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平成29年度全日本学生柔道体重別選手権大会・第1日女子4階級レポート

(2017年10月15日)

※ eJudoメルマガ版10月15日掲載記事より転載・編集しています。
平成29年度全日本学生柔道体重別選手権大会・第1日女子4階級レポート
(63kg級、70kg級、78kg級、78kg超級)
■ 63kg級・足技冴えた能智亜衣美が戴冠、オール「一本」で初優勝を飾る
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63kg級2回戦、能智亜衣美が幸田奈々を左小外刈で攻める

(エントリー32名)

【決勝まで】

昨年の優勝者である津金恵(筑波大4年)が同日に行われたグランプリ・ザグレブ大会に出場するため本大会を欠場。昨年まで2年連続で津金と決勝を争った一昨年の覇者・渡邊聖未(早稲田大3年)もベスト8で関東ブロック王者である佐藤史織(山梨学院大3年)に背負投「技有」優勢で敗れてトーナメントから姿を消した。

決勝へと勝ち上がったのは準々決勝で渡邊を破った佐藤と今年の選抜体重別選手権準優勝者であり8月のユニバーシアードでも優勝を飾っている能智亜衣美(筑波大4年)。

ノーシードから大会をスタートした佐藤は強敵との連戦を勝ち抜いての決勝進出。1回戦で神林希衣(高岡法科大4年)を横四方固「一本」(2:41)で下すと、2回戦では昨年の高校王者である三浦裕香理(環太平洋大1年)にGS延長戦での「指導3」反則(GS3:39)で勝利。勝負どころとなった準決勝の渡邊戦を前述のとおり背負投「技有」優勢で勝ち抜くと、米澤夏帆(龍谷大3年)とマッチアップした準決勝では試合時間7分30秒に及ぶ消耗戦をGS延長戦の「指導2」(GS3:30)で制して決勝の畳へと辿り着いた。

一方の能智は1回戦で浅井萌加(皇學館大3年)に横四方固「一本」(2:56)で勝利すると、2回戦で幸田奈々(帝京科学大2年)に「指導3」反則(GS2:28)、準々決勝で飯田蒼生(東京学芸大4年)に崩袈裟固「一本」(3:10)と「一本」連発でベスト4に進出。準決勝でも土井雅子(環太平洋大4年)を切れ味鋭い小外刈「一本」(0:30)に仕留め、全試合「一本」(反則を含む)での決勝進出となった。

4月の選抜体重別選手権において計量失格となり強化指定を取り消された嶺井美穂(桐蔭横浜大)は、今大会に推薦枠でエントリーされていたものの出場を取り消した。嶺井は前述の選抜体重別以来大会に姿を見せておらず、どのタイミングで試合に復帰するのか今後の動向が注目される。

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63kg級決勝、能智亜衣美が左内股で佐藤史織を攻める。

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延長戦に入ると能智は佐藤の背中を持って強気の組み手を展開。

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能智の圧に屈する形で佐藤が畳を割り「指導3」の反則で試合は決着となる。

【決勝】
能智亜衣美(筑波大4年)○GS反則[指導3](GS2:10)△佐藤史織(山梨学院大3年)

決勝は能智が左、佐藤が右組みのケンカ四つ。激しい引き手争いから試合が始まり、50秒に佐藤のみに片手の咎で「指導1」が与えられる。直後の1分8秒、奮起した佐藤が組み際に右方向への「韓国背負い」で能智の懐深くまで潜り込み場外まで走って大きく崩すが、1分32秒には反対に能智が左小外刈で佐藤を畳に這わせる場面を作って両者一歩も譲らず。ここから再び引き手争いが続き、1分57秒双方に「指導」。佐藤は試合時間を半分残して累積の反則が「2」となり、早くも後がなくなってしまう。双方足を飛ばしながら佐藤が右背負投、能智が左小外刈と左内股でそれぞれ攻め合う展開が続き、残り50秒には能智が左内股。この技を佐藤は落ち着いて捌くが、技を仕掛けた際に佐藤と能智の顔が接触したようで以降能智は度々額を痛がる素振りを見せる。これ以降大きな動きはなく、どちらもポイントを奪うことができないまま本戦が終了。試合は「指導1」対「指導2」の能智リードでGS延長戦へともつれ込む。

延長戦に入ってからも双方足を飛ばしながら引き手を探り合う展開が続くが、GS1分を過ぎた辺りから決着を意識した能智が釣り手で相手の背中深くを持って圧を掛けての前進を開始。佐藤は右背負投に掛け潰れることでこれを凌ごうとするも、能智は怯むことなく前進圧力を継続する。GS2分過ぎ、能智が奥襟を得て佐藤を場外際まで押し込むと、これを嫌った佐藤は動きの中で自ら場外に出てしまうミスを犯す。主審はこれを見逃さず、直後のGS2分10秒、佐藤に対して故意に場外に出た咎による「指導」を宣告。結果、「指導3」による佐藤の反則負けで試合終了。能智が全試合で「一本」(反則を含む)を奪う圧倒的な内容でみごと優勝を飾った。この日の能智は得意の足技を効果的に用いて常に優位を確保、昨年までと比べて一段安定感を増した逞しい戦いぶりを披露した。

一方の佐藤はしぶとい組み手と徹底した先手攻撃による「指導」奪取でたびたび強敵を陥れてきた曲者だが、片手、「取り組まない」、そして場外と3つの反則を与えられた決勝は非常に厳しい内容。本格派に有利な組み合っての投げを奨励する新ルールの下、結果にこだわり続けてきた粘戦派がひとつ壁に当たったという印象だった。

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63kg級優勝の能智亜衣美。

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63kg級上位入賞者。左から能智亜衣美、佐藤史織、米澤夏帆、土井雅子。

【入賞者】
優 勝:能智亜衣美(筑波大4年)
準優勝:佐藤史織(山梨学院大3年)
第三位:米澤夏帆(龍谷大3年)、土井雅子(環太平洋大4年)

能智亜衣美選手のコメント
「学生の大会で決勝に残ったのは初めて。挑戦者のつもりで1試合1試合しっかり戦いました。内容は最悪、思っていた柔道ではなかったし、対戦相手に対策されているなと感じる場面は多かったですが、これは自分が弱いから、講道館杯に勝って、グランドスラム東京に繋げていきたいと思います」

【準々決勝】
佐藤史織(山梨学院大3年)○優勢[技有・背負投]△渡邊聖未(早稲田大3年)
米澤夏帆(龍谷大3年)○横四方固(2:35)△高橋仁美(仙台大2年)
能智亜衣美(筑波大4年)○崩袈裟固(3:10)△飯田蒼生(東京学芸大4年)
土井雅子(環太平洋大4年)○優勢[技有・内股]△瀬戸口栞南(山梨学院大1年)

【準決勝】
佐藤史織○GS指導2(GS3:30)△米澤夏帆
能智亜衣美○小外刈(0:30)△土井雅子

【決勝】
能智亜衣美○GS反則[指導3](GS2:10)△佐藤史織

■ 70kg級・新添左季が別次元の強さを見せて初優勝、決勝は田中志歩から豪快「一本」
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70kg級準々決勝、田中志歩が佐俣優衣から横四方固「一本」。

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準々決勝、新添左季が牧田朱加から左内股「技有」

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準決勝、新添左季が青柳麗美を左大外刈「一本」で一蹴。

(エントリー33名)

【決勝まで】

非常に選手層の厚い本階級。昨年の準優勝者である佐俣優衣(帝京大4年)は準々決勝で今年の全日本ジュニアで2位を獲得している田中志歩(環太平洋大1年)に横四方固「一本」(2:08)で苦杯を喫し、昨年の講道館杯3位である中江美裕(筑波大2年)も3回戦で池絵梨菜(国士舘大3年)に背負投「技有」優勢で敗れた。このレベルの高いトーナメントを決勝まで勝ち進んだのは佐俣を破った田中と、昨年のグランドスラム東京大会を制して今年のブダペスト世界選手権団体戦代表も務めた大本命・新添左季(山梨学院大3年)の2名。

田中は2回戦で杉村和加菜(星槎道都大3年)を僅か39秒の三角絞「一本」(0:39)で破って初戦を突破すると、3回戦でも岡史生(福岡大4年)を大外刈「一本」(0:41)で一蹴。山場となった佐俣との準々決勝も前述のとおり横四方固「一本」で勝ち抜き、準決勝では前戦で池に勝利した近畿ブロック王者の小林幸奈(龍谷大2年)を得意の小外刈「一本」(2:30)で撃破。オール一本勝ちの素晴らしい内容で決勝進出を決めた。

一方の新添も好内容での決勝進出。初戦となった2回戦で市川香代子(仙台大4年)に内股「技有」優勢、3回戦で西村満利江(帝京大1年)に内股「一本」(2:24)、準々決勝で池本彩花(武庫川女子大3年)に内股「技有」と3試合連続で得意の内股を決めてベスト4入りを果たすと、準決勝では今年の全日本ジュニア王者である青柳麗美(環太平洋大2年)をまったく寄せ付けず大外刈「一本」(1:10)で一蹴。前評判に違わぬ圧倒的な強さで決勝へと駒を進めた。

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70kg級決勝、田中志歩が新添左季を引き込んで抑え込みを狙う。

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新添が左内股で田中を攻める

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内股「一本」で試合は決着。

【決勝】
新添左季(山梨学院大3年)○内股(3:38)△田中志歩(環太平洋大1年)

決勝は左相四つ。新添はいつもどおり鷹揚な構えで無造作に組み手をスタート。対する田中は相手に十分な釣り手を持たせてはならぬと徹底して横変形に構え、新添の釣り手を噛み殺したまま試合を進める。田中は左大外刈に左大内刈と連続で技を仕掛けるが新添は動じず、試合の流れが田中に傾きかけると強引に左内股を仕掛けて展開をリセット。田中は寝勝負でも積極的な攻めを見せるが、新添はしっかり防御してこれを凌ぎ切る。

2分30秒、新添の奥襟を嫌って首を抜いた田中に「指導1」。この頃から地力に勝る新添が組み手で優位に立つ時間帯が増え始める。本戦終了間際の3分38秒、田中が組み際に抱き付きの左大内刈を仕掛けるが、新添はこれを受け止めると、足を外しながら腰を切って左内股に連絡。投げを打ちつつ引き手を脇から袖に持ち替えて万全の形を作り、最後まで回し切って「一本」。この一撃で新添の初優勝が決まった。

この日の勝ち上がりを見る限り新添の強さは既に学生カテゴリでは敵なしという印象。とはいえ、新添の戦いぶりからは相手に持ちたいように持たせる組み手や内股一辺倒の組み立てなど「それでも勝ててしまうから」放置されている粗さも多く見受けられた。コンディションも万全ではなく、戦いぶりに難がありながら、それでも勝ててしまう絶対値の高さがもし今後の新添の成長を阻むとしたらこれは本末転倒ということになりかねない。素材としての高いポテンシャルを引き出すためにも今後はシニアで経験を積んで、より厳しい柔道を身に着けてもらいたいところ。この人個人の成長のみを考えれば、学生カテゴリでリソースを消費するのではなく、徹底した海外派遣策といった手のほうが向いているのではと思わせる内容だった。

最後に苦言を呈する形になってしまったが、一方的な内容で優勝を果たしてもなお多くの伸びしろを感じさせる、新添の良い意味で「粗い」圧勝劇であった。

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70kg級優勝の新添左季。

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70kg級上位入賞者。左から新添左季、田中志歩、小林幸奈、青柳麗美。

【入賞者】
優 勝:新添左季(山梨学院大3年)
準優勝:田中志歩(環太平洋大1年)
第三位:小林幸奈(龍谷大2年)、青柳麗美(環太平洋大2年)

新添左季選手のコメント
「今年に入ってから結果を出せていなかったので、優勝することができてホッとしています。田中選手は力強い選手、優勝したいという気持ちで戦いました。(-内股で優勝を決めたことについて?)うれしかったです。狙っていたのではなく、体が勝手に掛けた技です。今日は自分の柔道が最後まで出来ませんでした。組み手から研究されていて、厳しい戦いでした。(-世界選手権で新井千鶴選手が優勝したことについて?)悔しい気持ちもあるけど、素直にすごいなと思いました。目標は来年の世界選手権で個人戦の代表で出て、優勝することです」

【準々決勝】
田中志歩(環太平洋大1年)○横四方固(2:08)△佐俣優依(帝京大4年)
小林幸奈(龍谷大2年)○GS払腰(GS1:22)△池絵梨菜(国士舘大3年)
青柳麗美(環太平洋大2年)○内股(0:37)△飯島彩加(東京学芸大3年)
新添左季(山梨学院大3年)○優勢[技有・内股]△池本彩花(武庫川女子大3年)

【準決勝】
田中志歩○小外掛(2:30)△小林幸奈
新添左季○大外刈(1:10)△青柳麗美

【決勝】
新添左季○内股(3:38)△田中志歩

■ 78kg級・泉真生が優勝、圧倒的なパワーをテコに初の栄冠勝ち取る
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78kg級準決勝、泉真生が奥襟を得て鈴木伊織を攻める。

【決勝まで】

今年の選抜体重別選手権で3位を獲得した泉真生(山梨学院大3年)と昨年の本大会準優勝者である鈴木伊織(環太平洋大2年)が実力的に頭ひとつ抜けていると目されるトーナメント。両者が激突した右側の山の準決勝が本階級のハイライトとなった。この試合は泉のパワーを鈴木が得意の袖釣込腰と振り向きの大内刈で逸らし続ける形でGS延長戦までもつれ込むが、最終的には泉の圧が勝って「指導2」(GS0:43)で決着。決勝には混戦となった左側の山を勝ち抜いたダークホースの友清あかり(環太平洋大4年)と泉が勝ち上がることとなった。

ノーシードからのスタートとなった友清は1回戦で清水美緒(金沢学院大2年)に大内刈「技有」優勢で勝利すると、2回戦では早くも昨年の優勝者で第1シードの山中満紀(山梨学院大4年)と激突。昨年は1回戦で対戦して敗れている山中に肩固「一本」(2:52)でリベンジを果たしてベスト8入りを決める。大一番を制した友清は勢いそのままに準々決勝で坂口今日香(帝京大2年)に小外刈「技有」による優勢で勝利、準決勝でも前戦で昨年3位の山口凌歌(桐蔭横浜大3年)を破っている堀歩未(鹿屋体育大4年)にGS延長戦で豪快な内股「一本」(GS1:51)を決めて勝利を収め、みごと自身初となる決勝の舞台へと辿り着いた。

一方の泉は1回戦で楠麻衣(中京大2年)に後袈裟固「一本」(1:01)、2回戦で黒坂麻樹(金沢学院大2年)に縦四方固「一本」(1:22)と序盤戦をいずれも早期の「一本」で勝利してベスト8入り。ここからはGS延長戦にもつれ込むタフな試合が2試合続いたが、準決勝の佐藤杏香(東海大3年)戦を小外刈「一本」(GS1:37)、準決勝の鈴木戦を前述のとおり「指導2」と地力の高さをテコに勝ち上がり、決勝へと駒を進めた。

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78kg級決勝、泉真生が友清あかりを右内股で大きく崩す。

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泉の奥襟を持っての激しい攻めに友清は堪らず首を抜くミスを犯してしまう

【決勝】
泉真生(山梨学院大3年)○反則[指導3](2:15)△友清あかり(環太平洋大4年)

決勝は右相四つ。地力に勝る泉が一方的に奥襟を持って優勢に組み手を進める。対する友清は奥襟を叩き返してなんとか横変形の形に持ち込もうとするが、泉はこれを許さず。泉優位での膠着状態が続き、42秒に両者に「指導1」が与えられる。以降も奥襟を持って腰を切りながら圧を掛ける泉と、巻き込み技を仕掛けることでこれを凌ぐ友清という構図で試合が進行。1分30秒には泉の圧に耐えきれずに畳を割った友清に故意に場外に出た咎で「指導2」が追加される。あと「指導」1つさえ奪えば勝利が確定する泉はここから一段ペースをアップ。2分19秒には右内股で友清を大きく崩して畳に這わせる場面を作り出す。続く展開、泉が頭越しに奥襟を持って腰を切りながら追い込むと、体勢に窮した友清は堪らず首を抜いてしまい、映像による確認の結果2分15秒友清に首抜きによる「指導」が宣告される。結果、「指導3」反則により泉が優勝を決めることとなった。泉は階級随一のパワーをテコに全試合で一方的な柔道を展開、ほとんど相手に自分の形を作らせないまま圧勝で優勝を飾った。

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78kg級優勝の泉真生。

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78kg級上位入賞者。左から泉真生、友清あかり、堀歩未、鈴木伊織。

【入賞者】
優 勝:泉真生(山梨学院大3年)
準優勝:友清あかり(環太平洋大4年)
第三位:堀歩未(鹿屋体育大4年)、鈴木伊織(環太平洋大2年)

泉真生選手のコメント
「優勝は狙っていました。うれしいです。準決勝、決勝と『指導』での勝利だったことが反省点。もっと技を増やしていきたい。ユニバーシアードでは下がって負けてしまったので、気持ちで負けないように前に出ようと自分に言い聞かせて戦いました。次の目標は講道館杯の優勝。国際大会に出て、最後はオリンピックに出たいです」

【準々決勝】
友清あかり(環太平洋大4年)○優勢[技有・小外刈]△坂口今日香(帝京大2年)
堀歩未(鹿屋体育大4年)○GS小外刈(GS1:45)△山口凌歌(桐蔭横浜大3年)
鈴木伊織(環太平洋大2年)○横四方固(1:22)△東加珠(大阪体育大1年)
泉真生(山梨学院大3年)○GS小外刈(GS1:37)△佐藤杏香(東海大3年)

【準決勝】
友清あかり○内股(GS1:13)△堀歩未
泉真生○GS指導2(GS0:43)△鈴木伊織

【決勝】
泉真生○反則[指導3](2:15)△友清あかり

■ 78kg超級・井上あかりが決勝で月波光貴穂を破って初優勝を果たす
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78kg超級準決勝、月波光貴穂が粂田晴乃から左払巻込「技有」。

(エントリー21名)

【決勝まで】

勝ち上がりが有力視されていた月波光貴穂(帝京大4年)、粂田晴乃(筑波大1年)、井上舞子(淑徳大3年)、井上あかり(環太平洋大3年)の4人が順当にベスト4に進出。このなかから昨年の準優勝者である月波とユニバーシアード王者の井上あかりが決勝へと勝ち上がった。

昨年の準優勝者である月波は1回戦で荒巻有可里(環太平洋大4年)にGS延長戦での払巻込「技有」(GS2:10)、準々決勝で岡田実咲(山梨学院大2年)に払巻込「技有」優勢と、体格を生かした巻き込み技で勝利を重ねてベスト4入り。準決勝でも今年の全日本ジュニア2位で関東ブロック王者でもある粂田を払巻込「技有」からの崩袈裟固「一本」(3:40)で退けて2年連続の決勝の畳へと歩を進めた。

一方逆側の山を勝ち上がった井上は初戦から蓮尾沙樹(山梨学院大3年)と試合時間8分30秒に及ぶ消耗戦を戦うという難しいな滑り出し。それでもこの試合に「指導3」の反則(GS4:30)で勝利すると、以降は2回戦で佐藤美裕(早稲田大2年)を縦四方固「一本」(1:40)、準々決勝で渡辺心実(金沢学院大2年)を「指導3」の反則(3:59)と調子を上げながらベスト4進出。井上舞子とマッチアップした準決勝も片手絞(いわゆる「腰絞め」)「一本」(3:02)で制し、結果として全試合一本勝ち(反則を含む)での決勝進出となった。

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78kg超級決勝、井上あかりが月波光貴穂に横返しからの抑え込みを狙う。

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井上が月波をいなして畳に這わせる。

【決勝】
井上あかり(環太平洋大3年)○GS指導2(GS1:20)△月波光貴穂(帝京大4年)

月波が左、井上が右組みのケンカ四つ。月波は釣り手を畳んで組み手を展開、下から持つことで力の伝わる形を確保しようとし続けるが、井上はこれを外側からいなすように引き落としては寝技で攻める。引き手争いが続いての48秒、月波のみに組み合わない咎で「指導1」。これ以降は井上が釣り手を突いて、あるいは組み際にいなしてと組み手で優位に立ち、危機を感じた月波が強引な払巻込で掛け潰れては展開を切るという構図で試合が進行。ポイントの変動がないまま、井上の「指導1」リードで試合はGS延長戦へともつれ込む。

延長戦に入っても試合の様相は変わらず、展開を変えるようなチャレンジも特段見受けられず。試合は眼前の明らかな膠着と以後の展開発展の可能性の薄さを的確に見て取った審判団が、GS1分20秒に両者に消極的の「指導」を与えて決着を迎えることとなる。結果、組み手巧みに月波を完封した井上がGS延長戦での「指導2」により優勝を果たすこととなった。

決勝は両者ともにケンカ四つの相手を投げる具体的な手段を欠き、特に月波に関しては体格任せの払巻込を連発するのみで状況を打開する気配がまったく感じられなかった。この傾向は女子超級全体に当てはまることであるが、状況に即した体格を生かした技術、例えば担ぎ技や密着しての捨身技を保有していればもっと早く決着するのではないかと見ていてもどかしくなる試合ぶりであった。国際大会において勝利を使命づけられた、そして決して稽古環境に恵まれているとは言えない海外選手たちがキャリアを重ねるとともに技種や戦いの手立てを増し、結果、(体格を生かせてかつ獲得への技術的ハードルが比較的低く、しかも重量級の攻防において効果的な状況が頻発する)捨身技の使い手が増加しつつあるという事情と引き比べると寂しい限り。月波に限らず、中高時代に本格派志向の技を身に着けたはいいが、以後武器を増すことなく年齢を重ね、そして単に環境を変えるのみで大きな技術的上積みを得ることないままキャリアをすぼませていく様は、もはや日本の女子超級選手の悪しき典型ルートと考えられても仕方がないのではかろうか。伸びしろを残して育てられながら、その空白を埋めるための具体的な思考と行動、情熱に欠けたまま、高校時代をハイライトにして単にキャリアだけを進めていく。超級選手にもっとも端的な女子選手のこの低調ルートを今後も是とするのか。特に大学カテゴリの選手と指導者には一考を促したい。

優勝した井上は月波をよく研究しており徹底した組み手管理で勝利を収めたが、今後シニアで活躍するためにはもう一段の積み上げ、具体的には大型選手を投げるための技を練ることが必要となるだろう。一層の鍛錬に期待したい。

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78kg超級優勝の井上あかり。

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78kg超級上位入賞者。左から井上あかり、月波光貴穂、粂田晴乃、井上舞子。

【入賞者】
優 勝:井上あかり(環太平洋大3年)
準優勝:月波光貴穂(帝京大4年)
第三位:粂田晴乃(筑波大1年)、井上舞子(淑徳大3年)

井上あかり選手のコメント
「うれしいです。初戦からあまり動きが良くなかったのですが、日々の練習でしっかりやりこんできたことが最後に生きたと思います。高校時代から少しは伸びているなと実感できました。月波選手は強かったです。組み手と相手を潰してからの寝技を意識して戦いました。優勝は初めてなのでうれしいです。今後は粘り強い攻める柔道をしていきたいです。まだ世界とかは考えられないですが、まずは体重別団体に向けて頑張ります。」

【準々決勝】
月波光貴穂(帝京大4年)○優勢[技有・払巻込]△岡田実咲(山梨学院大2年)
粂田晴乃(筑波大1年)○反則[指導3](3:51)△斉藤芽生(国士舘大2年)
井上舞子(淑徳大3年)○GS内股(GS0:59)△浜未悠(環太平洋大2年)
井上あかり(環太平洋大3年)○反則[指導3](3:59)△渡辺心実(金沢学院大2年)

【準決勝】
月波光貴穂○崩袈裟固(3:40)△粂田晴乃
井上あかり○片手絞(3:02)△井上舞子

【決勝】
井上あかり○GS指導2(GS1:20)△月波光貴穂

取材・文:林さとる/古田英毅

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