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桐蔭学園順調にベスト8入り、注目のCパート決勝は崇徳が国士舘を下す・第91回金鷲旗全国高校柔道大会男子マッチレポート①1回戦~6回戦

(2017年8月5日)

※ eJudoメルマガ版8月5日掲載記事より転載・編集しています。
桐蔭学園順調にベスト8入り、注目のCパート決勝は崇徳が国士舘を下す
第91回金鷲旗全国高校柔道大会男子マッチレポート①1回戦~6回戦
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開会式、国士舘高の長島光希主将による選手宣誓

高校生の夏、いよいよ開幕。体重無差別の五人制抜き勝負、試合ごとのオーダー順変更なし、代表戦なしの延長戦決着という過酷なルールで行われる「地獄の金鷲旗」こと第91回金鷲旗高校柔道大会は今年も7月21日にマリンメッセ福岡(福岡市)で開幕。

男子は322チームが参加、優勝までは実に9回戦を勝ち抜かねばならぬ長丁場。女子の阿部詩擁する夙川学院高と素根輝率いる南筑高による大激戦の余韻冷めやらぬ中、最終日の25日には4回戦から決勝までの競技が一気に行われた。

優勝候補筆頭は多彩なタレントと主将関根聖隆の大活躍を原動力に3月の全国高校選手権を制した桐蔭学園高(神奈川)。これを同大会2位の大成高(愛知)、同3位の崇徳高(広島)、1年生エース斉藤立の加入で急速に力を伸ばした国士舘高(東京)らがダンゴ状態で後を追う。また、フリーエントリーの今大会は高校選手権とインターハイの出場を逃した東海大相模高(神奈川)の参加があり、実力的にはもちろん、神奈川県予選決勝で桐蔭学園と2度に渡って大接戦を演じているという相性面からも、このチームの存在は優勝の行方を揺るがす大きな不確定要素。さらに今季はここ十数年でもっとも九州勢の力が充実しており、高校選手権3位の延岡学園高(宮崎)、同ベスト8の長崎日大高(長崎)に国東高(大分)、そして点取りレギュレーションながら6月の全九州大会を圧勝で制した大牟田高(福岡)と上位を狙える強豪校が目白押し。「地元押し」の組み合わせの妙も手伝って久々の九州復権がほぼ確実視されており、役者と見どころには事欠かない大会である。

というわけで大混戦の気配が漂う今大会を、まずはA~Hの各パートの勝ち上がりから簡単に追いかけてみたい。パート決勝の最注目は、崇徳と国士舘が早くも激突するプールC、高校選手権ベスト8の日体荏原高(東京)と東海大相模が同居するプールF。

取材・文:古田英毅

■ 1回戦~6回戦(パートファイナル)
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3回戦、桐蔭学園の先鋒佐藤虎太郎が早鞆高・宗田和志から大外落「一本」

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3回戦、佐藤が早鞆高・中村篤宏から袖釣込腰「一本」

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4回戦、桐蔭学園の次鋒髙山康太が阿波高の副将林直輝から大内刈「一本」

第1シードの桐蔭学園が順当にパートファイナル進出。
同校のスターティングは先鋒から佐藤虎太郎、髙山康太、千野根有我、村尾三四郎、関根聖隆。上位対戦における最後の勝負をどうしても関根に頼らねばならぬであろうことと、関根の生命線が間断ない連続攻撃にあること、そして抜き役の2年生副将村尾三四郎が体格・スタミナ的にまだ線の細さがあることなどを勘案すれば、いかにこの2人を使わずして上位対戦まで持ちこたえられるかが今大会制覇を目指す上での最大の眼目。そのためには上位対戦の前衛で踏ん張らねばならない賀持喜道と湯本祥真のレギュラー2枚を温存したまま、どこまで勝ち進めるかが序盤戦最大の課題だ。前衛に起用された佐藤虎太郎と高山康太の責任は重い。

この期待に先鋒佐藤が存分に応えた。2回戦の亀山高(三重)戦、3回戦の早鞆高(山口)戦と73キロの細い体をフルに使って10人抜きを果たし、まず2戦を1人ですべて賄う。

4回戦ではインターハイ出場校の阿波高(徳島)とマッチアップ。佐藤はこの試合も先鋒木村雅人、次鋒堀田孝起と2人を立て続けに抜いて通算12人抜きを果たすが、3試合目で100kg級徳島県代表の宗石響を相手にするとさすがに消耗、疲労し切って頭を下げられたまま待ちに入ってしまい、宗石の払腰に体ごと持っていかれ一本負け。

この試合は今大会初出動となった髙山康太が畳に残った宗石を内股「技有」からの後袈裟固「一本」ですかさず抜き、続く副将林直輝も大外刈「一本」で抜いてあっさり軌道修正。2人を抜いた髙山は阿波のエース三好大成には払腰「一本」で敗れたが、中堅千野根が引き分けて収拾し、結果不戦二人で勝利決定。

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5回戦では副将村尾三四郎が初登場、東海大札幌高の副将佐藤大輔を内股「一本」に仕留める。

東海大札幌高(北海道)との5回戦は先鋒佐藤が木村隆雅に引き分け、続く次鋒髙山も小林龍永に敗れるという苦しいスタート。中堅千野根が1勝1分けでスコアをタイに戻したところで副将村尾三四郎が初登場。副将佐藤大輔を内股「一本」で抜くと大将のエース藤井峻将と引き分け、不戦一人で勝ち抜けを決める。

一方、逆側からパートファイナルまで勝ち上がったのはインターハイ出場を逃しながらシード校ピックアップの栄を受けることとなった東海大静岡翔洋。こちらは2回戦で三重総合高(大分)を相手に先鋒柴田連音が5人を抜いての不戦四人(5人残し)、先鋒を北田晃大に入れ替えて早くもフルメンバーで臨んだ3回戦は富山国際大付高(富山)とマッチアップ、次鋒村松孝紀の2人抜きを原動力に3勝2分けの不戦二人(2人残し)でクリア。4回戦は大阪星光学院高(大阪)に4勝2敗1分け、副将南洋伯海の2人抜きで試合を終えて不戦一人(2人残し)で勝利、迎えた5回戦は九州勢からこのブロックに勝ち上がりを期して送り込まれた刺客・沖学園高(福岡)にリードを許したが大将米山竜生の2人抜きで逆転、大将同士の対決でこの試合を制してベスト16まで勝ち上がることとなった。

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桐蔭学園の先鋒賀持喜道が東海大静岡翔洋高の村松孝紀を攻めるが、決め切れず。

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村尾三四郎が米山竜生を大外刈「一本」に仕留めて熱戦決着

[Aパート6回戦(パートファイナル)]
桐蔭学園高〇不戦二人△東海大静岡翔洋高
(先)賀持喜道〇優勢[技有・大外刈]△北田晃大(先)
(先)賀持喜道×引分×村松孝紀(次)
(次)髙山康太〇大外刈△渡辺稜都(中)
(次)髙山康太×引分×南條伯海(副)
(中)千野根有我△大内刈〇米山竜生(大)
(副)村尾三四郎〇大外刈△米山竜生(大)
(大)関根聖隆

桐蔭学園はこの試合から先鋒に賀持喜道を投入。賀持は線の細さを払拭出来ず圧倒的な強さを見せたわけではなかったが、それでも北田晃大をしっかり大外刈「技有」で抜く。続く第2試合は次鋒村松孝紀の奮戦の前に引き分けたが、ここで髙山康太が1勝1分けと手堅く仕事を果たして、リードは2人差。試合の様相はほぼ確定の感あり。

東海大静岡翔洋は大将米山竜生が奮起、桐蔭学園の中堅千野根有我を大内刈「一本」で下す意地を見せたが、最後は前戦に引き続いての登場となった村尾三四郎が米山を大外刈「一本」で下して勝負あり。結果、桐蔭学園が不戦1人を以てベスト8進出を決めることとなった。

印象として残ったのは東海大静岡翔洋の健闘。桐蔭学園は第1シードということもあって組み合わせも比較的戦い易く、阿波、東海大札幌と骨太のチームが配されはしたが少なくとも上位対戦でつばぜり合いをせねばならないレベルの超強豪との対戦はなし。それでもじわじわと勝利のハードルが上がり続け、ベスト8進出までに副将村尾が既に3試合を戦うこととなってしまった。印象としてはその強さよりも、むしろ賀持の線の細さや千野根の脆さという「隙」が目立った序盤戦と言える。

しかしそれでも、関根以外の選手が軒並み金縛り状態に陥ってしまった高校選手権序盤に比べれば遥かに良い出来。絶対の戦力ではないながら、佐藤や高山まで含めた層の厚さとキャラクターの多彩さを利してしっかり勝ち上がった序盤戦と総括すべきだろう。

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山場の4回戦、大将同士の対決で足立学園高・山本瑛介が名張高・新井涼平から小外刈「技有」

【Bパート】
シード校:東海大仰星高(大阪)、埼玉栄高(埼玉)
6回戦(パートファイナル)進出校:足立学園高、埼玉栄高

春のシード校・足立学園がノーシードから非常に厳しい組み合わせを勝ち上がってベスト16入り。初戦は鹿児島県大会2位の鹿児島実業高(鹿児島)を2勝1敗3分けの不戦一人で破り、3回戦は初戦に引き続いて起用された先鋒松村士の5人抜きで金光学園高(岡山)を一蹴。4回戦では今季シードクラスの実力を持つと前評判の高いインターハイ出場チーム・名張高(三重)を相手に、先鋒を武岡毅に替えてフルメンバーで対峙。武岡が新井健太郎を抜き、名張の次鋒山本亮馬に抜き返された第2試合以降は引き分け続きでスコア動かず、試合は大将同士の対決まで持ち込まれる。この大一番で足立学園・山本瑛介が新井涼平から小外刈「技有」、縦四方固「一本」と奪って激戦決着、5回戦進出決定。

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2回戦、東海大仰星高の中堅吉村太一が横浜高の大将立川佑から一本背負投「技有」

そして迎えた5回戦は全国高校選手権で前年度王者・国士舘高を破ってベスト8に残った東海大仰星との大一番。順当にシード校のピックアップを受けた東海大仰星はここまで横浜高(神奈川)を不戦二人、前衛2枚を入れ替えてフルメンバーにスイッチした秀岳館高(熊本)戦は先鋒内村秀資の3人抜きで不戦三人、4回戦の國學院大栃木高(栃木)戦は先鋒内村、次鋒大野晃生、中堅吉村太一が1勝ずつを挙げて不戦二人と無敗のままこのベスト16まで勝ち上がっている。

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5回戦、足立学園の大将山本瑛介が東海大仰星の副将西野豊から小外掛「一本」

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山本は大将奥野友輝との延長戦も縦四方固「一本」で勝ち抜く

この試合は先鋒同士の対戦で内村が武岡を抜き、そのまま引き分けが続いて東海大仰星が1人差リードのまま足立学園の大将山本が畳に上がることとなる。山本は東海大仰星の副将・西野豊を小外掛「一本」で抜き、奥野友輝との大将対決は息詰まる近距離戦の末に双方ポイントなしで本戦が終了。迎えた延長戦は開始早々に山本が奥野の袖釣込腰を潰し、半身のまま畳に押し付けると上に乗って縦四方固。このまま抑え切って山本の「一本」で試合は決着、足立学園が見事パートファイナル進出を決めることとなった。足立学園は名張、東海大仰星と強豪を立て続けに倒して挙げた星だけで言えばこの時点で既にベスト8級の戦果。

一方の埼玉栄は高校選手権に続くシードピックアップ。2回戦は大商大堺高(大阪)を相手に先鋒大山翔が5人抜き、3回戦の東海大熊本星翔高(熊本)戦は大山の4勝1敗を受けたダイ6試合で相手方の大将松見拡和に次鋒豊永貫太が抜き返されたが、中堅山野井爽が勝利して不戦二人で決着。4回戦の加藤学園高(静岡)戦はこの試合から入った西願寺哲平の2人抜き(1敗)を起点に残り試合すべてを引き分けて不戦一人で勝利、そして山場の5回戦は作陽高(岡山)の副将高橋翼に山野井と副将梅野雅崇が抜かれてリードを許したが、初登場の大将岩田歩夢が2人を抜いて逆転勝ち。ベスト8進出を掛けて足立学園との大一番に臨む。

[Bパート6回戦(パートファイナル)]
足立学園高〇不戦一人△埼玉栄高
(先)武岡毅〇優勢[技有]△西願寺哲平(先)
(先)武岡毅〇隅返△豊永貫太(次)
(先)武岡毅〇裏投△山野井爽(中)
(先)武岡毅△横四方固〇梅野雅崇(副)
(次)吉井拓実×引分×梅野雅崇(副)
(中)白石隼人△袈裟固〇岩田歩夢(大)
(副)上領教史郎×引分×岩田歩夢(大)
(大)山本瑛介

足立学園が快勝。スコアこそ不戦一人と接戦の体だが、先鋒武岡毅の3人抜きに始まって常にリードを保ったまま、しかもエースの山本瑛介を温存したまま危なげなく試合を終えた。高校選手権ではシードの栄を受けながら初戦敗退に終わった足立学園だが、同大会のシード2校を立て続けに下し、力をしっかり証明する形でベスト8入り決定。

一方の埼玉栄は新人戦期の実績不十分も、前代チームの評価を引き継ぐ形で高校選手権でシードピックアップ。西願寺哲平の加入で戦力を増した今大会はその高校選手権の実績を継承する形でシード権を得たが、今大会はついにその高評価に応えられず失速。足立学園に歯が立たず、この試合は実力者岩田が一矢を報いたのみの1勝4敗1分けという完敗だった。

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2回戦、崇徳高の先鋒福永夏生が長崎鶴洋高の松浦貫太から内股「一本」

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崇徳は4回戦から先鋒に枇杷木勇樹を投入、東海大甲府の先鋒長島勇斗から払腰「一本」

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5回戦、東海大福岡・津嘉山崇が枇杷木勇樹から大内刈「一本」

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崇徳は中堅安井彪翔が東海大福岡・荒木海人から裏投「一本」で勝利して試合を締める

【Cパート】
シード校:崇徳高(広島)、国士舘高(東京)
6回戦(パートファイナル)進出校:崇徳高(広島)、国士舘高(東京)

予選ステージ最大の注目ブロック。ベスト16で相まみえることとなったのはもちろんシードピックアップを受けた2校、崇徳と国士舘だ。

崇徳は序盤の抜き役に1年生の福永夏生を指名。昨年の全国中学校柔道大会90㎏超級決勝で国士舘中の斉藤立と死闘を繰り広げた福永は、2回戦の長崎鶴洋高(長崎)戦でその期待に存分に応え5人抜き。5戦目は大将中島琉偉を相手に大外巻込で「技有」を失いながら裏投「一本」で勝ち越し、あくまで全試合を「一本」で勝ち抜く意地を見せた。しかし3回戦の立花学園高(神奈川)戦は1勝1分けで退場し、続いて登場した次鋒の八木郁実が送足払「一本」に「指導3」による勝利2つと計3人を抜いてこの試合は不戦三人(4人残し)でフィニッシュ。

相手の難度が格段に上がった4回戦の東海大甲府高(山梨)戦では早くも先鋒に枇杷木勇樹を投入。枇杷木はまず長島勇斗を内股透「技有」、さらに内股「一本」を追加して圧勝、続いて次鋒川高海優をあっという間の内股「一本」で退けてと極めて順調な立ち上がり。持ち味十分発揮と思われたが、しかし3試合目では試合を優位に進めながら中堅笠原龍馬の巻き込み潰れを処理し損ない、抱えられた腕を起点に体ごと押し込まれ後袈裟固に捉えられてしまう。枇杷木はそのまま一本負けを喫し、2勝1敗の不首尾のまま畳から降りることとなった。

次戦は八木郁実が笠原を引き分けで止め、中堅安井彪翔も手堅く引き分け。最後は副将神垣和他が大将峰本祐汰を抜いて、残ったスコアは不戦一人(2人残し)の快勝。しかし、上位対戦のカギと思われた枇杷木が勝ちぶりの良さの一方でまたもやミスを犯し、以後に不安の残る試合ではあった。

迎えた東海大福岡との4回戦も枇杷木は3人を抜き去る気風の良い柔道を見せたが、副将津嘉山崇を相手に苦杯、奥襟を叩いた技の入り際に大内刈を合わされて一本負けを喫した。続く八木が津嘉山から「指導」3つを奪ってすかさず抜き返したものの、荒木海人には「指導3」の反則で敗れ、最後は中堅安井が荒木に勝利して不戦二人(3人残し)で勝利を決めた。これもスコア的には快勝だが、計5勝を挙げながら2敗を喫するなど強さと脆さが同居する、一種歴代の崇徳らしからぬ不安定な試合内容。

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2回戦、国士舘の先鋒長島光希が名城大附高・松岡主悦から背負投「一本」

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4回戦、国士舘高の副将清水雅義が津幡高の大将・藤田慶二から一本背負投「一本」

一方の国士舘高は上位対戦に向けて1年生大将斉藤立を温存するという大方針のもと、前半の抜き役には主将の長島光希を起用。2回戦の名城大付高(愛知)はこの先鋒長島が苦労しつつも3人を抜き去るが、副将杉本直也と引き分けて5人抜きの達成はならず。1年生次鋒の道下新大が出動して大将加藤公泰に大外落「技有」で勝利し、この試合は不戦三人(4人残し)で勝ち抜け。

3回戦の高知高(高知)戦は長島が1人を抜くも、次鋒石村光基に内股巻込「技有」で敗れて1勝1敗で退場する不首尾。再び登場した道下が畳に残った石村を開始早々の小内刈「一本」で破るとこのまま4人を抜き去り、この試合も最終スコアは不戦三人(4人残し)。4回戦の津幡高(石川)戦は長島が津幡期待の1年生寺島悠太を抜くが、続く次鋒布目王雅に敗れてまたしても1勝1敗で畳を降りる。次鋒道下が1勝1分け、中堅織茂友多郎が1引き分けで迎えた第6試合は今大会初登場の副将清水雅義が素晴らしい動きを披露、一本背負投「一本」で津幡の大将藤田慶二を仕留めて試合終了。3勝1敗2分けの不戦一人(2人残し)で5回戦進出決定。

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5回戦の京都学園高戦、国士舘は副将清水が難敵奥田將人から「技有」奪取。この一撃で勝利を決める。

5回戦の相手は難敵・京都学園高(京都)。この試合から先鋒は1年生の藤永龍太郎に入れ替わったが、藤永は山田智也に引き分け、さらに道下が島崎太紀を崩上四方固「一本」で抜くも高校選手権73kg級王者の勝部翔に左一本背負投「技有」で敗れる苦しい試合展開。ここは中堅織茂が動揺なく勝部に勝利し、副将名倉泰成に手堅く引き分けて退場。試合は国士舘の副将清水雅義と、高校選手権81kg級準優勝者・京都学園の大将奥田將人による第6試合に引き継がれる。

清水の今季の低調と奥田の実力を考えれば縺れること必至と思われたこの試合だが、清水は鋭い背負投を連発してペースを掴むとこの技から変化した大内刈で「技有」を獲得。奥田の猛追も凌ぎ切って見事勝利でこの試合を終える。結果残ったスコアは前戦と同じ不戦一人(2人残し)、国士舘がしっかりパートファイナル進出を果たした。ここまで通算3敗を喫してはいるが、高校選手権時の苦しい戦力と成績を考えれば勝ち上がりはまずまず。大将斉藤を温存して崇徳戦を迎えるというミッションをクリアして6回戦へと進むこととなった。今季一貫して低調だった清水の復調という好材料もあり、展望は決して暗くない。

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6回戦最大の注目カード、崇徳対国士舘が開始される

[Cパート6回戦(パートファイナル)]
崇徳高 ― 国士舘高
(先)兼藤仁士 ― 藤永龍太郎(先)
(次)八木郁実 ― 道下新大(次)×
(中)安井彪翔 ― 織茂友多郎(中)
(副)神垣和他 ― 清水雅義(副)
(大)長岡季空 ― 斉藤立(大)

迎えた注目のパートファイナル、両軍の布陣はともに少々意外なもの。崇徳はここまで温存したポイントゲッター兼藤仁士を次鋒に入れるものと予想されていたが、斬り込み隊長の先鋒枇杷木をベンチに下げてこのポジションに兼藤を投入。兼藤の前衛と、神垣と長岡で形成する後衛の2ブロックが厚く、中盤が薄いセパレート布陣を敷いた。一方この試合から今季一貫して先鋒としてチームを引っ張って来た三谷大を投入すると予想されていた国士舘も、この選手をベンチに取り置いたまま前戦のオーダーを踏襲、先鋒に藤永龍太郎を残した。前の4枚で少しでも相手を削らんとする4枚+斉藤1枚の2段作戦は変わらず、しかし作戦遂行に必須のはずの斬り込み役を欠いたままこの大一番に臨む。

あらためてこの試合の両軍の目当てを確認すると。崇徳は国士舘の大将斉藤登場までにより多く駒を残すこと、一方の国士舘は逆に相手を少しでも多く削って斉藤の負担を減らすこと、ここにこの試合の眼目がある。前半戦は攻める崇徳と凌ぐ国士舘という構図を予想しておくべき。

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崇徳の先鋒兼藤仁士が国士舘・藤永龍太郎から小外掛「一本」

先鋒戦は崇徳・兼藤仁士が右、国士舘・藤永龍太郎が左組みのケンカ四つ。兼藤は左右の担ぎ技で攻め、藤永は寝勝負を頭に入れながら強気に釣り手で帯を握っての左内股で攻め返す。藤永がその強気ゆえに意外に健闘、中盤まで攻め合いのまま持ちこたえるがしかしこの強気を兼藤が的確に利用。幾度目かの帯を持っての腰の差し合いにいち早く反応し、密着状態を利しての小外掛一撃。たたらを踏んで耐える藤永を場外まで追い切って、1分35秒「一本」。

兼藤は続く次鋒道下新大ともしっかり引き分け、続く第3試合は八木郁実が織茂友太郎の突貫攻撃と寝技を要所で弾き返し続けてこれも引き分け。崇徳が1人差をリードしたまま試合は終盤戦へ引き継がれる。

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国士舘の副将清水雅義が崇徳・安井彪翔から膝車「技有」

崇徳の中堅安井彪翔、国士舘の副将清水雅義による第4試合は右相四つ。この試合は清水が前戦まで見せた好調を継続、安井の奥襟来襲を左一本背負投に切り返し、帯を握っての右釣腰に大内刈、右背負投と積極的に攻める。50秒には巧みな膝車で決定的な「技有」を獲得し、視界良好。しかし安井も抜き勝負の鉄則を心得ており、前進と掌握、抱き着きの密着と一発逆転を狙い続け、清水の体力を減殺。最終的にこの試合は清水の「技有」優勢に終着し、スコアはこの時点でタイとなる。

第5試合は副将同士の対決、崇徳のポイントゲッター神垣和他と清水雅義がマッチアップ。今季の実績からは神垣優位と思われたこのカードだが、開始30秒に清水が神垣の大内刈を返して激しく投げつけ大内返「技有」を獲得、最高の立ち上がりを見せる。しかし神垣は慌てず、巧みに一方的な組み手を作りながら緩急をつけて大内刈、内股で攻める。万が一の返しを食わぬよう足を差し入れては前に出て来るこの上から目線の戦いに清水は抗しかね、52秒に「指導1」、1分40秒には「指導2」と反則ポイントを連続失陥。直後神垣が背中を抱えると清水は潰れてしばし立てず、清水最大の弱点であるスタミナ不足がここに来て顕在化した格好となる。2分12秒に座り込みの谷落に潰れるともはや清水に立ち上がる体力は残されておらず、主審はここに至って3つ目の「指導」を宣告。この試合は逆転で神垣の勝利に終わった。

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国士舘の大将斉藤立が崇徳の副将神垣和他から大外返「一本」

そして続く第6試合、国士舘の1年生大将斉藤立が初めて畳に姿を現す。この試合は神垣、斉藤ともに左組みの相四つ。神垣は先んじて引き手で襟を掴み左小内巻込に右一本背負投と癖のあるリズムで技を繰り出すが斉藤はまったく崩れず、ことごとく背筋を伸ばしたまま潰して「待て」。38秒斉藤が左大外刈を放つと神垣は手を着いて危うくポイント失陥を免れる。圧力に窮した神垣は座り込みの右背負投に肩車と攻めるが、1分20秒に肩車を放った際に両手を離して潰れてしまい、偽装攻撃で「指導1」失陥。一見背筋を伸ばして組んでいるのみの斉藤が、試合の流れを完全に掌握する格好となる。1分22秒、打開を狙った神垣が左大外刈の形で斉藤の裏に進出しようとすると、斉藤呼び込んで大外刈で刈り返す。神垣吹っ飛び「一本」。
斉藤、今代有数のポイントゲッターである神垣を問題にせず。スコアは再びタイとなる。

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斉藤と長岡季空の大将対決。長岡の担ぎ技に斉藤動ぜず、得点の気配は薄いと観測された。

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長岡が斉藤から袖釣込腰「技有」

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長岡そのまま横四方固で抑え込み「一本」

迎えた大将同士の対決は崇徳のエース長岡季空が出動。今大会初登場の長岡、斉藤攻略には担ぎしかないとばかりに左袖釣込腰、さらに右袖釣込腰を2連発するが身長189cm体重155kgの斉藤はまたもや背筋を伸ばして動ぜず。手合わせの様相は対神垣戦と相似。

しかし1分16秒、焦れた斉藤が一瞬両腕を伸ばして追いかけると、長岡これを呼び込んで右袖釣込腰。勢いのついた斉藤の体は制動が効き切らず、長岡しっかり腕を抱き込んで投げ切り「技有」。長岡このチャンスを逃してはならじとあくまで腕の抱き込みを解かず、相手の上体越しに引き込んだ腕の上に体を載せて斉藤を拘束。斉藤体を揺するが解ける気配はまったくなく、1分41秒「一本」宣告に至る。これで崇徳のベスト8進出が決定、国士舘は高校選手権に続きまたも入賞なしで大会を去ることとなった。

崇徳高〇大将同士△国士舘高
(先)兼藤仁士〇小外掛(2:35)△藤永龍太郎(先)
(先)兼藤仁士×引分×道下新大(次)
(次)八木郁実×引分×織茂友多郎(中)
(中)安井彪翔△優勢[技有]〇清水雅義(副)
(副)神垣和他〇反則[指導3](2:12)△清水雅義(副)
(副)神垣和他△大外返(1:42)〇斉藤立(大)
(大)長岡季空〇横四方固(1:41)△斉藤立(大)

ポイントゲッター長岡の大仕事が崇徳の直接的な勝因。斉藤は十分長岡と戦えており、展開の延長線上には少なくとも「指導」差による勝利が見えていたように見受けられたが、左右に癖のある担ぎを持つ強者長岡を引き出すのではなく追い掛けてしまう一瞬のミスで苦杯を喫した。岩渕公一監督が「偏差値が高い」と評する柔道頭の持ち主である斉藤だが、この試合は立ち振る舞いから少々様子が違い、名門・国士舘の大将を1年生が張るという事態の重圧が如実に感じられた。

一方の長岡、新人戦期の勝ちぶりの良さに比して高校選手権では爆発出来なかったが、これは対戦相手の猛者たちがことごとく長岡を強者と規定し、まさしく「なかなか出てこない」戦い方を志向して来たことが大きい。大型選手が腕を伸ばして前に出て来る展開は長岡がもっとも得意とする形、これを逃さぬ試合勘と一発の威力はさすが。久々長岡が存在感を見せた一番。

国士舘は清水の復調という好材料があったが、スタミナ面での課題払拭までには至らず。ムードメーカーである三谷を上位対戦で試せぬままエース斉藤も苦杯を喫し、2週間後に控えるインターハイに向けてやや不安の残る内容であった。

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3回戦、長崎日大高の次鋒山口雅矢が神港学園神港高の副将戸田将太から払腰「一本」

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5回戦、長崎日大の副将永田賢斗が東福岡高の大将・黒河内健介を攻める

【Dパート】
シード校:長崎日大高(長崎)、中京学院大中京高(岐阜)
6回戦(パートファイナル)進出校:長崎日大高(長崎)、福岡大大濠高(福岡)

シード校の長崎日大が順当にパートファイナル進出。初戦から神港学園神港高(兵庫)戦という山場があったが、この試合は1年生先鋒の全日本カデ66kg級王者・桂嵐斗の3人抜き(1敗)をテコに試合を優位に進める。相手方の大将岩野光貴に2人抜きを許したものの最後は副将永田賢斗が小外刈「技有」で勝利して乱戦を締め、5勝3敗0分けの不戦一人(2人残し)で勝利。3回戦の高松商高(香川)戦も桂が同じく3勝1敗、ここから次鋒山口雅矢の引き分け、中堅ニコーグティの1勝を積み上げて不戦二人(3人残し)で勝利。ポイントゲッターの蛎崎光汰を先鋒に投入した4回戦の比叡山高(滋賀)戦は中堅ニコーの1勝をテコに4引き分けの不戦一人で手堅く勝ち抜ける。先鋒蛎崎が2人を抜き、相手方の中堅姥玄一郎に蛎崎と次鋒山口雅矢の2人が抜かれる展開となった5回戦の東福岡高(福岡)戦は続いて畳に上がった中堅ニコーが姥をきっちり抜き返し、ここからは引き分けを2試合続けて不戦一人(1人残し)で勝利。無事にパートファイナルまで辿り着いた。

逆側の山では少々意外なシードピックアップを受けた中京学院大中京が4回戦で群馬常磐高(群馬)に1勝4敗1分で完敗。このブロックからは福岡県総体2位の福岡大大濠高(福岡)が勝ち上がった。福岡大大濠は4回戦で柳ヶ浦高(大分)を大将同士(1人残し)、5回戦で群馬常磐を不戦一人(1人残し)と強豪を立て続けに破って殊勲の6回戦進出。

[Dパート6回戦(パートファイナル)]
長崎日大高〇不戦一人△福岡大大濠高
(先)蛎崎光汰〇一本背負投△小路宙輝(先)
(先)蛎崎光汰×引分×山田聖斗(次)
(次)山口雅矢×引分×釘本陸(中)
(中)ニコーグティ×引分×野田隆世(副)
(副)永田賢斗〇優勢[技有]△中西一生(大)
(大)山口貴也

長崎日大が順当にベスト8入り。先鋒蛎崎が取り、副将永田が締めるというオーダー構成の意図からもほぼ理想的な展開で、無敗のままこの試合を終えた。勝ち上がりに凹凸はあったが、大駒山口貴也を使わぬままの準々決勝進出は見事と総括すべきだろう。

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2回戦、大成高の先鋒中村恭兵が千葉商大附高の副将・水野恵汰から小外刈「技有」

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4回戦、大成の大将東部直希が近江高・牧本聡真から裏投「技有」

シード校大成がパートファイナル進出。結果としては順当だがその過程は大いに苦労あり。高校選手権で孤軍奮闘、準優勝の原動力となった大将東部直希を少しでも休ませて勝ち上がることが今大会における大成の一大方針だが、先鋒中村恭兵の4人抜き1分けで終えた2回戦の千葉商大附高(千葉)戦、中村と次鋒弓削凛月の2人で賄った3回戦の豊栄高(新潟)戦を終えると、同じ陣容で臨んだ4回戦の近江高(滋賀)戦では1勝1敗3分けのタイスコアのまま早くも東部が登場することとなってしまう。大将同士の対決で東部が牧本聡真を裏投「一本」で抜いて勝利自体は得たものの、率直に言って少々苦しい滑り出し。続いて前衛に三輪魁星と藤鷹裕大を入れてフルメンバーで臨んだ5回戦の天理高(奈良)戦は三輪が1勝1敗、藤鷹が1分け、そして中堅大西陸斗が神野光稀に敗れてと期待の2年生3人を注ぎ込み終えた時点で1人差ビハインドというこれも非常に苦しい試合。副将小田和紀が神野を僅差の優勢で抜き、副将植岡虎太郎と引き分けてスコアをタイに戻したところで、この試合も大将東部の活躍にチームの命運を託すこととなる

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5回戦、東部直希と中野寛太による大将対決

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延長戦、東部が一段ギアを上げて「指導」を奪う

東部と天理の2年生エース中野寛太というこの注目対決は拮抗、ともに相手を崩し切れぬまま本戦が終了して勝敗の行方は延長戦へ。ここで東部が一段ギアを上げ、中野が守勢に回ると延長30秒を過ぎたところで審判団が合議。試合を決める3つ目の「指導」を中野に与えて、大成の勝利が決まった。試合開始当初東部の投技が決まる気配は極めて薄く、むしろ中野の足技が東部の足元を乱す場面が目立ったほどであったが、体力に自信があるのか東部が焦る場面は意外なほどになし。延長開始から確信的にギアを上げた東部の地力と試合勘に凱歌が上がった試合だった。

下側の山からは北海がベスト16入り。2回戦で常翔学園高(大阪)を不戦二人(3人残し)、3回戦では佐久長聖高(長野)を不戦一人(2人残し)で下し、山場の4回戦ではシード校東海大浦安と対戦。1人差ビハインドで出動した大将葛西純平が副将畠山竜弥、大将山中堅盛と立て続けに2人を抜いて、逆転でこの大一番の勝利を得た。5回戦は地元の嘉穂高(福岡)を副将佐々木歩の2人抜きで突き放し、2勝0敗3分けと圧倒してパートファイナル進出確定。

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北海高の副将佐々木歩が大成の中堅・大西陸斗から小外刈で「技有」

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大成は副将小田が畳に残った佐々木から小外掛で2つ目の「技有」

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北海の大将葛西純平が小田を「一本」で抜き返し、試合は大将同士の対決へ。

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大将同士の延長戦で大成・東部直希が北海・葛西純平から払腰「一本」

[Eパート6回戦(パートファイナル)]
大成高〇大将同士△北海高
(先)三輪魁星〇優勢[僅差]△杉本将一郎(先)
(先)三輪魁星△横四方固〇古沢昴太(次)
(次)藤鷹裕大〇優勢[僅差]△古沢昴太(次)
(次)藤鷹裕大△優勢[僅差]〇横山敏士(中)
(中)大西陸斗〇体落△横山敏士(中)
(中)大西陸斗△優勢[技有・浮落]〇佐々木歩(副)
(副)小田和紀〇優勢[技有・支釣込足]△佐々木歩(副)
(副)小田和紀△小外掛〇葛西純平(大)
(大)東部直希〇払腰△葛西純平(大)
※延長決着

迎えた6回戦も大成は取って取られての大乱戦を演じる。幾度も軌道修正の機会はあったがことごとくこれを逸する形で、先鋒三輪、次鋒藤鷹、中堅大西の2年生トリオが地力ある北海の選手たちに大苦戦。勝っては次戦を落とす苦しいループを繰り返して、試合はタイスコアのまま終盤まで進行する。副将同士の対決では小田が佐々木歩の大外刈を支釣込足で振り返して「技有」奪取、このまま優勢勝ち。これでどうやら先が見えたかに思われたが、北海の大将葛西純平が小外掛「一本」で小田を退けて、この試合も勝敗の行方は大将同士の対決へともつれ込むこととなる。

この試合も序盤は拮抗。東部の技に葛西が揺らぐ気配なく勝負はどちらに転んでもおかしくなかったが、東部はこの試合も意外なほどに落ち着き払って一進一退の攻防の中じわじわと陣地を確保。1分35秒双方に「指導1」、残り21秒で葛西にのみ「指導2」が与えられて試合は延長戦へもつれ込むこととなる。延長1分49秒、東部は頃合い良しとみたか突如ギアを上げスピード豊かな内股で「技有」を獲得。もはや一発逆転を狙うしかなくなった葛西は脇を差してその腰に抱き着くが、東部は待ってましたとばかりに呼び込んで今度は払腰一発。これまでの拮抗が嘘のように葛西は体ごと引っこ抜かれて宙を舞い、2分23秒「一本」。これで大成の勝利が決まった。

大成は上位対戦に東部を取り置くどころか、前衛が乱打戦で消耗した末にこの時点で東部に3試合、延長戦も入れると5試合を消費させてしまうという不出来。三輪と藤鷹を温存したまま早くも東部を出動させてしまった近江戦で歯車が狂ってしまった感もあったが、天理戦、そしてこの北海戦と前衛の2年生3枚が相手方にその線の細さを見透かされて、上から目線の強気の試合で食いつかれてしまっていることがなんとしても不安。前途決して明るいとは言えない予選パートの勝ち上がりであった。

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4回戦、日体大荏原高の次鋒内藤彪雅が近大福山高の副将・森本拓海から内股透「一本」

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5回戦、日体大荏原の副将菅原孝希が白鴎大足利高の中堅岩瀬裕希から袖釣込腰「一本」

【Fパート】
シード校:日体大荏原高(東京)、九州学院高(熊本)
6回戦(パートファイナル)進出校:日体大荏原高(東京)、東海大相模高(神奈川)

今代全国的な実績がまだなく、全九州大会でも予選リーグを突破出来なかった九州学院がシードピックアップを受けた、荒れること必至のパート。九州学院は4回戦で普成高(韓国)に敗れ、2強と目された日体大荏原と東海大相模が順当に勝ち上がってパートファイナルで相まみえることとなった。

全国高校選手権でベスト8に入賞している日体大荏原の勝ち上がりはおおむね順調。2回戦は三重高田高(三重)を先鋒藤原直生が5人抜き、3回戦も藤原が4人を賄い、1年生次鋒の平山才稀が1人を抜いて杵築高(大分)を不戦三人(4人残し)で相手にせず。ここからは全国レベルの強豪と連戦となったが、先鋒に森大将、違次鋒を内藤彪雅に入れ替えてフルメンバーで臨んだ4回戦の近大福山高(広島)戦は森の2勝1分け、内藤の1勝1敗と2人差リードを持ったまま終盤に試合を持ち込み、最後は中堅村上朋也が大将小西優汰の小外掛を浴びせ返しての浮落「技有」で優勢勝ち。前衛の3人のみでこの難敵との一番を賄い、不戦二人(3人残し)で快勝。5回戦の白鴎大足利高(栃木)戦は先鋒の森が浅沼亮太に敗れる黒星スタート、次鋒内藤が抜き返すも1引き分けを挟んだ中堅同士の対決で村上朋也が岩瀬裕希に敗れ、第4試合終了のこの時点で1人差のビハインドという苦しい試合。しかし今大会初登場の副将菅原孝希が岩瀬を袖釣込腰「一本」で抜き、副将同士の対決で吉田功二と引き分けてスコアをタイに戻す。最終戦の大将同士の対決では塚本綾が長島斥弥にきっちり「技有」優勢で勝利、3勝2敗2分けの乱戦をまとめて勝ち上がり決定。

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2回戦、東海大相模の先鋒大村が修猷館高の副将瀬戸裕次郎に支釣込足を返され「技有」失陥

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大村は内股「一本」で逆転、なんとかこの試合を切り抜ける

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修猷館高の大将鴨崎が東海大相模・山科良悟から浮落「技有」。鴨下はこれで東海大相模を相手に2人を抜く殊勲。

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東海大相模は初戦から中堅のエース笹谷健が出動、鴨下を内股「一本」に仕留めてなんとか勝利決定。

一方の東海大相模は高校選手権の覇者・桐蔭学園と県内で大接戦を繰り広げて来た実力校だが、今季の全国大会の場はこれが初めて。12月の若潮杯制覇時には全国優勝候補にも挙げられていたが、既にあれから7か月が経過しており、全国的な勢力地図は一変している。桐蔭との相性のみならずその実力の絶対値が全国の強豪を超える水準にあるのか、そのスマートなスタイルが地方の強豪たちと噛み合うのか、より具体的には若潮杯制覇時を含めやや柔道がナイーブで「巧さ」で勝ち上がっている印象のあるこのチームが有無を言わさず相手を叩き潰していかねばならない「地獄の金鷲旗」を勝ち抜くだけの地力とふてぶてしさを獲得出来ているのかどうか。その立ち上がりに注目が集まった。

ところが初戦は不出来。この2回戦、修猷館高(福岡)戦は先鋒に指名された先鋒大村康太が順調に3人を抜くが、相手方の副将瀬戸裕次郎に支釣込足を浴びせ返され「技有」を失ったところから雰囲気がおかしくなる。大村はこの試合を内股「一本」で切り抜けたものの、続く修猷館の大将、福岡県90kg級2位の鴨崎大海を相手に「指導」2つを失って敗退。

そして出動した次鋒山科良悟も鴨崎に抜かれてしまう。鴨崎の体の強さを持て余したか数合の威力偵察の後に得意の支釣込足に打って出たが、前技のプレッシャーが効き切らない状況で、もはや勝つしか道はなしと腹を据えた大将相手にこれは少々安易。実力者鴨崎は山科が片足となった瞬間に一歩前に出て思い切り体を浴びせ浮落「技有」獲得、このポイントを以て2人抜き達成。東海大相模は初戦から早くもエース笹谷健が出動する緊急事態となった。

笹谷は持ち前のポーカーフェイスで淡々と試合を進め、鴨崎のパワー捌きがたしとみるや斜めから足を差し入れて回し込みの内股一発「一本」。結果、不戦二人(3人残し)で試合をまとめた東海大相模の勝ち上がりが決まった。

率直に言って非常に厳しい立ち上がり。山科の失点は鴨崎の強さはもちろん、面倒な力関係を正面突破ではなく安易に技術で解決しようとしたことが因と見ておきたいが、これはここ数年の東海大相模のメンタル的な問題を凝集したようなミス。相手が怖がっていることに乗っかってこそ掛かる技が効かず、相手が怖がっていないこと自体で自身が判断ミスを犯す、悪いスパイラルだ。このシーンに端的であるが、この初戦で浮き彫りになったのは、もはや現役高校生はかつて一大ブランドであった「相模」の名前を怖がっていないという事実。一昨年までの停滞の中でジリジリ表出して来ていた相模なにするものぞという周囲の気負いはもはや当たり前のように定着、単に競技力が上の強豪校に立ち向かうような、バイアスなく一種相手を呑んでかかる修猷館後衛2枚の戦いにはこれが如実に表れていた。これぞ相模にとって最も嫌な「地力の強い地方校が怖じずに次々挑んで来る」現象に他ならない。これを跳ね返して再び「相模と戦うこと自体への恐怖」を呼び覚ますには正面から力業で堂々投げつける迫力が必要だが、その中で山科が犯した、まだ怖がっていない相手への逆技という選択は非常に悪い卦。内股「一本」で勝利した笹谷はさすがであったが、これとて同階級の選手を相手に外側で回し込む内股という「技術勝ち」であり、今年の相模は違うと以後の対戦相手に恐怖を与えるところまでは登り詰められなかった。今年初めての全国大会に挑む東海大相模、不安の残る第1日の戦いであった。

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東海大相模の次鋒平下麟太郎が福井工大福井高の中堅橋本光正を小内刈「一本」に仕留めて2人抜き達成

しかし翌日、3回戦からの東海大相模の道程は比較的順調。3回戦は五島高(長崎)を相手に大村が5人抜きを果たして快勝、4回戦の福井工大福井戦は先鋒大村の引き分けを受け、この試合から投入された次鋒平下麟太郎が相手方のポイントゲッター利根琢也を内股「一本」、さらに中堅橋本光正を内股、大内刈、小内刈と繋いだ鮮やかな「一本」で仕留めて2人抜き1分けで退場。続く中堅笹谷が北康平との最終戦を引き分けで締めて通算2勝0敗3分けの不戦二人(2人残し)でこれも快勝。5回戦の普成高(韓国)戦は2人差リードで迎えた終盤戦に身長185cm体重130kgの大将キムミンジョンの奮闘に遭遇、笹原と副将宮原崚汰が抜かれたが、大将石川智啓が出動して勝利。無事パートファイナル進出を決めた。

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6回戦、笹谷健が菅原孝希の内股を待ち構えて透かし「技有」

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塚本綾が宮原崚汰を攻めるも崩し切れず

[Fパート6回戦(パートファイナル)]
東海大相模高〇大将同士△日体大荏原高
(先)榎田大人△小内刈〇森大将(先)
(次)平下麟太郎〇袈裟固△森大将(先)
(次)平下麟太郎〇小外掛△内藤彪我(次)
(次)平下麟太郎△反則〇村上朋也(中)
(中)笹谷健〇横四方固△村上朋也(中)
(中)笹谷健〇縦四方固△菅原孝希(副)
(中)笹谷健△送襟絞〇塚本綾(大)
(副)宮原崚汰×引分×塚本綾(大)
(大)石川智啓

息詰まる抜き合い。笹谷健が村上朋也に一本勝ち、さらに今季日体大荏原活躍の因である菅原孝希を隅落「技有」からの縦四方固「一本」で退けて2人抜き、しかし畳に残った笹谷を塚本綾が「ボーンドアローチョーク」で抜き返してと、両軍のエースが見せ場を作って試合は非常な熱戦。

しかし最終戦は東海大相模の副将・宮原崚汰が、体重にして60kg近い体格差と後衛に神奈川県100kg超級代表石川智啓が控える盤面状況を十分理解し、図太く塚本の攻撃を無力化。ケンケンの小外掛で猛進する場面も見せたものの全体としては余計な動き少なく、塚本を攻撃圏に入れさせないまま手堅く試合を進める。塚本も間合いを取りながらチャンスを待つことが続きその技は散発、意外なほど静かな展開のままこの試合は引き分けとなり、ベスト8には東海大相模が勝ち残ることとなった。

【Gパート】
シード校:延岡学園高(宮崎)、新田高(愛媛)
6回戦(パートファイナル)進出校:延岡学園高(宮崎)、新田高(愛媛)

シード校は全国高校選手権3位の延岡学園と、今季全国的な実績は不十分ながらも少々意外なピックアップを受けた新田高(愛媛)の2校。このGパートとHパートは九州勢の勝ち上がりを推すべくやや他地域校の陣容が薄く、Dパートの中京学院大中京高と同様、新田のシードピックアップはこの組み合わせ上の需要に嵌ったゆえと読み解ける。

パートファイナルにはこの2チームが順当に進出。延岡学園は2回戦で柏高(千葉)に5勝1分けの不戦三人で勝利、3回戦では名古屋工高(愛知)を相手に1年生先鋒中西隆翔が5人抜きを果たすなど順調な滑り出し。対戦校のレベルが上がった4回戦は新庄東高(山形)を相手に5勝3敗の乱打戦となったが最後は副将吉野弘人が相手方のエース阿部拓馬にしっかり勝利して不戦一人(2人残し)で勝ち抜け、山場と目された5回戦の長崎南山高(長崎)戦は先鋒中西と次鋒棚橋慎之介だけで試合を終わらせ、4勝0敗1分けの不戦三人(4人残し)の快勝。上り調子で6回戦の畳に臨む。

一方の新田は、2回戦で京都共栄学園高(京都)を4勝1敗1分けの不戦三人(3人残し)、3回戦で広島国際学院高(広島)を3勝0敗2分けの不戦二人(2人残し)、そして山場の4回戦では修徳高(東京)を大将同士の延長戦の末に退けて実力を証明すると、5回戦はこれも大将同士の延長戦で明桜館高(鹿児島)に勝利。しっかりシード校の責任を果たしてパートファイナル進出を決めて来た。

[Gパート6回戦(パートファイナル)]
延岡学園高〇不戦三人△新田高
(先)岩佐海人〇大外刈△野並孝成(先)
(先)岩佐海人△横四方固〇亀尾一期(次)
(次)棚橋慎之介〇縦四方固△亀尾一期(次)
(次)棚橋慎之介〇支釣込足△井上昌也(中)
(次)棚橋慎之介〇裏投△熊坂光貴(副)
(次)棚橋慎之介〇小外刈△影浦力(大)
(中)小島孝太
(副)吉野弘人
(大)羽田野竜輝

延岡学園が新田を圧倒。この試合から投入された先鋒岩佐海人が1勝1敗で畳を降りると、ここまで抜き役を担って来た次鋒棚橋慎之介が大爆発。1人で残りの4人を、それもすべて「一本」で抜き去る活躍でこの試合は実に最終スコア不戦三人(4人残し)という快勝。

延岡学園は高校選手権に続きこの金鷲旗も準々決勝進出決定。同大会躍進の因であったエース羽田野竜輝を取り置いたまま、堂々たる勝ち上がりであった。

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4回戦、大牟田の先鋒竹市大祐が近大高専の北侑斗から小外刈「技有」。竹市は15人抜きでベスト16入りの立役者となった。

【Hパート】
シード校:国東高(大分)、大牟田高(福岡)
6回戦(パートファイナル)進出校:国東高(大分)、大牟田高(福岡)

全国高校選手権ベスト8の国東、今季の全九州大会を圧勝で制した大牟田と九州の有力2チームが確信的に配された、九州勢の確実な勝ち上がりを企図したパート。順当にこの2チームが6回戦へと進出した。

国東は中堅和泉川武蔵が防壁として良く効き、明誠高(島根)を4勝1敗1分けの不戦二人(3人残し)、豊国学園高(福岡)を5勝2敗0分けの不戦二人(3人残し)、宮崎日大高(宮崎)を4勝1敗1分けの不戦二人(3人残し)、そして5回戦では東北高(宮城)を3勝2敗2分けの不戦一人(1人残し)で下し、大将のエース中島大貴に1試合もさせないままパートファイナル進出決定。和泉川はこの間7勝1分けでチームの勝ち上がりの原動力となった。

大牟田は、抜き役に指名された1年生先鋒の竹市大祐が大活躍。2回戦の東海大菅生高(東京)戦、3回戦の関大北陽高(大阪)戦、そして4回戦の近大高専(三重)戦と小さい体をフルに使って、あくまで勝たずば下がらずと執念の15人抜き。5回戦は先鋒を竹市から立石泰勝に入れ替え、前橋育英高(群馬)を3勝1敗2分けの不戦一人(2人残し)で下して6回戦進出決定。

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国東の大将・中島大貴の猛攻を森健心が捌く

[Hパート6回戦(パートファイナル)]
大牟田高〇不戦二人△国東高
(先)立石泰勝〇片手絞△平山知義(先)
(先)立石泰勝×引分×下石悠生(次)
(次)森健心〇袈裟固△和泉川武蔵(中)
(次)森健心〇大内刈△島田恵介(副)
(次)森健心△大外刈〇中島大貴(大)
(中)谷所郁海×引分×中島大貴(大)
(副)森優心
(大)田中優大

大牟田はこの試合から大物の呼び声高い昨年度の全国中学校大会90kg級王者・森健心を次鋒に投入。先鋒立石が2人を賄い、この森が国東の前半戦の殊勲者である和泉川武蔵を袈裟固「一本」で抜いたところで試合の大勢は決した感あり。森は副将島田恵介も大内刈「一本」で抜き去り、国東の大駒・中島大貴を畳に引きずり出す。中島は森を大外刈「一本」で退ける貫禄を見せたが、大牟田に残るは谷所郁海、森優心、田中優大の実に3枚。さしもの中島も大牟田相手に4勝はハードルが高く、少々意気阻喪したか続く谷所戦を引き分けて試合終了。大牟田が不戦二人を以てベスト8進出を決めることとなった。

結果決まった準々決勝のカードは、

桐蔭学園高 ― 足立学園高
崇徳高 ― 長崎日大高
大成高 ― 東海大相模高
延岡学園高 ― 大牟田高

の4試合となった。

※ eJudoメルマガ版8月5日掲載記事より転載・編集しています。

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