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【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】アルセマン、ユーら「ロンドン-リオ」組の強豪たちに、朝比奈沙羅ら今季勃興の新勢力が挑む・女子78kg超級概況×有力選手紹介

(2017年9月2日)

※ eJudoメルマガ版9月1日掲載記事より転載・編集しています。
【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】アルセマン、ユーら「ロンドン-リオ」組の強豪たちに、朝比奈沙羅ら今季勃興の新勢力が挑む・女子78kg超級概況×有力選手紹介
■ 階級概況
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78kg超級実力推測マップ

ロンドン―リオ期に世界選手権で2度優勝を果たしたイダリィス・オルティス(キューバ)は依然として長期の休養を続けているものの、それ以外の主要選手はみな何らかの形で畳へと復帰。本階級ではリオデジャネイロ五輪後に主要選手の引退や階級変更は行われておらず、基本的にはロンドンーリオ期の序列をそのまま引き継ぐ形で1年間が経過した。もともと上位選手は特定の大会にフォーカスして結果を残すタイプが多いため、そもそも普段の大会出場は少なめ。その点でも昨年までとそれほど各大会ごとの様相も実は変わってはいない。

とはいえ、何人かの選手が新たに中心選手として台頭してきており、ひとまずはそれらの選手を紹介しておきたい。

まず、メダルに絡む可能性が最も高いのが、朝比奈沙羅(東海大3年)。朝比奈は昨年12月のグランドスラム東京大会、今年2月のグランドスラム・パリ大会、そして5月のグランドスラム・エカテリンブルグ大会と大規模大会を3連勝中。本大会が初の世界大会となるため、ターゲットを定めて本気を出した海外の強豪とは戦ったことがないが、国内大会での強さを見る限り表彰台に絡む可能性は十分と評して良いだろう。

次に注目しておきたいのは、イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)。もともとはウクライナの2番手選手だったが、若手のエリザヴェータ・カラニナ(ウクライナ)の台頭によって3番手まで降格。しかし、そんななかで出場した今年2月のグランプリ・デュッセルドルフ大会で、この大会が復帰戦であった田知本愛(ALSOK)をGS延長戦の末に右小外刈「技有」で破って優勝を飾っている。田知本の勝ち上がりは決して悪いものではなく、この僅か2ヶ月後に行われた皇后盃での田知本の活躍を知る日本のファンであればなおさら、「田知本を投げて破る」ということの恐ろしさがわかるはずだ。キンゼルスカはその後出場機会を求めてアゼルバイジャンへと国籍変更を行っており、移籍選手が成績を向上させる業界全体傾向の傾向までを考えあわせれば、今大会の台風の目になる可能性は十分にあると考えるべきだろう。

この2人以外では現在世界ランク1位に座る今年のヨーロッパ選手権王者マリーナ・スルツカヤ(ベラルーシ)もこの1年間で大きく出世した選手であるが、現在のヨーロッパの女子最重量級はそれほどレベルが高くはなく、この大会で対戦した選手も全員が非一線級。試合内容を観察してみても、トップ層に通用する力はないと思われる。

というわけでまず注目の新興勢力と3名を紹介してみたわけだが、今大会の中心となるのは、あくまでロンドン―リオ期に階級の中心を成していた強豪たち。先にも軽く触れたが、このクラスタの選手は全員が照準を合わせた大会では異次元の強さを発揮し、大きな大会になればなるほど強さを増して臨んでくるという特徴がある。

今大会の優勝候補ナンバーワンは2014年チェリャビンスク世界選手権王者のユー・ソン(中国)。調子に波のある選手が多い女子超級にあって、その抜群の安定感と平均値の高さは脅威だ。五輪の翌年という時期的要因もあり多くの選手はそこまで仕上がってはいないはずで、そういった「平均値での地力争い」という様相で大会が進めば、もっとも優勝の可能性が高いのはこのユーだろう。

逆に大会の様相が全員が好パフォーマンスを発揮する「最高到達点比べ」となった場合に強いのはなんといってもマリアスエレン・アルセマン(ブラジル)。周囲の様相に関係なく、この人が好調時のパフォーマンスを発揮すれば実は今大会の参加者にこれを止め得る選手はいないのではないかとすら思われる。

その他、昨年髪を往年の女子プロレスのような派手な色に染めて登場して以降なぜかパフォーマンスが明らかに向上しているマー・スースー(中国)、アスリート体型で強力な担ぎ技を持つキム・ミンジョン(韓国)らが上位候補。リオデジャネイロ五輪金メダリストのエミリー・アンドル(フランス)は、五輪以前も、五輪以降も良いパフォーマンスを見せておらず、あの金メダル獲得劇はあくまでピンポイントの「確変状態」であったと捉えておくべきだろう。下手をすると、次に力を発揮するのは3年後だ。

■ 有力選手
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朝比奈沙羅(日本)

朝比奈沙羅(日本)
ASAHINA Sarah
20歳 1996/10/22
WR:3位 組み手:右組み
得意技:右払腰、支釣込足
使用技:右内股、右払巻込、膝車

2012年皇后盃全日本女子柔道選手権において弱冠15歳、高校1年生にして3位を獲得。今年はついに同大会で優勝を果たして世界選手権代表の座を射止めた。2011年世界カデ選手権優勝、2014年世界ジュニア選手権優勝と、これまでに各カテゴリで世界一に輝いており、今大会でシニアカテゴリでの世界一奪取を目指す。山部佳苗(ミキハウス)と田知本愛(ALSOK)が中心となったリオデジャネイロ五輪の代表レースでは一時存在感が薄くなったが、昨年12月のグランドスラム東京大会からグランドスラムを3連勝、リオ五輪直後の空白期間にあっという間に本階級の第一線へと躍り出た。同じ東京五輪世代として実力、評価ともに急上昇している素根輝(南筑高2年)は団体戦の代表として出場、朝比奈としては個人戦でしっかりと結果を出して少しでも優位な位置を確保したいところ。

朝比奈はオーソドックスな払腰ファイター。決して技が切れるタイプではないが、二本持った状態から実直に右払腰、支釣込足で攻め抜くことで最終的には投げる、もしくは相手に「指導」を積んで勝利するというのが勝利パターン。特に支釣込足は体格に比して足腰が弱い選手の多い重量級において絶大な威力を誇っており、朝比奈の戦術の中心となっている。朝比奈のなによりの強みは誰と戦う時も自分を高く買って上の立場に置くことができる精神性。相手が格上でも一切怖がらずに上から目線で攻めまくることができる。

【おもな戦績】
2017年4月 皇后盃全日本女子柔道選手権 優勝
2014年 世界ジュニア選手権 優勝
2012年 皇后盃全日本女子柔道選手権 3位 ※15歳
2011年 世界カデ選手権 優勝

【最近の成績】
2017年5月 グランドスラム・エカテリンブルグ 優勝
2017年2月 グランドスラム・パリ 優勝
2016年 グランドスラム東京 優勝

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ユー・ソン(中国)

ユー・ソン(中国)
YU Song
31歳 1986/8/6
WR:15位 組み手:右組み
得意技:右外巻込、右大外刈
使用技:右内股、右小外刈、左大外刈、浮技

2015年アスタナ世界選手権王者。イダリス・オルティス(キューバ)とともに優勝候補として臨んだ2016年のリオデジャネイロ五輪では突如爆発したエミリー・アンドル(フランス)に準決勝で敗れて3位に終わった。

巨体でありながら小回りが利くため、右内股や右小外刈などある程度切れ味のある技も使用できる。奇襲技として左大外刈を保有しており、釣り手で奥襟を持った状態から引き手で脇を掬って仕掛ける。試合の流れや審判傾向に合わせて戦い方を変える戦術派としての側面もあり、

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 3位
2015年アスタナ世界選手権 優勝
ワールドマスターズ2連覇(2013年、2015年) ※2014年は開催されず。

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マリアスエレン・アルセマン(ブラジル)

マリアスエレン・アルセマン(ブラジル)
ALTHEMAN Maria suelen
29歳 1988/8/12
WR:6位 組み手:
得意技:左払腰
使用技:左払巻込、左大外刈、谷落

2013年、2014年の世界選手権銀メダリスト。リオデジャネイロ五輪ではローパフォーマンスのまま初戦でキム・ミンジョン(韓国)に敗れた。密着パワーファイターであり、奥襟を持って間合いを詰め、左払腰や左払巻込を仕掛ける。左払腰から切り返しての谷落があるくらいで柔道の組み立ては比較的シンプルだが、ユー・ソンを真っ向からねじ伏せた馬力は脅威。2014年世界選手権決勝のオルティスとの投げ合いはロンドン―リオ期屈指の好試合であった。力むと顔が笑っているように見え、その表情のまま相手を豪快に投げ、抑える画は迫力満点。

【おもな戦績】
2014年 チェリャビンスク世界選手権 2位
2013年 リオデジャネイロ世界選手権 2位
2012年 ロンドン五輪 5位

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キム・ミンジョン(韓国)

キム・ミンジョン(韓国)
KIM Minjeong
29歳 1988/8/8
WR:8位 組み手:左組み
得意技:左払腰、左袖釣込腰
使用技:左払巻込、左大外刈、

リオデジャネイロ五輪5位。
「カベ」タイプが多かった同国の前世代たちと異なり動き素早く、小回りが効く。スピードを活かした組み際の左払腰や左大外刈が得意。両袖からの低い左袖釣込腰も得意としており絞り合う展開には注意、今年2月のグランドスラム・パリ大会ではこの技で朝比奈沙羅(東海大3年)を転がし「技有」を奪っている。

【おもな戦績】
2017年4月 アジア選手権 2位
2017年2月 グランドスラム・パリ 3位
2016年 リオデジャネイロ五輪 5位
2016年 アジア選手権 優勝

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マー・スースー(中国)

マー・スースー(中国)
MA Sisi
29歳 1988/6/26
WR:20位 組み手:右組み
得意技:右払巻込
使用技:支釣込足

2016年ワールドマスターズ・グアダラハラ大会2位。昨年シーズン途中から女子プロレスラーのような派手な色に髪を染めてイメージチェンジ。それまでは組み勝って圧殺することにより「指導」を奪う圧殺ファイターだったが、これを期に強引な右払巻込を連発する積極的なスタイルへと変貌を遂げた。

【おもな戦績】
2015年 アスタナ世界選手権 5位
2016年 ワールドマスターズ・グアダラハラ 2位
2016年 グランドスラム・アブダビ 1位

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エミリー・アンドル(フランス)

エミリー・アンドル(フランス)
ANDEOL Emilie
29歳 1987/10/30
WR:9位 組み手:右組み
得意技:右大内刈
使用技:右払巻込、右大内刈、右内股、右小外刈、右一本背負投

2016年リオデジャネイロ五輪金メダリスト。リオ五輪ではノーマークの位置から、異常な集中力を発揮、ユー・ソン(中国)、イダリス・オルティス(キューバ)と優勝候補2人を立て続けに破って優勝を果たした。得意技は変形の右大内刈であり、釣り手を肩越しに入れた状態から巻き込み技のように腰を切りつつ仕掛ける。最近はクロスグリップからの右払巻込などクロス状態からの攻めのバリエーションを増やしてきている。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 優勝
2014年 チェリャビンスク世界選手権 3位
ヨーロッパ選手権 2連覇(2014年、2015年)

【最近の成績】
2017年2月 グランドスラム・パリ 3位

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イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)

イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)
KINDZERSKA Iryna
26歳 1991/6/13
WR:18位 組み手:左組みベースの両組み
得意技:左払巻込
使用技:左大外巻込、右内股巻込

サンタ・パケニテ(リトアニア)に次ぐ大型選手。体格を活かした巻き込み技を得意とする。基本は左組みだが時たま右組みにスイッチして右内股巻込などの巻き込み技を繰り出す。今年2月のグランプリ・デュッセルドルフ大会では準々決勝で素根輝(南筑高3年)を左外巻込で2度投げ付け最後は袈裟固「一本」で破り、決勝では田知本愛(ALSOK)を相手に右組みにスイッチしての右小外掛で一本勝ち、日本人選手2名を立て続けに破ってワールドツアー大会初優勝を達成しており、注意が必要。

【おもな戦績】
2017年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 優勝
2015年 グランドスラム東京 3位
2012年 ロンドン五輪 5位

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カイラ・サイート(トルコ)

カイラ・サイート(トルコ)
SAYIT Kayra
29歳 1988/2/139
WR:4位 組み手:右組み
得意技:浮落
使用技:隅落、谷落、右内股、右大内刈

2015年にフランスからトルコに国籍変更したベテラン選手。2016年のヨーロッパ王者でリオデジャネイロ五輪では3位決定戦で山部佳苗(ミキハウス)に敗れ5位に終わっている。
具体的な技で相手を投げるというよりは、足技や腰を切る動作で「際」を作り崩れた相手を浮落や隅落で押し込んで抑えこむ。体幹が強くなかなか崩れない。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 5位
2016年 ヨーロッパ選手権 優勝

【最近の成績】
2017年4月 ヨーロッパ選手権 5位
2017年3月 グランドスラム・バクー 2位

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ヤスミン・クルブス(ドイツ)

ヤスミン・クルブス(ドイツ)
KUELBS Jasmin
25歳 1991/11/7
WR:位 組み手:左組み
得意技:支釣込足
使用技:左払腰、左払巻込、左小外刈、左内股

ツアー皆勤ながら未だ優勝経験はなし。他を圧する巨体であるが、足腰が弱く非常に脆い。実は返し技の保有がなく、思い切った技には意外にあっさりと飛ぶ。階級を代表する「カベ」であり勇気の指標である。この選手を思い切って投げに行けるかどうかは超級選手の精神的資質を測る何よりのベンチマーク。しかし、最近はいくらか地力が付いてきており、今年のグランドスラム・エカテリンブルグ大会では同国の伸び盛りの若手カロリン・ヴァイス(ドイツ)を豪快な支釣込足「一本」で一蹴。ドイツ一番手の座を譲るつもりはなさそうである。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 1回戦敗退
2015年 アスタナ世界選手権 5位
2014年 グランドスラム・バクー3位

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クセニア・チビソワ(ロシア)

クセニア・チビソワ(ロシア)
CHIBISOVA Ksenia
29歳 1988/7/13
WR:31位 組み手:左組み
得意技:左内股
使用技:左払巻込、左大内刈、谷落

名前に反して長身。柔道スタイルは至ってオーソドックス、奥襟を持っての左内股を起点に左大内刈や谷落で攻める。技自体にそこまでの威力はないが、長身を利しての圧殺戦法が厄介。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 1回戦敗退
2015年 アスタナ世界選手権 5位

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サンタ・パケニテ(リトアニア)

サンタ・パケニテ(リトアニア)
PAKENYTE Santa
26歳 1990/12/11
WR:12位 組み手:右組み
得意技:右大外刈、右払腰
使用技:右払巻込、右大外巻込、右小外掛、谷落

階級屈指の大型選手であり巨体を利した巻き込み技を得意としている。体が大きいだけではなく最低限の組み手技術やスピードも持っており、嵌った場合の攻撃力はかなりのものだ。リオデジャネイロ五輪では初戦で山部佳苗(ミキハウス)に敗れている。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 1回戦敗退
2015年 グランドスラム・バクー 2位

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ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)

ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)
CERIC Larisa
26歳 1991/1/26
WR:2位 組み手:両組み
得意技:内股、払腰
使用技:左右の大腰、左右の払巻込

近頃メキメキと力をつけてきた中堅選手の旗手。左右の組み手が効くうえに組み力もある厄介な選手だ。力関係が上の相手に対してはケンカ四つで組むため、この選手がどちらの組み手で組んでいるかで両者の力関係を測ることができる。両袖を握った状態から左右に巻き込み技を繰り出せるのも強み。

【おもな戦績】
2017年4月 ヨーロッパ選手権 3位
2015年 グランドスラム・パリ 3位
2013年 リオデジャネイロ世界選手権 5位

【最近の成績】
2017年5月 グランドスラム・エカテリンブルグ 5位
2017年4月 グランプリ・アンタルヤ 3位
2017年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 3位

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テッシー・サフェルコウルス(オランダ)

テッシー・サフェルコウルス(オランダ)
SAVELKOULS Tessie
25歳 1992/3/11
WR:11位 組み手:右組み
得意技:左一本背負投
使用技:右大内刈、右内股

リオデジャネイロ五輪7位、今大会で世界選手権は3回目の出場となる長身のアスリート体型選手。長身から繰り出す逆技の左一本背負投が最大の武器であり、長い手を利して相手と間合いを取り、一気に低く潜り込む。そこまで威力が高い技ではないが、この技を連発することで試合を組み立てている。機動力も高く追う展開になると厄介な相手だ。今年3月のグランドスラム・バクー大会では袖口グリップを駆使して優勝を飾っている。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 7位
2016年 グランドスラム・パリ3位

【最近の成績】
2017年3月 グランドスラム・バクー 優勝

文責:林さとる/eJudo編集部

※写真は権利者の許諾を得て掲載しています

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