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東海大が隙を見せずに勝ち上がり、明治大はエース小川が苦杯も逆転で決勝進出決める・第66回全日本学生柔道優勝大会男子レポート②準決勝

(2017年7月19日)

※ eJudoメルマガ版7月19日掲載記事より転載・編集しています。
東海大が隙を見せずに勝ち上がり、明治大はエース小川が苦杯も逆転で決勝進出決める
第66回全日本学生柔道優勝大会男子レポート②準決勝
■ 準決勝
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先鋒戦、筑波大・佐々木健志が前田宗哉に「巴十字」で食いつく

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前田が佐々木から大外刈「一本」

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次鋒戦は太田彪雅が大橋賢人から右内股で「技有」奪取。

東海大 6-1 筑波大
(先)前田宗哉〇大外刈(0:30)△佐々木健志
(次)太田彪雅〇優勢[技有・内股]△大橋賢人
(五)奥野拓未△小外刈(3:06)〇田嶋剛希
(中)香川大吾〇横四方固(3:51)△田中英二郎
(三)ウルフアロン〇優勢[技有・小外刈]△根津信太
(副)影浦心〇優勢[技有・支釣込足]△石川竜多
(大)村田大祐〇優勢[技有・内股返]△末木貴将

筑波大はここまで全試合一本勝ちでチームを牽引して来た佐々木健志を先鋒に投入。さらに次鋒に大橋賢人、五将に田嶋剛希と爆発力ある試合巧者を3枚並べて前衛に突っ込む野心的な布陣。

先鋒佐々木はやる気十分、巴投、さらに「巴十字」で前田宗哉を揺さぶりに掛かるが、前田はまったく動ぜず立ったまま捌いて「待て」。直後、前田は組み付くなり得意の右大外刈。引っ掛け、乗り込み、佐々木を真裏に刈り倒す迷いのない一撃。前田の刈り込みに剛体となった佐々木はブリッジの形のまま激しく畳に落下、これは文句なしの「一本」。試合時間は僅か30秒、この1戦で以後の様相はほぼ決した。

次鋒戦は太田彪雅が巧者大橋賢人を組み止め、小外刈で転がしてと攻め中盤まで「指導1」確保。しかし先鋒戦の勝利によるリードを背にした太田は中盤以降意外なほど大人しく、後の先を狙いながら一種鷹揚な柔道。序盤に内股透など持ち味の際の巧さで会場を沸かせた大橋もこれでかえって減速の感。このまま引き分け濃厚と思われたが残り6秒、太田は膝を着いた大橋を引きずり回してその体を伸ばし、内股を捩じ入れて「技有」獲得。そのまま崩袈裟固で抑え掛けた形で試合は終了、太田の優勢勝ちで東海大は早くも2点をリード。

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五将戦、筑波大・田嶋剛希が奥野拓未から小外刈「一本」

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中堅戦、香川大吾が田中英二郎から背負投「技有」

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三将戦、ウルフアロンが根津信太から大内刈で3つ目の「技有」

五将戦は筑波大・田嶋剛希が久々本領発揮、体格差はむしろ得手とばかりにケンカ四つの巨漢・奥野拓未を右小内刈、右内股に左背負投と攻め続けて翻弄、3分6秒には右小外刈で奥野の巨体を真裏に転がし「一本」。

これで筑波大が1点を返し、スコア的には2-1の小差。まだまだ試合はわからないはずだが、しかし試合巧者3枚をまとめて投入した、以後の戦いに向けて「荒れた場を形成する」ことが最大の眼目であったはずの前半戦を終えて1勝2敗のビハインドというこの状況は、筑波大としてはミッション成功とは言い難い。盤面はスコア以上に東海大の側に振れる。

中堅戦は東海大・香川大吾が田中英二郎を前進圧力で後退させ、序盤に「指導1」をリード。終盤双方に「指導」が与えられて田中にプレッシャーが掛かる状況が出来上がると、香川はすかさず右背負投で勝負に出て「技有」を獲得。そのまま胸を合わせて横四方固「一本」、スコアはこれで3-1となる。

三将戦はウルフアロンが左相四つの根津信太をまさしく圧倒。釣り手で背中を抱えての送足払で浮かせてペースを掴むと、釣り手を深く持って来た根津の体を呼び込みながら左小外刈を当てて浴びせまず「技有」奪取。さらに内股「技有」、大内刈「技有」、横四方固「技有」と自在に攻め続け、そのまま優勢勝ちを果たす。ある意味一本勝ち以上にインパクトの大きいこの試合で東海大は4点目を獲得、この時点で決勝進出を決定。

副将影浦心は強敵石川竜多と「指導2」ずつを失うが、終盤前向きに伏せかけた石川の体をコントロールして浴びせ支釣込足「技有」獲得。大将戦も村田大祐が末木貴将から内股透「技有」で優勢勝ちを果たし、最終スコアは6-1の大差となった。

前衛に佐々木、大橋、田嶋と攪乱要素のある試合巧者を配し、急成長中の田中に加えて根津と石川の大型2枚で得点ブロックを形成、最後に軽量の末木でまとめるという筑波大の戦略は悪くなかった。むしろこれしかない良策であったとすら言える。しかし東海大の戦力はあまりに分厚く、試合は先鋒戦から大将戦まで常に東海大がリードしたまま進行。筑波大の前衛3枚は形勢不利でも一発逆転の要素を孕む業師ばかり、しのいでいるように見えるが終わってみれば得点こちらにありというしぶとい試合を着々続けることで東海大を崩すシナリオも十分ありえたが、ビハインドを負って相手に精神的余裕がある状態ではこれは難しい。筑波大にとっては先鋒戦の早期敗退が堪えた一番、前田の一本勝ちが非常に効いた試合だった。

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準決勝開始がアナウンスされる

日本大 - 明治大
(先)緒方景太 - 田中源大
(次)山下恭平 - 金山天地
(五)木元拓人 - 名垣浦佑太郎
(中)佐藤和哉 - 野々内悠真
(三)ダニエルディチェフ - 小川雄勢
(副)向翔一郎 - 神鳥剛
(大)一色勇輝 - 川田修平

明治大の得点ポイントは先鋒戦と三将戦。田中源大と小川雄勢の重量級2枚は絶対値の高さはもちろん、相手との力関係までを考えても十分得点が織り込めるはず。

一方の日本大は中堅佐藤和哉と一色勇輝に得点役を担わせたいところだが、佐藤には野々内悠真という試合をまとめることが得手の巧者が配され、一色にも100kg級の強者川田修平がマッチアップして得点へのハードルはなかなかに高い。

両軍の抜き役である4人が絡まない3試合は、力的にも相性的にも総じて拮抗。敢えて言えば次鋒戦と五将戦は明治大やや優位、選抜体重別90kg級王者の向翔一郎と全日本ジュニア90kg級王者・神鳥剛の同階級対決となった副将戦は実績を考えれば向がやや有利だが、これも机上計算で得点を織り込むレベルの差ではないと考えられる。

明治大としては田中、小川の得点をテコに残り試合を手堅く戦い、出来得れば名垣浦佑太郎が2学年下の木元拓人とマッチアップする五将戦で1点を積み上げて安全圏内までスコアを伸ばしたい。それぞれがミッションをしっかり果たせば結果としての決勝進出が見えてくるはずの配置だ。

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明治大の先鋒・田中源大が緒方景太に圧力

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山下恭平と金山天地の次鋒戦

一方の日本大はどのポジションでも単純な力関係から導きだされる結果の「一つ上」を目指さねばならない少々苦しい盤面。田中と小川に仕事をさせてしまえば勝利に必要な得点は実に「3」以上。佐藤と一色が仕事をすることはもちろん、相手方の得点を減殺する事、そして何より前述「ポイントゲッターが絡まぬ3ポジション」のいずれかで順行運転の結果を越える仕事が欲しい。盤面配置から予想されるキーマンは佐藤や一色ではなく、むしろ拮抗ポジションに配された向、山下、木元の3人だ。


先鋒戦は田中源大が1年生の緒方景太を圧倒、前進掌握を続けて緒方から「取り組まない」咎の「指導」を奪うと、直後自信満々に大内刈。ケンケンで追い込んで緒方を畳に落とし、決定的な「技有」を獲得する。田中は以降も支釣込足で細かく相手を蹴り崩し続けて隙のない柔道、「指導2」まで失った緒方は田中の圧に思わず首抜きの反則を犯し、3分15秒3つ目の「指導」が宣告されて試合終了。明治大、まずしっかり1点を先制。

次鋒戦は明治大・金山天地が独特の甲高い声で度々気合いを入れてやる気十分。肩車に片手の内股、一本背負投と持ち味である変調の技を連発するが山下恭平は立ち位置をずらし、あるいは背筋を伸ばして突き飛ばしてと落ち着いて対応。この試合はそのまま引き分けに終わる。

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佐藤和哉が迫力の攻撃も、野々内悠真が必死で粘る

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ダニエルディチェフが小川雄勢を潰し、背中からその腕に食いつく

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粛々手順を進めたダニエルに小川抗えず、腕挫十字固「一本」

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場内はこの日一番の大歓声に包まれる

重量級同士がマッチアップした五将戦はケンカ四つということもあり、木元拓人と名垣浦佑太郎の攻撃はともに威力偵察の域に留まる感あり。この試合も引き分けとなる。

そして日本大にとって最初の大きな分水嶺となる中堅戦。得点必須の使命を担う佐藤和哉は右相四つの野々内悠真の組み手を突破して支釣込足、足車で攻め、引き手で襟を掴む接近志向。そして野々内の粘りの前に引き分けの匂い漂い始めた終盤にその積極性がついに結実、作用足を引っ掛けて強引に乗り込み、右払腰で「技有」を得る。以後を考えればここで佐藤が「一本」まで辿り着くか、はたまた優勢勝ちに留まるかは直接チームの勝敗を左右する一大ポイント。観客かたずを呑んで以後の攻防を見守るが、ここは野々内が「技有」優勢までに抑えて粘り切る。日本大は1点を返すことに成功したものの、佐藤を消費して同点にたどり着けなかったことはなんとしても痛い。スコア1-1、内容差で明治大がリードして試合の襷は明治大のエース・小川雄勢が登場する次戦へと引き継がれる。

迎えた三将戦は小川が左、ダニエルディチェフが右組みのケンカ四つ。試合開始早々、ダニエルが釣り手を上から入れて圧力を掛けると、前にいなされる形となった小川は潰されて腹這いに伏せる。

この安易な判断が小川の致命傷。背中についたダニエルは左腕で絞技を晒し、誘われて開いた小川の右脇から右腕を両手で確保、ヤスケビッチ式の回転式腕挫十字固を試みる。腹に入った右脚を支点にグルリと回されてしまった小川、着地と同時にブリッジの形で力を込めて相手を剥がそうとするがダニエルは離れず、左脚で頭を跨ぎ、両手で手首にアプローチしてと粛々手順を進める。歓声と怒号が交錯する中、小川が自らの手首と組み合わせた指がついに剥がされ、その腕が完全に伸ばされる。ややあって小川たまらず「参った」を表明。日本大ベンチの選手は総立ち、拳を突きあげる。

ダニエル、学生体重別2連覇の小川を屈服させて見事な一本勝ち。日本大はこれでスコア2-1と逆転、相手のポイントゲッターを自軍の得点で潰す最高の形で明治大に与えたダメージは実質「2」、ここで勝負の針は日本大の側に大きく振れる。以降の盤面を考えれば、日本大の勝利ほぼ確定とすら考えて良い状況。

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神鳥剛が突進、まっすぐ下がった向翔一郎は早々に場外「指導」失陥

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向は危うい掛け潰れを繰り返しペースを取り戻せず

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主審が合議を招集、事態を悟った向は愕然

迎えた副将戦の同階級対決は日本大・向翔一郎と明治大・神鳥剛ともに左組みの相四つ。拮抗が予想されたカードだが、この試合は神鳥が凄まじい気迫で前進に次ぐ前進。これに戸惑ったか明らかに出遅れた向は早々に場外の「指導」失陥、得意の「ハバレリ」で反撃を試みるがこの大技にも神鳥まったく動揺せずに激しく前進、足技に袖釣込腰と一方的に技を積み続け、残り2分13秒を残して向には再び場外の「指導」が宣せられる。

あと1つの「指導」で反則負けとなる向、ひとまず技を積んで苦境を出さねばと前技を繰り出すが巻き込みの形で早々に掛け潰れること2度。偽装攻撃が宣されても仕方がない非常に危うい試合運びであり、さらに潰れた後に伏せたまま待ちに出て神鳥の「腰絞め」を食うピンチを迎えてしまう。絞めが効いたかと思われる体勢だったが、神鳥突如自ら立ち上がって「待て」。主審はこの絞めで向が落ちていたかどうか、あるいは前段の向の掛け潰れの偽装攻撃の有無を確認するためか試合を止めて合議。向はギリギリの状況に陥ってしまうが、ここはそのまま試合再開となり、なんとか命拾いする。

しかし首の皮一枚で畳に残ったはずの向はここでまたもやミス。釣り手で背中越しに帯を掴むが、対抗して密着して来た神鳥の対応に戸惑ったか、即座に技を仕掛けねばならぬこの形で技のタイミングを測りながらそのまま待ちに出てしまう。

言い訳の出来ない失敗。主審的確に試合を止めて、向に3つ目の「指導」を宣告。試合時間は2分46秒、神鳥の勝利でこの試合は終了。これでスコアは2-2となり明治大が逆転、前戦終了時点で勝利に片手が掛かっていた日本大は一気に奈落に突き落とされる。

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一色勇輝は川田修平を相手に前半は足車、後半は抱きつきの密着技を軸に猛攻

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一色の技に川田度々大きく崩れるが、あくまでポイントは許さず

大将戦は日本大・一色勇輝が右、明治大・川田修平が左組みのケンカ四つ。勝利以外に選択肢のない一色はケンケン内股に大外刈、さらに取り味ある右足車と次々大技を繰り出すが川田ことごとく耐え、機を見ては内股に大内刈と大技を打ち返して展開に差をつけさせず。一色が大内刈から繋いだ内股で川田が激しく飛ぶ場面もあったが、これも巧みに伏せてノーポイント。残り時間が少なくなると一色は体ごと突進して背中を抱え、一発勝負に打って出る。この迫力の波状攻撃に川田は大消耗、最終盤はあわや失点という落下あり、抱かれるなり前に潰れる場面ありと危ういシーンが続出したがなんとか耐え切ってフィニッシュ。この試合は引き分けとなり、結果2-2の内容差で明治大の勝利が決まった。


明治大 ②-2 日本大
(先)田中源大〇反則[指導3](3:15)△緒方景太
(次)金山天地×引分×山下恭平
(五)名垣浦佑太郎×引分×木元拓人
(中)野々内悠真△優勢[技有・払腰]〇佐藤和哉
(三)小川雄勢△腕挫十字固(0:36)〇ダニエルディチェフ
(副)神鳥剛〇反則[指導3](2:46)△向翔一郎
(大)川田修平×引分×一色勇輝

今大会のベストバウト。勝敗の行く末が両軍の間を激しく行き来した、非常にエキサイティングな試合であった。特に三将戦のダニエルディチェフの腕挫十字固「一本」は29年度大会を象徴する絵として語り継がれること間違いなし、この日もっとも武道館が熱くなった瞬間であった。

小川が一本負けを喫するという非常事態をすかさず、それも「一本」相当のスコアで勝利するという最高の形で収拾した神鳥の奮戦が明治大勝利直接の因。チーム全体の地力の高さで勝っていたことはもちろんだが、神鳥のキャリア最高とも言える気合いの入った戦いぶりがチームを救った。向が選抜体重別王者となり、「挑む」という自身の立場が明確であったこと、そして勝つしかない状況が背中を押したのは間違いないが、昨年「結果が出なければ何も残らない」と割り切り、畳にしがみつくような戦いの末に3戦連続の「指導」差勝ちで全日本ジュニア王座を獲得した経験と、そこで得た自己理解が大きかったと見る。

佐藤に「一本」取らせなかった主将野々内の奮戦とこの神鳥の大仕事、エース以外の2枚の働きが非常に効いた試合だった。

敗れた日本大はダニエルの奮戦がありながら決勝進出に届かず。エース佐藤和哉で「一本」が欲しかったのは勿論だが、なんと言っても痛かったのは副将戦。引き分けさえすればチームの勝利ほぼ確定という状況で、それも選抜体重別王者が同階級の選手に、しかも審判の判断に左右されて失陥に時間を要する消極の反則ではなく一瞬でスコアを失ってしまうテクニカルファウルを短い時間で3つ続けるという形で星を落とした向の試合はかばいようがない。長丁場でシナリオ分岐の多い7人制団体ではちょっと珍しいほど明確な「戦犯」だ。審判があと1つの「指導」付与を巡って合議した直後に帯を握り続けるという判断の悪さ、仲間が相手のポイントゲッターを狩るという大仕事を果たした直後に襷を受けながらメンタルで相手に遅れを取るという電流の通りの悪さ。選抜体重別優勝で以後の展望大きく開けた直後だったが、大きく評価を落とした大会であった。

とはいえ日本大の前途は暗くない。カテゴリ最強選手小川を狩って来年度に楔を打ち込んだダニエルと迫力の攻めを見せた大物・一色の3年生2人に、質の良い柔道で伸びしろを感じさせる2年生の重量選手木元、最終戦までレギュラーを務めた緒方をはじめとする登録の1年生3人とこの先のチームの形が早くも、それも上昇カーブで顕在化している。敗れてなお、得たもの多いはずの奮戦であった。

結果決まった決勝カードは東京学生優勝大会決勝の再現、

東海大 ― 明治大

となった。




文責:古田英毅

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