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【ROAD TO 高校選手権】第17回水田三喜男杯争奪選抜高等学校柔道大会男子マッチレポート②準決勝~決勝

(2018年1月12日)

※ eJudoメルマガ版1月12日掲載記事より転載・編集しています。
第17回水田三喜男杯争奪選抜高等学校柔道大会男子マッチレポート②準決勝~決勝
取材・文:古田英毅

■ 準決勝
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開示された準決勝第1試合のオーダー順。桐蔭学園は後重心陣形。

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先鋒戦、小宮大倭が高山康太を袖釣込腰で攻める

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小宮が高山に左一本背負投、左小内刈に連絡して「技有」が宣告される。

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桐蔭学園高(神奈川) - 木更津総合高(千葉)
(先)高山康太 - 小宮大倭
(次)竹裕駿 - 林虹希
(中)村尾三四郎 - 小山内剣太郎
(副)賀持喜道 - 北條嘉人
(大)千野根有我 - 伊藤大輔

2日前の松尾杯では準々決勝で対戦し、この際は桐蔭学園が3-2で勝利しているカード。

桐蔭学園は前戦で敗れた安藤健志に代え、5番手に再び竹裕駿を起用。4番手の高山、そして竹と前衛に周辺戦力を続けて並べて、後衛にポイントゲッター3枚をまとめて投入した。前で我慢、後ろで突き放そうという意図の後重心陣形。

一方の木更津総合はやはりこの試合も坂東虎之輔と浅野史恩の2枚をベンチに取り置いた。前回対戦で得点した北條嘉人(※vs町方昂暉)と伊藤大輔(※vs高山康太)がいずれも桐蔭学園のエース級とマッチアップしてしまうというやや苦しい配置。前2枚で得点して後ろを粘る、と逆に目的ははっきり決まったが、まず前衛がこの作戦を実現できるかどうかに勝敗の行方が掛かる。

先鋒戦は桐蔭学園・高山康太が左、木更津総合・小宮大倭が右組みのケンカ四つ。小宮は左袖釣込腰に左小内刈と連発して意欲的。一方の高山は小宮のラッシュの前に後手を踏むが、中盤ようやく良い組み手を得ると左大外刈に左内股と繰り出して応戦。

終盤、小宮の不「左一本背負投を高山が抱きかかえて裏投を狙うが一瞬拮抗してしまい相手の体を殺しきれない。小宮は動き良く左小内刈に連絡、高山は相手を腹に抱いたまま背中から落下してしまう。背中から落ちた高山がアフターで小宮の体を回したため絵は微妙となったが、主審は的確に白の開始線を指して小宮の「技有」を宣告。
そのまま試合が進んで残り時間は僅か、木更津総合の先制点獲得はもはや確実な状況。ところがここまで試合が進んだところで副審が突如立ち上がり、スコアボードの「技有」の掲示が誤っていると主審に進言した模様。主審は合議の結果これを受け入れ、なんと宣告から数十秒経った時点でスコアがひっくり返ってしまうことになる。単にスコアボードのミスとして処理されたためスコア取り消しなどのゼスチャーはなし。この異例の事態にひな段上の審判団も「あれはない」とざわめくが、残り時間はほとんどなくそのまま試合終了。なんとも後味の悪い形で桐蔭学園が先制することとなる。

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次鋒戦、木更津総合高・林虹希が竹裕駿から隅返「技有」。

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桐蔭学園が反撃開始、中堅村尾三四郎が小山内剣太郎から崩上四方固「一本」

次鋒戦は桐蔭学園・竹裕駿が左、木更津総合の林虹希が右組みのケンカ四つ。開始32秒、林が隅返一発。竹は片足状態のまま両手を着いてなんとかこらえるが、林は状況を的確に判断し手で押し込んで決めをフォロー、竹逆らえず背中をついてしまいこの技は「技有」となる。林はそのまま縦四方固に抑え込み、1分0秒「一本」が宣告されて次鋒戦は終了。林の勝利へのシナリオはただの一瞬も滞ることなし、まさしく完勝というべきこの試合の結果スコアは1-1となる。この時点で、内容差では木更津総合がリード。

中堅戦は村尾三四郎が左、小山内剣太郎が右組みのケンカ四つ。村尾が左大内刈を放ちながら前に出ると、追い込まれた小山内勇を鼓して右の作用脚を振り上げて攻撃の構え。しかし村尾の反応は迅速、瞬間残った軸足を左で刈る。捉えた膝裏から踵まで足先を滑り落とすと小山内は両足を空中に挙げられて崩落、村尾は伏せた相手を上から見下ろして横三角を開始する。脚で上半身をロック、そのまま掌で足首を捕まえてとまったく淀みなく手順を進め、崩上四方固「一本」。試合時間はわずかに1分23秒、桐蔭学園が逆転に成功。

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北條嘉人が賀持喜道の内股を返し掛かるが、以後も賀持の攻撃意欲は衰えず。

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賀持が北條から左内股「技有」

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賀持再度の左内股は「一本」となる

副将戦は賀持喜道が左、北條嘉人が右組みのケンカ四つ。試合が始まるなり北條は両袖を絞って積極前進、賀持やや虚を突かれたかまっすぐ畳を割ってしまい19秒場外の「指導」。今シリーズ賀持がほぼ初めて隙を見せた瞬間。
しかし賀持は以後立ち直り、一足の左内股に左大内刈と繰り出して積極的に投げに出る。1分19秒には左内股を北條に返されかかる場面があったが、その攻撃意欲は以後も衰えず。1分39秒の組み際に左内股を呉れると北條これを捌き切れず一回転、決定的な「技有」。

直後北條は再び両袖を絞り込んで前進、またも賀持に場外を割らせて反攻のきっかけをつかんだかに思われたが、主審これは北條の反則と判断し、絞り込んで膠着を図った咎で「指導」。

残り試合時間が1分となるところで、賀持が場外際で再び一足の左内股。両足ともに空中に上がって死に体となった北條は必死に身を捩じるが、賀持は両手の牽引を効かせて巧みに制御。主審は「技有」を宣告。北條は体側から畳に落ちておりこの判定は妥当なものに思われたが、副審のアピールで持たれた合議の結果スコアは「一本」に格上げとなる。賀持の一本勝ちで桐蔭学園が3点目を獲得、この時点でチームの勝利が決まった。

大将戦は千野根有我が今季の充実を象徴するかのような素晴らしい試合を披露。ケンカ四つの伊藤大輔をまず左払腰で伏せさせ、続く展開では鋭い左出足払。伊藤が崩れると素早い動きで「腰絞め」に捉える。ややあって主審が伊藤が絞め落とされたことを確認、28秒「一本」を宣告するに至る。

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千野根有我が開始早々に左払腰

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これで伊藤大輔を崩すと、あっという間に絞め落として「一本」

千野根のソツのない試合で桐蔭学園がスコアを伸ばし、最終スコアは4-1であった。

桐蔭学園高(神奈川) 4-1 木更津総合高(千葉)
(先)高山康太○優勢[技有・裏投]△小宮大倭
(次)竹裕駿△縦四方固(1:00)○林虹希
(中)村尾三四郎○崩上四方固(1:23)△小山内剣太郎
(副)賀持喜道○内股(3:04)△北條嘉人
(大)千野根有我○送襟絞(0:27)△伊藤大輔

強豪木更津総合をまったく問題にしなかった後衛3枚の戦いぶりはまさしく前代三冠チームにふさわしい、素晴らしいもの。特に賀持と千野根の充実には刮目すべきものがあった。

ただし残りの2枚はまたしても仕事を果たせず。先鋒高山が1点を挙げたがこれは誤審(少なくとも手続き上は誤りだ)によるもので敗北であったとしてもまったくおかしくないし、控えめに言っても、そんな危ない橋を渡らねばならない場面ではなかったはず。桐蔭学園はまたしても「絶好調の3枚+戦い切れない2枚」という隔絶構図を崩せなかったことになる。高山の勝利が後味の悪いものであったことと、竹の敗北がまったく無抵抗の一方的なものであったことで、この二極分解はさらに強調された感があった。

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大成高の先鋒・大竹龍之介が崇徳高・篠原泰斗を開始早々の右大腰「一本」に仕留める

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大成高(愛知) 2-1 崇徳高(広島)
(先)大竹龍之介○大腰(0:33)△篠原泰斗
(次)田中翔太×引分×毛利允弥
(中)竹内勇伸△棄権(0:44)〇福永夏生
(副)藤鷹裕大×引分×八木郁実
(大)瀬戸裕太朗○優勢[技有・袈裟固]△松尾理来

大成は好調の先鋒・大竹龍之介がまたもや大仕事。先鋒戦で難敵篠原泰斗をものともせず、ケンカ四つの腰の差し合いから極めて打点の高い右大腰一撃、33秒鮮やかな「一本」を得る。しぶとさが売り、接戦必至の難敵崇徳を相手に雲を払うかのような豪快な一撃、その華々しい勝ちぶりに大成ベンチの意気大いに揚がる。

次鋒戦は左相四つ。田中翔太と毛利允弥が支釣込足を蹴り合う形で比較的静かに試合が進む。残り1分で毛利の内股を田中が返しかかる見せ場はあったものの、決定的なスコア生まれぬまま試合終了。この試合は引き分けに終わる。

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中堅戦、竹内勇伸が負傷のため棄権。崇徳が1点を返すこととなる。

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交互に「やぐら投げ」を打ち合う藤鷹裕大と八木郁実

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大将戦、大成・瀬戸裕太朗が松尾理来から左小外掛「技有」

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ここからは崇徳の得点ブロック。中堅戦は崇徳・福永夏生を止めんと大成・竹内勇伸が挑み掛かるが、早い段階で竹内が負傷。試合時間44秒で棄権を表明し、意外な形で崇徳が1点を得ることとなる。「一本」と棄権、対照的な内容ながらこれでスコアは1-1のタイ。

そしておそらく試合を決定づけるであろうと目された、ポイントゲッター同士の副将戦では藤鷹裕大に八木郁実がマッチアップ。藤鷹はたびたびケンケンの左内股で八木を追い込むが、大会直前に負った肉離れの影響か代名詞であるこの後のしつこい追い込みを度々断念。中盤には互いが「やぐら投げ」を打ち合う勝負の時間帯もあったが、終盤はお互いが鉾を収める形となってこの試合は引き分け。1-1のタイスコアのまま勝敗の行方は大将戦に持ち込まれることとなる。

大将戦は大成・瀬戸裕太朗が右、崇徳・松尾理来が左組みのケンカ四つ。瀬戸は決してポイントゲッターという立場ではなく、一方の松尾は今シリーズ度々崇徳の苦境を救って来た連続入賞の立役者。ということは副将戦の引き分けを以て試合の流れは崇徳に傾いたかと思われたのだが、この試合は開始45秒に瀬戸が釣り手で片襟を押しながら左小外掛に座り込んで値千金の「技有」獲得。そのまま移った横四方固は取り切れず「解けた」となったがこれで2つ目の「技有」も得る。
追いかける立場となった松尾はしかし決定的な追撃策を打てず、両襟で構える瀬戸の堅陣を崩せない。脇を差してのスクランブル攻撃も利かず、このまま試合終了。瀬戸が殊勲の優勢勝ちを果たし、結果スコア2-1で大成が決勝に進むこととなった。

崇徳は松尾杯の印象を超えられず。今代は地力の高さ明らかも、やはりやや大人しいチームと言わざるを得ない。場を沸騰させる変数になり得ると見られた篠原も職掌が被る大竹に思い切り放られてしまい、この試合は完敗。今シーズンのラッキーボーイであった松尾が抜かれて上昇変数であった篠原も敗れた以上、この時点での終戦は妥当なところかと思われた。新人戦期ながら既に全員に一定以上の地力があり、戦い方も心得たある意味大人のチームではあるが、決定的な爆発力には欠ける。全国大会上位進出のカギは、チーム全体の底上げというよりも福永と八木の攻撃力アップにあるとみておきたい。

結果決まった決勝カードは、

桐蔭学園高 - 大成高

となった。

■ 決勝
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決勝に臨む桐蔭学園は再び後重心で布陣

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大成は対照的に前半に得点ブロックを置いた

開示されたオーダー順は下記。

桐蔭学園高(神奈川) - 大成高(愛知)
(先)高山康太 - 大竹龍之介
(次)安藤健志 - 藤鷹裕大
(中)村尾三四郎 - 田中翔太
(副)賀持喜道 - 中村恭仁
(大)千野根有我 - 瀬戸裕太朗

桐蔭学園は前衛で我慢、後衛にポイントゲッター3枚をまとめるという準決勝の2ブロック陣形を踏襲。前戦で相手に電車道の一本勝ちを許した竹裕駿を下げ、再び1年生安藤健志を入れて布陣した。

一方の大成はこれと対照的な布陣。絶好調の大竹龍之介と前代からのレギュラー藤鷹裕大の抜き役2枚を前衛にまとめることで得点ブロックを形成した。ポイントゲッター2枚を、相手の装甲の薄いポジションにそのまま手当てした形になる。

藤鷹が高校選手権決勝で賀持に一本勝ちしたという来歴こそあれ、現実的には確かに誰を当てても桐蔭学園の「3枚」から得点することは厳しい。とはいえ、大竹・藤鷹でなくても大成のレギュラーであれば前衛2枚からの得点は十分計算できるところで、戦力全体の収支を考えればこの陣形はやや勿体ないところ。このままだと前衛が満点の仕事をして2点を挙げても、後衛3枚で捲られる可能性が大だ。どちらかというと勝利の可能性に掛けるよりも確実に得点を挙げることで「スコアをまとめる」ことが主眼であるかのようなオーダー順になってしまった感あり。とにもかくにも大竹と藤鷹が一本勝ちして、後衛の粘りをおぜん立てするほかは戦いようがない盤面。

というわけでポイントゲッター同士の対決は組まれず、両軍の面子に比すれば少々みどころが減じた配置。戦前に勝敗を予想しにくい「勝負」のポジションはなく、どの対戦も比較的目算が立つ陣形だ。観戦上の主眼は、前衛2ポジションで桐蔭学園の我慢が利くか(=大成の2選手が取り切れるか)、逆に後衛3ポジションで大成がどこまで粘れるか(=桐蔭学園がどのような内容で獲り切るか)という、順行運転シナリオの成否見極め。順当ならばスコア3-2、あるいは(高山が粘って)3-1で桐蔭学園の勝利となるはず。勝敗自体よりも、以後の戦いに向けてこの水準ラインからどちらがどの程度自軍にシナリオを引っ張り込むかに注目したい戦い。

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先鋒戦、大竹龍之介が高山康太から大内返「技有」

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大竹は間を置かずに右大腰一発、高山を豪快に放って「一本」。

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次鋒戦、藤鷹裕大が安藤健志を左内股で攻める

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藤鷹が片手絞、安藤が「参った」して大成早くも2得点目。

先鋒戦は桐蔭学園・高山康太が左、大成・大竹龍之介が右組みのケンカ四つ。身長180センチ体重100キロと体格に大きく勝る高山は意欲的、今度こそ仕事を果たさんと左内股を2連発する積極的な出だし。しかし173センチ81キロの大竹は動ぜず、どころか直後大胆に上から釣り手を入れて右払腰の大技を見せ、あっという間に主導権を取り返す。

46秒、高山が左大内刈。体格にモノを言わせて上から被って体を捨てに掛かると、大竹待ってましたとばかりに抱え返し、まず大内返「技有」。続いての抑え込みは高山必死に逃れて「解けた」となるが、大竹の優勢は明らか。

1分過ぎ、大竹得意の腰の差し合いに高山を誘うと、右大腰一発。この大技見事に決まって「一本」。試合時間は僅か1分12秒、大竹の圧勝で先鋒戦は幕を閉じる。

次鋒戦は桐蔭学園・安藤健志が右、大成・藤鷹裕大が左組みのケンカ四つ。開始早々に安藤が左一本背負投を見せるが、藤鷹あっという間に組み直して左のケンケン内股と左小外掛を組み合わせて攻める。いずれも釣り手の制御が甘いことと、得意のしつこい追い込みがこの日鳴りを潜めていることで決まらなかったが、手数は着実に積みあがって52秒安藤に「指導」。
この反則に背中を押されたか、安藤意を決してまたもや前代のエース関根聖隆ばりの左「一本大外」。しかしこれが致命傷、あっさり潰した藤鷹は動きを止めずに「腰絞め」に入り込む。対応が遅れた安藤数秒で観念し「参った」。試合時間は僅かに1分7秒、大成は試合開始から計2分強で2得点を挙げることとなる。

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村尾三四郎が田中翔太を出足払「一本」に屠る

中堅戦からは桐蔭学園の得点ブロック。村尾三四郎が左内股、左大外刈と田中翔太を攻め続ける。しかし最初のラッシュで仕留め損なって慎重になったか、引き手で袖口を掴んだまま組み手有利のまま相手をウォッチする意外なミス。袖口を握り込んだまま攻撃を怠った咎で1分11秒「指導」を受けてしまう。
しかし村尾は慌てない。左大外刈を2連発して相手を下げると、1分38秒に左出足払一撃。重心移動のさなかにインパクトをまともに受けた田中一瞬で宙を舞い、鮮やか「一本」。事前に誰もが描いたであろう試合進行のシナリオはいまだ崩れず、これでスコアは2-1となる。

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賀持喜道が組み手巧みに追い込み、中村恭仁は畳を割って場外へ

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中村の圧力に賀持が伏せ、試合の様相が変わり始める。

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最終盤、中村が巻き込み潰れてまさかの「指導3」失陥。

副将戦は桐蔭学園・賀持喜道が左、大成・中村恭仁が右組みのケンカ四つ。81kg級の賀持に対し中村は体重109キロと大きく体格に勝る。実績、実力とも賀持が上のはずのカードではあるが、盤面上勝利以外が許されない賀持にはなかなかハードルの高い試合。

45秒組み手でミスを犯した賀持に「指導」。しかし賀持粘り強く攻め続け、1分20秒には中村に消極的との咎で「指導」が与えられてスコアはタイ。中盤中村がクロス組み手でガッチリ組む大チャンスを得るが、賀持の前進にそのまま畳を割ってしまいなんとも勿体ない場外「指導」。

残り時間2分16秒のこの時点で反則累積は賀持が「1」、中村が「2」。賀持が形上はリードだが、このまま時間が過ぎれば引き分けで試合が終わってしまうスコア。勝利必須の賀持としては少なくともあと1つの「指導」奪取が必要な状況だ。ただしこのペースであればこれは十分手が届くはずのライン。直後相手の背中側に回り込んで出足払で場外にはたきだしたところまでは賀持勝利が既定路線かと思われたが、1分56秒に中村が賀持の体をはたき込んで崩したあたりから雲行きが怪しくなる。直後中村が圧力を掛けると賀持は意外なほどあっさり畳に潰れ「待て」。賀持いったん内股で攻め返すが、前段の攻防で圧力が有効との手ごたえを得た中村が再び奥襟を叩くと、その下を潜り抜けるようにして潰れ「待て」。逆に賀持に「指導」が与えられてもおかしくない絵が2回続き、もはや中村の優勢は明らか。残り試合時間は1分強、試合は風雲急を告げる。

賀持は陥落寸前という印象であったが、ここで中村攻め疲れたか少々停滞。それでも、賀持の勝利はもはや想像しがたい状況である。このまま引き分けなら桐蔭学園の1つしかない勝利のシナリオが崩れ、代表戦を覚悟せねばならぬ展開。どころか、万が一大将戦も引き分けならば勝者は大成である。桐蔭学園にとっては、間違いなくこの日もっとも危うい時間帯。

逆に大成にとってはこのまま試合を終えるだけでも自軍に流れが転がり込む場面であるが、しかしここで中村が読み違える。残り18秒、組み付くなりいきなり巻き込みに潰れ、両手を放して自ら畳に這うという大ボーンヘッド。これには主審も偽装攻撃の「指導」を取らざるを得ず、3つ目の「指導」宣告で唐突に試合は終了。賀持は命拾い、ここで試合は2-2のタイスコアとなる。

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千野根有我が内股巻込「技有」

迎えた大将戦は千野根有我と瀬戸裕太朗ともに右組みの相四つ。この試合がそのままチームの勝敗を決めるという切羽詰まった状況での一番だが、今シリーズ同じ状況を幾度も戦い、成功体験を重ねてきた千野根には迷いなし。開始早々に思い切った右大外刈から右内股巻込に連絡して決定的な「技有」獲得。そのまま崩袈裟固、後袈裟固と継いで30秒「一本」の声を聞く。

これで全5試合が終了。スコア3-2で勝利した桐蔭学園が水田三喜男杯2連覇を決めることとなった。

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試合後、選手たちに訓示を行う高松正裕監督

桐蔭学園高(神奈川) 3-2 大成高(愛知)
(先)高山康太△大腰(1:12)○大竹龍之介
(次)安藤健志△片手絞(1:07)○藤鷹裕大
(中)村尾三四郎○出足払(1:38)△田中翔太
(副)賀持喜道○反則[指導3](3:43)△中村恭仁
(大)千野根有我○後袈裟固(0:30)△瀬戸裕太朗

副将戦で賀持が「敵失」に助けられた形にはなったが、これとて対「3枚」戦のプレッシャーと、賀持自身の序盤の攻めが中村の心と体を蝕んでいたから。自身が勝利するほかチームの勝ちがないという極限の状況を全員が背負いながら、ほぼ全勝で招待試合シリーズを終えた桐蔭学園の村尾、賀持、千野根のポイントゲッター3枚の強さは素晴らしい。この決勝もスコアこそ3-2の接戦であったが、ポイントゲッターの最高到達点の高さと枚数の多さで、桐蔭が大成を寄せ付けなかった試合と総括しても良いのではないだろうか。

しかしこれまで度々書かせて頂いた通り、この3枚と他選手、特に「5番手」を務めるべき選手の戦力的隔絶は尋常ではない。この日5番手枠でテスト起用された2選手の成績は安藤が0勝3敗1分け、竹が0勝1敗1分け。通算6試合をこなしながら未勝利という結果はもちろんのこと、団体戦の、そして「勝負ごと」自体の禁忌を踏み続けたその内容の悪さは、ポイントゲッター3枚と同一チーム所属であることがほとんど信じがたいほどであった。戦いの論理平面が数段低い。ポイントゲッター3枚の強さは桐蔭学園史上歴代屈指だが、5枚目に関していえば、同校がレギュラーとして畳に送り出すこと自体が稀なレベルではないだろうか。

松尾杯の結びに書かせて頂いた「(3枚が)こんなに強いのか」<「(残り2枚が)こんなに薄いのか」という今代の桐蔭学園の印象が一層補強された大会であったと評しておきたい。今シリーズ中はポイントゲッター3名を単に「三枚」、あるいは「三本の矢」と表現してきたが、全員が勝利せずばチームの勝利なしというこの苦しい状況を織り込めば、これはもはや例えば「必勝三枚」という引き算視点からの呼称こそがふさわしいのではないだろうか。

高松正裕監督、そして経験豊富な「必勝三枚」はこの危ういチーム事情を十分理解しているはず。ゆえに今シリーズの勝利に厳しくこだわり、本大会の第1シード獲得を目指したのであろう。目論見通り黒潮旗、松尾杯、水田杯とハイレベル大会をすべて制した同校は、本大会における第1シードピックアップがほぼ確実。おぜん立て整ったこの状況であとはどう周辺戦力を鍛え上げるか、高松監督の手腕と選手たちの奮起に注目である。

敗れた大成。前代2年生ながらレギュラーを務めた藤鷹・大西らがシーズン後半に失速気配であったこと、前代の東部直希のような明確なエースが存在しないこと、そして新チーム第1戦と呼ぶべき黒潮旗大会で決勝に進めなかったことで高い評価を与えにくい状況であったが、大西抜きで決勝まで進んだ今大会でその陣容の厚さを見せつけたと言える。桐蔭学園を例に持ち出すまでもなく戦力的な凹凸の激しいチームが多い今代、また中堅以下のチームに絶対のエースを擁するタイプのチームが少ない中で、5枚に穴のないこの陣容はなかなか買える。大竹龍之介というポイントゲッターの出現も好材料、シード候補に挙がるべき力を見せた大会であったと総括したい。

桐蔭学園が誇るポイントゲッター3枚の強さとそれと裏腹な周辺戦力の薄さ、バタバタのシーズンインからどうやら持ち直した大成の陣容の厚さ、試合ぶり練れた崇徳のしぶとさ、そして木更津総合の戦闘力の高さとそれぞれが個性を見せつけた第17回水田三喜男杯は、桐蔭学園の2連覇を以て幕。招待試合シリーズは、これら4校がいずれも出場しない最終戦、翌27日の若潮杯武道大会へと引き継がれることとなる。

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優勝の桐蔭学園高

【入賞者】
優 勝:桐蔭学園高(神奈川)
準優勝:大成高(愛知)
第三位:木更津総合高(千葉)、崇徳高(広島)
優秀校:福岡大大濠高(福岡)、四日市中央工高(三重)、習志野高(千葉)、埼玉栄高(埼玉)

最優秀選手:千野根有我(桐蔭学園高)
優秀選手:村尾三四郎(桐蔭学園高)、大竹龍之介(大成高)、小宮大倭(木更津総合高)、八木郁実(崇徳高)、野口隆世(福岡大大濠高)、山口隆乃(四日市中央工高)、平野龍也(習志野高)、西願寺哲平(埼玉栄高)

桐蔭学園高・高松正裕監督のコメント
「このシリーズ3大会、しっかり全部優勝出来たことは良かった。ただ『一筋縄ではいかない』というのが実感です。生徒もそれを感じていると思います。ただ、このシリーズを通して、国士舘高以外のチームからは頭ひとつ抜け出しているなとも思えました。松尾杯の対戦ではエースの選手が出ていませんでしたので、この選手と戦うことを見据えて3か月しっかりやっていこうと思っています。 (-シリーズを通じて、千野根選手の成長が良く見えましたね?)千野根はメンタルがタフになって、寝技をやれるようになりましたね。(-賀持選手は大型相手に課題を残した?)大きい選手のほうが、数をこなしていけばやりやすいはず。彼の柔道であれば投げ方を覚えてしまえばいいだけなので。(-5番手選手については?)安藤はまだ1年生で、こういう大会がとにかく初めて。それにしてはまあまあやれたと思いますし、予想の範囲内の出来ですね。病気で2週間休んでいる奥田も戻ってきますので、彼らを競らせながらしっかり鍛えていきます。」

【準々決勝】

桐蔭学園高(神奈川) 3-1 福岡大大濠高(福岡)
木更津総合高(千葉) 2-0 四日市中央工高(三重)
大成高(愛知) 3-0 習志野高(千葉)
崇徳高(広島) 2-0 埼玉栄高(埼玉)

【準決勝】

桐蔭学園高(神奈川) 4-1 木更津総合高(千葉)
大成高(愛知) 2-1 崇徳高(広島)

【決勝】

桐蔭学園高(神奈川) 3-2 大成高(愛知)

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