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桐蔭学園と国士舘、そして天理、個性異なる「三強」が優勝争いの主役・第40回全国高等学校柔道選手権大会男子団体戦展望

(2018年3月18日)

※ eJudoメルマガ版3月18日掲載記事より転載・編集しています。
桐蔭学園と国士舘、そして天理、個性異なる「三強」が優勝争いの主役
第40回全国高等学校柔道選手権大会男子団体戦展望
今期の高校柔道「三冠」最初の大会である第40回全国高等学校柔道選手権大会がいよいよあす20日、日本武道館にて開幕する。初日の個人戦に引き続き、最終日の21日に行われる団体戦、特に大会創設時から続く男子団体戦(五人制抜き勝負)は大会の花形。この男子団体トーナメントを簡単に展望してみたい。

■ 有力校
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第1シードは桐蔭学園高

優勝候補に挙げられるのは3校。いずれも異なる個性を持つ魅力的なチームであり、組成がまったく異なるこの3校が争う今年度大会上位対戦の予測は、近年ちょっと覚えがないほど、簡単に言って「面白い」。

まずこの3チームをシード順に従って、簡単に紹介したい。

第1シードは連覇を狙う桐蔭学園高(神奈川)。昨年度高校「三冠」を獲ったメンバーから90kg級のインターハイ王者村尾三四郎、81kg級の賀持喜道、100kg超級の千野根有我とそれぞれ個性異なるポイントゲッター3枚が残った強力チームだ。

3月に関東地区予選を勝ち抜き、高校2年生にして全日本柔道選手権出場を決めるという偉業を成し遂げたばかりの村尾は、線が細いその見た目に似合わぬ凄まじい膂力と爆発力ある投技が武器。相手の体ごと根こそぎ刈り取るような左大外刈に、中途半端な守備を決して許さぬケンケンの内股、これまた一発で相手を宙に舞わせる出足払に小内刈とその技どれも取り味十分。まさしく超高校級、「強い」という飾らぬ形容詞がもっとも似合う今代の主役だ。

賀持喜道はこれも線は細いが、左内股を中心とした正統派の業師。9月の全日本ジュニアでは決勝まで進み、既に講道館杯全日本体重別選手権の畳も踏んでいる。前代なんのかんのでエース関根聖隆の存在に最後は頼り切りであった桐蔭学園であったが、最終戦のインターハイ決勝でこの賀持が「次は自分たちの番だ」と次代の幕開けを宣言するかのように決めた素晴らしい左内股「一本」は忘れがたい。この選手も間違いなく今代の主役である。

身長185センチ、体重135キロの巨漢・千野根有我は2年生世代の全国中学校柔道大会最重量級の覇者。おそらく新チームになってもっとも伸びたのはこの選手である。前代は豪快な一発を放つ一方でスタミナ切れを起こし「病める巨艦」に堕ちることもしばしば、展開次第では今代の「穴」になる可能性すらあるのではと思われたが、今年は丁寧な組み手と分厚い寄せ、賀持ばりの出足払と支釣込足の切れを軸にした投げの威力、そしてソツのない寝技への移行と新境地を見せ早い時間の「一本」を連発。冬のシリーズではむしろ主役であった。

この取り味あるエース級を、それも3枚揃えるという近年ちょっと珍しい選手構成が今代桐蔭学園の特徴。入学決定時他校を「桐蔭の時代が来る」と嘆かせた分厚い布陣である。

というわけでまことに強力な桐蔭学園であるが、泣きどころもある。簡単に2点挙げたい。

1つは残りの2枚の陣容の薄さ。12月の黒潮旗大会で大活躍した4番手・高山康太は攻撃力の高さの一方で防御に難があり、「食らえば飛ぶ」タイプ。試合運びにも甘さがあり、組み際や戻り際などの集中のしどころで気を抜くことも多し、危険な時間帯や危うい空気を察知する能力に欠ける。バイプレイヤーという4番手本来の職掌にはあまり向かないタイプだ。さらに冬季シリーズを通じて結果を残す選手が現れなかった5番手枠はいまだ固定出来ず。66kg級の奥田訓平、あるいは1年生の安藤健志になるかと思われるが奥田はいかんせん軽量、安藤はこれも高山同様団体戦でやってはいけないミスを繰り返し、まだ経験値の蓄積が水準に達していないという印象。率直に言って、上位対戦云々でなく全国大会の畳で呼吸が出来るかどうかが危惧される段階だ。

もう1つの不安要素はポイントゲッター3枚の中に内在。まず超高校級の村尾が、その試合ぶりから見る限り、左相四つの大型選手を苦手にしていること。本来なんのかんので最後は村尾が出て勝負をつけねばならないはずの桐蔭学園だが、ターゲットである天理高・中野寛太に国士舘高・斉藤立の2人がいずれも「相四つの巨漢」であることは、控えめに言って桐蔭学園が採り得る戦略をかなり制限してしまうはず。続いて賀持の負傷。賀持は2月11日に福島で行われた魁星旗錬成大会で、新田高・熊坂光貴の極めて悪質な立ち姿勢からの反則腋固を食って(熊坂はダイレクト反則負け)釣り手の肘を負傷している。2週間前の時点で稽古に復帰しているとはいうものの、負傷状況から考えるといかな賀持といえどもトップパフォーマンスの発揮は難しいはず。

というわけで今大会勝ち上がりのカギは、今のところ引き算材料のもっとも少ない「絶好調」(高松正裕監督)の千野根。この人がどこまでチームを引っ張り、そして上位戦で仕事が出来るかどうかが勝負の行方を大きく左右することになるだろう。

そして色々書かせていただいたが、桐蔭学園の強みは村尾、賀持、千野根の3枚がこういったチーム事情や自らの弱点を誰より良く知り、そして行動出来る「大人」であること。招待試合シリーズにおけるこの3人の「自分が取らねばチームはどうなるかわからない」という切迫感と責任感、そして遂行力の高さは凄まじく、他校のレギュラーがまだようやく主戦の立場を噛み締め始める段階の新人戦期としては図抜けたものがあった。第1シードにふさわしい強豪と言って間違いない。

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純戦力的には国士舘高が優勝候補の筆頭

第2シードの国士舘は今年度最大の大駒と評して間違いない1年生エース・斉藤立の存在が軸。これにサイズある周辺戦力を分厚く並べた、隙の見出しがたいチームである。

斉藤は身長189センチ、体重160キロの日本人離れした体格を誇る偉丈夫。大外刈に内股、大内刈に支釣込足、そして体落とケレン味なく王道の組み立てだけで勝負する正統派タイプだが、あまりのスペックの高さについていけない相手が異次元級の初弾を捌けず吹っ飛ばされ続けているという印象。体格的にも(身長はまだ伸び続けているとのこと)方法論的にも「伸びしろ」を残したまま、しかも凄まじい取り味を発揮しているまさしく大物中の大物だ。相四つ、ケンカ四つそれぞれにしっかり取れる技があり、かつ今シーズンは寝技技術の上積みが顕著。もはや先手掛け潰れで試合を流すことすら許さぬ段階に至りつつあり、ちょっと高校生では相手をするのが難しい位相にある。ライバル校の指揮官いずれも暗に、あるいは直截に「斉藤とタイの状況で戦うことは難しい」との見解を示しており、今大会は間違いなく「斉藤をいかに攻略するか」が大会全体を貫く用兵上のメインテーマ。ファンはこの見立てを手元に携えて観戦に臨むべきだろう。

国士舘は周辺戦力も強力。2年生の酒井陸(177センチ120キロ)、1年生の長谷川碧(174センチ117キロ)と圧力と安定感ある2枚に、業師の藤永龍太郎(1年生・175センチ100キロ)、前代で斉藤とともにレギュラーを務めた道下新大(176センチ100キロ)と、いずれも他校ならポイントゲッターが務まる素材が目白押し。ただし弱点としては1年生が多くメンタルがパフォーマンスに与える振れ幅が大きいことと、何と言っても性格的に大人しい選手が多いこと。斉藤不在で戦った松尾杯と若潮杯では明らかにこれが悪い方に出、いずれの大会も決勝で敗れている(優勝は桐蔭学園高、天理高)。冒頭「隙が見出しがたい」と書かせて頂いたがより正確に言えば「隙は見えるが、それを覆い隠すだけの陣容の分厚さがある」というべきか。隙が隙を呼ぶ連鎖構造、あるいは若潮杯決勝のように1つの失点がその後すべての歯車を狂わせてしまう負のシナリオは、考えられないこともない。両大会で見せた大人しさをそのままに、この1年生たちが例えば桐蔭学園の凄まじく巻き上がった2年生3枚に対峙することには相当の不安を感じる。夏までの斉藤の失敗パターンが背景状況の悪さから引き出された「焦り」「取り急ぎ」といったメンタルの揺れにあったことからしても、周辺戦力が「乗れる」かどうかは決定的要素になり得る。

その中にあって期待が掛かるのは超攻撃型の2年生・安藤稀悟(179センチ95キロ)の存在。意外にもチーム内の序列ではレギュラーの当落線上にある模様だが都大会では持ち前の技の切れ味を存分に発揮、会場どよめく大技で勝利を重ねて優勝の立役者となった。歴代国士舘が大旗を獲り逃すのは、大駒の存在ゆえに周辺戦力に「仕事を譲る」空気が蔓延したという場合が多かったと感じるが、今回は安藤がこの項に関わる最大の変数。安藤が雲を払うような試合を見せれば、全員が「仕事をする」好循環が醸成されるのではないだろうか。この「仕事を譲ってしまう」現象については、今代は既に招待大会2大会の敗戦というケーススタディが為されているという強みがあり、例えば飯田健太郎を擁して全大会圧勝を続けながら肝心の当日チームが金縛りにあってしまったあの状況とはやや異なる。大会最大の大駒の保有に分厚い周辺戦力、波乱なく純戦力でのみ机上シミュレーションを行えば、優勝候補の筆頭はこの国士舘ではないかと考える。今大会は、順当に戦えば優勝するはずの国士舘を周囲がどう崩すか、この構図で進む大会と規定すべき。

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若潮杯を32年ぶりに制して近畿大会も圧勝。意気揚がる天理高

そして、シーズン開始当初の「桐蔭学園と国士舘のマッチレース濃厚」との観測を崩し、この争いに割って入ったのが天理高。今回は第4シード配置、もともとエース中野寛太の充実は隠れもなかったが、周辺戦力の成長がこの出世の原動力だ。

中野はいわずと知れた昨年度インターハイ最重量級の覇者。3月に行われた全日本柔道選手権近畿予選を勝ち抜き、村尾同様高校2年生にして本戦進出を決める快挙を成し遂げたばかりのスーパーエースである。大外刈と内股を中心に据えた本格派でありながら切れる左右の足技に袖釣込腰と業師タイプの一撃も手札に備え、技の繋ぎの巧みさ、相手の守備を一瞬で自分の優位に変えてしまう組み手の方法論の確かさ、そして粘る相手を具体的に獲り切る攻撃の引き出しの豊かさと、技術的な完成度の高さなら斉藤を凌ぐ。

これに植岡虎太郎(173センチ95キロ)と1年生の井上直弥(183センチ130キロ)を加えた3枚が天理の得点源。植岡は二本持ったまま後回り捌きの担ぎ技と小内刈で徹底的に攻め続ける典型的な「汗を掻ける選手」だが、切れる出足払も含めてそれがすべて一発取って来れる良い意味での「大振り」であることが特徴。重たい太刀で間断なく打ち掛かって間合いを詰めてくる、相手にとってはまことに嫌な選手だ。昨年度大会では桐蔭学園を相手に得点を挙げて(村尾三四郎から一本背負投「有効」で勝利)もおり、三冠の自信と経験を誇る同校相手に精神的に優位にあれる数少ない存在。井上は今年度「一番伸びた」(齋藤涼監督)貴重な大型。典型的な重量級の攻撃型で敢えてこれと挙げるべき尖った特徴はまだないが、汗を掻ける中量選手が揃った天理に、サイズでも圧せる駒が増えたことは非常に大きい。裏投一発を懐に呑む水上世嵐を含め、以降の戦力はいずれも担げ、足で繋げる地力の高い中量級揃い。積み上げた稽古量の多さゆえか彼らに「ポカ」の匂いは極端に少なく、久々の大旗獲得も十分手に届く位置にある。

ただし、サイズに欠ける汗掻きタイプの3枚に1年生重量級1枚という中野以外の組成はその取り味が「相性」に左右される割合が意外に大きいのではと推測する。序盤戦に中量級勢が汗を掻きそこなって「実力差ほど取れない」ことに焦り、大舞台の経験がまだ薄い井上が固まってしまうような負の展開は十分ありえる。このチームも序盤戦で植岡、水上あたりが乗っていけるかどうかがその後に大きく影響するはず。

順当に勝ち上がるとするとこの3校の対戦順は、準決勝で桐蔭学園-天理、勝者が決勝で国士舘。

余談ながら、この配置少々納得しかねる。桐蔭学園が第1シード、国士舘が第2シードまではわかるが、現場の誰もが「三強」と読んだ今代の勢力図にあって、なぜ第3シードを飛ばして天理が第4シードなのか、なぜ第1シードの桐蔭学園に「優勝には連戦必須」の立場を強いたのか。優勝争い、あるいは純実力を基準に考えれば選考委員のチョイスはちょっと理解しがたい。全体のバランスを考えたということなのかもしれないが、有力2校との連戦を避けるべく、ミッションとして「招待試合全勝による第1シード獲得」を掲げ、それを実現した桐蔭学園などにはさぞ理不尽に映ったであろう。せめて、少なくともなんらか明確なポリシーを持ってこの策が選ばれたであろうことを願ってやまない。

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「四つ角」残る1枠には大成高がチョイスされた

話を戻して。続く勢力は「四つ角」の大成高(愛知)と、おそらく大成とその座を争ったであろう崇徳高(広島)。

大成は前代の準優勝時に決勝の畳に立った90kg級の大西陸斗と100kg級の藤鷹裕大がチームの中核。技の切れ抜群の大西、有利不利に関わらず一種空気を読まずに奥襟圧力と内股の鉈を振るい続ける「本格派志向の汗掻き」藤鷹というこの2人に、招待試合シリーズで大腰「一本」の圧勝を続けた急成長株・大竹龍之介が加わってチームには一定の勢いがある。ただし前代の東部直希のようなエースの不在が決定的な不安要素。大成はこれまで序盤戦が上手く行かず、エース級の奮闘で体勢を立て直してなんとか上位対戦に辿り着いたという年が何度かあり、シナリオが狂った際にこれを跳ね返す装置のない今代の勝ち上がりは意外に読めない。大竹の奮闘はおそらくもはや揺るがず、上位進出のカギは藤鷹、あるいは大西がこの「エース」の座に本番で座ってくれるかどうかということになるだろう。

インターハイ準優勝チームの崇徳は、新人戦中国大会に優勝。今年もしぶといチームを作った。前代のような爆発力をいまだ見せられていないことは不安材料だが、八木郁実と冬季は負傷のため本領発揮に至らなかった篠原泰斗、そして大物1年生福永夏生がどれだけ攻撃力を上積み出来たかが、上位対戦の運命を分ける。

残るシードチームは、木更津総合高(千葉)、福岡大大濠高(福岡)、東海大相模高(神奈川)。

木更津総合はここ数年のチームカラーを引き継いだ、自分を高く買える元気の良さが売りのチーム。招待試合シリーズは坂東虎之輔と浅野史恩の主力2枚を欠きながら存在感を発揮、水田杯では3位に入賞している。全員が自分なりの形で、格上に打ち込む刃を懐に呑んだ面白いチームだ。福岡大大濠は90kg級中西一生を軸に、九州新人大会最重量級で決勝を争った野田隆世と釘本陸が脇を固める好チーム、県予選では新人戦九州大会を制した大牟田高を破って全国大会に名乗りを挙げた。東海大相模は前代金鷲旗で大活躍した榎田大人を軸に、大村康太らサイズある駒を備えた粘り強いチーム。

ほか、シード級として東海大仰星高(大阪)や東海大札幌高(北海道)ら好チームの名前が挙げられるが以降は混戦。組み合わせ配置に大きくその戦果が左右されるステージにある。

■ 組み合わせ
トーナメントをA~Dの4ブロックに割って、簡単に展望を試みたい。

【Aブロック】
Aシード校:桐蔭学園高(神奈川)
Bシード校:福岡大大濠高(福岡)

上側の山に桐蔭学園を妨げるチームはなし。比較的山場は少ない見込みで、見どころは千野根の調子や5番手枠の成長の有無を見極めるというステージまで狭められるのではないだろうか。
一方福岡大大濠の山が激戦、同校がいきなり白鴎大足利高(栃木)と激突するというなかなか厳しい組み合わせ。白鴎大足利は長谷川明伸らサイズのある駒に73kg級のファイター齋五澤航介と揃えた好チームで、少なくとも試合の中にひとつ山場を作ってくることは確実。福岡大大濠、中西は計算できるとして超級2枚が初戦からしっかり働けるかどうかが勝ち上がりのカギ。

さらに下側の山では大型を揃えた作陽と、対照的に大型狩りを得意とする小兵チーム足立学園が2回戦でマッチアップ。好試合が期待できそうだ。

準々決勝は桐蔭学園-福岡大大濠と予想する。この2校は松尾杯と水田杯で連戦、いずれも桐蔭学園が勝利している来歴がある。この冬季シリーズの2試合を観察する限り、対戦を重ねて相手を知ることが有利に働くのは桐蔭学園の側。福岡大大濠の重量2枚はオーソドックスファイターの域を出ず、相手の柔道を知った上でその隙を突くような意外性のあるタイプではない。桐蔭学園のベスト4勝ち上がりはまず間違いない。

【Bブロック】
Aシード校:天理高(奈良)
Bシード校:崇徳高(広島)

崇徳の側に埼玉栄高(埼玉)、天理には東海大甲府高(山梨)が配されたが、どちらのチームもベスト8勝ち上がりは確実なものと見ておきたい。
天理-崇徳。天理の面々を「掛けても掛けても崩せない」と焦らせるだけのしぶとさが崇徳にはあるが、最終的には中野寛太の保有をテコに天理が勝ち抜けると見る。中野に複数枚を手当てしたい崇徳は2つ、3つと勝ちを重ねておく必要があるが、現実的にそこまでの爆発力を期待するのは難しそう。ベスト4進出は天理。

【Cブロック】
Aシード校:国士舘高(東京)
Bシード校:木更津総合高(千葉)

国士舘は比較的戦い易い配置。3回戦の育英高(兵庫)戦はひとつの山場だが、育英は今年の近畿地区を代表する強豪もアップセット志向のケレン味あるチームではなく、国士舘との試合は一種「まともな」地力比べとなる可能性が高いと見る。国士舘が手堅く仕事を続ければ、最終的にはそれなりの枚数が残る試合になるのではないか。

下側の山、シード校木更津総合は新田高(愛媛)、福井工大福井高(福井)か京都学園高(京都)と連戦するというなかなかタフな組み合わせ。接戦は間違いないが、総合力からベスト8入りまでは推しておきたい。

ベスト4進出は国士舘。下側の山から上がってくる可能性のあるチームでもっとも波乱要素を含む組成のチームは木更津総合だが、国士舘を崩すには1枚、2枚の刃を入れただけでは足りぬはず。立て続けにアップセットを起こし、しかも最後は斉藤立の首を獲らねば勝利にはたどり着けない。木更津総合が起こし得る「力関係を越えた一撃」の到達可能上限数が、国士舘の厚い壁を抜くところまでは届かないと考える。斉藤登場を待たずに国士舘が勝ち上がるのではないだろうか。

【Dブロック】
Aシード校:大成高(愛知)
Bシード校:東海大相模高(神奈川)

上側は大成の山。3回戦の延岡学園高(宮崎)戦がひとつの山だが、ベスト8までにはほぼ問題なく勝ち上がるはず。
下側の山は大混戦。東海大相模が勝ち上がり候補ではあるが、東海大仰星高(大阪)、東海大札幌高(北海道)、そして津幡高(石川)とシードクラスのチームが合計4つ同居。特に東海大相模-東海大仰星の試合は展開次第でどちらが勝ってもおかしくない。ここでは仮に東海大相模を推すが、上記どのチームにもベスト8入りの可能性が残る。

準々決勝は予断を許さない。総合戦力は大成が上と見るが、榎田という精神的にもタフなエースの存在、黒潮旗大会における直接対決の勝利歴というアドバンテージもあり、東海大相模の勝利という目も十分あり得る。

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インターハイ準決勝の桐蔭学園-国士舘戦、千野根有我が道下新大を払腰「一本」、これが決勝点となった。

【準決勝-決勝】

予想される準決勝カードは、

桐蔭学園高 - 天理高
国士舘高 - 大成高(東海大相模高)

の2試合。後者は国士舘がミスせず手堅く戦えばそのまま勝利という可能性が濃厚だが、前者の試合が読みがたい。そもそものオーダー順が問題で、果たして桐蔭学園は村尾を前に出すのか、その責を千野根に委ねるのか、はたまたこの2枚を後にまとめるのか。逆に天理に、近畿大会決勝で見せたような「中野前出し」の手はあるのか。

両監督とも当日の勝ち上がりや調子が大きな変数である旨発言しており、大会開幕前のこの段階でその作戦を読むことは難しい。ただ、各種大会での試合内容や組み手の相性から、村尾-中野のエース対決が実現した場合、その結果に関して「タイの背景で戦えば、大枠中野優位の引き分け」が妥当な落としところではないかと読む。前日の個人戦で1つ結果が出てしまっているかもしれないのだが、これを大前提として双方作戦を組むと踏んで、思考を巡らせてみると面白いのではないだろうか。評者は現時点での高松監督の高評価(上記筆者評よりも千野根と村尾の相対的実力を高く踏んでいるかと思われる)から考えると、千野根を前に置いてサイズで中量級を圧し(あるいは格上の重量級として井上をも破り)、抜くだけ抜かせ、削るだけ削って中野を引っ張り出して、最後は村尾で勝負する作戦に出るのではないかと考えている。

現時点では、周辺戦力の力比べとなった場合賀持、千野根の得点力が天理の「穴のない平均値の高さ」を突き破るのではないかという予想を以て、小差で桐蔭学園の勝利としておくのが論理的かと思われる。ただし、天理の「戦士」という言葉がふさわしい練度と規律の高さ、桐蔭学園の4番手と5番手の「流れを変える駒」ではなく良い方向にも悪い方向にも加速装置としてしか機能しないこれまでの戦いぶりを思い起こすと、天理勝利の目も十分あり得るのではないかと思っている。現場感覚的にはむしろ天理勝利のほうが食べやすい選択。勝負は予断を許さない。

決勝もこれまた予測は困難。国士舘もこの試合に限ってだけは「斉藤を最後衛」のセオリーを踏むとは限らず、それまでの桐蔭学園(あるいは天理)の戦いぶりを、岩渕公一監督の口癖をまねれば「トクと」観察して作戦を繰り出してくるものと思われる。

いずれこの項の序盤で書いた通り、オーダー観察の軸は「斉藤立をいかに攻略するか」ということと、桐蔭学園にとっては本来その目的達成の最大の武器となるべき村尾三四郎が斉藤タイプの巨漢相四つを苦手としていることである。桐蔭学園が「周囲を削る役」「勝負を決める役」をそれぞれ誰と規定して何枚手当てするのか、そもそもこれに「置き大将」という職種をひとつ増やすのか。国士舘は前線の迎撃役に誰を指名するのか、そもそも斉藤をこの「削られた場合に出動する」後衛に置くことに甘んじるのか、前に出すのか。

天理-国士舘となった場合、天理がもっとも採りやすい策は前でつぶし、再後衛の中野に対斉藤戦を託すという「若潮杯‘」(リードをベースに試合を後半に持ち込み、中野が引き分けで終えた同大会の最終戦を対斉藤戦と仮定する)パターンのはず。だが中野-斉藤の力関係をどう見積もっているかでこの戦略は根本から変わる。近畿大会決勝の「中野先鋒」策でもわかる通りこのチームには用兵発想の柔軟さがあり、場合によっては「中野で斉藤を潰しての置き大将起用」あるいは「中野を削り役に起用し、以降の総がかりで斉藤を潰す」策すら考えられる。

絶対的な1トップを厚い周辺戦力で囲む国士舘、高校生離れした3枚を擁してその壁に挑む桐蔭学園、最重量級王者と労をいとわぬ戦士を揃えて古豪復活に挑む天理。今年の構図は、ざっくり言って「めちゃくちゃ面白い」。事前予測の段階でここまで楽しめる高校選手権はちょっと稀なのではないだろうか。熱戦に期待したい。

文責:古田英毅

※ eJudoメルマガ版3月18日掲載記事より転載・編集しています。

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