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グランドスラムエカテリンブルグ2017・最終日女子3階級レポート

(2017年6月1日)

※ eJudoメルマガ版6月1日掲載記事より転載・編集しています。
最終日女子3階級(70kg級、78kg級、78kg超級)レポート
グランドスラムエカテリンブルグ2017
■ 70kg級・躍進中のファンダイクがツアー初優勝で力を証明、新添左季は準決勝で苦杯
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70kg級決勝、サンネ・ファンダイクがアレナ・プロコペンコから小外掛「技有」

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70kg級入賞者。左からプロコペンコ、ファンダイク、ベルンホルム、新添。

(エントリー24名)

【入賞者】
1.VAN DIJKE, Sanne(NED)
2.PROKOPENKO, Alena(RUS)
3.BERNHOLM, Anna(SWE)
3.NIIZOE, Saki(JPN)
5.BERNABEU, Maria(ESP)
5.SAMARDZIC, Aleksandra(BIH)
7.PEREZ, Maria(PUR)
7.PORTELA, Maria(BRA)

いま欧州の70kg級戦線でもっとも注目を浴びている新鋭、第2シードのサンネ・ファンダイク(オランダ)が見事優勝。初戦からファニー・エステルポスヴィト(フランス)とマッチアップするという厳しい配置だったが、この試合を大外返「技有」で勝ち抜き、またもや難敵と顔を合わせた準々決勝ではマリア・ベルナベウ(スペイン)を右払腰「技有」で退ける。準決勝は前戦をマリア・ポーテラ(ブラジル)の反則(関節を極めながら体を捨てた行為による)で勝ち抜いたダークホース、アレクサンドラ・サマルジッチ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)を小外掛「一本」(2:24)で一蹴。決勝はこれも前戦で新添左季(山梨学院大3年)の自滅に近い形で星を拾ったアレナ・プロコペンコ(ロシア)を相手に、「技有」ビハインドから小外掛「技有」を奪回、そのまま横四方固に抑え込んで逆転の一本勝ち(4:00)で優勝を決めた。

ファンダイクは4月の欧州選手権で優勝してシーンの一線に躍り出たばかりの21歳。いわば「受賞後第一戦」であるこの大会でワールドツアー初優勝も成し遂げ、その実力を証明した形だ。同国のエースであるキム・ポリングが五輪後いまだ復帰せず、かつ今大会では63kg級にエントリー(直前で取り消し)している状況を考えると、この選手が欧州勢の主役を張るシナリオも現実味を帯びてくる。ポリングのパワーのような尖った特徴はまだないが、以後しっかりマークしておきたい選手。

日本代表の新添は不首尾。初戦で強敵リンダ・ボルダー(イスラエル)を大内刈「技有」で下し、続く準決勝では相手のマリア・ペレス(プエルトリコ)が頭を突っ込む技を続けて自滅の「反則負け」とここまではよかったが、準決勝で躓いた。

相手は無名と評されて然るべきアレナ・プロコペンコ。技術に大きく勝る新添はケンカ四つの相手を内股で圧倒的に攻めるが、深く入っても投げ切れない状況に平常心を失ったか、いわば勝手に煮詰まり始めた感あり。「指導2」奪取後に作戦を切り替えて露骨に相手の場外を狙うが、これは当然ながら新添の押し出しの「指導」。そして直後、またもや内股で攻めこむと相手に腰を抱かせたまま場外に歩き出でるミス。プロコペンコが腰を抱いたまま体を捨てて谷落を放つと新添ひっくり返り「技有」。これでスコア逆転、負ける要素のない試合を落として本戦トーナメントから脱落することとなった。受けられ続けるうちに精神的に自家中毒を起こし、かつ圧倒的に攻めていることで危機感がマヒしたというミスの乗算。柔道自体の強弱とは異なる、試合構成力やセルフコントロール、試合展開のシミュレーションといった「知」の部分で大きく隙を見せた一番だった。

準々決勝以降の結果と、決勝および日本代表選手全試合の戦評は下記。

【準々決勝】4
アレナ・プロコペンコ(ロシア)○裏投(1:18)△アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)
新添左季○反則(2:47)△マリア・ペレス(プエルトリコ)
※頭突っ込みによる反則
サンネ・ファンダイク(オランダ)○優勢[技有・払腰]△マリア・ベルナベウ(スペイン)
アレクサンドラ・サマルジッチ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)○反則(1:09)△マリア・ポーテラ(ブラジル)
※関節を極めながら体を捨てたことによる反則

【準決勝】
アレナ・プロコペンコ(ロシア)○谷落(3:51)△新添左季
サンネ・ファンダイク(オランダ)○小外掛(2:24)△アレクサンドラ・サマルジッチ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)

【敗者復活戦】
アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)○腕挫十字固(2:43)△マリア・ペレス(プエルトリコ)
マリア・ベルナベウ(スペイン)○不戦△マリア・ポーテラ(ブラジル)

【3位決定戦】
アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)○腕挫十字固(2:47)△アレクサンドラ・サマルジッチ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)
新添左季○優勢[技有・小外刈]△マリア・ベルナベウ(スペイン)

【決勝】
サンネ・ファンダイク(オランダ)○横四方固(4:00)△アレナ・プロコペンコ(ロシア)
右相四つ。試合開始から横変形での膠着状態が続き、46秒双方に「指導」。直後の1分15秒、プロコペンコは組み際に釣り手を肩越しに叩き入れ引込返。大きく崩れたファンダイクは体側から落ち、確認の末に少し遅れて「技有」が宣告される。追い上げを図りたいファンダイクだが、プロコペンコに釣り手を落とされて攻撃のきっかけをつかむことができず、1分47秒には反対に2つ目の「指導」を失ってしまう。プロコペンコの「技有」リードで迎えた3分32秒、横変形で相手の攻撃をブロックした咎でプロコペンコにも2つ目の「指導」。柔道着を正すためにしばし試合が中断した後、ファンダイクが組み際に背中を抱いて右小外掛で勝負に出る。前技フェイントから潜り込むようにして体を捨てるとプロコペンコは勢い良く背中から落ちて「技有」。ファンダイクは投げ終わりの姿勢のまま横四方固で抑え込み「一本」を獲得する。劇的な逆転勝利でファンダイクが欧州選手権に続く優勝を手にした。

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準決勝、「指導2」リードの新添はプロコペンコから谷落を食らってまさかの「技有」失陥

【日本代表選手全試合戦評】

新添左季(山梨学院大3年)
成績:3位

[2回戦]
新添左季〇優勢[技有・大内刈]△リンダ・ボルダー(オランダ)
新添が左、ボルダー右組みのケンカ四つ。ボルダーは強敵だが新添は間合いが噛み合う模様、ノーステップから足を差し入れ左大内刈、左内股で攻め続ける。ボルダー持ち前のしぶとさでことごとく伏せて耐えるが、新添のケンケン内股に大きく崩れた直後の1分37秒に「指導」失陥。新添は以降も投げ切れぬながらも攻め手を緩めず、ボルダーは組み際の左小内巻込に活路を求めるも新添はことごとく透かして潰し危なげなし。残り30秒を切ったところで新添が引き手で袖、釣り手で下から横襟を掴む万全の形を作り出す。新添ここから大内刈を押し込むとボルダー尻から激しく畳に落ちる。あるいは尻餅との判断でポイント見送りかとも思われたがこれは「技有」。残り時間は25秒、これまで動きの硬さも見られた新添だが、ポイント奪取で平常心を取り戻したか伸びやかな内股巻込も見せ、危なげなくタイムアップ。

[準々決勝]
新添左季〇反則(2:47)△マリア・ペレス(プエルトリコ)
新添が左、ペレスが右組みのケンカ四つ。引き手争いをベースに試合が進行するが、新添が組み勝って前に出るとペレスは腰を引いてあからさまな防御。下がりながら内股を見せて拮抗を演出する。新添が両襟を握って圧を掛けた1分4秒、窮したペレスは場外に向かって極端に頭を下げて右内股。その場で頭を畳に着いて前転する危険な技に主審は試合を止めて映像確認を要求するが、結果これはひとまずスルー。新添以後も左内股、左大内刈に左払腰と攻め続け、2分22秒には組み手を切り離すことを繰り返したにも関わらず以後の攻撃を怠ったペレスに「指導」。そして2分47秒、ペレスまたもや頭を突っ込んで相手ごと前転する右内股。首が曲がらんばかりに角度をつけて前屈、頭を畳につけ、かつ相手ごと回転しようというまことに悪質な技。主審さすがに反則負けを宣告して試合終了。腰を引き、組み手を切り離し、挙句2度に渡る危険行為。後進地域とチームごと糾弾されてもおかしくない、非常に見苦しい試合ぶりだった。

[準決勝]
新添左季△優勢[技有・谷落]〇アレナ・プロコペンコ(ロシア)
新添が左、プロコペンコが右組みのケンカ四つ。組み手の技術に勝る新添が一方的に組み勝っては左内股で攻め、54秒頭の下がったプロコペンコに「極端な防御姿勢」の咎で「指導1」。新添その後も一方的に組み勝っては内股で攻めるが、体の力の強いプロコペンコは深々侵入を許しながらも耐え切ることを続ける。試合時間2分が近づくと腹を出して新添の大外刈を弾き返す場面も作り新添の攻めに慣れ始めた様子、一方新添は内股巻込を掛け潰れて立ったままのプロコペンコにぶらさがるなど少々様相変わり始める。それでも新添の攻めは止まず、2分32秒には消極的との咎でプロコペンコに「指導2」。なかなか投げを決められぬ新添はここで「場外」の反則で勝利を得ようと前に出るがこれは主審が的確に判断、3分12秒新添に押し出しの咎で「指導」。新添はなんとか投げ切らんと腰を差し入れて敢えて相手に抱かせておいての小内刈、内股と繰り出す好判断を見せるがプロコペンコは体の強さだけで受け続ける。残り20秒、もはや投げを決めるだけと思われた新添は腰を差し入れて左内股を連発、そのまま場外に出るが相手に腰を抱かせたまま歩き続けるミス。プロコペンコ抱いたまま体を捨てて谷落を放つと新添場外でひっくり返り「技有」。圧倒的優位に甘んじて腰を抱かせ続けた新添のミス、詰めの甘さが出た試合だった。

[3位決定戦]
新添左季○優勢[技有・小外刈]△マリア・ベルナベウ(スペイン)
新添が左、ベルナベウが右組みのケンカ四つ。パワー自慢のベルナベウは両襟で密着を作り出しては強引な右内股で新添を伏せさせ、得意の横三角を狙う。このところパワーファイター相手に星を落とすことの多い新添には嫌な立ち上がり。しかし、続く展開で新添は長いリーチを生かして先に釣り手を確保、相手が釣り手を持ち替えようとしたタイミングに合わせて左大内刈を放ち、相手の引き手を抱き込んだ一方的な形を作り出す。自分の組み手となった新添はすかさず左膝車でベルナベウを崩すと、釣り手の離れた相手が持ち直そうと体を伸ばしたところに切れ味鋭い左小外刈。尻餅をついた相手を押し込み50秒「技有」を先行する。以降リードを許したベルナベウは両襟で腰を入れての強引な技を狙うが、新添は安易に抱いて応じずあくまで距離を取って対応。しっかりと3分間を凌ぎ切り3位を獲得した。

■ 78kg級・梅木が全試合一本勝ちで優勝、因縁ヨーにも逆転勝ちでリベンジ果たす
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78kg級決勝、梅木真美がナタリー・パウエルから腕緘「一本」

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78kg級入賞者。左からパウエル、梅木、ヨー、ワグナー。

(エントリー14名)

【入賞者】
1.UMEKI, Mami(JPN)
2.POWELL, Natalie(GBR)
3.JOO, Abigel(HUN)
3.WAGNER, Anna Maria(GER)
5.SHMELEVA, Antonina(RUS)
5.STEVENSON, Karen(NED)
7.DMITRIEVA, Anastasiya(RUS)
7.MALONGA, Madeleine(FRA)

梅木真美が優勝、2月のグランプリ・デュッセルドルフ大会に続くワールドツアー2連勝を果たした。初戦以降はすべてこれぞという強豪の対戦ばかりだったが、結果は全試合一本勝ち(相手の反則負け1試合を含む)という素晴らしいもの。内訳はまずアレクサンドラ・バビンチェワ(ロシア)に左払腰「技有」からの後袈裟固「一本」(2:18)、準々決勝ではマドレーヌ・マロンガ(フランス)から「指導」3つを奪っての反則(3:25)、そして準決勝ではリオ五輪初戦で敗れている因縁の相手アビゲイル・ヨー(ハンガリー)に「指導」2つのリードを許す絶体絶命のピンチを横三角からの腕緘で切り抜け逆転の一本勝ち (3:26)。大きな山場を越えた後の決勝では第2シードのナタリー・パウエル(イギリス)をこれも腕緘「一本」(3:29)に仕留めて表彰台の真ん中に登ることとなった。

参加選手の顔ぶれからすれば梅木の優勝は妥当だが、ヨーに勝った一番は以後に向けて大きい。ヨーは明らかに梅木に対して自信を持っており、長身から振り下ろす釣り手の雨に梅木はギリギリまでまったく為す術がなかった。結局最後までこの形に決定的な打開策を見い出したとは言えなかったが、それでも、だからこそここで勝っておいたことは大きい。現在の国際柔道において明らかな「苦手」を作ることは致命傷、もし負けていれば精神的な序列が五輪の結果そのままに固定されてしまう危機であった。形上しっかり「一本」で弾き返したこの結果をテコに、実質負けていた内容を次回対戦までにしっかり精査しておいてもらいたい。


【準々決勝】
アビゲイル・ヨー(ハンガリー)○後袈裟固(3:34)△アントニナ・シュメレワ(ロシア)
梅木真美○反則[指導3](3:25)△マドレーヌ・マロンガ(フランス)
ナタリー・パウエル(イギリス)○袈裟固(3:10)△カレン・スティーフェンソン(オランダ)
アンナマリア・ヴァグナー(ドイツ)○GS大外刈(GS0:39)△アナスタシア・ドミトリエワ(ロシア)

【準決勝】
梅木真美○腕緘(3:26)△アビゲイル・ヨー(ハンガリー)
ナタリー・パウエル(イギリス)○大内刈(1:05)△アンナマリア・ヴァグナー(ドイツ)

【敗者復活戦】
アントニナ・シュメレワ(ロシア)○GS反則[指導3](GS1:07)△マドレーヌ・マロンガ(フランス)
カレン・スティーフェンソン(オランダ)○不戦△アナスタシア・ドミトリエワ(ロシア)

【3位決定戦】
アンナマリア・ヴァグナー(ドイツ)○大外返(3:00)△アントニナ・シュメレワ(ロシア)
アビゲイル・ヨー(ハンガリー)○内股(1:30)△カレン・スティーフェンソン(オランダ)

【決勝】
梅木真美○腕緘(3:29)△ナタリー・パウエル(イギリス)
左相四つ。奥襟を持ち合っての膠着状態が続き、1分17秒にパウエルに「指導」。直後の1分36秒、腕を突いてパウエルの奥襟を防御した梅木にもブロッキングの「指導」。以降も両者ガップリ四つに組み合うものの決定打は出ず、近距離での膠着状態が続く。2分45秒には両者に消極的の咎で「指導」が追加、ともにスコア上後がなくなってしまう。これを受けた梅木は奮起、3分15秒に左大外刈でパウエルに尻餅を突かせるとすかさず得意の横三角。ここから腕緘に繋いで「参った」を引き出す。梅木が全試合一本勝ちという素晴らしい内容でグランプリ・デュッセルドルフ大会に続く2大会連続でのワールドツアー優勝を果たした。

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準決勝、梅木は因縁の相手ヨーから逆転の腕緘「一本」

【日本代表選手全試合戦評】

梅木真美(ALSOK)
成績:優勝

[2回戦]
梅木真美○後袈裟固(2:18)△アレクサンドラ・バビンチェワ(ロシア)
左相四つ。袖を絞り、組み手をリセットしてと組み合うことを徹底して嫌う相手をじっくりと追い詰め、横変形で間合いを整えると左払腰「技有」獲得。そのまま場外で後袈裟固に抑え込み「一本」を獲得する。梅木、危なげなく初戦を突破。

[準々決勝]
梅木真美○反則[指導3](3:25)△マドレーヌ・マロンガ(フランス)
梅木が左、マロンガ右のケンカ四つ。マロンガはまず「両奥」で圧を掛けてパワーと自信明らか。続いて繰り出されたクロス組み手に梅木思わず畳を割り、45秒梅木に場外の「指導」。梅木にとっては苦戦必至の出だしであったが、しかしここから立ち直る。強気に奥襟を叩き、マロンガの右内股も首を掴んで振り返し、そして得意の寝業を展開してとしぶとく勝負の綱を引き続けると徐々にマロンガは消耗。1分49秒ついにマロンガに首抜きで「指導」が与えられるに至る。奮起したマロンガ右小外掛で投げに掛かるが梅木は退かずに左小外掛で振り返して吹っ飛ばし、さらに釣り手で奥襟を叩くとマロンガに「極端な防御姿勢」の咎で「指導2」。残り1分を切ると「待て」の度にマロンガは膝に手を着き、明らかに気持ちも折れて来た模様。梅木冷静に足技で蹴り崩し続けると主審は残り35秒で試合を止め、マロンガに消極的との判断で3つ目の「指導」を宣告。これで試合決着、梅木は山場をしっかり乗り越える。

[準決勝]
梅木真美〇腕緘(3:26)△アビゲイル・ヨー(ハンガリー)
左相四つ。梅木先に引き手で袖を出て前進、やる気十分の出だし。しかし五輪で梅木に勝利しているヨーは自信満々、釣り手で上から背中を叩いては梅木を下げ、梅木が両手を突いたまま頭を下げて耐えた40秒に極端な防御姿勢で「指導」。以後もヨーが引き手で襟を先に掴んでは上から釣り手の雨を降らせ、梅木は中盤以降為す術なし。2分15秒にはヨーの圧力に耐えかねて大内刈を掛け潰れてしまい偽装攻撃で2つ目の「指導」も失う。以降もヨーは引き手で襟、釣り手は背中と奥襟を行き来させながら左内股に大外刈と攻め続け、もはや試合の趨勢決したかに思われた。しかし3分過ぎにヨーが大外刈を不用意に掛け潰れると梅木猛然と食いつき得意の横三角。ヨーはここで梅木に腕の確保を許してしまう決定的なミスを犯す。主審が「待て」を宣告するが瞬間梅木が引き込み返して回し、これは継続。梅木が抑え込んで腕緘を極め掛けたところでまたも主審が「待て」を宣告した模様で両者立ち上がり掛けるが、梅木慌てて体を戻して再び極め直す。一間あり、ヨーが「参った」を表明して試合決着。梅木がワンチャンスを生かした形で一本勝ち、しかし課題一杯の試合であった。

[決勝]
梅木真美○腕緘(3:29)△ナタリー・パウエル(イギリス)

※前述のため戦評省略

■ 78kg超級・絶好調朝比奈沙羅が優勝、ワールドツアー3連勝果たす
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78kg超級決勝、朝比奈沙羅がヤスミン・クルブスを攻める

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78kg超級入賞者。左からクルブス、朝比奈、ヴァイス、スルツカヤ

(エントリー12名)

【入賞者】
1.ASAHINA, Sarah(JPN)
2.KUELBS, Jasmin(GER)
3.SLUTSKAYA, Maryna(BLR)
3.WEISS, Carolin(GER)
5.ALTHEMAN, Maria Suelen(BRA)
5.CERIC, Larisa(BIH)
7.CHIBISOVA, Ksenia(RUS)
7.SAVELKOULS, Tessie(NED)

朝比奈沙羅(東海大3年)が優勝。12月のグランドスラム東京、2月のグランドスラム・パリに続く国際大会3連勝を成し遂げた。内容はまず準々決勝でマリアスエレン・アルセマン(ブラジル)から「指導3」を奪って勝利(2:37)。この大山場を超えて以降は快勝続きで、準決勝はラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)を払腰「一本」(1:45)で一蹴、決勝はヤスミン・クルブス(ドイツ)を終始圧倒し、序盤に奪った払巻込「技有」を以て勝利を決めた。

朝比奈の優勝は力的に妥当。今回目立った戦果は、世界選手権で2度銀メダルを獲得し現在もシーンの最前線を走るアルセマンからの勝利ということになる。周知の通りアルセマンはコンディションとモチベーションに応じてまったくパフォーマンスの変わる選手だが、初の世界選手権出場を前にここでしっかり勝っておいたことは何と言っても大きい。ただしこの試合の様相は、朝比奈は組み手でアルセマンの若干の優位を許しながら、それでも「行った」結果アルセマンが崩れる結果オーライが続くという評価の難しいものであった。朝比奈が意図通りに組み手を運べた場面は決して多くなくむしろ一段ずつ狙いのグレードを下げられていた形であり、アルセマンが本調子であればこれは後の先を狙った絶好の「待ち」の間合いになり得る。結果は良し、ただしこれに寄りかからず、思うように柔道が運べたかどうか、世界選手権での再戦に向けて内容の精査を求めたい。

ほか、ヤスミン・クルブスの頑張りが目を引いた。ロンドン-リオ期は類まれなる巨体と相反する受けの脆さで、本人にとっては悪い意味での見せ場を度々演出してしまっていた「カベ」であったが今シーズンは意外な攻撃力を発揮。準決勝では、ロンドン-リオ期終盤に次代のエース候補一番手と期待された国内の強敵カロリン・ヴァイスを膝車「一本」に沈め、決勝では朝比奈の猛攻に「一本」を許さず最後まで粘り切った。フランジスカ・コニッツの引退に刺激されたか、「立場が人を作る」典型のような奮闘であった。

【準々決勝】
ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)○片手絞(3:30)△クセニア・チビソワ(ロシア)
朝比奈沙羅○反則[指導3](2:37)△マリアスエレン・アルセマン(ブラジル)
ヤスミン・クルブス(ドイツ)○横四方固(3:48)△マリーナ・スルツカヤ(ベラルーシ)
カロリン・ヴァイス(ドイツ)○優勢[技有・浮落]△テッシー・サフェルコウルス(オランダ)

【準決勝】
朝比奈沙羅○払腰(1:45)△ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)
ヤスミン・クルブス(ドイツ)○膝車(3:15)△カロリン・ヴァイス(ドイツ)

【敗者復活戦】
マリアスエレン・アルセマン(ブラジル)○袈裟固(2:30)△クセニア・チビソワ(ロシア)
マリーナ・スルツカヤ(ベラルーシ)○優勢[技有・背負投]△テッシー・サフェルコウルス(オランダ)

【3位決定戦】
カロリン・ヴァイス(ドイツ)○裏投(GS0:20)△マリアスエレン・アルセマン(ブラジル)
マリーナ・スルツカヤ(ベラルーシ)○GS反則[指導3](GS1:11)△ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)

【決勝】
朝比奈沙羅○優勢[技有・内股巻込]△ヤスミン・クルブス(ドイツ)
朝比奈が右、クルブスが左組みのケンカ四つ。朝比奈は釣り手を上から持っての両襟組み手で試合をスタート。足技を絡めながら右内股を放って一方的に攻め続け、1分2秒にクルブスに消極的の咎で「指導」が与えられる。朝比奈1分41秒には場外際で思い切り良く右内股、内股巻込に変化して最後まで粘り切り「技有」を獲得する。以降も地力に勝る朝比奈が一貫して攻勢を維持するが、「指導2」まで奪ったところで時間切れとなり試合終了。「一本」こそ奪えなかったものの大枠危なげのない試合ぶりで、グランドスラム東京大会から3大会連続となる国際大会3連勝を達成した。

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準決勝、朝比奈沙羅がラリッサ・セリッチから払腰「一本」

【日本代表選手全試合戦評】

朝比奈沙羅(東海大3年)
成績:優勝

[準々決勝]
朝比奈沙羅〇反則[指導3](2:37)△マリアスエレン・アルセマン(ブラジル)
朝比奈が右、アルセマン左組みのケンカ四つ。朝比奈は釣り手で高い位置の襟を持つが、アルセマンは下からさらに高く襟を持ち、朝比奈にとっては不利な形でガップリの組み合いとなる。しかし朝比奈が膕に膝車を入れるとアルセマン意外にも大きく崩れて「待て」。続く展開も同じく朝比奈が襟を高く持つが相対的な組み手の優位はアルセマンという危ない形、しかし朝比奈が強気に右内股を入れるとアルセマン右前隅に大きく崩れ、直後の51秒アルセマンに「指導」。
朝比奈、今度こそは釣り手で優位を得んと巻き返し、持ち替えてと試すがアルセマンはいずれもブロック。しかし朝比奈は途中で力関係に自信を持ったか、上からの両襟という強気な組み手のまま攻め続ける。さすがに慣れたアルセマン以後はまったくといって良いほど崩れる場面がなかったが、朝比奈の手数が認められて2分37秒アルセマンに3つ目の「指導」。朝比奈の長所である自分を高く買う力が、良い方向に働いた一番だった。

[準決勝]
朝比奈沙羅〇払腰(1:45)△ラリッサ・セリッチ(ボスニアヘルツェゴビナ)
朝比奈が右、セリッチ左組みのケンカ四つ。セリッチ引き手争いを挑むが、朝比奈釣り手を上から握ったまま鷹揚に対峙。セリッチが引き手を一方的に持つと落ち着いて切り離し、両襟を得ての支釣込足で畳を這わせる。1分半を過ぎたところでついに引き手で一方的に袖を得ると、釣り手の肘を揚げて右払腰。一瞬セリッチが耐えて動きが止まるが、朝比奈は投げを確信して技を継続。上体が伸びて剛体となったセリッチがブンと宙を舞い、文句なしの「一本」。

[決勝]
朝比奈沙羅○優勢[技有・内股巻込]△ヤスミン・クルブス(ドイツ)

※前述のため戦評省略

文責:古田英毅/林さとる

※ eJudoメルマガ版6月1日掲載記事より転載・編集しています。

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