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【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】「大野不在」に目の色変える海外の強豪が軒並み参加、橋本壮市は独自の世界で頂点目指す・男子73kg級概況×有力選手紹介

(2017年8月28日)

※ eJudoメルマガ版8月28日掲載記事より転載・編集しています。
【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】「大野不在」に目の色変える海外の強豪が軒並み参加、橋本壮市は独自の世界で頂点目指す・男子73kg級概況×有力選手紹介
■ 階級概況
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橋本壮市は国際大会で連戦連勝、5月のグランドスラム・エカテリンブルグ大会でも豪快な投げを決めて優勝を飾った。

リオデジャネイロ五輪金メダリストの絶対王者・大野将平(旭化成)が欠場。複数の有力選手が出場を見送った他階級とは異なり、大野不在の今こそチャンピオンになるチャンスとばかりに主役級が一同に顔を揃えた。

絶対的な優勝候補はいないが、可能性という観点からは橋本壮市(パーク24)、アン・チャンリン(韓国)、ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)の3人をまず挙げることができる。なかでも橋本は昨年のアジア選手権優勝以降国際大会に全勝中、アン、オルジョフの両者にも直近の対戦で勝利している。また、すでに強豪として定着してからある程度の時間が経って国際的序列の中で納まりどころが固まりつつあるアンとオルジョフと異なり、橋本は今がまさに出世街道を突き進んでいる真っ最中。キャリア上の「旬」がこの世界選手権に合っていると言え、実力はもちろん、勢いという点から考えても最も優勝に近い存在と評して間違いないだろう。

攻めも守りもすべて懐の中で処理しようとする傾向のあるオルジョフは担ぎ技をベースに戦える橋本にとってそれほど怖い存在ではなく、優勝を目指す上での最大の障壁はアン。グランドスラム・パリ大会で勝利した試合もGS延長戦までもつれ込む接戦であり、純競技力的にはほぼ完全に互角と見る。

双方ともに担ぎ技を仕掛ける、決めることでリズムを作る選手。勝ち上がりでこれが崩れると逆に調子を崩す可能性もあり。反対に気持ちよく勝ち上がってリズムに乗れば直接対決でもそれが続くこと確実で、よって重要なのは直接対決までの勝ち上がり内容にあるのではないだろうか。特に昨年の五輪予選ラウンド敗退のショックで、憑いていた神が降りてしまったかのようにいきなりパフォーマンスから光が消えた(現在は復調気配も五輪前の異次元的な領域には手が届いていない)アンは、勝ち上がりでてこずると疑心暗鬼に陥って自滅する可能性もある。橋本も初の世界選手権で出だしに躓くと相応の動揺があるのではと思われるが、この人はさすが苦労人というべきか、調子が悪くてもそれなりに勝ち抜くタフさと引き出しの多さがあり、このあたりは信用できる。アン、橋本双方低調(あまり考えたくないシナリオだが)ならこれは橋本が有利。

前述の第1グループを僅かな差で追うのが第2グループのラシャ・シャブダトゥアシヴィリ(ジョージア)、デニス・イアルツェフ(ロシア)、ムサ・モグシコフ(ロシア)の3人。全員が表彰台を狙えるレベルの実力を持っているが、3人とも「際」を作ることが柔道の要であり、その土俵自体をなかなか作らせてくれない橋本やアンには分が悪い。この3人は全員がシードから外れており、同じく「際」で勝負するタイプのオルジョフの山に配置されるかどうかが勝ち上がりを左右する重要ポイントだ。ただし、この3人の中でイアルツェフのみは足技にかなりの鋭さがあり、橋本の山に来た場合には一定以上の警戒が必要。

ここまでに名前を挙げた選手以外で上位進出の可能性が高いのは、ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)とガンバータル・オドバヤル(モンゴル)の2人。ヘイダロフは2月のグランドスラム・パリ大会でオルジョフを破って以来、多少の波はあるものの一貫して上昇曲線を描き続けて来た。勢いだけで言えば階級内でも随一であり、トーナメントの途中できっかけを掴めば台風の目になる可能性十分だ。一方のガンバータルは新ルールで規制が緩和された袖口グリップを積極的に駆使することで「新・圧力柔道」とでも呼ぶべき新たなスタイルを開拓。相手を手先から拘束、その動きを奪って自らの最大の長所である体の力の強さを生かして投げつける一方的な試合を度々見せている。実はスタイル変更後の敗戦はアジア選手権決勝でアンに「指導2」で競り負けたただ1試合のみ、展開次第では一気にトーナメントを勝ち上がる可能性があるダークホースだ。

ディルク・ファンティシェル(ベルギー)やミクロス・ウングヴァリ(ハンガリー)、ヴィクター・スクヴォトフ(UAE)といったベテラン勢も上位に絡んでくるだけの力を持っているが、これらの選手のパフォーマンスはそのまま大会へのフォーカス度と直結している。五輪で銅メダルを獲得するというキャリアハイを経験したばかりのファンティシェルは恐らくさほどモチベーションが高くないはず、怖いのは地元開催でなんとしても結果がほしいはずのウングヴァリと、10月に地元開催のグランドスラム・アブダビ大会に出場してから雲隠れしていたスクヴォトフ。とくにスクヴォトフは切れ味抜群の足技という飛び道具があり(昨春に西山勇希を葬り去った出足払はファンの記憶に新しいはず)、かつこの選手は早いスパンで新兵器を身に着けて来るのが特徴でもある。10か月の沈黙の間にいったい何を上積みしているのか。できれば対戦したくないまま大会を終えてしまいたい相手の一である。

その他、トミー・マシアス(スウェーデン)やトハル・ブトブル(イスラエル)ら新顔たちも全員が一定水準以上の力を持っており、表彰台候補とまでは言い難いものの、組み合わせによっては十分上位進出の可能性がある。

■ 有力選手
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橋本壮市(日本)

橋本壮市(日本)
HASHIMOTO Soichi
26歳 1991/8/24
WR:1位 組み手:右組み
得意技:左一本背負投(橋本スペシャル1)、左袖釣込腰(橋本スペシャル2)
使用技:左背負投、右背負投、右体落、内股透、巴投

世界チャンピオン3人(大野将平、中矢力、秋本啓之)が代表を争っていた超激戦区73kg級において、与えられた僅かなチャンスをモノにし続けることで世界選手権代表まで登り詰めた苦労人。高校、大学、実業団と時代ごとにスタイルを変えながら第一線に留まり続け、常に進化を止めなかったことで独自の世界を構築するに至った。

橋本の柔道の生命線は徹底した組み手管理。洗練された組み手技術はそれだけで「画になる」レベルに達しており、姿勢良く圧を掛けながら相手を追い詰めていく様は圧巻。最大の武器は2月のグランドスラム・パリ大会でセンセーションを巻き起こした「橋本スペシャル2」こと縦回転で投げる片手の左袖釣込腰。自分だけが一方的に組み、爆発的な勢いで相手を畳に突き刺すこの技は海外サイト「JudoCrazy」にて「古賀稔彦の再来」と絶賛され、4月のヨーロッパ選手権ではフォロワーが続出する事態となった。自身が「橋本スペシャル1」と命名して使用している左一本背負投などいずれも打点の高い担ぎ技を使いこなし、近年は勝ちぶりの良さが一段も二段も上がっている。ほかにも、グランドスラム・パリ大会決勝でアン・チャンリン(韓国)を破った「セルフ内股透」など、橋本の技には独創的な物が多い。現在「橋本スペシャル3」を開発中とのことで、世界選手権ではこの技が披露されるかどうかもなかなか面白い観戦ポイント。

【おもな戦績】
2017年2月 グランドスラム・パリ 優勝
2016年 グランドスラム東京 優勝
2016年 ワールドマスターズ・グアダラハラ 優勝

【最近の成績】
2017年5月 グランドスラム・エカテリンブルグ 優勝
2017年4月 選抜体重別選手権 優勝

参考動画
ファン制作のコンピレーション動画:Soichi Hashimoto compilation - The genius

2017年グランドスラム・パリ決勝 vsアン・チャンリン(韓国)
(相手の足を後方に払うことで内股を強制しそれを透かす、異次元の組み立ての「セルフ内股透」。)

2017年ヨーロッパ選手権決勝 エルハン・ママドフ(アゼルバイジャン)vsシリル・マレ(フランス)
(ママドフが「橋本スペシャル2」で「一本」を奪った試合。)

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アン・チャンリン(韓国)

アン・チャンリン(韓国)
AN Changrim
23歳 1994/3/2
WR:3位 組み手:左組み
得意技:左背負投、左背負投(韓国背負い)、左小内刈
使用技:左袖釣込腰、右背負投、右一本背負投、左体落、左内股

在日コリアン3世。桐蔭学園高から筑波大へと進学、2014年4月には韓国に渡り龍仁大の所属となった。以降はその才能が一気に花開き、同年の世界ジュニア選手権優勝を皮切りに、2015年アジア選手権、2015年ユニバーシアードとビッグタイトルを連取。2015年アスタナ世界選選手権でも、圧勝で優勝を飾った大野将平(旭化成)から唯一投げ技のポイント(隅落「技有」)を奪うなど、素晴らしい出来を見せて銅メダルを獲得した。2016年2月のグランドスラム・パリ大会では高校、大学の先輩である秋本啓之(了徳寺学園職)から「技有」「一本」と立て続けに背負投でポイントを奪い圧勝している。昨年中盤から調子を落としており、リオデジャネイロ五輪ではメダル獲得に失敗。一時の神がかり的な勢いは失われたものの、近頃はまた調子を上げてきており、大野不在の世界選手権で表彰台の頂点を目指す。

背負投ファイターとしては全階級を通じてナンバーワンと思われる完成度を誇り、あらゆる状態から左右の担ぎ技を仕掛けてくる業師。最大の得意技は代名詞でもある組み際の左「韓国背負い」。左背負投フェイントからの左小内刈も相当な取り味がある。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 3回戦敗退
2015年 アスタナ世界選手権 3位
2014年 世界ジュニア選手権 優勝

【最近の成績】
2017年4月 アジア選手権 優勝
2017年2月 グランドスラム・パリ 2位

参考動画
ファン制作のコンピレーション動画:An Changrim compilation - The talent

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ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)

ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)
ORUJOV Rustam
25歳 1991/10/4
WR:2位 組み手:左組み
得意技:左外巻込、左小外掛、右小外掛
使用技:左払腰、左内股、左大外刈、隅返

リオデジャネイロ五輪銀メダリスト。2012年ロンドン五輪から3年連続で世界大会代表を務め(予選敗退、予選敗退、7位)中堅選手として存在感を発揮すると、2015年についにブレイク。グランプリ・トビリシ大会、グランプリ・サムスン大会、グランドスラム・バクー大会とツアーに3連勝して上半期MVP級の活躍を見せた。6月の欧州選手権初戦でヤロミール・ジェゼク(チェコ)の関節技で肘を負傷したためアスタナ世界選手権には出場できなかったが、ブレイク後初の世界大会となったリオ五輪では前評判どおりの活躍を見せて銀メダルを獲得した。現在若手のヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)が伸びてきており、オルジョフとしては今大会で結果を出すことであらためて国内1番手の座を固めたいところだ。

柔道スタイルは典型的なアゼルバイジャンスタイルであり、奥襟や背中を持った状態から密着して左右の小外掛や左払腰を狙う。引き手のみを持った状態からの左外巻込、釣り手のみを持った状態から裏投風に後方に反り返って投げる左小外掛には特に注意が必要だ。長身で手足が長く、自身の懐の深さを存分に生かして戦う難剣使いであり、失点の多くは懐に潜り込まれて処理を誤った場合のもの。この柔道スタイルゆえにやや安定感には欠けるが、照準を合わせて臨んだ大会ではしっかりと結果を残している。世界チャンピオンになるなら大野不在の今大会しかないと覚悟を固めていることは想像に難くなく、今大会では相当な好パフォーマンスが期待出来るものと思われる。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 2位
2016年5月 ワールドマスターズ・グアダラハラ 3位
2012年 ロンドン五輪 3回戦敗退

【最近の成績】
2017年4月 ヨーロッパ選手権 3位
2017年3月 グランドスラム・バクー 3位
2017年2月 グランドスラム・パリ 5位

参考動画
ファン制作のコンピレーション動画:Rustam Orujov (AZE) Compilation Judo

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ラシャ・シャブダトゥアシヴィリ(ジョージア)

ラシャ・シャブダトゥアシヴィリ(ジョージア)
SHAVDATUASHVILI Lasha
25歳 1992/1/31
WR:10位 組み手:右組み
得意技:右大内刈
使用技:右払腰、裏投、左内股(やぐら投げ)、右小外刈、隅返

リオデジャネイロ五輪銅メダリスト。2012年のロンドン五輪66kg級において完全ノーマークから隅返一本やりで一気に金メダルを獲得した超新星。2014年に73kg級へ階級を変更して以降は徐々に隅返への依存を減らし、現在では引き手で脇を抱えて(昨今流行っている小外掛における上体の作り)の右大内刈が最大の武器。線が細い印象であった体も一段厚みを増し、リオ五輪では大野将平(旭化成)を相手に奥襟を持って正面から組み合い、唯一「一本」を奪わせなかった。

柔道スタイルは密着が要の典型的ジョージアスタイルであり、得意技の右大内刈は前述の形のほかに釣り手をクロスに入れて、前襟を持って追い込んでなど複数のパターンがある。密着した状態からは左「やぐら投げ」も用いるため注意が必要。裏投も得意としており、不用意に体を捨てた選手がと一気に抱え上げられて放られる場面も多々あり。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 3位
2013年 ヨーロッパ選手権 優勝 ※66kg級
2012年 ロンドン五輪 優勝 ※66kg級

【最近の成績】
2017年3月 グランドスラム・バクー 5位
2017年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 2位

参考動画
ファン制作のコンピレーション動画:LASHA SHAVDATUASHVILI (GEO) - JUDO HIGHLIGHTS

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デニス・イアルツェフ(ロシア)

デニス・イアルツェフ(ロシア)
IARTCEV Denis
26歳 1990/9/18
WR:13位 組み手:右組み
得意技:右小外刈、左小外刈
使用技:払釣込足、支釣込足、右払腰、右内股、浮落、大外刈、膝車、右大内刈

2015年ワールドマスターズ・ラバト大会の覇者。ムサ・モグシコフ(ロシア)との激しい国内争いを制してリオデジャネイロ五輪に出場したが、準決勝でディルク・ファンティシェル(ベルギー)、敗者復活戦でラシャ・シャブダトゥアシヴィリ(ジョージア)に連敗して結果は7位だった。

長身痩躯の体からリーチの長さを生かして繰り出される足技が最大の武器。遠間から払い、当て、引っ掛けてとバリエーション豊かな足技を仕掛ける。前技フェイントから放たれる右小外刈と、遠心力で一気に相手を放り投げる払釣込足には特に注意が必要。崩れた相手に体を浴びせる決めが非常に上手く、懐の深さを利用しての返し技も得意。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 7位
2016年 ワールドマスターズ・グアダラハラ 3位
2015年 ワールドマスターズ・ラバト 優勝

【最近の成績】
2017年6月 グランプリ・フフホト 3位
2017年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 優勝
2016年 グランドスラム東京 7位

参考動画
ファン制作のコンピレーション動画:IARTCEV DENIS - HIGHLIGHTS JUDO

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ムサ・モグシコフ(ロシア)

ムサ・モグシコフ(ロシア)
MOGUSHIKOV Musa
29歳 1988/2/6
WR:14位 組み手:左組み
得意技:左小内刈
使用技:隅返、浮技、隅落、左小外刈、左小外掛、左背負投

2014年チェリャビンスク世界選手権3位。リオデジャネイロ五輪へは国内の代表争いでデニス・イアルツェフ(ロシア)に敗れて出場できなかった。今年のヨーロッパ選手権では2位を獲得しており、上り調子で世界選手権に臨む。

イアルツェフ同様に足技が主体の柔道スタイルであり、得意技は背中を抱いての左小内刈。密着を嫌った相手が腰を引く、あるいはカウンターの裏投を狙ったところに足を引っ掛け、押し込むようにして投げる。相手に頭を下げさせておいての隅返や浮技も得意。

【おもな戦績】
2016年 グランドスラム・チュメニ 優勝
2015年 グランドスラム東京 3位
2014年 チェリャビンスク世界選手権 3位

【最近の成績】
2017年4月 ヨーロッパ選手権 2位
2016年 グランドスラム東京 5位
2016年 グランドスラム・アブダビ 3位

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ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)

ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)
HEYDAROV Hidayat
20歳 1997/7/27
WR:5位 組み手:右組み
得意技:右背負投、右釣込腰
使用技:右小内巻込、浮落、右背負投(韓国背負い)、隅返、右内股、肩車、右袖釣込腰

今年のヨーロッパチャンピオン。既にジュニアカテゴリでは一定の結果を残していたが、今年2月に行われたグランドスラム・パリ大会の3位決定戦において国内の先輩であるルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)に勝利。一気にシニアでも注目されるようになった。

前襟、クロスグリップ、脇を差してとどの形からでも技に入ってくる。それぞれの技の完成度は高くないものの、息もつかせぬ連続攻撃を仕掛けて「量」で相手を圧倒するタイプの選手だ。見た目の割に体の力があるため、「際」にも強い。また、立技から寝技への移行が早く、気を抜いていると絞め技の餌食になってしまう。

【おもな戦績】
2017年4月 ヨーロッパ選手権 優勝
2017年2月 グランドスラム・パリ 3位
2016年 ヨーロッパジュニア選手権 優勝

【最近の成績】
2017年7月 ヨーロッパオープン・ミンスク 1位
2017年4月 グランプリ・アンタルヤ 3位
2017年3月 グランドスラム・バクー 5位

参考動画
2017年グランドスラム・パリ3位決定戦 vsルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)
(ヘイダロフ出世のきっかけとなった試合。)

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ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)

ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)
GANBAATAR Odbayar
28歳 1989/8/20
WR:6位 組み手:左組み
得意技:左内股、右小内巻込、隅返
使用技:内股(やぐら投げ)

階級屈指の体幹の強さを誇るパワーファイター。モンゴル選手にしては珍しく前襟を持っての正統派柔道を繰り広げる。以前は、格上に対しては密着、さらに組み手の左右を変えてと典型的なモンゴル柔道で戦うことが多かったが、袖口グリップに寛容な2017年度試行ルール下で新境地を開拓。袖口を得ることでよりダイレクトに体の力を相手に伝えられるようになり、前襟を持っての「新・圧力柔道」とでも呼ぶべき独自のスタイルを作り上げた。このスタイルを引っ下げて出場した3月のグランドスラム・バクー大会ではラシャ・シャブダトゥアシヴィリ(ジョージア)と中矢力(ALSOK)を立て続けに破って優勝を飾っており、さらに練度を上げて臨んでくるであろう世界選手権ではどのような柔道を見せるのかが非常に注目される。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 3回戦敗退
2016年 ワールドマスターズ・グアダラハラ 2位
2015年 アスタナ世界選手権 5位

【最近の成績】
2017年5月 アジア選手権 2位
2017年3月 グランドスラム・バクー 優勝

参考動画
2017年グランドスラム・バクー決勝 vs中矢力(日本)
(ガンバータルが「新・圧力柔道」で中矢力を完封した試合。ちなみにこの日の中矢はオルジョフを破るなど決して調子は悪くなかった。)

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トミー・マシアス(スウェーデン)

トミー・マシアス(スウェーデン)
MACIAS Tommy
24歳 1993/1/20
WR:4位 組み手:右組み
得意技:右小外掛、右大内刈
使用技:浮技、払釣込足、出足払、谷落、抱分、隅返、右内股

リオデジャネイロ五輪前後の空白期間に台頭した新興勢力。長い手足を生かした足技が武器だが、最も得意としているのは返し技。腰を引いて相手の技を誘い、足を絡めて後の先で強烈な一撃を見舞う。円運動から遠心力を利用して振り回すように仕掛ける払釣込足にも注意が必要だ。掛け潰れた相手への抱分も備えており、安易に低い技を仕掛けることは避けたい。

【おもな戦績】
2017年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 3位
2016年 グランドスラム・アブダビ 優勝
2016年 グランプリ・ザグレブ 2位

【最近の成績】
2017年6月 グランプリ・フフホト 5位
2017年4月 ヨーロッパ選手権 3位
2017年3月 グランプリ・トビリシ2位

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トハル・ブトブル(イスラエル)

トハル・ブトブル(イスラエル)
BUTBUL Tohar
23歳 1994/1/24
WR:7位 組み手:左組み
得意技:左袖釣込腰、右袖釣込腰、左小内巻込
使用技:左背負投、左一本背負投、左背負投(韓国背負い)、左体落

リオデジャネイロ五輪前後の空白期間に台頭した新興勢力。組み合わせに恵まれた2月のグランドスラム・パリ大会で3位を獲得し、以降はシード権を最大限に利用する形で結果を残し続けている。

技のポイントよりも組み手管理や手数によって「指導」を積み重ねる戦術派であり、「指導3」による勝利が非常に多い。ピストルグリップやポケットグリップを駆使して袖を絞り、この状態から左右の担ぎ技を狙う。意外なことに立った姿勢での担ぎ技が多く、技自体は投げる目的で仕掛けているという印象。バランスが良く滅多に膝をつかないことも相手のみに一方的に「指導」が累積する一因であり、相手の偽装攻撃による「指導」獲得も多い。担ぎ技に意識を向けさせておいての左小内巻込は取り味があり、意識せずに受けてしまうと危険。繰り返しになるが、イスラエルチームは今年に入ってから男女ともに好調で、乗せてしまうと嫌な相手。

【おもな戦績】
2017年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 5位
2017年2月 グランドスラム・パリ 3位

【最近の成績】
2017年6月 グランプリ・カンクン 2位
2017年4月 ヨーロッパ選手権 5位
2017年4月 グランプリ・アンタルヤ3位

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アーサー・マルゲリドン(カナダ)

アーサー・マルゲリドン(カナダ)
MARGELIDON Arthur
23歳 1993/10/12
WR:11位 組み手:左組み
得意技:左内股、右小内巻込
使用技:左内股(やぐら投げ)、浮落、谷落

この選手もリオデジャネイロ五輪前後の空白期に台頭した新興勢力であり、昨年のパンナム選手権王者。表彰台登攀という具体的な形では目立った結果を残していないが、昨年後半から中矢力(ALSOK)、デニス・イアルツェフ(ロシア)といった階級上位の強豪を立て続けに撃破した戦歴を買って、要注意選手の1人としてピックアップした。得意技はゆったりとした動作から足を一際高く挙げることで相手を持ち上げて投げる左内股と、組み際に釣り手のみを持った状態から仕掛ける右小内巻込。特に右小内巻込は威力があり、この技の存在を知らずに戦うと非常に危険。できることならば先に二本を持って動きを固定してしまいたい。

【おもな戦績】
2016年 マスターズ・グアダラハラ 2回戦敗退
2016年 パンナム選手権 優勝
2015年 グランドスラム東京 7位

【最近の成績】
2017年6月 グランプリ・フフホト 2位
2017年5月 グランドスラム・エカテリンブルグ 5位

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ミクロス・ウングヴァリ(ハンガリー)

ミクロス・ウングヴァリ(ハンガリー)
UNGVARI Miklos
36歳 1980/10/15
WR:21位 組み手:
得意技:右小内刈、左小内巻込、寝技
使用技:右内股、左一本背負投、左背負投

36歳の大ベテラン。4度目の五輪となったリオデジャネイロ五輪でもしっかりと5位を獲得、復帰戦となった3月のグランドスラム・バクー大会でも3位に入るなどまったく衰えを見せない。右内股や左一本背負投など様々な技を使用するが、戦術の核は背中を抱いての右小内刈と左小内巻込。寝技も非常に得意としており、左右の小内刈(小内巻込)で崩して寝技で取る試合も多い。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 5位
2012年 ロンドン五輪 2位 ※66kg級
世界選手権3大会連続3位(2005年~2009年) ※66kg級

【最近の成績】
2017年4月 ヨーロッパ選手権 5位
2017年3月 グランドスラム・バクー 3位

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ディルク・ファンティシェル(ベルギー)

ディルク・ファンティシェル(ベルギー)
VAN TICHELT Dirk
33歳 1984/6/10
WR:29位 組み手:左組み
得意技:左背負投、左一本背負投
使用技:左大外刈、右小外刈、右腰車、左内股

リオデジャネイロ五輪銅メダリスト。リオ五輪では第1シードであるアン・チャンリン(韓国)の直下という厳しい配置からのスタートであったが、異常なフォーカス力と対アン戦を想定して磨いてきたであろう戦略(※1)によりこの強敵を撃破。ベテランらしい渋い戦いぶりで見事銅メダルを獲得した。当日夜に嬉しさのあまりベルギーチームと町に繰り出し、暴漢に殴られてメディアを賑わせたところも含めて、良い意味で常に期待を裏切ってくれる魅力的な選手だ。

全盛期ほどの力はないものの、前述のとおりここぞと決めた試合でのフォーカス力は階級随一。担ぎ技が組み立ての中心だが、歳を重ねるごとに技数を増加させており、左内股に右腰車と様々な技を使用する。

(※1)アンの生命線である左釣り手を徹底して持たせず、展開に窮したアンが仕掛けた右「韓国背負い」を待ち構えて引き落として隅落「技有」を獲得。このポイントを守り切って勝利した。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 3位
2013年 リオデジャネイロ世界選手権 3位
2009年 ロッテルダム世界選手権 3位

【最近の成績】
2017年6月 グランプリ・フフホト 5位
2016年 グランドスラム東京 5位

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ヴィクター・スクヴォトフ(UAE)

ヴィクター・スクヴォトフ(UAE)
SCVORTOV Victor
29歳 1988/3/30
WR:51位 組み手:左組み
得意技:出足払、左小内刈、左小内巻込、左小外刈
使用技:右一本背負投、左袖釣込腰、左大外刈、

モルドバからUAEに移籍した「五人衆」のリーダー格。2014年チェリャビンスク世界選手権では銅メダルを獲得しており、81kg級のセルジュ・トマ(UAE)と並んでUAEの柔道界を牽引する存在だ。リオデジャネイロ五輪では3回戦で大野将平(旭化成)に敗れた。

突如関節技で「一本」を量産するなど、常に新スタイルを求める面白い選手であり、現在の尖った特徴は足技。切れ味が鋭くどんな相手でも一瞬で刈り取ってしまう怖さがある。2015年のグランプリ・デュセルドルフ大会で西山雄希を体ごと吹っ飛ばした、左小内刈(小内「払」)から右出足払のコンビネーションの切れ味はファンの記憶にも新しいはず。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 3回戦敗退
2014年 チェリャビンスク世界選手権 3位
2009年 ロッテルダム世界選手権 7位

【最近の成績】
2016年 グランドスラム・アブダビ 3位

参考動画
2015年グランプリ・デュッセルドルフ3回戦 vs西山雄希
(華麗な足技のコンビネーションで西山から「一本」を奪った。)

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ギヨション・ボボエフ(ウズベキスタン)

ギヨション・ボボエフ(ウズベキスタン)
BOBOEV Giyosjon
24歳 1993/5/12
WR:9位 組み手:右組み
得意技:右内股、内股透
使用技:左袖釣込腰、右小内刈、右払腰、右大外刈、左腰車

リオデジャネイロ五輪前後の空白期に台頭した新興勢力。昨年のグランドスラム・バクー大会で2位を獲得して以降、安定して好成績を残している。得意技は右内股だが、特筆すべきは驚異的なバランス感覚と体幹の強さ。もつれた状態からは高確率で相手の背中を畳に着けてしまう。内股透も得意としており、誘われるままに内股を仕掛けることは非常に危険。奇襲技としての左腰車も持っており、こちらにも注意が必要だ。

【おもな戦績】
2016年 グランドスラム東京 3位
2016年 グランドスラム・バクー 2位

【最近の成績】
2017年4月 グランプリ・アンタルヤ 7位
2017年3月 グランプリ・トビリシ 優勝
2017年2月 グランドスラム・パリ 5位

参考動画
2016年グランドスラム東京3位決定戦 vsディルク・ファンティシェル(ベルギー)
(強烈な内股透「一本」。)

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マルセロ・コンティーニ(ブラジル)

マルセロ・コンティーニ(ブラジル)
CONTINI Marcelo
28歳 1989/4/20
WR:8位 組み手:右組み
得意技:右内股
使用技:右背負投、右大外刈、隅落、谷落

ブラジルのベテラン選手。これまでそれほど目立った存在ではなかったが、今年に入ってからコンチネンタルオープン2大会で優勝。続いて出場した5月のグランドスラム・エカテリンブルグ大会で2位、6月のグランプリ・カンクン大会で優勝と尻上がりに調子を上げ、本大会のシード枠に滑り込んだ。

得意技は相手を懐に抱き込んだ状態から仕掛ける右内股。相手との力関係によって戦い方がはっきりと分かれる選手で、組み勝てる力関係の場合には右内股を中心に激しく攻めるが、相手の力が上の場合はほとんど何もできないまま一方的に攻め込まれることも珍しくない。一線級への勝利歴はなく、序盤戦で敗れる可能性も十分だ。

【おもな戦績】
2017年5月 グランドスラム・エカテリンブルグ 2位
2017年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 7位
2012年 グランドスラム・リオデジャネイロ 優勝

【最近の成績】
2017年6月 グランプリ・カンクン 優勝
2017年3月 パンナムオープン・リマ 優勝
2017年3月 パンナムオープン・サンティアゴ 優勝

■ シード予想
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予想されるシード順は下記。組み合わせは右の画像をクリックして参照されたい。

【プールA】

第1シード:橋本壮市(日本)
第8シード:マルセロ・コンティーニ(ブラジル)

【プールB】

第4シード:トミー・マシアス(スウェーデン)
第5シード:ヒダヤット・ヘイダロフ(ブラジル)

【プールC】

第2シード:ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)
第7シード:トハル・ブトブル(イスラエル)

【プールD】

第3シード:アン・チャンリン(韓国)
第6シード:ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)

比較的強豪選手が順当にシード権を獲得した本階級。優勝候補3人のプールがきれいに分かれ、橋本壮市(パーク24)はプールA、ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)はプールC、アン・チャンリン(韓国)はプールDへと配された。橋本はBシード選手も中堅選手のマルセロ・コンティーニ(ブラジル)と最も楽な位置からのスタート。

その一方でアンには過去ワールドツアーで4勝2敗、しかも勝利はすべて指導差のガンバータル・オドバヤル(モンゴル)が刺客として配された。アンは5月のアジア選手権決勝でガンバータルに勝利しているが、このときも「指導2」によるGS優勢勝ち。リオデジャネイロ五輪前に調子を落とすきっかけとなったワールドマスターズ・グアダラハラ大会で敗れたのもこのガンバータルであり、アンにとてはもっとも嫌な相手であると思われる。空白地帯のプールBからはヨーロッパチャンピオンのヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)が勝ち上がり候補。

続いてシード漏れした有力選手に目を向けてみよう。有力選手でシードから漏れたのはラシャ・シャブダトゥアシヴィリ(ジョージア)、デニス・イアルツェフ(ロシア)、ムサ・モグシコフ(ロシア)の3人。これらの選手が勝ち上がるには優勝候補が不在のプールBか、ある程度勝負ができるオルジョフのプールCを抽選で引く必要がある。プールA、プールDに配された場合の勝ち上がりはかなり厳しいと言わざるを得ない。ただし、アンとすればガンバータルよりはこの3人の方が戦いやすいはずで、できることならばガンバータルの山にこのうちの誰かにきてもらいたいところだ。

その他、ベテラン勢で配置が気になるのはヴィクター・スクヴォトフ(UAE)。足技一発の切れ味があり、いかに安定感のある橋本とは言え、できれば対戦は避けたいところ。実力通りにトーナメントが進んだ場合、抽選結果に関わらず橋本の決勝進出の可能性はかなり高い。


文責:林さとる/古田英毅

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※ eJudoメルマガ版8月28日掲載記事より転載・編集しています。

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