PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

三冠目指す桐蔭学園が優勝候補筆頭も絶対性は薄し、崇徳らライバル校が追撃に腕を撫す・第66回インターハイ柔道競技男子団体展望

(2017年8月6日)

※ eJudoメルマガ版8月6日掲載記事より転載・編集しています。
三冠目指す桐蔭学園が優勝候補筆頭も絶対性は薄し、崇徳らライバル校が追撃に腕を撫す
第66回インターハイ柔道競技男子団体展望
■ 有力校
eJudo Photo
優勝候補は三冠獲得の偉業に挑む桐蔭学園高

高校柔道界最大のイベント、第66回インターハイ柔道競技がいよいよあす8日、郡山総合体育館(郡山市)で開幕する。

先陣を切って行われるのは最注目の男子団体戦。優勝候補筆頭に挙げられるのは3月の全国高校選手権、7月の金鷲旗を制して今大会で「高校三冠」獲得の偉業に挑む桐蔭学園高(神奈川)だ。

エースの関根聖隆は二冠獲得の原動力となった100kg級の強者。左右はもちろん打点の高低も自在の担ぎ技に、これと同じ形から繰り出す大外落に小内刈、大内刈で構成するその柔道は取り味十分。片手でも技を仕掛けられることが試合構成上の大きな強みだが、決してこれを手数稼ぎの「便利な技」として使うことなく、常に投げを狙って仕掛け続けるメンタルがなによりの強み。関根の一本背負投と大外落を軸とした組み立ては既に全国のライバルたちに知れ渡っているが、強豪たちが後の先を狙って待ち構える中敢えてその罠の中に、それも相手の予想を超える勢いで入り込む度胸の良さは圧巻だ。ダブルエースを張る2年生ポイントゲッターの村尾三四郎と形成する得点ブロックの強さは、他を圧するものがある。

このチームのもう1つの特徴はキャラクターの多彩さ。前述の2人以外にも81kg級の正統派で技が切れる賀持喜道、今年の関東大会無差別を制した巨漢千野根有我、66kg級の小兵ながら真向勝負の大型狩りを得意とする湯本祥真と、高いレベルで異なる性格の選手を揃えて、「一つの法則」だけでは攻略し難い逞しさがある。ライバルに点取りレギュレーションに向いた完成度の高いチームが少ない今年度の事情もあり、間違いなく優勝に一番近い位置にあるチームと言えるだろう。全体的に来年度の成熟を見込んでいるチームが多い代という事情もあり、メンタル的な仕上がりも含め、このチーム以外に頂点取りにふさわしい存在は見当たらない。

ただし点取りレギュレーションでは桐蔭の優勝観測も絶対ではない。関根以外が金縛りに遭ってしまった高校選手権序盤戦、意外な失点のあった金鷲旗大会に見て取れる通り、賀持の線の細さ、千野根のスタミナのなさと受けの脆さ、湯本の体格のなさ、異常な体幹の強さの裏に同居する村尾のサイズのなさと、選手個々に泣きどころがあり、他校に付け入る隙は十分あり。それぞれの弱点をカバーしあうだけの多様性と関根の絶対性で勝ち抜いてきたチームだが、相性嵌らぬ試合が連続するようだと勝負は間違いなく縺れる。「最後は関根」という必勝パターンで抜き試合レギュレーションの高校選手権と金鷲旗を制した同校だが、点取りレギュレーションの今大会は関根がどんなに頑張っても1点は1点。厳しく総合力が問われる大会だ。

eJudo Photo
金鷲旗準決勝、山口貴也が関根聖隆の一本背負投を潰す。相性面からも組み合わせからも桐蔭学園にとって長崎日大は大きな壁。

絶対値の高いチームは数あるがこの桐蔭学園との相性、そして、ワントップ型が多い今代にあって「大駒が存在してチームの総合力も高い」という観点からここは敢えてそのライバル校としてダークホース・長崎日大高の名前を先んじて挙げておきたい。高校選手権準々決勝、金鷲旗大会準決勝といずれも桐蔭学園と大将同士の対決、それも紙一重の勝負に持ち込む大接戦を演じており、桐蔭にとってはもっとも嫌なチームのはず。エース山口貴也が頭ひとつ抜けた抜き役だが、重石として機能する永田賢斗、蛎崎光汰にニコー・グディエレッヅエといずれも骨が太く、もし桐蔭学園戦まで勝ち上がれば相当に勝敗が揺れるカードになるはず。山口という貴重なポイントゲッターを得た今代はめったに巡ってこない勝負の年であり、来年を見越して戦う他校とは気合の入り方も一段上という印象だ。

eJudo Photo
高校選手権の3位から金鷲旗は5位と順位を落とした崇徳高だが、点取りレギュレーションで再び輝く可能性は十分

桐蔭学園を追う強豪たちは、いずれも決定打なき接戦。その中にあって崇徳高(広島)、国士舘高(東京)が第2グループの代表格ではないかと考える。

高校選手権3位の崇徳は長岡季空と神垣和他のダブルエースに、取り味あるバランサーの兼藤仁士らを揃えて今代スタート時には全国制覇候補筆頭の呼び声高かった強豪。この3人がいずれも上から目線の戦いだけでなく、凌ぎながら担ぎを狙う「対強者」の戦いが出来ることが強みだ。今シーズン他校が伸びてくる中で相対的に長岡と神垣の取り味が減じたゆえ、抜き試合レギュレーションの2大会では突き抜けられなかったが、点取りで争われるこのインターハイでは一段評価を上げておくべき。不安要素はチーム全体として勢いが緩やかに減じてきていること。豪快な「一本」と意外なミスを繰り返して金鷲旗では「途中投入、途中交代」の憂き目を見た長身選手・枇杷木勇樹の躍進がチームの浮沈のカギを握る。

eJudo Photo
大駒斉藤立の加入で国士舘高も十分上位を勝ち抜く力が備わった。

国士舘高は高校選手権では初戦敗退に終わったが、全日本カデ90kg超級王者・斉藤立という大物、そして好素材道下新大という2人の1年生を得て一気に上位候補に名を連ねるレベルとなった。斉藤は1年生ながら早くも絶対のエースを張っており、柔道の質の良さを保ちながらエース対決でも勝ち抜けるだけの地力を既に獲得している。金鷲旗大会では崇徳の神垣和他を大外返「一本」で抜きながら長岡季空戦では一瞬のミスから一本負けを喫したが、東京大会個人戦のミスをまったく同じシチュエーションから一本勝ちに変えた関東大会の山本瑛介(足立学園高)戦でもわかる通り、学習能力の高さと成長スピードの速さもこの人の特徴。今大会は相当に期待して良いだろう。「斉藤につなげば」という意思統一が出来たことでチームに欠けていた粘りが出て来たことも買い。金鷲旗大会で復調の兆しを見せた清水雅義と、同大会では温存されたまま悔しい思いを味わった斬り込み隊長・三谷大の頑張りが勝ち上がりのポイント。

序列上、高校選手権2位の大成高(愛知)をここで挙げておくべきだろうが、金鷲旗ではあまりにエース東部直希に頼り過ぎ、いまひとつの出来のまま成績はベスト8に収まった。三輪魁星、大西陸斗、藤鷹裕大の2年生3人がいずれも嵌れば良さを発揮するものの線の細さを他校に呑んで掛かられている印象あり。東部の取り味も金鷲旗を見る限りでは、じっくり時間を使って相手の体力を減殺した上で一撃、という総合力勝負の側面が強くなっており、準個人戦的な「東部を抜かねばチームが敗れる」という相手の事情も込みで力を発揮していたように見受けられた。上位対戦で引き分けを割り切られた場合の得点力は一段割り引く必要があり、今大会は高校選手権ほどの高評価を付与することは難しい。

ほか、羽田野竜輝を擁して高校選手権と金鷲旗で連続ベスト4の快挙を成し遂げた延岡学園高(宮崎)、ワントップ型が多い今季の九州勢の中で総合力の高さを以て全九州大会を圧勝した大牟田高(福岡)、エース山本瑛介の取り味を軸に軽量ながら良くまとまった足立学園高(東京)らが上記チームの勝ち上がりを揺らす存在。

■ 組み合わせ
優勝を狙うレベルの強豪は4ブロックに散らされ、偏りはあるものの比較的穏当な配置となった。ベスト8決定までの大きな見どころは国士舘と延岡学園、そして長崎日大と東海大浦安が激突するAブロック、大成に白鴎大足利が挑戦し大牟田と足立学園のつばぜり合いがいずれもベスト16で現出するCブロック。

【Aブロック】

上側の山は長崎日大と東海大浦安高(千葉)が戦う1回戦がいきなりの大山場。勝ち抜いた側がベスト8まで進むことほぼ確実と見る。東海大浦安は高校選手権時の勢いが少々減じた感はあるが、人材的には勝敗を揺らす可能性十分。

下側の山も組み合わせに偏りあり、国士舘と延岡学園がいきなり2回戦で激突する。総合力から国士舘の勝ち上がりを推すが、オーダー順次第ではどうなるかわからない試合。オーダーの場合分け的には国士舘有利の目が多く、延岡学園としては羽田野竜輝と斉藤立のエース同士がぶつかり、そして勝利するシナリオが勝ち上がり確率のもっとも高いルート。勝者がベスト16で、金鷲旗を休んで充電十分の神戸国際大附高(兵庫)と激突する。

このブロックには延岡学園の初戦の相手として、高校選手権無差別王者松村颯祐を擁する開星高(島根)が配されているが、同校は松村以外を1,2年生で固めておりさすがにこの重囲を突破することは難しそうだ。

勝ち上がる可能性が高いのは長崎日大と国士舘のいずれかと見る。

【Bブロック】
下側の山に鎮座する桐蔭学園が絶対の勝ち上がり候補。前述の通り的が絞りにくいながらも攻略のポイントが確実に、それも複数存在する桐蔭学園であるが、高校選手権の勝利で得たシード配置の利と組み合わせの引きの強さの乗算で、かなり戦い易いブロックに入った。勝ち上がり自体はまず動かないはず。

初戦は新庄東高(山形)との対戦だが、同校は柔道の質の良さゆえ桐蔭学園にはやりにくい相手ではない。2回戦の作陽は伝統的にターゲットを定めた際には素晴らしい強さを発揮する難関だが、今代の戦力を考える限り勝敗がひっくり返るところまで辿り着くのは少々難しそう。上側の山からのベスト8候補は地元の田村高(福島)と東海大甲府高(山梨)らでやや線が細く、結果としては、ベスト16で対戦すること濃厚の名張高(三重)戦が最大の山場となりそうだ。

【Cブロック】

激戦区。上側の山では2回戦で白鴎大足利と京都学園高(京都)がぶつかり、勝者が大成とベスト16で激突する。京都学園は奥田將人ら到達点の高い選手を擁する一方中心体格的にも戦力的にも凹凸があり点取り形式での上位校攻略はなかなか厳しい。一方の白鴎大足利は意外に戦線が太く、大成のミスに即乗じていける逞しさがある。事前予測としては大成を推すのが穏当だろうが、白鴎大足利にハイスコアゲームを志向する覚悟があれば、勝敗が揺れる可能性は十分あり。

下側の山は前述の通り3回戦の大牟田対足立学園が大きな山場。大牟田は好選手を揃えるが、現時点で両軍でもっとも取り味があるのはおそらく足立学園の山本瑛介。これを踏まえて試合を作って来る足立学園に対して、好素材揃う大牟田の面々が我儘な試合を貫けるかどうかが勝敗のカギを握るのではないだろうか。勝者はベスト16で新田と戦い、準々決勝で大成と対戦する可能性が濃厚。ベスト4勝ち上がりの行方は、混沌。

【Dブロック】

上側の山の勝ち上がり候補は東海大仰星高(大阪)。埼玉栄高(埼玉)との3回戦が最初の山場だが、総合力を考えれば順当に勝ち抜けるものと見る。

下側の山は崇徳の勝ち上がり濃厚。3回戦では天理高(奈良)との対戦が見込まれるが、同校は高校選手権時から一段各選手が骨太さを増し、2年生エース中野寛太の復帰によってなかなか面白いチームに仕上がりつつある。総合力から崇徳を推すが、中野が神垣あるいは長岡に勝利するような展開があれば、勝敗が揺れる可能性も十分あり。

ベスト4勝ち上がりには、戦力の厚さから崇徳を推しておきたい。

【準決勝~決勝】

国士舘(長崎日大) - 桐蔭学園
大成(足立学園、大牟田) - 崇徳

と、例年になく対戦カードが予想しがたい上位対戦。

国士舘と桐蔭学園が戦った場合は、事前予測としてはオーダー順の場合分けによる勝利シナリオの多さから桐蔭学園の勝利を推す。斉藤立が関根聖隆か村尾三四郎に勝利して他が粘る以外に国士舘勝利の道はないのではと思われるが、現時点ではこれは少々ハードルが高そう。

長崎日大との戦いになった場合にはまさしく激戦必至。桐蔭学園の三冠達成にとって最大の山場となる可能性がある。2大会制覇の経験値が生み出すここ一番の力を買って桐蔭学園の勝利を推しておくが、「追うもの」の勢いを長崎日大が利するようであれば番狂わせの可能性も十分。代表戦になれば、勝利まであと一歩に迫った過去2戦の延長戦とばかりに山口貴也の気合は比類ないものになるだろう。過去2戦とも結果は勝利も、いずれも小差で明らかに差を詰められている関根聖隆にとってはまったく油断ならないカード。

逆側の山は、最終的には崇徳が勝ち上がるのではないかと見ておきたい。

というわけでこの時点では決勝カードを仮に桐蔭学園-崇徳と予想しておく。オーダー順が大きく勝敗を分ける接戦であり、長岡、神垣、兼藤の3枚が関根・村尾とどう絡むかが最重要ポイントとなるかと思われる。

と、オーダー順開示されぬままかなり主観的に大会を展望してみたが、のっけに書かせて頂いた通り桐蔭学園の優勝へのハードルは過去「2冠」に比べて間違いなく高く、他校も戦力拮抗の混戦にある。どのチームにも躍進のチャンス大いにあり、熱戦に期待したい。


文責:古田英毅

※ eJudoメルマガ版8月6日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る




supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.