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グランドスラムパリ2018最終日女子レポート

(2018年2月23日)

※ eJudoメルマガ版2月23日掲載記事より転載・編集しています。
グランドスラムパリ2018最終日女子レポート
(70kg級、78kg級、78kg超級)
文責:林さとる/古田英毅

■ 70kg級 寝技冴えたサリー・コンウェイが優勝、新井千鶴が見せた「一種の隙」は先送りして来た技術的課題の噴出
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決勝、新井千鶴が左内股から強引に押し込むも、サリー・コンウェイが体を入れ替えて横四方固に捉える。

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(エントリー20名)

【入賞者】
1.CONWAY, Sally (GBR)
2.ARAI, Chizuru (JPN)
3.GAHIE, Marie Eve (FRA)
3.POLLING, Kim (NED)
5.VAN DIJKE, Sanne (NED)
5.NIANG, Assmaa (MAR)
7.POSVITE, Fanny Estelle (FRA)
7.PEREZ, Maria (PUR)

現役世界王者である新井千鶴(三井住友海上)を筆頭に、ブダペスト世界選手権2位のマリア・ペレス(プエルトリコ)や、キム・ポリング(オランダ)らのトップ選手が多数参加した、これぞグランドスラム適正といったレベルのトーナメント。ただし世界選手権3度優勝のジュリ・アルベール(コロンビア)と、昨年のワールドマスターズ王者であるマリア・ポーテラ(ブラジル)が翌々週のグランドスラム・デュッセルドルフ大会に回ったこともあり、本来のグランドスラム・パリ大会の格に上り詰めるには一歩足りない印象だが、それでもこのところの70kg級の平均的なエントリー状況を考えれば十分過ぎるほどの充実した陣容。

このハイレベルトーナメントを決勝まで勝ち上がったのは、第1シードで優勝候補筆頭の新井と、リオデジャネイロ五輪の銅メダリストとであるサリー・コンウェイ(イギリス)。

新井は2回戦で昨年の世界ジュニア選手権王者のジョヴァンナ・スコッチマッロ(ドイツ)を左内股巻込「技有」優勢で下して大会をスタート。以降は準々決勝でかつて苦手としていたファニー=エステル・ポスヴィト(フランス)に「指導3」の反則(2:21)、そして山場と目された準決勝でもポリングから左大外刈「技有」優勢と、極めて順当に決勝までを勝ち上がる。事実上の決勝と目されたポリングとの対戦でも危ない場面はほとんど見られず。かつて階級きってのパワーファイターの名を欲しいままにしたポリングを相手に、もはや組み手や技の装甲を剥がした純地力でも新井の方が上という印象すら残った。

一方のコンウェイは1回戦でメリッサ・エレーヌ(フランス)を支釣込足「一本」(2:33)で下すと、2回戦ではアンナ・ベルンホルム(スウェーデン)を組み際に腕を一本背負投の形に抱えた右大外落「技有」で撃破。強敵ペレスを相手に迎えた準々決勝では、得意としている寝技が威力を発揮し、隅返で引き込んだ形から粛々と手順を進め、腕挫十字固「一本」(GS1:35)に辿り着く。さらに続く準決勝のマリー=イヴ・ガイ(フランス)戦でも、右大外刈を透かして相手を伏せさせると、そこから滑らかな動きで相手の足を捌いて袈裟固。ここからは教科書どおりに相手が動くまでその形をキープし、相手の動作に合わせて体勢を入れ替え、最後は裏固の形でフィニッシュ「一本」。迷いなく、そして無駄な動き一切なく直線的に袈裟の形を作った入りに相手を巧みに制し続けたフィニッシュと、形は地味ながらも固技技術の熟達と自信を十分感じさせる勝ちぶりだった。コンウェイの決勝進出は、昨年6月のグランプリ・カンクン大会以来。長所を存分に発揮し、昨年6月のグランプリ・カンクン大会以来の決勝進出を決めた。

決勝は大枠新井の優位で進むが、3分過ぎに新井が場外際の左内股で強引に押し込んだところで、伏せて耐えた相手の体の上であくまで押し切ろうとした新井が空回り、自分の体のみが相手を乗り越える形となる。コンウェイが体を入れ替えて胸を合わせると新井はこれを無防備なまま迎え入れてしまい、がっしり横四方固に抑え込まれて万事休す。結果3分40秒にコンウェイの「一本」が宣言されて試合終了。意外、かつあっけない形で敗れた新井はまさに茫然自失といった様子だった。

まったく意外な結果であったが、新井の敗戦はアクシデントではない。負けに不思議の負けなし、相応の理由があったと観察される。

引き手で襟を持って左内股、体を強引に乗り込ませたところが空回りして半回転してしまい、相手に被られて抑え込まれた。この問題の場面からは現場判断という戦術的なミスと、技術的な課題にひとまず目をつむったまま競技力を上げてきた新井の戦略的来歴という、長短2つのスパンでの課題が読み取れる。

前者から先に書き起こすと、コンウェイが新井に勝利する唯一のチャンス(と少なくとも本人が思い込んでいる)である寝技への移行に際し、明らかに無防備であったこと。新井が引き手で襟を持ち、ために得られぬ回旋力をフォローするために体ごと突っ込んで結果両者が縺れるというこの攻防は、ほぼまったく同じ形がこの場面の直前、2分6秒から2分30秒までのシークエンスで起こったばかり。なんとか寝勝負に持ち込みたいと常にタイミングを探し続けるコンウェイに同じ形からの寝勝負展開を企図させるには十分な伏線であったはず。しかも新井は被られた瞬間、明らかに一瞬動きを止めている。「技有」を失ったと勘違いして動揺したか、「場外」の判断を待ってしまったのか、いずれにせよチャンスがあればすぐ飛び出そうと身構えていたコンウェイに出遅れるには十分過ぎるほどの隙であった。

そして後者。ケンカ四つにおける新井の組み手の難は、かねて指摘し続けて来た通り。長い腕を持て余すかのように相手の上から、それも相手の腕を殺さずに肘を伸ばしたまま鷹揚に組み、ために相手に下から突かれて距離を取られ、ここぞで力を伝えきれずに技を決め切れない、この悪手はシニアデビュー以来どうしても解消できない新井の宿痾だ。ここで新井が選んだ(結果的にそうなったということかもしれないが)のは、それでも押し込んで投げ切るパワーの獲得。相手の釣り手が自身の懐の中で自由に動く苦しいはずの状況で、防がれるはずの技をそれでも突進して押しつぶし、投げ切ってしまうだけの体の力の獲得が、新井を待望の世界チャンピオンの座にまで押し上げた。高校時代の新井の売りであった投げの切れ味が鳴りを潜め、グシャリと押し込む形の決着が極端に増えたのはこのためだ。もはや新井はかつての「線は細いが技は切れる」選手ではなく、細かい技術的課題を上背の高さと突進力で塗りつぶしてしまう体幹系粘戦パワー派と規定しても良いくらいだ。

今回はある意味その負債を払わされた形。コンウェイに隙を突かれた「目をつむっての突進行動」に新井を駆り立てた技術的要因は2つ。ひとつは変わらず肘の重さを効かせず伸ばしたまま、上から持った釣り手。投げに出た瞬間必ず取られるであろう間合いを潰さない限り、体の力を伝えることが出来ないという意識が新井の心にあったはず。2つ目は、袖ではなく襟を掴んだ引き手。構造的に回旋を得られず、相手に手を畳に着いて耐えられかねないこの形の不利をクリアするために、ひときわ早く突進し、相手の体を乗り越えることで回旋を呉れねばならないという技術的要請が、この突進衝動を倍加させた。

そして結局距離を詰め切れず、それでも押し込み続ければなんとかなると「目をつむって」続けた無理やりの突進があの空回りを引き起こし、そして突進行動自体に意識を奪われ過ぎたことが、主審をみやって相手の被りを受け入れてしまうあの信じがたいエアポケットを生んだ。中途にハードルあれど崩してとにかく押し込みさえすればなんとか取れるはずという、ここ数年新井が頼って来た「解」の甘さがこの失敗の因である。

長くなってしまったが、つまりこの失点は事故ではなく、新井が解決を先送りして来た積年の技術的課題の噴出であったと考える。新井にとってはパワー頼りの現在のスタイルでも「勝ててしまっていること」こそがむしろ問題。ここ数年の70kg級の全体的なレベルの低下がこれを後押ししていたとみるが、これを幸い、真剣に組み手の研究に取り組んで欲しい。新井本来の持ち味である技の切れ味を発揮出来る、組み手の「解」とは。新井がここに手立てを見出せばもはや無敵、一段も二段も高い位相に到達することが出来るはずだ。

準々決勝以降の結果、決勝戦評と日本代表選手全試合の結果は下記。

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70kg級入賞者。左から新井、コンウェイ、ガイ、ポリング。

【準々決勝】
新井千鶴○反則[指導3](2:21)△ファニー=エステル・ポスヴィト(フランス)
キム・ポリング(オランダ)○優勢[技有・払腰]△サンネ・ファンダイク(オランダ)
マリー=イヴ・ガイ(フランス)○合技[小内刈・内股](2:28)△アッスマ・ニアン(モロッコ)
サリー・コンウェイ(イギリス)○GS腕挫十字固(GS1:35)△マリア・ペレス(プエルトリコ)

【敗者復活戦】
サンネ・ファンダイク(オランダ)○GS反則[指導3](GS3:51)△ファニー=エステル・ポスヴィト(フランス)
アッスマ・ニアン(モロッコ)○反則[指導3](2:14)△マリア・ペレス(プエルトリコ)

【準決勝】
新井千鶴○優勢[技有・大外刈]△キム・ポリング(オランダ)
サリー・コンウェイ(イギリス)○裏固(2:16)△マリー=イヴ・ガイ(フランス)

【3位決定戦】
マリー=イヴ・ガイ(フランス)○合技[小外刈・横四方固](1:19)△サンネ・ファンダイク(オランダ)
キム・ポリング(オランダ)○合技[浮腰・一本背負投](3:40)△アッスマ・ニアン(モロッコ)

【決勝】
サリー・コンウェイ(イギリス)○横四方固(3:40)△新井千鶴
新井が左、コンウェイ右組みのケンカ四つ。両袖を持っての蹴り合いからコンウェイが燕返で新井に膝を着かせ、新井は浅く大内刈を撃って対抗。新井は釣り手で脇を差し、あるいは肩口を持ってと効く形を探り続けるがコンウェイなかなか隙を見せず。2分20秒、新井が両襟の左内股に出るとコンウェイが伏せ、新井は突進しながら釣り手を被せるように引っ張って技の効果を引き上げようとするが果たしきれず「待て」。新井が大枠優勢も、なかなか取り切れないという構図のまま試合は終盤へ。残り1分を過ぎたところで新井が再び両襟の左内股。不十分な組み手をフォローしようと激しく突進するが距離は詰まらず、伏せたコンウェイの上で空回りして自分だけが相手を乗り越えてしまうこととなる。コンウェイはここで回避に甘んじず、体を反転させるなり新井と胸を合わせて横四方固。一瞬なぜか動きを止めた新井、コンウェイの体を懐に抱く形で受け入れてしまい万事休す。3分40秒「一本」。

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準決勝、新井千鶴がポリングから左大外刈「技有」

【日本代表選手勝ち上がり】

新井千鶴(三井住友海上)
成績:2位


[2回戦]
新井千鶴○優勢[技有・]△ジョヴァンナ・スコッチマッロ(ドイツ)

[準々決勝]
新井千鶴○反則[指導3](2:21)△ファニー=エステル・ポスヴィト(フランス)

[準決勝]
新井千鶴○優勢[技有・大外刈]△キム・ポリング(オランダ)

[決勝]
新井千鶴△横四方固(3:40)○サリー・コンウェイ(イギリス)

■ 78kg級 オドレイ・チュメオが2年連続4度目のパリ大会制覇、濵田尚里はチュメオに苦杯も3位を確保
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準決勝、チュメオが右大外刈で濵田尚里を大きく崩す

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決勝、オドレイ・チュメオが引き手で袖口を持ってフッシェ・ステインハウスを激しく攻める

(エントリー22名)

【入賞者】
1.TCHEUMEO, Audrey (FRA)
2.STEENHUIS, Guusje (NED)
3.HAMADA, Shori (JPN)
3.MALONGA, Madeleine (FRA)
5.UMEKI, Mami (JPN)
5.STEVENSON, Karen (NED)
7.TURCHYN, Anastasiya (UKR)
7.POWELL, Natalie (GBR)

トップ層からマイラ・アギアール(ブラジル)が欠け、出場者の顔ぶれは昨年のグランドスラム東京大会とほぼ同じ。

ワールドツアーここまでの流れから、今大会の主役は、地元フランスのオドレイ・チュメオ(フランス)と、グランドスラム連勝を狙う濵田尚里(自衛隊体育学校)の2名と規定される。このふたりが激突する準決勝がトーナメント最大の山場だ。

結果から述べると本大会を制したのはチュメオ。良くも悪くもムラ気で出来不出来の差が激しい選手だが、今回は完全に「表」の目が出た。地元の大歓声を背に普段とは一段も二段も違う集中力の高さを発揮し、オール「一本」でトーナメントの頂点を極めた。

チュメオは1回戦でサラ・ムゾウギ(チュニジア)を右内股と袈裟固の合技「一本」(0:58)で下すと、2回戦でもカレン・スティーフェンソン(オランダ)を右大内刈と袈裟固の合技「一本」(0:38)で「秒殺」。勝負どころとなった準決勝の濵田戦では、ケンカ四つの濵田に対して袖口を持って引き手を抱き込む戦法を徹底し、組み手の優位をテコに貪欲に技を入れ続ける。後手を踏んだ濱田には早々に2つの「指導」が累積、小内刈で足元を崩され続け、スコア的にも後のなくなった濱田は動揺が明らか。最後は精神的に自家中毒に陥った濱田をチュメオが自信満々真っ向からの右大外刈で投げつけ「一本」。みごとグランドスラム東京のリベンジを果たす。

チュメオは続く決勝のフッシェ・ステインハウス(オランダ)戦でも、引き手で袖口を持つ戦法を展開して主導権を握る。あまりに露骨過ぎたために、袖口を握り続けた咎で「指導」ひとつを失ったが、最後はチュメオの右出足払を踏ん張って耐えたステインハウスがその瞬間古傷の膝を痛め、自ら畳に崩落。これが「一本」と判定されて試合は終了となった。

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負傷したステインハウスの登壇を支えるチュメオ

チュメオはこれでグランスラム・パリ連覇達成。昨年度大会決勝では重鎮たちに「退屈な試合」と酷評される消極試合の末の勝利、新ルールの是非まで問われる大論争を引き起こした来歴があるが、今回のオール一本勝ちという素晴らしい戦果でこの汚名を返上した形。

ただし今度は負傷した相手をよそにダンスを踊って大喜びする醜態を演じてしまい、同日の90kg級決勝で相手に肩を貸した向翔一郎のふるまいと比較されてまたもや紛糾。さすがに反省したか、表彰式では一転しおらしい表情でステインハウスの登壇に手を貸しており、最初から最後までいかにもムラ気のチュメオらしい起伏の大きい1日だった。

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3位決定戦、濵田が梅木真美を得意の寝技に引き込む

グランドスラム連勝を狙った濵田は、前述のとおりチュメオに敗れてトーナメント本戦から脱落。昨年から続いていた国際大会の連勝記録も止まってしまった。

濵田がバクー世界選手権に出場するためには、前年度銀メダリストである梅木真美(ALSOK)を成績で大きく凌ぐ必要がある。ゆえにそのエビデンスとなるはずであった「国際大会全勝」が途切れたことは、常であれば非常に痛いはず。しかしここでめぐり合わせの妙、濵田の3位決定戦の相手にはこのライバル・梅木が配された。

そしてこの試合は濱田が圧勝、それも僅か1分21秒で梅木の「参った」を引き出しての片羽絞「一本」という衝撃の結末。濵田はこれで命拾い、相対的に序列一番手の座をキープし続けることに成功した。

というわけでぶじ次戦に国内一番手の「権利」を持ち込めることとなった濱田だが、今大会で見せた課題も数多い。チュメオに小内刈で蹴られに蹴られてぐらつき続けた失点までの展開は、足元の弱さとともに講道館杯で見せた受けの脆さ、そして投げの威力と裏腹の一発への弱さという一種ヨーロピアン選手的な弱点を垣間見せたもの。そしてもうひとつ、なによりこの足技を受けてパニックを起こしたメンタル面が問題視されることは間違いない。長年濱田が世界選手権代表選考の俎上に上がることがなかったのは、おそらくこのメンタル面の弱さゆえ。強化が、精神的に不安定な選手に一人代表を託すことはありえない。濱田が世界選手権代表の座を手にするには、最終試験の選抜体重別で成績はもちろん、メンタルの強さを示すことがなにより必要かと思われる。

一方の梅木にとっては非常に厳しい結果。準々決勝ではこれまで分がよかったマドレーヌ・マロンガ(フランス)に力負けした挙句、右内股と裏投の合技「一本」(0:31)で敗れる大失態。加えて敗者復活戦では濵田に直接対決で遅れを取るダメ押しまで食らってしまった。世界選手権銀メダル奪取で積み上げたこれまでの良い流れを失いかねない大きな分岐点。
ただし、今回の梅木の敗戦は明らかに実力に不釣り合いな不出来。評価ダウンは仕方ないとして、あまり気に病み過ぎず、気持ちを切り替えて次戦に臨んでもらいたい。

準々決勝以降の結果、決勝と日本代表選手全試合の戦評は下記。

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78kg級入賞者。左からステインハウス、チュメオ、濵田、マロンガ。

【準々決勝】
フッシェ・ステインハウス(オランダ)○片羽絞(1:10)△アナスタシア・タルチン(ウクライナ)
マドレーヌ・マロンガ(フランス)○合技[内股・裏投](0:31)△梅木真美
濵田尚里○合技[小外刈・横四方固](0:57)△ナタリー・パウエル(イギリス)
オドレイ・チュメオ(フランス)○合技[大内刈・袈裟固](0:38)△カレン・スティーフェンソン(オランダ)

【敗者復活戦】
梅木真美○大外刈(0:32)△アナスタシア・タルチン(ウクライナ)
カレン・スティーフェンソン(オランダ)○合技[隅返・隅返](1:21)△ナタリー・パウエル(イギリス)

【準決勝】
フッシェ・ステインハウス(オランダ)○優勢[技有・内股]△マドレーヌ・マロンガ(フランス)
オドレイ・チュメオ(フランス)○大外刈(2:34)△濵田尚里

【3位決定戦】
濵田尚里○片羽絞(1:21)△梅木真美
マドレーヌ・マロンガ(フランス)片手絞(1:34)△カレン・スティーフェンソン(オランダ)

【決勝】
オドレイ・チュメオ(フランス)○GS出足払(GS0:11)△フッシェ・ステインハウス(オランダ)
チュメオが右、ステインハウスが左組みのケンカ四つ。チュメオは引き手で袖口を得るなり、釣り手を奥襟に叩き入れて猛然と前進。圧に負けたステインハウスは何もできないまま場外へ押し出されてしまう。以後も同じ形でのチュメオの攻勢が続き、1分29秒にはステインハウスに故意に場外に出たとして「指導1」。ここからチュメオのシャツが破けたことでしばし試合が中断される。再開後もチュメオの引き手で袖口を握っての強烈な組み手の前に、ステインハウスは防戦一方。しかし、2分15秒、あまりにも露骨に袖口を握っていたチュメオに対して、この形に対する「指導1」が与えられる。これ以降はさすがのチュメオも袖口グリップを繰り出すことは控え、試合終盤まで膠着状態が続くこととなる。
本戦終了間際の3分56秒、場外際でステインハウスが左内股を仕掛けると、チュメオはぶら下がるような谷落でカウンターを狙う。しかし堪えたステインハウスがチュメオの上に被さる形になり、主審はステインハウスの「技有」を宣言。地元のエース・チュメオのまさかの失点に会場が大ブーイングに包まれるも、これは投げの効果が不十分としてすぐに取り消される。試合は結局両者「指導1」の同点で、GS延長戦へ。延長戦開始直後のGS11秒、チュメオが右出足払を放つと、足を負傷したかステインハウスは自ら畳に転がり落ち、チュメオの「一本」が宣告される。好調チュメオが地元大会2連覇を果たした。

【日本代表選手勝ち上がり】

濵田尚里(自衛隊体育学校)
成績:3位


[2回戦]
濵田尚里○横四方固(1:52)△サマ=アワ・カマハ(フランス)

[準々決勝]
濵田尚里○合技[小外刈・横四方固](0:57)△ナタリー・パウエル(イギリス)

[準決勝]
濵田尚里△大外刈(2:34)○オドレイ・チュメオ(フランス)

[3位決定戦]
濵田尚里○片羽絞(1:21)△梅木真美

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2回戦、梅木真美がパク・ユジンに横四方固「一本」。

梅木真美(ALSOK)
成績:5位


[2回戦]
梅木真美○横四方固(2:42)△パク・ユジン(韓国)

[準々決勝]
梅木真美△合技[内股・裏投](0:31)○マドレーヌ・マロンガ(フランス)

[敗者復活戦]
梅木真美○大外刈(0:32)△アナスタシア・タルチン(ウクライナ)

[3位決定戦]
梅木真美△片羽絞(1:21)○濵田尚里

■ 78kg超級 優勝はキム・ミンジョン、素根輝は中国の新星ワン・ヤンに敗れるも3位を確保
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決勝、キム・ミンジョンが左大内刈でワン・ヤンを攻める

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今大会、大活躍だったワン

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準決勝、ワンが素根輝から左大外刈「技有」

(エントリー23名)

【入賞者】
1.KIM, Minjeong (KOR)
2.WANG, Yan (CHN)
3.SONE, Akira (JPN)
3.KINDZERSKA, Iryna (AZE)
5.KUELBS, Jasmin (GER)
5.BISSENI, Eva (FRA)
7.WEISS, Carolin (GER)
7.SLUTSKAYA, Maryna (BLR)

ユー・ソン(中国)や、イダリス・オルティス(キューバ)といった最上位の選手は出場していないが、イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)や、マリーナ・スルツカヤ(ベラルーシ)ら欧州の強豪を中心にハイランカーが多数参戦した、グランドスラムの名にふさわしいハイレベルトーナメント。

決勝には昨年のワールドマスターズ王者であるキム・ミンジョン(韓国)と、ダークホースのワン・ヤン(中国)が勝ち上がった。キムの決勝進出は対戦相手からしても妥当なものだが、ワンのこの活躍はちょっとした事件。この選手のワールドツアー出場は1度のみ、デビュー戦であった12月のグランドスラム東京では素根輝(南筑高2年)に袖釣込腰「技有」を2つ奪われた末の崩上四方固「一本」で一蹴され、初戦敗退。この時点では誰の記憶にも残らなかったはずの脇役、完全なノーマーク選手である。

そのワンが今大会は快進撃。初戦(2回戦で)サラ・アドリントン(イギリス)を「指導3」の反則(2:39)で破ると、続く準々決勝では昨年のヨーロッパ王者であるスルツカヤに左内股「技有」優勢で勝利。これだけでも驚くべき戦果だが、さらに準決勝では昨年敗れている素根を左大外刈と後袈裟固の合技「一本」(0:42)で一蹴。会場に強烈なインパクトを残した。決勝ではキムの上手さの前に屈して「指導3」の反則(GS1:10)で敗れたものの、この日の主役は間違いなくこの選手だった。

23歳のワンはこれぞ中国の重量級という超大型選手で、得意技は左大外刈。その巨躯に似合わず組み手の左右が利く器用さがあり、準決勝の素根戦では一度右で組んでから突如左にスイッチして左大外刈、この奇襲一発で素根を吹き飛ばしてみせた。「左ベースの両組み」であることを知られてしまった決勝では試合巧者キムの前にまったく攻めの手立てを失っていたが、体格とパワーだけでも相当な脅威。明らかに粗削りな選手だがこの段階ではむしろこれは伸びしろと捉えるべき、今後どのような成長を遂げるのか非常に楽しみだ。。

素根は前述のとおり準決勝でワンに敗退。これで歯車が狂ったか、3位決定戦でも中堅選手のヤスミン・クルブス(ドイツ)に左大外巻込「技有」を先行される意外な展開。最後は片襟の左大内刈と右袖釣込腰による合技「一本」(2:31)で逆転勝ちを収め、なんとか表彰台は確保した。
プレビューにも書かせて頂いた通り、今大会の素根ウォッチのポイントは海外の大型選手への対応。そしてワンとクルブスにそれぞれ巻き込まれて失点を喫したことで、今回に関してはひとまず失敗と評価すべきかと思われる。昨年のグランプリ・デュッセルドルフ大会で敗れた大型選手キンゼルスカに対しては「組み手管理で密着を防ぎつつ」、「巻き込みの間合いになると手を離してリセット」という一定ラインの解を提示してみせたものの、過去に一度対戦したワンへの対応を誤ったことや、3位決定戦で格下のクルブスに投げられてしまったことは見逃せない。高校生なりの甘さが見られた大会であった。とはいえ素根のポテンシャルと対応力の高さは折り紙付き。今後は遠征や大会を含め、さらに積極的に海外の大型選手と戦う機会を持つべきだろう。

準々決勝以降の結果、決勝と日本代表選手全試合の戦評は下記。

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78kg超級入賞者。左からワン、キム、キンゼルスカ、素根。

【準々決勝】
キム・ミンジョン(韓国)○GS技有・隅落(GS0:38)△カロリン・ヴァイス(ドイツ)
エヴァ・ビッセニ(フランス)○隅返(1:44)△ヤスミン・クルブス(ドイツ)
ワン・ヤン(中国)○優勢[技有・内股]△マリーナ・スルツカヤ(ベラルーシ)
素根輝○優勢[技有・大内刈]△イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)

【敗者復活戦】
ヤスミン・クルブス(ドイツ)○GS技有・内股(GS0:25)△カロリン・ヴァイス(ドイツ)
イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)○反則[指導3](3:45)△マリーナ・スルツカヤ(ベラルーシ)

【準決勝】
キム・ミンジョン(韓国)○GS技有・大内刈(GS1:27)△エヴァ・ビッセニ(フランス)
ワン・ヤン(中国)○合技[大外刈・後袈裟固](0:42)△素根輝

【3位決定戦】
素根輝○合技[大内刈・袖釣込腰](2:31)△ヤスミン・クルブス(ドイツ)
イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)○崩上四方固(1:36)△エヴァ・ビッセニ(フランス)

【決勝】
キム・ミンジョン(韓国)○GS反則[指導3](GS1:10)△ワン・ヤン(中国)
左相四つ。両者ともに警戒して組み合おうとせず、互いに手先で相手の手を払い退ける組み手の攻防が続く。この状況を受けて主審は両者に19秒と59秒に「組み合わない」咎による「指導」を宣告。開始1分弱で早くも両者後がなくなってしまう。ここから双方が組み合っての攻防をスタート。ワンは前戦で素根を屠った右から左に組み手をスイッチしての左大外巻込を繰り出すが、キムは明らかにこれを読んでおり余裕を持って防ぐ。以降はキムが持ち前の機動力の高さを生かして奥襟を攻略、ワンがパワーと圧力でこれを引き剥がすという展開が続く。両者決定打を欠いたまま本戦4分が終わり、試合はGS延長戦へ。GS12秒、キムが組み際に奥襟を叩きながらの左大内刈を放ってワンを大きく崩すも、腹這いで落ちたためにポイント獲得には至らない。結局これ以降目立った技は見られず、ワンがキムの左大内刈を耐えるために釣り手を肩越しに持ち続けたGS1分10秒、片襟の「指導3」が与えられる。これで試合が決した。

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3位決定戦、素根輝がヤスミン・クルブスから右袖釣込腰「技有」

【日本代表選手勝ち上がり】

素根輝(南筑高2年)
成績:3位


[2回戦]
素根輝○合技[袖釣込腰・上四方固](1:58)△カミラ・ヤマカワ(ブラジル)

[準々決勝]
素根輝○優勢[技有・大内刈]△イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)

[準決勝]
素根輝△合技[大外刈・後袈裟固](0:42)○ワン・ヤン(中国)

[3位決定戦]
素根輝○合技[大内刈・袖釣込腰](2:31)△ヤスミン・クルブス(ドイツ)

※写真は権利者の許諾を得て掲載しています

※ eJudoメルマガ版2月23日掲載記事より転載・編集しています。

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