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平成29年度全日本ジュニア柔道体重別選手権第1日女子4階級レポート

(2017年9月23日)

※ eJudoメルマガ版9月23日掲載記事より転載・編集しています。
平成29年度全日本ジュニア柔道体重別選手権第1日女子4階級(48kg級、52kg級、57kg級、63kg級)レポート
■ 44kg級・久保井仁菜が安定の強さでV2達成、田中愛夢が本大会唯一となる中学生での3位入賞を果たす
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女子44kg級決勝、久保井仁菜が外処茅優を左一本背負投で攻める

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決勝、久保井が外処から左小内刈「技有」を奪う

(エントリー19名)

【決勝まで】

48kg級との差が4kgしかなく、高校以降のカテゴリに階級が存在しないこともあって人材が薄くなりがちな本階級。上側の山からは優勝候補である昨年の本大会覇者・久保井仁菜(京都文教高2年)が安定の強さで決勝進出を果たした。久保井は初戦で吉田さくら(札幌北斗高1年)を縦四方固「一本」(1:56)で下すと、準々決勝では中村遊季(富士学苑高3年)を相手にGS延長戦をしぶとく戦い抜いて「指導3」の反則(GS2:16)で勝利。準決勝では藤阪恭子(藤村女子高3年)を得意の縦四方固「一本」(1:14)に切って取り、2年連続となる決勝の畳へと辿り着いた。

一方下側の山を勝ち上がったのはダークホースの外処茅優(富士学苑高2年)。外処は初戦で西さくら(科学技術高1年)に「指導3」反則(3:28)で勝利すると、準々決勝では田中愛夢(松山西中3年)を払腰「一本」(1:36)で一蹴。今年の全日本カデ選手権2位の河端悠(大成高1年)を相手に迎えた準決勝では、GS延長戦で「指導1」対「指導2」の指導1差ビハインドから小内刈「技有」(GS3:01)を決めて逆転勝ち。難敵を投技によるポイントで退けて決勝進出を果たした。

開会式で選手宣誓を行った田中は外処に準々決勝で敗れたものの、敗者復活戦で浅沼佳純(埼玉第1年)に体落「技有」で優勢勝ち。3位決定戦でも藤阪を小内刈「技有」の優勢で破って3位を獲得した。本大会男女を通じて中学生の3位入賞は田中のみ。

【決勝】

久保井仁菜○優勢[技有・小内刈]△外処茅優

久保井が右、外処が左組みのケンカ四つ。久保井は試合開始から左右の一本背負投を連発。担ぎ技の弾幕を張ることで相手に攻撃の隙を与えず、潰れた状態から得意の寝技で一方的に攻め続ける。外処も数度左内股を放って反撃を試みるが、久保井の先手攻撃の前に守勢に回ってしまい2分28秒には外処のみに消極的の「指導1」が与えられる。久保井はここから右横落に右一本背負投と連続で右技を仕掛けて外処の意識を右方向に向け、1分34秒に一本背負投の形に相手の腕を抱いた左小内刈。担ぎ技と右方向の攻撃に慣れていた外処はこの技を正面から受けてしまい転がるように後方に転倒。久保井が決定的な「技有」を獲得する。リードを得てからも久保井は先手攻撃を徹底、相手に反撃のきっかけを与えぬまま試合終了を迎える。久保井が一方的に自分の柔道を展開して昨年に続く2連覇を達成した。

圧勝で2連覇を決めた久保井だが、8月のインターハイでは48kg級に出場、準々決勝で偽装攻撃の「指導」を立て続けに失っての「指導3」という屈辱の内容で敗れたばかり。今大会では将来の48kg級参戦に向けてどう柔道を組み立てなおすかがひとつのみどころであったが、徹底的に左右の一本背負投、両手を持っても敢えて手を離し、片手技で攻めて相手のチャンスを潰すという戦いぶりには変化なし。ある意味44kg級カスタムのまま結果にのみこだわった刹那的な内容とも評価できる。本人は「寝技を磨いて勝ち抜く」旨コメントしたが、この先を考えると立ち勝負でなんらかの上積みは必須。44kg級で敵なしというこの結果を受けて将来に向けてどう柔道を変えようと考えるのか、今後に注目したい。

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44kg級優勝の久保井仁菜

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44kg級上位入賞者。左から外処茅優、久保井仁菜、河端悠、田中愛夢。

【入賞者】
優 勝:久保井仁菜(京都文教高2年)
準優勝:外処茅優(富士学苑高2年)
第三位:河端悠(大成高1年)、田中愛夢(松山西中3年)

久保井仁菜選手のコメント
「2連覇は嬉しいです。私は寝技が得意なので、これからも磨いていきたいです。相手に警戒されても極められるような選手になりたいと思います。インターハイではベスト8だったので、特にこの優勝は嬉しい。海外や世界でも寝技で攻めたいです。これからも寝技を鍛えます。」

【準々決勝】
久保井仁菜(京都文教高2年)○GS反則[指導3](GS2:16)△中村遊季(富士学苑高3年)
藤阪恭子(藤村女子高3年)○横四方固(1:07)△中村成実(魚津市立西部中3年)
河端悠(大成高1年)○優勢[技有・小外刈]△浅沼佳純(埼玉大1年)
外処茅優(富士学苑高2年)○払腰(1:36)△田中愛夢(松山西中3年)

【敗者復活戦】
中村遊季○GS反則[指導3](GS1:15)△中村成実
田中愛夢○優勢[技有・体落]△浅沼佳純

【準決勝】
久保井仁菜○縦四方固(1:14)△藤阪恭子
外処茅優○GS技有・小内刈(GS3:01)△河端悠

【3位決定戦】
河端悠○GS技有・大内刈(GS1:12)△中村遊季
田中愛夢○優勢[技有・小内刈]△藤阪恭子

【決勝】
久保井仁菜○優勢[技有・小内刈]△外処茅優

■ 48kg級・梅北眞衣が優勝、決勝で連覇狙った先輩坂上綾を破る
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48kg級準決勝、梅北眞衣が寝技を展開して渋谷舞を崩上四方固「一本」に仕留める

(エントリー21名)

【決勝まで】

実績、能力ともにレベルの高い人材が揃って第1日女子最大のハイレベルトーナメントとなった48kg級。優勝候補は先月行われたユニバーシアード大会においてジョン・ボキョン(韓国)、ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)とリオデジャネイロ五輪のメダリスト2人を破って優勝を飾る快挙を成し遂げたばかりの梅北眞衣(山梨学院大1年)と、昨年の本大会覇者で今年の全日本実業個人選手権でも3位(昨年2位)を獲得している坂上綾(三井住友海上)。ともに夙川学院高のOBである (坂上が1学年先輩)この2人を軸に、現役高校生王者である安部風花(国士舘高3年)と古賀若菜(南筑高1年)、全日本カデ選手権2連覇中の渋谷舞(東海大付属静岡翔洋高2年)、昨年本大会で3位を獲得している小倉葵(環太平洋大2年)など多数の有力選手が顔を揃えた。

この激戦階級を決勝まで勝ち上がったのはやはり梅北と坂上。梅北は初戦で黒崎美紅(環太平洋大1年)に縦四方固「一本」(2:54)で勝利すると、準々決勝では仲田奈央(帝京大1年)をGS延長戦の「指導3」反則(GS1:18)で下してベスト4入り。準決勝では渋谷からGS延長戦の末に縦四方固「一本」(GS3:35)を奪って勝利を収め、7分半に及ぶ大消耗戦を制して決勝進出を決めた。

対する坂上は初戦で江本陽香(広陵高3年)にGS延長戦での「指導2」(GS1:10)勝利とやや低調な滑り出し。それでも続く準々決勝で野村真希(富士学苑高2年)を払腰「一本」(0:42)で下して流れに乗ると、準決勝では前戦でGS延長4分に及ぶ消耗戦の末に古賀を上四方固「一本」(GS4:07)で破っている小倉と対戦。この難敵を送襟絞「一本」(3:52)に仕留めて2年連続となる決勝の畳へと辿り着いた。

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決勝、坂上綾の激しい攻めを梅北眞衣が体幹の強さを生かして凌ぐ

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梅北が坂上の右内股を透かして右背負投の形で押し込み「技有」

【決勝】

梅北眞衣○GS技有・背負投(GS4:25)△坂上綾

右相四つ。組み手争いから試合がスタート。脇を差した状態に双方良いところを持ってのがっぷり四つと近い間合いでの攻防が続き、上背に勝る坂上が左浮腰に右内股と幾度となく惜しい場面を作ってやや優勢。梅北は持ち前の体の強さを生かしてこれらすべてを凌ぎ切り、都度寝技でしっかり攻め返す。しかし坂上の技が続いたことで2分48秒梅北に消極的の「指導1」。奮起した梅北は以降連続で左袖釣込腰を放って坂上を大きく崩すも、いずれもポイント獲得には至らず。梅北が右一本背負投を仕掛けたところで本戦の4分間が終わり、坂上の「指導1」リードで試合はGS延長戦へと突入する。

延長戦に入ると梅北は先に引き手で襟を持って距離を取り、次いで相手の袖に持ち替える形に組み手の手順を変更。これが功を奏して組み手が拮抗するようになると、以降は体の力に勝る梅北が圧を掛けて前に出るようになり、GS1分43秒にはこれを嫌って片手の右内股で伏せた坂上に偽装攻撃による「指導1」が与えられる。横変形での攻防を経てのGS4分21秒、坂上が思い切り良く右内股に飛び込むと、梅北はこれを透かして相手の懐に潜り込み、右背負投の形で押し込む。既に体のコントロールを失っていた坂上は体側から転がり落ち、主審は「技有」を宣告。梅北が8分間に及ぶ大消耗戦の末に2連覇を狙う先輩坂上を下してジュニアカテゴリ初優勝を飾った。坂上は終始優勢に攻め続けたものの梅北の体幹の強さの前にあと一歩を決め切ることができなかった。

ユニバーシアードで五輪メダリスト2人を倒し、次いで「認証試験」とでもいうべきこのジュニアを制した梅北はこれでシニア上位戦線への挑戦権を得た形。この実績をもとに学生体重別、講道館杯、そしてあるいはグランドスラム東京と大会が続くこの秋は、明らかにキャリアの節目となる勝負のシーズンだ。

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48kg級優勝の梅北眞衣

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48kg級上位入賞者。左から坂上綾、梅北眞衣、仲田奈央、野村真希。

【入賞者】
優 勝:梅北眞衣(山梨学院大1年)
準優勝:坂上綾(三井住友海上)
第三位:仲田奈央(帝京大1年)、野村真希(富士学苑高2年)

梅北眞衣選手のコメント
「めちゃくちゃ嬉しいです。決勝の相手は先輩でしたが、やりにくさはなかったです。GS延長戦は覚悟の上、スタミナに不安はありませんでした。大学に入ってから組み手が上手くなったように思います。さらに組み手を磨き、『一本』を取れる技を身に着けたいです。五輪で優勝することが夢です。」

【準々決勝】
梅北眞衣(山梨学院大1年)○GS反則[指導3](GS1:18)△仲田奈央(帝京大1年)
渋谷舞(東海大付属静岡翔洋高2年)○GS指導2(GS1:56)△浅岡美名(淑徳大2年)
小倉葵(環太平洋大2年)○GS上四方固(GS4:07)△古賀若菜(南筑高1年)
坂上綾(三井住友海上)○払腰(0:42)△野村真希(富士学苑高2年)

【敗者復活戦】
仲田奈央○GS一本背負投(GS6:04)△浅岡美名
野村真希○優勢[技有・隅返]△古賀若菜

【準決勝】
梅北眞衣○GS上四方固(GS3:35)△渋谷舞
坂上綾○送襟絞(3:35)△小倉葵

【3位決定戦】
仲田奈央○優勢[技有・大内刈]△小倉葵
野村真希○GS技有・隅返(GS0:31)△渋谷舞

【決勝】
梅北眞衣○GS技有・背負投(GS4:25)△坂上綾

■ 52kg級・古瀬舞が福添みのりとの同門決勝に勝利、混戦のトーナメントを制す
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52kg級準々決勝、福添みのりが登川優衣から引込返「技有」を奪う

(エントリー20名)

【決勝まで】

戦力的に抜けた選手がおらず混戦模様となった52kg級。決勝に勝ち上がったのは帝京大、そして長崎明誠高の先輩後輩である福添みのり(帝京大2年)と古瀬舞(帝京大1年)の2名となった。両者は通常より1試合多く戦わねばならないいわゆる「逆シード」配置から大会をスタートしており、ともに有力選手を食ってファイナルまで辿り着いたダークホースという位置づけだ。

福添は1回戦で長崎美紘(東海大付属札幌高2年)を横四方固「一本」(2:06)、2回戦で馬場彩子(桐蔭横浜大2年)を横四方固「一本」(4:00)と、序盤戦はいずれも得意の寝技による一本勝ちでベスト8入り。準々決勝では登川優衣(沖縄尚学3年)に引込返「技有」で勝利を収め、迎えた準決勝の相手は昨年の選抜体重別選手権で3位に入るなどシニアでも既に実績を残している前田千島(三井住友海上)。福添は得意の引込返で前田から「技有」を奪ってこの大一番を制し、決勝の畳へと駒を進めた。

一方の古瀬は1回戦の刈谷美咲(明治国際医療大1年)戦から「指導1」(GS2:03)による勝利と決して好調とは言いがたい滑り出し。それでも次戦からは徐々に調子を上げ、2回戦で笹原優希(仙台大2年)を横四方固「一本」(3:28)、3回戦で三浦百香(三浦学苑高3年)を縦四方固「一本」(4:00)と2戦連続で一本勝ち。準決勝では同じく「逆シード」位置から勝ち上がってきた大森生純(帝京高2年)を背負投「技有」で下して決勝進出を決めた。

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決勝、福添が捨身技で引き込んで得意の寝技を狙う

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古瀬舞が横変形からの右大外「一本」で先輩福添を破る

【決勝】

古瀬舞○GS大外刈(GS0:27)△福添みのり

帝京大の先輩後輩である両者の対決は右相四つ。福添は隅返に引込返と捨身技から引き込んで得意の寝勝負を挑む。しかし、古瀬もこのことは当然織り込み済みであり、すぐに立ち上がって展開をリセット。1分51秒、主審は手数の差を取ったか古瀬のみに消極的の「指導1」を宣告する。このポイントを受けて古瀬はペースを上げ、2分13秒には右大外刈であわやポイント獲得かという場面も現出。ここから古瀬優位での攻防が続き、3分5秒には福添にも消極的の咎で「指導1」が与えられる。以降はポイントの変動なく両者「指導1」の同点で試合はGS延長戦へと突入。延長戦開始直後のGS27秒、横変形での攻防から古瀬が右大外刈。深く刈り込んで上体を倒すと福添はそれについてくる形で一瞬耐えた後に勢い良く背中から落ちて「一本」。古瀬が豪快な大外刈「一本」で先輩福添を破り、初となる全国タイトルを獲得した。

世界ジュニアには、既に優先枠で決定されていた阿部詩(夙川学院高2年)のほか、今大会3位入賞の前田が選出された。決勝は確かにダークホース同士の対決であったが、純実力はともかく近年の前田に敢えてこの結果を覆すほど圧倒的な成績があったかとなると率直に言って疑問。結果、2枠がともに「優先枠」で占められた形になり、今大会の予選としての価値と公平性を大いに貶めたとの感想を抱かざるを得ない。1枠が強化の推薦枠で埋まるのであれば、せめて残る1枠は大会結果を尊重すべきではなかったのか。育成世代の大会である世界ジュニアをどうしても勝たねばならない大会(たとえばシニアの世界選手権と比して)と位置付けることにはそもそも論としての議論があって然るべきだし、一歩譲ってたとえどうしても勝つという旗印があったとしても既に阿部を推薦していることでこの項は満たしているのではないか。目先の勝利にこだわるがゆえに敢えて結果を覆し、「勝ってもどうせ選ばれない大会」との感想を若い世代の選手たちに抱かせることは強化の施策として到底有益とは思えない。同じく3位選手が選出された57kg級同様、大いに疑問の残る選考であった。

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52kg級優勝の古瀬舞

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52kg級上位入賞者。左から福添みのり、古瀬舞、坪根菜々子、前田千島。

【入賞者】
優 勝:古瀬舞(帝京大1年)
準優勝:福添みのり(帝京大2年)
第三位:坪根菜々子(沖学園高3年)、前田千島(三井住友海上)

古瀬舞選手のコメント
「決勝は先輩相手の試合でしたが、やりにくくはありませんでした。日本一になるために帝京大に入ったので、勝つことができて嬉しいです。相手は寝技が強いので寝勝負をしないように気をつけました。中学ではベスト8だったのでこの優勝は自信になります。世界一になるのが目標です。」

【準々決勝】
前田千島(三井住友海上)○上四方固(1:51)△坪根菜々子(沖学園高3年)
福添みのり(帝京大2年)○優勢[技有・帯取返]△登川優衣(沖縄尚学高3年)
大森生純(帝京高2年)○優勢[技有・背負投]△瀧川萌(比叡山高3年)
古瀬舞(帝京大1年)○優勢[技有・縦四方固]△三浦百香(三浦学苑高3年)

【敗者復活戦】
坪根菜々子○小内刈(1:18)△登川優衣
三浦百香○GS反則[指導3](GS1:43)△瀧川萌

【準決勝】
福添みのり○優勢[技有・帯取返]△前田千島
古瀬舞○優勢[技有・背負投]△大森生純

【3位決定戦】
坪根菜々子○GS指導2(GS1:12)△大森生純
前田千島○GS指導2(GS2:01)△三浦百香

【決勝】
古瀬舞○GS大外刈(GS0:27)△福添みのり

■ 57kg級・柴田理帆が初の全国タイトルを獲得、3連覇狙った舟久保遥香は富沢佳奈に敗れて3位に留まる
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57kg級準決勝、3連覇を狙った舟久保遥香は富沢佳奈に「指導3」を奪われ敗退

(エントリー19名)

【決勝まで】

2015年世界ジュニア選手権覇者にして現在本大会2連覇中の舟久保遥香(三井住友海上)が準決勝で富沢佳奈(埼玉栄高3年)に「指導3」の反則(GS5:15)で苦杯。試合全体としては舟久保が優勢であったものの、舟久保の寝勝負を念頭に試合を組み立てる富沢の前に立ち技での攻め手を欠き、最後は相手の粘戦志向に屈する形で「指導」を失って敗れた。舟久保は3位決定戦で村井惟衣(龍谷大2年)を小内刈「一本」で下して表彰台は確保したが、実業団に身を投じた1年目の今年、ひとつキャリアの壁にぶつかったという印象だ。

結果、決勝に勝ち上がったのは舟久保を破った富沢と今年の全日本学生優勝大会で好パフォーマンスを見せた柴田理帆(筑波大3年)の2人。埼玉栄高の先輩と後輩による対決となった。関東ブロック大会準決勝では富沢がGS延長戦の末に横四方固「一本」で勝利しているカードだ。

富沢は初戦で大幸瞳子(長崎明誠高3年)をGS延長戦での横四方固「一本」(GS5:13)で破ると、続く準々決勝では前戦で古賀ひより(創志学園高2年)を大内刈「技有」(GS2:28)で破って勝ち上がってきた濵野未来(東大阪大敬愛高3年)にGS延長戦の末の「指導3」反則(GS1:15)で勝利。準決勝では前述のとおり舟久保を相手にアップセットを果たし、みごと決勝の畳へと歩を進めた

一方いわゆる「逆シード」配置からのスタートとなった柴田は1回戦で渡辺世奈(美濃加茂高3年)を横四方固「一本」(2:30)で破ると、2回戦では明石ひかる(渋谷教育学園渋谷高3年)に一本背負投「技有」で優勢勝ち。続く準々決勝では村井惟衣をGS延長戦での大内刈「一本」(GS2:53)で破ってベスト4入りを決め、迎えた準決勝では前戦で今年の高校選手権王者・香川瑞希(広島皆実高3年)を横四方固「一本」(1:31)下している強豪谷川美歩(山梨学院大2年)とマッチアップ。柴田は大消耗戦となったこの試合をGS延長戦の払巻込「技有」(GS1:02)で制し、決勝進出を果たすこととなった。

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57kg級決勝、富沢佳奈の右小外掛を柴田理帆が左内股で迎え撃つ

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柴田が富沢から右小内刈「技有」を奪う

【決勝】

柴田理帆○GS技有・小内刈(GS3:29)△富沢佳奈

柴田が左、富沢が右組みのケンカ四つ。両者激しい組み手争いから試合をスタート。釣り手のみでの攻防が続き、1分36秒両者に引き手を持ち合わないとして「指導1」が与えられる。体の強さと組み手管理の巧みさに勝る富沢はあるいは脇を差して、あるいは引き手で釣り手側の襟を持っての右内股で度々柴田を崩すが、柴田はあくまでも投げを狙い続けることでこれに対抗。袖の絞り合いが続いた3分31秒には富沢のみに消極的の「指導2」が与えられる。以降ポイントの変動がないまま、試合は「指導1」対「指導2」の柴田リードでGS延長戦へと突入。

延長戦でも大枠の様相は変わらず、試合巧者の富沢が組み手と組み際の技で状況を積むと、柴田が泥臭く右一本背負投を放って展開を引き戻す。GS3分10秒、左払腰で掛け潰れた柴田に偽装攻撃の咎で「指導2」。ポイントで並ばれてしまった柴田は直後のGS3分29秒、右「一本大外」を放って相手に腰を引かせると、腕を一本背負投の形に抱えたまま二の矢で右小内刈に飛び込む。足こそ掛からなかったものの前段の大外刈を耐えたことで剛体となっていた富沢は腰砕けとなって後方に崩れ落ち、主審は迷いなく「技有」を宣告。柴田が強豪との連戦を勝ち抜きみごと表彰台の頂点へと上り詰めた。

これまで怪我に泣かされてきた柴田にとってはこれが初の全国タイトル獲得。今シーズンから階級をひとつ上げて臨んだ富沢は優勝候補の舟久保を破るなど主役級の活躍を見せたが、柴田の投げに対する貪欲さの前に屈した形となった。

世界ジュニア選手権日本代表には52kg級同様、3位に終わった舟久保が選出された。既に舟久保は2015年の世界ジュニアを制しており、本人のキャリア的には既に通過したはずの大会。昨年全日本ジュニアを制しながら世界ジュニア出場がなかった(※五輪年は開催なし)ことの補填という意味なのか、世界ジュニアで日本が結果を残すための戦略なのか。しかしいずれにしても大会結果を覆してまで、本人にとっては1回終わった大会に、世界ジュニアを経験する選手を1人増やすというメリットを捨ててまで敢えて同じ選手を選出することが是なのかどうか、非常に疑問だ。52kg級と同じことを再度書かせて頂くが、長期的に見れば、1度や2度の勝利(それも育成世代だ)と引き換えに、続く選手たちに「どうせ勝っても選ばれない大会」という感想を抱かせてしまうことの損失のほうがはるかに大きい。選ばれた3位選手2人がともに同所属の選手であることなど余計な想像を掻き立てかねない要素を残したことも含め、到底良策とは思えない。
世界選手権が終わり、シニア63kg級の「派遣なし」施策の失敗(少なくとも現時点ではそう評するしかない)がフォーカスされる渦中にあって、敢えてこのような難解な選考をする必要があったのだろうか。

選手に罪なし、強化の判断に疑問あり。このようなことが続くと、「女子の選考は不透明」との言われなき印象が巷間に根付きかねない。(男子が基準明確であったぶん、今回の女子選考の曖昧なスタンスは際立った)。そもそもの世界ジュニアの位置づけから、再考を提案したい。

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57kg級優勝の柴田理帆

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57kg級上位入賞者。左から富沢佳奈、柴田理帆、谷川美歩、舟久保遥香。

【入賞者】
優 勝:柴田理帆(筑波大3年)
準優勝:富沢佳奈(埼玉栄高3年)
第三位:谷川美歩(山梨学院大2年)、舟久保遥香(三井住友海上)

柴田理帆選手のコメント
「挑戦者のつもりで目の前の試合だけ見て、気持ちを強く持って戦いました。この大会はジュニアなので通過点にしたい。高校から2位3位ばかりだったので嬉しいです。大学に入ってすぐに左ひざの内側靭帯を故障して手術、今年はじめにも右肘を怪我して、今もボルトが入っています。練習は手術の2ヶ月後から再開しました。講道館杯に向けて頑張りたいです。」

【準々決勝】
舟久保遥香(三井住友海上)○縦四方固(3:30)△渕田萌生(津幡高2年)
富沢佳奈(埼玉栄高3年)○GS反則[指導3](GS1:15)△濵野未来(東大阪大敬愛高3年)
柴田理帆(筑波大3年)○GS大内刈(GS2:53)△村井惟衣(龍谷大2年)
谷川美歩(山梨学院大2年)○横四方固(1:31)△香川瑞希(広島皆実高3年)

【敗者復活戦】
濵野未来○内股(3:22)△渕田萌生
村井惟衣○技有・内股△香川瑞希

【準決勝】
富沢佳奈○GS反則[指導3](GS5:15)△舟久保遥香
柴田理帆○GS技有・払巻込(GS1:02)△谷川美歩

【3位決定戦】
谷川美歩○横四方固(0:39)△濵野未来
舟久保遥香○小内刈(GS1:06)△村井惟衣

【決勝】
柴田理帆○GS技有・小内刈(GS3:29)△富沢佳奈

取材・文:林さとる/古田英毅

※ eJudoメルマガ版9月23日掲載記事より転載・編集しています。

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