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【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】芳田司が世界初挑戦、最大のライバルはドルジスレン・スミヤ・女子57kg級概況×有力選手紹介

(2017年8月28日)

※ eJudoメルマガ版8月28日掲載記事より転載・編集しています。
【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】芳田司が世界初挑戦、最大のライバルはドルジスレン・スミヤ・女子57kg級概況×有力選手紹介
■ 階級概況
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57kg級実力推測マップ

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2015年グランドスラム東京決勝、芳田司がエレン・ルスヴォを内股「一本」。海外メディアが「大会ベスト一本では?」と色めき立った美技だった

ロンドン―リオ期に階級を牽引した松本薫(ベネシード)とオトーヌ・パヴィア(フランス)が揃って戦線を離脱。コリナ・カプリオリウ(ルーマニア)もエントリーを見送り、リオデジャネイロ五輪から比べると一気に上位陣の層が薄くなった。とはいえもともとこの階級は上位から中堅の選手層が異常に厚く、失った「名前」の大きさに比すればさほどのレベルダウンはないという印象。

特にベテラン勢が意気軒高。37歳のザブリナ・フィルツモザー(オーストリア)に35歳のミリアム・ローパー(パナマ)が休まず出場しており、テルマ・モンテイロ(ポルトガル)やマーティ・マロイ(アメリカ)ら30歳前後の若いベテランたちは依然として表彰台候補に名が挙がる。

そんな中、今大会の優勝争いの軸は世界選手権初出場の芳田司(コマツ)と、リオデジャネイロ五輪銀メダリストのドルジスレン・スミヤ(モンゴル)と規定しておきたい。どちらも他の出場者と比べると力が頭ひとつ抜け出ている印象だ。

両者のワールドツアー(ワールドマスターズ、グランドスラム、グランプリなどIJF主催の国際大会)での対戦は過去芳田の3戦3勝。ただし直近の対戦である今年のアジア選手権団体戦ではドルスレンが芳田の左小外刈に左背負投を合わせて「技有」を奪って勝利している。力は互角と考えるべきだ。

この2人の力関係は階級の主筋であるので、もう少し踏み込んでおきたい。前述アジア選手権の対戦は試合全体としては芳田が優勢で「指導2」まで奪っており、圧倒的に優位な過去の対戦歴までを考えればこのポイント失陥をあくまでアクシデントと捉えることも可能ではある。しかしこの場面以外にも芳田の左小内刈に対してドルジスレンが左背負投のカウンターを狙うシーンが散見され、どうやらこのポイント奪取は出会い頭ではない。少なくともこの「足技を担ぎで塗りつぶしてくる」パターンは警戒しておくべき。

ワールドランキングで1位と2位に位置する両者が、今大会で対戦するとすれば決勝のみ。芳田としてはこの「後」のない最後の試合であることをポジティブに捉え、焦らずじっくり戦ってまず試合をしっかり作っていきたいところだ。

力的にこの2人に並ぶ存在としてはリオデジャネイロ五輪金メダリストのラファエラ・シウバ(ブラジル)が挙げられる。しかしこの選手はその最高到達点の高さに比して極端にムラ気気質なところがあり、2年連続で好パフォーマンスを発揮する可能性は限りなく低い。平均点の出来でもベスト8程度までは勝ち進むだろうが、それ以上は何らか具体的な上昇装置が必要だ。

上記3人以外で表彰台に絡む可能性が高いのは、階級の第2グループであるエレン・ルスヴォ(フランス)、クォン・ユジョン(韓国)、モンテイロ、マロイの4人。このなかでは間違いなくクォンが最も怖い存在だ。

クォンは今年のグランドスラム・パリ大会で優勝を飾った大型新人であり、この階級では久々現れた本格的な韓国系担ぎ技ファイターだ。既に本階級のパワーファイターたちをカモにしている感すらあり、今大会の台風の目になる可能性十分とみる。また、クォンは前述のグランドスラム・パリ大会で芳田に勝利(5月のアジア選手権決勝で芳田が左内股「技有」によりリベンジ済み)、5月のアジア選手権ではドルジスレン打倒を果たした経緯もあり、その実力は折り紙つき。単なるダークホースとして思考の隅に追いやることが出来ない、非常に気になる存在である。

次に、優勝への執念という意味で怖いのがモンテイロ。世界選手権で4度2位を獲得している稀代の「シルバーコレクター」としては世界大会の金メダル獲得はまさしく悲願、そしてリオデジャネイロ五輪から上位層がごっそり抜けた今回は大チャンスと考えるはずだ。世界大会で何度も決勝進出を果たしている経験値の高さはあなどり難し、本気で優勝を狙いにきた場合には相当な強敵となるだろう。一方、ルスヴォは確かに強豪ではあるものの、ここまで述べてきた選手たちと比べるといまひとつ迫力に欠ける印象。上位進出は間違いないだろうが、芳田やドルジスレンと戦うにはなんらかの「破れ」、いま一段の上積みが必要かと思われる。マロイに関してはトーナメントが順当に進めばベスト8程度での終戦が妥当だろうが、荒れ模様となった場合には持ち前の歩留まりの良さで表彰台まで辿り着く可能性がある。

その他、ここまでに取り上げた選手以外で推しておきたいは今年のヨーロッパチャンピオンであるプリシラ・ネト(フランス)。52kg級時代は右袖釣込腰一辺倒でキャリアの袋小路に迷い込んでいた感があったが、階級変更をきっかけにその閉塞から脱出。左右の技を使いこなすなかなか面白い存在になってきている。明らかな上り調子でもあり、今大会でブレイクを起こす可能性は十分。弊サイト編集部内でも「ネトに張っておきたい」との声は多数。

57kg級はこれら中堅クラスに密集した強豪以下のグループはそれほどレベルは高くなく、第3グループ以下はダンゴ状態。組み合わせが非常に重要な意味を持ち、トーナメントの配置如何で上位対戦の顔ぶれが大きく変わる可能性がある。まずは組み合わせ抽選に注目したい。

最後に、冒頭でも触れさせて頂いたが57kg級はベテラン勢が非常に頑張っている階級。柔道競技の豊かさという側面からは非常に意義のあることであり、表彰台争いに限らずベテラン選手の奮闘ぶりにぜひ注目してもらいたい。

■ 有力選手
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芳田司(日本)

芳田司(日本)

YOSHIDA Tsukasa
21歳 1995/10/5
WR:2位 組み手:左組み
得意技:左内股
使用技:左小外掛、左払腰、左大外刈、出足払、送足払、右袖釣込腰

2017年2月のグランドスラム・パリ大会でオトーヌ・パヴィア(フランス)に敗れて以降、この年は出場した国際大会に全勝。結果を出し始めるのが遅かったためリオデジャネイロ五輪出場こそ逃したが、既に誰もが認めるトップ選手として定着している。昨年終盤からやや調子を落としてはいるものの、今大会の優勝候補1番手と規定して良いかと思われる。

得意技は抜群の切れ味を誇る左内股。鋭く飛び込み一気に相手を跳ね上げてしまうこの技は海外選手にはなかなか真似の出来るものではなく、芳田の国際的な評価を一段引き揚げている感すらあり。左小外刈や出足払など前に出している左足を駆使した足技も巧みで、内股を警戒して腰を引いている相手から足技でポイントを獲得する場面も多い。寝技も得意で、ラファエラ・シウバ(ブラジル)やマーティ・マロイ(アメリカ)といった寝技を得意とする相手にも堂々このフィールドで勝利している。とつらつら挙げていくと、芳田の選手としての完成を考える場合、残る大きな要素は実績のみとすら言えるのではないだろうか。国内に有力選手が勃興しつつある中、「世界選手権の覇者」というカードの有無は、東京五輪代表争いをにらめばまさしく決定的。初の世界大会で王者の称号を得ることが出来るか、芳田の挑戦を楽しみに見守りたい。

【おもな戦績】
2015年12月 グランドスラム東京 優勝
2015年10月 グランドスラム・パリ 5位
2015年2月 グランドスラム・チュメニ 優勝

【最近の成績】
2017年4月 選抜体重別選手権 3位
2017年2月 グランドスラム・パリ 3位
2016年12月 グランドスラム東京 優勝

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ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)

ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)
DORJSUREN Sumiya
26歳 1991/3/11
WR:1位 組み手:左組み
得意技:左背負投、左背負投(韓国背負い)
使用技:左釣込腰、左内巻込、浮落、左小外刈、左膝車

リオデジャネイロ五輪銀メダリスト。リオ五輪準決勝で松本薫を屠り去った背負投「一本」はファンの記憶にも鮮烈かと思われる。もともとは一発大技があるタイプというよりは組み手と先手攻撃による一種歩留まりの良い戦いぶりで地位を得ていた選手であり、とにかくポカ負けがほとんどない。ワールドツアーで優勝8回、準優勝6回、3位4回という結果の高値安定ぶりにその志向は端的。ちなみに日本人選手はこの選手にはなぜか相性かみ合わず、総じて分が悪い印象。

体幹の強さがあらゆる戦術のベースとなっており、低く構えてリソースのすべてを担ぎ技による先手攻撃に注ぎ込む。以前は技が切れず、前進圧力と先手攻撃で相手の柔道を塗りつぶす「指導」逃げ切りスタイルの選手だったが、最近はこの泥臭さという長所を保ったまま純粋に技の威力がアップ、担ぎ技による「一本」獲得が飛躍的に増えている。最も使用頻度の高い技である左背負投は「片襟」「韓国式」などバリエーション豊か、失敗したところから内巻込の形で強引に投げきってしまうことも多々あり。体幹の強さを生かした返し技も得意としており、不十分な体勢から技を仕掛けると浮落の要領で返しに来る。もともとは全くその器とは思われなかったが、技術と実績を獲得して、チャンピオンの座を得てもまったくおかしくない水準まで競技者としてのステージを上げて来た。金メダル獲得に機は熟したという印象。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 2位
2016年 ワールドマスターズ・グアダラハラ 優勝
2015年 アスタナ世界選手権 3位

【最近の成績】
2017年6月 グランプリ・フフホト 2位
2017年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 2位
2016年 グランドスラム東京 3位

参考動画
2017年6月グランプリ・フフホト準決勝 vsフィオラ・ヴェヒター(ドイツ)
(最近では切れ味鋭い左背負投による「一本」も増えている。)

2017年グランプリ・デュッセルドルフ準々決勝 vsプリシラ・ネト(フランス)
(強烈な大外返で「一本」。ドルジスレンの体の強さを窺い知ることができる。)

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ラファエラ・シウバ(ブラジル)

ラファエラ・シウバ(ブラジル)

SILVA Rafaela
25歳 1992/4/24
WR:4位 組み手:左組み
得意技:出足払、左小外刈、寝技
使用技:左払腰、左内股、左小外掛、隅返、肩車

ブラジルのファベーラ(貧民街)から柔術を通じて発見されたムラ気の天才肌。リオデジャネイロ五輪では異常な集中力を発揮して、地元ブラジルに全競技第1号となる金メダルをもたらした。

強豪をまったく寄せ付けずに圧勝することもあれば、逆にメンタルコントロールを失って畳上でオロオロ、B級選手にあっさり敗退することもある不思議な選手。切れ味鋭い出足払に左小外刈、そして柔術ベースの寝業が武器。2015年のグランドスラム東京大会で松本薫を「跳び十字」に仕留めた場面は記憶に新しい。さすがに地元開催であったリオ五輪ほどの完成度を発揮するとは思えないが、最高到達点の高さは階級随一だ。表が出るか、それとも「暗黒面」が顔を出すのか、当日の出来に注目

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 優勝
2014年 チェリャビンスク世界選手権 5位
2013年 リオデジャネイロ世界選手権 優勝

【最近の成績】
2017年5月 グランドスラム・エカテリンブルグ 3位
2017年3月 グランプリ・トビリシ 2位
2017年2月 グランドスラム・パリ 5位

参考動画
2015年グランドスラム東京2回戦 vs松本薫(日本)
(「跳び十字」で松本から「一本」を奪った試合。)

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エレン・ルスヴォ(フランス)

エレン・ルスヴォ(フランス)

RECEVEAUX Helene
26歳 1991/2/28
WR:3位 組み手:右組み
得意技:右内股、寝技
使用技:右大内刈、左小外刈、右払腰、右一本背負投

リオデジャネイロ五輪代表をオトーヌ・パヴィア(フランス)と激しく争ったフランスのもと2番手。リオ五輪後はパヴィアが休養に入ったこともあり、そのままフランスのエースの座に就いた。
腰技を攻撃の軸に据えた正統派タイプ。パワーを生かし、釣り手で奥襟を叩いて右内股や右払腰を狙う。一発で投げてしまう場合ももちろんあるが、技を受けられてしまってからでも粘って結局投げ切ってしまう、その馬力のあり余った泥臭い投げのほうがむしろ印象的で、この選手の特徴を良く表しているかと思われる。組み際に急加速して仕掛ける脇を差しての右大内刈や、乗り上げるように浴びせ倒す左小外掛は技術としての完成度もなかなか高く要注意。身長の高い相手には右一本背負投も使用する。実は寝技も得意であり、伏せた場面から展開しての関節技や絞技で勝利している試合も多々。

【おもな戦績】
2016年 ワールドマスターズ・グアダラハラ 2位
2015年 グランドスラム東京 2位
2015年 アスタナ世界選手権 1回戦敗退

【最近の成績】
2017年2月 グランドスラム・パリ 2位
2016年 グランドスラム東京 5位
2016年 グランドスラム・アブダビ 優勝

参考動画
2017年グランドスラム・パリ準決勝 vsプリシラ・ネト(フランス)
(切れ味鋭い右内股「一本」でネトを一蹴した試合。)

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クォン・ユジョン(韓国)

クォン・ユジョン(韓国)
KWON Youjeong
22歳 1995/6/17
WR:12位 組み手:左組み
得意技:左背負投、右袖釣込腰
使用技:右一本背負投、左体落、左小外刈、左小内刈

韓国の大型新人。今年のグランドスラム・パリ大会においてラファエラ・シウバ(ブラジル)、芳田司(コマツ)、エレン・ルスヴォ(フランス)と優勝候補を立て続けに破って優勝。一気に57kg級シーンの中心に躍り出た。5月のアジア選手権ではドルジスレン・スミヤ(モンゴル)も撃破しており、その実力は本物と考えておくべき。

典型的な韓国系担ぎ技ファイター。左背負投と右袖釣込腰を連発してペースを掴み、担ぎ技の弾幕の中に本気の一撃を混ぜ込む。意外にも「韓国背負い」はほとんど用いず、その代わりに右袖釣込腰の割合が高め。

【おもな戦績】
2017年5月 アジア選手権 2位
2017年2月 グランドスラム・パリ 優勝

参考動画
グランドスラム・パリ準々決勝 vsラファエラ・シウバ(ブラジル)
(シウバを開始直後の左背負投「一本」に仕留めた試合。)

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テルマ・モンテイロ(ポルトガル)

テルマ・モンテイロ(ポルトガル)

MONTEIRO Telma
31歳 1985/12/27
WR:35位 組み手:右組み
得意技:右一本背負投、右袖釣込腰、右背負投
使用技:右小外刈、右釣込腰

2007年リオデジャネイロ大会(52kg級)、2009年ロッテルダム大会、2010年東京大会、そして2014年チェリャビンスク大会と世界選手権で計4度銀メダルを獲得しているベテラン。リオデジャネイロ五輪では銅メダルを獲得し、自身初となる五輪表彰台登攀を果たした。美人柔道家としても有名。全盛期には松本薫(ベネシード)の敵役として非常な存在感を示した。2010年東京大会で松本の寝技から「腹ばい逃げ」を為した選手といえばご記憶のファンも多いかと思われる。

左構えで左袖を得た形から右担ぎ技を仕掛けるのが基本スタイル。最も多く用いるのは両袖を持っての右袖釣込腰であり、両袖を絞った状態のほか、組み際に瞬時に釣り手で袖を得て仕掛けることもある。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 3位
世界選手権 2位4回(2007年、2009年、2010年、2014年)
ヨーロッパ選手権 優勝5回(2006年、2007年、2009年、2012年、2015年)

【最近の成績】
2017年7月 ヨーロッパオープン・ミンスク 優勝

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ザブリナ・フィルツモザー(オーストリア)

ザブリナ・フィルツモザー(オーストリア)

FILZMOSER Sabrina
37歳 1980/6/12
WR:36位 組み手:右組み
得意技:裏投、浮落、隅落、寝技
使用技:右小外掛、右大内刈、右大外刈、右内股、隅返

2005年カイロ世界選手権、2010年東京世界選手権の銅メダリスト。2008年、2011年とヨーロッパ選手権も2度制覇している。リオデジャネイロ五輪では1回戦でネコダ・スミス=デイヴィス(イギリス)に敗れた。

37歳の大ベテランながら、いまだパワーは階級トップクラス。奥襟や背中を持って圧を掛け、相手の技を懐の深さを生かした裏投や浮落、隅落で返すことが多い。先に小外掛を仕掛けて相手の内股を誘って透かす「セルフ内股透」の使い手でもあり、現在のスタイルからは後の先の選手と規定される。寝技も得意としており、最近は腕を極めて後方に回転して横四方固で抑え込む形が得意。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 1回戦敗退
2012年 ロンドン五輪 7位
2010年 東京世界選手権 3位

【最近の成績】
2017年6月 グランプリ・カンクン 3位

参考動画
2017年グランドスラム・カンクン準々決勝 vsヨワナ・ロギッチ(セルビア)
(腕を極めて後転して抑え込む、得意の形からの横四方固「一本」。)

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マーティ・マロイ(アメリカ)

マーティ・マロイ(アメリカ)

Jovana Marti
31歳 1986/6/23
WR:9位 組み手:右組み
得意技:右一本背負投、左小内刈、寝技
使用技:左小外刈、左大外刈、隅返

2013年リオ世界選手権銀メダリスト。階級のトップ選手のなかでは地味な存在だが、担ぎ技に足技、そして寝技というローリスクで堅実な試合構成で常に一定の成績を残し続けている「歩留まりの良い」タイプ。リオデジャネイロ五輪では2回戦でレン・チェンリン(台湾)に敗れた。

得意技は右一本背負投だが、最も取り味があるのは逆技の左小内刈。寝技を得意としており、2014年世界選手権では松本薫から腕挫十字固で「一本」を奪った。松本戦のイメージからすると少々意外だが「寝技対寝技」で勝ち抜く寝業師のタイプではなく、純粋な寝勝負での勝利は少ない。立技から寝技への移行が上手く、ここで優位を作ってスタート出来るかどうかがこの選手の寝技のポイント。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 2回戦敗退
2013年 リオデジャネイロ世界選手権 2位
2012年 ロンドン五輪 3位

【最近の成績】
2017年6月 グランプリ・カンクン 優勝
2017年4月 パンナム選手権 3位
2016年 グランドスラム東京 7位

参考動画
2014年チェリャビンスク世界選手権2回戦 vs松本薫(日本)
(優勝候補の松本を開始直後の腕挫十字固「一本」に仕留めた試合。)

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ミリアム・ローパー(パナマ)

ミリアム・ローパー(パナマ)
ROPER Miryam
35歳
WR:5位 組み手:右組み
得意技:右小外掛、右小外刈
使用技:浮落

35歳の大ベテラン。2013年リオデジャネイロ世界選手権3位。昨年までドイツ籍であったが、今年から父親の出身地であるパナマに移籍。移籍選手の例に漏れず調子を上げており、5月のグランドスラム・エカテリンブルグ大会では宇髙菜絵(コマツ)を破って優勝。続いて出場したグランプリ・カンクン大会でも2位を獲得した。

柔道スタイルはフィルツモザーと似ているが、上背とパワーはさほどなく、背中をあまり持たずに奥襟密着の形で戦う。得意技は組み際に仕掛ける右小外掛で、クロスグリップ、引っ掛けて、ぶら下がってと様々なバリエーションを持つ。移籍後に試合で挙げたポイントはほとんどがこの技によるもの。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 1回戦敗退
2013年 リオデジャネイロ世界選手権 3位
2011年 パリ世界選手権 5位

【最近の成績】
2017年6月 グランプリ・カンクン 2位
2017年5月 グランドスラム・エカテリンブルグ 優勝
2017年6月 パンナム選手権 5位

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レン・チェンリン(台湾)

レン・チェンリン(台湾)

LIEN Chen-ling
29歳 1988/1/31
WR:7位 組み手:左組み
得意技:左内股、寝技
使用技:出足払

大学から山梨学院大学に留学し、現在は実業団のコマツに所属。リオデジャネイロ五輪では3位決定戦で松本薫に敗れたものの、5位入賞を果たした。柔道スタイルは姿勢良く構えて左内股を狙うオーソドックスなもの。後ろ回り捌きで相手を引き出して仕掛ける左内股のほか、「横三角」からの崩上四方固を得意としており、試合でのポイント獲得はざっくり言ってこのいずれかの技によるものが多い。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 5位
2016年 ワールドマスターズ・グアダラハラ 5位
2012年 グランドスラム東京 3位

【最近の成績】
2017年5月 アジア選手権 3位
2017年3月 グランドスラム・バクー 優勝

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プリシラ・ネト(フランス)

プリシラ・ネト(フランス)

GNETO Priscilla
26歳 1991/8/3
WR:14位 組み手:左組み
得意技:右袖釣込腰、左大腰
使用技:左内股、左払腰、左大外刈、右大外刈

今年のヨーロッパ選手権王者、ロンドン五輪52kg級銅メダリスト。リオデジャネイロ五輪後に階級を57kg級に変更すると、今年のヨーロッパ選手権を制し、続いて出場した6月のヨーロッパオープン・ブカレストでも優勝。上り調子で世界選手権の畳に臨む。

左右の利くパワーファイターであり、右袖釣込腰が主な武器。52kg級時代はこの技以外ほとんど使用しなかった印象だが、階級変更後は左の腰技を中心に他の技の割合が増えている。以前は力任せで単調な攻めが多かったが、階級を上げたことを機に引き出しを増やし、技術的な閉塞から脱皮しかかっている模様。「横三角」からの崩上四方固も得意としており、伏せた相手には積極的に狙っていく。組み際に使用する飛び込んでの左右の大外刈が奇襲技としてかなり効いており、これには十分注意したい。

【おもな戦績】
2017年4月 ヨーロッパ選手権 優勝
2012年 ロンドン五輪 3位 ※52kg級
2011年 パリ世界選手権 5位 ※52kg級

【最近の成績】
2017年6月 ヨーロッパオープン・ブカレスト 優勝
2017年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 7位
2017年2月 グランドスラム・パリ 3位

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キャサリン・ブーシェミン=ピナード(カナダ)

キャサリン・ブーシェミン=ピナード(カナダ)
BEAUCHEMIN-PINARD Catherine
23歳 1994/6/26
WR:17位 組み手:右組み
得意技:右払腰、浮落
使用技:横車、小内巻込、右背負投、右一本背負投、左一本背負投

若さを生かしたパワー柔道が持ち味。試合終盤までガツガツと相手を攻め続ける、スタミナ豊かな選手でもある。密着しての腰技が攻撃のベースだが、左右の担ぎ技も保有、後の先の技も一通り備えており、基本的になんでもこなす雑食系。返し技としての横車はなかなかに取り味があり、ひときわ注意しておきたい。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 2回戦敗退
2015年 アスタナ世界選手権 5位
2014年 世界ジュニア選手権 3位

【最近の成績】
2017年4月 パンナム選手権 2位
2017年2月 グランドスラム・パリ 7位

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ネコダ・スミス=デイヴィス(イギリス)

ネコダ・スミス=デイヴィス(イギリス)

SMYTHE-DAVIS Nekoda
24歳 1993/4/22
WR:47位 組み手:右組み
得意技:右払腰、右大腰
使用技:右内股、右大内刈、左袖釣込腰、右一本背負投

2015年シーズン終盤から国際大会を荒らしまわっている若手パワーファイター。奥襟や背中を持っての右払腰、右大腰が主な武器だが、引き手で脇を差しての大内刈も得意。左袖釣込腰や右一本背負投もまれに用いる。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 2回戦敗退
2016年 ワールドマスターズ・グアダラハラ 7位
2015年 グランドスラム・バクー 2位

【最近の成績】
2017年3月 グランプリ・トビリシ 5位

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ノラ・ヤコヴァ(コソボ)

ノラ・ヤコヴァ(コソボ)

GJAKOVA Nora
25歳 1992/8/17
WR:8位 組み手:右組み
得意技:右払腰、右内股
使用技:右釣込腰、右小外刈、隅落

2009年から世界選手権と五輪に合わせて7回出場、しかし入賞は7位が1回のみと典型的な「強くない国のエース」で、率直に言って目立つ選手ではなかった。しかしリオデジャネイロ五輪前後の空白期に大会出場を続けて力を伸ばしたか、ここに来てグランプリ・アンタルヤ大会優勝、ヨーロッパ選手権3位と立て続けに結果を残し、25歳にしてキャリア最盛期を迎えている。柔道スタイルは奥襟を持って腰技を狙うパワー柔道。引っ掛けて追い込む右小外刈も多用する。「横三角」からの崩上四方固も得意としており、この形での「一本」獲得も多い。

【おもな戦績】
2016年 グランプリ・トビリシ 2位
2016年 リオデジャネイロ五輪 2回戦敗退
2013年 リオデジャネイロ世界選手権 7位

【最近の成績】
2017年4月 ヨーロッパ選手権 3位
2017年4月 グランプリアンタルヤ 優勝
2017年2月 グランドスラム・パリ 5位

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ジェシカ・クリムカイト(カナダ)

ジェシカ・クリムカイト(カナダ)

KLIMKAIT Jessica
20歳 1996/12/31
WR:6位 組み手:右組み
得意技:右背負投
使用技:右小外刈、右大内刈、右小内巻込

今年のパンナム選手権王者。これまでシニアではあまり成績を残せていなかったが、今年に入ってからパンナム選手権優勝をはじめ、グランドスラム・エカテリンブルグ大会3位、グランプリ・フフホト大会3位と調子を上げてきている。使用頻度からすると得意技は右背負投だがこの技による得点は少なく、どちらかと言うとこれを囮とした右小内巻込によるポイント獲得が多い。

【おもな戦績】
2017年6月 グランプリ・フフホト 3位
2017年3月 グランドスラム・エカテリンブルグ 3位
2017年4月 パンナム選手権 優勝

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ヨワナ・ロギッチ(セルビア)

ヨワナ・ロギッチ(セルビア)

ROGIC Jovana
29歳 1988/8/3
WR:16位 組み手:右組み
得意技:右内股
使用技:左一本背負投、隅落

この人も中堅以下の選手であったがリオデジャネイロ五輪前後の空白期に結果を残し、今年に入ってからはグランプリ・デュッセルドルフ大会3位、グランドスラム・バクー大会2位と突如これまでにない好成績を挙げている。長身を生かして奥襟を持ち、右内股を狙うオーソドックススタイルがベース、逆技の低い左一本背負投も多用する。懐の深さを利用して相手の技を受け止め、隅返や浮落で返すパターンも得意。

【おもな戦績】
2017年3月 グランドスラム・バクー 2位
2017年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 3位
2016年 グランドスラム・チュメン 3位

■ シード予想
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予想されるシード順は下記。組み合わせは右の画像をクリックして参照されたい。

【プールA】

第1シード:ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)
第8シード:ノラ・ヤコヴァ(コソボ)

【プールB】

第4シード:ラファエラ・シウバ(ブラジル)
第5シード:ミリアム・ローパー(パナマ)

【プールC】

第2シード:芳田司(日本)
第7シード:レン・チェンリン(台湾)

【プールD】

第3シード:エレン・ルスヴォ(フランス)
第6シード:ジェシカ・クリムカイト(カナダ)

世界ランク1位のドルジスレン・スミヤ(モンゴル)と2位の芳田司(コマツ)はそれぞれプールAとプールCに分かれて配され、対戦があるとすれば決勝。この2人の決勝対決がトーナメントを俯瞰する「主筋」と見立て、それぞれの難易度を図ることで有力選手の配置を考えてみたい。

準決勝の相手はドルジスレンがラファエラ・シウバ(ブラジル)、芳田がエレン・ルスヴォ(フランス)となる可能性が濃厚。リスクが高いのは明らかにドルジスレンの側で、天才肌のシウバはコンディション次第ではドルジスレンを食ってしまう可能性がある。これに比するとルスヴォはどちらかというと優等生タイプで爆発力には欠け、芳田にとってはそれほど怖い相手ではない。芳田はむしろ同プールにBシード選手として配された所属の先輩レン・チェンリンのほうを厄介に感じているのではないだろうか。芳田の山場は、まずレンと
戦うことになる準々決勝。

テルマ・モンテイロ(ポルトガル)、マーティ・マロイ(アメリカ)、プリシラ・ネト(フランス)ら多くの有力選手がシードから漏れているが、これらシード外の選手で最も面倒なのは間違いなくクォン・ユジョン(韓国)。低く構えてしつこく担ぎ技を仕掛けてくるそのスタイルは面倒極まりなく、勝ったとしても相当な消耗を強いられること必至だ。このコンがドルジスレンと芳田いずれの山に配されるか、そしてそれが早い段階かどうかが、トーナメントの様相を大きく変えることになるだろう。


文責:林さとる/古田英毅


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※ eJudoメルマガ版8月28日掲載記事より転載・編集しています。

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