PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

【ブタペスト世界柔道選手権2017特集】初出場阿部一二三が「一本」連発、史上に残る圧勝で世界の頂点極める・男子66kg級即日レポート

(2017年8月29日)

※ eJudoメルマガ版8月29日掲載記事より転載・編集しています。
【ブタペスト世界柔道選手権2017特集】初出場阿部一二三が「一本」連発、史上に残る圧勝で世界の頂点極める・男子66kg級即日レポート
eJudo Photo
決勝、阿部一二三がミハエル・プルヤエフから袖釣込腰「一本」

ハンガリー・ブタペストで行われている世界柔道選手権は29日、日程第2日目の女子52kg級、男子66kg級の競技が行われ、66kg級では初出場の日本代表・阿部一二三(日本体育大2年)が優勝した。

組み合わせにも恵まれた阿部は豪快な「一本」を連発。準々決勝ではこの日絶好調のゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)を2分掛からぬ間に小内刈(「技有」)、大外刈(「技有」)、背負投(「一本」)と3度投げつける圧巻の試合ぶりを見せつけ、決勝では世界選手権で2大会連続銀メダル獲得中のミハエル・プルヤエフ(ロシア)を袖釣込腰「一本」で仕留めて優勝を決めた。

この日の阿部は6戦して5つの一本勝ち(1つの「指導3」反則による勝利を含む)、1つの「技有」優勢勝ちとまさに他を寄せ付けず。唯一一本勝ちを逃した4回戦のジョアオ・クリソストモ(ポルトガル)戦も背負投で2つ、小内刈で1つとなぜ「一本」が宣告されないのが不思議なほど強烈な「技有」を3つ奪っており、少なくともここ十数年の軽量級では覚えがないほどの圧倒的な勝ちぶりだった。

プルヤエフは2014年チェリャビンスク大会、2015年アスタナ大会に続きこれで3大会連続の銀メダル獲得。3位には今季ワールドツアーで躍進したタル・フリッカー(イスラエル)と、準決勝で阿部をもっともてこずらせたヴァズハ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)が入賞した。

eJudo Photo
3回戦の世界王者対決、ファビオ・バジーレがアン・バウルから送足払「技有」。これでスコアはタイとなる。

阿部が絡む試合以外で、大会ベストバウトと評すべき一番は、アン・バウル(韓国)とファビオ・バジーレ(イタリア)が戦った3回戦。アスタナ世界選手権王者とリオデジャネイロ五輪金メダリスト、2人の世界王者が戦ったこの試合は本戦終盤にアンが左背負投「技有」獲得、しかし残り20秒を切ってからバジーレが得意の送足払を見事に決めて「技有」奪回と白熱したままGS延長戦へ縺れ込む。その後も両者譲らずに攻め合い、延長5分10秒、総試合時間8分を超える大消耗戦の末バジーレに2つ目の「指導」が与えられてついに勝負が決した。オリンピックで金メダルを獲得しながらその風貌や行動の奇矯さで一種「色物」扱いされていたバジーレだが、その評価を良い方向に覆す意地の溢れる試合だった。優勝候補のアンはこの試合で疲弊したか、準々決勝でマルグヴェラシヴィリ、敗者復活戦でザンタライアに敗れて7位に終わっている。

入賞者リスト、優勝者のコメントと準々決勝以降のスコア、3位決定戦以降と日本代表選手全試合の戦評は下記。

■ 66kg級
eJudo Photo
66kg級メダリスト。左からプルヤエフ、阿部、マルグヴェラシヴィリ、フリッカー。

(エントリー72名)

【入賞者】
1.ABE, Hifumi (JPN)
2.PULIAEV, Mikhail (RUS)
3.MARGVELASHVILI, Vazha (GEO)
3.FLICKER, Tal (ISR)
5.KIM, Limhwan (KOR)
5.ZANTARAIA, Georgii (UKR)
7.MINKOU, Dzmitry (BLR)
7.AN, Baul (KOR)

阿部一二三選手のコメント
「すごくホッとした気持ちもあるし、うれしい気持ちもあります。とりあえずは、うれしいが一番ですね(笑)。世界選手権は初めての出場ですが、取り組み方として特に変わったことはせず、自分の柔道を貫いて練習してきて、それを試合でも出すだけだという考え方で臨みました。(-なぜあんなにダイナミックな投げを決められるのか?)担ぎ技をずっとやって来ていますが、背中に載せた後、相手の背中をしっかり畳に着かせよう、ということを強く意識して投げると、今日の決勝みたいな『一本』に繋がると思います。(海老沼選手が3連覇した階級です。あなたはどれくらい狙っていますか?)出来る限り連覇したい。3連覇も超えたいです。(-昨日、今日と日本は全階級で優勝。なぜ日本はそんなに強いのですか?秘訣を教えてください)秘訣!?難しい質問ですね(笑)。全員が自分を信じて臨んでいること、あと日本代表は研究、反復、調整すべてを非常に細かいところまでしっかりやっているので、隙のない柔道が出来ているのではと思います。」

【準々決勝】
タル・フリッカー(イスラエル)○GS技有・大外刈(GS1:43)△ズミトリ・ミンコウ(ベラルーシ)
ミハエル・プルヤエフ(ロシア)○優勢[技有・背負投]△キム・リマン(韓国)
ヴァズハ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)○GS反則[指導3](GS3:40)△アン・バウル(韓国)
阿部一二三○背負投(1:48)△ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)

【敗者復活戦】
キム・リマン(韓国)○優勢[技有・大内刈]△ズミトリ・ミンコウ(ベラルーシ)
ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)○GS技有・外巻込(GS0:51)△アン・バウル(韓国)

【準決勝】
ミハエル・プルヤエフ(ロシア)○GS技有・背負投(GS1:32)△タル・フリッカー(イスラエル)
阿部一二三○袈裟固(3:14)△ヴァズハ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)

【3位決定戦】
ヴァズハ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)〇横四方固(3:20)△キム・リマン(韓国)
キムが右、マルグヴェラシヴィリが左組みのケンカ四つ。両袖の膠着とこれを切っての片手技の応酬があり、1分27秒双方に「取り組まない」咎による「指導」。直後の1分34秒、キムが釣り手を振り立てて前技フェイントの右小内刈を押し込むと、見事決まって「技有」。
リードしたキムだが、リスクを厭わず抱きつきの右大内刈に相手の奥襟を呼び込みながらの右背負投と以後も大技を連発。しかしこれが攻防を活性化させてしまい、残り40秒でマルグヴェラシヴィリが脇を差しながら左小外掛の大技に打って出るに至る。マルグヴェラシヴィリは重心の浮いたキムを捩じり倒して「技有」獲得、そのまま横四方固で抑え込み「一本」に辿り着いた。逆転で銅メダル獲得のマルグヴェラシヴィリは大喜び、あと一歩で大魚を逸したキムは顔を両手で覆って悔しがる。

タル・フリッカー(イスラエル)○GS技有・大外刈(GS0:29)△ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)
左相四つ。両者警戒し合ってなかなか組み合わず。30秒過ぎにザンタライアが引き手を得るも、フリッカーがすぐに巴投でこれをリセット。以降も双方が組み合っては離れてやり直す形が続き、試合は膠着。2分13秒にフリッカーが鋭い巴投に飛び込むと、ザンタライアは投げられながら空中で体を捻って腹這いで着地。ザンタライアらしい高度な回避技術に会場から歓声が上がるが、直後ザンタライアのみに消極的の咎で「指導1」。ここを好機とみたかフリッカーは左背負投を連発して攻勢をアピール。しかし、ザンタライアが組み勝つと途端に弱気になり、3分10秒にはフリッカーに極端な防御姿勢の咎で「指導1」。続く3分42秒、ザンタライアがクロスに釣り手を叩き入れるとフリッカーはこれを嫌がって自ら畳に伏せる。負傷によるものだとアピールするも主審は許さず、偽装攻撃で「指導2」を宣告。以後はスコア動かず、累積警告「1」対「2」でザンタライアがリードのまま勝負はGS延長戦へ。GS29秒、バランスを崩したザンタライアが体勢を直そうと向き直った瞬間にフリッカーがタイミング良く左大外刈。一瞬体を固めたままこれを受けてしまったザンタライアはバタリと背中から畳に落ちて「技有」。フリッカーが好調ザンタライアを倒して3位を獲得。ワールドンキング1位で大会に乗り込んだ選手としての意地を見せた。

【決勝】
阿部一二三〇袖釣込腰(2:33)△ミハエル・プルヤエフ(ロシア)
阿部が右、プルヤエフ左組みのケンカ四つ。阿部は釣り手で襟を確保すると強気に両襟を
完成、するとプルヤエフ嫌ってあっさり自ら潰れ「待て」。以後もプルヤエフはがっぷり組み合うことを避け続けるが、阿部は片手の右背負投に右袖釣込腰、そして両袖の右大外刈と落ち着いて攻めて展開を確保。この大外刈は間合いが遠いゆえいったん自ら鞘に収めることとなったが、主審は攻勢を認めて1分7秒プルヤエフに「指導」。

阿部は以後も右大外刈、右大内刈と入れながら一発のチャンスを探す。圧されたプルヤエフは1分56秒に横落を見せたくらいで、技を繰り出すこと自体が僅少。

2分33秒、阿部が引き手で袖を得るなり右袖釣込腰。背中で相手を袈裟に担ぐとそのままもろとも1回転、プルヤエフ逆らえず宙を舞って文句なしの「一本」。準々決勝のザンタライアに続き、強敵を子ども扱い、近来の軽量級史では覚えがないほどの圧勝で世界選手権初制覇を決めた。

【日本代表選手勝ち上がり】

阿部一二三(日本体育大2年)
成績:優勝


[2回戦]
阿部一二三〇反則[指導3](3:30)△アルトゥール・テ(キルギスタン)
右相四つ。テは後重心のまま手先を絡ませて試合開始から明らかに逃げの構え。阿部が両袖で捕まえるといきなり伏せてしまい、攻防がまったく成立しない。1分2秒、袖を絞って防御した咎でテに「指導1」。阿部はまず引き手で袖を掴み、次に釣り手を振らせるに効果的位置を見極めようとするが、テがいちはやく体落、あるいは一本背負投に潰れてリセット。1分53秒に阿部が寝勝負で「コーレイカ」を試みるが、防御のみを考えるテは早々に体をずらして耐えて「待て」。続いて阿部が両袖を得ると、テはまたもや後重心で専守防衛。阿部手を袖釣込腰様に流して右大外刈を打って出るもやはりテは技の起こりの段階で潰れてしまい、2分35秒「指導2」。以降も阿部が二本持つと手は慌てて自ら潰れることを繰り返し、残り30秒で3つ目の「指導」。本来これほど時間を掛けずに「指導3」が入ってよい消極ゲーム、主審が阿部の投げを見たいために試合を引っ張ったのでは?と思わず邪推してしまう試合であった。阿部が何もしないまま、相手が勝手に潰れて終わった試合であり、相手が弱すぎて試合が成立しなかった一番だった。しかし怒気を発することなく、落ち着いて相手が自滅するに任せてしっかり成果を得た阿部は、悪くない立ち上がり。

[3回戦]
阿部一二三〇袖釣込腰(0:32)アブデラフマネ・ボウシタ(モロッコ)
右相四つ。両袖でしばし間合いを測る駆け引きあって、30秒過ぎに阿部が高い打点の右袖釣込腰。いったん相手の左足の外側まで踏み込み、足を継ぐと払腰様に右脚を上げて決めをフォロー。文句なしの「一本」

[4回戦]
阿部一二三〇優勢[技有・背負投]△ジョアオ・クリソストモ(ポルトガル)
阿部が右、クリソストモ左組みのケンカ四つ。41秒、阿部釣り手を高く揚げて打点の高い右背負投。足を継ぎ、体落風に右足を踏ん張って投げをフォロー、「技有」。
クルソストモは袖を絞って防御、掛け潰れを続けて決着の先送りを試みるが阿部は意に介いせず快走。腰を引く相手の股中に一瞬で入り込むと、立ち上がりながら右背負投で体を捨てながら投げつける。完全に「一本」かと思われたが、相手が背中を丸めて落ちたことが条件を満たさぬとみたか、主審は意外にも「技有」を宣告。投げた勢いで立ち上がっていた阿部はしかし、表情を変えずに開始線に戻る。
直後の右小内刈でクリソストモ畳に墜落するが、尻餅との判断かこれはスルー。2分58秒、阿部の右小内刈にクリソストモ真裏に落下、「すっころがる」という表現がふさわしい勢いで背中をつき、阿部は乗り込んで両手で制してフィニッシュ。今度こそ完全な「一本」かと思われたが、主審またもや技の効果を「技有」に留める。結果、阿部は余裕の勝利も連続一本勝ちが途切れることとなってしまった。まさしく「ボコボコ」という形容がふさわしい、一方的な試合だった。

[準々決勝]
阿部一二三〇背負投(1:48)△ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)
阿部が右、ザンタライア左組みのケンカ四つ。序盤戦屈指の好カードだが、阿部はこの強敵を子ども扱い。引き手で袖を確保するなり相手の力の圏外から刈り足を差し入れ、押し込んで36秒右小内刈「技有」。さらに両袖で間合いを測ると、1分13秒に袖釣込腰様に腕をまとめて右大外刈、真裏に刈り込んで投げつける。あまりの勢いにザンタライアが回り過ぎてしまい、これも「技有」。1分48秒には打点の高い右背負投、ザンタライアの両足が完全に畳から離れ、その胴体が阿部の背中に乗る。阿部は上げ過ぎた、とでもいわんばかり、決して「技有」にならぬようひときわ左引き手の牽引を効かせ、釣り手の肘を相手の脇に押し込むようにしてフィニッシュ。むしろ投げのスピードを減速させるほどの丁寧な決めが功を奏し、「一本」。

[準決勝]
阿部一二三○袈裟固(3:14)△ヴァズハ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)
右相四つ。40秒双方に「取り組まない」咎による「指導」。マルグヴェラシヴィリの膂力を警戒したか、阿部はやや慎重な立ち上がり。1分43秒、阿部が自ら求めて両袖を作ると、マルグヴェラシヴィリこれを切り離して片襟の右背負投。阿部崩れながらも捌いたかに思われたが主審は「技有」を宣告。これは結局取り消されたが、阿部は冷や汗。
阿部は徐々にペースアップ、組み手のやり取りの中で片襟の右背負投を連発すると、投げの圧力に耐えかねたマルグヴェラシヴィリが組み際に左大内刈に打って出る。阿部落ち着いてかわすと右小外刈で相手の作用足を引きずるように刈り、体捌き良く浴びせて「技有」確保。そのまま両手を離さず抱きついて袈裟固「一本」。結果的にはこの日もっとも苦戦した試合であったが、それでも「技有」「一本」と連取する、まったくの圧勝であった。

[決勝]
阿部一二三〇袖釣込腰(2:33)△ミハエル・プルヤエフ(ロシア)

※前述のため省略

文責:林さとる/古田英毅

※写真は権利者の許諾を得て掲載しています

→世界選手権特集ページに戻る

※ eJudoメルマガ版8月29日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る




supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.