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第66回インターハイ柔道競技・男子個人戦7階級マッチレポート

(2017年8月19日)

※ eJudoメルマガ版8月19日掲載記事より転載・編集しています。
第66回インターハイ柔道競技・男子個人戦7階級マッチレポート
取材・文:原輝地/eJudo編集部

■ 60kg級・ライバル立て続けに破り市川龍之介が3つ目の高校タイトル獲得、準決勝は昨年度王者武岡毅を2度投げつける完勝
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60kg級準決勝、市川龍之介(習志野高)が武岡毅(足立学園高)から釣込腰で「技有」

決勝で相まみえたのは全国高校選手権を連覇している市川龍之介(千葉・習志野高)と、昨夏のインターハイ3回戦で市川を破っている福田大悟(滋賀・比叡山高)。3月の全国高校選手権決勝の再現カードとなった。

市川は1回戦で太田風和(岡山・作陽高)にGS延長戦の末「技有」(GS0:45)で勝利、2回戦は千葉尚人(宮城・東北高)を横四方固「一本」(0:22)で破り、3回戦は末松賢(愛知・大成高)にGS延長戦「技有」(GS0:52)を奪って勝ち抜け。準々決勝でダークホース中山雄介(神奈川・桐蔭学園高)に延長戦の末小外掛「技有」で勝利すると、続く準決勝では昨年の優勝者である武岡毅(東京・足立学園高)と対戦することとなる。

トーナメント最大の山場と目されたこの試合は拮抗が続いたが、試合が煮詰まり始めた中盤戦、意を決した市川が組み際に釣り手を叩き入れながらの右釣込腰で「技有」獲得。思い切り良い仕掛けからインパクトの襲来まで時間差のある市川の変調の技に武岡は持ち前の受けの強さを発揮できず、最終盤にもまったく同じ技で2つ目の「技有」。武岡得意の遠間から刈り足を差し入れる小内刈、前後に激しく大技を仕掛ける独特の連続攻撃などはすべて市川に見切られている印象で、以後も得点の気配なし。このまま市川の勝利が決まった。

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60kg級準決勝、福田大悟(比叡山高)が豊島我空(佐賀商高)から背負投で「一本」

一方の福田は初戦(2回戦)で組まれた3月の全国高校選手権3位入賞を果たしている中内快(高知・高知追手前高)との対決をGS延長戦の末に「指導1」を奪って切り抜けると、3回戦は石井翔悟(三重・四日市中央工高)を「技有」優勢、準々決勝は山本蒼良(静岡・東海大翔洋高)を1分掛からず小外刈「一本」(0:55)に仕留める完勝。準決勝でも昨年のアジアカデ55kg級覇者豊島我空(佐賀・佐賀商高)を背負投「一本」(1:06)に切って落とし、春に続いて決勝の畳まで辿り着くこととなった。

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60kg級決勝、GS延長戦で市川が福田を後袈裟固で抑え込み「一本」。激戦に終止符を打つ

【決勝】

市川、福田ともに右組みの相四つ。序盤は福田が引き手で市川の釣り手を抑えつつ、先んじて左の袖釣込腰、右の一本背負投と組み際の担ぎ技を仕掛けて展開を握る。このまま福田が市川の得意な相四つ横変形を全く作らせずに試合を進めた2分過ぎ、後手に回り続けた市川に「指導1」。

その後も福田が徹底して市川の釣り手を警戒しながら先に担ぎ技を仕掛け、市川も寝技と組み際の右釣込腰でなんとか均衡を保つという展開が続いてそのまま本戦は終了。勝負はGS延長戦に突入する。

延長戦が始まると市川が組み手の手順を変更、まず自分の右釣り手を抑えに来る福田の左引き手を自らの引き手で抑え、次いで釣り手を背中に回す「ケンカ四つクロス」の形で対峙。これでここまで激しく動いていた福田の身体を組み留めることに成功する。危機を感じた福田は自らいったん密着して「やぐら投げ」の形で相手を抱え上げて場外に脱出、ひとまず事なきを得るも、これをきっかけに試合の様相は絞り合いと組み際の技に重心があった本戦と打って変わってポイントの気配濃厚な接近戦へと移行する。展開を切り開いた市川は同じ手順で福田を捕まえると、GS23秒に右大内刈に深く飛び込みポイント寸前の見せ場を作る。さらに直後のGS40秒にはこの「ケンカ四つクロス」の状態から強烈な隅返で福田を畳に落下させ、主審は「技有」を宣告。いよいよ決着かと思われたが、これはビデオ確認の末、福田が腹這いに着地していたことが確認されたためポイントは取り消され、試合は続行となる。明らかに試合の流れは市川にあるが、この決定機で勝負が決まらなかったことが両者の精神面にどう影響するか、勝敗の行方は未だ予断を許さず。

試合が再開されると、福田は集中を切らさず先んじて袖釣込腰、さらに巴投に飛び込んで再び流れを取り戻しに掛かる。しかし市川は冷静に捌いてチャンスを伺うと、GS2分0秒、福田が巴投で潰れたところから寝技に移行。伏せた福田の脇から右脚を突っ込み腕挫腹固の状態を作るとそこから前転して相手をめくるサンボ由来の寝技技術「コーレイカ」を試みる。体を振って体重移動を試みる市川、抗する福田というしばしの拮抗を経て、ついに福田耐え切れず回転して抑え込み完成。市川は激しく動く福田に合わせて身体の位置を微調整、20秒を抑え切って勝負あり。総試合時間6分35秒、市川が見事一本勝ちで決勝を制し、3月の高校選手権に続く春夏連覇、昨年の高校選手権と合わせて3つ目の高校タイトル獲得という偉業を成し遂げた。市川はGS延長戦の中途に宣告された「技有」で一度は勝利を確信したはず。これが取り消されても気持ちを切らさず、再び取り切った集中力の高さはさすがの一言、通算3つ目の高校タイトル獲得者にふさわしい戦いぶりであった。

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60kg級優勝の市川龍之介

【入賞者】
優 勝:市川龍之介(千葉・習志野高)
準優勝:福田大悟(滋賀・比叡山高)
第三位:武岡毅(東京・足立学園高)、豊島我空(佐賀・佐賀商高)
第五位:中山雄介(神奈川・桐蔭学園高)、福間航基(島根・開星高)、山本蒼良(静岡・東海大翔洋高)、出口嘉人(広島・崇徳高)

市川龍之介選手のコメント
「高校選手権では『指導』での勝ちが多くて、もっと成長しなければと反省しました。それから打ち込みと投げ込みでしっかり投げる技を作ることを目指して来たのですが、それが生きて、技でのポイントを取って勝てたので良かったです。これまでは大舞台で緊張するとお腹を下してしまっていたんですが、今回は体調も良く、落ち着いて臨むことができました。尊敬する選手はフランスのリネール選手。彼は他の重量級の選手のようにゴロリと投げるのではなく、決めるときは豪快に投げつける。ああいう柔道がしたいです。今後は、そのためにも基本を重視して、まずどんな形でも一本を取れる内股を身につけたいと思います。目標は東京五輪出場。本気で狙っています。」

【準々決勝】

市川龍之介〇GS優勢[技有・小外掛](GS0:52)△中山雄介
武岡毅〇崩上四方固(2:01)△福間航基
福田大悟〇小外掛(0:53)△山本蒼良
豊島我空〇GS優勢[指導2](GS2:03)△出口嘉人

【準決勝】

市川龍之介〇優勢[技有・釣込腰]△武岡毅
福田大悟〇背負投(1:06)△豊島我空

【決勝】

市川龍之介〇後袈裟固(GS2:35)△福田大悟

■ 66kg級・有力選手は続々陥落、受けの強さテコに井上拓茉が初優勝
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66kg級準決勝、井上拓茉(四日市中央工高)が西願寺哲平(埼玉栄高)から谷落で「技有」

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66kg級1回戦、水戸大生(比叡山高)が湯本祥真(桐蔭学園高)から谷落で「技有」を奪う

決勝に進出したのは井上拓茉(三重・四日市中央工高)と水戸大生(滋賀・比叡山高)のダークホース2名。

井上は2回戦で岩崎彪(茨城・つくば秀英高)から大内刈「一本」(1:51)で勝利する好滑り出し。3回戦は中島淳(佐賀・鳥栖工高)から「技有」優勢、準々決勝では前戦で優勝候補の若狭智也(石川・鶴来高)を支釣込足「一本」で破って勝ち上がってきた河添幹斗(岐阜・中京学院大中京高)と対戦、この試合をGS延長戦の末の「指導3」で勝ち抜けると、最大の山場と目された準決勝では全国高校選手権の覇者・西願寺哲平(埼玉・埼玉栄高)から谷落「技有」を奪って優勢勝ち。会場を驚かせて見事決勝へと名乗りを上げた。

一方の水戸は1回戦で桐蔭学園高のレギュラーとして団体優勝を果たしている湯本祥真(神奈川・桐蔭学園高)を小外掛「技有」で撃破して、こちらも会場中の注目を浴びる。2回戦は笠井盛龍(青森・木造高)を「指導3」の反則、3回戦は小田竜誠(鳥取・倉吉北高)を小内刈「一本」に仕留めて波に乗ると、準々決勝では関龍聖(千葉・習志野高)からGS延長戦の末に「指導3」を奪って勝利、続く準決勝では湯山八雲(愛媛・新田高)を払腰「一本」(3:47)に切って落とす最高の形で決勝までたどり着いた。

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66kg級決勝、井上が水戸から出足払「技有」を奪う。井上はこのポイントを守り切って優勝を決めた

【決勝】

井上が右、水戸が左組みのケンカ四つ。井上は釣り手を襟に入れて間合いを取ると先んじて引き手で袖を確保。引き手の絞りを利かせながら場外際まで前進、右内股で体を入れ替えて水戸を場外に追い出す。これを受けて直後の1分11秒、水戸に「指導1」。一発の切れ味が持ち味の水戸だが受けの強い井上に引き手を制されることを嫌って、なかなか攻撃態勢を整えることが出来ない。

その後も井上が厳しい組み手と先手志向で水戸の攻撃の芽を丁寧に摘みながら試合を進めると、試合時間2分を過ぎたところで業を煮やした水戸が釣り手を下から捻じ込んで間合いを詰め、強引に状況の打開を試みる。井上はこれに対して敢えて釣り手を背中に回して接近戦に応じ、水戸が片手で担ぎ技を仕掛けたところに絶妙のタイミングで出足払。これが決まって「技有」。残り時間は1分37秒、まだ試合時間は十分残っているが井上の受けの強さを考えるとまさしく決定的なポイント。

ビハインドを負った水戸は必死に追撃を試みるが既に井上は逃げ切り態勢。試合展開をあっさり割り切って間合いを取り、水戸の追撃を「指導2」までで抑えて試合終了。井上が「技有」のポイントを守り切って優勢勝ち、見事初の全国大会優勝に辿り着い

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66kg級優勝の井上琢茉

【入賞者】
優 勝:井上拓茉(三重・四日市中央工高)
準優勝:水戸大生(滋賀・比叡山高)
第三位:西願寺哲平(埼玉・埼玉栄高)、湯山八雲(愛媛・新田高)
第五位:岡本怜士(北海道・東海大札幌高)、河添幹斗(岐阜・中京学院大中央高)、關龍聖(千葉・習志野高)、小野里一将(東京・日体荏原高)

井上拓茉選手のコメント
「優勝はまだ本当に実感がないです。弓矢(竜太・四日市中央高監督)先生には『いけるぞ』と言われてはいたんですが半信半疑でした。3月の全国高校選手権で若狭選手に負けていたのでリベンジしようと思っていたのですが、若狭選手が途中で負けてしまったのでこれは優勝するしかないなと思いました。受けには自信があるので、トーナメント通じて先にポイントを取ればいけるはずと思っていました。作戦通りに戦えたと思います。とにかく弓矢先生を日本一にできたことが本当にうれしいです。ここから色々大会がありますが、日本一になったので一区切り。これからいろいろ大会があるのであらためて頑張っていきたいです。講道館杯ではシニアの選手に挑戦することになるので、ガツガツ攻めていきたい。」

【準々決勝】

西願寺哲平〇GS優勢[技有・内股巻込](GS0:59)△岡本怜士
井上拓茉〇反則(GS1:15)△河添幹斗
水戸大生〇反則(GS2:14)△關龍聖
湯山八雲〇反則(3:50)△小野里一将

【準決勝】

井上拓茉〇優勢[技有・隅落]△西願寺哲平
水戸大生〇払腰(3:47)△湯山八雲

【決勝】

井上拓茉〇優勢[技有・小外刈]△水戸大生

■ 73kg級・村上優哉が悲願の初優勝、決勝で春の雪辱を果たす
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73kg級準決勝、塚本綾(日体荏原高)が大外刈で村上優哉(神戸国際大附高)を攻める

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村上が塚本を小外刈で伏せさせる

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決勝の呼び出しを待つ高校選手権の覇者・勝部翔。ここまで全試合一本勝ちと圧倒的な出来。

決勝は3月の全国高等学校選手権決勝カードの再現。村上優哉(兵庫・神戸国際大附高)と勝部翔(京都・京都学園高)の二人によって争われることとなった。

村上、勝部ともに準決勝で大きな山場をひとつ超えての決勝進出。

村上は1回戦で泉竜斗(青森・八戸学院光星高)を内股「一本」(3:01)、2回戦で坂上伶(長崎・長崎南山高)をこれも内股「一本」(1:47)、3回戦は狩野伶太(群馬・常磐高)を崩上四方固「一本」(4:11)に仕留めて極めて順調な勝ち上がり。準々決勝で松山葵偉(広島・近大福山高)を「技有」優勢で下すと、準決勝では昨年から日体荏原高のレギュラーとして幾つもの死線をくぐり抜けている塚本綾(東京・日体荏原高)と対戦することとなる。事実上の決勝とすらの評もあったこの一戦は村上が内股、袖釣込腰で激しく攻め込めば、塚本はなかなか組み手が作れない状況にも関わらず大腰、内股、巴投と何度も村上を宙に浮かせてと、互いに一歩も退かない激闘。延長戦に入ると村上得意の寝技のプレッシャーが効いたか塚本の技から持ち前の体を捨てて投げ切る覚悟が削げ始め、総試合時間9分を超えたところで精根尽き果てて技を撃ち返せなくなった塚本についに3つ目の「指導」。村上が最大の山場を越えて決勝の舞台に辿り着いた。

一方の勝部は1回戦で岡安智弘(埼玉・大宮工高)を背負投「一本」(0:29)、2回戦で河田龍晟(香川・英明高)を大外落「一本」(2:05)、3回戦で松山直暉(大分・柳ヶ浦高)を崩上四方固「一本」(3:46)、準々決勝は中荒江大河(福井・北陸高)を背負投「一本」(3:21)と出色の勝ち上がり。山場と目された準決勝では桐蔭学園高のレギュラー佐藤虎太郎(神奈川・桐蔭学園高)との対決が組まれたが、この試合をわずか59秒の大内刈「一本」で終えて会場はどよめき。勝部は全試合一本勝ちという凄まじい出来で決勝進出を決めた。

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73kg級決勝。終了間際に村上優哉の出足払が閃き、勝部翔から「技有」奪取。

【決勝】

村上が左、勝部が右組みのケンカ四つ。全国高校選手権決勝では勝部が背負投「一本」で勝利しているカード。

村上は腰を低く構えると、手首や肘の位置の有利不利に拘り過ぎず、釣り手を常に下から入れて勝部の右背負投に対して厳重警戒態勢を整える。勝部がそれでも片手の右背負投から逆の左一本背負投に繋いで低く潜り込むと、村上は潰してすかさず得意の寝技に移行。後ろから勝部の両襟を握って下に潜り込もうとするが勝部が慌てて立ち上がり「待て」。経過時間は50秒。村上が寝勝負を挑むと場内が沸き、対峙する勝部もその挙動からして村上の寝技には相当なプレッシャーを感じている模様。

1分30秒、村上は体落フェイントの左小外刈で勝部を崩すと今度はそこから片手絞を狙う。これは「待て」となったが勝部はここで作戦変更、掛け終わりに寝技を狙われやすい担ぎ技から左右の大外刈に攻撃の軸を移し、この技で村上を崩す場面を度々作る。

しかし両者に決定的なポイントは入らず、試合は終盤へ。村上はこの間余念なく寝技の脅威を与え続けてボディブローのように勝部のスタミナを奪っており、主導権はじわじわと村上の側に移って来た印象。

迎えた最終盤、GS延長戦を意識した両者は組み合ったまま場外際に緩やかに移動。このまま本戦終了かと思われたその瞬間、村上の左出足払が閃いて勝部は真っ逆さまに畳に落下。主審が「技有」を宣言すると同時にブザーが鳴り響き、劇的な幕切れで試合は終了。村上が見事春の雪辱を果たして初優勝を決めることとなった。

村上は得意の寝技がよく効いていた。本人が試合後「取った試合自体は少なかったが、相手のスタミナを削る意味でも積極的に仕掛けた」旨コメントした通り、これが最大の勝因と総括すべきかと思われる。山場となった準決勝ではこれが端的だった。常に一発の恐怖をまき散らす塚本綾が本戦中盤までは主導権を得ていたが、塚本が技の落下の間際に体ごと転がって押し込む得意の決めを試みると、村上は両手を離さずすかさず寝勝負。投げを決めんがために体勢不利で寝勝負を始めてしまった塚本はアリ地獄のような村上の寝技にほとんど抑え込まれるところまで追い込まれた。体ごと自身が先に落下するような決めが得手の塚本だが、下手な投げは即致命傷と悟ったこの攻防以後投げの意欲が明らかに減退、GS延長戦の村上の勝利に繋がった。立って良し、寝て良し、スタミナ豊富でメンタルも強し。村上の優勝は妥当な結果であった。

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73kg級優勝の村上優哉

【入賞者】
優 勝:村上優哉(兵庫・神戸国際大附高)
準優勝:勝部翔(京都・京都学園高)
第三位:塚本綾(東京・日体荏原高)、佐藤虎太郎(神奈川・桐蔭学園高)
第五位:内村秀資(大阪・東海大仰星高)、松山葵偉(広島・近大福山高)、岩井涼真(岡山・関西高)、中荒江大河(福井・北陸高)

村上優哉選手のコメント
「決勝は3月の高校選手権と同じ相手。あの時は負けてしまいましたが、全国大会の決勝という舞台で勝ててうれしいです。(決勝で決めた)出足払は試合中に手ごたえがあったので、いけると思っていました。勝部選手は同じ地区で、互いに良く知っている相手。終盤に強い選手であることは十分意識していたので、絶対に投げて勝負をつけなければと思っていました。(勝部選手が早い勝負で体力を温存して勝ち上がった一方、準決勝で9分もの試合をこなしてかなり消耗があったのでは?)体力面に関しては、普段から『きつくなってからの稽古』をしっかり積んできたので全く不安はありませんでした。今日は寝技で取る場面があまりなかったですが、寝技は相手のスタミナを削るという意味でも重要なので、チャンスがあればしっかり寝技の展開を作りました。(-柔術的というか、一発芸的な技術を使う選手が多い中、村上選手の寝技は非常に「柔道」的ですね?)変わった技も良いかなとは思いますし必要なのだと思いますが、自分は、基本に忠実な技術を身に着けることが一番試合で強さを出せると信じてやって来ました。間違っていなかったと思います。これからは一つずつ大会を制して、最終的にオリンピックや世界選手権の代表になりたいです。」

【準々決勝】

塚本綾〇GS優勢[技有・肩車](GS0:34)△内村秀資
村上優哉〇優勢[技有]△松山葵偉
佐藤虎太郎〇大外刈(1:35)△岩井涼真
勝部翔〇背負投(3:21)△中荒江大河

【準決勝】

村上優哉〇反則[指導3](GS5:16)△塚本綾
勝部翔〇大内刈(0:59)△佐藤虎太郎

【決勝】

村上優哉〇優勢[技有・出足払]△勝部翔

■ 81kg級・奥田將人が悲願の戴冠、決勝では勝負勘冴えわたる
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81kg級準決勝、田中優大(大牟田高)が賀持喜道(桐蔭学園高)を袖釣込腰「一本」で下す

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81kg級準決勝、奥田將人(京都学園高)が内股で杉山海(田村高)から内股で「技有」を奪う

序盤の注目対決は3月の全国高校選手権の王者亀谷嗣温(大阪・近大附高)と、全日本カデ王者の賀持喜道(神奈川・桐蔭学園高)が早くも激突した2回戦。この試合は賀持が左内股とこの技を晒しておいての左小外掛でポイント寸前の場面を何度も作り、終始優勢。最後はGS延長戦で賀持の勢いを抑え切れなくなった亀谷がいわゆる「サリハニ状態」でブロッキングする反則を連続。一度は合議の末に様子見の策をとった審判団だが、直後の同じ行動は意図的とみなさざるを得ず的確に「指導2」宣告。結果、賀持が王者対決を制して3回戦へと歩を進めることとなった。

その賀持を準決勝で破ったのが、全九州大会団体優勝をエースとして支えた田中優大(福岡・大牟田高)。田中は2回戦で今野波音(宮城・東北学院高)から「技有」優勢で勝利、山場の3回戦ではここまで連続一本勝ちで好調の山中堅盛(千葉・東海大浦安高)をGS延長戦の反則(GS0:32)で破り、準々決勝は藤本智朗(兵庫・白陵高)を内股「一本」の快勝。迎えた準決勝の賀持戦も勢いは止まらず、3分39秒袖釣込腰を決めて見事な一本勝ち。4戦して3つの一本勝ちを収める大活躍で決勝まで勝ち残った。

もう1人のファイナリストは3月の全国高校選手権2位の奥田將人(京都・京都学園高)。こちらは2回戦で髙橋大翔(秋田・本荘高)を払腰「一本」(2:31)で退けると、山場と目された3回戦は青柳大虎(鹿児島・鹿児島情報高)をGS延長戦の末「指導1」で振り切る。準々決勝は崎山寛至(沖縄・沖縄尚学高)を袖釣込腰「一本」で破り、準決勝は地元の大声援を背に勝ち残った開催地福島県の代表杉山海(福島・田村高)からGS延長戦に内股「技有」を奪って勝利。結果的には順当に決勝まで勝ち上がった。

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81kg級決勝、奥田が田中を払腰で投げ「技有」奪取

【決勝】

奥田が左、田中が右組みのケンカ四つ。
田中は試合が始まるなり、釣り手で前襟、引き手で袖と完璧な組み手を完成させ強烈な右内股。奥田は一瞬身体が宙に浮くも長い脚を目いっぱいに開いて耐え危機を回避。

先制攻撃に成功した形の田中が今度は釣り手を上から入れて圧力を掛けると、奥田はひとまず浅い左内股から左大外刈と繋いですかさず反撃。以後も奥田は田中の一発を警戒しつつ要所で遠間から攻撃を放ち、展開を譲らない。

その後、引き手争いで展開が膠着した1分20秒に両者に「指導1」。奥田は左内股から作用脚をそのまま差し込んで小内刈の状態で固定、いわゆる「サリハニ状態」を織り交ぜなら、田中に強烈な一発を未然に防ぐ。中盤戦は奥田が田中の攻撃を封じる形で推移、時計の針のみが刻々進む。

迎えた終盤、残り1分を過ぎると奥田が突如ペースアップ。釣り手で前襟、引き手で袖を得ると、遠い間合いから長い脚を利して左大外刈、田中が耐えたとみるや体を捨てて左払巻込に繋ぐ思い切りのよい攻め。さらに3分25秒には左内股から左大外刈で田中を場外まで追いかけるなど、中盤に見せた牽制技とは意図が明らかに異なる勝負技を次々に繰り出し、ここに至って試合の主導権は奥田に移る。直後の展開、奥田は釣り手で奥襟を握り引き手で袖を確保すると、左釣込腰の形で田中を固定。相手が自分の裏に張り付くとみるや思い切り左脚を振り上げて払腰に変化、田中を大きく宙に舞わせて「技有」奪取。

この時点で残り時間は18秒。逆転を期した田中が放った右内股を奥田がしっかり潰したところで試合終了のブザーが鳴り響く。結果奥田が「技有」のポイントを以て優勢勝ち、見事初優勝を決めた。

田中の一発の威力は見るべきものがあったが、奥田の深い懐に阻まれてどうしてもあと一歩届かず。逆に奥田は田中の一発を食らうリスクをできるだけ回避する一方、勝負どころと踏んだ場面では攻撃の質量を明らかに上げてポイントを奪取する勝負勘を発揮した。「指導」差のリードを守らんとして逆転負けを喫した3月の高校選手権決勝と比べるにその成長明らか。中学以来のスケール感も削げておらず、高校王者の名を得るにふさわしい戦いぶりであった。

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81kg級優勝の奥田將人

【入賞者】
優 勝:奥田將人(京都・京都学園高)
準優勝:田中優大(福岡・大牟田高)
第三位:賀持喜道(神奈川・桐蔭学園高)、杉山海(福島・田村高)
第五位:白石隼人(東京・足立学園高)、藤本智朗(兵庫・白陵高)、崎山寛至(沖縄・沖縄尚学高)、露本健太(佐賀・小城高)

奥田將人選手のコメント
「これまで2位ばかりで、やっと優勝できてほっとしています。優勝を敢えて意識せず開き直って戦えたのが良かったと思います。これまでは逆転勝ちが多かったので、今大会は自分から先に攻めに行くことを意識して戦いました。決勝戦ではリードしてからラスト20秒で逃げに入ってしまったのが良くなかったと反省しています、ポイントをとっても自分から攻めていけるようにしたいです。遠くのことはあまり考えず、まずは全日本ジュニアで優勝したいです。」

【準々決勝】

賀持喜道〇内股(GS3:20)△白石隼人
田中優大〇内股(2:11)△藤本智朗
奥田將人〇袖釣込腰(1:22)△崎山寛至
杉山海〇後袈裟固(2:58)△露本健太

【準決勝】

田中優大〇袖釣込腰(3:39)△賀持喜道
奥田將人〇GS優勢[技有・](GS2:21)△杉山海

【決勝】

奥田將人〇優勢[技有・内股]△田中優大

■ 90kg級・村尾三四郎が圧巻の出来で団体個人の「2冠」達成
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90㎏級準決勝、村尾三四郎(桐蔭学園高)が西岡大起(比叡山高)を大外刈「一本」で下す

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90kg級準決勝、新井涼平(名張高)が大内刈で瀧澤秀斗(田村高)から「技有」を奪う

決勝に勝ち上がったのは団体優勝を果たした桐蔭学園の2年生エースで優勝候補筆頭の村尾三四郎(神奈川・桐蔭学園高)と、東海地区の強者・新井涼平(三重・名張高)の二人。

優勝候補筆頭と目された村尾は、初戦で岡田優太郎(福島・開星高)を谷落「一本」(1:11)で下すと、2回戦では実力者阿部拓馬(山形・新庄東高)の勢いに圧されながらもGS延長戦に2つ目の「指導」を奪って優勢勝ち。村尾としては動きが重く、団体戦で決勝まで戦い切った疲労が心配される内容であったが、以後は順調。3回戦では昨秋の九州新人大会王者・吉野弘人(宮崎・延岡学園高)を大内刈「一本」(0:35)、準々決勝では多田昌人(茨城・つくば秀英高)を送襟絞「一本」(2:05)、準決勝で西岡大起(滋賀・比叡山高)に大外刈「一本」(1:49)と一本勝ちを並べて決勝進出決定。

一方の新井は、1回戦で田森暁士(岩手・盛岡中央高)に「技有」優勢、2回戦で安部光太(福岡・西日本短大附高)に「技有」優勢と勝ち進むと、3回戦で実力者長島斥弥(栃木・白?大足利高)をGS延長戦の末横四方固「一本」(GS1:01)で突破。準々決勝では、1回戦で強豪ニコー・グティ(長崎日大高)を内股「一本」(0:26)で破っている影井光我(群馬・常磐高)をGS延長戦「指導2」で下し、迎えた準決勝では、準々決勝で2年生世代の全国中学校大会覇者・大西陸斗(愛知・大成高)を浮落「一本」で破って勝ち上がった瀧澤秀斗(福島・田村高)と対戦。序盤に「技有」でリードを奪われたものの大内刈「技有」、内股「技有」、崩上四方固「技有」と立て続けに3つの「技有」を奪って逆転勝ち。勢いに乗って村尾の待つ決勝へと駒を進めた。

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90kg級決勝、村尾三四郎(神奈川・桐蔭学園高)が新井涼平から大外刈で「一本」

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【決勝】

村尾、新井ともに左組みの相四つ。
両者引き手で襟を突き合う似た形で対峙すると、新井は先んじて釣り手で奥襟を叩く強気の組み手。対する村尾はこれを冷静に両手でキャッチして引き手を袖に持ち替え、新井の釣り手を抑えに掛かる。新井は釣り手をあくまで離さず両襟の左大内刈に飛び込むも、村尾は表情一つ変えずに受け、鋭く踏み込み左大内刈、左大外刈と連続攻撃を入れて新井の反応を探る。新井が作用脚を一歩引いて防御すると、村尾、今度は遠間から敢えて力感なく刈り足を差し込んで左大外刈。新井が刈り足を外そうと左脚を浮かせると、自身の上体を倒しながら刈り足を振り上げてケンケンで追い込む。横襟を握った釣り手の位置の低さゆえ新井の頭が背筋を伸ばしたまま残ったが、村尾は脚さえ入れば良しとばかりに確信を持って技を継続。最後は自らの身体もろとも畳にダイブ、主審は新井の身体が畳にめり込むのを見届けると迷わず「一本」を宣告する。試合時間は僅か27秒、優勝が確定した後もほとんど表情を変えず畳を降りるその姿は勝って当然と言わんばかり。村尾三四郎、見事圧勝で団体個人の「2冠」達成を決めた。

相四つ、ケンカ四つに関わらず村尾の投げの生命線は引き手。袖を握った引き手を引きずり込む牽引の強さが一見無理な体勢からの「一本」完遂の技術的な因であるが、ケンカ四つの際は見えやすいこの特徴が相四つでも発揮されたのが決勝の投げであった。当初受け切れると見た新井は引き手の強さに体を完全に固められてしまい、崩落。比類なき体の強さに加えて、自身の特徴を十分理解した「投げ」のメカニズムの追求。この先どこまで伸びるのか、怪物村尾のスケールの大きさを改めて示した圧勝劇であった。

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90kg級優勝の村尾三四郎

【入賞者】
優 勝:村尾三四郎(神奈川・桐蔭学園高)
準優勝:新井涼平(三重・名張高)
第三位:瀧澤秀斗(福島・田村高)、西岡大起(滋賀・比叡山高)
第五位:影井光我(群馬・常磐高)、大西陸斗(愛知・大成高)、多田昌人(茨城・つくば秀英高)、門田知也(高知・岡豊高)

村尾三四郎選手のコメント
「ずっと優勝したかった大会。2年生で取れてよかったなと思います。団体の疲れは確かに残ってはいましたが、優勝するしかないと思っていたので覚悟して戦いました。途中思うように動けない試合もありましたが、最後は決勝できれいに投げること出来たので良かったです。これからは全日本ジュニアを取って、講道館杯で上がれるところまで上がりたいです。ライバルとかはあまり気にせず、とにかく自分自身がどこまで上まで行けるのかに挑戦したい。」

【準々決勝】

新井涼平〇GS優勢[指導2](GS0:40)△影井光我
瀧澤秀斗〇浮落(3:51)△大西陸斗
村尾三四郎〇送襟絞(2:05)△多田昌人
西岡大起〇GS優勢[指導2](GS1:11)△門田知也

【準決勝】

新井涼平〇優勢[技有]△瀧澤秀斗
村尾三四郎〇大外刈(1:49)△西岡大起

【決勝】

村尾三四郎〇大外刈(0:26)△新井涼平

■ 100kg級・ダークホース梅野雅崇が初優勝、決勝は衝撃の大物食い果たす
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100㎏級2回戦、関根聖隆(桐蔭学園高)が葛西純坪(北海高)を内股透「一本」で下す

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100㎏級3回戦、山口貴也(長崎日大高)が中村力也(修徳高)から内股で「技有」を奪う

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100kg級準々決勝、山口貴也(長崎日大高)が関根聖隆(桐蔭学園高)から払巻込「技有」

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100kg級準決勝、山口が神垣和他(崇徳高)から試合終了間際に浮腰「一本」

トーナメントの重心は関根聖隆(神奈川・桐蔭学園)と山口貴也(長崎・長崎日大高)が同居する右上ブロックにあり。団体戦で激戦を繰り広げて来たこの両者の戦いが事実上の決勝と目されていた。

関根は2回戦から登場、初戦から葛西純坪(北海道・北海高)という難敵とのマッチアップであったが、GS延長戦の末に内股透「一本」(GS3:10)で勝ち抜け。3回戦は玉寄盛貴(沖縄・沖縄尚学高)から「指導」3つを奪っての勝利(3:19)。90kg級の村尾三四郎同様に団体戦の疲れを感じさせる、関根としてはやや投げの意欲に欠ける内容ではあったが、それでも連続一本勝ちでベスト8入り決定。

一方の山口は1回戦で大滝敬人(新潟・豊栄高)を内股「一本」(0:41)、2回戦は臼井哲平(山形・羽黒工高)を「技有」優勢で退け、3回戦は常に担ぎ技一発の危険がありアップセット要素を孕む中村力也(東京・修徳高)にGS延長戦まで持ち込まれる難しい展開だったが、内股「技有」(GS1:39)を奪って勝ち抜け。関根が待ち受ける準々決勝へと駒を進めた。

全国高校選手権準々決勝の大将対決では関根が山口の猛攻に「指導」3つを失うも一本背負投「技有」を奪って辛勝、金鷲旗大会準決勝の同じく大将対決では関根が「指導2」を奪ってこれも辛勝しているというカード。この試合も前2戦同様関根が担ぎ技の放列で主導権を握りにかかるが、中盤に差し掛かるところで山口が払巻込、勢いよく関根の体を捕まえて対戦3試合目にしてついに「技有」を獲得する。関根は追撃を試みるが前2戦の超人的な思い切りを発揮するところまでは登り詰められず、凌ぎながら着実に後の先を狙う山口の前に山場を作ることが出来ない。この試合は結局「技有」優勢で山口の手に落ちた。

山場を乗り越えた山口、準決勝でも優勝候補の神垣和他(広島・崇徳高)と対戦するという非常に厳しい組み合わせだったが、この試合も終了間際に浮腰を決めて一本勝ち。厳しい組み合わせの中を、全試合で投げを決めてしっかり決勝まで勝ち上がった。

逆側の山からはダークホース梅野雅崇(埼玉・埼玉栄高)が勝ち上がり。初戦で今浪徳明(福岡・小倉高)を「技有」優勢、2回戦で伊藤隆哉(岩手・盛岡南高)を支釣込足「一本」(1:06))で下すと、3回戦では強豪村田大征(岡山・作陽高)との対戦に粘り勝ち、GS延長1分46秒に「技有」を奪って勝ち抜け。準々決勝では神野光稀(奈良・天理高)を支釣込足「一本」(3:29)、準決勝では畠山竜弥(千葉・東海大浦安高)との総試合時間7分に及ぶ接戦を「技有」優勢で制し、ノーマークから見事決勝進出を果たした。

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100kg級決勝は衝撃的な結末。梅野雅崇(埼玉栄高)が山口を送襟絞で絞め落とす。

【決勝】

梅野、山口ともに左組みの相四つ。山口は両襟で梅野を捕まえに掛かる強気の出だし、梅野は支釣込足を2発立て続けに放って剥がし、山口を伏せさせる。続く展開も山口はあくまで上から目線、相四つ横変形で組み止めに掛かると、梅野はすかさず山口の釣り手を抱えて左大外巻込を放ち、ひとまずその固定圧力から逃れようと試みる。山口がこれを逃さず組み手を完成させると梅野はたまらず伏せて「待て」。主審は梅野に極端な防御姿勢の咎で「指導1」を与える。経過時間は1分6秒、地力は明らかに山口が上だが、梅野はそれを受け入れて、凌ぎながらチャンスを探っているという形。

直後の展開、山口が再び両手で相手を捕まえに掛かると、梅野はその動きに合わせ先んじて両手で片襟を握り山口を引きずり出す。思惑通りに前のめりに出てきた山口を浅い右体落で伏せさせるなりすかさず片手絞、山口のがら空きの首元に梅野の左腕が食い込む。脚を抱え、体重を掛けて一段強く絞め上げると身体をくの字に折られた山口はもはや抵抗出来ず、ものの数秒で脱力。主審は山口が意識を失ったことを確認して「一本」を宣告する。

試合時間は僅か1分26秒。格上と思われた山口が主審に活を入れられて意識を取り戻すと、その眼前で梅野が開始戦に戻り喜びを爆発させているという非常にインパクトのある絵で100kg級は終幕。ダークホース梅野が衝撃の番狂わせを演じ、キャリア初の全国タイトル獲得を達成した。

梅野の集中力は見事の一言。関根、神垣と強敵を立て続けに下した山口は油断があったか、この試合の戦いぶりは少々雑。最後の詰めを欠いてビッグタイトルを逸することとなった。

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100kg級優勝の梅野雅崇

【入賞者】
優 勝:梅野雅崇(埼玉・埼玉栄高)
準優勝:山口貴也(長崎・長崎日大高)
第三位:畠山竜弥(千葉・東海大浦安高)、神垣和他(広島・崇徳高)
第五位:神野光稀(奈良・天理高)、弓削凛月(愛知・大成高)、関根聖隆(神奈川・桐蔭学園高)、米山竜生(静岡・東海大翔洋高)

梅野雅崇選手のコメント
「優勝出来ましたけど、本当に自分が強いのか分からないです。まだまだ課題ばかり..
組み手が下手だし、体も固い。柔らかさがないと受けが不利なので、しっかり直していきたいです。これからは大外刈と背負投に磨きを掛けて、全日本ジュニアで優勝したい。(尊敬する選手は?)日本大学に入学した今入晃也先輩です。」

【準々決勝】

梅野雅崇〇支釣込足(3:29)△神野光稀
畠山竜弥〇優勢[技有]△弓削凛月
山口貴也〇優勢[技有・払巻込]△関根聖隆
神垣和他〇横四方固(0:56)△米山竜生

【準決勝】

梅野雅崇〇GS優勢[技有・浮落](GS3:02)△畠山竜弥
山口貴也〇浮腰(3:59)△神垣和他

【決勝】

梅野雅崇〇送襟絞(1:25)△山口貴也

■ 100kg超級・2年生の中野寛太が戴冠、決勝では東部直希と息詰まる投げ合い披露
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100㎏超級2回戦、中野寛太(天理高)が下田雄太(開星高)を袖釣込腰「一本」

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100㎏超級2回戦、山本瑛介(足立学園高)が高校選手権無差別3位の高木一石(湖西高)を小外掛「一本」で下す

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100kg超級準決勝、東部直希(大成高)が石川智啓(東海大相模高)から小内刈で「一本」

優勝候補筆頭と目された松村颯祐(島根・開星高)が欠場したが、それでも強豪ひしめく激戦トーナメントとなった最重量級。ベスト4まで勝ち残った4選手の勝ち上がりを四つの山ごとに追っていく。

左上の山を勝ち上がったのは大成高のエース東部直希(愛知・大成高)。初戦から厳しい相手が次々配される厳しい組み合わせだったが、2回戦で大淵泰志郎(千葉・木更津高)を支釣込足(GS0:38)、3回戦で高田仁(富山・小杉高)を上四方固(0:44)、そして準々決勝では優勝候補の一である中島大貴(大分・国東高)を送襟絞(3:59)と一本勝ちを連発。圧巻の勝ち上がりでベスト4進出を決める。

その下の山からは石川智啓(神奈川・東海大相模高)が勝ち上がる。石川は初戦で上林山雄斗(鹿児島・明桜館高)を「技有」優勢、3回戦で近藤樹(兵庫・神戸国際大附高)を体落「一本」(0:26)で下すと、準々決勝では3回戦の羽田野竜輝(宮崎・延岡学園高)戦を背負投「一本」で勝利している強敵長岡季空(広島・崇徳高)との大一番を横四方固「一本」(1:51)でで制し、見事準決勝で待つ東部への挑戦権を得る。

右上の山からは天理高の2年生エース中野寛太(奈良・天理高)がベスト4入り。中野はまず2回戦で高校選手権無差別王者・松村颯祐の欠場で繰り上げでの出場となった下田雄太(島根・開星高)を袖釣込腰「一本」(0:16)、3回戦で永田賢斗(長崎・長崎日大高)を上四方固「一本」(0:47)と連続一本勝ちで勝ち上がると、準々決勝では2回戦で高木一石(静岡・湖西高)を小外掛「一本」で下している山本瑛介(東京・足立学園高)とマッチアップ。この大一番を支釣込足「技有」で勝ち抜けて見事ベスト4進出の栄を得る。

前述3つのパートに比べて強豪の密度が薄い右下の山からは岩田歩夢(埼玉・埼玉栄高)が勝ち上がり。岩田は牧野史稔(和歌山・初芝橋本高)を崩袈裟固「一本」(3:31)、塙元輝(佐賀・佐賀工高)を「指導3」による反則(GS3:28)、進地優志(石川・津幡高)を同じく反則(3:52)、そして樽井蓮(大阪・近大附高)を崩上四方固(GS0:40)と2つの反則決着を含めてすべて一本勝ちと上々の出来。

東部と石川による準決勝は、上り調子の石川が随所に圧力を染み込ませて東部相手に善戦を見せるが、最後は東部が小内刈で石川を畳に沈め一本勝ち。4戦全て一本勝ちという圧倒的な内容で決勝進出を決めた。

一方の中野と岩田の準決勝は、中野が岩田を袈裟固「一本」(3:18)で下して勝利。2年生にして王座に王手を掛けることとなった。

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100kg超級決勝、中野寛太(天理高)が大外刈で東部を攻める。

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東部が中野の支釣込足に浮落を合わせて「技有」先制

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中野の小外掛に東部耐える間もなく畳に落下、逆転の「一本」

【決勝】

中野、東部ともに左組みの相四つ。
互いに得意の大技をぶつけ合う、最重量級の決勝にふさわしい迫力満点の展開。中野が釣り手の肘を上げての左大外刈で東部を伏せさせれば、対する東部も釣り手を中野の頭に被せて頭を下げさせるなり左外巻込。互いにポイント寸前の見せ場を幾度も作り、2分経過の時点でスコアの上では「指導2」対「指導1」と中野が一歩リードも、互いに反則決着など微塵も考えぬと言わんとばかりの真っ向勝負が続く。

2分過ぎ、ガップリ四つの状態で中野が左大外刈フェイントの支釣込足を放つと、東部は上体を倒しながら強烈なハンドル動作で捻りを呉れ、中野が崩れるとみるや胸を合わせて浴びせ浮落「技有」。おそらくは試合を決めるであろう、決定的なポイント。

攻めるしかない中野は直後、両襟を確保して左大外刈に飛び込む。東部がこれに腰を切っての大外返で反応すると、中野は引き手を脇に差した状態で耐え体勢を立て直す。互いの大技が収束して訪れた一瞬の間、ここで先にアクションを起こしたのは中野。引き手を東部の腰に差し、釣り手で東部の首を抱えながら一気の密着、ほとんど同時に右小外掛一撃。正面から抱きつかれた東部の身体は、吸い込まれるように背中から畳に沈み、文句なしの「一本」。試合時間2分56秒、中野が起死回生の小外掛で逆転勝ち、見事2年生にして高校カテゴリ最重量級王者の栄冠を手にした。

中学時代全国屈指の選手として一学年下の斉藤立の前に立ちはだかりながら、しかし同じ近畿ブロックの千野根有我の急成長に阻まれて全国タイトルに手が届かず、さらに高校入学後は肩の負傷で長期離脱。なかなか全国的なブレイクを果たせなかった中野だが、2年生にしてインターハイ制覇とついにその素質に見合うだけの成績を手に入れたと評したい。1年生の斉藤立が稀代の大物としてクローズアップされる中、そのライバルとして「メジャーデビュー」を飾った意義ある大会になったのではないだろうか。

掴みかけた勝利がするりと手から零れ落ちた東部はしばらく立ち上がることが出来ず茫然。一方の中野は敢えて心を落ち着け、表情を変えずに開始線に戻ってゆっくりと服装を正す。天を仰ぎながら開始線に戻った東部もここで自分の心を律し、実に丁寧な礼を行って堂々畳を降りる。まるで全日本選手権の一幕かと錯覚してしまうようなこの爽やかな光景で、今年のインターハイ柔道競技男子個人戦は幕を閉じた。

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100kg超級優勝の中野寛太

【入賞者】
優 勝:中野寛太(奈良・天理高)
準優勝:東部直希(愛知・大成高)
第三位:石川智啓(神奈川・東海大相模高)、岩田歩夢(埼玉・埼玉栄高)
第五位:中島大貴(大分・国東高)、長岡季空(広島・崇徳高)、山本瑛介(東京・足立学園高)、樽井蓮(大阪・近大附高)

中野寛太選手のコメント
「全国優勝は初めてでうれしいです。できれば(欠場した)松村(颯祐)選手と戦いたかった。去年のインターハイで肩を怪我して手術、3月までリハビリをしていたのですが、柔道が出来ない間に同学年の選手が次々活躍して、正直焦っていました。高校選手権から復帰しましたが、4月の全日本カデで中学時代は勝っていた斉藤立選手に負けて、自分の柔道にまったく自信が持てなくなった。スランプになって、学年が下の相手にも思うような試合が出来なくなってしまったのですが、斉藤涼先生や天理大学の穴井隆将先生に声を掛けてもらって、何とか立ち直ることができました。今回は、まだ2年生なんだから返されてもいいからガツガツ攻めようと決めていたのですが、決勝の東部選手相手にもこれが貫けたことが勝因だと思います」

【準々決勝】

東部直希〇送襟絞(3:59)△中島大貴
石川智啓〇横四方固(1:51)△長岡季空
中野寛太〇優勢[技有・支釣込足]△山本瑛介
岩田歩夢〇崩上四方固(GS0:40)△樽井蓮

【準決勝】

東部直希〇小内刈(3:55)△石川智啓
中野寛太〇袈裟固(3:18)△岩田歩夢

【決勝】

中野寛太〇小外掛(2:56)△東部直希


取材・文:原輝地/eJudo編集部

※ eJudoメルマガ版8月19日掲載記事より転載・編集しています。

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