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グランドスラムパリ2018・第1日男子レポート

(2018年2月21日)

※ eJudoメルマガ版2月21日掲載記事より転載・編集しています。
グランドスラムパリ2018・第1日男子レポート
(60kg級、66kg級、73kg級)
文責:林さとる/eJudo編集部

■ 60kg級 志々目徹が2年ぶりのパリ大会制覇、内容はいまひとつも地力の高さで頂点登攀
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60kg級決勝。志々目徹がルトフィラエフから大内刈「技有」

(エントリー23名)

【入賞者】
1.SHISHIME, Toru(JPN)
2.LUTFILLAEV, Sharafuddin(UZB)
3.MCKENZIE, Ashley(GBR)
3.REVOL, Cedric(FRA)
5.PAPINASHVILI, Amiran(GEO)
5.PELIM, Phelipe(BRA)
7.CHKHVIMIANI, Lukhumi(GEO)
7.VERGNES, Richard(FRA)

上位選手の多くが本大会ではなくグランドスラム・デュッセルドルフ大会(23日~25日)への出場を選択したこともあり、欧州シリーズ最高権威大会であるはずのグランドスラム・パリ大会としてはややボリュームに欠ける陣容のトーナメントとなった。

決勝まで勝ち上がったのは、志々目徹(了徳寺学園職)とシャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)の両名。出場選手の顔ぶれを考えれば極めて順当な顔合わせと言えるだろう。決勝では志々目が左大内刈で「技有」を奪った後に、ルトフィラエフが負傷で棄権(3:04)。志々目はこれで2016年以来2年ぶりとなるグランドスラム・パリ大会制覇を成し遂げた。

ビッグタイトルを獲得した志々目だが、4試合を戦って技によるポイントは決勝で獲得した「技有」ひとつのみと、内容に関してはいまひとつ。昨年前半に見せた袖口グリップを利用した攻撃的な柔道はやや減速、一発を狙いすぎるあまり技の出が遅くなる、技に入っても手が離れてしまうといったかつての悪癖が散見された。

髙藤直寿(パーク24)がバクー世界選手権代表に内定しているため、志々目が世界選手権に出場するためには少なくとも永山竜樹(東海大3年)との第2代表を争いに勝利する必要がある。今大会で優勝を飾ったことで志々目は形上第一関門を突破したことになったが、対戦相手に恵まれず大物食いが出来なかったことや、内容面に課題を残したことで、永山との差を詰めたとまでは言い難い印象だ。

海外勢で目立っていたのは、3位を獲得したアシュリー・マッケンジー(イギリス)。これぞという得意技を持たず普段は決して印象に残る選手ではないが、今大会では3位決定戦でフェリペ・ペリム(ブラジル)をわずか19秒の左体落「一本」に仕留めるなど、久々存在感を示した。

第1シードのアミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)は動きが冴えず、準々決勝で志々目と対戦した際に軸足を内側から刈ってしまう反則を犯してトーナメントから脱落。この反則負けで3位決定戦に出場する権利も失い、最終成績は5位だった。

準々決勝以降の結果、決勝の戦評、日本代表選手全試合の結果は下記。

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60kg級入賞者。左から志々目、マッケンジー。レボル。(ルトフィラエフは負傷のため表彰式に参加せず)

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決勝、志々目が抱きつきの左大内刈から振り落とすと、ルトフィラエフ手をついて負傷

【準々決勝】
アミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)〇裏投(3:24)△リシャール・ヴェルネ(フランス)
志々目徹〇GS反則[指導3](GS1:04)△アシュリー・マッケンジー(イギリス)
シャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)〇GS小外掛(GS0:08)△セドリック・ヘヴォル(フランス)
フェリペ・ペリム(ブラジル)〇GS反則[指導3](GS3:26)△ルフミ・チフヴィミアニ(ジョージア)

【敗者復活戦】
アシュリー・マッケンジー(イギリス)〇内股透(3:17)△リシャール・ヴェルネ(フランス)
セドリック・ヘヴォル(フランス)〇優勢[技有・隅返]△ルフミ・チフヴィミアニ(ジョージア)

【準決勝】
志々目徹〇GS反則(GS1:04)△アミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)
 ※軸足を後から刈ったことによるダイレクト反則負け
シャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)〇小外刈(3:16)△フェリペ・ペリム(ブラジル)

【3位決定戦】
アシュリー・マッケンジー(イギリス)〇体落(0:21)△フェリペ・ペリム(ブラジル)
セドリック・ヘヴォル(フランス)〇不戦△アミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)

【決勝】
志々目徹〇棄権(3:05)△シャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)
志々目、ルトフィラエフともに左組みの相四つ。開始早々ルトフィラエフが組み際に奇襲の右内股、志々目大きく浮いて会場沸くが投げ切るには至らず「待て」。以後は厳しい組み手の駆け引きが続き膠着、一計を案じた志々目組み際に巧みな左大外落を見せるが両者崩れ伏せて「待て」。
49秒、志々目の厳しい組み手を嫌ったルトフィラエフが左への巻き込みの形で釣り手を流し、体を斜めに入れて志々目の引き手を切ろうと試みる。志々目その戻りを過たず狙って左大内刈、中途半端な姿勢のルトフィラエフは左後隅に大きく崩れ、ケンケンで追った志々目は巧みにその上体を制して投げ切り「技有」。以後も厳しい組み手争いが続き試合は膠着気配、1分半過ぎには観客が手拍子で両選手を煽り始める。
2分14秒袖口を絞ったまま志々目の攻撃を待ってしまったルトフィラエフに「指導」、2分65秒組み手の不利に焦った志々目が反転しながら畳に掛け潰れ偽装攻撃の「指導」。
直後の組み際、志々目が組み手争いに混ぜ込んで左大内刈。釣り手で首、引き手で横胴を抱えて前進し、制し切れないと見ると体を振って左後隅目掛けて激しく振り離す。掴んだ両手はともに離れたが速度がつき、手をついたルトフィラエフは負傷してその場に悶絶。あるいは肘を脱臼したか、そのまま立つことが出来ない。主審は即座にドクターを招き入れ、ここで試合は終了。ルトフィラエフの棄権で志々目の優勝が決まった。

【日本代表選手勝ち上がり】

志々目徹(了徳寺学園職)
成績:優勝


[2回戦]
志々目徹〇反則[指導3](3:28)△バヤラー・アマーツヴシン(モンゴル)

[準々決勝]
志々目徹〇GS反則[指導3](GS1:04)△アシュリー・マッケンジー(イギリス)


[準決勝]
志々目徹〇GS反則(GS1:04)△アミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)
 ※軸足を後から刈ったことによるダイレクト反則負け

[決勝]
志々目徹〇棄権(3:05)△シャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)

■ 66kg級 久々好調のアン・バウルが優勝、日本勢2名はともにアンに苦杯
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66kg級1回戦、アン・バウルがイマド・バッソウから左背負投「技有」

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決勝、アンは丸山城志郎に組ませぬまま片襟の左背負投を連発

(エントリー37名)

【入賞者】
1.AN, Baul(KOR)
2.MARUYAMA, Joshiro(JPN)
3.ISODA, Norihito(JPN)
3.SEIDL, Sebastian(GER)
5.LE BLOUCH, Kilian(FRA)
5.ZOURDANI, Houd(ALG)
7.CRISOSTOMO, Joao(POR)
7.WU, Zhiqiang(CHN)

階級のトップ選手が多く顔を揃えた本階級。久々に良い戦いぶりを見せた2015年アスタナ世界選手権王者のアン・バウル(韓国)が優勝を飾った。アンのワールドツアー優勝は実に2016年5月のワールドマスターズ・グアダラハラ大会以来。

昨シーズンとうとう一度も良いパフォーマンスを発揮することがなかったアンだが、この日はリオデジャネイロ五輪以来と評して間違いない、冴えた動きを披露。1回戦でイマド・バッソウ(モロッコ)を左背負投と右一本背負投による合技「一本」(2:01)で下すと、2回戦ではサルドル・ヌリラエフ(ウズベキスタン)に左の「韓国背負い」で一本勝ち。3回戦でもセバスティアン・ザイドル(ドイツ)を左背負投と左小内刈の合技「一本」(3:46)で破り、オール「一本」の素晴らしい出来でベスト4進出を果たした。

日本勢2名との連戦となった準決勝以降は一転、絞って、切って、先手攻撃で相手の作りを潰して、とこれぞ韓国選手といった泥臭いスタイルにモデルチェンジ。準決勝の磯田範仁(国士舘大4年)戦、決勝の丸山城志郎(ミキハウス)戦をともに「指導3の」反則(準決勝が2:50、決勝がGS2:06)で勝ち抜き、見事表彰台の頂点へとたどり着いた。

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2回戦、丸山城志郎がケヴィン・アズマから袖釣込腰「一本」

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3位決定戦、磯田範仁がホウド・ゾウルダニから小外刈「一本」

日本勢2名はともにグランドスラム東京大会からの好調を維持しており素晴らしいパフォーマンス。前述の通り優勝したアンに敗れはしたものの、他選手はまったく寄せ付けず、丸山が2位、磯田が3位をそれぞれ獲得した。

丸山は以前から階級屈指の技のキレを誇っていたが、最近は本命である左内股以外にも左右の袖釣込腰を効果的に使いこなすようになっており、スタミナ面もかなり強化されて来ている印象。充実期を迎えつつある。磯田も足技の威力と精度の向上止まらず、本大会では6試合中3試合で得意の左小外刈でポイントを獲得している。相手が警戒に警戒を重ねる中、それでも豪快にこの技で「一本」を獲り切った3位決定戦のホウド・ゾウルダニ(アルジェリア)戦は圧巻であった。

昨年12月のワールドマスターズをノーマークから制したガンボルド・ヘーレン(モンゴル)は、2回戦でキリアン・ルブルーシュ(フランス)を相手に「指導3」を失い(GS2:20)でまさかの初戦敗退。ヴジャ・マルグヴェラシビリ(ジョージア)とチャールズ・チバナ(ブラジル)も同じく初戦で敗れて早々にトーナメントから姿を消した。

準々決勝以降の結果、決勝の戦評、日本代表選手全試合の結果は下記。

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66kg級入賞者。左から丸山、アン、ザイドル、磯田。

【準々決勝】
磯田範仁〇袖釣込腰(0:09)△ジョアオ・クリソストモ(ポルトガル)
アン・バウル(韓国)〇合技[背負投・小内刈](3:51)△セバスチャン・ザイドル(ドイツ)
丸山城志郎〇GS反則[指導3](GS2:34)△ホウド・ゾウルダニ(アルジェリア)
キリアン・ルベルーシュ(フランス)〇裏投(4:00)△ウー・ジチィアン(中国)

【敗者復活戦】
セバスチャン・ザイドル(ドイツ)〇優勢[技有・腰車]△ジョアオ・クリソストモ(ポルトガル)
ホウド・ゾウルダニ(アルジェリア)〇内股透(1:46)△ウー・ジチィアン(中国)

【準決勝】
アン・バウル(韓国)〇反則[指導3](2:50)△磯田範仁
丸山城志郎〇GS反則[指導3](GS2:34)△キリアン・ルベルーシュ(フランス)

【3位決定戦】
セバスチャン・ザイドル(ドイツ)〇GS大内刈(GS0:35)△キリアン・ルベルージュ(フランス)
磯田範仁〇小外刈(2:08)△ホウド・ゾウルダニ(アルジェリア)

【決勝】
アン・バウル(韓国)〇GS反則[指導3](GS2:06)△丸山城志郎
アン、丸山ともに左組みの相四つ。丸山は先んじて右引き手で左袖を掴み、左内股と左大外刈を放って先制攻撃。しかしアンは組み手に妥協せず徹底的に切り、組み際の片襟左背負投と内巻込で手数を積む。アンは主審が試合を動かしたくなる時間帯に的確にこの技を2連発、直後の1分37秒丸山に消極の「指導」。丸山奮起して片袖の内股で攻めるも効かず、この組み際の攻撃を徹底し切れない。一貫して丸山は先んじてしっかり引き手で袖を得るが、アンは左釣り手で左襟を差してこれを押しとどめては先んじて担ぎ技に潰れ、丸山に攻めの形を与えない。さほど威力のない技で、しかし手数だけは着実に積もうというアンのしつこい戦術に丸山はやや気持ちが倦んできた様子。3分4秒双方に「取り組まない」咎の「指導」が与えられて試合はゴールデンスコアによる延長戦へ。

一瞬ギアを上げた丸山片袖の内股に左袖釣込腰と先んじて攻めるが、アンはこれを潰して送襟絞。この寝勝負で一旦展開を押しとどめると、以降は片襟の背負投に両袖をしっかり落としての小外刈、小内刈で丸山を蹴り崩し続ける。延長2分に差し掛かるところで片襟の左小内刈で丸山を伏せさせ、ついで右小内刈から一本背負投に技を繋ぐと主審意を決して試合をストップ。丸山に「指導3」を宣告し、ここで試合は終了となった。

【日本代表選手勝ち上がり】

丸山城志郎(ミキハウス)
成績:2位


[2回戦]
丸山城志郎〇GS袖釣込腰(GS0:15)△ケヴィン・アズマ(フランス)

[3回戦]
丸山城志郎〇優勢[技有・内股]△ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)

[準々決勝]
丸山城志郎〇GS反則[指導3](GS2:34)△ホウド・ゾウルダニ(アルジェリア)


[準決勝]
丸山城志郎〇GS反則[指導3](GS2:34)△キリアン・ルベルーシュ(フランス)

[決勝]
丸山城志郎△GS反則[指導3](GS2:06)〇アン・バウル(韓国)

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1回戦、磯田範仁がヨンドンペレンレイ・バスフーから小外刈「一本」

磯田範仁(国士舘大4年)
成績:3位


[1回戦]
磯田範仁〇小外刈(2:50)△ヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)

[2回戦]
磯田範仁〇反則[指導3](3:49)△タル・フリッカー(イスラエル)

[3回戦]
磯田範仁〇優勢[技有・小外刈]△アレクサンドル・マリアク(フランス)

[準々決勝]
磯田範仁〇袖釣込腰(0:09)△ジョアオ・クリソストモ(ポルトガル)

[準決勝]
磯田範仁(韓国)△反則[指導3](2:50)〇アン・バウル(韓国)

[3位決定戦]
磯田範仁〇小外刈(2:08)△ホウド・ゾウルダニ(アルジェリア)

■ 73kg級 ダークホースのアキル・ヤコヴァが優勝、立川新はまさかの初戦敗退に終わる
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73kg級決勝、アキリ・ヤコヴァがラシャ・シャヴダトゥアシヴィリから一本背負投崩れの大外落で「技有」

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ヤコヴァは階級上位に居座る可能性大

(エントリー37名)

【入賞者】
1.GJAKOVA, Akil(KOS)
2.SHAVDATUASHVILI, Lasha(GEO)
3.AN, Changrim(KOR)
3.TSEND-OCHIR, Tsogtbaatar(MGL)
5.MARGELIDON, Arthur(CAN)
5.WANDTKE, Igor(GER)
7.BUTBUL, Tohar(ISR)
7.MACIAS, Tommy(SWE)

トップ選手の参戦は第1シードのラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)と、第4シードのアン・チャンリン(韓国)のみ。この階級の強豪供給国であるアゼルバイジャンとロシアが選手を派遣していないこともあり、トーナメントのレベルはやや低めとなった。

優勝を飾ったのは、第8シードから大会をスタートしたダークホースのアキル・ヤコヴァ(コソボ)。ヤコヴァは2回戦でモウッサ・フサン(チュニジア)を豪快な右内股「一本」(2:01)で破ると、3回戦でエドゥアルド・アラウホ(メキシコ)を右袖釣込腰「一本」(GS0:16)、準々決勝でアルチュール・マルゲリドン(カナダ)を浮技2発による合技「一本」(3:09)、準決勝でツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)を「指導3」の反則(2:59)と、全試合一本勝ち(反則含む)で決勝まで勝ち上がる。

決勝では階級屈指のパワーファイターであるシャヴダトゥアシヴィリに真っ向から力勝負を挑み、右大外落「技有」でこれを粉砕。ほとんど無名の状態からグランドスラム・パリ大会というビッグタイトルを獲得してみせた。

ヤコヴァは女子57kg級のノラ・ヤコヴァ(コソボ)の弟で、現在22歳。昨シーズンから徐々に結果を残すようになってきており、今年1月のグランプリ・チュニス大会では準々決勝で吉田優平(東海大3年)を浮技「一本」で破って2位を獲得している。内股や袖釣込腰を戦術の核とするパワーファイターだが、最も取り味があるのは吉田を破った浮技。今大会の準々決勝でもこの技でマルゲリドンを2度投げつけている。シャヴダトゥアシヴィリに対抗できるだけのパワーを証明した以上、階級上位に常駐するだけのポテンシャルがあると踏んでおくべきだろう。

日本代表でグランドスラム東京大会覇者の立川新(東海大2年)は、初戦となる2回戦で中堅選手のイゴール・ヴァンドケ(ドイツ)と対戦。この試合立川は高い組み手技術と駆け引きでケンカ四つの相手を翻弄、ヴァンドケは時折背中を横から抱えての密着勝負を挑むが立川に前襟を握った釣り手ですかさず距離を取られ、打つ手なしという印象。ところが立川の「指導2」をリードして迎えた残り14秒、ヴァンドケが再びがむしゃらに密着すると立川なぜかこれを剥がさずそのまましばしウォッチ。呼吸を整えたヴァンドケが隅返を放つと立川転がり大逆転の「技有」。この一発で立川まさかの初戦敗退が決まった。

非常に高い組み手技術を持つ立川だが、今回の戦いを見る限りではパワーで勝っていることがその技術発揮の大前提という印象を受ける。立川が密着を志向する相手に組み手を無効化されて敗れたのは実は2度目(昨年のグランプリ・デュッセルドルフ大会1回戦でギヨーム・シェヌに敗退)であり、この負け方では国際大会に勝てない選手というイメージを持たれかねない。現行ルール下では、戦術派の極みとも呼ぶべき立川の柔道は、絶対に投げられてはいけない柔道。その立川が「指導」を2つリードしながら投げられて捲られたこの日の試合はイメージ的には最悪だ。これで立川のバクー世界選手権代表を「自力で」獲得する可能性はほぼ潰えたと言って良いだろう。選抜体重別は世界選手権代表を争う戦いではなく、出直しマッチと考えるべき。

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3位決定戦を戦うアン・チャンリン。

それ以外のトピックとしては、アン・チャンリンの復調を挙げておきたい。最後に姿を見せたブダペスト世界選手権では左足首の負傷ゆえか得意の担ぎ技をほとんど用いなかったが、今大会では準々決勝でトハル・ブトブル(イスラエル)から右背負投「技有」を奪うなど積極的に担ぎ技を使用していた。2回戦のエーツ・ラーマネン(フィンランド)戦では新兵器である右の「橋本スペシャル」で豪快な「一本」(0:26)を獲得しており、しっかりと新しい技術を積んできているようだ。準決勝のシャヴダトゥアシヴィリ戦では一方的に奥襟を持たれた末に小外掛「一本」で敗れており、まだまだ完全復活とは言い難いが、どうやら上昇気運に乗ることに成功したようである。

準々決勝以降の結果、決勝の戦評、日本代表選手全試合の結果は下記。

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73kg級入賞者。左からシャヴダトゥアシヴィリ、ジャコヴァ、ツォグトバータル、アン。

【準々決勝】
ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)〇合技[払巻込・大外巻込](3:28)△イゴール・ヴァンドケ(ドイツ)
アン・チャンリン(韓国)〇優勢[技有・背負投]△トハル・ブトブル(イスラエル)
ツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)〇優勢[技有・内股透]△トミー・マシアス(スウェーデン)
アキル・ヤコヴァ(コソボ)〇合技[浮技・浮技](3:09)△アルチュール・マルゲリドン(カナダ)

【敗者復活戦】
イゴール・ヴァンドケ(ドイツ)〇反則[指導3](3:44)△トハル・ブトブル(イスラエル)
アルチュール・マルゲリドン(カナダ)〇肩車(0:18)△トミー・マシアス(スウェーデン)

【準決勝】
ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)〇小外掛(0:51)△アン・チャンリン(韓国)
アキル・ヤコヴァ(コソボ)〇反則[指導3](2:59)△ツェンドチル・ツォグトバータル(モンゴル)

【3位決定戦】
ツェンドチル・ツォグトバータル(モンゴル)〇GS技有・肩車(GS0:44)△イゴール・ヴァンドケ(ドイツ)
アン・チャンリン(韓国)〇小内刈(2:46)△アルチュール・マルゲリドン(カナダ)

【決勝】
アキル・ヤコヴァ(コソボ)〇優勢[技有・大外落]△ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)
右相四つ。パワーファイター同士による戦い。双方が相手の奥襟を警戒して袖を絞り、絞られては切るという形で激しい組み手争いが続く。1分0秒両者に組み合わない咎で「指導1」。試合時間2分に差し掛かるところで両者が背中を持って横変形気味にがっぷり四つ、ようやく投げ合いの予感が漂うが、間合いが近すぎるために双方技を仕掛けることができず、再び離れてリセット。直後の2分25秒、ヤコヴァが組み手争いから右足を一気に伸ばして右「一本大外」を仕掛けると、この前方向にフェイントを入れての一撃にシャヴダトゥアシヴィリは意外なほどに大崩れ、巻き込まれて「技有」。リードを許したシャヴダトゥアシヴィリは密着志向を強めて追い上げを図るが、守りを固めるヤコヴァを捉えることが出来ない。両者にそれぞれ「指導」が1つずつ追加されたところでタイムアップ。ヤコヴァがワールドツアー初優勝を決めた。


【日本代表選手勝ち上がり】

立川新(東海大2年)
成績:2回戦敗退


[2回戦]
立川新△優勢[技有・隅返]〇イゴール・ヴァンドケ(ドイツ)

※写真は権利者の許諾を得て掲載しています

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