PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第48回

(2018年2月19日)

※ eJudoメルマガ版2月19日掲載記事より転載・編集しています。
【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第48回
柔道に上中下三段の別あることを論ず
出典:「柔道に上中下三段の別あることを論ず」 柔道4巻7号 大正7年7月
(『嘉納治五郎大系』2巻53頁)
 
森羅万象を分析・理解。あるいは何かを他者に分かりやすく伝えるため、人類は様々な工夫をこらしてきました。そんな工夫の1つがカテゴリーを使った<分類>でしょう。
 
例えば「柔道の技」。「袈裟固」「腕挫三角固」「跳腰」「背負投」「突込絞」・・・・などと技の名称を延々と100本(※)並べられても、困ってしまいます。
ところが、これを「投技」「固技」、あるいは投技をさらに「手技」「腰技」「足技」「真捨身技」「横捨身技」、固技を「抑込技」「絞技」「関節技」などのカテゴリーを使って、分類するとどうでしょうか。100本の技をただ並べるよりも、理解は容易になるでしょう。

今回の「ひとこと」、師範は柔道には上・中・下の3つの段があると述べています。
本文では「上段の柔道」「中段の柔道」「下段の柔道」と表して、柔道を3種類に分けていますが、師範の解説を元に、簡単に説明しますと、

①下段の柔道→技術を練習・体得すること
②中段の柔道→技術の練習を通して、身体の鍛錬と精神の修養を行うこと
③上段の柔道→技術の練習を通して得たものを通し世の中に貢献すること

となります。
講道館柔道の修行の段階と段階毎の目的と言ったところでしょうか。

上中下と分けていますが、これは順番をあらわすものであり、重要度を示しているわけではないと師範は念を押しています。「下段の柔道」である<技術の体得>を、「上段の柔道」である<世の補益>より軽んじていいというわけではないということです。とは言え「下段の柔道」あるいは「中段の柔道」に止まることを、よしとしないことは言うまでもないでしょう。

 技術の練習については、師範が<柔道の目的を達成する手段である>と述べると同時に<大事な土台である>と書き残していることも付け加えておきます。

さて、ここまで読まれて、上中下段の柔道と言っても「嘉納(治五郎)師範遺訓」(「柔道の本義と修行の目的」)と言っていることは、同じだと思った読者もいらっしゃるかもしれません。お気づきのとおり、「今回のひとこと」の主旨は遺訓と同じです。

では、なぜ、同じことをあえて、このように言ったのか。筆者は、修行者の理解を促すために、あえて「上中下」の3つに分けたと考えます。ただ、遺訓が大正4年以降も継続的に用いられたのに対して、この3つのカテゴリーは、その後、用いられた形跡がありません。師範の試行錯誤の1つと思われます。

今回のひとこと、師範の普及における工夫の一端がうかがえると同時に、我々が嘉納師範の考える講道館柔道の在り方を、後進に伝える好材料になるのではないでしょうか。

以下、余談です。

師範以前の武芸には、講道館柔道のように、技術特徴(投技・固技・当技(当身技))、あるいは主に使う身体部位やその形態(手技・腰技・足技・真捨身技・横捨身技)などによって技術を分類するような考えが見られません。師範がどうやって、このようなカテゴリーによる<分類>を思いついたのか。

「カテゴリー」は元々哲学用語で、かのアリストテレスやカントが用いたものです。師範は学生時代にカントを学んだようですが、もしかしたら、何か関係があるかもしれません。

 
※2017年講道館発表「柔道技名称」による。ただし、この中には、当身技(当技)は含まれていません。また、試合では禁止されている足緘(あしがらみ)や胴絞はリストに入っていますが、講道館護身術に含まれている小手返・小手捻については言及されていません。

※読みやすさを考慮して引用は『嘉納治五郎大系』から行っています。

著者:元 敏季(ハジメ・トシキ)
1975年生まれ。柔道は中学校から始め、大学までは競技を中心に行うが、卒業論文を機に柔道の文化的側面に関心を持ち、大学院へ進学。凡そ10年、大学院・研究機関に所属するも、研究とは異なる分野の仕事に就き現在に至る。ライフワークとして嘉納治五郎に関する史料を蒐集・研究し、その成果を柔道振興のため発信しようとしている。

※ eJudoメルマガ版2月19日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る




supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.