めるが竹内機を見てはいったんみずから釣り手を切り、間合いを取っては組み直す巧みな進退でチャンスを与えず。しかし饒平名の前進に竹内が畳を割り、1分16秒竹内に場外の「指導」。

あと1つの「指導」を得れば僅差優勢の勝利ラインに辿り着く饒平名は加速。残り1分を過ぎてからのシークエンスでは相手をまず圧力で潰し、次いで一本背負投フェイントの支釣込足、大内刈、さらに前技モーションからの大内刈と技をまとめて竹内を畳に這わせる。これを受けて主審が「待て」。ここで竹内への反則宣告あるかに思われたが、判定は奥襟を握り続けたとの咎による饒平名への「指導」。これで試合はタイスコア。以後も饒平名良く攻めるが竹内冷静に捌き、機を見て巧みに攻め返してタイムアップ。竹内が良く凌いだという形でこの試合は引き分けとなり、5試合が終了してスコアは1-1のタイ。優勝の行方は代表者1名による決定戦へと持ち込まれる。

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試合終了直前、中村成寿が大内刈で青木輝月を大きく崩す

代表戦は中堅戦の再戦、春日柔道クラブ・中村成寿が右、古賀塾・青木輝月が左組みのケンカ四つ。引き手争いをベースに青木が低く左大内刈、上背に勝る中村が作用足を差し入れて伸びやかに右大内刈と右内股を狙うという構図。青木は開始19秒に抱きつきながらの右大内刈を狙うが潰れて「待て」。以降も中村の技を弾き返しては接近戦を志向する。中村の技は一瞬でも対応を誤ればケンケンで軸足が飛び込んでくる危険なものだが青木は堂々これに対峙して間合いを作らせず。一方の中村も先に作用足を差し入れてから乗り込む技だけではなく、43秒には腰を切った相手に自ら抱きついての谷落を放つなど機を見ての接近戦を厭わず試合は激戦。中村は1分7秒の右内股、1分56秒の右大内刈とポイント級の技を見せるが、青木も機を見ての払巻込に後の先の技、そして中村の技を腹を出して弾き返す体の強さを見せて展開は拮抗。旗判定の見込みはやや中村優位も予断を許さずというところだったが、最終盤に中村がそれまでの丁寧な組み手をかなぐり捨てて、釣り手で肩口を引っ掴んでの右内股に右小外刈と返し技を怖れず思い切った攻めを連発。3分間は互いに1つの「指導」もないまま終了したが、この終盤の攻めで中村が優位を確定した感あり。運命の旗判定は果たして3-0で中村に揃い、この瞬間春日柔道クラブ7年ぶり2度目の優勝が決まった。

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代表戦で勝利した中村を迎える春日柔道クラブの面々

ベスト4以降の3試合はすべて代表戦決着、どのチームが優勝してもおかしくない接戦の連続であったが、薄氷のシナリオを渡り切ったのは春日柔道クラブ。それぞれ個性が違う選手を高い水準で全ポジションに揃えた、総合力の高さに軍配が上がった。どの選手にも、巧拙を超えて「取れる」理屈をダイレクトに、自分なりのやり方で表現する伸びやかさが感じられた。決勝の戦いはひところの少年柔道に感じられた、方法論の枠の中に押し込まれたような窮屈さはほとんどなく、一つ時代のステージが進んだという印象だった。

大会序盤は「反則逃れ」の片膝座り込み背負投(いまさらであるが、落差のある投げの危険性を危惧した「両膝つき背負投の禁止」そもそもの狙いを無視して単にルールの間隙を突いたこの技術に指導者は与するべきではないと考えるし、一部でさもこれが少年世代の標準技術であるかのように使われる「片足を前に伸ばして座り込む背負投」や「持った側から低く体を捨てる左右の一本背負投」などもその存在を恥ずるべきだ)や、単に体の発達段階の差を生かした巻き込み技、相手にあくまで持たせまいとの絞り落としなど刹那的な技術が今年も散見されたが、ステージが上がるにつれこれは明らかに減少。しっかり投げる、しっかり抑えることを中核に据えて投げて投げられる稽古をしている名門チームが、それでも結果をきちんと残しているという印象だった。前述の通り「子ども同士なら勝てる」ことに特化した方法論を教え込むことで目先の勝利を得んとする姿勢はもはや少年柔道界においては過去のもののはず。時代に感能力のあるトップチームは、敢えて鷹揚に、教え過ぎず、巧拙にある程度目を瞑り、それでも教えなければいけないことを精査することで逆にしっかり結果がついてきていたという印象。率直に言ってかつての少年柔道加熱期のような爆発的な「面白さ」があるわけではなかったが、少年柔道界が少しずつ、先進地域から順に変化しつつあるという印象を受けた大会だった。

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表彰式に臨む春日柔道クラブの選手たち

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準優勝の古賀塾

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3位の東福岡柔道教室

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3位の宇治柔道会

【入賞者】

優 勝:春日柔道クラブ(東京)
準優勝:古賀塾(神奈川)
第三位:東福岡柔道教室(福岡)、宇治柔道会(京都)

技術優秀賞:饒平名和貴、中村成寿、太田透真(春日柔道クラブ)、鏑木克優、青木輝月、山口千弘(古賀塾)、本田里來、髙倉朋大(東福岡柔道教室)、城本憲生、森本総司(宇治柔道会)

春日柔道クラブ・向井幹博監督のコメント
「毎年のことですが、個性豊かな選手が多いチーム。それを潰したり、押さえつけたりする指導はしないことにしているので、毎年自分の指導を見直しながらやっています。結果、昔の自分に比べると優しくなったのではと思います(笑)。本来6年生が1枚足りないかなというチームだったのですが、1年前に中村(成寿)が福岡から実家の東京に来て入門。最初は決して強くなかったがたくましく成長してくれて、穴を埋めてくれました。トーナメントに入ってから準決勝までの対戦相手は予想通り、決勝はどちらのチームが来てもおかしくないと思っていました。古賀塾のメンバーは、何年か前に皆でずっと講道館に出稽古に来てくれていた子たち。当時から抜群に上手かった。強敵でした。準決勝も決勝も代表戦になると思っていたので、引き分けた選手には『準備しておけよ』と声を掛けていました。(-この後の指導について?)時代の流れ、社会の変化もあり、講道館をめぐる状況も変わってくる。毎年指導を見直していますが、いつまでも自分が監督をやることは出来ない。難しい仕事ですが、次の指導者をしっかり育てないといけない。いま自分は56歳なのであと4年、60歳くらいまでは自分の体を掛けて、汗を掻いて勝負して、次の世代にバトンタッチすることを考えています。ウルフ(アロン)をはじめ、OBに指導者になりたいと言ってくれる子たちが結構いますので、将来、その子たちにうまくバトンタッチできるように、まず次にしっかり引き継がなければと思っています。もちろん、柔道界全体のことを考えながらですね。」

古賀塾・古賀稔彦監督のコメント
「(-優勝候補に挙げられていましたが?)いやいや、全然です(笑)。ですので大会に際しては『その気にさせる』ということを考えていました。団体戦は全員で1勝する競技。うちはポイントゲッターと決してそうではない選手とまだまだ差がありますので、『全員がポイントゲッターだと思え』と、特に取られそうな子に強く意識付けをして戦いました。(-これから子どもたちになんと声を掛けますか?)今日は接戦の連続、ということは、お互いに助け合って勝ち上がったということだと思います。いつも精力善用、自他共栄と話をしていますので、助け合うことの大切さが良く分かった1日だったのでは、とそう話してあげたいと思います。」

春日柔道クラブ・中村成寿選手のコメント
「代表戦に出ていくときは、自分が皆の想いを背負っているのだと、絶対に勝ちたかった。自分の柔道が出来たと思います。気持ちで頑張れました。(判定)3-0を見たときは責任を果たせたなととにかく嬉しかった。将来は世界で活躍する『一本』を獲れる選手になりたいです。」

【決勝トーナメント1回戦】
春日柔道クラブ(東京) 2-1 有朋柔道塾(広島)
宝道場(宮崎) 4-0 窪田柔道倶楽部(石川)
大石道場(愛知) 3-1 あすなろクラブ(大阪)
東福岡柔道教室(福岡) 3-1 隠岐柔友会(島根)
宇治柔道会(京都) 4-1 桜木柔道クラブ(熊本)
未来塾(栃木) 4-0 郡山市柔道会(福島)
古賀塾(神奈川) 2-1 岐阜北柔道クラブ(岐阜)
雄武館山中道場(秋田) ②代-2 川口市柔道連盟クラブ(埼玉)

【準々決勝】

春日柔道クラブ(東京) 2-1 宝道場(宮崎)
(先)太田透真×引分×金丸蒼昊
(次)井上大智○払腰(1:52)△新藤聖也
(中)中村成寿×引分×三井咲花
(副)畠山倖世△袈裟固(1:54)○荒川琉正
(大)饒平名和貴○内股(0:09)△木下勇之介

東福岡柔道教室(福岡) 2-1 大石道場(愛知)
(先)髙倉朋大×引分×土川恵璃
(次)永野漣斗△小外刈(0:11)○濟木恒栄
(中)本田里來○内股(0:20)△大多和心
(副)野瀬貴隆×引分×井手英閏
(大)岩本瑠依○反則(2:27)△加藤尚輝

宇治柔道会(京都) 5-0 未来塾(栃木)
(先)西村和真○横四方固(1:00)△小菅天夢
(次)池原壮○優勢[技有]△水野雅南人
(中)森本総司○横四方固(3:00)△中田涼太
(副)前田優生翔○優勢[技有]△森彩衣来
(大)城本憲生○大内刈(0:26)△根岸由季

古賀塾(神奈川) 3-2 雄武館山中道場(秋田)
(先)曽我健太△反則(2:13)○進藤健太郎
(次)山口千弘○袈裟固(0:28)△戸井田悠暉
(中)青木輝月△横四方固(2:41)○伊藤志竜
(副)鏑木克優○横四方固(0:34)△伊藤愛美
(大)竹内檜○払腰返(2:33)△藤井統司

【準決勝】

春日柔道クラブ ②代-2 東福岡柔道教室
(先)太田透真×引分×髙倉朋大
(次)井上大智○払腰(0:34)△永野漣斗
(中)中村成寿△袈裟固(0:37)○本田里來
(副)畠山倖世△袈裟固(1:13)○野瀬貴隆
(大)饒平名和貴○袈裟固(2:33)△岩本瑠依
(代)太田透真○判定[3-0]△髙倉朋大

古賀塾 ②代-2 宇治柔道会
(先)曽我健太△横四方固(0:54)○西村和真
(次)山口千弘×引分×池原壮
(中)青木輝月○小外掛 (1:38)△森本総司
(副)鏑木克優○袈裟固(1:28)△前田優生翔
(大)竹内檜△袈裟固(0:50)○城本憲生
(代)山口千弘○横四方固(2:36)△池原壮

【決勝】

春日柔道クラブ ①代-1 古賀塾
(先)太田透真○反則[指導3](2:34)△曽我健太
(次)井上大智×引分×山口千弘
(中)中村成寿×引分×青木輝月
(副)畠山倖世△袈裟固(0:54)○鏑木克優
(大)饒平名和貴×引分×竹内檜
(代)中村成寿○判定[3-0]△青木輝月

※ eJudoメルマガ版5月5日掲載記事より転載・編集しています。

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