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【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第41回

(2017年11月6日)

※ eJudoメルマガ版11月6日掲載記事より転載・編集しています。
【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第41回
柔道真剣勝負の秘訣は一言にしてつくすことが出来る。ただ、死を決して一気に戦うにある。
出典:「名人達人秘伝公開」 キング2巻6号 大正15年(1926)6月
(『嘉納治五郎大系』未収録)

東京オリンピックをテーマとした2019年のNHK大河ドラマ「いだてん」。嘉納治五郎師範を誰が演じるのか楽しみにしていましたが、先日、役所広司氏であることが発表されました。

役所広司氏が名優として数多くの作品を残していることは周知のことですが、その中に、同じNHKの新大型時代劇「宮本武蔵」があります。この作品で主人公・宮本武蔵を演じた役所氏は、今回の「いだてん」で、近世・近代を代表する武道家を演じた貴重な俳優となるでしょう。

さて、宮本武蔵といえば『五輪書』が有名ですが、その中に<構えは5つに分類することが出来るが、全て人を切るためのものである>という一節があります。<人を切るため>等とサラッと書けるところに、戦国時代末期に生を受け、60回を超える勝負を行い-その中には、命をかけた勝負もあったでしょう-、勝ち続けた人間の凄みが伝わってきます。

師範と同じ万延元年(1860)に生まれた武道家がいます。合気道の源流と言われる大東流の武田惣角翁です。師範が明治以降の近代日本における、いわゆるエリート層の人間であったのに対して、武田翁は在野でその一生を終えました。弟子は数多くいたようですが、道場を構え、長期的な教授を行うなどせず、流派の組織的な普及も望んでいなかったようです。そのため存命中、その名前・流派も知る人ぞ知る存在でした。

この武田翁は実戦家であり、他流派の人との立ち合いのエピソードも残っています。また、実際に人を殺めたこともあるようです。
 
これに対して、嘉納師範は試合をしたという記録自体、殆どありません。本人の回顧によると柔術修行時代に試合をする機会があったようです。しかし、宮本武蔵や武田惣角翁のような命のかかった勝負についての記述・エピソードは残っていません。「柔術」と「柔道」の対決で有名な戸塚派揚心流との試合において、最後は弟子同士ではなく、戸塚派の長と嘉納師範の直接の勝負で両流派の決着をつける提案もなされたようですが、結局、回避されたようです。

そんな嘉納師範の残した今回のことば。

言葉自体は難しくないでしょう。真剣勝負、すなわち命をかけた勝負の秘訣。それは死を覚悟して、一気に戦うこと・・・。

現在の柔道、あるいは嘉納治五郎師範のイメージからはかけ離れたものです。また、この様な発言は、他の史料ではあまり見られません。師範本人が真剣勝負をすることなど、社会的立場、キャリアから許されなかったでしょうし、必要もなかったと思われます。恐らく、そのような経験がないまま、生涯を終えたことでしょう。

ただ、講道館柔道の目的を「体育」「勝負」「修心」とし、真剣勝負のための修行が、その目的の1つであると、生涯語り続けた師範としては、実戦における心掛けについても、語らざるを得ないこともあったはずです。
その胸中はうかがいしれません。ですが、複雑なものがあったのではないでしょうか。


著者:元 敏季(ハジメ・トシキ)
1975年生まれ。柔道は中学校から始め、大学までは競技を中心に行うが、卒業論文を機に柔道の文化的側面に関心を持ち、大学院へ進学。凡そ10年、大学院・研究機関に所属するも、研究とは異なる分野の仕事に就き現在に至る。ライフワークとして嘉納治五郎に関する史料を蒐集・研究し、その成果を柔道振興のため発信しようとしている。

※ eJudoメルマガ版11月6日掲載記事より転載・編集しています。

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