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桐蔭学園、東海大相模らベスト4へ、長崎日大は残り5秒の逆転勝利で崇徳を下す・第91回金鷲旗全国高校柔道大会男子マッチレポート②準々決勝

(2017年8月6日)

※ eJudoメルマガ版8月6日掲載記事より転載・編集しています。
桐蔭学園、東海大相模らベスト4へ、長崎日大は残り5秒の逆転勝利で崇徳を下す
第91回金鷲旗全国高校柔道大会男子マッチレポート②準々決勝
■ 準々決勝
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桐蔭学園・賀持喜道と足立学園・武岡毅による先鋒対決

王者・桐蔭学園に足立学園が挑む第1試合、開示されたオーダー順は下記。

桐蔭学園高 ― 足立学園高
(先)賀持喜道 ― 武岡毅(先)
(次)湯本祥真 ― 吉井拓実(次)
(中)千野根有我 ― 白石隼人(中)
(副)村尾三四郎 ― 上領教史郎(副)
(大)関根聖隆 ― 山本瑛介(大)

足立学園の陣容は前戦までと変わらず。今大会はともに60kg級の先鋒武岡毅と副将上領教史郎の軽量2人に抜き役属性があり、この2人を含めた前衛4枚で相手の戦力を減殺し、最後は大駒山本瑛介で相手のエースを潰すというルートが必勝パターン。この試合に関しても山本登場までにその仕事量を減らし、出来得れば大将同士の「個」の対決がそのまま試合結果を左右するステージを演出したいところ。組んで、あるいは抱いての小外刈という有無を言わせぬ一発技を持つ山本であれば、たとえ関根聖隆が相手であっても勝利する確率は決して低くない。前衛の粘りと奮闘がこの試合の行方を決める。

一方の桐蔭学園はこの試合から次鋒に湯本祥真を投入して上位対戦仕様のフルオーダーを完成。戦いの眼目はこの試合も変わらず、準決勝以降に向けて大将関根聖隆、出来得れば副将村尾三四郎も温存したまま試合を終えてしまうのが最良シナリオ。少なくとも前衛で相手の戦力を削るだけ削って、後衛2枚の出動を待たずに対山本戦までは辿り着いてしまいたい。賀持喜道の線の細さに、湯本祥真の体格のなさ、千野根のいかにも大型選手らしい脆さと実は対戦相性に相当左右される属性を体内に孕む桐蔭学園の面々であるが、武岡に上領ら「攻撃型の軽量選手」は彼らにとって実は戦い易いタイプのはずで、シナリオ完遂は現実的に手が届くところにある。前衛がしっかり仕事をすればそのまま勝利にたどり着けるはず。

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武岡が自ら飛び込んで密着を志向、大内返で賀持を畳に落とすが、この攻防がいわゆる「ベアハグ」による反則と判定される。

先鋒戦は桐蔭学園・賀持喜道が右、昨年度インターハイ60kg級王者の武岡毅が右組みのケンカ四つ。序盤は双方鋭い内股を撃ち合うがこの手合わせ以降は少々停滞し、37秒双方に「指導1」。1分11秒には「取り組まない」咎で武岡にのみ2つ目の「指導」が与えられる。
これを受けて武岡は奮起、組み際に脇を差して抱き着くと賀持反応良く迎え撃って左大内刈、しかしこれを武岡が大内返で切り返し賀持は勢いよく畳に落ちる。間違いなくポイント級の一撃であったが、主審はポイントを認めぬまま合議を招集し、武岡の抱き着きに対してベアハグの「指導3」を宣告。武岡の釣り手は脇下だが投げた瞬間の引き手は首を抱える位置にあり、非常に微妙な判定であった。いずれテクニカルファウルで3つ目の「指導」に至るというまったく意外な結末、武岡の反則負けで先制点は桐蔭学園の手に落ちた。賀持は続く吉井拓実との第2試合を大過なく引き分けて、リードを保ったままぶじ退場。

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湯本祥真が白石隼人から一本背負投「技有」

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上領教史郎が畳に残った湯本を一本背負投「一本」で抜き返す

第3試合は今大会初出動の湯本祥真が3階級上の白石隼人を前に躍動。打点の高い右一本背負投に大胆に奥襟を叩いての右内股で流れを掴むと、3分11秒に右一本背負投。体ごとローリングして強引に投げ切ったこの技で決定的な「技有」を獲得し、そのまま優勢勝ちを果たす。このいかにも湯本らしい気風の良い試合ぶりによって、桐蔭学園がこの時点でリードを2人差にまで伸ばした。

続いて畳に上がるは、全国高校選手権60kg級ベスト8の上領教史郎。66kg級の強者湯本にとっては与しやすい相手かと思われたが、湯本は階級が下で超攻撃型の上領に意外にも取り口が合わない模様。上領は右一本背負投を軸に次々鋭い技を繰り出し、展開を切ろうと掛け潰れを続けた湯本に1分50秒「指導1」。勢いを得た上領は2分30秒過ぎに右背負投、釣り手側にすっぽ抜け掛かると横にローリングして投げ切り決定的な「技有」を獲得。これで湯本は意気消沈の感あり、続く展開では上領がほぼ同じ形から決めの厳しさを一段上げて投げ切り、右一本背負投「一本」。足立学園が1人を抜き返し、スコア差は「1」のみとなる。

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千野根有我が上領教史郎から大内刈「一本」

しかし桐蔭学園は続いて登場した中堅千野根有我が早々にこれを収拾。開始まもない51秒に右脚を上領の股中に差し入れると、体格差を利して一気に体ごと乗り込む右大内刈。まず小さく確実に入れ、体を開きながら体重を載せてジャンプしてくる軽量級泣かせの一撃に、上領仰け反ったまま体一つ分後方に吹っ飛び「一本」。千野根、気合十分の試合でスコアを再び2人差のリードに戻す。

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山本瑛介が千野根有我の大外刈を返して「技有」

畳に残った中堅千野根に対するは、足立学園の大将山本瑛介。
この試合は右相四つ。千野根は山本得意の支釣込足を一歩前に出て捩じり返そうと試み、右払腰は隅落に狙い返してと気合十分。ベンチの「自分で攻めろ!」との檄に応えて、1分30秒過ぎからは釣り手の肘をこじり上げての右大外刈で積極的に攻めに出る。
しかし2分過ぎから山本の技が効き始め、右小外刈に千野根は転がり伏せ、支釣込足で崩される。ベンチも本人ももはや投げに出るほか耐えるすらこと叶わずと覚悟を決め、残り1分を過ぎたところで千野根ひときわ思い切り良く右大外刈。刈り込み、釣り手の肘を揚げ、あと一歩踏み込めば技が決まるかと思ったまさにその時、投げを決めるべく上体を倒した千野根の体が膝からドウと崩れる。投げの手ごたえゆえ一段深く踏み込んだことが命取り、山本の大外返が決まって「技有」。山本はそのまま横四方固に抑え込んで「一本」獲得。これでスコア差は再び「1」となる。

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村尾三四郎が遠間から左大外刈

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見事決まって山本瑛介の大きな体が宙を舞う。文句なしの「一本」。

第7試合は桐蔭学園の副将村尾三四郎が左、畳に残った山本瑛介が右組みのケンカ四つ。開始早々山本鋭い出足払を放つが村尾は動ぜず。すかさず左大内刈で激しく追い、下げられた山本がアドボードに激突して「待て」。以後も村尾の攻勢が続き、52秒山本に「指導」。山本奮起して右内股で攻め返すが2分6秒には相手の前進の処理を誤り場外で「指導2」失陥。
残り時間1分を過ぎ、山本は右体落から大内刈に繋いで勝負に出るが、村尾落ち着いて後の先を狙って動ぜず。残り31秒となったところで頃合い良しと見た村尾が大内刈から左大外刈に繋ぐと、山本グラリと崩落。遠間から足を伸ばし、踏み込んだ時には既に相手が空中で一回転。村尾独特の引き手の牽引を厳しく効かせた一撃みごと決まって「一本」。これで桐蔭学園のベスト4入りが決まった。

桐蔭学園高〇不戦一人△足立学園高
(先)賀持喜道〇反則[指導3]△武岡毅(先)
(先)賀持喜道×引分×吉井拓実(次)
(次)湯本祥真〇優勢[技有・一本背負投]△白石隼人(中)
(次)湯本祥真△一本背負投〇上領教史郎(副)
(中)千野根有我〇大内刈△上領教史郎(副)
(中)千野根有我△横四方固〇山本瑛介(大)
(副)村尾三四郎〇大外刈△山本瑛介(大)
(大)関根聖隆

足立学園は上領と山本が1人ずつを抜き返す意地を見せたが、桐蔭学園は前衛での削り合い、ポイントゲッター同士の決戦といずれの局面でも結果的に勝った。桐蔭学園の総合力勝ちと考えるべき試合。

武岡、上領の奮闘を軸にエースの山本が試合をまとめるという形でベスト8まで勝ち上がった足立学園は健闘。高校選手権ではシード権を得ながら強豪国東高(大分)の前に初戦敗退に終わったが、金鷲旗の大舞台であらためて実力を証明した形だ。軽量の前衛、重量級のエースと凹凸ある見た目の選手が揃ったが、良くまとまった好チームであった。先鋒武岡のミスは痛かったが、帰陣した武岡を叱るのではなく諄々と諭す徳原勉監督の姿が印象的であった。徳原監督の最終年である今年初めてインターハイ団体戦の出場権を得ているが、同大会での非常に活躍が楽しみだ。

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第4試合、長崎日大高の中堅ニコーグティが崇徳高の中堅安井彪翔から横掛「一本」

長崎日大高〇大将同士△崇徳高
(先)蛎崎光汰〇優勢[技有]△兼藤仁士(先)
(先)蛎崎光汰×引分×八木郁実(次)
(次)山口雅矢△優勢[技有]〇安井彪翔(中)
(中)ニコーグティ〇横掛△安井彪翔(中)
(中)ニコーグティ△内股〇神垣和他(副)
(副)永田賢斗×引分×神垣和他(副)
(大)山口貴也〇反則[指導3]△長岡季空(大)

先鋒戦で長崎日大の蛎崎光汰が勝利。蛎崎は続く八木郁実戦もしっかり引き分けて1人差リードのまま襷を繋ぐ。先制パンチを受けた崇徳は中堅安井彪翔が「技有」優勢で山口雅矢を抜き、これで立ち直るかと思われたが、第4戦の中堅対決は長崎日大のニコーグティが1分12秒に隅返で「技有」を奪って再び試合は長崎日大ペース。ニコーは手ごたえを得たか、続いて2分26秒再び相手の体側から体を捨てる。仕掛けたと同時に相手もろとも畳に落下、敢えて言えば横掛(公式記録は小外刈)という体の強烈な一撃に安井彪翔たまらず吹っ飛び「一本」。長崎日大が再び1人差のリードを作り出す。

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第5試合、神垣和他が畳に残ったニコーを支釣込足で投げつけ「技有」

第5試合は崇徳のポイントゲッターの神垣和他が登場。前戦のニコーの戦いぶりの良さから拮抗も想起されたこの試合だが、神垣は長崎日大ペースで進む試合の流れを振り払うように24秒支釣込足を閃かせ「技有」獲得。ビハインドを負ったニコーは「巴十字」であわやという場面を作り出すが神垣心得ていずれも逃れ、1分50秒には内股一閃。これが「一本」となって試合決着、崇徳が5戦を経て再びタイにスコアを戻す。

第6試合は副将同士の対決、畳に残った神垣に永田賢斗がマッチアップ。双方大将に大駒が控えることを考えるとこの副将対決が試合の分水嶺、特に「ダブルエース」の神垣を送り込んでいる崇徳としては出来れば勝利を得て対山口貴也戦に2人を残したいところであったが、この試合は双方得点の予感薄いまま引き分け。勝敗は崇徳・長岡季空と長崎日大・山口貴也のエース対決に委ねられることとなる。

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長岡季空が山口貴也に横車

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これが決まって「技有」

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山口の猛攻に長岡耐え切れず、残り5秒で痛恨の「指導3」

大将同士の対決は長岡、山口ともに左組みの相四つ。一方的に組みたい長岡、比較的組み合いを拒否せず前に出る山口という構図で試合が進むが、徐々に山口が優位となり、1分過ぎから長岡の頭が下がり始める。1分35秒には長岡に「指導1」宣告。このあたりから長岡が疲労し始め、主審は長岡に2つ目の「指導」を宣告。長岡は山口の前進を持て余すが、自分の形で組むことに成功した2分54秒からのシークエンスも背負投であっさり掛け潰れてしまい、得点の予感は漂わず。

しかし残り46秒、長岡は片手で背中を差して体を開くと、相手の腕を抱え込みながら前に滑り込んで横車の大技。これまでと組み立てを変えた奇襲に山口堪らず吹っ飛び「技有」。長岡は相手の肘を制してすかさず寝勝負を挑み、巧みに時間を消費。

立ち上がった山口、これまでの一種鷹揚な前進行動をあらため、遮二無二大外刈を刈り込んで相手の裏側に進出。この猛攻に長岡潰れて逃れることを繰り返してしまい、残り4秒で主審が合議を招集。結果、長岡に3つ目の「指導」が宣告されて山口の逆転劇が完成。「指導3」の反則を以てこの試合は山口の勝利となり、ベスト4には長崎日大が進むこととなった。

崇徳はチームの重石である兼藤を中盤ではなく先鋒に送り込んだが、ここで失点したことで一気にペースを失ってしまった。斬り込み役として期待された枇杷木勇樹の不安定さに業を煮やしたかのような先鋒投入だったが、総合的に見て戦力、キャラクターともにこの試合を勝ち上がるにはあと1枚が足りなかったと見る。エース対決での敗北が直接的な因となった試合だが、骨の太い選手を並べた長崎日大に比べ、背後にはこの陣容のキャラクター的な単調化、ひいては崇徳の強みであった総合力が一段落ちたことが原因にあると見る。強さと脆さの両方を見せた大会であった。

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平下麟太郎が藤鷹裕大から内股「一本」、これが決勝点となった。

東海大相模高〇不戦一人△大成高
(先)榎田大人×引分×三輪魁星(先)
(次)平下麟太郎〇内股△藤鷹裕大(次)
(次)平下麟太郎×引分×大西陸斗(中)
(中)笹谷健×引分×小田和紀(副)
(副)宮原崚汰×引分×東部直希(大)
(大)石川智啓

東海大相模は平下麟太郎を投入した3回戦から戦いぶりが安定。この試合も次鋒平下が藤鷹裕大から挙げた1点をテコにリードを保ったまま試合を進めた。

リード以降の東海大相模は手堅い戦いで無理をし過ぎず、大成の前衛にこれを崩すだけの取り味はなし。最後は前戦で日体大荏原のエース塚本綾を止める大仕事を果たしたばかりの宮原崚汰が大成のエース東部直希の前に立ちはだかり、最後まで背筋を伸ばした姿勢を崩さぬまま殊勲の引き分け。この試合は東海大相模がモノにすることとなった。

東部は宮原のサイズを攻略出来ず。大成は率直に言ってここまで東部に仕事をさせ過ぎた感あり。いかに東部といえども予選ラウンドの段階から、それも主力を温存したはずの4回戦から出動を続けてしまえばここ一番での体力と貪欲さを残すことは難しい。高校選手権では東部の超人的な活躍であわや優勝というところまで登り詰めた大成であるが、層の薄さはやはり否めず。点取りレギュレーションで行われるインターハイを前に評価を一段落とした大会であった。

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羽田野竜輝と田中優大による大将対決

延岡学園高〇大将同士△大牟田高
(先)岩佐海人×引分×立石泰勝(先)
(次)棚橋慎之介×引分×森健心(次)
(中)小島孝太×引分×谷所郁海(中)
(副)吉野弘人×引分×森優心(副)
(大)羽田野竜輝〇小外刈△田中優大(大)

今期の九州チャンピオン2校が相まみえた第4試合も拮抗。全九州大会100kg超級王者羽田野竜輝という明確なエースを擁する延岡学園に対し、今季の大牟田は総合力で戦うチーム。4戦連続の引き分けはチームの性格上延岡学園を利し、エース同士が相まみえた大将同士の対決は羽田野の小外刈「一本」で決着。延岡学園が全国高校選手権に続いて栄光のベスト4へと駒を進めることとなった。

結果決まった準決勝のカードは、

桐蔭学園高 ― 長崎日大高
東海大相模高 ― 延岡学園高

の2試合となった。



文責:古田英毅

※ eJudoメルマガ版8月6日掲載記事より転載・編集しています。

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