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【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】【eJudo’s EYE】進化し続けた最重量級のトップランナーたち、早くも置いて行かれた日本・第6日3階級評

(2017年9月6日)

※ eJudoメルマガ版9月3日掲載記事より転載・編集しています。
【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】【eJudo’s EYE】進化し続けた最重量級のトップランナーたち、早くも置いて行かれた日本・第6日3階級評
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リネールは今大会支釣込足と膝車によるポイント獲得を連発、新境地を見せた

※以下4題を掲載しています
「進化し続ける最重量級のトップランナーたち、早くも置いて行かれた日本」
「漂う閉塞感、男子最重量級の代表2人は惨敗」
「風格漂うウルフの勝利、年齢に似合わぬリアリストぶりに拍手」
「初出場で銀メダル獲得の快挙、それでも朝比奈に求めたかったこと」

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あまりの過密日程になかなか「評」を書く時間が取れなかったが、ようやく金鷲旗~世界選手権に至る夏のロードがいったん終了。回収すべき仕事、発すべき情報がまだまだ残っている中で恐縮だが、まずはこの世界選手権「評」から稿を起こさせて頂きたい。順番は狂ってしまうが、ひとまず最終日(個人戦)の評、続いて各階級評(大会傾向観察含む)、総評と進めたいと思う。

■進化し続ける最重量級のトップランナーたち、早くも置いて行かれた日本

100kg超級は実に面白かった。もともと「リネール一強」という環境を前提に独自の生態系が発達、2009年~2012年までのここ数十年でも屈指のレベルダウン期とは打って変わって面白い選手が百花繚乱となったこの階級であったが、①リオ五輪で変わらぬ強さを見せつけたリネール、②同大会準決勝でオール・サッソン(イスラエル)が為した大熱戦とそれによって一層明確になったリネール打倒の戦術的方向性、そして何より③「相手から反則を奪うだけでは勝てない『投げなければ勝てない』方向性をより加速させた新ルール、の3条件を受けて、強豪各選手が1年間でそれぞれの方向に、新たな武器を上積みして来たことが非常に良く見えた大会であった。

まずは真っ先にテディ・リネール(フランス)の戦いぶりに触れねばなるまい。コンディションは明らかにベストではなかったが、それでも圧勝と称して良いだろう。日本の報道では「苦しんだ」とのトーンも多いようだが、GS延長戦勝利の増加はこのルールで凌がれる立場の選手においては一種のディフォルト(100kg級優勝のウルフアロンなどはハナからGSを織り込んで戦っていた)であり、本戦の時間短縮を折り込めばまずまずの戦いぶりであったと言える。まごうことなき大熱戦であった準決勝のグラム・ツシシビリ(ジョージア)戦に関しては、新ルールを生かして袖口を絞り込む徹底拘束に舵を切り、得意の袖釣込腰で大物を投げまくってあっという間に欧州王者に駆け上ったツシシビリが相性的な観点から打倒リネールの大本命であったことは、国際柔道ファンや海外専門メディアにとっては周知の事実。リネールも十分これを意識しており、むしろ最強の敵に、それも存分に力を発揮させてしまいながら最後はキッチリ投げ切った(捨身技という悪手の「貯金」に逃げ込んでの勝利ではあったが)精神力と強さに、あらためて驚かされたファンのほうが多かったのではないだろうか。

さて。今季施行されている「反則だけでは勝てない」新ルール制定のトリガーが、リオ五輪100kg超級でリネールが見せた「徹底的に相手の反則を狙う」低調ゲームにあったことはご存知の通り。新ルールはよりエキサイティングな試合を狙うという意図(項をあらためるが、おおむね成功であったと総括できる)とともに、「リネール(のような地力の高さを相手の反則奪取に注ぎ込む戦術派選手)封じ」の側面が色濃くあった。今大会は、この自身のポリシーを否定されるようなルールを受けてリネールがどのような柔道を繰り広げるかに非常な注目が集まった大会であったわけだ。1年間の沈黙を経て、リネールは何か新境地を見出すのか、それとも大枠これまでの柔道を続けるのか。

リネールは明らかな意図を以て新ルールに対応してきた。今回見せた新兵器は、足技だ。1回戦マイサラ・エルナガル(エジプト)に膝車「技有」(崩上四方固「一本」)、2回戦ウルジバヤル・デューレンバヤル(モンゴル)から支釣込足「一本」、1戦おいて準々決勝のラファエル・シウバ(ブラジル)から支釣込足「技有」(横四方固「一本」)、そして前述のツシシビリ戦を経て、決勝ダヴィド・モウラ(ブラジル)に膝車「一本」。

どれも「センス系」のため息が出るような鋭い一撃ではなく、ことごとく自身の釣り手側に放つ地力ベースのオーソドックスな技であったが、オーソドックスに理合を満たすゆえにその取り味は比類なし。相手にとって最も怖い右大外刈の逆技であることはもちろんのこと、上体の力で勝っている相手に左右の回旋系足技はそもそも非常に効きやすい。大外刈の来襲を恐れて腰を引く相手、または圧力を嫌がって位置を直そうとした相手の頭を抑えながら逃げる方向に出足を抑えて一発、というこの組み立ての筋目の良さは、6戦して4度のポイント奪取という結果を持ち出すまでもなく、競技者や指導者の皆さんもご存知の通りだ。

「小学生みたいな王道過ぎる組み立て」という意見もあるかもしれないが、もともとリネールはその王道過ぎるほど王道の組み立てを、パワーと体格をテコに高いステージで実現してしまえることが最大の売り。そして何より、「ルールに応じてきちんと上積みを考えてくる」この態度自体が、凄まじく怖いではないか。リネールはまったく降りていない。これまでの実績に寄り掛かって閉じてもいない。偏狭な稽古に閉じこもって技術的閉塞に陥っていたロンドン―リオ期から精神的に一段抜けたとすら観察されてしかるべきだ。ざっくり言って、「1年間休んでその間に足技を上積みしてくる」なぞ、なかなかやるではないか。この人は、まだまだ進化する。追いかける側としてはこれほど怖い相手はいない。

上積みを見せたのはリネールだけではない。

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※ eJudoメルマガ版9月3日掲載記事より転載・編集しています。

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