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【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】阿部一二三がついに世界デビュー、圧勝Vの可能性すら十分・男子66kg級概況×有力選手紹介

(2017年8月26日)

※ eJudoメルマガ版8月26日掲載記事より転載・編集しています。
【ブダペスト世界柔道選手権2017特集】阿部一二三がついに世界デビュー、圧勝Vの可能性すら十分・男子66kg級概況×有力選手紹介
■ 階級概況
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66kg級実力推測マップ

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優勝候補筆頭、阿部一二三の魅力は豪快な投技。

長く階級の頂点に君臨してきた海老沼匡(パーク24)が73kg級に階級を変更。ロンドン−リオ期に階級上位をキープしていたダヴァドルジ・ツムルフレグ(モンゴル)とリオデジャネイロ五輪銅メダリストのリショド・ソビロフ(ウズベキスタン)もエントリーを見送り、もともと決して厚くなかった上位層の陣容がさらに細った印象だ。以下、右掲の「実力推測マップ」を参照しながら読み進められたい。

優勝候補筆頭は間違いなく阿部一二三(日本体育大2年)。初出場ながらその実力、勢いともに圧倒的だ。対抗馬はリオデジャネイロ五輪銀メダリストのアン・バウル(韓国)。両者が勝ち上がった場合には準決勝で直接対決が組まれ、これに勝利した方がそのまま優勝する可能性が高いと考えておくのが妥当かと思われる。今大会で頂点に立った選手がリオ―東京期における66kg級の「顔」となることは確実で、内外の識者に実力ナンバーワンを認められながら公式の序列でその立場に立ったことのない(たとえばチャンピオンとしてIJFのアイコンになる、など)阿部が、初めてその位置を得るかどうかのチャレンジの場でもある。
阿部は以前から「圧倒的な勝利」をキーワードとして挙げており、金メダル獲得はもちろんのこと、ポスト海老沼の座をそのまま確定させるような、豪快な「一本」連発に期待したい。

前述の2人を追う第1グループは、正統派のミハイル・プルヤエフ(ロシア)に、パワーファイターのゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)とヴァズハ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)を加えた3人。プルヤエフは昨年のグランドスラム東京大会を最後にワールドツアーには出場していないが、自身の不在期間に好成績を残した世界ランク3位のアブドゥラ・アブドゥルザリロフ(ロシア)と同10位のヤクブ・シャミロフ(ロシア)を抑えての代表選出であることが不気味。ロシアの選手起用の上手さも考慮すると相当な好コンディションで乗り込んでくると考えておくべきだろう。一方、ザンタライアとマルグヴェラシイヴィリは純実力はもちろんん、対阿部という意味で要注意の選手。現在ではほとんど解消されたものの、かつて阿部はダヴァドルジに2大会連続で敗れるなど密着系パワーファイターを苦手としていた来歴がある。有力選手ではこの2人にニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)を加えた3人がこの項を満たしており、阿部にとっては実力以上に怖い存在だ。

続く第2グループでは前述のシハリザダとチャールズ・チバナ(ブラジル)が実力で抜けており、両者ともにポテンシャルの高さがそのまま発揮されれば表彰台にたどり着く可能性も十分ある。五輪王者のバジーレは通常の物差しでは測ることのできない規格外の存在であり、優勝から1回戦敗退まで蓋を開けてみるまでまったく想像がつかない。ファンとしてはリオ五輪のような大爆発に期待したいところだが、現実的にはベスト16から8といったところが妥当だろう。バジーレの性格やここまでの立ち振る舞いを考慮すると、再爆発は東京五輪という可能性すら十分あり、「あと3年」を彼がどう戦おうとしているのか、これを見極める大会と位置付けておくほうが良いのかもしれない。

もともと上位とそれ以外に大きな差がある本階級だが、この傾向は現在も変わらず。リオ五輪後に現れた新興勢力にも上位陣と正面から戦えるだけの力を持った選手はおらず、上位に食い込む可能性がある選手はタル・フリッカー(イスラエル)くらいだ。

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阿部一二三(日本)

阿部一二三(日本)
ABE Hifumi
20歳 1997/8/9
WR:4位 組み手:右組み
得意技:右袖釣込腰、右背負投、右大外刈
使用技:右大腰、右大内刈、右小外刈、左一本背負投

神港学園高2年時の2014年、講道館杯に史上最年少となる17歳2ヶ月で優勝。さらに年末に行われたグランドスラム・東京大会でも優勝候補の海老沼匡(パーク24)を破って優勝を飾り、世界中から注目を浴びた。研究されて一時的に成績を落としたためにリオデジャネイロ五輪への出場は叶わなかったが、五輪の最終選考会であった動燃の選抜体重別選手権では海老沼を三度投げつける圧勝で下して初優勝を果たしている。昨年11月の講道館杯では当時明治大4年の橋口祐葵(パーク24)に袖釣込腰「一本」で敗れたものの、翌12月のグランドスラム東京大会では決勝で橋口を背負投「一本」に仕留めてリベンジを達成。2月のグランドスラム・パリ大会、4月の選抜体重別選手権でも圧倒的な成績で優勝を飾り、見事初の世界選手権代表の座を掴んだ。

得意技は右袖釣込腰と右背負投だが、阿部の最大の強みは足で払い、跳ね上げ、巻き込んでと様々なパターンで相手の背中から畳に落とす投げのセンス。豪快な「一本」の影に隠れて見えづらいが、阿部はほとんどの投技において状況に即したフォローを加えており、そのことがただでさえ強烈な技の威力を一段も二段も高めている。活躍し始めの頃は脇を差してのパワー柔道を繰り広げることが多く、ゆえにダヴァドルジ・ツムルフレグ(モンゴル)に2大会連続で敗れるなど相四つのパワーファイターを苦手としていた、しかし前襟を持つ柔道を志向することでこの弱点を克服。近頃は逆技の左一本背負投にも力を入れており、常に自己を研究して進化を続けている。単に才能がある、力があるということではなく、前任の海老沼同様常に成長を続けるのが阿部の面白さ。伸び盛りで迎える今大会はどんな上積みを見せてくれるか非常に楽しみ。

阿部は「圧倒的な勝利」を目標として掲げている。今大会でも阿部らしい気風の良い豪快な「一本」連発に期待したい。

【おもな戦績】
2017年2月 グランドスラム・パリ 優勝
2016年 グランドスラム・東京 優勝
2014年 グランドスラム・東京 優勝
2014年 講道館杯 優勝 ※史上最年少

【最近の成績】
2017年4月 選抜体重別選手権 優勝

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アン・バウル(韓国)

アン・バウル(韓国)

AN Baul
23歳 1994/3/25
WR:2位 組み手:左組み
得意技:左背負投、左背負投(韓国背負い)
使用技:左袖釣込腰、左小内刈、左内股

リオデジャネイロ五輪の銀メダリスト。リオ五輪では準決勝で海老沼匡(パーク24)をGS延長戦の末に隅落「有効」で破ったものの、決勝でダークホースのファビオ・バジーレ(イタリア)に敗れて優勝はならなかった。

担ぎ技を仕掛けることでリズムを作る典型的な韓国系背負投ファイターであり、組み手争いや袖の絞り合いから担ぎ技を仕掛けまくる。技一発ごとの威力も相当なもので、非常に高いレベルで完成された担ぎ技のスペシャリストだ。以前は完成度の高さに比して優等生的な線の細さがあったものの、日本以上と評される熾烈な国内予選を勝ち抜いたことでタフさを増し、リオ五輪では海老沼を相手に偽装攻撃すれすれの「韓国背負い」を連発して泥臭く勝利を掴み取った。昨年のグランドスラム東京大会では準々決勝で当時明治大4年の橋口祐葵(パーク24)に対して、敢えて腕を折りにいったとしか思えない、危険な袖釣込腰を仕掛けて反則負けをしており、精神面での脆さはほとんどなくなったと考えても良いだろう。阿部一二三の今大会における最大のライバルだ。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 2位
2016年 ワールドマスターズ・グアダラハラ 優勝
2015年 アスタナ世界選手権 優勝

【最近の成績】
2017年5月 アジア選手権 優勝
2016年 グランドスラム・東京 7位

参考動画
ファン制作のコンピレーション動画:An Baul compilation - The magician

2016年グランドスラム・東京準々決勝 vs橋口祐葵(日本)
(腕を折りにいったとしか思えない「エグい」袖釣込腰で反則負け。阿部一二三vsアンの試合展開のシミュレーションとしても有益な動画。)

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ファビオ・バジーレ(イタリア)

ファビオ・バジーレ(イタリア)

BASILE Fabio
22歳 1994/10/7
WR:29位 組み手:左組み
得意技:出足払、送足払、横落
使用技:左大内刈、左背負投、左背負投(韓国背負い)、左大外刈、左袖釣込腰

リオデジャネイロ五輪の金メダリストであり、洒落た髪型と情熱的なパフォーマンスが特徴の「イタリアの伊達男」。リオ五輪ではノーシード配置から番狂わせを連発して優勝を飾った。五輪の控え時間に興奮のあまり係員の静止を無視して試合場に向かおうとしたり、気合を入れるために顔を叩き始めたら自分で止めることができずにコーチに止めてもらうなど、「試合に入る」集中力の高さは常人には理解不能なレベルにある。決勝で一本勝ちを収めた後も試合場を走り回り大絶叫。国に帰ってからはテレビ番組に出演して上半身裸でダンスを披露と、そのお調子者ぶりにはむしろ清々しさすら感じる。

前述の強烈なキャラクターとワールドツアーで一度も優勝しないまま五輪の頂点に立った経歴のために単なる一発屋だと思われがちだが、足技の切れ味は本物。相手の意識の外から鋭く足を飛ばして一瞬で畳に叩き落としてしまう。これ以外にも横落や相手の脇を掬って腕を抱える変形の左袖釣込腰(動画をご覧頂きたい)など多彩な技を持っており、柔道のレベル自体も決して低くはない。次にリオ五輪のような集中力と爆発力を発揮するのがいつになるのかはまったくわからないが、勢いに乗ったときには最も怖い相手だ。

【おもな戦績】
2017年 リオデジャネイロ五輪 優勝
2016年 ワールドマスターズ・グアダラハラ 2回戦敗退
2016年 ヨーロッパ選手権 3位

【最近の成績】
2016年 グランドスラム・東京 2回戦敗退

参考動画
ファン制作のコンピレーション動画:Fabio Basile compilation - The italian pearl

2015年グランプリ・チェジュ準々決勝 vsゴラン・ポラック(イスラエル)
(相手の脇を掬って腕を抱える変形の袖釣込腰。組み際に奥襟を叩く場合には注意が必要だ。)

ファビオ・バジーレ出演のイタリアのTV番組
(上半身裸で激しいダンスを披露している。率直に言ってまったく上手くないがやっぱり面白い。金メダリストが「調子に乗る」とはまさにこのこと、他の金メダリスト全員が謙虚に見える動画)

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ミハエル・プルヤエフ(ロシア)

ミハエル・プルヤエフ(ロシア)

PULIAEV Mikhail
30歳 1987/6/22
WR:25位 組み手:左組み
得意技:左背負投
使用技:右一本背負投、浮落、左小外刈

2014年と2015年の世界選手権銀メダリスト。ロシアのドーピング問題で最有力の「クロ」として名指しされながらもリオデジャネイロ五輪に強行出場したが、ストレスが影響したか初戦(2回戦)でアントワーヌ・ブシャー(カナダ)に敗れた。五輪後のワールドツアー出場は12月のグランドスラム東京大会のみで世界選手権に向けてしっかり準備をしているようには見えなかったが、世界ランク3位のアブドゥラ・アブドゥルザリロフ(ロシア)と1同0位のヤクブ・シャミロフ(ロシア)を差し置いて本大会の代表を獲得。ロシアの選手起用の上手さも考慮すれば相当な好コンディションにあると考えるべきだろう。

得意技は左背負投。最近では珍しい立った状態からの左背負投の使い手であり、投げのバリエーションも高く抱え上げて、体落風に足を掛け、大外刈風に足を掛けてと非常に豊富。体幹の強さとバランスの良さをテコに組み手で自分の形を作り上げ、打点の高い豪快な技で相手を投げつける。ひたすら担ぎまくり悠然と開始線に戻る様はあたかも古賀稔彦の現役時代のようである。寝技も巧み。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 2回戦敗退
2015年 アスタナ世界選手権 2位
2014年 チェリャビンスク世界選手権 2位

【最近の成績】
2016年 グランドスラム・東京 3位

参考動画
2015年アスタナ世界選手権3回戦 vsダヴィド・ラローズ (左背負投「一本」。片膝を突いて低く入って決める。)

2015年ワールドマスターズ・ラバト準々決勝 vsロイク・コーバル
( 左背負投「一本」。打点高く持ち上げ、前に飛び込んで決める。)

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ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)

ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)

ZANTARAIA Georgii
29歳 1987/10/21
WR:13位 組み手:左組み
得意技:左腰車、左小外掛、裏投
使用技:左釣込腰、左大腰、右小外掛、左大外刈

もと60kg級の世界チャンピオン。ロンドン五輪後に階級を変更し、66kg級でも世界選手権で2度3位を獲得している。リオデジャネイロ五輪では初戦となる2回戦でセルジュ・オレイニック(ポルトガル)に敗れた。休養明けで出場した3月のグランプリ・トビリシ大会では1回戦で無名選手に敗れたものの、4月のヨーロッパ選手権では優勝を飾り復活を果たした。

この人の持ち味は「曲芸師」とも形容される身体能力の高さ。この長所は無理な体勢から異様な軌道で相手を投げる、あるいは自身が投げられた状態から宙返りして腹這いに着地するなど、攻守両面で存分に発揮されている。2013年ごろに公開された相手の大外刈を「逆上がり」することでひっくり返す技術(プロレスだと「不知火」という技だそうである)は選手間でセンセーションを呼び、宙返りして腹ばいに落ちる技術は2014年上半期にフォロワーが続出、同年の世界選手権で生まれた「高く放ると決まらない」という異常な状況の呼び水となった。現在の「ブリッジ反則」を厳しく取るルールにはこの選手発の特異な受けがかなりの影響を与えていると思われる。とは言え、ザンタライア本人はほとんど「ブリッジ反則」で敗れたことはなく、このことこそがザンタライアの技術レベルの高さを証明しているといえよう。

華麗な体捌きに注目されがちなザンタライアであるが、もともとはパワーファイター、得意技は左腰車に小外掛、裏投とどれも大技ばかり。階級きっての好役者だ。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 2回戦敗退
2015年 アスタナ世界選手権 3位
2014年 チェリャビンスク世界選手権 3位
2009年 ロッテルダム世界選手権 優勝 ※60kg級

【最近の成績】
2017年6月 グランプリ・フフホト 2位
2017年4月 ヨーロッパ選手権 優勝

参考動画
Georgii Zantaraia - Stage Technique d'hiver 2013
(講習会で披露したザンタライアのテクニック集。0:50から連続で技術を収録。上記の大外返は1:00から。)

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ヴァズハ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)

ヴァズハ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)

MARGVELASHVILI Vazha
23歳 1993/10/3
WR:11位 組み手:左組み
得意技:左内股、左払腰
使用技:左大外刈、左大内刈、裏投、左内股(やぐら投げ)、隅返、右内股、右浮腰

昨年のヨーロッパチャンピオン。リオデジャネイロ五輪では初戦(2回戦)でアドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)に敗れたが、復帰戦となったグランドスラム・パリ大会で3位を獲得。2月のグランプリ・デュッセルドルフ大会では優勝を飾っており、階級の中心人物として存在感を増している。

柔道スタイルはジョージア選手らしい密着柔道。背中を抱いて、脇を差して、肩口を持ってと、どの形からでも威力のある左内股を仕掛けることができる。組み立ての中心はあくまで左技だが、左右に揺さぶりながら仕掛ける右技も威力十分。特定の得意技に頼るのではなく、パワーと密着圧力をテコに前後左右の様々な技でポイントを奪うタイプの選手だ。もつれ合った展開から襲ってくる鋭い足技にも注意したい。

【おもな戦績】
2017年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 優勝
2016年 リオデジャネイロ五輪 2回戦敗退
2016年 ヨーロッパ選手権 優勝

【最近の成績】
2017年4月 ヨーロッパ選手権 2回戦敗退
2017年2月 グランドスラム・パリ 3位

参考動画
2016年グランプリ・トビリシ2回戦 vsゲオルギー・ザンタライア
決まり技である小外刈「一本」はもちろん、マルグヴェラシビリの面白さが良く出た好試合。再三の「ザンタライア受け」によりなかなか決まらないが、その攻撃意欲と密着技の迫力は出色。ちなみに前年のトビリシにおけるザンタライア戦も好試合であった。

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>ニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)

ニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)

SHIKHALIZADA Nijat
29歳 1988/1/21
WR:7位 組み手:左組み
得意技:左小外掛、右小外掛、左内股、裏投
使用技:左袖釣込腰、左払腰、巴投、隅返、左一本背負投、支釣込足、肩車

2005年カイロ世界選手権60kg級に17歳で参加、銅メダルを獲得して史上最年少のメダリストとなった。翌年の世界ジュニア選手権でも優勝を飾っており、末はどこまで強くなるのかと周囲を戦慄させた新星であった。あれから12年が経過、登場のインパクトからすると相当にスケールダウンしてしまったが、現在も存在感のある強豪であり続けている。リオデジャネイロ五輪では3回戦でファビオ・バジーレ(イタリア)に敗れた。

曲者タイプのパワーファイターであり、小柄な体で相手に密着しては左右の小外掛や左内股、裏投といった大型志向の技を仕掛ける。基本的には東欧や中央アジアの選手にありがちな密着柔道であるが、時折非凡なセンスを感じさせる軽快なコンビネーションを見せることもあり、ジュニア時代に将来を嘱望されたその才能の一端を垣間見ることができる。組み際に山嵐風に両手で袖を持って仕掛ける左一本背負投や肩車、「横巴」にも注意が必要だ。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 3回戦敗退
2016年 ワールドマスターズ・グアダラハラ 3位
2015年 グランドスラム・バクー 優勝

【最近の成績】
2017年4月 ヨーロッパ選手権 3位
2017年3月 グランドスラム・バクー 5位
2017年2月 グランドスラム・パリ 3位

参考動画
ファンの制作したコンピレーション動画:Best IPPON 2015 Nijat SHIKHALIZADA (AZE)

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チャールズ・チバナ(ブラジル)

チャールズ・チバナ(ブラジル)

CHIBANA Charles
27歳 1989/9/12
WR:9位 組み手:右組み
得意技:右背負投、裏投、抱分
使用技:右袖釣込腰、右小外刈、右内股、右内股(やぐら投げ)

ロンドンーリオ期にパンナム選手権で2度(パンナム競技大会を含めると3度)優勝を飾っている、パンナム地域におけるこの階級の顔。地元で開催されたリオデジャネイロ五輪では初戦となる2回戦で海老沼匡(パーク24)に敗れた。

高い潜在能力を誇り、2013年のリオデジャネイロ世界選手権では準決勝で優勝候補の海老沼と激しい投げの打ち合いを演じた。鋭く潜り込む担ぎ技に相手もろとも後方にジャンプする豪快な裏投と、技の鋭さと派手さは階級屈指。競技者にファンが多いのもこの選手の特徴だ。2014年のパンナム選手権制覇後は一時ワールドランキング1位に躍り出たこともあり、好調で迎えた同年のチェリャビンスク世界選手権ではこの選手を優勝候補に挙げる声も多かった。結局、この大会では4回戦でリショド・ソビロフ(ウズベキスタン)に敗れて結果を残すことができず、これを境に以降は低迷。組み際の技に頼り過ぎたことと、組み手のバリエーションの少なさゆえかワールドツアーで勝てない時期が続いた。その後再ブレイクと呼べるほどの活躍はしていないが、昨年後半から少しずつワールドツアーの表彰台に登るようになってきており、復調の兆しを見せている。

【おもな戦績】
2017年 リオデジャネイロ五輪 2回戦敗退
2013年 リオデジャネイロ世界選手権 5位
パンナム選手権 優勝2回(2014年、2016年)

【最近の成績】
2017年5月 グランドスラム・エカテリンブルグ 2位
2017年3月 グランプリ・トビリシ 3位
2016年 グランドスラム・アブダビ 3位

参考動画
ファン制作のコンピレーション動画:Charles Chibana 柔道 Judo compilation

2013年リオデジャネイロ世界選手権準決勝 vs海老沼匡(日本)
(チバナのベストバウト。投げにこだわる海老沼とそれを強烈な返し技で迎え撃つチバナの手に汗握る熱戦。)

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タル・フリッカー(イスラエル)

タル・フリッカー(イスラエル)
FLICKER Tal
25歳 1992/5/28
WR:1位 組み手:左組み
得意技:左袖釣込腰
使用技:隅返、浮腰、肩車、大腰、左小内刈、左背負投、左内股

今年に入ってから台頭した新興勢力。大会ごとの獲得ポイントが大幅に引き上げられた(倍増)こと、出場した大会で組み合わせに恵まれたことの合わせ技で世界ランクを上げ、ついには世界ランク1位にまでのぼり詰めた。

本稿では使用頻度という観点から左袖釣込腰を得意技に挙げているが、この選手の生命線は組み手管理。長い手足を利して釣り手を内、外と出し入れしながら相手を組み手争いに誘い込み、引き手で袖口を握ることで相手の攻撃を封じる。技の威力はそれほど高くないが、ペースに付き合いすぎると絡め取られてしまう可能性のある嫌な相手だ。イスラエルチームは今年に入ってから男女ともに好調であり、乗せると面倒な相手であることは間違いない。

【おもな戦績】
2017年6月 グランプリ・カンクン 優勝
2017年3月 グランドスラム・バクー 優勝
2017年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 3位

【最近の成績】
※主な戦績を参照ください。

参考動画
2017年グランドスラム・バクー決勝 vs髙上智史(日本)
(フリッカーの持ち味が存分に発揮された試合。)

ガンボルド・ケーレン(モンゴル)

GANBOLD Kherlen
25歳 1992/2/24
WR:21位 組み手:右組み
得意技:釣込腰、右内股(やぐら投げ)
使用技:浮腰、釣腰、右内股、右釣込腰、大外落、小内刈、巴投

もとモンゴル60kg級の3番手。昨年のグランドスラム東京大会から66kg級に階級を変更した。圧を掛けながら前に出続け、相手が押し返してきたところに腰技を仕掛ける。モンゴル選手らしく「やぐら投げ」も得意としており、密着した状態には注意が必要。使用頻度は高くないものの。低くぶら下がるにようにして仕掛ける小内刈と大外落も使用する。

【おもな戦績】
2013年 グランプリ・マイアミ 優勝 ※60kg級
2012年 グランプリ・チンタオ 優勝 ※60kg級

【最近の成績】
2017年5月 アジア選手権 3位
2017年3月 グランドスラム・バクー 7位
2017年2月 グランドスラム・パリ 5位

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ザマト・ムカノフ(カザフスタン)

アザマト・ムカノフ(カザフスタン)

MUKANOV Azamat
30歳 1987/1/30
WR:15位 組み手:右組み
得意技:巴投、隅返、寝技
使用技:右袖釣込腰、右内股、右大内刈、支釣込足

2013年リオデジャネイロ世界選手権2位。同大会の決勝では海老沼匡(パーク24)を相手に体を捨てての腕挫脇固(本来は即座に反則が与えられるべき危険な技)を繰り返した。これ以降は2014年のアジア競技大会で3位になった以外にほとんど結果を残していなかったが、昨年5月のグランドスラム・バクー大会では久々の表彰台となる2位を獲得。その後はコンスタントに上位戦進出を果たしている。

得意技は巴投の形で相手を引き込んでの腕挫十字固。実は試合での「一本」獲得はほとんどがこの形であり、組み際や袖の絞り合いには注意が必要だ。

【おもな戦績】
2016年 グランドスラム・バクー 2位
2014年 アジア競技大会 3位
2013年 リオデジャネイロ世界選手権 2位

【最近の成績】
2017年5月 アジア選手権 7位
2017年4月 グランプリ・アンタルヤ 5位
2016年10月 グランドスラム・アブダビ 2位

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バルチ・シュマイロフ(イスラエル)

バルチ・シュマイロフ(イスラエル)
SHMAILOV Baruch
23歳 1994/2/9
WR:6位 組み手:左組み
得意技:肩車
使用技:浮落、右袖釣込腰、左小外掛、左内股、左払腰、左大外刈

イスラエルの若手パワーファイター。ランキングほどの力はないと見るが、リオデジャネイロ五輪後の有力選手が休養している時期に結果を残してシード権を獲得した。トップレベルとの対戦歴はほとんどないが、パワーには一定の注意が必要。基本戦法は奥襟を持っての圧殺と組み際に仕掛ける肩車。浮落も得意としており、圧力に負けて不用意な技を仕掛けるとそのまま浴びせ倒されてしまう。イスラエルチームの好調さはフリッカーの項で説明した通りで、この人にも一定の注意を払うべき。

【おもな戦績】
2016年 グランプリ・ザグレブ 2位
2015年 グランプリ・トビリシ 2位

【最近の成績】
2017年6月 グランプリ・カンクン 5位
2017年4月 グランプリ・アンタルヤ 3位
2017年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 5位

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セルジュ・オレイニック(ポルトガル)

セルジュ・オレイニック(ポルトガル)
OLEINIC Sergiu
31歳 1985/12/25
WR:12位 組み手:左組み
得意技:肩車
使用技:左一本背負投、左小内巻込、左小外掛

五輪後の有力選手の休養と今年から大会ごとの獲得ポイントが変更されたことの恩恵を受けて世界ランクが12位まで上昇。加えてランキング上位のモンゴル勢2人とロシア勢2人が欠場したことによって第8シードの位置に滑り込んだ。実力的には有力選手と呼べるほどではなく、上位の一部の選手とそれ以外の差が大きい66kg級の傾向を強く反映したシード入りということができるだろう。リオデジャネイロ五輪ではゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)を破る番狂わせを演じたが、次戦でワンダー・マテオ(ドミニカ)に敗れた。

基本戦術は釣り手のみを持った状態から肩車や一本背負投で掛け潰れるローリスクなもの。階級上位陣への勝利歴はほとんどなく、戦力的には序盤戦で敗れてもおかしくない。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 3回戦敗退
2015年 グランプリ・ブダペスト 3位
2015年 グランプリ・サムスン 3位

【最近の成績】
2017年5月 グランドスラム・エカテリンブルグ 7位
2017年3月 グランプリ・トビリシ 5位
2017年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 5位

■ シード予想
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予想されるシード順は下記。組み合わせは右の画像をクリックして参照されたい。

【プールA】
第1シード:タル・フリッカー(イスラエル)
第8シード:セルジュ・オレイニック(ポルトガル)

【プールB】
第4シード:バルチ・シュマイロフ(イスラエル)
第5シード:ニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)

【プールC】
第2シード:アン・バウル(韓国)
第7シード:ヴァズハ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)

【プールD】
第3シード:阿部一二三(日本)
第6シード:チャールズ・チバナ(ブラジル)

極端に下側に重心の偏ったトーナメント。阿部一二三(日本体育大2年)がプールD、アン・バウル(韓国)がプールCに配され、準決勝で両者の対戦が実現する。両者ともにBシード位置に刺客としてチャールズ・チバナ(ブラジル)とヴァズハ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)がそれぞれ配置されており、上側の山の無風ぶりと比べると少々面倒な組み合わせだ。とは言え、阿部は比較的苦手としているパワーファイターのマルグヴェラシイヴィリとニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)とは恐らく対戦せずに済む位置に配されており、シード選手のみを見た限りではよほどのことがない限り準決勝まで勝ち上がるものと思われる。

シードから漏れたトップ選手はミハイル・プルヤエフ(ロシア)、ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)、ファビオ・バジーレ(イタリア)の3人。どの選手が来ても阿部とアンの勝ち上がりは揺るがないと思われるが、空白期間を経て出来が読みにくいプルヤエフ、ベースが変則柔道な上に相性の悪い密着パワーファイターであるザンタライア、そして、何が起きてもおかしくない不確定要素の塊バジーレと、三者三様に面倒な要素を抱えている。なかでも阿部にとって戦いたくないのは、前述のとおり苦手な密着タイプであり、際で変則技を仕掛けてくるザンタライア。ヨーロッパ選手権を制して勢いに乗っていることもあり、事故が起きてしまう可能性のある怖い相手だ。

プルヤエフとザンタライアが上側の山に配された場合はともにベスト4まで勝ち進む可能性が高く、両者が揃って下側の山に配されてしまった場合にはシハリザダが空白地帯を抜けて決勝に進出する可能性が高い。

日本にとって最も良いシナリオは上記3人全員がプールCに詰め込まれてアンが消耗する展開であり、なかでもバジーレはアンにとって五輪決勝で敗れた因縁の相手。メンタルに何らかのアクシデントを起こした場合には再び勝敗が揺れる可能性もある。最悪のシナリオは最良のシナリオのアンを阿部に置き換えた場合だが、こればかりは運に任せるしかない。良い組み合わせに期待しつつ抽選を待ちたい。

文責:林さとる/古田英毅

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※ eJudoメルマガ版8月26日掲載記事より転載・編集しています。

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