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盤石の無失点試合、東海大が明治大下して2年連続22回目の優勝決める・第66回全日本学生柔道優勝大会男子レポート③決勝

(2017年7月19日)

※ eJudoメルマガ版7月19日掲載記事より転載・編集しています。
盤石の無失点試合、東海大が明治大下して2年連続22回目の優勝決める
第66回全日本学生柔道優勝大会男子レポート③決勝
■ 決勝
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照明ひときわ明るくなり、29年度学生優勝大会決勝の開始が告げられる

開示されたオーダー順は下記。

東海大 ― 明治大
(先)前田宗哉 - 野々内悠真
(次)太田彪雅 - 小川雄勢
(五)香川大吾 - 名垣浦佑太郎
(中)奥野拓未 - 金山天地
(三)ウルフアロン - 田中源大
(副)村田大祐 - 神鳥剛
(大)影浦心 - 川田修平

東海大の陣容は準決勝と同一。並びは微調整したが、いずれも前衛・中盤・後衛それぞれのブロック内での位置変更に留まり、ドラスティックな戦略変更はなし。前衛は固定、中盤ブロック内で香川と奥野の位置を入れ替え、後衛ブロックの村田と影浦の位置を入れ替えた。このコンバートに大戦略の方向を決定づけるまでの意味はなく、「相手にやりたいことをやらせない」保険的な采配と解釈する。目玉と考えるべきはむしろ固定ポジションにあり、特に次鋒太田彪雅と三将ウルフアロンの位置を動かしていない(太田は準々決勝から3戦連続)ことに注目したい。

この東海大のオーダー順変更が「3つに分けたブロック内での微調整」に留まることに、その自己評価の高さは端的。戦力比較から優位が明らかである以上、自軍にとってベストの戦い方をわざわざ崩す必要はないとの考えと解釈すべき。それぞれのブロックの仕事が明確であり、各々のブロック内の収支を全て「プラス」にすることで勝利に辿り着こうとする王道オーダー。まさしく強者の発想だ。

挑む立場の明治大としては東海大の配列を読んだ上で自軍のオーダーを組まねばならないが、ここで前述「太田とウルフの位置変更なし」が大きなトピックになる。明治大は東海大の「2枚固定」に誘因されるがごとく、ここに小川雄勢と田中源大を配することとなった。おそらくは相手方のエースをエースで潰す強気の戦い以外に勝利なしと読んで敢えて採った積極作戦であり、戦力差を考えればこれは正しい考え方。さらにもう1つ「読める」ポジションである先鋒戦には主将野々内悠真を突っ込んだ。これまで東海大独走の起爆剤となって来た前田の突貫を野々内の巧さで潰し、得点役の太田を小川で取って実質2点のダメージを与える。以降は凌ぎながら追加点を狙い、最大の警戒ポイントであるウルフは田中で止める。盤面から導き出される、明治大が為すべき勝利プランは実は明確だ。

大太鼓が打たれ、照明ひときわ明るくなって選手が畳の中央に集合。勝利するのは2年連続22回目の優勝を狙う東海大か、16年ぶりの覇権奪回を目指す明治大か。平成29年学生柔道日本一を決める大一番がいよいよ開始される。

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前田宗哉と野々内悠真の先鋒戦は相四つ横変形の形での攻防

先鋒戦は東海大・前田宗哉、明治大・野々内悠真ともに右組みの相四つ。互いに正面をずらした相四つ横変形の形で組み合うが、釣り手の位置にその対照的な意図が端的。横襟付近に手首を上げる前田は持ち味である思い切りの良い右大外刈を常に狙い、一方相手の顎下に拳を置く野々内は東海大の勢いを削ぐべくこの大外刈を撃たせまいと時に正中線を突いて、前田の技を殺しに掛かる。試合はこの形のままやや膠着し、44秒両者に消極の「指導」。

1分23秒、前田の右小内刈に野々内の巴投がかち合って野々内激しく畳に落ちる。前田にポイントが入ってもおかしくない場面だったが、これはノーポイント。野々内は釣り手を突いて間合いを取り続けるが、前田は二本持ったまま徐々に間合いを詰めて2分2秒に右小内巻込。釣り手を肩越しに入れ、野々内が振り返しに掛かると右前隅への巻き込みに切り替えるという面白い試み。野々内転がるがなんとか伏せて「待て」。

前田は引き手で襟を持ち、接近継続。一方の野々内は釣り手を首下に当て、引き手で前田の釣り手を絞ってあくまで大外刈を撃たせない。前田はこの釣り手を上げんとする準備行動に時間が掛かり、野々内は形勢悪しと見たか前技フェイントの小内刈で前田を崩していったん展開に楔を入れる。ここで主審は野々内の手数を評価し、3分18秒前田に消極的との咎で「指導2」。形勢優位ながらスコア的には後がなくなってしまった前田は激しく前進、小内刈で蹴り崩しつつ大技一発の機会を伺うが野々内は手堅く両手を突いて間合いを取り続け、そのままタイムアップまで辿り着く。先鋒戦は引き分けに終わった。

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太田彪雅と小川雄勢の次鋒戦。小川は腰を切り続けて優位を取りに掛かる。

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太田の左大内刈に小川大きく崩れる。手を着いて横から落ちるが太田が前進してめくり決め「技有」。

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残り時間僅か。太田の右内股に小川が大きく崩れ、小川逆転のチャンスは潰える。

次鋒戦は東海大・太田彪雅に明治大・小川雄勢のポイントゲッター同士がマッチアップ。得点必須の小川は体格を利して釣り手で上から奥襟を叩くが、下から背中を持った太田が出し投げの形で崩して脱出。小川は前技の形で腰を切る得意の優位確保に、引き手争いに混ぜ込んだ片手の大外刈と片手の足車と攻め続け、1分7秒太田に片手の咎による「指導」。

直後小川が上から二本持つと、太田は先んじて腰を差し込み、位置を相手の前方に入れ替えて右内股に打って出る。ここからいったん戻って再加速、斜めから鋭く右大内刈を入れると小川の巨体が大きく崩れる。小川体を捩じって体側から畳に落ちかかるが、太田許さず肩を決めながら胸を合わせて押し込み、これは「技有」となる。試合時間は1分20秒、学生王者・小川の崩落に場内大いに沸く。太田はそのまま横四方固に抑え込むが小川これは3秒で逃れ「待て」。

小川はここから追撃。十分な残り時間と太田への「指導1」累積というバックグラウンドを考えたか、いまひとつの「指導」を狙うべくまずは先に腰を入れての内股巻込で手数を取りに掛かる。まず奥襟を取り、腰を切って敢えて横腰を晒し、上からの圧に耐えかねた太田が腰を抱くとすかさず体を捨てて投げに掛かるという三段構え。得点の予感は決して濃くなかったが、いつか降って来るであろう体格を利した巻き込みはやはり脅威。太田少々これを受けすぎてしまい、3分1秒ついに2つ目の「指導」失陥。

双方ここから1分の戦いはまさしく決勝全体を規定する分水嶺。あと1つの「指導」で逆転勝利に辿り着く小川は引き手を持って突進、太田は退かず、敢えて先に腰を入れて右払巻込で迎撃する。弱気を見せれば即試合終了の太田はさらに先んじて背中を持ち、奥襟を叩いた小川に対して片手のまま「出し投げ」で前に振り崩してその圧を剥がす。小川にももう一段の強気が欲しいところだが「指導」を意識し過ぎたか仕掛ける左大外刈に左払腰はいずれも手数志向で、単に脚を振り上げている形にスケールダウン。

おそらく許される攻防があと1シークエンスのみとなった残り20秒、釣り手で脇を差した太田の選択は片手で放つ右内股。脚を揚げると同時に頭から体を投げ出す「崩し技」であったが、これがまともに効き、小川は大きく浮いて畳に伏せる。この攻防でどうやら勝負の行方がほぼ決定、太田が崩れた小川の背について寝技を展開して「待て」の声が掛かった時には残り時間僅か4秒。

試合はこのまま太田の優勢勝ちで終了。太田は両手の拳を握りしめて会心の表情、ポイントゲッター同士の対決を制した東海大がまず先制点を獲得。

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東海大・香川大吾と明治大・名垣浦佑太郎による五将戦。

五将戦は最重量級対決。東海大・香川大吾と明治大・名垣浦佑太郎ともに左組みの相四つ。双方組み合うも序盤は釣り手の揚げ合いの駆け引きが続き、名垣浦の左払腰を香川が姿勢良く弾き飛ばした57秒の攻防以外に大きな動きはなし。1分32秒には双方に消極的との咎で「指導」が宣告される。

中盤は双方まず引き手で前襟を掴んだ上で、釣り手で奥襟を狙い合う攻防が続く。名垣浦は左足車に左大外刈と組み際に技を積むが、そこを縫って2分過ぎから香川がついに相手の横襟を掴む。しかしここから釣り手をもう一段上げんとする準備行動に時間を掛け過ぎてしまうミス。結果釣り手は上がったものの時間を掛けた分名垣浦の側にも迎撃姿勢が醸成されており、香川は敏感にこの警戒を見て取った模様でなかなか技が出ない。このシークエンスは名垣浦が左大外刈でいったん切り、直後の2分28秒香川に消極の「指導2」。香川の停滞は明らかに攻撃の準備行動ではあったがあまりに長く時間を掛け過ぎており、この反則裁定は妥当。

あと1つの「指導」奪取で勝利となる名垣浦は左大外刈に左大内刈と次々技を積むが手数を意識したかいずれも軽く、奮起した香川は片襟の左大内刈を撃って展開を立て直す。残り時間32秒には支釣込足の撃ち合いから香川が前進、名垣浦場外に足を置いたまま止まって受けてしまい、場外の咎で2つ目の「指導」。

タイスコアとなったこの時点から試合は再度停滞。このままスコア動かずタイムアップとなり、五将戦は引き分けに終わった。スコアは1-0、東海大のリードは継続。

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金山天地が肩車、奥野拓未は動ぜずこれをしっかり潰す

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金山が畳を割り、「指導3」で中堅戦は決着

中堅戦は東海大・奥野拓未に明治大・金山天地がマッチアップ。金山はフットワーク良し、その特徴的な甲高い声でひときわ大きく気合いを発し続けるが体重差50キロというハンデを考えたか、組み合わず、周囲を回っては声を出すのみという形となる。焦れた奥野が両手で組み付くと左一本背負投のカウンターを合わせるケレン味を見せ、「待て」。

奥野は味方のリードを背に、金山の陽動に動じず落ち着き払って試合を展開。金山が右に座り込んだ肩車は姿勢よく潰し、片手の巻き込みにも慌てず前進を継続。場外まで追い込まれた金山は横走りに位置を変えようとするが奥野の前進は止まらず、1分38秒金山に場外の咎で「指導」。続く展開も奥野は組んで前へ、金山左右交互に切り離してこれを嫌うがそのまま場外まで出てしまい、1分58秒またもや場外による「指導2」を受けることとなる。

奥野は両襟を掴んで前進。金山は巻き込み動作でいったん剥がし、敢えて自分から抱き着くことで乱戦を狙うが奥野は落ち着いていなし、回り込んで金山に場外を背負わせると大内刈、小内刈で前進。金山耐え切れずまたもや畳を割り、2分34秒金山に3つ目の「指導」。結果金山の反則負けで試合は終了、東海大が得点を1つ伸ばしてこの時点でスコアは2-0となる。

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三将戦、田中源大勢い込んで奥襟を叩くが、ウルフアロンがすかさず支釣込足で剥がす

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ウルフの大内刈が「技有」、チームの優勝に直結する決定的なポイント

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ウルフはリード後も接近、離脱と自在の柔道で田中を翻弄

三将戦は東海大の主将ウルフアロンに最重量級の強者田中源大がマッチアップ。ウルフが勝てば東海大の優勝が決まるというこの大一番は、ウルフと田中ともに左組みの相四つ。

後のない田中がまず突進して奥襟を叩き、これをウルフが剥がすという攻防で試合がスタート。ウルフが背中、応じた田中が横襟と目まぐるしく釣り手の位置を変えながら支釣込足を撃ち合う展開が続くが、30秒過ぎに田中が大内刈を入れながら釣り手を確保。これで組み手を作ることに成功すると下方圧力を掛けながら頭の下がったウルフの脚を左足で蹴り崩す。ウルフ潰れて腹這いとなり、直後の42秒ウルフに「極端な防御姿勢」の「指導」。

ウルフはここから明らかに一段ギアを上げ、田中の奥襟を剥がしては積極的に組みに掛かり、妥協なく一方的な組み手を志向。1分10秒過ぎ、田中が引き手で袖を掴むとウルフは腕をグルリと回して剥がす。田中すかさず狙いを襟に変えて掴み直すがウルフはここで釣り手で上から背中、引き手で袖口を掴むほぼ完璧な組み手を作り出す。すかさずまず左内股、さらにいったん戻って左小内刈に触るなり本命の左大内刈に飛び込む。先輩羽賀龍之介ばりの三段攻撃、田中ガクリと後方に崩れ、ウルフは相手の上半身を超える勢いで乗り込んで投げ切りこれは「技有」。経過時間は1分14秒、残り時間は2分46秒。

もはや「一本」を奪うしかなくなった田中は突進するが、ウルフの真骨頂はここから。引き手と釣り手の出し入れに機を見ての足技で完璧に間合いをコントロール。常に一定の間合いを保ち、時折一瞬出来上がる密着はあくまで自身が寄せたい時のみ。田中はなかなか組めず、過程を飛ばして奥襟を取れば支釣込足で崩され、横にずれて間合いを作れば下から接近されてピンチに陥り、組み手を自らリセットせざるを得ない場面が続出。あまりに意図通りに運ばぬ試合に首を傾げる場面も見せた田中に対し、ウルフは緩急自在の試合運びでそのままフィニッシュ。結果試合はウルフの優勢勝ちで終わりスコアは3-0、2試合を残したこの時点で東海大2年連続の優勝が決まった。

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副将戦、最終盤に村田大祐が隅返を試みるも神鳥剛は予期して被さりノーポイント。

副将戦は東海大・村田大祐が右、前戦の殊勲者神鳥剛が左組みのケンカ四つ。引き手争いが続いて2分9秒双方に「指導」。神鳥は時折良い組み手を作り出すが村田は釣り手を深く掴んで待ちの体勢、後の先の気配を感じたか神鳥はなかなか攻められず試合は膠着気配。2分40秒に神鳥が左内股から体を捨てるが、村田これを受け止め、隅落でめくり返しに掛かる。予期していた神鳥も前のめりの体勢のまま場外へと逃れ、神鳥が中空に半ば体を浮かせたままの攻防は双方がアドボードに激突して終了、「待て」。
この攻防を経てさらに試合は停滞の感あり。残り12秒、村田は神鳥に上から組ませておいて横車回転の隅返を試みるが、これも神鳥は予期して被さり無力化、村田が正面から神鳥の体を抱き込んだ形で技が終わり「待て」。このまま試合は終了となり、副将戦は引き分けに終わる。

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大将戦、影浦心が背負投に小内刈と決定的な技を連発するが川田修平は驚異的なバランスでことごとくかわす

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大将戦は東海大・影浦心、明治大・川田修平ともに左組みの相四つ。チームの勝敗が既に決した最終戦ということもあって終始攻め合うような激しい試合にはならなかったが、それでも機を見て影浦が的確に取りに掛かる。1分10秒に突如スピードアップして放った片襟の左背負投は誰もが「一本」を想起するものだったが、川田驚異的なバランスと体の長さを利して腹這いで耐え切り「待て」。2分16秒にも影浦が左背負投から繋いだ左小内刈で大きく崩すが、川田またもや落下しながら身を捩じって腹這い、これもノーポイント。
直後川田に「指導」ひとつが与えられたが、以降試合は大きく動かず。この試合は引き分けで全7試合が終了し、最終スコア3-0で東海大の優勝が決まった。

東海大 3-0 明治大
(先)前田宗哉×引分×野々内悠真
(次)太田彪雅〇優勢[技有・大内刈]△小川雄勢
(五)香川大吾×引分×名垣浦佑太郎
(中)奥野拓未〇反則[指導3](2:34)△金山天地
(三)ウルフアロン〇優勢[技有・大内刈]△田中源大
(副)村田大祐×引分×神鳥剛
(大)影浦心×引分×川田修平

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試合終了直後の東海大の面々。喜びよりは達成感が感じられる、一種淡々とした表情が印象的だった。

優勝候補一番手の東海大が隙を見せずに優勝まで辿り着いた、その総仕上げと呼ぶべき試合。明治大としては次鋒戦の勝利でこのシナリオを揺らしたいところだったが、東海大が明治大の得点ポジションを逆に勝利で潰したこの次鋒戦を以て早くも結果が見えた一番だった。

東海大の選手たちはその素材の良さはもちろん、試合運び、技術の練度、そしてなにより「勝利」という行動に対するリテラシーの圧倒的な蓄積量を以て、他校とは明らかに一段違う位相にあった。スカウト力になにより抜群の育成力、そして極めて現実的な勝利の処方箋の蓄積とちょっと隙を見出すのが難しいほど、完成度が高かった。これはむしろ今代チームというより東海大柔道部の「育成機関」としての完成度の高さと解釈すべきであり、よっておそらく大学柔道界はこれからもしばらく東海大一強がベース、その年度に良いチームを作ったチームが順繰りにライバルとしてこれに挑むという構図が続くのではないだろうか。

明治大は生の戦力だけで考えれば東海大に伍して優勝を争うだけのものがあったはずだが、育成と戦術的練度でその後塵を拝した。選手構成における階級の凹凸、比較的オーソドックスな技術構成と良くも悪くもクラシカルな柔道が同大の持ち味だが、現代の柔道でこのスタイルのまま勝ち抜くには(少々陳腐な表現になって恐縮だが)何よりまず相手の想像を超えるような気迫が必要ではないだろうか。単に競技力が高いということでなく、相手に根源的な恐怖を与えるような気迫、そこから相手が一歩下がることで明治らしい王道の技が生きる状況こそが、クラシックスタイルの明治大に試合の流れを傾けるに何より必要なものではないかと愚考する。今大会でこれが見られたのは準決勝で神鳥剛が向翔一郎を破ったただ一試合のみ。エースの小川を筆頭に、技術比べ、純戦力比べの帰結を以て勝利に辿り着かんとしたかのような一種淡々とした試合ぶりはなんとしても気に掛かる。小川、田中、川田と同学年のスター選手が揃って入学し「学生優勝大会の勝利は間違いなし」と噂された3年生世代が来季の主力だが、以後の展望決して明るいとは言えない内容だったのではないだろうか。

特に大学1年から学生体重別を2連覇して将来を嘱望されている小川にとっては、ここ数か月顕著に感じられた下降ベクトルが決定的づけられた大会。準決勝では「参った」を強いられて一本負けの屈辱を舐め、決勝では年下で最重量級のライバルである太田に投げられてチーム敗戦の因となってしまった。猿渡琢海監督が大会後に「何より投げる技を身に付けなければ」と評した通り、その閉塞の因の一は技術的なものにある。準々決勝ではジュニア世代のホープ磯村亮太から払巻込で「技有」を奪っているが、この投げにその課題は端的。この技は幾度も巻き込みと掛け潰れを繰り返した末、「返せるかもしれない」と色気を出した磯村が釣り手側に移動した瞬間に体を捨てて巻いた、いわば体格を利した「嵌め技」で、組み立てと崩しが生きた能動的な技術ではなかった。これでは国際大会に立ちはだかるパワー自慢の強敵たちに勝利していくことは難しいだろう。より「投げによる決着」を推奨する新ルールの影響もあり、陣地確保を主軸に置いて来た小川の柔道がいよいよ方向転換を迫られているという印象。大物・小川がこれからどのようなルートで上昇を企図するのか、注目して見守りたい。

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優勝の東海大

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東海大・上水研一朗監督が宙を舞う

【入賞者】
(エントリー62校)
優 勝:東海大
準優勝:明治大
第三位:筑波大、日本大
優秀校:日本体育大、近畿大、国学院大、国士舘大

優秀選手:
ウルフアロン、太田彪雅(東海大)、田中源大、神鳥剛(明治大)、
佐々木健志(筑波大)、ダニエルディチェフ(日本大)、松井海斗(日本体育大)、満井均士(近畿大)、二見省吾(國學院大)、飯田健太郎(国士舘大)

東海大・上水研一朗監督のコメント
「ホッとしました。選手の自覚に助けられました。何より怖かったのは、良い選手がいて、意識高く稽古に取り組めばそれで勝てるという安易な考え方が蔓延すること。それは前提条件でありいわば当たり前のことで、勝負の厳しさが出て来るのはそこからです。ですので『隙のない戦い、隙のない選手』をテーマにやってきましたが、これは単なる『良い稽古』とはまったくの別もので、意識高く良い稽古をすれば勝てるというような幻想的な、空想的な考え方をまずやめようと話しました。プライドが高い選手たちでもあるので、なかなか難しかったですが結果的には上手くいったのかなと思います。(オーダー順に用兵の妙がありました。8連覇を狙っていたころと、何か変わったと自覚するところはありますか?)あの時(連覇が途切れた時)は自分自身が追い詰められていました。自分のキャパシティがなかったですね。早くこの勝負を終わらせたいと思ってしまっていて、そういう風にちょっとした気持ちの余裕や大きな器がないと、良い作戦が閃かない。突き詰めきれないまま、もうこれでいい、とオーダーを出してしまった。その自分の情けなさと向き合わないと、選手に求めている高い水準と釣り合わない。そのあたりは意識しています。(-以前監督は、選手を動物に例えて『肉食獣も必要だし、ゾウやカバもいないと勝てない』と仰っていました。ウルフ選手はどんな動物?)オオカミ、一匹狼ではなく集団を纏めることの出来るオオカミです。羽賀(龍之介)のような絶対的なキャプテンシーとはまた別のやり方で、良くチームをまとめてくれました。(-あらためて決勝と、この大会の勝因を総括してください)さきほど言った2つに尽きます。1つは、隙のない戦いをするという目標がしっかり出来たこと。もう1つは質の良い稽古が出来たこと。『量より質』と言い続けましたし、量はもちろんのこと質を追求しないと勝てない。意味のない、ただ漠然とガムシャラに時間を使うような稽古はするなと繰り返し言ってきました。『量は質の積み重ね』です。」

明治大・猿渡琢海監督のコメント
「うちのポイントゲッターが逆に取られて、試合の流れがまったく変わってしまった。しかしそれ以上に、そもそも力の差があったとも感じています。次鋒起用は太田選手か、少なくも重量級の選手が来ると踏んでいましたが誰が来ても同じ。小川が勝たないとチームが機能しないところで、負けてしまったのですから完敗です。(-小川選手に関しては?)技術的にこれからやらなければいけないものがたくさん見つかりました。研究されてしまって思うような柔道が出来ていない。『しっかり持って一本を獲る柔道』を突き詰める、これに尽きると思います」

東海大・ウルフアロン主将のコメント
「4年生ということでかなりプレッシャーを感じるところもあったのですが、最高で最強の仲間たちと、最高の監督と一緒に試合を出来て、勝てたので本当に嬉しいです。(-今のチームはどんなチームですか?)サファリパークみたいですね。似たような人が1人もいなくて、そしてみんな動物みたいな感じです。(-チームの皆さんに一言?)えーと、最高です(笑)」

東海大・太田彪雅選手のコメント
「(-決勝、小川雄勢選手との試合についてお願いします)高校時代に春の選手権で団体、個人と負け、大学ではこれが初対戦。監督からは『実績はお前のほうが上、学年は上だけどそろそろ決着をつけておいたほうがいい』と言われて臨みました。自分としては『指導』ではなく投げて勝つつもりで、勝算もありました。大学に入ってから心技体ともにグレードアップ出来ていると思います。今日は5戦全勝で優勝に貢献出来て良かった。次はまずユニバーシアードで優勝、そして講道館杯優勝を目指します」



文責:古田英毅

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