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【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】新井千鶴が初優勝、70kg級に新時代到来告げる・女子70kg級即日レポート

(2017年9月2日)

※ eJudoメルマガ版9月1日掲載記事より転載・編集しています。
【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】新井千鶴が初優勝、70kg級に新時代到来告げる・女子70kg級即日レポート
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決勝を戦う新井千鶴とマリア・ペレス

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ペレスの掛け潰れに、新井がすかさず絞めを狙う。

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悲願の初優勝を決めた新井

ハンガリー・ブダペストで行われている世界柔道選手権は31日、日程第5日の男子90kg級、女子70kg級と78kg級の競技が行われ、70kg級は新井千鶴(三井住友海上)が優勝した。新井は2015年アスタナ大会(5位)に続く2度目の出場、今大会が初優勝。

今期ここまでの最重要大会であるグランドスラム・パリとグランプリ・デュセルドルフに優勝している新井は優勝候補の筆頭。この日も初戦から徹底警戒にあってなかなか自分の形を作らせてもらえなかったが、アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)に大内刈「技有」、アンカ・ポガニック(ポーランド)に小内刈「技有」、マリア・ポーテラ(ブラジル)にGS延長戦「指導2」と少ないチャンスを着実に生かして勝ちあがり、事実上の決勝と目された準決勝では世界選手権3度制覇の女王ジュリ・アルベール(コロンビア)に内股「技有」で勝利。決勝はマリア・ペレス(プエルトリコ)を片手絞「一本」に仕留めて優勝を決めた。

早くから才能を認められながらなかなか頂点に上り詰められなかった新井、アスタナ大会では線の細さを技の切れ味と気迫でカバーして戦っていたが、2年間で地力を上積みして今回は様相一転。まず力で勝つことを前提に持ち前の技術の高さを生かし、破綻のない順行運転のまま勝利に到達した。初優勝ながら勝つべくして勝ったとでもいうべき、風格ある内容での戴冠だった。

3位にはアルベールと、アスタナ大会2位で久々の躍進となったマリア・ベルナベウ(スペイン)が入賞した。

優勝候補の一角であったキム・ポリング(オランダ)は復帰戦ゆえか落ち着かないパフォーマンスに終始し、初戦は勝ち上がったもののアルベールとの注目対決は払巻込「技有」から後袈裟固に抑え込まれて完敗。アルベールの強さを引き立てたのみで、予選ラウンドで姿を消した。

入賞者リスト、優勝者のコメント、準々決勝以降のスコアと3位決定戦以降および日本代表選手全試合の戦評は下記。

■ 70kg級
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70kg級メダリスト。左からペレス、新井、アルベール、ベルナベウ。

(エントリー44名)

【入賞者】
1.ARAI, Chizuru (JPN)
2.PEREZ, Maria (PUR)
3.ALVEAR, Yuri (COL)
3.BERNABEU, Maria (ESP)
5.GAHIE, Marie Eve (FRA)
5.NIANG, Assmaa (MAR)
7.KWON, Sun Yong (PRK)
7.PORTELA, Maria (BRA)

新井千鶴選手のコメント
「世界選手権はどうしても取りたかったタイトル。優勝して、金メダルを獲ることが出来て本当にうれしいです。(-決勝の絞め技について?)固技のチャンスがあったらどんな時でも移行、立ち技からの移行を早くしよう、と考えていたので。手が首に入った瞬間に『絞めしかないな』と思ってすぐに仕掛けました。軽量級が良い流れを作ってくれて、これを重量級に繋げたいと気合いが入っていました。獲れてよかったです。(-世界一になって、次の展望は?)東京オリンピックに繋がる、良い形が出来たと思います。これからもひとつひとつ、勝ちを重ねていきたいです」

【準々決勝】
アッセマ・ニアン(モロッコ)○優勢[技有・浮技]△クォン・スンヨン()
マリア・ペレス(プエルトリコ)○優勢[技有・袖釣込腰]△マリーイヴ・ガイ(フランス)
新井千鶴○GS指導2(GS4:40)△マリア・ポーテラ(ブラジル)
ジュリ・アルベール(コロンビア)○後袈裟固(1:17)△マリア・ベルナベウ(スペイン)

【敗者復活戦】
マリーイヴ・ガイ(フランス)○優勢[技有・横車]△クォン・ユジョン(北朝鮮)
マリア・ベルナベウ(スペイン)○優勢[技有・浮落]△マリア・ポーテラ(ブラジル)

【準決勝】

マリア・ペレス(プエルトリコ)〇優勢[技有・袖釣込腰]△アッセマ・ニアン(モロッコ)
新井千鶴(日本)○優勢[技有・内股]△ジュリ・アルベール(コロンビア)

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3位決定戦、アルベールがマリーイヴ・ガイから小外掛で2つ目の「技有」

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3位決定戦、マリア・ベルナベウがアッセマ・ニアンから「技有」

【3位決定戦】
ジュリ・アルベール(コロンビア)○後袈裟固(2:04)△マリーイヴ・ガイ(フランス)
右相四つ。開始直後の15秒、ガイは組み際に右大外巻込を放って「技有」を先制する。しかし直後の40秒、アルベールは何事もなかったかのように右払巻込で「技有」を奪取、あっという間にスコアをタイに戻す。ガイはしっかり組み合っては分が悪いとみたか、以降は組むとすぐに巻き込み潰れる戦法を選択。しかし、この組み際勝負もアルベールの土俵。1分26秒、アルベールは釣り手を肩越しに叩き入れるなりまたもや右払巻込、これで2つ目となる「技有」を追加する。このポイントは直後に取り消されてしまったがアルベールは冷静。1分41秒、両者クロスグリップで組み合ったところから右大外刈。ガイがこれを返そうと後ろ回り捌きの要領で一歩下がると、すかさず左小外刈に繋いで相手の軸足を刈り取り、叩き落として「一本」を獲得する。これもすぐに「技有」に訂正されてしまったが、アルベールは既に後袈裟固で抑え込んでおり問題なし。アルベールが格の違いを見せつけて表彰台を確保した。

マリア・ベルナベウ(スペイン)○反則[指導3](3:47)△アッセマ・ニアン(モロッコ)
右相四つ。ベルナベウ鼻息荒く突進、激しい釣り手の叩き合いに勝利する形で大内刈を放ち攻勢。47秒ニアンに「極端な防御姿勢」による「指導」。直後ベルナベウが勢い良く奥襟を叩くと、ニアンはカウンターで横車。しかしベルナベウが大内刈の形に足を置いて踏ん張ると自爆して落下、ベルナベウが被さると主審コントロール権を認めてベルナベウの「技有」を宣告する。以後は奥襟の叩き合いも、リードを背にベルナベウが比較的余裕を持って試合を展開。2分10秒にニアンが右小外掛で大きくベルナベウを崩す場面があったが、大枠動きのないまま試合は終盤戦へ。
残り1分3秒、ニアンの巴投をベルナベウが潰すと主審的確に見極めニアンに偽装攻撃の「指導2」。そして残り13秒、ニアンが自身の右に走り込みながら横巴投を狙うも、ベルナベウが動かぬまま叩き落すと、ニアンは自分だけが斜めにダイブする形で畳に落ちることとなる。両手も完全に放しており、主審さすがにこれは見逃せず。偽装攻撃の「指導3」が与えられて試合は終了となった。

【決勝】
新井千鶴(日本)○片手絞(2:23)△マリア・ペレス(プエルトリコ)
新井が左、ペレスが右組みのケンカ四つ。新井が組むとペレス嫌って立ち位置と構えを直すすことを続けるが、新井は両襟で相手を捕まえ、釣り手の位置を上げながら一貫して前進。ペレス釣り手を突っ張って耐えるもいつの間にか畳の隅まで追い込まれており、新井はそのままペレスを試合場の外に出すとしばし固定。41秒ペレスに場外の咎で「指導」。
新井が釣り手で横襟を掴むと、ペレスは外巻込を組み手と逆の左へ放つ奇襲。しかし新井はなんなく捌くと寝技へ移行。伏せた相手の右腕を早々に括ると、これを起点に肘を左体側に入れ、胸で相手を押し、さらに足を持ってめくり、と抑え込みを狙ってじっくり、染み込ませるように手順を進行。しかしようやく捲ったところでペレスが足を絡み、主審は「待て」で攻防を止める。
直後、左構えで組み手争いを進めていたペレスが右一本背負投。新井素早く潰すと、襟を握っていた右を素早く相手の首に滑り込ませて「腰絞め」。まず相手の頭を圧力で潰し、次いで残った左で足を抱えながら反時計回りに腰を切る。逃れようがない形で絞め上げられたペレスはあっという間に観念、無念の表情で「参った」。この瞬間新井の世界選手権初制覇が決まった。

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2回戦、新井千鶴がアンナ・ベルンホルムから大内刈「技有」

【日本代表選手勝ち上がり】

新井千鶴(三井住友海上)
成績:優勝

[2回戦]
新井千鶴(日本)○優勢[技有・大内刈]△アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)
新井が左、ベルンホルムが右組みのケンカ四つ。新井は試合が始まると2度、3度と跳ねて己の動きを確認、コンディションは悪くない様子。ベルンホルムは手先を絡ませ、長いリーチで釣り手を張ってと展開を先に送り、自身優位の形のときのみ組もうという構え。新井は両襟の大内刈、片手で引き出しながらの左小内刈など撃ち込み、崩しながら良い組み手を作ろうと狙う。1分40秒、新井の右を両手で手繰り続けたベルンホルムに「指導」。続く展開は新井がなかなか釣り手の肘を入れられず膠着、2分18秒双方に「指導」。
試合時間3分に迫らんとするところで、新井がついに肘を内側に入れたまま奥襟を確保。ベルンホルム嫌って体勢を横にずらすが、新井この動きの戻りに合わせて左大内刈。棒が倒れる形でベルンホルム崩れ、新井は釣り手を顎に入れて拘束を利かせ「技有」。
ここから新井が袈裟固を狙うが、ベルンホルム体をずらして距離を作ると新井が首を抱えたままの左を狙って腕挫手固。新井が嫌うと食いついて腕挫十字固狙いに連絡する。危うく極まりかけるところであったが、新井なんとか振り払って「待て」。この時点で残り時間は20秒、このまま新井の優勢勝ちが決まった。

[3回戦]
新井千鶴(日本)○優勢[技有・小内刈]△アンカ・ポガニック(スロベニア)
左相四つ。ポガニックが新井の釣り手を絞り続け、これを新井が突破して襟を確保出来るかどうかが一貫してこの試合の最前線となる。新井1分を過ぎたところで奥襟を得、横変形にずれたまま足技を入れ続ける。ポガニックが大外刈に潰れることを許してしまってこのシークエンスは終わったが、流れを引き寄せ掛けている印象。1分45秒、引き手で袖、釣り手で低いながらも襟を得た新井が左小内刈。ドスっと音を残すイメージで足を叩かれたポガニックあっという間に転倒、新井は引き手の牽引を利かせて背中を着かせ、「技有」。
追い掛けるしかないポガニックだが、散発の大外巻込と払腰に潰れるのみでスクランブル
を掛けられず。新井の「技有」優勢で試合終了。

[準々決勝]
新井千鶴(日本)○GS優勢[指導2](GS4:40)△マリア・ポーテラ(ブラジル)
新井が左、ポーテラ左組みのケンカ四つ。一貫して釣り手を外側、かつ上側から持たされる新井はなかなか力が伝わる形を作れないが、その中を縫って左内股で攻撃。ポーテラは釣り手を内側から持ち、低身長を生かして新井の懐の中で右背負投を撃って試合を作る。
残り1分に差し掛かるところで新井が大内刈を軸に小さな山場を作り、3分9秒ポーテラに指導」。以後は組み手争いが続き、互いに少しでも優位な形が出ると仕掛け、あるいは切ってやり直すという動的膠着のまま本戦が終了。試合はGS延長戦へ。
ポーテラ一段ギアを上げて右背負投を連発。新井はこの手数志向に楔を入れるべく大内刈と内股で対抗し続ける。延長3分に差し掛かる時間帯で新井が片手の出足払、さらにタイミングの良い小外刈で立て続けにポーテラを畳に這わすがノーポイント、どころかポーテラが偽装攻撃気味の右背負投に潰れると新井に消極の「指導1」が宣告されてしまう。これでスコアはタイ。
以後もポーテラは担ぎ技に潰れ続ける。この半端な手数の累積が新井にとって吉と出るか凶と出るか非常に危うい時間帯であったが、4分40秒に試合決着。左一本背負投に座り込んで潰れたポーテラが一瞬思わず新井の脚を手で掬って投げ切ろうとしてしまい、主審は試合を中断。映像チェックの結果、ポーテラに足取りの「指導」が宣告され、意外な形で試合が終わった。

[準決勝]
新井千鶴(日本)○優勢[技有・内股]△ジュリ・アルベール(コロンビア)
事実上の決勝と目される大一番は新井が左、アルベールが右組みのケンカ四つ。新井まず引き手から組み手を開始、袖を掴むと左で膝車一撃、移動方向に技を合わされたアルベール大きく崩れて宙を舞うが、新井追わずにアルベールは腹這い「待て」。経過時間は26秒。
新井再び引き手から組み手を開始、アルベールいったん両袖で抑え、次いで釣り手を背中に回して深く横抱き。新井はこれを呼び込む形で奥襟を叩いて左内股、深さ十分だが崩しが足りず、アルベールが立ったままケンケンで耐えて「待て」。経過時間は56秒。

しばし両袖、そしてそれをいずれかが嫌って壊すという構図のやり直しが続く。1分20秒過ぎにアルベールが奇襲の左大外刈、新井は立ったままなんとかこれをやり過ごし、1分30秒過ぎには寝勝負から新井が引き込んで抑え込みの形を作り掛けるが、中途で動きが止まり「待て」。

っして1分55秒。アルベールが再び釣り手で脇を差し、腰を抱いて接近すると新井は奥襟を叩きながら左内股。前段の攻防同様脚を高く揚げたままアルベールに耐えられかかるが、頭を下げて体ごと畳に転がり込むとまず新井の体、時間差あってアルベールの体が体側から畳に落ちて「技有」。

残り時間は2分弱。アルベールは突進、新井は膝車でいなす良い対応を見せるが、アルベールがまず左で組んで右にスイッチする巧みな組み手を見せると奥襟深くへの侵入を許してしまい、2分30秒「指導1」失陥。

ここから互いが絞り合って両袖の攻防。新井は絞りながら足技を飛ばすが、「指導」リードのアルベールはどうやらこのアドバンテージを計算に入れて撃ち合いを受け入れ、長い蹴り崩し合いの末に2分11秒双方に「指導」。これで累積警告はアルベールが「1」、新井は「2」。アルベールは残り49秒で「指導」ひとつを奪えば逆転勝利となるお膳立てを整え、逆襲を狙う。

再開するとアルベール意外にも左構え。右で先に新井の左袖を抑え、左組みの選手が釣り手で奥襟を狙う形で左を叩き、戻し、また叩きと激しく動かす。明らかに本職ではないぎこちない動きではあったがアルベールは策士、この日も初戦では今までに見せたことのない右一本背負投フェイトの横掛という危険な技を度々繰り出していたこともあり、どんな刃物を懐に呑んでいるのかわからない。非常に嫌な攻防。

しかし新井は右一本背負投の奇襲という形でこれに応え、もろとも崩れると得意の横三角からしぶとく寝技を展開。さらに腕挫十字固を狙って「待て」が掛かったところで残り時間は僅か9秒。新井はもっとも危険な時間帯を寝技で乗り切ることに成功する。
そのままタイムアップ。大一番は新井の勝利に終着した。

[決勝]
新井千鶴(日本)○片手絞(2:23)△マリア・ペレス(プエルトリコ)
※前述のため省略

文責:古田英毅/林さとる

※写真は権利者の許諾を得て掲載しています

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