PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

山場乗り越えた東海大が加速、圧勝で10度目の優勝決める・平成29年度全日本学生柔道体重別団体優勝大会男子レポート②準決勝~決勝

(2017年11月9日)

※ eJudoメルマガ版11月9日掲載記事より転載・編集しています。
山場乗り越えた東海大が加速、圧勝で10度目の優勝決める
平成29年度全日本学生柔道体重別団体優勝大会男子レポート②準決勝~決勝
■ 準決勝
eJudo Photo
次鋒戦、終了間際に宮之原誠也が大島拓海から「韓国背負い」で「技有」

eJudo Photo
分水嶺とも目された釘丸将太と佐々木健志の五将戦は引き分けとなる。

国士舘大 ②代-2 筑波大
(先)[73]倉石陽成△優勢[技有・小外刈]〇野上廉太郎
(次)[60]宮之原誠也〇優勢[技有・背負投]△大島拓海
(五)[81]釘丸将太×引分×佐々木健志
(中)[100超]山田伊織△小内刈(2:55)〇田嶋剛希
(三)[90]江畑丈夫×引分×大橋賢人
(副)[100]飯田健太郎×引分×石川竜多
(大)[66]磯田範仁〇反則[指導3](3:51)△田川兼三
(代)[100]飯田健太郎〇GS技有・内股(0:36)△石川竜多

大接戦は国士館大の勝利に終着。

盤面配置は「前で取って中を我慢、大将で締める」形をこの試合も続けたい筑波大と、一方中堅山田伊織以降大将まで4枚ポイントゲッターを並べた国士館大という構図。国士館大は前衛を手堅く戦って、後ろで突き放すシナリオを徹底したいところ。

先鋒戦はこの日の筑波大躍進の立役者の1人である野上廉太郎が倉石陽成にマッチアップ。野上は前戦までと打って変わってスロースタート、意外にも慎重な試合ぶり。2分過ぎに放った右一本背負投に倉石が食いついて積極的に寝技を展開すると以後はさらに手堅さが増し、持ち味である一蹴空気を読まぬ思い切った攻撃がなかなか出ない。しかし2分50秒、倉石が肩車に潜り込むと体捌き良くこれをかわして体を浴びせ浮落「技有」を獲得。以後もリスクを冒すことのないまま手堅く残り時間を戦い切り、この試合は野上の「技有」優勢による勝利となった。

10月の全日本学生体重別選手権決勝の再戦となる次鋒戦は双方なかなか得点の機会訪れず。しかし引き分け濃厚かと思われた残り9秒に宮之原誠也が「韓国背負い」に入り込む。技はいったん止められたかに思われたが、肩車の形で粘り直して大島拓海の体をめくり返すことに成功。主審はこれに「技有」を与え、次鋒戦は国士館大の手に落ちる。

五将戦、釘丸将太と佐々木健志による実力者対決は引き分け。3戦を消化したここまでの時点でスコアは1-1のタイ、マッチアップの時点での事前予測から導き出される収支からすれば、差が付きにくいはずの60kg級の実力者対決で明らかなポイントを挙げた国士館がやや勝るという印象。

eJudo Photo
五将戦、最重量級枠に投入された筑波大・田嶋剛希が山田伊織から小内刈「一本」

そして迎えた中堅戦の最重量級枠、国士館は山田伊織、対する筑波大は対大型選手に適性のある90kg級世界ジュニア王者田嶋剛希を送り込む、非常に野心的な作戦を採った。
かつて国士館高の同僚として全国制覇を経験している両者の対決は左相四つ。機動力に勝る田嶋は後の先の強い山田の返し技を恐れることなく打点の高い右背負投、さらに肘抜きの背負投と前後左右に猛ラッシュ。1分3秒には山田の出端を捉えて左体落を押し込み見事「技有」を獲得する。

山田は脇を差しての支釣込足に左足車と攻め返すが、自身の柔道を理解しきった田嶋の水際立った進退になかなか有効な手が打てず。田嶋は躍動、2分54秒には前技フェイントの小内刈を入れ、鮮やか「一本」獲得。

スコアはこれで2-1、盤面からはじき出される得点計算上はまだまだ試合の行方は見えないが、軽量の田嶋が大型選手を2回投げたこの絵は筑波大に単なる星取り勘定の位相を超えた勢いを与える可能性十分。試合の流れはここで筑波大に傾く。

三将戦は一発のある江畑丈夫に、どこからでも骨太の技を繰り出す勝負師・大橋賢人がマッチアップ。江畑は代名詞の大外刈ではなく、この日たびたび見せている非常に良いタイミングの内股を繰り出してチャンスを作り出し、一方の大橋は頭をつけて間合いを取っては持ち味である金棒で叩くようなしぶとい技で対抗。この試合は両者最後まで譲らず、引き分けに終わる。

そして副将戦。国士館大はこの2月に高校3年生でグランドスラム・パリを制するという偉業を成し遂げた1年生エース飯田健太郎が出動、一方の筑波大は未完の大器・石川竜多がマッチアップ。実績からすれば飯田が圧倒してよいはずの試合だが、膂力があり、かつケンカ四つという攻めにくさのある石川を相手にいま一歩踏み込み切れない。トレードマークである背筋をピンと伸ばした姿勢は健在も、33秒の内股はともに場外に出てノーポイント、2分32秒の右大腰も投げ切れず。石川のパワーを前にアクシデントを起こすことを警戒したか、おっかなびっくり試合を進めている印象が否めない。2分6秒に石川に片手の「指導」、さらに飯田が背中を掴んで石川の頭を下げさせた3分31秒には石川に場外の「指導2」が宣告されるが、あと1つの「指導」で勝利となるはずの飯田はここから詰め切れず。飯田が見せた右大外刈の牽制を石川が逆に崩し、飯田が体勢を崩したところで試合終了。この試合は引き分けに終わった。国士館大はエース飯田を投入してなお、ビハインドを詰められず。

eJudo Photo
大将戦、磯田範仁が田川兼三を小外刈で大きく崩す

eJudo Photo
代表戦、飯田健太郎は本戦と打って変わった積極柔道を展開。

eJudo Photo
飯田が石川竜多から「技有」獲得、熱戦は国士館大の勝利に終わった。

筑波大が2-1でリードして迎える大将戦は磯田範仁に田川兼三がマッチアップするという学生カテゴリ屈指の豪華カード。接戦が予想されたが、組み手、攻防の入り口に終了の形と細かい局面で磯田が常に少しづつ相手の上を行く。刻々「やれているのに手が詰まる」田川に2分34秒、袖口を握りこんだまま攻防を止めた咎で2つ目の「指導」。そして残り9秒で巴投に逃れた田川に3つ目の「指導」が宣告されて試合終了。磯田殊勲の「指導3」勝ちで最終スコアは2-2、双方ともに「技有」「一本」を取り合ったこの準決勝第1試合の決着は、代表者1名による決定戦に委ねられることになった。

引き分け試合から抽選で選ばれる注目の代表戦カードは100kg級枠に決定。エースポジションで勝負出来ることが決まった国士舘サイドからは会心の声が上がる。

代表戦は国士館大・飯田健太郎が本戦とは打って変わって積極的な試合を披露。ケンカ四つの石川竜多と背中を持ち合うと、まず右内股で激しく追う。これは返されかけて「待て」となったが怯むことなく続いて右内股、右大外刈、右大内刈と技を繋ぐと、ついに体勢を崩した石川に勝負技の右内股。ケンケンで追い、巻き込んで決めに掛かるとさしもの石川も陥落「技有」。

ここまでわずか36秒、国士館大が代表戦の末に2年連続の決勝進出を決めることとなった。

国士館は辛勝であったが、不安要素であった飯田の低調を払拭するという「ボーナス」を得ての決勝進出。グランドスラム・パリ以来これぞという試合をほとんど見せていない飯田がこのまま決勝でウルフと対峙する形になれば、あるいはこの代表戦でも煮え切れない試合を披露して低調評価を確定させてしまえば今後のキャリアに与える影響は大であったが、怪我の功名というべきか、覚悟の決まった飯田が一皮むけた試合を見せて良い形で決勝へと向かえることとなった。

惜敗の筑波大は、ここまで弾け飛ぶような勢いを見せていた1年生先鋒野上の慎重な戦いぶりが悔やまれる。チームの勝利を優先して慎重になったか、自ら勢いを殺した感あり。筑波大はここまでの素晴らしい勝ちぶりの原動力である前衛の勢いが矯められ、これがスコア的にも最後まで響いた。個人としての好材料は、代役出場からの世界ジュニア奪取で乗りに乗っている田嶋がこの大会でキャリア上の再浮上を確定的なものにしたこと。2週間後に控える講道館杯が非常に楽しみだ。

eJudo Photo
東海大と日本体育大による準決勝が開始される

eJudo Photo
東海大の三将安達健太が長井晃志から一本背負投「技有」、安達の勝利で東海大は決勝進出を決定。

東海大 5-1 日本体育大
(先)[73]立川新×引分×古賀颯人
(次)[60]永山竜樹〇背負投(1:54)△米村克麻
(五)[81]尾方寿應〇反則[指導3](2:51)△藤原崇太郎
(中)[100超]影浦心〇内股透(1:27)△松井海斗
(三)[90]安達健太〇優勢[技有・谷落]△長井晃志
(副)[100]ウルフアロン〇内股(3:01)△ハンガルオドバートル
(大)[66]浅利昌哉△反則[指導3](3:49)〇阿部一二三

東海大が日体大を圧倒。先鋒戦の引き分けを受けた次鋒永山竜樹が、腕挫十字固の形で食いついた米村克麻をものともせずそのまま投げ落として背負投「一本」で先制。五将戦は前戦の殊勲者尾方寿應が左相四つの試合巧者藤原崇太郎を相手に丁寧に試合を進め、最後は両者に「取り組まない」反則付与、これで「指導3」となった藤原を畳から弾き出す。

中堅戦はこの試合から投入された影浦心が松井海斗の技を懐深く呼び込み、松井が左大内刈から左内股に連絡するとスピードアップ、股中で回転させて文句なしの「一本」。

三将戦は安達健太が開始31秒で右一本背負投、背を丸めて受けてしまった長井晃志もろとも転がって「技有」奪取。さらに2分11秒には長井の右内股を谷落に捉えて「技有」を追加する。残り29秒に長井が意地の隅返「技有」で抵抗するもこのままタイムアップ、この安達の勝利で東海大の決勝進出が決まった。

eJudo Photo
ウルフアロンがハンガルオドバートルから内股「一本」

副将戦はウルフアロンに、前戦で壮絶な投げ合いを見せたパワーファイター・ハンガルオドバートルがマッチアップ。ハンガルの凄まじいパワーをウルフがどう料理するか、はたまたハンガルが力関係を覆す一発を見せるか非常に興味深い試合であったが、3分1秒にウルフが相手を回しこみながら左内股、巧みに作用脚に載せて鮮やか「一本」。日体大ベンチはもはや声なし。

大将戦は日体大・阿部一二三が浅利昌哉を相手に終盤ラッシュ、3分14秒に小外刈で「技有」を得る。これは確認の結果取り消しとなったが前のめりの姿勢に浅利の手が詰まり、残り36秒に防御姿勢の咎で2つ目の「指導」。あくまで勝利を追い求める阿部は出足払で前に出、浅利は組まずになんとか時間を消費せんと奮闘。残り23秒、阿部がその体を抱いて捕まえると自ら潰れる苦しい柔道。しかし阿部はもはや片手でも構わずと右背負投で前進継続、ついに審判団を動かし、合議の末残り11秒で浅利に3つ目の「指導」。日体大が意地の1点をマーク。

これで全7戦が終了。阿部の抵抗はあったものの、5-1というワンサイドゲームで東海大が決勝進出を決めることとなった。

準々決勝で天理大を相手に崖っぷちまで追い詰められた経験が生きたか、東海大はどうやらスイッチが入った様子。明らかにこれまでとは異なる気迫あふれる試合、最高の形での決勝進出となった。

■ 決勝
eJudo Photo
円陣を組み、鬨の声をあげる国士館大の面々。

eJudo Photo
東海大はこの試合で全日本学生優勝大会に続く今季「二冠」に挑む。

eJudo Photo
決勝が開始される。

開示されたオーダー順は下記。東海大は準決勝と同じ陣容で布陣、国士館大は先鋒に今大会初出場の奥大成を投入して来た。

国士館大 - 東海大
(先)[73]奥大成 - 立川新
(次)[60]宮之原誠也 - 永山竜樹
(五)[81]釘丸将太 - 尾方寿應
(中)[100超]山田伊織 - 影浦心
(三)[90]江畑丈夫 - 安達健太
(副)[100]飯田健太郎 - ウルフアロン
(大)[66]磯田範仁 - 浅利昌哉

国士館大がグランドスラム・パリ王者の1年生エース飯田健太郎を配したポジションに、東海大が世界選手権の覇者ウルフアロンをマッチアップさせた副将戦にこの決勝の様相は端的。国士館大は好選手を揃えたが、何しろ東海大のメンバーが豪華過ぎる。73kg枠、60kg4枠、100kg超級枠、100kg級枠の4ポジションは実績的に東海大の選手の方が明らかに上で、かつ国士館大が対抗し得る残りの3ポジションも東海大は過たず難敵、超えるべきハードルはいずれも相当に高い。

選手1人がそれぞれに、その使命を「手が届く範囲の最善」で計算するとすれば、国士館大としては我慢の戦いを続けるしかない。まず最初の2戦をしのいで圧倒的戦力と自らが認めているであろう東海大の焦りを誘い、チャンスを探していくしかないはず。しかしこのような平均値の戦いでは、長大な東海大の戦線に対し、あまりに取りどころが見えない。それほど東海大の戦力は分厚い。単に凌ぐのではなく、相手の、いや自軍ベンチの想像すら超えるような強気の戦い、抜き身の刀を振り回すような次元の違う出来の戦いが必要になる。

一方の東海大としては73kg枠の立川新、60kg枠の永山竜樹、100kg超枠の影浦心、そして100kg枠のウルフアロンと力関係的に取りに行くべきポジションがはっきりしている。全員がなすべき仕事をしっかり果たしていけば総体として勝利に辿り着くはずで、彼我の戦力差では明確に有利。昨年はこの巨大戦力が引き起こした一種の慢心が国士館大に付け入る隙を与えて苦杯を喫したわけだが、この苦い経験の記憶が生きるかどうか、これが唯一のハードルになるのではないだろうか。

eJudo Photo
先鋒戦、立川新が奥大成から支釣込足「一本」。

eJudo Photo

先鋒戦は国士館大・奥大成、東海大・立川新ともに左組みの相四つ。奥は横にスライドを強いながら鋭い巴投を見せるが立川立ち止まって見送り「待て」。以後も奥が左背負投、打点の高い右袖釣込腰と次々攻めるも、立川あるいは立ったまま潰し、あるいは引き落として無力化してと全く揺るがず。1分20秒過ぎから立川が二本持って圧力を掛け始め、1分45秒には切り離す行為を繰り返した奥に1つ目の「指導」。奮起した奥は抱きつきの小外刈に肩車とペースを変えての投技を見せるが立川冷静に捌いて大内刈で攻め返し、2分45秒には組み手のミスを犯した奥に2つ目の「指導」。
あと1つの「指導」で勝利が決まる立川はここでラッシュ、奥の大外刈の牽制を小外刈ではじき返して伏せさせるなど、主導権を完全に掌握。
直後、立川前に出ながら支釣込足。あたかも払釣込足のごとく出足の効いたこの技に奥完全に重心を捕まえられ、半径狭くクルリと1回転。立川巧みに両手をコントロールして最後まで決め切り、3分20秒文句なしの「一本」。「凌いで後半勝負」という国士館大の目論見早くも崩れ、東海大が1点を先制。

eJudo Photo
次鋒戦、宮之原誠也が永山竜樹の猛攻を凌ぎ切って引き分けに持ち込む。

次鋒戦は国士館大・宮之原誠也が左、東海大・永山竜樹が右組みのケンカ四つ。開始早々の永山の背負投の掛け潰れを宮之原が抑え掛かり、永山が立ち上がって逃れ「待て」。以後は手先の組み手争い、組み手の直しあいが続いて中盤まで勝負は動かず。永山1分30秒過ぎから袖を両手で掴んでの内股、さらに相手の頭を下げさせての「はたきこみ」、さらに右襟を握った左背負投と形にこだわらず攻めを積むが、宮之原が寝技に吸収して展開を渡し切らず。しかし片手の攻めが多くなった宮之原に2分10秒「指導」、さらに片手の背負投で潰れた2分42秒にも2つ目の「指導」が与えられて永山は勝利まであと一歩。両襟の内股、左の背負投と次々技を積むが宮之原辛くも陥落を免れ、なんとかタイムアップまで辿り着く。この試合は引き分けに終わった。

eJudo Photo
五将戦は中途まで釘丸将太が躍動、尾方寿應を相手に腕挫腋固を決め掛かる

eJudo Photo
尾方が奥襟を掴むと、釘丸またもや思わず首を抜き、左大外刈。

eJudo Photo
主審見逃さず、釘丸に3つ目の「指導」を宣告。

拮抗が予測された五将戦では東海大・尾方寿應が試合巧者ぶりを見せる。左相四つの釘丸将太相手に思い切り奥襟を叩くと嫌った釘丸がすぐに剥がす。さらに尾方が叩き直すと釘丸瞬間巧みに首を抜き、引き手をガッチリ確保。この攻防が大きな伏線となる。

ここから中盤までは釘丸が溌溂とした動きを見せて躍動。左大外刈を連発し、小内刈、背負投と連続攻撃、1分30秒には大外刈で尾方を崩し、腕を抱えた引込返から腕挫腋固へと繋いであわや「一本」という大チャンスを作る。

しかし序盤の攻防で見せた通り過剰に奥襟を嫌う釘丸に対し、尾方は相手の嫌がるポイントを突く勝負の鉄則を徹底。2分12秒に奥襟を叩くと釘丸思わず首を抜いてしまい、まず首抜きの「指導1」。直後尾方が引き手を得るなり再び釣り手を奥に降らせると釘丸またもや反射的に首を抜く。尾方しつこくみたび奥襟を得ると今度は釘丸思わず両手で切り離す。後者2つのアクションは主審が反則を採らなかったが、釘丸が尾方の釣り手を過剰警戒していることは傍目にも明らか。主審は2分55秒、双方にやや意外な「取り組まない」の「指導」を宣告し、累積警告は釘丸が「2」、尾方が「1」。

再開するなり尾方釣り手を一直線に釘丸の奥襟へ。釘丸は瞬間首を抜いて左大外刈を放つが、さすがに主審これは見逃さず合議を招集。静まり返った会場内、「癖だろう」「無意識にやってしまうんだ」とひな壇に居並ぶ識者たちの囁きが聞かれる中、主審は釘丸に3つ目の「指導」を宣告。

五将戦はこれで勝負あり。巧者ゆえ体に刷り込まれた釘丸の反射行動を中途で読み切り、一直線にその弱点を突き続けた尾方の試合勘が光った一番だった。3戦消化時点でスコアは早くも2-0、東海大がリードを広げる。

eJudo Photo
中堅戦、影浦心が鋭い左小内刈。

eJudo Photo
見事決まって鮮やか「一本」、これでスコアは3-0となる。

eJudo Photo
国士館大がついに反撃、三将戦は江畑丈夫が安達健太から内股「一本」

中堅戦は国士館大・山田伊織、2週間後の世界無差別選手権を控えるユニバーシアード王者・影浦心ともに左組みの相四つ。影浦は釣り手を高く持って振り、山田がこれを引き手で絞り落とすという駆け引きから試合がスタート。この攻防は影浦が相手に絞らせたまま左背負投を仕掛けて潰れ、「待て」。

続く展開、影浦が引き手で横襟を掴み、山田が引き手を襟から袖へと持ち替えたところで影浦の左小内刈が閃く。僅かに相手を引き出しながら電光石火の一撃、刈り足が鋭く山田の左踵を捉える擦過音が聞こえるなり、決めの動作で押し戻された山田の体は真裏に真っ逆さま。思わず「上手い!」と呟く声が観客席のそこそこで上がる中、主審は高々右腕を挙げて「一本」を宣告。4戦消化時点でスコアは実に3-0、国士館ベンチは色なし。

三将戦は国士館大の江畑丈夫が右、今季の学生体重別王者安達健太が左組みのケンカ四つ。江畑は釣り手の肘をねじ入れ、引き手争いを有利に運ぶ。安達が放った右一本背負投も無理やり立たせて攻防継続、自軍の不利ゆえか怒気すら漂う気合いの入った試合ぶり。30秒過ぎから江畑が右大内刈から内股、さらに再度の右内股と取り味のある技を連発。安達左背負投で展開を切らんとするが、江畑あくまで組み手を離さず攻防を継続し、主導権を完全に掌握。

そして1分26秒、江畑が引き手で袖を得るなり右内股に打って出る。大外刈が代名詞の江畑がこの日再三見せている勝負技、浮かされ、上体を引き出された安達は体を斜めに剛体となったまま一瞬江畑の脚に乗り、次いで激しく畳に落ちる。
これは文句なしの「一本」。国士館大が1点を返してスコアは3-1、東海大のリードは「2」と1つ縮まる。

eJudo Photo
副将戦、序盤は飯田健太郎が積極的に攻める

eJudo Photo
飯田の右内股をウルフアロンが捩じり返し「技有」

eJudo Photo
ウルフは飯田の右小外掛を透かし、2つ目の「技有」獲得

副将戦のエース対決は東海大がウルフアロン、残り2試合をすべて「一本」で勝ち抜くしか勝利への道が残されていない国士館は飯田健太郎が畳に上がる。

飯田が右、ウルフが左組みのケンカ四つ。前戦で吹っ切れたか、あるいは最強の敵を前にして覚悟が決まったか飯田は引き手で右襟、釣り手で奥襟を握る強気の組み手で試合をスタート。圧力を受けたウルフの頭が下がると腰を切るフェイントを一瞬入れるなりノーステップの右内股一発、ウルフが潰れてこれは「待て」。飯田はさらに両襟の右内股、これはウルフがいったんガッチリ止めて左大内刈で反撃するも膝を着いて潰れてしまい、飯田が立って背筋を伸ばした絵のまま「待て」。この時点で試合時間は48秒、序盤戦は飯田の健闘が光る。

続く展開、飯田の奥襟に対抗したウルフが背中側から巻き返して四指で後襟を掴む得意の形を作る。以降組み手の形は細かく変わりながらも一貫して釣り手の優位はウルフが取り、飯田は悪い形ながらも両襟を離さず大内刈の打ち合いに応じるという危うい攻防を続ける。

そして2分4秒に均衡敗れる。引き手で襟、釣り手で奥襟を得た飯田が右内股を放つと、その戻りに合わせてウルフがグイとハンドル操作を呉れる。時計回りに引き落とされた飯田耐え切れず転倒、ウルフの体幹の強さ際立つ「技有」。

飯田気持ちを立て直して両襟の右大外刈、さらに得意とする前技フェイントの右小外掛に打って出るがウルフは揺るがず、最小限の動きでこれを透かして上体を捩じり制す。背中を抱えた左、相手の肘を押っ付けた右と両手をしっかり効かせて体ごと押し出す巧みな制動、飯田しゃがみこんだまま一瞬たたらを踏むが、ウルフの力強い決めに耐え切れず崩落、2つ目の「技有」。

さしもの飯田もこれで意気消沈。2分59秒には頭の下がったウルフに「指導1」、残り24秒には飯田の右袖釣込腰でウルフが腹ばいとなる場面もあったが、ウルフの堅守と飯田の減速がクロスする形で得点の予感は最後まで漂わず。

終了ブザーが鳴り響くと、飯田は膝に手を当ててしばしガックリ。ウルフの「技有」優勢による勝利で東海大が4点目を獲得、この時点で優勝を決めた。

eJudo Photo
磯田範仁が得意の小外刈、一矢を報いんと浅利昌哉に迫る。

大将戦は学生王者磯田範仁、東海大の浅利昌哉ともに左組みの相四つ。激しい組み手争いにともに相手の隙を的確についての寝勝負と激戦が続くが、ともに集中力が高くなかなか得点の気配は漂わず。2分30秒に磯田が二段の左小外刈で浅利を大きく浮かす場面、また3分過ぎには浅利の左大外刈を潰した磯田が左腕を確保、激しく寝技で攻め立てるシーンなど中盤以降はこれぞという見せ場もあったが、これは残り25秒に浅利に与えられた「取り組まない」反則1つに収斂するのみで決定的な得点には至らず。最後は形上浅利が抑え掛かった寝技の攻防で終了ブザー、この試合は引き分けに終わった。

eJudo Photo
試合終了、手を挙げて観客席の声援に応える東海大の選手たち。

eJudo Photo
ウルフは全勝でチームを牽引、二冠達成で主将の大役を果たした。

東海大 4-1 国士舘大
(先)[73]立川新〇支釣込足(3:20)△奥大成
(次)[60]永山竜樹×引分×宮之原誠也
(五)[81]尾方寿應〇反則[指導3](2:57)△釘丸将太
(中)[100超]影浦心〇小内刈(0:55)△山田伊織
(三)[90]安達健太△内股(1:28)〇江畑丈夫
(副)[100]ウルフアロン〇優勢[技有・浮落]△飯田健太郎
(大)[66]浅利昌哉×引分×磯田範仁

通算スコア4-1、7戦通じてリードを継続。誰もが認める東海大の圧勝であった。昨年この決勝で国士館大の後塵を拝した東海大には、巨大戦力ゆえの「順行運転で勝利に辿り着けるはず」との無意識の緩みがあったと見受けられたが、今大会は敗戦寸前まで追い詰められた準々決勝の天理大戦を乗り越え、その教訓が選手の骨身に染みていた。相対戦力で勝る73kg級から試合がスタートする配列順の妙もあり、立ち位置の差はさらに広がったという印象。昨年極めて高い集中力で東海大の戦力を分断、逆転勝ちを果たした国士館大だが、こうなっては付け入る隙がなかった。国士館大は、江畑丈夫が遂に大外刈に次ぐハイレベルの大技を見せたこと、敗れたりとはいえ飯田健太郎がむしろ強敵ウルフ相手にこの日最も良い試合を披露したことなど個々に好材料はあったが、結果的には完敗と言っていいだろう。

というわけで、今大会の重心は明らかに準々決勝にあった。上水研一朗監督が「うちに足りない気迫、必死に戦うことの大事さを天理大が身をもって示してくれた」と語った通り、巨大戦力の東海大がどうしても肌身で得られないもの、最後に残った1ピースが敗戦寸前まで追い詰められたこの試合で遂に埋められたということだろう。育成といういわば「作り」に成功した東海大が、勝負という「決め」にきちんと到達した大会であり、組織論、育成論、技術論、勝負論とあるべき要素を高い水準で揃えた同大の強化機関としてのレベルの高さを改めて示した大会であったと言える。戦力、方法論ともに頭一つ明らかに抜け出している同大に他チームがどのように挑むのか、来年度もこれが大学柔道界を貫く軸となることは間違いない。

入賞者と準々決勝以降の結果、上水研一朗監督のコメントは下記。

eJudo Photo
優勝の東海大学

【入賞者】

優 勝:東海大学
準優勝:国士舘大学
第三位:日本体育大学、筑波大学

※東海大学は2年ぶり10回目の優勝

優秀選手賞:ウルフアロン、影浦心(東海大)、江畑丈夫、飯田健太郎(国士舘大)、阿部一二三(日本体育大)、野上廉太郎(筑波大)

東海大・上水研一朗監督のコメント
「うちの弱点は『必死さ』(の欠如)。力があるから勝てるという安易な発想がいかに危ういものかということ、本当に勝利するためには何が足りないかということを天理大が身をもって教えてくれました。試合中は負ける危機感というより『このまま負けたら、また一つ大きなチームの課題が出来ることになる』と観察していたのですが、必死に盛り返したので、チームに思ったより力があるなと驚かされました。天理大は必死でした。あの気迫が我々に一番足りないものだと、選手たちがあそこで気づいてくれましたね。でなければ、準決勝、あれだけの選手を揃えた日体大相手にああいう大差では勝てないし、長いインターバルを挟んでの決勝という難しい状況で最初からあんなラッシュは出来ない。大事なことを教えてくれた天理大の学生たちに感謝します。(-太田彪雅選手を途中で替えましたが?)我慢して使っていましたが、ああいう試合をしたらその後はなかなか出せないですね。ユニバーシアードが終わって気持ちが抜けていたと思いますし、団体の難しさを知っている影浦やウルフとはまだ差があります。この屈辱を胸に一段大きくなってくれると思います。(-ウルフ選手については?)チームの勝利を最優先する柔道をしていましたが、飯田君との試合は勝ちにこだわっていましたね。(-今年のチームの総括と、来年以降の課題をお願いします)2冠は本当に難しい。ピークは長く続かない。(優勝大会で)1回作ると、落とす時期も必要になってくるのですが、そこから上げなおすのは至難の業です。その中で軽量級が甘かったりレギュラーが試合やケガで抜けたりする難しい状況があったのですが、今年はウルフが『尼崎で勝とう』と口に出してしっかり引っ張ってくれました。ウルフは、良い主将でした。今後の課題としては『闘将を作ること』、これを痛感しています。うちのチームは例年沈着冷静な選手はいるのですが、団体戦には闘将が必要です。(-具体的な候補は?)OBの阪本健介に『阪本二世を作れ」とお願いしていますから、彼がやってくれるでしょう(笑)。今日はありがとうございました。』

【準々決勝】

国士舘大 5-0 東洋大
筑波大 3-2 明治大
東海大 ②代-2 天理大
日本体育大 3-2 日本大

【準決勝】

東海大 5-1 日本体育大
国士舘大 ②代-2 筑波大

【決勝】

東海大 4-1 国士舘大

取材・文:古田英毅

※ eJudoメルマガ版11月9日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る




supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.