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第48回全国中学校柔道大会・女子個人戦8階級即日レポート

(2017年8月25日)

※ eJudoメルマガ版8月25日掲載記事より転載・編集しています。
第48回全国中学校柔道大会・女子個人戦8階級即日レポート
■ 40kg級・宮井杏が優勝、決勝は総試合時間6分の粘戦を「技有」で制す
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齋藤なずな(紅)と宮井杏による40kg級決勝戦

決勝に進んだのは、齋藤なずな(東松山北中・埼玉)と宮井杏(箕島中・和歌山)の2名。関東ブロックと近畿ブロックの王者が決勝で相まみえることとなった。

関東大会王者の齋藤はシード位置からのスタート。2回戦は原田瑞希(長洲中・大分)を「技有」優勢で下すと、以降は延長戦の連続。3回戦は西ノ内智優(広陵中・奈良)からGS28秒「指導1」を奪って辛勝、準々決勝も松永舞乃(席田中・福岡)からGS2分16秒に2つ目の「指導」を奪って競り勝ち、準決勝は昨年度3位の杉森未咲(光陽中・福井)からGS1分40秒に「指導2」をもぎ取って決勝まで勝ち進んだ。ここまで技によるポイントは1つのみ、粘り強さを見せての勝ち上がり。

一方の宮井もシード位置を得て、その登場は2回戦から。まず熊谷羽美(鶴谷中・宮城)を上四方固「一本」(0:52)で退けると、3回戦は栗田里奈(那珂湊中・宮城)からGS延長戦「指導1」(GS0:50)を得て辛勝。準々決勝も半田百花(協和中・栃木)をGS延長戦「指導2」(GS0:52)で下す接戦だったが、準決勝は林佑美(大垣東中・岐阜)から2つの「技有」を奪った末に払腰「一本」(2:27)で勝ち抜け。気を良くして決勝の畳に臨む。

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大消耗戦は宮井の背負投「技有」で決着

【決勝】

宮井杏〇GS技有・背負投(GS3:56)△齋藤なずな

齋藤が右、宮井が左組みのケンカ四つ。
互いに背負投を低く仕掛け、潰し合う難しい展開。1分25秒宮井に「首抜き」の咎で「指導」、2分1秒には技が止まった齋藤に消極的との判断で「指導」が与えられ、得点の予感漂わぬまま本戦3分が終了。
GS延長戦も先手と手数、そして技の威力で相手の後塵を拝しまいと互いに背負投を仕掛け合う様相が続く。互いの消耗が激しくなったGS2分56秒、宮井の左背負投が「技有」となり、総試合時間6分に及ぼうかという熱戦の幕が下りた。

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40kg級優勝の宮井杏

【入賞者】
優 勝:宮井杏(箕島中・和歌山)
準優勝:齋藤なずな(東松山北中・埼玉)
第三位:林佑美(大垣東中・岐阜)、杉森未咲(光陽中・福井)
第五位:半田百花(協和中・栃木)、松永舞乃(席田中・福岡)、白石雪乃(宮崎日大中・宮崎)、生田さくら(修徳中・東京)

宮井杏選手のコメント
「『指導』をリードされたけど、最後まであきらめませんでした。気持ちで負けなかったのが良かったと思っています。」

【準々決勝】
杉森未咲(光陽中)〇GS優勢[指導2](GS0:44)△生田さくら(修徳中)
齋藤なずな(東松山北中)〇GS優勢[指導2](GS2:16)△松永舞乃(席田中)
宮井杏(箕島中)〇GS優勢[指導2](GS0:52)△半田百花(協和中)
林佑美(大垣東中)〇優勢[技有]△白石雪乃(宮崎日大中)

【準決勝】
齋藤なずな〇GS優勢[指導2](GS1:40)△杉森未咲
宮井杏〇払腰(2:27)△林佑美

【決勝】
宮井杏〇GS優勢[技有](GS3:56)△齋藤なずな

■ 44kg級・吉岡光がノーシードから優勝、決勝は強敵稲垣若菜を下す
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吉岡光(紅)と稲垣若菜による44kg級決勝戦

決勝に進んだのは吉岡光(八千代台西中・千葉)と稲垣若菜(大成中・愛知)の2人。

関東ブロックでは2回戦で敗れ今大会はノーシードからのスタートとなった吉岡だが、1回戦で坂東萌花(北島中・徳島)から横四方固「一本」(1:18)、2回戦では新村侑郁(浜北北部中・静岡)から片十字絞「一本」(0:32)と素晴らしい立ち上がり。これで波に乗ったか、3回戦は野上莉来奈(中里中・青森)を「技有」優勢、準々決勝も吉本萌乃(基山中・佐賀)を「技有」優勢で破り、準決勝では田中愛夢(松山西中・愛媛)を横四方固「一本」(2:44)に下してついに全国中学大会決勝の畳に辿り着いた。

一方の稲垣は優勝候補の一角、ここまで全試合一本勝ちという素晴らしい出来での決勝進出。勝ち上がりは2回戦で郷原百恵(京都文教中・京都)を肩固(2:23)、米川藍(旭中・茨城)を上四方固(0:42)、野村文乃(丘中・長野)を大内刈(0:09)、そして関東ブロック王者の桑田彩菜(淑徳中・東京)を横四方固「一本」(3:05)というもの。他をまったく寄せ付けずに、仕上げとすべく決勝の畳に臨む。

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稲垣が右一本背負投から押し込むが、いったん完全に技が止まった後でノーポイント

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延長、吉岡の左背負投がきれいに決まって「技有」。(合議の結果稲垣のブリッジ防御による反則負けとなる)

【決勝】

吉岡光〇反則(GS2:00)△稲垣若菜

決勝は吉岡が左、稲垣が右組みのケンカ四つ。
稲垣試合が始まるなり左袖釣込腰、これで互いが崩れて寝勝負となり、長い攻防の末に「待て」。再開後もすぐに稲垣が背負投に掛け潰れ、1分10秒吉岡に「指導」。
稲垣の先手志向に出遅れた吉岡は奮起、左小内刈と右一本背負投で攻めて山場を作ると、この展開を嫌った稲垣に「取り組まない」咎で「指導」。これでスコアはタイとなる。終盤は稲垣が右大内刈からの寝技、さらに右一本背負投を強引に押し込んでと攻勢を取り、残り時間僅かとなったところで吉岡に2つ目の「指導」が宣され、本戦はそのまま終了となる。

GS延長戦1分43秒に稲垣に消極的との判断で2つ目の「指導」が宣告され、スコアはタイ。ここから試合が一気に動く。吉岡は右一本背負投と左背負投を組み合わせて攻撃。さらに小内刈から左内股、これは両袖で拘束が甘く決め切れなかったがどうやら主導権を握った印象。

直後の2分0秒、吉岡が左背負投を放つと前に出て来ていた稲垣これに引っ掛かる。吉岡は体を低く沈めながら釣り手を高く残しており、跳び越えてかわす緊急避難に打って出た稲垣この落差に耐え切れず一回転。まず頭、ついで胴体が畳に落ちると主審はいったん「技有」をジャッジ。さらに合議の結果これを稲垣がブリッジで防御したと判断して稲垣の「反則負け」を宣告する。これで吉岡の初優勝が決まった。

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44kg級優勝の吉岡光

【入賞者】
優 勝:吉岡光(八千代台西中・千葉)
準優勝:稲垣若菜(大成中・愛知)
第三位:田中愛夢(松山西中・愛媛)、桑田彩菜(淑徳中・東京)
第五位:吉本萌乃(基山中・佐賀)、野村文乃(丘中・長野)、徳本千夕(楠見中・和歌山)、德丸緋奈乃(戴星学園中・大分)

吉岡光選手のコメント
「自分ではスタミナがないと思っているので、GS延長戦は不安でした。今日は勝とうという気持ちの強さが勝因だと思います。柔道は勝ち負けがハッキリしているところが好き。将来は1つ1つ勝っていって、大きな舞台で活躍したい。オリンピックで金メダルを獲りたいです」

■ 48kg級・篠﨑英夢が優勝、決勝は7分越えの長丁場を粘り勝ち
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篠﨑英夢と多田薫による48kg級決勝

決勝に勝ち進んだのは篠﨑英夢(沖学園中・福岡)と多田薫(広陵中・奈良)の2人。

篠﨑は九州ブロック大会王者、1回戦は免除されて2回戦からの登場となる。初戦は神尾茜(郡山第六中・福島)をGS延長戦の末「指導3」の反則(0:44)で下し、3回戦は鈴木亜衣美(白根第一中・福島)を「技有」優勢、準々決勝は葛巻七美(大安中・三重)をGS延長戦の背負投「一本」(GS1:50)で下してベスト4入り。準決勝では3回戦で前年度44kg級3位の小幡心里(日吉台中・宮城)を下している新井胡桃(淑徳中・東京)を「技有」優勢で退けて決勝進出を決めた。

一方の多田も近畿ブロックを制している強豪。2回戦は朝倉遥(鹿島中・茨城)を「技有」優勢、3回戦は岸江凌佳(大成中・愛知)を「指導2」対「指導3」で下し(2:20)、準々決勝は山北朱莉(堀江中・千葉)をGS延長戦の末に大内刈「一本」(GS0:57)に仕留める。準決勝は酒井怜奈(田主丸中・開催地)から実に3つの「技有」を奪って快勝、みごと決勝に勝ち残った。

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延長3分を過ぎてから篠﨑が加速する

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【決勝】

篠﨑英夢〇反則[指導3](GS4:05)△多田薫

決勝は篠﨑が右、多田が左組みのケンカ四つ。互いに十分組み手が作れず、53秒主審が介入して双方に「取り組まない」咎による「指導」を付与。その後篠﨑は右背負投に右内股、多田は左背負投に左小外刈と攻め合うがいずれも決定打には至らず。試合はGS延長戦へ。

延長序盤は多田が先んじて攻め、小外刈を起点に相手を引きずり回して、組んでは背負投うを仕掛ける。エキサイトした監督が主審から注意を受ける場面もあって試合は一層白熱、いつ勝負が決してもおかしくない状況となる。

しかしこのまま攻め合いが続いて両者が消耗、長時間試合にさすがの多田の技も止まる。篠﨑攻め返して山場作り、篠﨑の右内股に多田が崩れた直後のGS4分5秒、審判団が焦れたかのように多田に2つ目の「指導」。ついに均衡破れて7分を超える長時間試合が終了、篠﨑の初優勝が決まった。

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48kg級優勝の篠﨑英夢

【入賞者】
優 勝:篠﨑英夢(沖学園中・福岡)
準優勝:多田薫(広陵中・奈良)
第三位:新井胡桃(淑徳中・東京)、酒井怜奈(田主丸中・開催地)
第五位:葛巻七美(大安中・三重)、山北朱莉(堀江中・千葉)、塩原未々(丘中・長野)、大石凜(大和中・佐賀)

篠﨑英夢選手のコメント
「しっかりやれば優勝出来ると思っていました。小学校の時は県予選で2位で全国大会に出られず、今はとてもうれしいです。スタミナには自信があるので、GSになっても勝てると信じていました。柔道の好きなところは・・・勝ち負けがハッキリしているところ。尊敬しているのは、お母さんです。国際武道大で柔道をやっていたので、色々教えてくれます。選手では阿部一二三選手が好きです。技が切れる。得意技は背負投と小内刈、学校では体育と数学が好きです。将来はオリンピックで金メダルを獲りたい。これからはまず体幹を強くして投技を強化したいです」

【準々決勝】

新井胡桃(淑徳中)〇優勢[技有]△塩原未々(丘中)
篠﨑英夢(沖学園中)〇背負投(GS1:50)△葛巻七美(大安中)
多田薫(広陵中)〇大内刈(GS0:57)△山北朱莉(堀江中)
酒井怜奈(田主丸中)〇優勢[技有]△大石凛(大和中)

【準決勝】

篠﨑英夢〇GS優勢[技有](GS0:31)△新井胡桃
多田薫〇優勢[技有]△酒井怜奈

【決勝】

篠﨑英夢〇反則[指導3](GS4:05)△多田薫

■ 52kg級・関東ブロック王者池田海実が優勝、決勝はライバル髙橋安未との延長戦を制す
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52kg級決勝は高橋安未(紅)と池田海実(白)がともに良く攻め合い、双方ともに一度は「抑え込み」の宣告を得る熱戦。

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決勝に進んだのは髙橋安未(大成中・愛知)と池田海実(帝京中・東京)。

優勝候補の髙橋は2回戦で高屋歌鈴(喜々津中・長崎)から「技有」優勢、3回戦は清水夏実(丘中・長野)から内股「一本」(0:53)、準々決勝は高橋瑛美(東松山北中・埼玉)を「技有」優勢で下してベスト4入り。準決勝は寺西礼(神吉中・兵庫)を相手に「指導」2つを失うも「技有」優勢で凌いで順当に決勝進出を果たした。

池田は関東ブロック王者、ここまで4戦して3つの一本勝ちを得る圧倒的な勝ち上がり。2回戦は向みのり(芳野中・富山)を背負投「一本」(0:33)、3回戦は江口薫(生野中・大阪)を「技有」からの上四方固「一本」(1:41)、準々決勝は大西亜虹(三雲中・三重)から2つの「技有」を奪った末に横四方固「一本」(1:52)と他を寄せ付けず。準決勝はここまですべての試合を「指導」累積でしぶとく勝ち上がって来た九州ブロックの覇者中嶋涼葉(福岡中・福岡)を「技有」優勢で下して決勝まで勝ち残った。

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髙橋が小外刈を絡めて座り込むと、池田踏ん張って浴びせ返し「技有」

【決勝】

池田海実〇GS技有・浮落(GS2:24)△高橋安未

決勝は高橋が右、池田が左組みのケンカ四つ。序盤から双方良く攻め、高橋が右大外刈に右大外刈、左一本背負投と繰り出せば、池田も左体落を連発して対抗。

髙橋が左方向への担ぎ技を続けて山場を作った1分1秒池田に「指導1」が与えられるが、以後も双方交互に攻め合う拮抗は変わらず。本戦3分はあっという間に終了して試合はGS延長戦へ。

GS延長戦はまず高橋が左背負投、さらに左体落から寝技へと繋ぎ、袈裟固で抑え掛かる。「抑え込み」が宣告されて勝敗ついに決したかと思われたが池田が必死で逃れ「待て」。奮起した池田は左背負投、相手が釣り手側に逃れると逆側に抜け落とそうという二段構えの厄介な技を連発して対抗、展開は拮抗のまま固定される。

延長2分を過ぎたところで、高橋が幾度目かの猛攻。右体落から右小外刈に繋ぐが池田は巧みに捌き、引っかけたまま座り込んで投げ切ろうとした高橋は自ら尻餅をつく形で一瞬死に体。池田見逃さず釣り手を効かせて押し込み、伏せようとする高橋の逆側に体を捨てて捲り返しの威力をフォロー、「技有」を得る。熱戦5分24秒、この一撃でついに勝敗は決した。

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52kg級優勝の池田海実

【入賞者】
優 勝:池田海実(帝京中・東京)
準優勝:髙橋安未(大成中・愛知)
第三位:中嶋涼葉(福岡中・福岡)、寺西礼(神吉中・兵庫)
第五位:大西亜虹(三雲中・三重)、高橋瑛美(東松山北中・埼玉)、千葉まなみ(北上中・岩手)、櫻井未稀(金目中・神奈川)

池田海実選手のコメント
「GS延長戦になったけど、スタミナに自信があった。優勝出来ると信じていました。決勝の相手とは1勝1敗1引き分けで、なかなか決着がつかなかった。ようやく勝ち越すことが出来ました。将来の目標はオリンピックで金メダルを獲ること。外国の選手、特に韓国の選手が好きです。(-なぜ?)担ぎの力が強い選手が多い。自分も得意技が背負投なので、参考にしています。」

【準々決勝】
高橋安未(大成中)〇優勢[技有]△高橋瑛美(東松山北中)
寺西礼(神吉中)〇優勢[技有]△櫻井未稀(金目中)
中嶋涼葉(福岡中)〇反則(GS0:27)△千葉まなみ(北上中)
池田海実(帝京中)〇横四方固(1:52)△大西亜紅(三雲中)

【準決勝】
高橋安未〇優勢[技有]△寺西礼
池田海実〇優勢[技有]△中嶋涼葉

【決勝】
池田海実〇GS優勢[技有](GS2:24)△高橋安未

■ 57kg級・五十嵐日菜が出色の出来で連覇、一段違う才能見せつける
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連覇を狙う五十嵐日菜の前に決勝で立ちはだかるは、優勝候補の一角中橋優香を破った新名彩乃。

決勝に進んだのは昨年度の覇者・五十嵐日菜(新座第四中・埼玉)と新名彩乃(夙川学院中・兵庫)の2名。

連覇を狙う五十嵐の勝ち上がりは圧倒的。2回戦は尾畑ほのか(高川学園中・山口)を内股「一本」(0:31)、3回戦は川村幸花(三滝中・三重)から3つの「技有」を奪って優勢勝ち、準々決勝は谷岡成美(渋谷教育学園渋谷中・東京)を「技有」先行で追い詰めた末に大外返「一本」(0:50)、そして準決勝はここまで全試合一本勝ちの大森朱莉(広陵中・奈良)をあっという間の内股「一本」(0:50)に仕留めて今年も決勝進出決定。

新名は2回戦で杉山月琉(東海大静岡翔洋中・静岡)を袈裟固「一本」(1:37)、3回戦は高木水月(敬愛中・福岡)を大内刈「一本」(0:09)と好スタート。準々決勝は原口結(啓北中・北海道)を「指導2」、最大の勝負どころと目された準決勝は中橋優香(大成中・愛知)を「技有」優勢で破って決勝へと駒を進めることとなった。

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五十嵐が素晴らしい右内股を決めて「一本」。

【決勝】

五十嵐日菜〇内股(0:40)△新名彩乃

決勝は五十嵐が右、新名左組みのケンカ四つ。新名引き手争いから袖を抱き込むと、長身を生かして圧力。腰を切っての前技と左大外刈の牽制を見せるとこのやりとりの中で五十嵐の頭を徹底的に下げ、さらに左体落で掛け潰れる。技のある五十嵐に対して、圧力と先手攻撃で試合を塗りつぶしてしまおうという意図の見える戦い方。

続く展開、五十嵐は釣り手を突いて背筋を伸ばし、引き手を得るなり、肩をずらしながら一瞬右小外刈のフェイント、そのまま着地させた右、さらに左と自身の右斜め後方に足を捌いてトルネード型の右内股一閃。長身の相手の力の圏外に出ながら、相手にもろとも回旋を強いるこの鋭い一撃に新名抗えず、体を伸ばされたまま一回転。ほとんど相手と横並びになる位置まで進出した五十嵐しっかり引き手を効かせて体を乗り込ませ、鮮やか「一本」。試合時間僅か40秒、五十嵐が圧勝で連覇を決めた。

女子カテゴリは自分だけが一方的に掛け、掛けては返される前に自身が潰れる「負けない」ための方法論を仕込まれた選手同士が自動化された攻防を繰り返すことで、今大会も泥試合が頻発。ここ十数年ですっかり染み込んだこの競技文化に新ルールの「投げねば勝てない」ポリシーがクロスしたことで長時間試合が増え、この日の競技進行は遅れに遅れた。(翌日の男子ではこのような極端な現象がなかったことを付記しておきたい)

その中にあって五十嵐の出来は鮮烈な印象を残した。

五十嵐は今年転校し、公立中で連覇を果たすべく自分で稽古を考え、出稽古先を探す毎日を過ごしたという。女子軽量級のメインストリーム(と言って良いかと思われる)であるリスク回避の手数志向ではなく相手を動かして投げを狙う、という柔道の方向性自体の良さはもちろんだが、指導者に仕込まれたオートマティズムに溺れていく選手がほとんどの中にあって、コメントにある通り自分で稽古環境を作り、己の柔道を考え込んで来た五十嵐がひとり出色の出来を見せたことは非常に興味深い。五十嵐の資質の高さとともに、女子柔道文化の方向性の如何までを深く考えさせる圧勝劇であった。

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2連覇達成の五十嵐日菜

【入賞者】
優 勝:五十嵐日菜(新座第四中・埼玉)
準優勝:新名彩乃(夙川学院中・兵庫)
第三位:大森朱莉(広陵中・奈良)、中橋優香(大成中・愛知)
第五位:谷岡成美(渋谷教育学園渋谷中・東京)、原口結(啓北中・北海道)、中崎楓菜(板野中・徳島)、牧山雅(有田中・佐賀)

五十嵐日菜選手のコメント
「前にいた学校を辞めて、地元の、柔道部を強化しているわけではない公立中に移りました。仲間の大切さが良く分かったし、天才はいない、努力が何より大切なんだとあらためて思いました。稽古先も自分で調べて電話してお願いして、稽古のメニューも自分で考えてやってきました。親もやってくれないので自分でやるしかないです(笑)。これまでと違って、稽古もやりたくなければやらなくていいし、その中で自分に負けないこと、辞めたいと思う自分に負けないことを一番大事にしてきました。努力はしないとダメだな、と本当に身に染みました。自分でやってみて、先生がどれだけ苦労していたか、離れてみてそれがわかった気がします。後悔はしていませんが、この道を選んだからこそ優勝したかったし、自分の感情で辞めてしまったことを、勝った上で謝りたかった。今日は自分の柔道を最後まで出し切れたのが良かったです。将来は、勝ち上がって東京オリンピックに出たいです。(-東京大会を目指す?)さすがに厳しいかもしれませんが、まず東京です(笑)、少しでも上に行って、近づけるように頑張ります。」

【準々決勝】
五十嵐日菜(新座第四中)〇大外返(2:31)△谷岡成美(渋谷教育渋谷中)
大森朱莉(広陵中)〇送襟絞(2:26)△中崎楓菜(板野中)
中橋優香(大成中)〇大内刈(0:55)△牧山雅(有田中)
新名彩乃(夙川学院中)〇GS優勢[指導2](GS1:19)△原口結(啓北中)

【準決勝】
五十嵐日菜〇内股(0:50)△大森朱莉
新名彩乃〇優勢[技有]△中橋優香

【決勝】
五十嵐日菜〇内股(0:40)△新名彩乃

■ 63kg級・大成勢最後の砦、奥井花奈がみごと優勝果たす
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石岡来望(紅)と奥井花奈が決勝で相まみえる。

決勝に進んだのは石岡来望(五所川原第一中・青森)と奥井花奈(大成中・愛知)の強者ふたり。

石岡は2回戦で小川綾乃(板野中・徳島)から「技有」優勢、3回戦で鹿歩夏(武雄中・佐賀)から肩固「一本」(2:53)、準々決勝は伊勢谷晏未(三滝中・三重)を袈裟固「一本」(0:56)で下してベスト4入り。準決勝は田代美風(夙川学院中・兵庫)をGS延長戦の末に横四方固「一本」で下し、決勝へと駒を進めることとなった。

奥井は2回戦で島林楓乃(粟津中・滋賀)から「技有」優勢、3回戦で原田千夏(立川西中・滋賀)から袈裟固「一本」(2:56)を下すと、準々決勝は稲葉千皓(国士舘中・東京)、準決勝は岸田桃佳(金目中・神奈川をそれぞれ「技有」優勢で下して決勝の畳へとたどり着いた。

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奥井の「腰絞」。良い技を連発する石岡に対して奥井は寝勝負で対抗。

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延長戦奥井は加速、3つ目の「指導」に繋げる。

【決勝】

奥井花奈〇反則[指導3](GS1:01)△石岡来望

石岡が左、奥井が右組みのケンカ四つ。石岡は左背負投、奥井は右小外刈を中心に技の欧州となるが、奥井の小外刈に石岡が後ずさりした26秒石岡に場外の「指導」。

石岡は奮起、左内股に左小外刈、左内股と積極的に攻めるが、奥井は石岡の左内股を潰しては都度的確に寝技で攻め込み展開を譲らず。残り38秒からのシークエンスではケンケンの右小外刈から右内股で攻め込み、石岡に2つ目の「指導」。本戦3分はこのまま終了し、試合はGS延長戦へ。

奥井は一段ギアを上げ、右内股を連発。遠間から仕掛けるため崩しきれず、掛け潰れることが続くが攻勢を取り続け、石岡の抵抗がなくなったことを見極めた主審は1分0秒に試合を止める。結果、石岡に3つ目の「指導」が与えられて奥井の優勝が決まった。

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63kg級優勝の奥井花奈

【入賞者】
優 勝:奥井花奈(大成中・愛知)
準優勝:石岡来望(五所川原第一中・青森)
第三位:岸田桃佳(金目中・神奈川)、田代美風(夙川学院中・兵庫)
第五位:稲葉千皓(国士舘中・東京)、伊勢谷晏未(三滝中・三重)、中本真奈美(箕島中・和歌山)、新夕希海(田島中・埼玉)

奥井花奈選手のコメント
「今までずっと優勝するために一生懸命やって来たので、悔いのない試合がしたかった。仲間と『みんなで優勝しよう』と話していたのですが、決勝に3人進んだけど目の前で2つ負けてしまった。1つでもしっかり持って帰ろうと気持ちを作って臨みました。先生からも『お前、頼むぞ』と声を掛けて頂いて、励みになりました。将来はどんな相手でも必ず『一本』を獲れる選手になりたいです。尊敬する選手は、鍋倉那美先輩です。」

【準々決勝】
石岡来望(五所川原第一中)〇袈裟固(0:56)△伊勢谷晏未(三滝中)
田代美風(夙川学院中)〇優勢[技有]△新夕希海(田島中)
奥井花奈(大成中)〇優勢[技有]△稲葉千皓(国士館中)
岸田桃佳(金目中)〇内股(0:49)△中本真奈美(箕島中)

【準決勝】
石岡来望〇横四方固(GS0:55)△田代美風
奥井花奈〇GS優勢[技有](GS0:12)△岸田桃佳

【決勝】
奥井花奈〇反則[指導3](GS1:01)△石岡来望

■ 70kg級・大本真琴が全試合一本勝ちで優勝、『団体戦の結果超えたい』目標みごと達成
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70kg級決勝、大本真琴が立川真奈「技有」。そのまま横四方固に繋ぐ。

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決勝、大本真琴が桑形萌花を激しく攻める

決勝に進出したのは桑形萌花(夙川学院中・兵庫)と大本真琴(敬愛中・福岡)の強豪2名。

桑形は2回戦で楠本夏望(四倉中・福島)から内股「一本」で勝利すると、3回戦は九州ブロック2位の荒巻絵梨奈(有田中・佐賀)から2つの「技有」を得て快勝。準々決勝は澤崎凜(大成中・愛知)を「技有」優勢で下し、準決勝はノーシードからここまで全試合一本勝ちで勝ち上がった丸山みかの(丸子北中・長野)を「技有」優勢で退けて決勝進出決定。

一方九州ブロックの覇者大本は団体戦で見せた骨太の戦いを個人戦でも遺憾なく発揮、全試合一本勝ちでの決勝進出。2回戦は三宅咲(勝央中・岡山)を横四方固「一本」(1:21)、3回戦は小谷麗奈(千里中・大阪)を払腰「一本」(2:16)、準々決勝は高山美憂(藤枝順心中・静岡)を内股「一本」(0:52)、準決勝は立川真奈(川之江北中・愛媛)を上四方固「一本」(1:58)とここまで他をまったく寄せ付けず。

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延長戦、巻き込みで桑形の体が宙に浮くと、大本抱き返して崩す。

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横四方固「一本」で大本の勝利が決定。

【決勝】

大本真琴〇横四方固(GS1:41)△桑形萌花

決勝は桑形、大本ともに右組みの相四つ。前半は桑形が大外刈で攻勢を取り、1分22秒には大本に「極端な防御姿勢」で「指導」。以降は拮抗が続き、試合はスコア動かぬままGS延長戦へともつれ込むこととなる。

延長は双方が思い切った大外刈を打ち合う緊迫の展開。1分41秒。桑形の大外巻込を大本がこらえ、谷落気味に抱き倒すと横四方固。桑形必死の抵抗も大本拘束を緩めず、「一本」で大本の勝利が決まった。大本は全試合一本勝ちでの戴冠。

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70kg級優勝の大本真琴

【入賞者】
優 勝:大本真琴(敬愛中・福岡)
準優勝:桑形萌花(夙川学院中・兵庫)
第三位:立川真奈(川之江北中・愛媛)、丸山みかの(丸子北中・長野)、
第五位:高山美憂(藤枝順心中・静岡)、澤崎凜(大成中・愛知)、辻ななる(高尾台中・石川)、溝口葵(舟形中・山形)

大本真琴選手のコメント
「優勝出来てうれしいです。団体戦が2位だったので、その記録を超えたかった。決勝の前、先生から『思い切って行け』と言っていただき、その通りに出来ました。全体として、内容は良くなかったです。優勝を狙って緊張してしまい、1試合目、2試合目にてこずって戸惑いました。良い勉強になりました。得意技は払腰です。尊敬する選手は、投げが切れて払腰が得意な杉本美香さん。将来はオリンピックで金メダルを目指します。(-階級はこのまま70kgですか?)まだ決めていないんです(笑)。これから考えます。」

【準々決勝】
桑形萌花(夙川学院中)〇優勢[技有]△澤崎凛(大成中)
丸山みかの(丸子北中)〇背負投(1:25)△溝口葵(舟形中)
立川真奈(川之江北中)〇GS優勢[技有](GS1:45)△辻ななる(高尾台中)
大本真琴(敬愛中)〇内股(0:52)△高山美憂(藤枝順心中)

【準決勝】
桑形萌花〇優勢[技有]△丸山みかの
大本真琴〇上四方固(1:58)△立川真奈

【決勝】
大本真琴〇横四方固(GS1:41)△桑形萌花

■ 70kg超級・大高ひかりが全試合一本勝ちで優勝、一段違うスケール感見せる
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3回戦、大高ひかりが山下朱音から支釣込足「技有」。

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決勝、竹村安生が先んじて払腰で攻めるが大高はしっかり抱き返して動ぜず。

大高ひかり(帝京中・東京)と竹村安生(中広中・広島)が決勝まで勝ち上がった。

優勝候補の大高は他を寄せ付けぬ勝ち上がり。2回戦では藤田朋葉(五所川原第一中・青森)を「指導3」の反則(2:34)とてこずったが、3回戦は山下朱音(丘中・長野)を上四方固「一本」(0:29)、準々決勝は細谷萌恵(山辺中・山形)を横四方固「一本」(2:22)と以後は順調に勝ち上がり、準決勝では橋口茉央(立武雄中・佐賀)を「技有」奪取からの上四方固「一本」(2:35)で下して決勝に勝ち進む。

一方の竹村も素晴らしい出来。2回戦で高田莉杜夢(石井中・徳島)から払腰「一本」(0:15)、3回戦は川口鈴王(富合中・熊本)を内股「一本」(1:16)、準々決勝は野地川友里(敬愛中・福岡)を「技有」奪取からの縦四方固「一本」(2:22)で下してベスト4入り。準決勝は強敵松澤佑栞(白根第一中・新潟)と両者「技有」を取り合う激戦を、GS延長戦の「技有」奪取で競り勝ち。見事決勝の畳まで辿り着いた。

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大高が大外返「技有」、そのまま抑え切って一本勝ち。

【決勝】

大高ひかり〇横四方固(1:58)△竹村安生

決勝は大高、武村ともに右組みの相四つ。
大高先んじて右内股で攻め込むが組み手不十分で決まらず。抗した竹村も右大内刈から右大外刈と良い攻めを見せるが、しかし大高は上手く捌いて動じない。

中盤、竹村がひときわ思い切り良く右大外刈。しかし大高はこれをガッチリ受け止め、体を被せて返して1分35秒「技有」獲得。そのまま横四方固で抑え切って「一本」。大高は全試合一本勝ちで頂点まで辿り着くこととなった。

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70kg超級優勝の大高ひかり

【入賞者】
優 勝:大高ひかり(帝京中・東京)
準優勝:竹村安生(中広中・広島)
第三位:橋口茉央(立武雄中・佐賀)、松澤佑栞(白根第一中・新潟)、
第五位:細谷萌恵(山辺中・山形)、野地川友里(敬愛中・福岡)、保田恭樺(桃映中・京都)、大場万弥(本荘東中・秋田)

大高ひかり選手のコメント
「うれしいです(笑)。今日は緊張しすぎて動けなくなり、スタートが悪くて最初の試合では『指導』しか取れなかった。先生に声を掛けてもらって、絶対優勝しなければと気合を入れなおしました。(-普段どんなことを目当てに稽古していますか?)『一本』を取る柔道をすること、強い技を作ることを考えています。(-好きな選手や尊敬する選手はいますか?)うーん。あんまりそういうことは考えたことがないです。すみません(笑)。将来はオリンピックに出て金メダルを獲るのが目標です」

【準々決勝】
橋口茉央(武雄中)〇上四方固(1:10)△保田恭樺(桃映中)
大高ひかり(帝京中)〇横四方固(2:22)△細谷萌恵(山辺中)
竹村安生(中広中)〇縦四方固(2:22)△野地川友里(敬愛中)
松澤佑栞(白根第一中)〇大外刈(0:35)△大場万弥(本荘東中)

【準決勝】
大高ひかり〇上四方固(2:35)△橋口茉央
竹村安生〇GS優勢[技有](GS0:08)△松澤佑栞

【決勝】
大高ひかり〇横四方固(1:58)△竹村安生


取材・文:古田英毅

※ eJudoメルマガ版8月25日掲載記事より転載・編集しています。

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