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【ROAD TO 高校選手権】天理強し、圧勝Vで本戦「四つ角」シード入りをほぼ確定・第59回近畿高等学校柔道新人大会男子団体マッチレポート

(2018年2月5日)

※ eJudoメルマガ版2月8日掲載記事より転載・編集しています。
天理強し、圧勝Vで本戦「四つ角」シード入りをほぼ確定・第59回近畿高等学校柔道新人大会男子団体マッチレポート
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選手宣誓は育英高・奥村弥百希選手

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予選を勝ち抜いた44チームが集った

第59回近畿高等学校柔道新人大会(団体試合)が2月3日、ベイコム総合体育館(尼崎市)で行われた。

全国高等学校柔道選手権大会((3月20日~21日・日本武道館)のブロック大会と位置付けられるこの大会は、本戦同様の「抜き勝負」で強豪校同士が対戦する貴重な場。松前旗争奪大会(~2015年)がなくなった現在、本戦の前に同じレギュレーションで強豪県の代表同士が対決する巨大大会は実質この近畿新人大会ただ1つのみ。この上ない戦力見積もりの機会であり、錬磨の場であり、同時に歴代全国大会本戦におけるシード校選出に決定的な影響力を発揮してきた経緯のある、非常に厳しい考査の場でもある。単にブロックのタイトルを争うという大会要項の字義を大きく超えて、本戦の趨勢をダイレクトに左右する重要大会だ。

44チームが参加した男子の優勝候補筆頭は、何と言っても天理高(奈良)。冬季招待試合シリーズへの参加は例年通り若潮杯武道大会(12月27日)ただ1つのみであったが、そこで今期全国大会優勝候補に挙がる国士舘高(東京)を破って実に32年ぶりの優勝、見事な「ワンショット・ワンキル」で一躍本戦の優勝候補の一角に躍り出ることとなった。

国士舘がその高評価の源であるエース斉藤立を欠いていたという事情はあれど、これはやはり大事件。この優勝を以て天理の本戦におけるシード校ピックアップは確実な情勢となり、同校に残る仕事はこの近畿ブロック大会制覇のみ。これをしっかり果たせば「四つ角」シードが現実的なものとなる。

というわけで、天理の勝ち上がりを軸に、簡単にこの大会をレポートしてみたい。インターハイ100kg超級チャンピオン中野寛太、若潮杯で貴重な決勝点を挙げて一躍注目を浴びた植岡虎太郎などこれぞという選手あれど、同大会で天理が「負けない戦い」に舵を切って手堅く戦ったこともありいまだ周囲がその戦力を見積もり切れていない感あり。彼らの戦闘能力と個々のキャラクターの見極めをめあてとして、初戦からその戦いぶりを書き連ねていく。

文責:古田英毅

■ 戦評
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初戦の畳に向かう天理高チーム

【一回戦~三回戦】

第1シードは昨年度の覇者東海大仰星高(大阪)。天理は第2シードに配された。ほか、優勝に絡むと目される有力校としては激戦区兵庫を制した育英高(兵庫)、同2位の神戸国際大附高、3位の神港学園高、京都学園高(京都)らが挙げられる。このうち、準々決勝までのブロックに同居するのは天理と神港学園、京都学園と神戸国際大附。前者が戦うCブロックの3回戦、後者のDブロック準々決勝が前半の山場となる。

天理の事前登録メンバーは順に中野寛太(2年・180センチ120キロ)、植岡虎太郎(2年・173センチ92キロ)、水上世嵐(2年・170センチ85キロ)、中村洸登(2年・170センチ75キロ)、井上直弥(1年・183センチ128キロ)、池田凱翔(1年・172センチ83キロ)、佐藤輝斗(1年・173センチ75キロ)。この日は中村を小猿崇太に入れ替えて大会に臨むこととなった。

天理は2回戦から登場、相手は清風高(大阪)といきなりなかなか歯ごたえのある相手だ。組んだオーダーは先鋒から佐藤輝斗、小猿崇太、池田凱翔、井上直弥、中野寛太。

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先鋒戦、天理高の佐藤輝斗が清風高・瀬戸希海を相手に右小内刈から左小外掛に繋いで「技有」。

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天理高の次鋒小猿崇太が宮野辰巳から右小内刈「技有」

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小猿は中堅原航太からも右小内刈でまず「技有」

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小猿が続いて右背負投、ここから勢いよく体を乗り込ませ「一本」

第1試合は佐藤が66kg級の瀬戸希星を相手に一進一退、掛けては掛けられる展開でなかなか得点の気配は漂わず。しかしともに組み手のテクニカルファウルで「指導1」ずつを失って迎えた残り16秒に、佐藤が前技フェイントを大きく効かせた右小内刈。これで相手が崩れるとみるや極めて素早く反応、押し込んで左の小外掛に捉えて「技有」。残り時間はほとんどなく、そのまま試合は終了となる。佐藤があくまで引き分けを受け入れぬ執念を見せて天理はまず一人差を作り出す。

佐藤は続いてケンカ四つの間魁正と対戦。サイズ差で圧する相手に「指導1」を失ったものの、脇を差しあった投げ合いにも応じて退かずに3分を戦い切り、この試合は引き分けとなる。


続いて次鋒の小猿崇太が畳に上がる。右組みの小猿は宮野辰巳を相手に左袖釣込腰、片襟の右背負投、片襟の右大内刈に体落と実直に技を撃ち続け、残り40秒では右背負投のコンビネーションから鋭い右小内刈。前技に体が慣れた相手を鮮やかに捉えたこの技は「技有」となり、このポイントで試合は小猿の優勢勝ちとなる。

しぶとく星を挙げた小猿は続く第4試合で一転速攻、開始早々の12秒右小内刈「技有」、さらに29秒の右背負投「技有」と立て続けに奪って体重100キロの原航太を圧倒。43秒にはこのコンビネーションからの背負投が炸裂、コンパクトに転がし、めくりの大きさで技の効果を引き上げ「一本」で勝負あり。畳に残った小猿はそのまま大将戦で嶋津駿生のサイズをしぶとく殺し、しっかり引き分けてフィニッシュ。結果、天理はスコア三人残しで快勝。6番手と7番手の2人のみでこの試合を賄った良い形で、ぶじ初戦を飾ることとなった。

[二回戦]
天理高(奈良)〇三人残し△清風高(大阪)
(先)佐藤輝斗〇優勢[技有・小外掛]△瀬戸希海(先)
(先)佐藤輝斗×引分×間魁正(次)
(次)小猿崇太〇優勢[技有・小内刈]△宮野辰巳(中)
(次)小猿崇太〇背負投(0:43)△原航太(副)
(次)小猿崇太×引分×嶋津駿生(大)
(中)池田凱翔
(副)井上直弥
(大)中野寛太。

個々の試合を見ると圧勝は第4試合のみで、内容的にはどちらかというと不器用な試合ばかり。掛けられても一発一発丹念に掛け、これを繰り返した結果として勝利を得たという体の試合がほとんどであった。決して圧勝ではなく、6番手、7番手選手が「汗を掻いて」勝ち抜いた5試合。しかし、だからこそ天理のチーム全体に染みた規律と特徴が良く見えた5試合とも言える。前者は、自分が必ず取るという使命感と執念の浸透。後者は、しっかり持って技を仕掛け続け、潰れて展開を切らことなく次の技で繋ぐ柔道の質の良さ、特に足技の錬磨。これがレギュラー陣と変わらぬ共通項であることに、今代における天理の稽古の質の高さが感じられた。

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三回戦、天理の先鋒池田凱翔が右小内刈、しかし神港学園の山下勝生が手をついてこらえノーポイント。

続く3回戦、天理は強豪・神港学園高と早くもマッチアップ。この試合は佐藤を水上に代えてメンバーのグレードを一段アップ、先鋒から池田凱翔、水上世嵐、小猿崇太、植岡虎太郎、中野寛太の順で布陣した。対する神港学園は次鋒に60kg級の強者顕徳大晴を配しており、ここに1つのアクセントがある。

第1試合、池田凱翔は右相四つの山下勝生を相手に右背負投と右小内刈のコンビネーションで攻めに攻めるがなかなか取り切れず、2分5秒に「指導」1つを奪ったものの試合はそのまま終盤へ。残り15秒でもポイント級の右小内刈で山下を大きく崩すがまたもやスコア獲得までには至らず、この試合は結局引き分けに終わる。

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次鋒同士の第2試合、顕徳大晴が巧みに間合いを出し入れして水上世嵐を攻める。

第2試合は水上世嵐に顕徳大晴がマッチアップ。顕徳は右相四つで体格が上の水上に対し巧みな間合いの出し入れでチャンスを探し、引きずり出しながらの隅返に抱きつきの大内刈、右一本背負投などで攻める。しかし水上も動きの良さは軽量級なみ、的確に切り、圧を掛け、潰しと手堅く試合を進め、少なくとも顕徳に得点の予感は漂わず。しかし水上の方もスピードある軽量級相手の決定的な方法論に欠け、1分38秒双方に「取り組まない」咎による「指導」が与えられたのみでこの試合は引き分け。

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神港学園・小西貴大が小猿崇太を攻める。

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植岡虎太郎が右背負投も柴原海斗は跨いで回避、どうしても得点に繋がらない。

中堅同士の対決となった第3試合は右相四つ。体重125キロの神港学園・小西貴大が体格差を生かして右払腰、右大外刈と攻めこんで38秒小猿崇太に「指導1」。しかしここで小猿が奮起、すかさず得意の右小内刈で小西を転がしてあわやポイントという場面を作って反撃開始。以後は小猿がポイント級の小内刈と右背負投を放ち、これを小西が払腰に切り返し、あるいは後の先の返し技を狙うという展開。最後は根負けした小西が掛け潰れはじめて試合は一気に減速、この試合も引き分けとなる。

副将対決は植岡虎太郎が右、柴原海斗が左組みのケンカ四つ。柴原は植岡の右背負投を徹底警戒、植岡は柴原が仕組んだ引き手争いにつきあってしまい23秒双方に片手の「指導」。以後植岡は得意の右背負投で取りに出るが、後重心で無理をしない方針で戦う柴原の前になかなか決定的な場面を作ることが出来ない。柴原は距離をとった半身の姿勢をベースに、時折背中を横から抱く接近を交えてつかみどころなく試合を減速、1分18秒には再び双方に片手の「指導」。直後柴原が前に出て植岡を追い詰めると、植岡ひときわ大きく体を振って得意の右背負投。これは深く入るかに思われたが、しかし柴原は待ち構えて跨ぎ、腕挫十字固を狙ったままもろとも落下し「待て」。以後も植岡右背負投を度々放つが柴原巧みな位置取りから腰を切ってずらし、互いの体側が合う形になってしまった技はいずれも決まらず。この試合も引き分けに終わり、試合はついに大将同士の対決へと持ち込まれる。

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天理は大将中野寛太が出動、移腰「一本」で事態を収拾

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大将対決は中野寛太が左、大原涼馬が右組みのケンカ四つ。大原思い切った右内股で先制攻撃も中野全く慌てず前進、まず28秒大原に「極端な防御姿勢」による「指導」。大原再び右内股を見せるが中野が左体落、左内股と大技を入れるたびに大きく崩されて畳に伏せることとなり、1分22秒には2つ目の「指導」を失う。

直後大原が右大内刈。まっこう受け止めた中野は大内返の形で一旦腹上に相手の重心を載せ、大原の抵抗頑強と見るや腰を切って移腰に連絡。極めて豪快な一撃見事決まって「一本」。最終スコアは一人残し。これで天理の勝利が決まった。

[三回戦]
天理高(奈良)〇一人残し△神港学園高(兵庫)
(先)池田凱翔×引分×山下勝生(先)
(次)水上世嵐×引分×顕徳大晴(次)
(中)小猿崇太×引分×小西貴大(中)
(副)植岡虎太郎×引分×柴原海斗(副)
(大)中野寛太〇移腰(1:33)△大原涼馬

無敗のまま勝利を決めたということで危なげない試合ではあったが、攻めこみながらも引き分けが4つ、最後は本来温存したいはずの中野の打撃力に頼ってと、内容決して良くはなし。特に植岡が「ターゲット」として止めることのみを狙われた際における突破力を示せなかったことはやや痛い。いずれの試合も投げることを狙い過ぎたまま、個々の投げの質の良さを具体的なスコアに結実出来なかったという、最終的な勝利だけが果実の「結果オーライ」の一番である。これは団体戦における禁忌の一つだ。例えば中央の強豪であれば良くも悪くもここまでの攻勢あれば「指導」累積で勝ち星という結果自体は得ているはず。投げが決まり掛け続けたゆえの停滞、柔道自体の質の良さが呼びこんだ結果ではあるが、間違いなくこの日天理がもっとも隙を見せた一番であった。

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三回戦、東海大仰星高の次鋒柏野亮太が和歌山北高の副将宮井涼翔から袖釣込腰「一本」。柏野はこの試合4人抜きを果たす。

他ブロックからは東海大仰星、育英、京都学園、神戸国際大付ら強豪が順当に勝ち上がり。混戦が予想された東海大仰星直下のブロックからは超進学校として知られる大阪星光学院高が、エースの大阪府81kg級代表・杉村晃希の活躍をテコに見事ベスト8入りを果たした。

結果決まった準々決勝カードは下記の通り。

東海大仰星高(大阪) - 大阪星光学院高(大阪)
育英高(兵庫) - 比叡山高(滋賀)
天理高(奈良) - 近江高(滋賀)
京都学園高(京都) - 神戸国際大附高(兵庫)

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準々決勝、東海大仰星高の先鋒福澤達矢が大阪星光学院高・川村青生から腕挫十字固「一本」。

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有」。杉村はこれで2人抜き。

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大将同士の対決、内村秀資が杉村晃希の払腰をインパクト前に抱きとめ無力化、引き落として「技有」。

【準々決勝】

東海大仰星高(大阪)○一人残し△大阪星光学院高(大阪)
(先)福澤達矢○腕挫十字固(0:35)△川村青生(先)
(先)福澤達矢○体落(2:00)△今西悠真(次)
(先)福澤達矢×引分×金田茉大(中)
(次)倉部隆成×引分×山口雅也(副)
(中)柏野亮太△内股(2:13)○杉村晃希(大)
(副)菅野晶仁△優勢[技有・隅落]○杉村晃希(大)
(大)内村秀資○優勢[技有・隅落]△杉村晃希(大)

東海大仰星・内村秀資、大阪星光学院・杉村晃希とこれまでチームを牽引して来た両校のエースがその魅力を存分に見せつけた試合。2人差ビハインドで登場した杉村はまず東海大仰星の中堅柏野亮太を鉈で叩き下ろすような内股「一本」で屠り、続く副将菅野晶仁戦は相手の動きを良く見極めて追い詰め、窮した相手の巻き込み潰れを的確に捉えて隅落で2つの「技有」を奪取。このポイントで2人抜きを果たし、ついに大将同士の対決にまで試合を持ち込む。

しかし一階級下の73kg級で大阪府代表を務める内村は動きの質の良さで杉村に勝る。まず隅落で「技有」を得ると一瞬のギアチェンジの速さで杉村を翻弄、さらに再度の隅落「技有」も追加して圧勝。大阪星光学院の健闘もここまで、東海大仰星が順当にベスト4へと駒を進めることとなった。

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育英高の中堅長谷川功斉が比叡山高の副将・小上展寿から支釣込足「一本」。

育英高(兵庫)○二人残し△比叡山高(滋賀)
(先)岩本龍弥○払腰(2:02)△日野山剛(先)
(先)岩本龍弥△内股(2:22)○大城海渡(次)
(次)門田優吾×引分×大城海渡(次)
(中)長谷川功斉○優勢[技有]△松川龍二(中)
(中)長谷川功斉○支釣込足(2:32)△小上展寿(副)
(中)長谷川功斉×引分×藤田優介(大)
(副)奥村弥百希
(大)岡田一真

兵庫チャンピオン・育英がしっかり強さを発揮。一人抜きを果たした岩本龍弥が大城海渡の内股「一本」に沈んでタイスコアに持ち込まれたが、以後は無敗のまま得点を重ねる。中堅の長谷川功斉が2人抜き1分けと3人を賄う活躍を見せ、副将と大将を座らせたまま余裕を持ってベスト4入り決定。

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準々決勝、天理高の先鋒井上直弥が近江高の次鋒宇佐美倭から大外刈「一本」

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井上直弥は続く西本萌人も僅か17秒の内股「一本」で屠り、3人抜き。

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井上が近江の副将千代鶴岳から大外刈「一本」、これで4人抜きを達成。

天理高(奈良)○四人残し△近江高(滋賀)
(先)井上直弥○払腰(1:06)△桐畑銀士(先)
(先)井上直弥○大外刈(1:06)△宇佐美倭(次)
(先)井上直弥○内股(0:17)△西本萌人(中)
(先)井上直弥○大外刈(0:41)△千代鶴岳(副)
(先)井上直弥△縦四方固(1:58)○加藤涼真(大)
(次)池田凱翔○背負投(0:35)△加藤涼真(大)
(中)水上世嵐
(副)植岡虎太郎
(大)中野寛太

前戦で早くも中野寛太を畳に送り出してしまう不首尾を演じた天理、この試合から井上直弥を送り込んでこの日のフルメンバーを完成。先鋒に投入された1年生の巨漢・井上は前戦のチームの停滞を吹き飛ばすように大暴れ、第1試合の桐畑銀士戦は「はじめ」が宣せられるなり突進して相手を突き出し、開始5秒まず場外の「指導」。さらに40秒には「取り組まない」咎の「指導2」も得ると、頃合い良しと1分6秒に右大外刈。この技で桐畑銀士の膝裏をロックして動きを止めると、二の矢の右払腰で両脚ごと空中に持ち上げる。体を捨ててぐしゃりと投げ切り「一本」。

第2試合も右相四つの宇佐美倭を相手に勢い止まらず、前戦とまったく同じ1分6秒に右大外刈を決めて「一本」、さらに第3試合はケンカ四つの西本萌人を開始17秒の内股「一本」と立て続けに豪快な投げを披露。まさしく重戦車、「一本」というスコアだけではその勢いを消化しきれぬ凄まじい質量である。井上は続く第4試合もケンカ四つの千代鶴岳を41秒右大外刈に捉えてあっという間の「一本」、ついに1人で近江の大将加藤涼真を畳に引きずり出す。

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近江の大将加藤涼真が井上直弥から浮落「技有」。

この試合は右相四つ。滋賀県無差別チャンピオンの加藤は支釣込足を連発、さすがに疲労した井上畳を割って26秒場外の「指導」。
井上奮起して思い切った右内股を放つが加藤体捌き良く透かして動ぜず、さらに続けて襲った右払腰もガッチリ止めて潰し、力関係における加藤の優位は明らか。
1分35秒に井上が支釣込足、しかし加藤はこれを自信満々迎え撃ち、井上が体を戻す動作に合わせて振り返し決定的な浮落「技有」獲得。そのまま動きを止めずに体を乗り越えて縦四方固に抑え込むと井上動けず「一本」、近江がようやく一矢を報いる。

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池田凱翔が低く右背負投、ここから伸びあがって決め切り「一本」。

天理は続いて次鋒の池田凱翔が畳に上がる。身長181センチ、体重110キロの加藤に対し池田は172センチ83キロと上背に劣り、かつ軽量。前戦井上の攻撃をすべて受け止めた加藤の様子からも縺れる試合が予想されたが、36秒に池田が小内刈のコンビネーションから右背負投に潜り込むと、加藤外側にかわそうと一歩足を踏み出したまま崩落。池田は膝を一杯に伸ばして相手の体の上に乗り上げ、投げの効果をフォロー。主審の手が高々と上がって「一本」。

前戦の停滞から一転、雲を払うような快勝で天理がベスト4入り決定。最終スコアは四人抜きという大差であった。

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石山陽太と谷口稜太による第6試合。

神戸国際大附高(兵庫)○一人残し△京都学園高(京都)
(先)騰川雄一朗○内股(1:56)△細川達弘(先)
(先)騰川雄一朗×引分×富原銀士(次)
(次)西本翔×引分×阿部侑太(中)
(中)島健輔○払巻込(0:52)△上田泰介(副)
(中)島健輔△袖釣込腰(0:45)○谷口稜太(大)
(副)石山陽太×引分×谷口稜太(大)
(大)寺本靜矢

準々決勝最注目の一番はやはり激戦。しかし兵庫県81kg級代表を務める騰川雄一朗の一撃で先制した神戸国際大附が一貫して優位に試合を進め、最後は谷口稜太の抵抗を石山陽太が大激戦の末に引き分けで止めてフィニッシュ。エース寺本靜矢を座らせたまま、スコア一人残しでベスト4進出を決めた。

結果決まった準決勝カードは、

東海大仰星高(大阪) - 育英高(兵庫)
天理高(奈良) - 神戸国際大附高(兵庫)

となった。

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内村秀資が長谷川功斉を内股「一本」、これで東海大仰星は1人差のリードを得る。

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エース対決は育英・岡田一真が内村を内股「一本」で一蹴。

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大将同士の対決、岡田が倉部隆成を大外刈「一本」に仕留めて勝負あり。

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【準決勝】

育英高(兵庫)○一人残し△東海大仰星高(大阪)
(先)岩本龍弥○反則[指導3](2:40)△柏野亮太(先)
(先)岩本龍弥△上四方固(2:24)○菅野晶仁(次)
(次)門田優吾×引分×菅野晶仁(次)
(中)奥村弥百希×引分×福澤達矢(中)
(副)長谷川功斉△大腰(0:33)○内村秀資(副)
(大)岡田一真○内股(0:24)△内村秀資(副)
(大)岡田一真○大外刈(1:09)△倉部隆成(大)

予想通りの大熱戦は育英の勝利に帰着。東海大仰星はエースの内村秀資を副将に前出し、一方の育英は岡田一真を大将に置くオーソドックスオーダーを組んだ。

先鋒戦は柏野亮太の反則負けにより、育英・岩本龍弥が勝利。しかし続く第2試合は東海大仰星・菅野晶仁が柏野の一本背負投を受けとめ、後ろに引き落として「技有」奪取、そのまま上四方固に抑え込んで一本勝ちを果たす。続いて行われた2試合はいずれも引き分けに終わり、勝負の行方はタイスコアのまま双方のエースが座る後衛ブロックへと引き継がれる。

来るエース対決に向け、両雄のうち先に畳に上がったのは東海大仰星の内村秀資。副将同士の対決は内村がその特徴である投げ一発の魅力を存分に発揮、育英・長谷川功斉を僅か33秒の大腰一発に斬り落とし鮮やか「一本」。体重100キロの長谷川を73キロの小兵内村がそれも上から目線の腰技で豪快に投げつけた、その絵の見事さと強さに観客席は嘆息。

そして迎えたエース対決は育英・岡田一真が左、内村が右のケンカ四つ。激戦必至と思われたこの一番だがまたも早い結末、開始僅か24秒に岡田が放った左内股に内村抗えず勢いよく一回転「一本」。内村畳上で天を仰ぐ。
内村の乗るか反るかの柔道の魅力が負の方向に出た一番。東海大仰星はあと1枚を畳に残すものの内村敗退のこの時点で勝敗は既に決した感あり。

続く大将同士の対決、倉部隆成はなんとか今一度代表戦で内村を畳に送り出さんとケンカ四つの組み手をテコに必死に粘るが、岡田は引き手を放さぬまま圧力を掛け続け倉部は非常に苦しい体勢。1分9秒、岡田の左大外刈が襲い掛かると倉部ほとんど抗せること出来ぬまま畳に埋まり「一本」。今代充実の育英、前評判通りの強さで決勝進出決定。

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第1試合、天理の水上世嵐が坂元香月を攻め続け3つの「指導」を得る

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第2試合、水上が騰川雄一朗から裏投「技有」

天理高(奈良)○四人残し△神戸国際大附高(兵庫)
(先)水上世嵐○反則[指導3](2:11)△坂元香月(先)
(先)水上世嵐○優勢[技有・裏投]△騰川雄一朗(次)
(先)水上世嵐×引分×石山陽太(中)
(次)植岡虎太郎○小内返(1:19)△西本翔(副)
(次)植岡虎太郎○優勢[技有・背負投]△寺本靜矢(大)
(中)池田凱翔
(副)井上直弥
(大)中野寛太

前戦の井上の活躍でスイッチが入ったか、天理が神戸国際大附高をまったく寄せ付けず圧勝。先鋒戦は水上世嵐が右相四つの坂元香月に圧力を掛けると冷静に足技で蹴り崩し、1分6秒「取り組まない」、1分48秒「極端な防御姿勢」、そして2分11秒再び「極端な防御姿勢」と3つの反則ポイントを得て快勝。第2試合も水上は小内刈に出足払、自ら抱き着いての密着攻撃と次々攻めて騰川雄一朗を圧倒。「指導1」を奪った後の2分20秒にはこれまで幾度か試みた自ら相手の背中に滑り込んでの裏投をついに決め切り「技有」奪取。このポイントで2人抜きを決めた。水上は続く第3試合をきっちり引き分け、2人差のリードを保ったまま退場。

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第4試合、天理の次鋒植岡虎太郎が神戸国際大附の副将西本翔の右小内刈を左出足払で切り返す美技、「一本」

第4試合は天理の次鋒植岡虎太郎に神戸国際大附の副将西本翔がマッチアップ。この試合は右相四つ。植岡は右背負投、西本は右払巻込で攻め合って迎えた1分19秒に西本が鋭い右小内刈を閃かせる。しかし植岡は一瞬スピードのレベルを上げ、この刈り足を左出足払で捉え返す美技を披露。西本吹き飛ばされたように宙を舞い鮮やか「一本」。間違いなくこの日のベスト「一本」はこの技、ひな壇に居並ぶ天理OBから思わず「よう鍛えられとる!」と声が上がった、凄み漂う一撃であった。

この一撃で勝負の行方はほぼ決した印象あり。続く植岡の相手は兵庫県無差別王者の難敵寺本靜矢だが植岡は怖じることなし、ケンカ四つの寺本相手に右背負投を次々仕掛け、1分9秒にはこの技で寺本の懐に潜り込む。寺本跨いで耐え、さらに一歩外側に足を進め腕挫十字固に近い形で踏ん張るが植岡走ってめくり切り決定的な「技有」奪取。以後は少々狙い過ぎの感あり、植岡が散発で放つ右背負投と逆転を狙う寺本の左内股がかち合う形でスコア動かぬまま試合終了。この試合は植岡の優勢勝ちに収着して全5試合が終了。天理は次鋒までの2人で強豪神戸国際大附を撃破、スコア四人残しの大差で決勝進出を決めることとなった。

結果決まった決勝カードは、

育英高(兵庫) - 天理高(奈良)

となった。

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決勝に臨む育英高。先鋒に長谷川功斉を派遣し、エース岡田一真は大将に座る。

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天理は意外な策、エース中野寛太を先鋒に据えた。

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決勝が開始される。

【決勝】

開示されたオーダーの意外さに、場内からどよめきが上がる。

育英高(兵庫) - 天理高(奈良)
(先)長谷川功斉 - 中野寛太(先)
(次)岩本龍弥 - 井上直弥(次)
(中)奥村弥百希 - 池田凱翔(中)
(副)門田優吾 - 水上世嵐(副)
(大)岡田一真 - 植岡虎太郎

天理が絶対の大駒・インターハイ100kg超級王者の中野寛太をなんと先鋒に起用。育英が副将格の長谷川を先鋒に突っ込んで前戦までの勢いを持ち込もうと画策したその強気の意図をまさしく作戦ごと吹っ飛ばす、あまりにも大胆過ぎる戦略だ。この日乗っている育英を前に、いかなる策も中野で全て塗りつぶしてしまおうというこれ以上ないブルドーザ作戦。細かく見れば中野消費後の大将植岡は当然として、中野の直後に貴重な最重量級の駒である井上を配置しているところからその意図を読み取ることが出来る。育英はおそらく100kg級の長谷川を以て天理の前衛に配されるであろう中量級選手たちをサイズで圧し、ここでリードを作ってじわじわ試合を進め、最後は複数枚で大将・中野に当たろうという構えだったのではないだろうか。この日の育英の勢いであればリードさえ得れば何が起こるかはわからない。中野を畳に迎えるにしてもリードし、場を荒らし、戦況を沸騰させるだけ沸騰させて「何が起こるかわからない」空間をプロデュースしたうえで、と考えたはずだ。それにはなんと言っても先制が最善、最悪でもサイズで圧して「なかなか取れない」雰囲気の悪さを相手に強いるところから試合を始めるに如くはなし。しかしここで天理が選択したのは、まったくその意図に付き合わぬ最重量級2枚連続配置。万が一にも中野がいずれかの時点で止められても、続く試合で試合巧者揃いの中量級勢で一種攻防を成立させてしまうのではなく、井上のサイズでまず相手の勢いを窒息させてしまおうという二段重ねの策だ。こう考えると「先鋒中野」は奇策ではなく、以後の配置も含めてまことに戦況に叶った作戦に見えてくる。

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第1試合、中野寛太が長谷川功斉を左内股「一本」

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第2試合、中野が岩本龍弥を左体落で引きずり出し「技有」

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中野は続く奥村弥百希を出足払「一本」、これで3人抜き達成。

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第4試合は僅か6秒で決着、中野が門田優吾を袖釣込腰「一本」に仕留める。

第1試合、「はじめ」の声とともに中野が長谷川に襲い掛かる。開始僅か26秒で左大外刈「技有」、その余韻冷めやらぬ35秒には左内股「一本」。期待に違わぬ中野の強さに、場内は地鳴りのようなどよめき。観客席の各所から「強え!」と断続的に声が上がる。

第2試合は畳に残った中野が左、育英の次鋒岩本龍弥が右組みのケンカ四つ。岩本はまず良いタイミングで肘抜きの右背負投、これで中野の懐に入りこんで場内を沸かす。再びこの技に出ると中野慌てず左体落に切り返すが、以後岩本は腰を引いて防御の構え、ここから肘抜きの背負投を狙おうという姿勢。頭を下げ、腰を引き、しかし一定の圧力は緩めず、かつここから自身のみは攻めの手立てを持つという明らかな難剣の使い手。重量級の定番技一発では取るのが難しい体勢であり、中野の得点に至る手札の種類と質が問われるところ。

ここで中野が見せたのは、ウルフアロンばりの「引っこ抜く」体落。自護体に近い形で踏ん張っていた岩本はその姿勢のまま両足で地を蹴らされ、剛体のまま中野の作用足を飛び越えて頭から畳に突っ込む。これは「技有」、中野間を置かず上四方固に捉えると岩本もはや動けず1分25秒「一本」が宣告される。中野、これで2人抜きを達成。

面倒な相性の相手を突破した中野、奥村弥百希を畳に迎えた第3試合も快勝。29秒、一瞬相手の左への体重移動を見せながら左出足払一閃。強烈な打撃を受けた奥村は瞬間体を水平に宙を舞い、中野は両手で押さえつけるようにして落下軌道をコントロール。奥村がまさしく畳に埋まったこの強烈な一撃はもちろん文句なしの「一本」。

あっという間の3人抜きに場内はどよめき、嘆息、歓声。その声も収まらぬまま異様な雰囲気で開始された第4試合は僅か6秒で決着。中野が門田優吾を相手に袖を引っ掴むなり袖釣込腰一撃。あるいは相手が袖を絞った瞬間であったか、ともあれ門田はまったく抗えず高い軌道で一回転「一本」。中野は電車道の4人抜き達成。

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中野は接近と掌握を繰り返し、さらに足技の連続攻撃で3つの「指導」を確保。

第5試合は中野、育英高のエース岡田ともに左組みの相四つ。岡田は体の角度を入れ替え、引き手で相手の釣り手を絞りとしっかり対重量級の定石を踏んでその圧を散らそうと試みるが、中野は組み手争いを苦にしない。あるいは一瞬右組みにスイッチし、あるいは絞られた袖をそのままに体をずらして相手を呼び込んでと、あらゆる形を自身の投げの「作り」まで持って行ってしまう。1分3秒ついに岡田に「指導」。以後も中野は接近と掌握を繰り返し、2分6秒にはその圧に畳に膝を屈した岡田の「指導2」、2分29秒にも同様の形が現れると主審試合を止めて三審の合議を要求。結果岡田に3つ目の「指導」が与えられて試合は終了。中野寛太の5人抜き、スコア五人残しを以て天理の勝利が決まった。

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試合終了直後、選手に訓示する天理高・齋藤涼監督。

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表彰式に臨む天理高の面々。

天理高(奈良)○五人残し△育英高(兵庫)
(先)中野寛太○内股(0:35)△長谷川功斉(先)
(先)中野寛太○上四方固(1:25)△岩本龍弥(次)
(先)中野寛太○出足払(0:29)△奥村弥百希(中)
(先)中野寛太○袖釣込腰(0:06)△門田優吾(副)
(先)中野寛太○反則[指導3](2:29)△岡田一真(大)
(次)井上直弥
(中)池田凱翔
(副)水上世嵐
(大)植岡虎太郎

先鋒中野の策がズバリ当たった試合。仮に中量選手を前に出すオーソドックスオーダーを組んだとすると、勢いのある育英を相手に中量級選手が「やりとり」をする、そのこと自体で相手を利する可能性があった。ただでさえ今大会は育英の地元である兵庫県での開催。良い技を仕掛けるたび、あるいは相手の技を潰すたびに大歓声が上がり「やれる」雰囲気を醸成させてしまっては、いかに力に差があっても勝負がどちらに流れていくかはわからない。勢いに乗った挑戦者を相手に、サイズがあるとはいえないチームが手堅い戦いを志向するのは確かに危険。大胆な策であるとともに、冒頭書いた通り非常に状況に叶った作戦であった。

大会通じて、天理は強かった。特に、若潮杯では明らかに抑え気味であった中野の取り味はやはり凄まじい。
これまで超高校級と呼ばれた重量級選手は一種伸びしろを残したようなオーソドックス技のみ、あるいはこれに抗された際に繰り出す、取り味のある変化球1つを用意して勝ち抜くパターンがほとんどであった。得意の形からの剛球2つか3つと、対になる技の組み合わせ。パワーと才能あるもののみが許される王道の装備、逆に周囲にとっては理解しやすい組み合わせだ。ゆえに団体戦で止めに掛かられた場合に意外な苦労をすることも多かったのだが、これに比すると中野の「投げ」の豊富さと、そこに至る手札の多さには驚かされるばかり。しかも質が非常に高い。大外刈、内股に払腰と支釣込足という重量級の定番技に、鋭い左出足払、他の技と有機的に連動させての右出足払、真裏から襲う小外刈、移腰、ケンカ四つでの引っこ抜くような体落、絞らせておいての袖釣込腰。いずれも安易な奇襲技ではまったくなく、王道技を連動させることで効果を倍加させる、組み立てとしてはむしろ業師タイプのそれである。組み手も非常に練れており、アプローチの手段が豊富。単に「切って、自分の形で一方的に組む」というような高校生の重量級における一般解のレベルは遥かに飛び越えており、時に右組みを経過することも厭わず極めて迅速に自分の投げの形を完成させてしまう。この日の戦いからは「重量級殺し」の組み手にはひとつひとつ明確な手立てがあることが伺われ、相手としてはどう防いでも、どうずらしても一合後には中野の作りが完成、前後左右から常に砲撃にさらされることになるという印象だった。1回リセットしてやりなおすのではなく直接投げに繋がるルートを敷いていることがまた厄介、組み手に時間を掛けさせること自体が非常に難しい。身長180センチ体重128キロの中野にここまでやられては周囲はたまったものではない。天理大のつわものズラリと居並ぶ奈良県選手権(全日本柔道選手権一次予選)で決勝まで進んだのは、快挙というよりはむしろ論理的な結果であるとすら感じた。

植岡ら周囲を固める中量級勢も頼もしい。徹底して後回り捌きの右背負投で勝負する植岡、同じく担ぎ技中心ながらここぞとみれば自ら抱き着いての一発勝負を厭わぬ水上、それに池田と全員に「持って大技を仕掛け続ける」こと、そして足技の巧みさ(特に小内刈)という共通項があるのが非常に面白い。横腹弱いながらも、井上という大型が存在することもチーム総体の完成度を高めている。

齋藤涼監督の現場采配ぶり、選手の柔道の質から感じさせる稽古の差配も見事。自身の母校である育英高を相手に勝負に徹し、いわば「叩き潰す」策に出た決勝の作戦には凄みが感じられた。

弱点を挙げるとすればまずは中野と井上以外のサイズのなさ。そして中野以外の戦力に関して言えば、上位対戦での「取り味」が、現時点見る限りではかなり相性に左右されるであろうこと。配列の噛み合わせによっては勝てる試合が意外な大敗に滑り落ちるというシナリオすらも考えられないではない。

村尾三四郎、賀持喜道、千野根有我の2年生3枚が異様な取り味を誇り、しかし周辺戦力が不安定な桐蔭学園。エース斉藤立という今代最強の大駒を誇り周辺戦力も手厚いが1年生中心で試合ぶりの振れ幅が大きい国士舘。そしてインターハイ最重量級王者中野寛太を擁し周辺戦力にも規律が染み込んでいるが、サイズがなく対戦相性の入り込む余地が大きい天理。どのチームも一長一短だが、この3校が全国大会本戦の主役であることは間違いない。
今年の高校選手権は、面白い。完璧なチームがないがゆえに、そしてそれぞれの特徴異なるがゆえに、この3チームが激突する試合の様相はもはや想像することそれ自体が快楽である。

天理がシーズン開始時二強と目された桐蔭学園と国士舘に十分伍する力があること、少なくとも間違いなく「四つ角」を占める地力があること、そしてエース中野寛太の成長が当初予想されたレベルを遥かに超えること。総括としてこの3つを掲げて、近畿新人大会のレポートを閉じさせて頂く。

入賞者と天理高・齋藤涼監督と中野寛太主将のコメント、および全試合のスコアは下記。

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優勝の天理高

【入賞者】
(エントリー44校)

優 勝:天理高(奈良)
準優勝:育英高(兵庫)
第三位:東海大仰星高(大阪)、神戸国際大附高(兵庫)
優秀校:大阪星光学院高(大阪)、比叡山高(滋賀)、近江高(滋賀)、京都学園高(京都)

優秀選手:中野寛太、井上直弥、池田凱翔(天理高)、岡田一真(育英高)、内村秀資(東海大仰星高)、寺本靜矢(神戸国際大附高)、杉村晃希(大阪星光学院高)、大城海渡(比叡山高)、西本萌人(近江高)、上田泰介(京都学園高)

天理高・齋藤涼監督のコメント
「(-決勝、中野選手を先鋒に投入しましたね?)育英は私の母校。個人的な思い入れもありましたが、勝負に徹しました。まず1つは、今日の育英にかなり勢いがあったので、向こうの流れにさせないということ。そして全国大会に向けて、植岡、井上と、中野以外にも後ろを任せられる、信頼できる人材がいると示したかった。中野が常に後ろというわけではありません。(-シード順を上げるべく、大差のスコアを狙うという考えはありましたか?)まったくないです。あくまで今日、この試合をどう勝つかを考えて、一番良いオーダーを組んだということ。実は想定していたオーダーではなく、本当はこの大会は『中野を出さずに勝つ』ことを目標にしていました。2試合目で出ることになってしまったので、逆に切り替えられたということもありますね。(-意外な段階での出場でしたか?)中野を使わずに勝とう、ということでプレッシャーがかかり、チーム全体が相当硬くなっていましたね。ですので、準々決勝の井上の働きは大きかった。(-若潮杯制覇後のチームはいかがですか?)大きな怪我もなく、変わらずしっかり稽古をしています。先週の個人戦で思うように成績が残しきれなかったのはありますが、ここで勝って、団体戦全勝で全国大会に行くんだと気持ちを巻きなおしました。(-全国大会に向けて一言お願いします?)優勝しかないです。中野は当然として、それ以外の選手たちも優勝を意識してしっかり頑張ってもらいたい。1か月半、良い意味で怪我を怖れず、追い込み続けて本番に臨みます。」

天理高・中野寛太主将のコメント
「内容はまだまだ。全国に向けて詰めていかないといけないと思うことがたくさんありましたが、勝って、とりあえず繋がったかなと思います。(具体的な課題はどの部分?)最初は、自分を大将に置いて、回さないまま優勝するのが目標だったんですが、3回戦で回ってきてしまった。そこは勝ち切らないといけない。チーム全体の課題です。(-自身の出来については?)今日は前技で繋ぐのが課題だったんですが、後ろ技で取ってしまった。また、決勝は大将を投げていないので、まだまだだと思います。(-近畿選手権、高校選手権無差別と個人でも挑戦が続きますね?)近畿選手権はなんとか上位に食い込みたい。高校選手権は絶対に優勝します。(-今年の天理はどんなチーム?)とにかく全員が一生懸命で、個人の意識が高い。特にこの『意識』については、新チームになってからどんどん上がっているのを肌で感じます。全国優勝に向けて手ごたえありです。(-本戦に向けて?)厳しい戦いが続くとは思っていますが、全国制覇しか狙っていません。団体戦で絶対に優勝を勝ち取ります。」

■ 記録
【一回戦】

報徳学園高(兵庫)〇二人残し△五條高(奈良)
熊野高(和歌山)〇三人残し△綾羽高(滋賀)
大阪星光学院高(大阪)〇一人残し△科学技術高(兵庫)

高砂高(兵庫)〇一人残し△関西大第一高(大阪)
常翔学園高(大阪)〇一人残し△京都共栄学園高(京都)
市立尼崎高(兵庫)〇二人残し△高田高(奈良)

清風高(大阪)〇四人残し△高島高(滋賀)
社高(兵庫)〇五人残し△西大和学園高(奈良)
大阪偕星学園高(大阪)〇一人残し△和歌山工高(和歌山)
相生産業高(兵庫)〇二人残し△貴志川高(和歌山)
神戸村野工高(兵庫)〇一人残し△関西福祉大金光藤蔭高(大阪)
瀬田工高(滋賀)〇一人残し△京都両洋高(京都)

【二回戦】

東海大仰星高(大阪)〇二人残し△報徳学園高(兵庫)
和歌山北高(和歌山)〇一人残し△伊香高(滋賀)
龍谷大付平安高(京都)〇二人残し△熊野高(和歌山)
大阪星光学院高(大阪)〇二人残し△添上高(奈良)

比叡山高(滋賀)〇三人残し△高砂高(兵庫)
近畿大附高(大阪)〇一人残し△京都文教高(京都)
育英高(兵庫)〇三人残し△常翔学園高(大阪)
初芝橋本高(和歌山)〇二人残し△市立尼崎高(兵庫)

天理高(奈良)〇三人残し△清風高(大阪)
神港学園高(兵庫)〇二人残し△東山高(京都)
東大阪大柏原高(大阪)〇二人残し△社高(兵庫)
近江高(滋賀)〇四人残し△大阪偕星学園高(大阪)

京都学園高(京都)〇一人残し△相生産業高(兵庫)
上宮高(大阪)〇三人残し△畝傍高(奈良)
箕島高(大阪)〇三人残し△神戸村野工高(兵庫)
神戸国際大附高(兵庫)〇三人残し△瀬田工高(京都)

【三回戦】

東海大仰星高〇四人残し△和歌山北高
大阪星光学院高〇一人残し△龍谷大付平安高
比叡山高〇二人残し△近畿大附高
育英高〇四人残し△初芝橋本高

天理高〇三人残し△神港学園高
近江高〇四人残し△東大阪大柏原高
京都学園高〇二人残し△上宮高(大阪)
神戸国際大附高〇一人残し△箕島高

【準々決勝】

東海大仰星高(大阪)○一人残し△大阪星光学院高(大阪)
(先)福澤達矢○腕挫十字固(0:35)△川村青生(先)
(先)福澤達矢○体落(2:00)△今西悠真(次)
(先)福澤達矢×引分×金田茉大(中)
(次)倉部隆成×引分×山口雅也(副)
(中)柏野亮太△内股(2:13)○杉村晃希(大)
(副)菅野晶仁△優勢[技有・隅落]○杉村晃希(大)
(大)内村秀資○優勢[技有・隅落]△杉村晃希(大)

育英高(兵庫)○二人残し△比叡山高(滋賀)
(先)岩本龍弥○払腰(2:02)△日野山剛(先)
(先)岩本龍弥△内股(2:22)○大城海渡(次)
(次)門田優吾×引分×大城海渡(次)
(中)長谷川功斉○優勢[技有]△松川龍二(中)
(中)長谷川功斉○支釣込足(2:32)△小上展寿(副)
(中)長谷川功斉×引分×藤田優介(大)
(副)奥村弥百希
(大)岡田一真

天理高(奈良)○四人残し△近江高(滋賀)
(先)井上直弥○払腰(1:06)△桐畑銀士(先)
(先)井上直弥○大外刈(1:06)△宇佐美倭(次)
(先)井上直弥○内股(0:17)△西本萌人(中)
(先)井上直弥○大外刈(0:41)△千代鶴岳(副)
(先)井上直弥△縦四方固(1:58)○加藤涼真(大)
(次)池田凱翔○小内刈 (0:35)△加藤涼真(大)
(中)水上世嵐
(副)植岡虎太郎
(大)中野寛太

【準決勝】

育英高(兵庫)○一人残し△東海大仰星高(大阪)
(先)岩本龍弥○反則[指導3](2:40)△柏野亮太(先)
(先)岩本龍弥△上四方固(2:24)○菅野晶仁(次)
(次)門田優吾×引分×菅野晶仁(次)
(中)奥村弥百希×引分×福澤達矢(中)
(副)長谷川功斉△大腰(0:33)○内村秀資(副)
(大)岡田一真○内股(0:24)△内村秀資(副)
(大)岡田一真○大外刈(1:09)△倉部隆成(大)

天理高(奈良)○四人残し△神戸国際大附高(兵庫)
(先)水上世嵐○反則[指導3](2:11)△坂元香月(先)
(先)水上世嵐○優勢[技有・裏投]△騰川雄一朗(次)
(先)水上世嵐×引分×石山陽太(中)
(次)植岡虎太郎○小内返(1:19)△西本翔(副)
(次)植岡虎太郎○優勢[技有・背負投]△寺本靜矢(大)

※ eJudoメルマガ版2月8日掲載記事より転載・編集しています。

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