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【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】橋本壮市が持ち味発揮して初優勝、日本男子は3日目も全階級制覇を継続・男子73kg級即日レポート

(2017年8月31日)

※ eJudoメルマガ版8月30日掲載記事より転載・編集しています。
【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】橋本壮市が持ち味発揮して初優勝、日本男子は3日目も全階級制覇を継続・男子73kg級即日レポート
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橋本壮市とルスタン・オルジョフによる決勝戦

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橋本が体落「技有」

ハンガリー・ブタペストで行われている世界柔道選手権は30日、日程第3日目の女子57kg級、男子73kg級の競技が行われ、73kg級では日本代表の橋本壮市(パーク24)が優勝した。橋本は初優勝、日本代表男子はこれで60kg級の髙藤直寿(パーク24)、66kg級の阿部一二三(日本体育大2年)に続き、初日からの3階級すべてで金メダルを獲得する快挙。

橋本は3回戦ではヤコブ・イェツミネク(チェコ)からクラシカルな体落で「一本」、準々決勝はロンドン五輪66kg級金メダリストのラシャ・シャフダトゥアシビリ(ジョージア)を組み手争いの泥沼に嵌めて「指導2」対「指導3」の反則、準決勝では袖口を制して片手で押し込む「橋本スペシャル」と称するモダンな左袖釣込腰「一本」と、自らの持ち味を存分に発揮して決勝進出。決勝ではこの日絶好調で最大の難敵と目されたルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)に得意の密着を許さず、延長戦のワンチャンスを生かし体落「技有」を得て優勝を決めた。

3位にはアン・チャンリン(韓国)とガンバータル・オドバヤル(モンゴル)の実力者2名が入賞。アンは足首の負傷ゆえかリオ五輪後の低調を引きずったか決して調子は良くなく、序盤から得意の背負投を繰り出す場面、どころか自ら攻め込む場面自体が僅少だったが、際の強さと勝負どころの見極めの確かさを利してしぶとくトーナメントを登攀。敗れた準決勝のオルジョフ戦も含めて6試合中5試合で攻撃ポイントを獲得。「底値」の出来でも銅メダルに辿り着く地力の高さを見せた。ガンバータルは躍進の因となった袖口グリップを巧みに使いこなし、体の強さを生かした「一本」を連発。3回戦のアレクサンダー・ターネル(アメリカ)戦で見せた素晴らしい体落「一本」など他のモンゴルファイターとは一味違う業師ぶりも存分に見せつけ、充実の大会だった。

準々決勝でデニース・イアルツェフ(ロシア)から大内刈「技有」、崩袈裟固「一本」と連取するなど一本勝ちを連発して前半戦の主役だったヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)は準決勝で橋本、3位決定戦でガンバータルに連敗し、最終成績は5位だった。

入賞者リスト、橋本のコメントと準々決勝以降のスコア、3位決定戦以降と日本代表選手全試合の戦評は下記。

■ 73kg級
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73kg級メダリスト。左からオルジョフ、橋本、アン、ガンバータル。

【入賞者】
(エントリー73名)
1.HASHIMOTO, Soichi(JPN)
2.ORUJOV, Rustam(AZE)
3.AN, Changrim(KOR)
3.GANBAATAR, Odbayar(MGL)
5.HEYDAROV, Hidayat(AZE)
5.SHAVDATUASHVILI, Lasha(GEO)
7.IARTCEV, Denis(RUS)
7.SAIYINJIRIGALA,(CHN)


橋本壮市選手のコメント
「決勝のGS延長戦は何度も心が折れかけましたが、絶対に世界チャンピオンになるんだと自分に言い聞かせて頑張りました。これでリオデジャネイロ五輪の2位と3位を倒したので、あとは1位を倒すだけです」

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準々決勝、ヒダヤット・ヘイダロフがデニス・イアルツェフから大内刈「技有」

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3位決定戦、アン・チャンリンが試合を決める小外刈「技有」

【準々決勝】
橋本壮市○反則[指導3](3:13)△ラシャ・シャブダトゥアシビリ(ジョージア)
ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)○崩袈裟固(3:23)△デニス・イアルツェフ(ロシア)
ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)○大外刈(2:49)△サイインジリガラ(中国)
アン・チャンリン(韓国)○GS大内刈(GS0:55)△ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)

【敗者復活戦】
ラシャ・シャブダトゥアシビリ(ジョージア)○GS技有・小外掛(GS3:27)△デニス・イアルツェフ(ロシア)
ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)○反則[指導3](3:30)△サイインジリガラ(中国)

【準決勝】
橋本壮市○袖釣込腰(2:48)△ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)
ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)○外巻込(0:31)△アン・チャンリン(韓国)

【3位決定戦】
アン・チャンリン(韓国)○小外刈(GS3:08)△ラシャ・シャブダトゥアシヴィリ(ジョージア)
シャフダトゥアシビリが右、アンが左組みのケンカ四つ。この日決して出来の良くないアンだがこの試合は最終戦ということもあってか積極的。左出足払と小外刈を中心に試合を作り、56秒には左小外掛からシャフダトゥアシビリを追い込んで両者アドボードに激突するところまで突進して「待て」。以後も股中に脚を突っ込んだ巴投など取り味のある攻めを見せる。対するシャフダトゥアシビリは釣り手で背中を叩き、圧を掛けるのみで後手を踏む。
1分53秒、アンは釣り手を下から持つと得意の右「韓国背負い」。これが決まって「技有」。
シャフダトゥアシビリは敢えて攻防の速度を上げず、圧力を強めることで追撃。3分26秒には釣り手で背中、引き手で脇を差す万全の組み手からこれもゆっくりと隅返。ほとんど正面から抱いたままいったん自身が倒れ、次いで右肩越しにアンを転がして「技有」。これでスコアはタイとなり、試合は以後攻め合いのまま決定打なくGS延長戦へ。

延長はアンが左背負投に出足払と山場を作りながら抜け出すチャンスを伺い、シャフダトゥアシビリが右小外掛で一発を狙うという構図で進行。3分を超えたところで、シャフダトゥアシビリが釣り手をふと前襟から得意の背中へと持ち替える。しかし掴んだ、と思った瞬間アンの左小外刈が閃きシャフダトゥアシビリは仰け反って畳に落下。アンは胸を合わせて決め切り「技有」、これで勝敗は決した。一貫して調子の出ないアンは今大会を強引な投げでなく、要所で的確にスピードアップする「瞬間芸」で勝ち抜いて来たが、その道程を端的に示すような幕切れだった。

ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)○GS技有・一本背負投(GS1:03)△ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)
ガンバータルが左、ヘイダロフが右組みのケンカ四つ。ガンバータルは一方的に袖口を握る得意の形を作ろうとするが、ヘイダロフは技を仕掛けるときのみ引き手を持つヒットアンドアウェイ戦法でこれに対抗する。1分12秒、両者に引き手を持ち合わない咎で「指導」。しかし、双方引き手を全線とした駆け引きに妥協することはなく、以降も激しい組み手争いが継続される。2分30秒を過ぎたあたりからヘイダロフは現状の打開を図り、脇を差して、引き手で奥襟を叩いてと形を変えながら密着を志向、連続攻撃に打って出る。3分27秒、主審はヘイダロフの攻勢を認めてガンバータルに消極的の「指導」を付与。このまま本戦の4分間では決着がつかず、「指導1」対「指導2」のヘイダロフ優位で試合はGS延長戦へ。GS1分3秒、ガンバータルは組み際に組み手とは逆の右一本背負投でヘイダロフの懐深くまで潜り込むと、両手で相手の腕を持って最後まで回し切り「技有」を奪取。ヘイダロフはガックリ、好調ガンバータルが初めて世界選手権のメダルを手にすることとなった。

【決勝】
橋本壮市○GS技有・体落(GS1:42)△ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)
橋本が右、オルジョフ左組みのケンカ四つ。オルジョフ試合が始まるなり左釣り手を橋本の首裏に叩き入れ、同時に右で脇を差しながら左小外掛。いきなりの大技、そしてタイミングも良し、しかし橋本崩されながらも耐え切り「待て」。オルジョフの勢いは以後も止まず、30秒過ぎには背中に回した左釣り手を帯まで進出させ、肘で相手の頭を下げながら体勢低く圧力を掛ける。引込返の作りと同じこの形に橋本体勢を崩し、オルジョフは座り込みながら左脚を流し入れてこの脚越しに橋本を回転させ、次いで腕挫十字固。決まったかに思われたが橋本が脚を絡んで耐えて「待て」。

序盤戦は明らかにオルジョフが優位であったが、橋本の本領発揮はここから。以後は一貫してオルジョフが背中を叩いての密着を作りに来るが、橋本あるいは手先を絡ませ、あるいは右足を相手の膕に入れるいわば「外サリハニ」で相手を止め、引き手で袖を掴んで投げの予感を漂わせ、さらに釣り手一本の捌きで相手を崩して、相手の釣り手を先に絞ってと、とあらゆる手立てを使ってオルジョフに「組み換え」「やり直し」を強いる。ほとんど投げは繰り出さないものの、「やりなおし」の際も含めて潮が満ちるように常に前進、不思議なほどに防御のイメージを残さない。

2分55秒、立ち位置を入れ替えたオルジョフの前進に橋本が畳を割って場外の「指導」。しかし以後も大きなポイントは生まれず、組み手争いが続く形のままで試合は膠着。勝敗の行方はGS延長戦へ。

釣り手で背中さえ叩けば、というオルジョフの一発狙いの前進を、橋本が組み手技術で都度退かせながらチャンスを伺うという構図は大枠延長戦も継続。橋本が右体落を見せるもオルジョフは崩れず。しかし1分9秒、橋本の左一本背負投をオルジョフが抱分に捉えて吹っ飛ばす。橋本膝から畳に落ちて腹這い、ポイントもあり得るかと思われたが合議の結果これはスルー。直後オルジョフの隅返を橋本が浴びせ落とす場面もあり、ようやく試合が動き始めた印象。

1分40秒を超えたところ、両者が「人」の字にもたれ掛かって引き手を争う場面でオルジョフが釣り手を持ち替えようと画策、ツイと釣り手を離して背中を叩く。比較的小さい動作であったが、しかし橋本は見逃さずこの瞬間加速、右体落を叩き入れる。つっ転ばされたオルジョフが体側から落ち、微妙な判定であったが主審は「技有」を宣告。映像チェックの結果もこのジャッジを訂正せず、これで橋本の優勝が決まった。

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準々決勝、ラシャ・シャフダトゥアシビリと戦う橋本壮市

【日本代表選手勝ち上がり】

橋本壮市(パーク24)
成績:優勝


[2回戦]
橋本壮市〇GS技有・大外刈(GS0:52)△アルセン・ガザリャン(アルメニア)
橋本が右、ガザリャンは左組みベースの両組み。組み合いたくないガザリャン襟を隠し、釣り手で背中を抱いてと距離を出し入れしながらチャンスを狙うが、技が止まって「指導」。
2分16秒、初めてしっかり組んだ橋本は間を置かずに右体落、釣り手を高く張ったこの技見事決まって「技有」。リードを得、相手に攻めのきっかけすら掴ませず。橋本に残り仕事はクロージングと思われたが、残り44秒、比較的鷹揚な組み手争いの最中に片手のガザリャンがゆるやかに隅返。長い脚が上がり、距離を測りかねたか橋本ゆっくり放物線を描いて落ちてしまい「技有」。
意外な展開を受けた橋本やや加速して投げのチャンスを伺い、掛け潰れたガザリャンに偽装攻撃の「指導2」が与えられたところで本戦終了、試合はGS延長戦へ。
GS52秒、ガザリャンが体勢を整えようと背筋を伸ばした一瞬、橋本が一本背負投の形に腕を抱えて左大外刈。脚を高く刈り上げながら体を捨てると「技有」。これで勝ち越し決定、橋本がようやく勝利を得た。

[3回戦]
橋本壮市〇体落(2:14)△ヤコブ・イェツミネク(チェコ)
橋本が右、イェツミネクは右組みながら左構えをベースに防御志向のケンカ四つの形で対峙。イェツミネクは左で背中を抱え、あるいは巴投に入り込んでと組み合う時間を最小限にチャンスを探す。橋本は投げの作りを幾種類も試み、いつでも走り出す準備を整えながら一発投げるチャンスを探る。試合時間2分に迫るところでイェツミネクが両襟からの右大内刈と右大外刈を繰り返して攻勢を演出に掛かるが、橋本は落ち着き払って捌き続け、潰れた相手を立ったまま冷たい目で見おろす。
直後、橋本は左引き手で右襟を高く掴んで相手の釣り手をガード、いったん内側に捩じって相手の指を己の左襟から離すと、引き手を袖に持ち替えながら右体落。瞬間一方的な組み手が出来上がっており、まともに食ったイェツミネク逆らえず一回転「一本」。

[4回戦]
橋本壮市〇GS技有・小内刈(GS1:08)△ズハンサイ・スマグロフ(カザフスタン)
橋本が右、スマグロフが左組みのケンカ四つ。スマグロフは明らかに組みたがらず、橋本は袖を絞り、腕を手繰り、足技を絡ませ、片襟を差して振り立ててとあらゆる手段で相手を固定に掛かるが、スマグロフは潰れ、切り、あるいは左右を交換してと形を作らないまま試合を流し続ける。2分11秒、橋本が引き手で袖を掴むとスマグロフ掴まれた手で片襟を差して防御、片襟の「指導」。あまりに切り離し続ける相手に橋本が両手を広げて呆れる場面もあったが、主審動かず。最終盤、橋本が引き手で袖を織り込みながら釣り手で奥襟を叩く完璧な組み手を作るとスマグロフ躊躇せず座り込んで逃げ、残り4秒で偽装攻撃の「指導2」。このまま試合はGS延長戦へ。
延長1分8秒、スマグロフが右出足払。橋本左足で受けると体の力の差か、崩れたのは片足になってしまったスマグロフ。橋本迷わず右小内刈でその足を叩くと、スマグロフ転がって「技有」。橋本の冷静さが光った一番。

[準々決勝]
橋本壮市〇反則[指導3](3:13)△ラシャ・シャフダトゥアシビリ(ジョージア)
右相四つ。シャフダトゥアシビリは橋本に持たせることを極端に嫌い続け、1分10秒シャフダトゥアシビリに「取り組まない」咎で「指導」。以後も双方が相手優位の組み手を早い段階で潰し続け、組んでは離れることを繰り返すこととなる。2分8秒双方に消極的との咎で「指導」、3分13秒にも同じく双方に「指導」。これで累積警告は「2」対「3」となり、橋本の勝利が決まった。柔道をする前に形上の勝敗が決まってしまった一番。そして審判の早い段階での「指導3」付与は妥当であった。

[準決勝]
橋本壮市〇袖釣込腰(2:48)△ヒダヤト・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)
橋本と本日絶好調のヘイダロフ、ともに右組みの相四つ。ヘイダロフは釣り手を思い切り奥に叩き入れて突進、橋本左一本背負投で流すが以後もヘイダロフの勢いを止め切れず、1分36秒消極的との咎で「指導」。ヘイダロフは以後も時折釣り手で後帯の確保を狙う強気の組み手を見せ、この日の己の出来に対する自信のほどをうかがわせる。橋本は巧みにその勢いを減殺しながらチャンスを伺う我慢の時間帯。
2分48秒、橋本手を右、左と入れ替えて相手の右袖を殺し、左で絞るなり畳に押し付けるように片手の左袖釣込腰。一瞬で相手ごと畳に突っ込む得意の「橋本スペシャル」見事に決まってヘイダロフが畳に突き刺さり「一本」。警戒に警戒を重ねていた技を食ってしまったヘイダロフは畳に転がったままガックリ、頂点取りの夢破れたショックか涙も見せて畳を後にする。

[決勝]
橋本壮市〇GS技有・体落(GS1:42)△ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)

※前述のため省略

文責:古田英毅/林さとる

※写真は権利者の許諾を得て掲載しています

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