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平成29年度講道館杯全日本柔道体重別選手権大会最終日女子4階級レポート

(2017年12月11日)

※ eJudoメルマガ版12月11日掲載記事より転載・編集しています。
平成29年度講道館杯全日本柔道体重別選手権大会最終日女子4階級レポート
(48kg級、52kg級、57kg級、63kg級)
取材・文:林さとる/eJudo編集部

■ 48kg級 遠藤宏美が森﨑由理江との接戦を制して初優勝を飾る
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準決勝、遠藤宏美が右背負投で山﨑珠美を攻める。

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準決勝、森﨑由理江が田中芽生から巴投「技有」。

(エントリー29名)

【決勝まで】

今大会には出場していない近藤亜美(三井住友海上)と渡名喜風南(帝京大4年)の両世界王者を筆頭に、非常に人材が揃っている本階級。

今夏のユニバーシアードにおいてジョン・ボキョン(韓国)とガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)のリオデジャネイロ五輪銀、銅メダリスト2人を倒したことで注目を浴びた梅北眞衣(山梨学院大1年)は、ベスト8で学生体重別選手権で苦杯を喫した田中芽生(龍谷大3年)に内股返「技有」(GS3:52)を食って連敗。敗者復活戦でも坂上綾(三井住友海上)に「指導3」の反則(GS1:32)で敗れて表彰台に辿り着けないまま会場を去った。

このハイレベルトーナメントを決勝まで勝ち上がったのは、実業個人選手権とグランプリ・ザグレブ大会の直近2大会を制している2013年ワールドマスターズ王者・遠藤宏美(ALSOK)と、昨年の本大会準優勝者である森﨑由理江(宮崎大教)。それぞれ第1、第2シードから大会をスタートした有力選手2枚による戦いとなった。

遠藤は2回戦から登場すると、初戦で安達沙緒里(日本エースサポート)に「指導3」の反則(3:50)、準々決勝で濵田早萌(ベネシード)に「指導3」反則(3:43)と、持ち前の組み手と試合運びの上手さで指導ポイントを積み重ねてベスト4入り。山﨑珠美(自衛隊体育学校)との準決勝にもGS延長戦で「指導2」(GS4:59)で勝利し、ワールドマスターズを制した2013年シーズン以来となる講道館杯決勝進出を決める。

対する森﨑も2回戦からの登場。こちらも初戦で坂口仁美(ヤックス)に「指導3」の反則(3:03)、準々決勝で坂上に「指導3」反則(GS1:01)と、遠藤同様に指導ポイントの累積で序盤戦を勝ち上がる。準決勝の相手は前戦で梅北を破っている今年の学生王者・田中。森﨑は先に「指導2」を奪った末、残り36秒に巴投「技有」を得て優勢勝ち。昨年に続き2年連続となる決勝の畳へと駒を進めた。

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決勝、遠藤宏美が釣り手のみを持った右背負投。

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反対方向に落として「技有」を獲得する。

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森﨑由理江は左組みにスイッチして追い上げを図るが捉えきれず。

【決勝】

遠藤宏美(ALSOK)○優勢[技有・背負投]△森﨑由理江(宮崎大教)

右相四つ。奥襟を持ちたい森﨑とそれを防ぎながらで担ぎ技を狙う遠藤という構図で試合が進行。序盤は森﨑が組み際の左小内巻込に奥襟を得ての巴投と積極的に技を繰り出すが、いずれも遠藤が余裕を持って捌き切る。1分30秒頃からは双方が組み手争いから左袖釣込腰を仕掛け合うも、いずれの技もポイント獲得には至らず。

試合展開がやや停滞の模様を呈し始めた2分16秒、遠藤は組み手争いから一気に加速して釣り手のみでの右背負投に潜り込む。遠藤がおじぎをするような形で上体を倒すと、バランスを崩した森﨑は反対方向に抜けるように転がり落ち、主審は間を置かず「技有」を宣告。リードを許した森﨑は間合いを詰めて勝負に出ようとするが、遠藤これを許さず両者袖を絞り合っての膠着状態の末、3分2秒に両者に「指導」。ここから森﨑は組み手を左組みにスイッチしての面白い攻めを見せるも、左内股を潰されてしまい万事休す。ポイントの変動ないまま試合が終わり、遠藤の講道館杯初優勝が決まった。

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優勝した遠藤宏美。

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48㎏級入賞者。左から森﨑由理江、遠藤宏美、田中芽生)、山﨑珠美。

【入賞者】
優 勝:遠藤宏美(ALSOK)
準優勝:森﨑由理江(宮崎大教)
第三位:田中芽生(龍谷大3年)、山﨑珠美(自衛隊体育学校)

【グランドスラム東京日本代表選手】
渡名喜風南(帝京大4年)、近藤亜美(三井住友海上)、遠藤宏美(ALSOK)、森﨑由理江(宮崎大教)

遠藤宏美選手のコメント
「結果を出さないといけなかったので、優勝できてうれしいです。相手のことは深く考えず、いつもどおり自分の柔道をすることを意識しました。世界選手権代表の2人が強いので、勝てるように頑張りたいです。今回勝ったことで次に繋がったと思います。頑張ります。」

【準々決勝】
遠藤宏美(ALSOK)○反則[指導3](3:43)△濵田早萌(ベネシード)
山﨑珠美(自衛隊体育学校)○背負投(1:07)△和田君華(大成高2年)
森﨑由理江(宮崎大教)○GS反則[指導3](GS2:01)△坂上綾(三井住友海上)
田中芽生(龍谷大3年)○GS技有・内股返(GS3:38)△梅北眞衣(山梨学院大1年)

【敗者復活戦】
和田君華(大成高2年)○優勢[技有・隅落]△濵田早萌(ベネシード)
坂上綾(三井住友海上)○GS反則[指導3](GS1:32)△梅北眞衣(山梨学院大1年)

【準決勝】
遠藤宏美(ALSOK)○GS指導2(GS0:59)△山﨑珠美(自衛隊体育学校)
森﨑由理江(宮崎大教)○優勢[技有・巴投]△田中芽生(龍谷大3年)

【3位決定戦】
田中芽生(龍谷大3年)○大外刈(3:53)△和田君華(大成高2年)
山﨑珠美(自衛隊体育学校)○裏投(1:54)△坂上綾(三井住友海上)

【決勝】
遠藤宏美(ALSOK)○優勢[技有・背負投]△森﨑由理江(宮崎大教)

■ 52kg級 高校2年生の阿部詩が初優勝、「一本」狙い続ける攻撃柔道で他を圧す
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52kg級2回戦、阿部詩が坂本野乃袈から右内股「技有」。

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準決勝、阿部が渡邉貴子を右内股「一本」で秒殺。

(エントリー30名)

【決勝まで】

48kg級と同様に本階級でも第1シードの阿部詩(夙川学院高2年)と第2シードの立川莉奈(福岡大3年)が揃って決勝進出を果たした。

シード選手である阿部は2回戦から登場すると、坂本野乃袈(帝京大1年)を「技有」3つを奪った末の背負投「一本」(1:51)で畳に沈めるという凄まじい勝ちぶりで観客を驚かす。準々決勝こそ武田亮子(龍谷大1年)の粘りの前にGS延長戦での「指導2」勝利(GS0:34)と一旦停滞したが、続く準決勝では渡邉貴子(帝京大4年)を試合が始まるなり得意の内股「一本」(0:16)で秒殺。初の決勝進出を決めた。

一方の立川も2回戦からの登場。初戦で全国警察大会3連覇中の強豪・垣田恵利(兵庫県警察)を「指導3」反則(3:24)で振り切ると、以降は準決勝で児玉風香(新田高3年)に内股「一本」(1:35)、準決勝では宮川拓美(北陸綜合警備保障)にGS延長戦での大内刈「技有」(GS0:43)と、2試合連続で投技によるポイントを挙げて勝利。2年連続となる決勝の畳へと辿り着いた。

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決勝、延長戦で阿部詩が片襟の右大外刈。

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大外落の形で投げ切り立川莉奈から「技有」を奪う。

【決勝】

阿部詩(夙川学院高2年)○GS技有・大外落(GS0:39)△立川莉奈(福岡大3年)
右相四つ。両者袖を絞り合う形で試合をスタートする。開始直後に阿部が相手に袖を絞らせたまま右内股を放つが、立川は足を高く上げてこれを防御。阿部が釣り手の位置を上げて投げを狙い、立川が袖を絞ってこれを凌ぐという構図で試合が進行する。防戦一方の立川に対して1分5秒に組み合わない咎で「指導1」、さらに1分56秒には故意に場外に出た咎で「指導2」が与えられるが、これ以降立川は要所で攻めの形を演出して3つ目の「指導」を先送りし続ける。残り12秒には阿部が肩越しに背中を得てこれを嫌った立川が膝をつく場面も現れるが、投げによる決着を企図してか主審はこれをスルー。結果、阿部の「指導2」リードで勝負はGS延長戦へともつれ込む。

延長戦でも阿部はあくまで投げによる決着を目指し、GS16秒には両手で釣り手側の襟を持った右背負投で立川を高く担ぎ上げる。ポイントの予感漂う一撃に会場大きく湧くが、立川は側転の要領で腹這いに着地してノーポイント。直後のGS39秒、阿部は組み手争いから釣り手を片襟の位置に送り込み、思い切り良く右大外刈。一瞬反応が遅れた立川は抱きついて凌ごうとするが、阿部が上体を倒すと大外落の形で背中から崩れ落ちて「技有」。最後まで投げにこだわった阿部が、試合巧者立川を下して初の講道館杯優勝を飾った。

阿部は高校2年生にして講道館杯制覇の偉業達成。豪快な投技に大舞台でこそ力を発揮する勝負強さと兄の阿部一二三(日本体育大2年)に負けないスター性を持っており、東京五輪に向けた3年間で階級の主役となることは間違いないかと思われる。ブダペスト世界選手権王者の志々目愛(了徳寺学園職)と同大会2位の角田夏実(了徳寺学園職)を擁して国内屈指の激戦区となった52kg級において、これからどのような戦いを見せてくれるのか、そしていったいどこまで伸びるのか。非常に楽しみだ。

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優勝した阿部詩。

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52kg級入賞者。左から立川莉奈、阿部詩、宮川拓美、渡邉貴子。

【入賞者】
優 勝:阿部詩(夙川学院高2年)
準優勝:立川莉奈(福岡大3年)
第三位:宮川拓美(北陸綜合警備保障)、渡邉貴子(帝京大4年)

【グランドスラム東京日本代表選手】
志々目愛(了徳寺学園職)、角田夏実(了徳寺学園職)、阿部詩(夙川学院高2年)、立川莉奈(福岡大3年)

阿部詩選手のコメント
「この大会はなにがなんでも勝ちたいと思っていました。優勝できて嬉しいです。自分の柔道は「一本」を取っていく柔道なので、最後は決めにいきました。世界チャンピオンが同じ階級にいるので、並べるように、同じ場所に立てるように頑張りたいです。自分に自信を持てるようになったことが、成長できたところだと思います。」

【準々決勝】
阿部詩(夙川学院高2年)○GS指導2(GS0:34)△武田亮子(龍谷大1年)
渡邉貴子(帝京大4年)○優勢[技有・隅返]△前田千島(三井住友海上)
立川莉奈(福岡大3年)○内股(1:35)△児玉風香(新田高3年)
宮川拓美(北陸綜合警備保障)○GS技有・大内刈(GS0:32)△今井優貴(コマツ)

【敗者復活戦】
武田亮子(龍谷大1年)○反則(2:34)△前田千島(三井住友海上)
※相手の軸足を内側から刈ったことによるダイレクト反則。
今井優貴(コマツ)○横四方固(2:21)△児玉風香(新田高3年)

【準決勝】
阿部詩(夙川学院高2年)○内股(0:16)△渡邉貴子(帝京大4年)
立川莉奈(福岡大3年)○GS技有・大内刈(GS0:43)△宮川拓美(北陸綜合警備保障)

【3位決定戦】
宮川拓美(北陸綜合警備保障)○袖釣込腰(0:52)△武田亮子(龍谷大1年)
渡邉貴子(帝京大4年)○優勢[技有・大内刈]△今井優貴(コマツ)

【決勝】
阿部詩(夙川学院高2年)○GS技有・大外落(GS0:39)△立川莉奈(福岡大3年)

■ 57kg級 不調乗り越え、山本杏が復活V飾る
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準決勝、山本杏が宇髙菜絵から左小外刈「技有」。

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準決勝、渡部優花が左内股で玉置桃に一本勝ち。

(エントリー29名)

【決勝まで】

昨年決勝を争った石川慈と宇髙菜絵のコマツ勢2人がトーナメント途中でともに敗退。決勝へは宇髙を破った山本杏(パーク24)と、石川を破った渡部優花(ALSOK)が勝ち上がった。

山本は1回戦で竹内鈴(東海大2年)にGS延長戦での「指導1」(GS2:05)で競り勝つと、2回戦では北岡京(兵庫県警察)に「技有」2つを奪った末の一本背負投「一本」(2:59)で勝利。ここからは強豪と連戦、準々決勝で舟久保遥香(三井住友海上)に相手がブリッジの形で技を防御したことによるダイレクト反則(1:57)、準決勝では宇髙に小外刈「技有」からの袈裟固「一本」(4:00)で勝ち抜き、見事決勝進出を果たした。

対する渡部は1回戦の中村愛理(福岡大4年)戦に相手が腕挫腋固の形で体を捨てたことによるダイレクト反則(0:17)で勝利すると、2回戦では昨年の優勝者・石川をGS延長戦での小内返「技有」(GS1:09)で撃破。続く準々決勝でも髙沢眞冴(淑徳大4年)を縦四方固「一本」(3:02)に仕留めてベスト4入りを決める。準決勝では玉置桃(三井住友海上)と大激戦、58秒に出足払「技有」を先行される厳しい戦いとなったが、残り35秒に小外刈で「技有」を取り返すと、最後はGS延長戦で内股「一本」(GS1:41)を獲得して逆転勝ち。自身初となる決勝への切符を手に入れた。

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決勝、山本杏が渡部優花に右袖釣込腰。

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相手の上を転がりながらコントロールして「一本」を獲得する。

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【決勝】

山本杏(パーク24)○袖釣込腰(1:24)△渡部優花(ALSOK)

左相四つ。渡部は奥襟を得ると腰を切りながら圧を掛け、17秒には片襟での防御姿勢を続けた山本に片襟の咎で「指導1」が与えられる。続く展開でも渡部は奥を叩いて攻勢を継続、山本は掛け逃げぎりぎりの低い左大内刈に掛け潰れて辛うじて展開を切る。序盤は渡部の奥襟の前に防戦一方だった山本だが、45秒が経過した頃から右構えから左一本背負投を狙う形に組み手を変え、組み手の攻防を五分に戻すことに成功する。相手の意識が左技に向いた1分24秒、山本は一気に右に腰を切り右袖釣込腰。相手の上を転がるように最後までコントロールしたこの技は文句なしの「一本」。山本が2012年以来3度目(52kg級1回を含む)となる講道館杯優勝を果たした。

ここ数年持ち味を発揮できず、昨年度はついにほとんど見るべき結果を残せなかった山本。試合後自ら「山本はもう終わった、と思った人もいたはず」と語っていた通りのどん底にあったが、この優勝で一気にシーン帰還を果たした感あり。「諦めなくてよかったです。」と涙ながらに語る姿には観客席から大きな拍手が送られていた。国際シーンでも同様の活躍なるか、以後に注目したい。

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優勝した山本杏。

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57kg級入賞者。左から渡部優花、山本杏、玉置桃、柳楽祐里。

【入賞者】
優 勝:山本杏(パーク24)
準優勝:渡部優花(ALSOK)
第三位:玉置桃(三井住友海上)、柳楽祐里(JR東日本)

【グランドスラム東京日本代表選手】
芳田司(コマツ)、山本杏(パーク24)、玉置桃(三井住友海上)、宇髙菜絵(コマツ)

山本杏選手のコメント
「ここに来るまで本当に遠回りをしました。『山本は完全に終わった』と思っている人もいたと思います。社会人になって改めてやり直そうと、ここで勝つことを目指して頑張ってきました。諦めなくてよかったです。高校生の頃は怖いもの知らずで負けん気が強かったと思います。そのときにできていたことが、力がついた今できないはずがないと思い戦いました。まだまだ23歳と若いので、やってきたことを積み重ねてひとつひとつ勝っていきたいです。」

【準々決勝】
宇髙菜絵(コマツ)○GS反則[指導3](GS5:57)△富沢佳奈(埼玉栄高3年)
山本杏(パーク24)○反則(1:57)△舟久保遥香(三井住友海上)
※いわゆる「ブリッジ反則」。
玉置桃(三井住友海上)○上四方固(0:46)△柳楽祐里(JR東日本)
渡部優花(ALSOK)○縦四方固(3:02)△髙沢眞冴(淑徳大4年)

【敗者復活戦】
舟久保遥香(三井住友海上)○GS指導2(GS7:35)△富沢佳奈(埼玉栄高3年)
柳楽祐里(JR東日本)○優勢[技有・小外刈]△髙沢眞冴(淑徳大4年)

【準決勝】
渡部優花(ALSOK)○GS内股(GS1:41)△玉置桃(三井住友海上)
山本杏(パーク24)○袈裟固(4:00)△宇髙菜絵(コマツ)

【3位決定戦】
柳楽祐里(JR東日本)○隅返(1:19)△宇髙菜絵(コマツ)
玉置桃(三井住友海上)○腕挫十字固(1:15)△舟久保遥香(三井住友海上)

【決勝】
山本杏(パーク24)○袖釣込腰(1:24)△渡部優花(ALSOK)

■ 63kg級 土井雅子がしぶとく戦い抜いて初優勝、延長戦で田代未来を破る
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準決勝、田代未来が津金恵から左内股「一本」。

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土井雅子が工藤千佳を崩上四方固で抑え込む。

(エントリー29名)

【決勝まで】

第2シードの能智亜衣美(筑波大4年)が、初戦となる2回戦で土井雅子(環太平洋大4年)との合計時間8分に及ぶ大消耗戦の末に「指導3」反則(GS4:01)で敗退。第3シードの鍋倉那美(三井住友海上)も試合中の嘔吐による棄権(3:10)で工藤千佳(JR東日本)に準々決勝で敗れ、本階級は荒れ模様のトーナメントとなった。

このなかを決勝まで勝ち上がったのは第3シード配置から大会をスタートしたリオデジャネイロ五輪代表の田代未来(コマツ)と、2回戦で能智を破った土井。

田代は絶好調。初戦となった2回戦で高橋仁美(仙台大)を小外刈「技有」優勢で下すと、準々決勝では大住有加(JR東日本)にGS延長戦での内股「技有」(GS1:05)で勝利。続く準決勝でも最大の難敵と目された津金恵(筑波大4年)を内股「一本」(2:16)に仕留めて決勝へと駒を進める。

一方ノーシードからのスタートとなった土井は富菜月(至学館大1年)との1回戦を不戦勝ちで勝ち上がると、2回戦では前述のとおり能智相手にアップセットを演じてベスト8に進出。以降は準々決勝で今年のインターハイチャンピオン嘉重春樺(東大阪大敬愛高3年)を横四方固「一本」(4:00)、準決勝で工藤を崩上四方固「一本」(2:30)と、いずれも得意の寝技で勝利して初の決勝進出を果たした。

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決勝、土井雅子が田代未来の強引な左小外刈を受け止め、浴びせ倒して「技有」を獲得。

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【決勝】

土井雅子(環太平洋大4年)○GS技有・浮落(GS3:23)△田代未来(コマツ)
土井が右、田代が左組みのケンカ四つ。地力に勝る田代が両襟で圧を掛けながら前に出続け、土井が左内股を仕掛けることで凌ぐという構図。56秒には田代の組み手を嫌った土井に「指導1」が与えられる。これ以降も田代は得意の小内刈を飛ばしつつ前進を続け、2分38秒には袖口を握り続けた咎で土井に「指導2」。3分6秒には相手の手を掴んだとして田代にも「指導1」が与えられるが、攻める田代に凌ぐ土井という構図に変化はなし。しかし、田代の側も決定打を欠き、「指導1」対「指導2」の田代リードで勝負はGS延長戦へと持ち越される。

延長戦でも田代の攻勢は変わらず、場外に押し出して、奥襟を持って潰してと一方的に攻め続ける。土井に「指導3」が与えられてもおかしくない試合展開であったが、主審は技による決着を期待したか反則を与えず試合を続行させる。両者疲労の色が見え始めたGS3分23秒、田代が引き手を抱き込まれた不十分な体勢から左小外刈を放つと、土井はこれを受け止めハンドル操作を利かせて右方向に浴びせ倒す。田代は左手を突いて堪らえようとするも、右脇を掬われる形で体側から畳に落ちて「技有」。田代の猛攻を凌ぎ続けた土井が、GS延長戦でようやく訪れたチャンスをものにして初優勝を果たした。

土井は学生カテゴリの強者だが、人材多きこの階級での頂点奪取は率直に言って驚きの結果。前日に78kg超級を制した井上あかりに続き、環太平洋大の選手育成能力の高さを示した形の戴冠劇であった。

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優勝した土井雅子。

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63kg級入賞者。左から田代未来、土井雅子、大住有加、鍋倉那美。

【入賞者】
優 勝:土井雅子(環太平洋大4年)
準優勝:田代未来(コマツ)
第三位:大住有加(JR東日本)、鍋倉那美(三井住友海上)

【グランドスラム東京日本代表選手】
土井雅子(環太平洋大4年)、田代未来(コマツ)、鍋倉那美(三井住友海上)、津金恵(筑波大4年)

土井雅子選手のコメント
「うれしいです。田代選手はすごく強かったです。GS延長戦に入っても諦めなかったので勝つことができたと思います。4年間でやってきたことを思い出したら体が動きました。ずっと背中を追ってきた梅木(真美)先輩に近づけたかなと思います。グランドスラム東京までひとつひとつ積み重ねていきたいです。」

【準々決勝】
津金恵(筑波大4年)○GS技有・袖釣込腰(GS0:53)△浦明澄(創志学園高2年)
田代未来(コマツ)○GS技有・内股(GS1:05)△大住有加(JR東日本)
土井雅子(環太平洋大4年)○横四方固(4:00)△嘉重春樺(東大阪大敬愛高3年)
工藤千佳(JR東日本)○棄権(3:10)△鍋倉那美(三井住友海上)
※嘔吐による

【敗者復活戦】
大住有加(JR東日本)○GS腕緘(GS0:38)△浦明澄(創志学園高2年)
鍋倉那美(三井住友海上)○優勢[技有・内股]△嘉重春樺(東大阪大敬愛高3年)

【準決勝】
田代未来(コマツ)○内股(2:16)△津金恵(筑波大4年)
土井雅子(環太平洋大4年)○崩上四方固(2:30)△工藤千佳(JR東日本)

【3位決定戦】
大住有加(JR東日本)○横四方固(3:42)△工藤千佳(JR東日本)
鍋倉那美(三井住友海上)○優勢[技有・小外刈]△津金恵(筑波大4年)

【決勝】
土井雅子(環太平洋大4年)○GS技有・浮落(GS3:23)△田代未来(コマツ)

取材・文:林さとる/eJudo編集部

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