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【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第39回

(2017年10月9日)

※ eJudoメルマガ版10月9日掲載記事より転載・編集しています。
【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第39回
最も有効に国語を教えるには、便利な国字を有することが必要である。
出典:「序」『小学ローマ字新読本』 大正13年(1924)1月
(『嘉納治五郎大系』未収録)
 
公共交通機関を利用すると、駅名などで目にするローマ字。漢字と併せて表記することにより、日本語を知らない人たちにも名称が分かるようになっています。
これから2020年の東京オリンピックが近づくにつれて、目にする機会がさらに増えると思われるローマ字。そんなローマ字と嘉納師範に関係があると言ったら・・・それはどんな関係でしょうか。

嘉納師範が講道館柔道創始者以外にいくつもの顔を持つことは、すでにご存じのことと思いますが、中でも、よく知られているのが「教育家」でしょう。前回も触れましたが、教員養成系学校の最高峰である東京高等師範学校の校長を長年つとめた師範は、体育・スポーツに限らない、教育分野全般について意見や影響力を持っていました。
 
そんな意見の1つが、今回の「ひとこと」です。

日本人は「ひらがな」「カタカナ」「漢字」の3種類の文字を学習します。これは師範の時代も今も変わりありません。同じ音を表すのに「ひらがな」「カタカナ」を学び、さらに、かなりの量の漢字を学習します(現在は義務教育で2136文字)。みなさん、あまり気にせずに使っていますが、これはすごいことだと思いませんか?

学習の基礎である<文字を学ぶ>。ここに多くの時間を費やすことは師範にとって非効率なものであり、西洋諸国の教育に対して劣る点でした。同じ量の内容を学ぶにも、文字学習に取られる時間の分、不利になるということです。

弱肉強食の帝国主義の中、いかにして日本の位置を優位にするか。教育を全ての根幹と考えていた師範にとって<学習の効率>は重要な問題でした。
 そこで長時間かけずに学べる便利な国字の必要性を説いたわけです。師範の回想によると自ら新字作成を試みたり、エスペラント(※)を研究したりしたようですが、結果として落ち着いたのが「ローマ字」でした。

師範はローマ字が普及したら<特別な書物以外は、ローマ字に書き直されるので、一部の特殊な書物を読む人だけ漢字や仮名を読めれば良いことになる>と言っています。
ここでの<特殊な書物>は現在まで連なる漢字や仮名で記された出版物や書類、文書のことで、そういった過去の史料(ローマ字が普及してしまえば、現在の日本語文化は過去の物になるわけですから)を読む特殊な人、例えば研究者が読めれば良いということでしょう。今の感覚で言うと草書のような扱いでしょうか。

日本文化の根底とも言える文字に対する、このドラスティックな思考。
「精力善用」という「心身の力を<最も有効に>使用する」思想が講道館柔道にとどまらないものであることは、たびたび紹介していますが、今回の師範の「ひとこと」も、一連の流れと言えるでしょう。

※今回の「ひとこと」は田中・石川両氏による「嘉納治五郎の言説に関する史料目録(2)」で紹介されている史料から引用しました。
※万国の共通語となることを意図した人工言語。

著者:元 敏季(ハジメ・トシキ)
1975年生まれ。柔道は中学校から始め、大学までは競技を中心に行うが、卒業論文を機に柔道の文化的側面に関心を持ち、大学院へ進学。凡そ10年、大学院・研究機関に所属するも、研究とは異なる分野の仕事に就き現在に至る。ライフワークとして嘉納治五郎に関する史料を蒐集・研究し、その成果を柔道振興のため発信しようとしている。

※ eJudoメルマガ版10月9日掲載記事より転載・編集しています。

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