PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

eJudo版・平成30年全日本柔道選手権予想座談会「全日本を語りつくす」(下)

(2018年4月27日)

※ eJudoメルマガ版4月27日掲載記事より転載・編集しています。
eJudo版・平成30年全日本柔道選手権予想座談会「全日本を語りつくす」(下)
三回戦~決勝戦
→平成30年全日本柔道選手権組み合わせ(全日本柔道連盟サイト)
→平成30年全日本柔道選手権大会公式サイト(講道館)

→全日本柔道選手権予想座談会「全日本を語りつくす」(上)
→全日本柔道選手権予想座談会「全日本を語りつくす」(中)

参加者:朝飛大、林毅、西森大
司会:古田英毅

■ 三回戦
eJudo Photo
朝飛大
朝飛道場館長、慶應義塾大学師範。日本を代表する指導者であり、少年柔道指導の第一人者。自身も昭和60年大会に出場、世界選手権100kg級の覇者羽賀龍之介をはじめ多くの教え子を全日本選手権の場に送り込んでいる。

eJudo Photo
林毅
もと「近代柔道」誌責任編集者。30年以上にわたって大会を直接取材し、全日本選手権プログラムの編集に20年以上携わっている。書籍「激闘の轍・全日本柔道選手権大会60年の歩み」では企画・編集を務めた。

王子谷、課題のケンカ四つに技術的解決はあるか?

古田 それでは3巡目です。のっけから王子谷剛志選手と西尾徹選手の対戦が予想されます。これは魅力的なカード!

西森 勝負に関していえばまあ王子谷選手が有利でしょう。苦手なケンカ四つに対して、どれだけ進歩、上積みが見られるか。これだけ相四つケンカ四つによって強さが異なる印象の選手は珍しい気がします。

林 本人はそんなに苦手じゃないとコメントしています。

古田 少々意外です。

林 今までは本当に苦手だったけど、だいぶ克服してきているとのことでした。

古田 圧殺、「指導3」で試合自体は勝ってしまう、そういう印象なんですが。

西森 実際の試合展開はそうなるのではないかと思うんですが。それで満足せずに、原沢選手が体落に取り組んでいるように、ケンカ四つの相手から具体的に取る手立てというのが見たい。

古田 ここ最近の王子谷選手はやや技術的な閉塞感が強い印象です。かつて担ぎ技をやるようになってきたころのような面白みが欲しいところ。西尾選手としては潜って担いでいきたいところでしょうか?

西森 勝負したいのは西尾選手としては担ぎだと思います。

古田 王子谷選手が担ぎに乗るような作りが出来ればというところでしょうか。

朝飛 右の時は本当に強いですね。左の選手に対して、引き手で袖を持って何か掛けるって言うのがちょっと本人不安定そうなんですよね。そしたら、襟を持ってしまって、ここ(左腕と相手の体の間の空間)を開かなくても掛けられるような動作、さっき言った体落とか斜めの大外刈とか体幹を活かす技が出来れば相当良いのではと思うのですが。彼は引き手を持った時がとにかく不安定そうに見えて、逆に間合いがない、くっついていた方がやりやすそうに見えます。正木(嘉美)先生はそこらへんが上手かった。(実演。引き手で相手の脇の「袋」あたりを握る)こっちでもやるんですけど、ここでも、ここでも(位置を変えるが引き手の袖は持たない)、バチっともったら、ある意味こういうところ持っても挟んで、ここ(自分の引き手と相手の体の間の空間)が動かない方がみんな飛んでくんです。そういうのを何か一つ覚えればかなり違うのではと思います。

古田 確かに、王子谷選手が左右関係ないところまで寄せているところをイメージすると、ちょっとやりようがないくらいに強そうですね。

朝飛 そう。でもやっぱり開いちゃうんですよね。不安定になる。だから、圧力を掛けて潰しちゃうんだと思います。

古田 では、勝敗自体は王子谷選手、課題のケンカ四つに技術的解決が見られるかに注目ということで。

eJudo Photo
西森大
NHKスポーツ番組部ディレクター。業界では希代の柔道マニアとしても名高い。ドキュメンタリーの佳作・NHKスペシャル「日本柔道を救った男~石井慧 金メダルへの執念」を制作。現在は全日本柔道連盟広報委員も務める。

eJudo Photo
司会 古田英毅
eJudo編集長。柔道六段。

相性は上川有利、飯田の「柔道頭」試される一番

古田 次の試合は。上川大樹選手と飯田健太郎選手の対戦が予想されます。魅力的なカード!

西森 飯田選手がポンと掛けていって、上川選手がビタッと返すのが想像できますね。

古田 皆さんの顔を見ると納得という感じですが。

西森 崩れないんですよね、上川選手。それこそ王子谷選手級の技を持っていかないと。

朝飛 背負系、体落系に股中で掛けられるともたつくんですけど、大外刈とか反対の大外刈に入ってくる相手には滅法強いですよね。大外刈をくるっと回して払腰で返したり、反対の大外刈を反対の払腰で返したり。

林 これが4試合目とかだと力を発揮できない場合も考えられますが、まだ2試合目なので。

古田 相四つで飯田選手が欲しい組み手は、上川選手が欲しい組み手にピタリと嵌ります。右相四つ、大外刈・内股系は大好物。普通に考えると後の先で上川選手か。

西森 飯田選手が勝負を掛けるとすると、最近見せている担ぎではないでしょうか。得意の内股や大外刈を見せ技にして勝負するくらいでないと。真っ向勝負をするとやっぱり返し技の餌食になりそうですよね。

朝飛 どこまで頭を使うか楽しみですね。

古田 実は「なんでも出来る」天才飯田、その天才性を結果にこだわる方向に振り向けられるかがみどころと。

eJudo Photo
昨年度の対戦では垣田恭兵が小川雄勢を翻弄。

eJudo Photo

前回対戦評は「垣田の圧勝」、好調・小川のリベンジなるか?

古田 3回戦、好カードが続きます。小川雄勢選手対垣田恭兵選手。

林 あれ?橋本選手じゃなかったですか(笑)?

古田 橋本選手でも良いですが。

西森 私は、これ垣田選手も勝つ可能性あると思います。

古田 私も垣田選手が勝つと思うんですけど、あ、僕今日は司会でした。少々出過ぎですね。

西森 去年やっていますからね。小川選手がそれだけ対策をやってくるかですが。

林 相当意識はしているみたいですよ。

古田 去年の試合を自分ではどう分析してるんでしょう?

林 試合後は「何もやられてない」と息巻くシーンを目撃しました。お父さんと二人で。

古田 試合後の新聞記事を見たら小川直也さんのなぜ「指導」が向こうに行かないのかという旨の発言が載っていましたが、私にとってはむしろなぜ小川選手への「指導」をそこまで待ったのか不可解な試合でした。特に本戦。

林 今のルールだったら「技有」2つ取られていたと思います。

古田 本戦で垣田選手の勝ちですよね。

西森 普通に評価すると去年はケチョンケチョンにやられた試合ということですよね。

古田 送り出されて後帯持たれて大外落で引き倒されたり。「垣田ワールド」の試合でした。

林 でも、去年とは違いますかね。

西森 勢いが来ているのは間違いないです。小川選手の真価が問われる大会ですね。

林 ここはやっぱり小川選手に勝ってもらわないと。

古田 どうやって勝つと考えますか?

林 反則勝ちで…

西森 私も勝つといったらそうだと思いますけど・・・。

古田 どうやって反則勝ちするかですね。垣田選手に圧殺オンリーでは厳しいと思います。

西森 手数を出さないといけないですね。

古田 小川選手が形を作ろうとしている間に垣田選手が手数を出したり、その形を崩したり、それが去年の大枠の形ですよね。

西森 左相四つですからね。

古田 垣田選手は僕達を超える作戦を考えてくると思いますが、小川選手はどうでしょう。袖を引き手側から持つ、そこから奥襟を持って圧殺する、この圧力をベースに手数を出すというようなオーソドックス作戦で、果たして垣田選手を乗り越えられるのでしょうか。

西森 いなすとか、斜めにずらすとか、手札をもっと増やしてるのではないかと思います。簡単に投げられるとは思っていないでしょう。ただ、垣田選手に柔道をさせないようにするのはできるのでは。

朝飛 ここまでの背景も大事ですよ。垣田選手は長尾選手、橋本選手とやって上がってくるんですよ。一方の小川は寺尾選手と戦うだけですので、疲れ方が全然違うと思うんです。

古田 なるほど。垣田選手は汗を掻く、良い意味で燃費が悪い柔道ですからね。

朝飛 1発目で当たれば垣田選手が掻き回すと思いますが、垣田選手が3発目、小川選手は対戦相性を考えればこれが実質1発目ですからね。

古田 では方法論はともかく、状況を買って小川選手としておきましょう。どんな勝ち方を見せてくれるかですね。

相性と経験は太田、大物山口の健闘に期待

古田 次は太田彪雅選手と、山口貴也選手の対戦が予想されています。

西森 太田選手は器用で、小さい相手を捌くのは上手なので、ここは太田選手だと思いますね。

朝飛 山口選手は良い当たりもすると思うんですが、太田選手は絶対に当たり負けはしないですね。そのまま小外刈に合わせることもできると思う。

古田 山口選手の伸び盛りの勢いを、太田選手の上手さと強さが上回るということですね。

西森 太田選手は重量級のなかでは小技が利くので、そこが山口選手との相性上良いところ。

古田 仰る通り、軽重量級の選手とは相性が良いですね。ではここは太田選手が上がると仮定して進めさせて頂きます。

eJudo Photo
2016年大会準々決勝、七戸龍が遠間からの右大内刈で小川雄勢から「技有」

七戸の遠間は「未知との遭遇」、高校生中野の健闘に期待

古田 ・・・次は七戸龍選手対中野寛太選手。全日本は三回戦が面白いと言われますが、本当に良いカードが続きますね。

西森 中野選手が七戸選手に柔道をさせてもらえない可能性がありますね。

林 遠間から引っ掛ける大内刈がありますからね。

西森 やったことがないと、全く届かないであろうところから飛んできますから。一昨年の全日本で小川選手が珍しく投げられました。

古田 まさしく遠間の大内刈でした。

西森 リネールを腹這いにするくらいですから。相当威力はあります。

林 スピードもある。

朝飛 中野選手が高校選手権みたいに組み際に足を飛ばしたりとか、少し慌てさせるくらいのことがないと。

古田 寄って力を出そうと思っていると嵌ってしまいますね。

林 このサイズの選手とは…。

朝飛 やったことないですよね。おそらく。

古田 そうですね。僕もここは七戸選手を買います。ペースを崩さずやるようだと、試合が荒れることはない気がします。

西森 中野選手には袖釣込腰とか、1回中に入って慌てさせる技を期待したいですね。

eJudo Photo
東京都選手権決勝、原沢が熊代から内股「一本」。

eJudo Photo
熊代、同大会準決勝では上川大樹を袖釣込腰で2度投げている。

東京選手権決勝の再現カード、地力の差跳ね返す熊代の策は?

古田 続いて東京選手権決勝の再現、原沢久喜選手対熊代佑輔選手の試合です。

西森 熊代選手がもう一つ作戦を練ってくるかですね。

古田 あれだけ充実していた熊代選手を退けたということで、原沢選手の凄味が際立った試合でした。

西森 慌てずに長くやれば地力の差はやっぱり出ると思います。

林 (東京選手権決勝での)熊代選手の大外刈は、大胆にいきましたね。「いや、投げれると思ったんですけどね」とコメントしていました。今回はどんな作戦を練ってくるか楽しみです。

古田 熊代選手の、あの上川選手を右、左とそれぞれ投げた袖釣込腰がピタッと嵌ったときに、投げられることはあるんですかね。

西森 (原沢選手は)そんなに受けが強い選手ではないですから。あると思います。

古田 地力を出し合うような試合なら原沢選手、ということで推しておきます。熊代選手が上がるためには作戦が嵌って一波乱、二波乱起こすことが必要、ということですね。

eJudo Photo
加藤博剛の巴投。写真は昨年度大会の五十嵐唯大戦、開始1分経たずに巴投を2度決めた。

「まず組み合う前にニヤニヤする絵面が浮かぶ」加藤-髙藤戦は予想困難

古田 さて、皆さん早くも笑みがこぼれていますが、この座談会の予想としては次が加藤博剛選手と髙藤直寿選手が戦うということになります。

西森 まず組み合う前にお互いニヤニヤする。そういう絵面が浮かびます。

林 劇画のような感じになってきますね。

古田 様相の予想は困難ですよ。髙藤選手が片襟捕まえて左右に動きながら足飛ばして、加藤選手が入ってくるところに罠仕掛けるとか。

朝飛 髙藤選手なにか用意してそうだな~。

林 サイズ的に言ったら技が掛からないサイズではないですよ。加藤選手が96キロくらいで髙藤選手は66キロくらいですから。

朝飛 巴投に来たところを、乗っかっちゃうと加藤選手は上手くてやられるから、そこで横に捌いて逆に関節取るとかね。

西森 私もそれはありだと思います。そういうことはちょっと考えていると思います。ただ、ここは大枠で予想するしか…。これはもう楽しみとしか言えないですよ。

古田 ここまで常識を越えた選手同士が戦うんですからね。今年の全日本は本当に面白いですね。大枠で加藤選手勝利と予想し、展開はまさに現場のお楽しみということで。

「国際×超級」の強者影浦、日本の業師西山戦の様相いかに

古田 次は影浦心選手対西山大希選手。非常にソリッドというか、全日本らしい実力者対決です。

西森 逆に予想しづらいですね。

朝飛 西山選手は攻めが遅いですよね。反対に影浦選手は攻めが早いですから。

古田 ともに実力者ですが、現在の国際大会の成績がそこで分かれている感もあります。

朝飛 「指導」(の傾向)がどうなるかですね。

西森 影浦選手は相四つのときどうでしたっけ。

古田 重量級と戦うときには、揺すり出しながら狙う感じじゃないでしょうか。組み手は引き手で袖を折り込んで始めたり、釣り手から敢えて持ったり、やはり上手ですよ。ただ一貫して自分が、こう、ちっちゃくなって入るところはありますね。

西森 重量級相手ですもんね。階級下の相手に対しては…

朝飛 あまり得意ではないと思います。去年は海老(泰博)選手に負けていますから。

西森 結構苦手だと思いますよ。

朝飛 ただ海老選手は影浦選手に対して背負投を掛けてくる訳ですよね。一方西山選手は立ってますよね。大内刈とか、当てながらの支釣込足とか。でも技数で影浦がいっちゃいそうな気がします。

古田 想像し得るシナリオで進んだ場合には影浦選手でしょうか。

西森 地力的にもそうですよね。

朝飛 影浦選手は小内刈で韓国の選手(キム・スンミン)から「一本」を取ったじゃないですか。あの小内刈がもっと出るようになると面白いですね。この間はあんまり出なかったですからね。

古田 あれは後ろ回りさばきでずっと背負投掛け続けて、相手がそれに慣れたから思い切り低い背負投に行って耐えられたあとに掛けてみたら引っかかった。そんな感じでした。もともと足技も得意ですが、まだ小内刈が得意な選手の小内刈ではない印象もあります。

西森 意識して本人がそこを磨いて来るかだと思います。

古田 西山選手は、彼らしい大技を生かすためにも先の技出しをできるか。影浦選手はちょっと課題の自分より小さい相手をどう取るかですね。見どころとしては。

■ 準々決勝
eJudo Photo
2016年大会決勝、王子谷剛志対上川大樹。

「3試合目の上川」をどう見るか?

古田 いよいよ準々決勝ステージ、王子谷剛志選手対上川大樹選手です。まことに全日本選手権らしくなってきました。

林 準々決勝。これまでに比べると早く当たりますね。

西森 ですから上川選手有利になるんですよ。疲れていない上川選手が王子谷選手と当たる訳だから、楽しみです。

林 決勝のときは相当消耗していましたからね。前半勝負なら上川選手、長引けば王子谷選手かな。

朝飛 私は王子谷選手が大外刈か支釣込足で持っていくと思います。上川選手は3試合目ともなると…。この前影浦選手に負けたのは選抜の、1回戦ですよね。最初に内股を掛けてから何も掛けずにやられた。

林 しかし「3試合目だからいける」ではなく、「もう3試合目だから」なんですね(笑)

朝飛 1試合目同士だったら日本で一番上川選手が強いですよ。

古田 勝者は王子谷選手ということで。

朝飛 自信持っていますからね。

eJudo Photo
4月の全日本選抜体重別における小川-太田戦。この際は小川が勝利している。

小川雄勢に2人目の刺客、昨年敗れた太田彪雅がマッチアップ

古田 第2試合は小川雄勢選手対太田彪雅選手。

朝飛 これも楽しみですねえ。

林 直近では小川選手が勝っていますが、太田選手はかつて勝っていますからね。

朝飛 この間の大内刈も良かったですよね。

林 この対戦はケンカ四つですね。

古田 太田選手は大きいケンカ四つ相手には割と良いんですよね。小中高と。切所での出足払に幾度も救われてきました。

林 むしろケンカ四つの方が得意でしょう。でも今の勢いからすると小川選手かなとも思います。

西森 直近の対戦(全日本選抜体重別選手権)で勝っているというのは大きいですね。去年は負けたけど、かなり自信になってるはず。

古田 今季の実績に直近の対戦。大雑把に言うと小川選手が勝つべき対戦だと思うんですが。過去の来歴からも対戦成績からもわからないよと。

西森 このままひとつひとつ進めていくと小川選手の優勝になりそうですね。

eJudo Photo
2016年全日本選抜体重別選手権決勝、原沢が七戸から内股「有効」。

過去対戦は原沢の完封、手立て増した七戸に秘密兵器の投入ありや?

古田 続いて、七戸龍選手対原沢久喜選手です。

西森 原沢選手の復調がどこまで本物かだと思います。

林 東京予選を優勝して本人は、自分の中でも相当(状態が)上がった、東京を戦えたことが大きいような話をしていました。

古田 原沢選手がまだ良くない時期の1月の合宿、七戸選手との乱取りをきっかけに良いパフォーマンスを出した稽古がありました。意外と取り口が合うというか、前提条件としての自分の強さを感じているところがあるなと感じました。

西森 試合は2年ぶりですね。リオ前の選抜体重別で、内股で「有効」取って原沢選手が勝って以来です。七戸選手はそのあと担ぎをやっているんですよね。不確定要素としてはそのあたり、勝負技を準備しているか。

林 相性としては4、5回やって全部原沢選手が勝っています。

古田 ポイントとしては、今西森さんがおっしゃった、カスタムの武器を七戸が持ち込めるかになるのでしょうか。

朝飛 原沢選手は七戸選手とやるとき脇下を持ちますよね。七戸選手の組み際の技を分かっていて対処しているんですよね。七戸選手が自分の良い形を出せない感じでしたね。

古田 あそこを持つと原沢選手の距離になってしまうということですね。

朝飛 西森さんがおっしゃった、選抜で投げた試合もこれで間合いが取れていたんですよ。

古田 なるほど。ここは原沢選手を推しておきます。

影浦に担ぎを仕掛けるロジックなし、対戦相性の分は加藤

古田 次戦が、加藤博剛選手対影浦心選手と予想されています。

西森 加藤選手の勝利と予想します。

林 私も加藤選手が好きですね。

古田 好きかどうかは良くわかっております (笑)

朝飛 影浦選手としては、加藤選手はかなり戦い辛い選手だと思うんですよね。加藤選手の方が上背がないし、前気味にして巴投だから、背負投に入る動きがないんですよね。

古田 引き出しながら戦ってくる。

朝飛 そう。右で上から持って前に出てくるタイプには滅法強いですけど、まったく逆のタイプですからね。

西森 影浦選手はここが試練ですね。

林 加藤選手は「(影浦選手とは)試合どころか練習もしたことない」と言っていました。

朝飛 (加藤は)どっちかというと右で奥叩いてくる方が入りやすいような、感じも見受けるんですよね。でも、去年左のウルフ選手をあんな簡単にポーンって持っていってますからね。

西森 巴投が変則なんですよね。限りなく「真巴」に近い。

古田 足は「横巴」だけど、入りは「真巴」だったり。

林 やっぱり自分では色々なパターンで考えてると言っていました。入り方は一緒でも、わざと入るスピードを変えたり。

西森 昔選抜でベイカー選手を投げたときに、片方背中持ってて隅返かなと思ったら、巴投なんですよね。

古田 割と海外選手に多いパターン、類型ではないけど理屈を満たしている捨身技ですね。では皆さん意見の一致を得て、ここは加藤選手を推しておきます。

■ 準決勝~決勝
eJudo Photo
全日本選抜体重別準決勝、王子谷対小川。王子谷が「指導3」で勝利した。

古田 さて、ベスト4が出揃いました。王子谷剛志選手対小川雄勢選手、原沢久喜選手対加藤博剛選手。

西森 王子谷選手にとってはここが山場ですよね。実は小川選手相手には3戦全敗。お互いに投げられないけど判定でやられる絵が見えてしまう。

朝飛 この間の選抜体重別の対戦では「指導2」のときの分かれ目が、王子谷選手が体落を掛けて、手を放してしまった時だったんですよね。それが審判の先生に弱気に見えたのではないかと。こういうところが差ですね。ただ、修正すれば地力は王子谷選手の方があると思います。で、小川選手はスタミナがあるので試合が長引けば有利ですね。そして小川選手は自分を優勢に見せる、その見せ方が上手い。

古田 逆に言うと王子谷選手は見せ方があまり上手くないということですね。小川選手は高校時代から「攻勢の演出」に非常に心を砕いていると思います。いま気にしているのは、彼が「待て」をむしろ攻めのスイッチにしているような場面が多くみられること。選抜でも「待て」が掛かって原沢選手が力を抜いてから2度、3度と仕掛けて、最後は大外刈で投げました。これも彼が持っている「攻勢を作る」引き出しの一つと思いますが、厳しい審判だと逆に「指導」が来ることがあるのではと思っています。

林 王子谷選手は全日本選手権でものすごく強いですよね。彼の中で全日本に対する思い入れが物凄くて、この大会は俺の大会だ、くらいに思っている。その気持ちは、こういう双方に高い圧が掛かる場では物凄く大切だと思いますよ。

西森 それは間違いないですね。もう一つはこれまでの全日本では左の強豪と当たってないんですよね。そういう意味では割と組み合わせには恵まれてきていて。上川選手にしろ原沢選手にしろ上がってくる相手が右組みだから王子谷選手の地力が存分に反映出来たという側面があります。それが今回苦手なケンカ四つの小川選手が伸びてきて、地力があってもそれを伝えきれていない。接戦になるとさっき朝飛先生が仰ったように際の演出力のところで後手を踏む可能性は十分あります。本人が自覚して小川のペースにさせないようにしないと。これまで勝っている以上、間違いなく呑んで掛かってきますから。

古田 選抜の様相を見る限りでは、王子谷選手の勝ち目を考えることのほうが難しいくらいだと思いますよ。

西森 とはいえ組み合わせで言うと王子谷選手のほうが余力を残して勝ち上がってきますね。小川選手は垣田選手と太田選手の関門を突破して上がってきますからね。そこの疲労度も含めてどうなるかですね。

林 この試合、どちらが最初の「指導」を取るかで決まる気がします。

古田 選抜を見ているとその観測はうなずけます。皆さんの話を聞いていると王子谷選手を推したくなりますが、選抜の様相を見る限りだと厳しいかなと。

西森 理屈じゃなくて予想ですから(笑)。小川選手はそこまで2つ関門を突破しているので疲れているであろうと。

林 七戸龍選手対西潟健太選手の試合に過去名勝負がいくつかありましたが、七戸選手は西潟選手がすごく苦手だったんですよね。でも全日本の準決勝では西潟選手に勝っています。全日本はなかなか理屈通りには行かない大会でもあります。

古田 林さんらしいですね。全日本だから出る力。良いですね。

西森 普段やらない小外掛で西潟選手を吹っ飛ばしましたからね。

林 やっぱりそれは、全日本の力。西潟選手に勝つためにそこまで研究したからだと思うのですが、それをさせるのも全日本の力なんだと思います。

古田 そして王子谷選手はまさに「全日本ゆえの力」をここまで出してきた選手ですからね。それではここは皆さんの意見を買って、王子谷選手を推しましょう。・・・続いて、原沢久喜選手対加藤博剛選手という予想になります。

西森 対戦はないですけど、稽古は良くやる2人ですね。

朝飛 だとしたら原沢選手が勝ちますね。彼は頭が良くて試合の組み立てを作る人なので。知らないままにやったらあの巴投も食らうし試合の流れも持ってかれる可能性が高いと思うのですが、その巴投の対処ができれば。多分原沢選手が前に引きながら試合をするんじゃないかと思うんですよね。

林 警戒すべき技が巴投に絞られてきてもいますからね。

古田 自分が前に出ていけば加藤選手の術中だけど、相手を前に引き出す形は加藤選手タイプには有効と。

朝飛 原沢選手の試合にはあっと思わせるところがいっぱいあるんですよ。リオ前に七戸選手と何度かやりましたよね。どの試合も原沢選手が非常にしっかり研究して手を打っていて、七戸選手は上手く自分の力を出せなくさせられていた。

eJudo Photo
2015年大会準決勝、原沢と王子谷の対戦。

eJudo Photo
2017年全日本実業団体対抗大会でマッチアップした2人、この際は原沢が大外返「一本」で勝利した。

古田 という訳で、決勝は王子谷選手対原沢選手という組み合わせになりました。

林 オーソドックスなカードになりましたね。ちょっと落ち着くといいますか。

古田 でも心躍る組み合わせですよね。型にとらわれずに話をしましょうという環境下でこの3人が真摯に語り合った結果がこうなったということは、相応の価値のあることだと思います。予想というものは外れたほうが面白いということを大前提に、あくまで見どころを提供するということで、王子谷選手対原沢選手の様相について皆さんの予想を語ってください。

西森 ここのところ全て何らかの技の形で決まっていますね。あ、でも前回は両者反則負け。

古田 直近はそうですね。

西森 まあ、ああならないようにして欲しい。その前は王子谷が大外刈を返されて…疲れていましたけどね。

古田 行った結果ですしね。

林 本人のモチベーションは決して高くなかったようです。

古田 全日本実業団体対抗大会のこの試合、前段までの流れが完全に日本中央競馬会側で、王子谷選手には厳しい戦いだったと思います。

林 ただ、あの負けはすごく響いたそうです。あれで調子を落としたというか、自信を失ったと話していました。

古田 王子谷選手が勝とうとするとどういう戦略になるのか。

林 大外刈で投げに行く、でしょうね。

朝飛 支釣込足も狙っていると思うんですよね。でも、原沢選手の脇下の使い方が上手くて、寄せ切れないと思うんです。以前準決勝で負けたときは、大外刈に入るんだけども膝から王子谷選手が落ちて、回り込むようにして原沢選手が合わせに行くって場面が2回くらいあったんですよね。原沢選手の方が圧倒していました。

西森 リーチは原沢選手の方があるので、王子谷選手はいかに間合いを詰めるか。

朝飛 王子谷選手はこの大会で七戸選手とやったときに、大外刈で釣り手を放して巻き込みながら投げたことがありました。全日本では何かを用意してくるんですよね。

林 執念というところでは、この大会に関しては王子谷選手の凄さを感じます。原沢選手は去年のオーバートレーニング症候群もあって、試合後に話を聞いたりすると、まだまだ自分の体の様子を見ながらというか、おっかなびっくりやってるような印象を受けます。

西森 じゃあ最後は気持ちということで。

林 本当はこの時代、OH時代と名付けたいんところなんですけど。「王子谷・原沢」時代。そう考えるとそろそろ原沢選手が勝っておかないといけない。

朝飛 王子谷選手が 3回優勝しているんですね。原沢選手は1回ですか。

古田 全日本選手権史的には、原沢選手がこの数年我々に残したインパクトほどのものは残していないですね。時代を作り切れていない。

林 「神永・猪熊時代」のような、ライバルがいて時代は作られてきたと思うんですど、このままだとOH時代のOが小川になってしまうかもしれない。

朝飛 斉藤立選手もすぐ出てきますよね。

林 将来的には中野選手・斉藤選手が時代の代名詞になるような、そうなるのではと考えてしまいますね。

eJudo Photo
2017年大会閉会式。賜杯を手にしたのは王子谷だった。

古田 駆け足ですが、決勝までの展望が終わりました。では皆さま、最後に全日本への期待を一言ずつお願いします。

朝飛 全日本選手権だからとここに懸けてくる人もいるし、「門番」もいるし、そういう人たちが自分の力を思い切り発揮してくれることを期待したい。日本中、世界中が注目してくれる試合でもあるので、勝ち負けも大事だけど、日本らしい柔道が展開されれば嬉しいなと思います。

林 見ていて興奮する柔道をやって欲しいと思います。もちろん「一本」を取れれば一番良いんですが、それだけではなく攻防それ自体で興奮させてもらえるような試合が、かつてはいくらでもありました。選手はファンのために試合をやるわけではありませんが、日本柔道というものを突き詰めていくと、結果としてファンの人達も納得するような好試合が展開していくことになるんじゃないかと思います。今日は僕がロマン派で、橋本選手や髙藤選手を推させてもらいましたが、夢のある試合をして欲しいですね。

西森 4時間近く予想してきてなんですが、この予想を上回る展開、結果を見せてほしいと思います。それが各選手それぞれの意地だと思います。便宜上勝つ可能性が高いと予想する選手を選ぶ形で進めてきましたけど、それをひっくり返すような試合を見たいです。特に若い選手、それから東京五輪を狙う選手の野心がみたいですね。この試合を獲って、日本一になって上がっていくんだというガツガツしたものが見られると嬉しいなと思います。

古田 全日本選手権のあの高い磁場の中で好試合が続く、幸せな1日がきっと今年も現れることを願って、そしてそのときにこの座談会が観戦の一助になることを願って、大締めとさせて頂きたいと思います。今日は皆さんありがとうございました。

※この座談会は4月17日に行われました


→全日本柔道選手権予想座談会「全日本を語りつくす」(上)
→全日本柔道選手権予想座談会「全日本を語りつくす」(中)

※ eJudoメルマガ版4月27日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る




supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.