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【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】リネール新境地見せて最重量級8連覇、期待の日本勢2人はともに予選ラウンド敗退に終わる・男子100kg超級即日レポート

(2017年9月3日)

※ eJudoメルマガ版9月3日掲載記事より転載・編集しています。
【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】リネール新境地見せて最重量級8連覇、期待の日本勢2人はともに予選ラウンド敗退に終わる・男子100kg超級即日レポート
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テディ・リネールとダビド・モウラによる決勝戦

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リネールがGS延長戦の末に膝車「一本」で勝利

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8連覇を決めたリネール

ハンガリー・ブダペストで行われている世界柔道選手権は1日、日程第6日の男子100kg級と100kg超級、女子78kg超級の競技が行われ、100kg超級は大本命のテディ・リネール(フランス)が優勝した。リネールは世界選手権100kg級をこれで8連覇。五輪100kg超級を加えると10回目、世界選手権無差別を加えると11回目の世界の頂点となった。

リネールはリオデジャネイロ五輪決勝での「指導」狙いの戦いぶりを批判され、そしてこの決勝の低調な内容は今年1月から試行されている「相手の反則だけでは勝てない」ルール改正への直接的な引き金となったことで知られている。そのある意味「リネール封じ」とも言える新ルール下でどのような試合を見せるのかが、注目されていた。

五輪以来1年ぶりに試合の畳に姿を見せたリネールは決してベストコンディションには見えなかったが、今大会は圧力を嫌った相手を足技で仕留める新境地を披露。相性上最強の刺客と目されていた準決勝のグラム・ツツシビリ(ジョージア)戦こそ大苦戦の末にこれまで通り捨身技に頼ってしまうという悪癖を見せたものの、初戦から膝車と支釣込足で素晴らしい投げを連発。決勝もダビド・モウラ(ブラジル)をこの膝車による「一本」で下して優勝を決めてみせた。止まらぬ進化に窮地に退かない精神力、ルール変更にしっかり手立てを持って臨む逞しさと、トップランナーとしての格を見せつけた大会だった。

リネールに限らず、激戦かつ人材豊かなこの階級の様相を示すがごとく、強豪たちはそれぞれ成長した姿を披露。旧ルールでは完全な「指導」奪取特化の戦術派だったラファエル・シウバ(ブラジル)は本格派の内股でこのレベルでも「一本」を連発、巴投と固技の選手だったモウラも同じく内股「一本」を連発するなど、投げねば勝てぬ新ルールの中で生き残るための、各選手の上積み志向がはっきり見えたトーナメントだった。

期待の日本勢2人はともに予選ラウンド敗退で入賞に絡めず。

全日本選手権の覇者・王子谷剛志は初戦のムフシン・ヒソミディノフ(ウズベキスタン)戦、続くダニエル・アレストファレル(オーストリア)戦と立て続けに苦手のケンカ四つと対戦。圧が掛かり切らない状況に苦しみ、アレストファレル戦では内股「技有」をリードしたものの、終盤に支釣込足と内股を立て続けに返されてしまい、「技有」2つで逆転負けを喫した。

リオ五輪銀メダリストの原沢久喜(日本中央競馬会)は無名のステファン・ハイギ(オーストリア)を相手に狙い過ぎかなかなか技が出ず、延長戦になるとケンカ四つの相手の手数志向の技をほとんど静観。大枠組み勝ったまま、目先の対応はするが一切の攻撃に出れない異様な様には思わず「イップス」という言葉が脳裏をよぎるほど。金縛り状態のまま決勝点となる「指導」を失って、初の世界選手権を1試合のみで終えた。

3位にはシウバと、今大会から階級を上げて参戦した大ベテランのナイダン・ツブシンバヤル(モンゴル)が入賞。ナイダンは準々決勝でモウラの内股「技有」に沈んだが、3位決定戦の曲者対決では味のある柔道でこの日の主役の一であるツツシビリを翻弄。「技有」2つを奪って最後は横四方固「一本」という圧勝で見事銅メダルを獲得した。

入賞者リスト、準々決勝以降のスコア、3位決定戦以降と日本代表選手全試合の戦評、テディ・リネールの全試合戦評は下記。

■ 100kg超級
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100kg超級メダリスト。左からモウラ、リネール、ナイダン、シウバ。

(エントリー43名)

【入賞者】
1. RINER, Teddy(FRA)
2. MOURA, David(BRA)
3. NAIDAN, Tuvshinbayar(MGL)
3. SILVA, Rafael(BRA)
5. TUSHISHVILI, Guram(GEO)
5. BOR, Barna(HUN)
7. OKRUASHVILI, Adam(GEO)
7. ALLERSTORFER, Daniel(AUT)

【準々決勝】
ダヴィド・モウラ(ブラジル)○優勢[技有・内股]△ナイダン・ツブシンバヤル(モンゴル)
バルナ・ボール(ハンガリー)○横四方固(3:59)△アダム・オクルアシヴィリ(ジョージア)
グラム・ツシシビリ(ジョージア)○袖釣込腰(0:09)△ダニエル・アレストルフェル(オーストリア)
テディ・リネール(フランス)○横四方固(2:09)△ラファエル・シウバ(ブラジル)

【敗者復活戦】
ナイダン・ツブシンバヤル(モンゴル)○反則[指導3](3:40)△アダム・オクルアシヴィリ(ジョージア)
ラファエル・シウバ(ブラジル)○反則[指導3](GS1:59)△ダニエル・アレストルフェル(オーストリア)

【準決勝】
ダヴィド・モウラ(ブラジル)○内股(2:20)△バルナ・ボール(ハンガリー)
テディ・リネール(フランス)○GS優勢[技有・浮落](GS0:25)△グラム・ツツシビリ(ジョージア)

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3位決定戦、ナイダンがツツシビリを翻弄する。

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3位決定戦、地元の大歓声を背にしたボールは思わず「足取り」の反則

【3位決定戦】
ナイダン・ツブシンバヤル(モンゴル)○横四方固(4:00)△グラム・ツツシビリ(ジョージア)
ナイダンが右組みベース、ツツシビリが左組みベースの両組み。ここまで敗れたリネール戦も含めて抜群の試合内容のツツシビリだが、自分よりも重心の低いナイダンに大苦戦。右一本背負投、肩車と先制攻撃を許し、1分6秒には谷落から強引に捲り倒されて「技有」を失ってしまう。このポイントはすぐに取り消されたものの、直後の1分25秒、今度は左袖釣込腰を浮落で浴びせ倒され「技有」を失陥。これ以降は一貫してナイダンに自身の技を無効化され続けてしまう。残り20秒、手詰まりになったツツシビリが左内股を放つとナイダンは引き手を切ってこれを潰し、手前側に捲り起こして横四方固。残り時間的にもツツシビリはこれで終戦となり、天を仰いだまま「一本」のブザーを聞く。今大会から階級変更のナイダンが、台風の目であったツツシビリを下して3位を獲得した。ナイダンの味のある戦いぶりはもちろんのこと、モウラに内股で放られたナイダンがツツシビリを子ども扱い、リネールを得意の担ぎ技で苦しめたツツシビリが同じ担ぎ系のナイダンにまったく歯が立たず、と現在の最重量級をめぐる「相性」の面白さが存分に表れた一番、

ラファエル・シウバ(ブラジル)○GS優勢[指導2](GS2:18)△バルナ・ボール(ハンガリー)
シウバが右、地元の大歓声を背に気合十分のボールが左組みのケンカ四つ。序盤はシウバが両襟で組み止め、ボールが切り離して袖を制しようと試み膠着、44秒双方に「指導」。左右の利くボールは構えをスイッチしながら相手を動かし左出足払、右一本背負投で攻め、今大会モデルチェンジを為して技の威力を増したシウバは大外刈、内股で攻め返す。
試合時間2分に迫らんというところでボ―ルの左内股に反応したシウバが右内股を連発し、以後緩やかに攻勢確保。ボールはやや守勢に回り、シウバが2分40秒の膝車、3分13秒の右大内刈と続けて良い技を見せ、一方のボールが切り返しての足技で対抗する形で本戦は終了。試合はGS延長戦へ。
シウバは延長40秒にケンケンの右内股から右小内刈に繋いでボールを転がし、さらに右大内刈で伏せさせる迫力の攻め。ここでボールが右一本背負投から左小内巻込に繋ぐとシウバの巨体がグラリと崩れ、危うく腹這いに逃れて「待て」。会場大歓声の中、今度はシウバがボールに前進圧力で回旋を強いると膝車一発、崩れたボールの頭を抑えて投げ掛かり今度は客席に悲鳴がこだまする。
直後、先ほどの一撃に感触を得たボールが再び右一本背負投から左小内巻込の連携。シウバの足首に取りつくと体を捨てて懸命に投げに掛かる。しかしボルテージが上がり過ぎたか思わず相手の脚に触れてしまい、主審は試合を止めてボールに2つ目の「指導」を宣告。意外な形で試合が終わった。地元ハンガリーは81kg級のチョクナイ、90kg級のトートに続く3位決定戦3度目の挑戦も落とし、今大会はメダルなしに終わった。

【決勝】
テディ・リネール(フランス)○膝車(GS1:49)△ダヴィド・モウラ(ブラジル)
リネールが右、モウラが左組みのケンカ四つ。格下だが今大会好調で変調の一撃も懐に呑むモウラを迎えての決勝に、リネールは万が一にもアクシデントを起こさぬよう、普段以上に慎重を期す。モウラがそれに乗る形でスローペースな試合を志向、両者の思惑が乗算される形で組み手のやり直しを中心に置いた膠着が続き、2分42秒、両者に「指導」。この直後、組み手争いからモウラが釣り手を奥襟に叩き入れると、リネールはすかさず反応して脇を掬って右内股。場外まで追い込んでモウラを畳に這わせる。突如生まれた大きな動きに会場が沸くも、以降は再び膠着状態に戻って本戦が終了。両者「指導1」のタイスコアのまま試合はGS延長戦へと突入する。GS23秒、モウラの左小内巻込にリネールが右内股で応じるが、この際リネールの足にモウラが乗り上げるような形になってしまい、リネール激しく痛がる。何事もなかったかのように試合が再開されるが、足の痛みにやや弱気になったか、ここからリネールは今大会の試合ぶりからすると「らしくない」、かつての悪癖である浮技での引き込みを連発する。やや流れを失ってしまったように思われたが、しかしGS1分47秒に試合の様相一転。リネールが釣り手で奥襟、引き手で袖を握る良い形を作ると、これを嫌ったモウラが時計回りの「出し投げ」の要領で引き手を切り、切った後のオートマティズムで一歩前へ。瞬間、リネールは切られた引き手でそのまま脇を掬って右方向への膝車。出足を抑えられる形となったモウラはそのまま時計回りにふわりと飛び、主審は迷わず「一本」を宣告。リネールが世界選手権で8度目、五輪を入れると10度目となる100kg超級の世界チャンピオンに輝いた。

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ダニエル・アレストファレルと戦う王子谷剛志

【日本代表選手勝ち上がり】

王子谷剛志(旭化成)
成績:3回戦敗退


[2回戦]
王子谷剛志○横四方固(4:00)△ムフシン・ヒソミディノフ(ウズベキスタン)
王子谷が右、ヒソミディノフが左組みのケンカ四つ。釣り手のみを持った状態ので引き手争いが続き、58秒両者に片手の咎で「指導」。以降、王子谷が引き手を得ては右大外刈、右体落、軸足を回しこんだ右内股と散発ながら攻撃を試みるが、どれも明らかに浅く相手を崩すまでには至らない。しかし一方的に積んだ手数が評価され、3分5秒にはヒソミディノフに消極的の咎により2つ目の「指導」追加。これでヒソミディノフは後がなくなったはずだが、しかしあくまで組み合おうとせずなかなか試合は動かない。本戦終了間際の3分48秒、王子谷は相手を場外際に追い詰めて引き手で相手の肩口を握ると、左を一歩踏み込んで時計回りの膝車。ハンドル操作を効かせて浴びせ倒して「技有」を得る。そのまま横四方固で抑え込み「一本」に到達。王子谷が落ち着いた戦いぶりで初戦を突破した。

[3回戦]
王子谷剛志(日本)△優勢[技有・内股透]〇ダニエル・アレストルフェル(オーストリア)
王子谷が右、アレストファレルが左組みのケンカ四つ。アレストファレルの組み手の切り離し、やり直しに王子谷が付き合わされる体で試合が膠着、1分1秒双方に「指導」。王子谷は引き手を持って前進、しかし逃がすまいとの意識が先行したか、袖口をピストルグリップで握り込んだまま試合を進めてしまい1分28秒に2つ目の「指導」失陥。スコア上後のなくなってしまった王子谷緩やかながらさすがにペースを上げ、軸足を回しこんでの右内股で思い切り良く攻撃、直後の1分44秒アレストファレルにも「指導2」宣告、これでスコアはタイとなる。王子谷、2分16秒には小内刈から右内股と繋いで「技有」獲得、ペース緩やかながらまずまず危なげのない戦いぶり。
しかし1分16秒に大事故。この緩やかなペースに乗って、おそらくは牽制で放った支釣込足を狙われ、相手に当てた右足を右小内刈で刈られて意外な「技有」失陥。さらに場が冷めぬまま、取り返さんと出足払から教科書通りのタイミングで放った右内股にスピードが足りず、内股透を食って2つ目の「技有」も失う悪手。残り時間はこの時点でわずかに34秒、以降はチャンスらしいチャンスを作れぬまま試合終了。初の世界選手権を予選ラウンドで終えることとなった王子谷はさすがにガックリ。


原沢久喜(日本中央競馬会)
成績:2回戦敗退


[2回戦]
原沢久喜(日本)△GS優勢[指導2](GS1:43)〇ステファン・ハイギ(オーストリア)
原沢が右、ハイギが左組みのケンカ四つ。引き手争いが続き、ハイギは手数を積むべく折を見て左体落で攻撃。26秒原沢に片手の咎で「指導」。なかなか技の出ない原沢、1分50秒に低い軌道の右内股でハイギを吹き飛ばすものの、踏み込み、引き出しとも浅く、腹這いに伏せさせてしまい「待て」。原沢2分18秒の右内股は投げ切れず「待て」、踏み込みが浅く、挙げた脚が自身の右横に着地して相手を外側に逃がす、原沢が悪い時の兆候あり。直後ケンケンで追った右大内刈も立ったまま受け切られてしまうが、攻めの姿勢が評価され、2分35秒ハイギに「指導」。
以降も原沢は相手を捕まえきれず。攻めが遅く、時折繰り出す技も踏み込みが一歩遅く取り切れない。攻めの遅さゆえ片手、両手と組み手を直されてしまい、結果として右一本背負投に左袖釣込腰の侵入も許して戦線は膠着。きっかけ掴めぬまま試合はGS延長戦へ。
延長30秒過ぎからハイギが左大内刈、左体落と手数を積み始める。原沢は右内股を撃ち返すがペースが落ち始め、一発を狙い過ぎの感あり。1分7秒に放った右内股が左体落に切り返されると以降は意外なほど技が止まり、右外巻込、左大内刈と続いたハイギの技をほぼ静観。1分43秒に主審が試合を止め、原沢に消極的との咎で2つ目の「指導」を宣告。銀メダリスト原沢の初戦敗退が決まった。

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3回戦、リネールがフレディ・フィゲロアから大外刈「技有」

【テディ・リネール勝ち上がり】

[1回戦]
テディー・リネール(フランス)崩上四方固(3:08)△マイサラ・エルナガル(エジプト)
右相四つ。リネールは引き手を折り畳んでの右大外刈に、ケンケンで追い込む右大内刈と積極的に仕掛けるが、いずれの技も不発。しかし奥襟を持って組み勝ち続けることで相手にはプレッシャーが掛かり、1分17秒に片襟、2分11秒に首抜きでそれぞれ「指導」が与えられる。後のなくなったエルナガルが前に出てくると、これまでよりも一層深く釣り手を送り込み、相手が応じて背中を抱いてくる瞬間を狙って左方向への膝車を放つ。ハンドル操作の良く効いた一撃にエルナガル堪らず吹き飛び「技有」。リネールはそのまま落ち着いて崩上四方固で抑え込み「一本」。リネール、悠々初戦を突破。

[2回戦]
テディー・リネール(フランス)○支釣込足(2:18)△ウルジバヤル・デューレンバヤル(モンゴル)
右相四つ。ウルジバヤルは引き手を取らせまいと、体を開いた左構えでリネールの脇を突いて対峙。50秒、あくまで引き手を持ち合わないウルジバヤルに「指導」。これを受けたウルジバヤルは引き手は掌を絡ませながら、釣り手で脇を差しての密着を志向して主戦場を釣り手に移す。これにリネールが応える形で膠着が生まれ、1分34秒には両者に「指導」。これでウルジバヤルの反則累積は「2」。後のなくなったウルジバヤルは前に出て組み合うようになり、結果リネールは引き手で袖口を持って内側に折りたたみ、釣り手で奥襟を得るという完璧な形を完成させる。2分17秒、展開に窮したウルジバヤルが場外に押し出そうと前進圧力を強めると、リネールはこれを利用して右方向への支釣込足。相手がバランスを崩したところを乗り上げるように浴びせ倒して鮮やか「一本」。リネールは初戦に続き、まず展開を積み上げ、最後は足技で仕留めるという盤石の試合運びを披露した。

[3回戦]
テディー・リネール(フランス)○横四方固(2:56)△フレディ・フィゲロア(エクアドル)
右相四つ。リネール先に引き手で袖を得て、内側に畳みながら釣り手で奥襟を狙う。50秒、リネールの釣り手を嫌ったフィゲロアに「取り組まない」咎で「指導」。続く攻防でもリネールは早々に引き手を得て同様の形を作り、右大外刈、右大内刈と浅く技を出しながら勝負に出るチャンスを窺う。相手が左小内巻込に掛け潰れる策に出たことで展開が一度切れるが、再開と同時に今度は引き手で袖口、釣り手で奥襟を得た万全の形を完成。リネール勝負の場面と踏み、相手を時計回りに引き出して右大外刈に飛び込む。少々拘束が緩んで相手と距離が出たため横方向に刈る形となってしまったが、釣り手方向に回りながら腰を深くまで送り込み、最後は体を捨てて巻き込んで「技有」を獲得。そのまま向き直って横四方固で抑え込み「一本」。

[準々決勝]
テディー・リネール(フランス)○横四方固(2:09)△ラファエル・シウバ(ブラジル)
巨漢シウバを畳に迎えての大一番は右相四つ。リネールは先に引き手で袖口を得ると、相手の首裏に釣り手を送り込み無理やり頭を下げさせ、時計周りの支釣込足、さらにたたらを踏んだシウバの右足を右で蹴り崩す。シウバは引き手で襟を突く守備志向でのスタートだったが、この足技の攻勢には耐えがたく畳に這って「待て」。続く展開でもリネールは先に引き手を得て、釣り手で首裏を抑えて頭を下げさせる同様の手順を選択。シウバが堪え切れずに前傾姿勢になると引き手を帯に持ち替え、得意の浮技に滑り込む。既にほぼ死に体となっていたシウバはゆっくりと畳に転がり落ちて「技有」。リードを許したシウバは主審の「はじめ」の声を聞くなり勢い良く組み付くが、リネールはシウバのラッシュが止まるまで落ち着いてこれを捌き続け、頃合い良しと見るや引き手で袖口、釣り手で奥襟を得る完璧な形を作り上げる。先ほどのように頭を下げさせて潰すという策は採らず、横変形気味に構え、時計回りに相手を引き出し続けて明らかに投げを狙う構え。1分45秒、引き手を高く釣り上げると、時計回りの支釣込足。横変形に対抗して右側に重心を掛けていたシウバは堪らず吹っ飛び、リネール両手の拘束を緩めずに浴びせ倒して「技有」。「一本」を確信したリネールは一度立ち上がりかけるが、コーチの声に気づいて慌てて抑え込み、2分9秒「一本」を獲得。リネール、強敵シウバもまさしく一蹴。圧倒的な強さで準決勝進出決定。

[準決勝]
テディー・リネール(フランス)○GS技有・浮技(GS0:29)△グラム・ツツシビリ(ジョージア)
左組み、袖口を絞っての左右の担ぎを得意とし、今季大型選手を屠り続けて欧州チャンピオンの座に就いたツシシビリはリネールが苦手とするタイプの要件をことごとく満たす曲者。リネールもこの点は十分意識している模様で表情にはこれまでの試合とまったく違う緊張感あり。
リネールが右、ツツシビリが左組みのケンカ四つ。ツツシビリは釣り手で背中を握り「出し投げ」の要領でリネールを崩し、引き手で袖口を絞る。リネールさせまいと切り、自らも引き手で袖口を絞ってと必死の対応。相手に応じて自分も体を折って圧を掛け合う、姿勢の良さが売りのリネールとしては非常に珍しい絵。ツツシビリが左体落に左背負投、リネールは応じての右内股を放って時間が推移。1分23秒ツツシビリにのみ「取り組まない」咎の「指導」。
直後リネールはポケットグリップに近い形でツツシビリの右袖を絞る。手を数度振って、これが切れないと見たツツシビリがそのまま低く左袖釣込腰に潜り込むと、リネール大きく崩れ、ツツシビリの背中越しに転がり落ちて畳に這う。あわやポイント失陥という場面に観客席は大歓声、リネールはカメの体勢で待ちに出る、これも非常に珍しい画でこのシークエンスを終え「待て」。

戦いに手ごたえを得たツツシビリは左で背中を叩いて前へ。嫌ったリネールが場外際で内股を仕掛けて流れを切ろうとすると、止め、袖に握り替えて肘を押し付けて送り出し、背中を向けさせると出足払で蹴りと攻勢を演出。2分42秒には両脇を差しての左大外刈と強気の技も繰り出し、「出し投げ」から支釣込足で蹴り崩した直後の2分50秒にはリネールにも「指導1」が与えられる。

3分28秒、ツツシビリの左背負投をリネールが右払腰に切り返して「待て」。ツツシビリが左袖釣込腰を数度放つと、残り9秒で両者を開始線に戻した主審がグルグルと手を回し始める。すわ、リネールへの「指導」かと観客色めき立つが、インカムで指示が出た模様で主審突如動きを中止して試合続行。結局の試合はGS延長戦に縺れ込むこととなる。

延長戦開始早々、ツツシビリがリネールの右へと回り込みながら払釣込足。右で相手の右を蹴るとリネールはドウと崩れ、肘から畳に落下。「技有」が宣告されてもおかしくない投げであり、主審も試合を止めて映像チェックの結果を待つこととなる。場内はまさしく騒然。

結果、これはノーポイント。歓声と怒号が交錯する中試合は再開され、ここでリネールは引き手で袖口を絞り、釣り手で背中を抱いてツツシビリを腰の入れ合いに誘う。ツツシビリが応じるとこれを乗り越え、相手の左前隅に体を投げ出して浮技。相手がついてくると見るや隅返様に蹴って回旋の威力を増し、決定的な「技有」獲得。

大熱戦はリネールの勝利に収着。開始線でツツシビリと握手したリネールは相手の手を取って挙げ、次いで拍手しながら離れてその健闘を称えた。

[決勝]
テディ・リネール(フランス)○膝車(GS1:47)△ダヴィド・モウラ(ブラジル)
※前述のため省略

本文:古田英毅
戦評:古田英毅/林さとる

※写真は権利者の許諾を得て掲載しています

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