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グランドスラムエカテリンブルグ2017・第1日女子4階級レポート

(2017年5月26日)

※ eJudoメルマガ版5月26日掲載記事より転載・編集しています。
第1日女子4階級(48kg級、52kg級、57kg級、63kg級)レポート
グランドスラム・エカテリンブルグ大会2017
■ 48kg級・近藤亜美優勝、注目のガルバトラフ戦は実現せず
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決勝、近藤亜美がサビナ・ギリアゾワから払巻込「技有」

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優勝を決めた近藤は笑顔。国際大会の優勝は約1年ぶり。

(エントリー18名)
【入賞者】
1.KONDO, Ami(JPN)
2.GILIAZOVA, Sabina(RUS)
3.CLEMENT, Melanie(FRA)
3.GALBADRAKH, Otgontsetseg(KAZ)
5.KOMOVA, Nataliya(RUS)
5.PERSIDSKAIA, Mariia(RUS)
7.BATTAMIR, Khorloo(MGL)
7.RUMYANTSEVA, Kristina(RUS)

第3シードで大会をスタートしたリオデジャネイロ五輪銅メダリスト・近藤亜美(三井住友海上)が順当に勝ち上がり、ピンチを迎える場面ないまましっかり優勝を飾った。2回戦はアイゲレム・トレゴジナ(カザフスタン)が仕掛けて来た寝勝負にすかさず応じ返して横四方固「一本」(1:18)、準々決勝はクリスティナ・ルマンツェワ(ロシア)から払腰「技有」で危なげなく勝利、準決勝は面倒なメラニー・クレモン(フランス)に寝勝負を徹底、横四方固「一本」(GS0:57)で下して決勝進出。迎えた決勝では前戦でガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)を小内刈「技有」で破る殊勲を挙げたダークホース、地元ロシアのサビナ・ギリアゾワ(ロシア)を早々に払巻込「技有」からの後袈裟固「一本」に斬って落としてフィニッシュ。昨年5月のワールドマスターズ・グアダラハラ以来となる国際大会タイトル獲得を決めた。

現在の近藤の戦い方が端的に表れたのは準決勝のクレモン戦かと思われる。派手な払腰一発がクローズアップされがちな近藤だが、この試合はクレモンの圧の前に守勢を強いられると見るや投げへのこだわりを捨て、少しの崩れも見逃さず徹底して寝勝負を挑む。クレモンもしっかり守って当初は決して簡単に取れる様子ではなかったが、あまりに密度高く迫って来る寝技の圧に最後は陥落、GS延長戦でついに横三角からの抑え込みを決めて一本勝ちに辿り着いた。重いクラスに比べて力の差がスコアに反映されにくい最軽量級にあって、どうしても立ち勝負は相手の積極性の有無や組み手の相性に左右され、不確定性が高くなる傾向がある。このいわばギャンブル性の高い立ち勝負に頼るのではなく、まず徹底して寝技で取りに掛かることで試合全体を支配し、最後は取り切る。近藤のようなタイプにとっては積極的に勝負をしてくる強豪と投げ合う展開よりも、組み合うことを嫌って粘ること自体を目標に戦う格下を相手にするほうが厄介。世界選手権本番の課題もこうした相手が挑んで来る泥試合で調子を崩してしまうことではないかと思われるが、これに明確な対策が示された試合であったと観察したい。

近藤との頂上決戦が期待されたガルバトラフは前述の通り準決勝で意外な敗退。しかし3位決定戦ではナタリア・コモワ(ロシア、コンドラチェワから改姓)を「指導3」で下してしっかり表彰台は確保した。

準々決勝以降のスコア、近藤の全試合戦評は下記。

【準々決勝】
ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)○崩上四方固(4:00)△マリア・ペルシズカイア(ロシア)
サビナ・ギリアゾワ(ロシア)○内股(3:48)△バットタミル・ホルロー(モンゴル)
メラニー・クレモン(フランス)○反則[指導3](2:24)△ナタリア・コモワ(ロシア)
近藤亜美○優勢[技有・払腰]△クリスティナ・ルマンツェワ(ロシア)

【準決勝】
サビナ・ギリアゾワ(ロシア)○優勢[技有・小内刈]△ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)
近藤亜美○横四方固(GS0:57)△メラニー・クレモン(フランス)

【敗者復活戦】
マリア・ペルシズカイア(ロシア)○GS指導2(GS3:20)△バットタミル・ホルロー(モンゴル)
ナタリヤ・コモワ(ロシア)○不戦△クリスティナ・ルマンツェワ(ロシア)

【3位決定戦】
メラニー・クレモン(フランス)○一本(0:16)△マリア・ペルシズカイア(ロシア)
ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)○GS反則[指導3](GS2:17)△ナタリヤ・コモワ(ロシア)

【決勝】
近藤亜美○後袈裟固(0:54)△サビナ・ギリアゾワ(ロシア)
右相四つ。ギリアゾワ勢い込んで奥襟を叩きやる気十分だが、近藤34秒に早くも払巻込を決めて「技有」獲得、そのまま後袈裟固に抑え込んで一本勝ち。ギリアゾワは事前シミュレーションの不足か初見の近藤の技にまったく反応出来なかった。近藤は全試合通じて危ない場面ないまま順当に優勝決定。

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準決勝、近藤亜美がメラニー・クレモンを横三角から抑え込む

【日本代表選手全試合戦評】

近藤亜美(三井住友海上)
成績:優勝

[2回戦]
近藤亜美〇横四方固(1:18)△アイゲレム・トレゴジナ(カザフスタン)
近藤が右、トレゴジナが左組みのケンカ四つ。34秒に近藤が右払巻込、これは投げ切れずトレゴジナがその背について横三角を試みる。しかし近藤その足に食いついて素早く転がし、足を抱えたまま相手の頭にアプローチ。横四方固に辿り着いてあっという間の「一本」。

[準々決勝]
近藤亜美〇優勢[技有・払腰]△クリスティナ・ルマンツェワ(ロシア)
右相四つ。ルマンツェバは右、左と構えを変えながら強者近藤に対峙、近藤は奥襟を持って相手をゆすり出しては右小内刈、右払腰と積極的に攻める。1分過ぎに近藤が奥襟を叩いた状態から巴投に打って出るが、ルマンツェワがかわして被り「抑え込み」が宣告される。これは近藤数秒で逃れたが以後いったん攻撃は減速。残り28秒、ルマンツェワが右構えから組み手を直そうとした瞬間に近藤の右払腰が閃き「技有」。ルマンツェワは両襟でスクランブルを掛けるが近藤左に捩じり返して動ぜず、その後試合は大きく動かずタイムアップとなる。

[準決勝]
近藤亜美〇GS横四方固(GS0:57)△メラニー・クレモン(フランス)
近藤が右、クレモンが左組みのケンカ四つ。近藤が鋭い「巴十字」を放ち、クレモンが伏せたまま必死で腕を納めて耐えるという攻防で試合が始まる。クレモンは長身を利して釣り手で近藤の首裏を捕まえ、先に作用足を差し入れておいての左内股で攻めるという厄介な柔道。近藤は立ち技では守勢に立つものの寝勝負のプレッシャーを徹底、少しの崩れも見逃さず横三角に「国士舘返し」としつこくかつ厳しく寝技で攻め続ける。残り54秒で足を差し入れたまま動きを止めたクレモンに「サリハニ状態」で膠着を企図したとの咎で「指導」、試合はこのままGS延長戦へ。延長戦30秒過ぎ、クレモンが座り込みの小外掛で体勢を崩すと近藤すかさず横三角。しぶとくめくり返し続けるとついにクレモン根負けして肘を出し、近藤が抑え込んで「一本」。延長合わせて約5分間の試合のうち、近藤が幾度横三角を繰り出したことか。「これで取る」と肚を括った近藤の粘り勝ち。

[決勝]
近藤亜美〇後袈裟固(0:54)△サビナ・ギリアゾワ(ロシア)

※前述のため戦評省略

■ 52kg級・地元ロシア勢連破のミランダが優勝、決勝はクズネツォワに逆転勝ち
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決勝、エリカ・ミランダがアレシャ・クズネツォワから隅落「技有」

(エントリー18名)

【入賞者】
1.MIRANDA, Erika(BRA)
2.KUZNETSOVA, Alesya(RUS)
3.BUCHARD, Amandine(FRA)
3.KUZIUTINA, Natalia(RUS)
5.COHEN, Gili(ISR)
5.GUICA, Ecaterina(CAN)
7.PUPP, Reka(HUN)
7.SKRYPNIK, Darya(BLR)

※日本選手の出場なし

第2シードのナタリア・クズティナ(ロシア)と第3シードのエリカ・ミランダ(ブラジル)が戦った準決勝がトーナメントの山場。この試合をGS延長戦の一本背負投「技有」で制したミランダが、決勝でアレシャ・クズネツォワ(ロシア)をGS延長戦の隅落「技有」で下してそのまま優勝を決めた。ミランダはクズティナ戦までの2試合をいずれも一本勝ち(オルガ・チトワを内股「一本」、ダリア・スプリトニクを「指導3」)で破っており、弱点である集中力の欠如を見せる場面もあったものの、大枠大会通じて良い出来であった。

クズティナも敗れたミランダ戦以外はすべて一本勝ち、3位決定戦は第1シード配置のギリ・コーヘン(イスラエル)を一本背負投「技有」から横四方固に抑え込んで手堅く勝利、しっかり3位は確保した。準優勝のクズネツォワは初戦、そして決勝で腕挫十字固と独特のアレンジを施した浮固の連携を見せてポイント奪取(初戦は浮固「一本」、決勝は「技有」)。かなりの存在感を発揮していた。技術自体、そして繰り出す組み立てと相当知的リソースを注ぎ込んだ形跡があり、この後も注目しておきたい選手。

表彰台最後の1枠には3位決定戦で見事な送足払「一本」を決めてエカテリーナ・グイカ(カナダ)を退けたアマンディーヌ・ブシャー(フランス)が滑り込んだ。
ロンドン五輪48kg級金メダリストのサラ・メネゼス(ブラジル)は今回も動き冴えず、初戦でレカ・プップ(ハンガリー)にGS延長戦「指導2」で敗退。階級変更後国際大会4大会を経ていまだ表彰台に手が届かず、苦しい戦いが続く。

【準々決勝】
ギリ・コーヘン(イスラエル)○崩袈裟固(GS2:22)△アレシャ・クズネツォワ(ロシア)
アモンディーヌ・ブシャー(フランス)○GS技有・浮落(GS0:11)△レカ・プップ(ハンガリー)
ナタリア・クズティナ(ロシア)○縦四方固(4:00)△エカテリーナ・グイカ(カナダ)
エリカ・ミランダ(ブラジル)○GS反則[指導3](GS0:36)△ダリア・スクリプニク(ベラルーシ)

【準決勝】
アレシャ・クズネツォワ(ロシア)○GS技有・隅返(GS3:25)△アマンディーヌ・ブシャー(フランス)
エリカ・ミランダ(ブラジル)○GS技有・一本背負投(GS4:04)△ナタリア・クズティナ(ロシア)

【敗者復活戦】
ギリ・コーヘン(イスラエル)○優勢[技有・外巻込]△レカ・プップ(ハンガリー)
エカテリーナ・グイカ(カナダ)○崩上四方固(1:41)△ダリヤ・スクリプニク(ベラルーシ)

【3位決定戦】
ナタリア・クズティナ(ロシア)横四方固○(1:53)△ギリ・コーヘン(イスラエル)
アマンディーヌ・ブシャー(フランス)○(0:13)△エカテリーナ・グイカ(カナダ)

【決勝】
エリカ・ミランダ(ブラジル)○GS技有・隅落(GS0:19)△アレシャ・クズネツォワ(ロシア)
ミランダが左、クズネツォワが右組みのケンカ四つ。パワーに勝るミランダが両襟で間合いを詰め、クズネツォワが下から突いて距離を取る。1分6秒、クズネツォワの放った右内股にミランダが腰を抱いて横車。同体で落ちるとクズネツォワすかさず腕挫十字固を狙い、予選ラウンドでも見せた得意の浮固で巧みに抑え込む。相手の動きに合わせて縦四方固に変化しそのまま試合終了かと思われたが、あと2秒で逃してしまいこれは「技有」に留まる。以降追い上げを図るミランダの攻勢で終盤まで試合が進行。クズネツォワに極端な防御姿勢で「指導」が与えられた直後の3分20秒、ついにミランダが両襟の左内股で「技有」を取り返し、試合はGS延長へと突入。そしてGS延長戦19秒にミランダがクズネツォワの右内股を隅落で捲り返して「技有」を獲得、逆転勝ちで優勝を果たした。

■ 57kg級・好調宇髙は決勝で失速、34歳ミリアム・ローパーがパナマ移籍後初優勝飾る
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決勝、宇髙菜絵がミリアム・ローパーを大外刈に捉え「技有」奪回

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宇髙の技の起こりにローパーが左小外刈を合わせて被り「一本」

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パナマ移籍後初優勝のローパーは感激の涙

(エントリー19名)

【入賞者】
1.ROPER, Miryam(PAN)
2.UDAKA, Nae(JPN)
3.KLIMKAIT, Jessica(CAN)
3.SILVA, Rafaela(BRA)
5.LKHAGVATOGOO, Enkhriilen(MGL)
5.MEZHETCKAIA, Daria(RUS)
7.NELSON LEVY, Timna(ISR)
7.ZABLUDINA, Irina(RUS)

決勝で相まみえたのは絶好調の宇髙菜絵(コマツ)と、4月からパナマに国籍を変更したばかりのリオデジャネイロ五輪ドイツ代表ミリアム・ローパー。宇高が32歳、ローパーは34歳というベテラン対決だ。

宇髙は絶好調。2回戦は大外刈を警戒して片手で下がるアイグル・クツェンコ(ロシア)を問題にせず、まず小外刈「技有」を奪ってこの作戦に蓋をすると相手の掛け潰れを冷静に見極め「脚三角」に捉えて縦四方固で一本勝ち。迎えた大山場の準々決勝はリオデジャネイロ五輪金メダリストのラファエラ・シウバ(ブラジル)に粘り勝ち、GS延長戦で集中が切れた相手に完璧に組み勝つと、時計回りに相手を呼び込んでの完璧な右大外刈「技有」で勝利。準決勝はこれも腰を引いて逃げるジェシカ・クリムカイト(カナダ)を落ち着いて追い詰めGS延長戦「指導3」で試合を纏めてしっかり決勝へと勝ち上がった。

一方ノーシードで試合をスタートしたローパーは初戦からキャサリン・ブーシェミンピナード(カナダ)と対戦するという厳しい組み合わせ。しかしこの試合を小外掛「一本」(2:53)で乗り越えて波に乗り、準々決勝はイリーナ・ザブルディナ(ロシア)を小外刈「技有」に仕留め、準決勝は初戦で第1シードのエレン・ルスヴォ(フランス)を破ったルハグヴァトゴー・エンフリーレン(モンゴル)を右小外刈「技有」からの袈裟固「一本」(0:39)で一蹴。ついに宇髙が待ちかまえる決勝へと駒を進めることとなる。

決勝は右相四つ。準決勝までの戦いぶりから宇髙有利が予想されたこの試合だが、宇髙は予想に反して動きが硬く、34秒には早くも「指導1」失陥。以後も徹底的に釣り手を絞って来るローパーの組み手を突破出来ず、投げるどころか1分54秒には巴投をまともに受けて「技有」も失ってしまう。宇髙は2分40秒に片襟からの大外巻込で「技有」を奪回、これで軌道修正なったかに思われたが、3分23秒決着を焦って大外刈に打って出ようとした宇髙が片足になったところにローパーが小外刈を当てながら突っ込むと、宇髙背中からひっくり返って意外な「一本」。優勝はローパーの手に落ちることとなった。

ローパーは前述の通り、4月からパナマに国籍を変更したばかり。今大会は移籍後2大会目にして(4月のパンナム選手権で準優勝)、初めてのタイトル獲得となった。これでワールドツアー6回目の優勝となるローパーだが、勝利決定直後から涙を見せて意外なほどの大喜び。余程思いを掛けた大会だった様子だ。

優勝候補筆頭格と思われた第1シード選手エレン・ルスヴォは前述の通り初戦敗退。ルハグヴァトゴー・エンフリーレンにGS延長戦の大外返「技有」で敗れた。2015年終盤から国際大会で勝利を重ねてリオ五輪代表争いでは同国の第一人者オトーヌ・パヴィアにあと一歩と迫ったルスヴォだが、肝心のパヴィア休養後はいまだ優勝ゼロ。内容的にもかつての元気の良さが見られず、先行き明るいとは言えない状況だ。

3位にはシウバと、「技有」1つずつを奪って迎えたダリア・メゼトカイア(ロシア)とのGS延長戦を制したジェシカ・クリムカイトが入賞した。

【準々決勝】
ルハグヴァトゴー・エンフリーレン(モンゴル)○GS反則[指導3](GS3:28)△ダリア・メゼトカイア(ロシア)
ミリアム・ローパー(パナマ)○優勢[技有・小外刈]△イリーナ・ザブルディナ(ロシア)
宇髙菜絵○GS技有・大外刈(GS0:43)△ラファエラ・シウバ(ブラジル)
ジェシカ・クリムカイト(カナダ)○優勢[技有・小内巻込]△ティムナ・ネルソンレヴィ(イスラエル)

【準決勝】
ミリアム・ローパー(ドイツ)○袈裟固(0:39)△ルハグヴァトゴー・エンフリーレン(モンゴル)
宇髙菜絵○GS反則[指導3](GS2:04)△ジェシカ・クリムカイト(カナダ)

【敗者復活戦】
ダリア・メゼトカイア(ロシア)○上四方固(1:59)△イリーナ・ザブルディナ(ロシア)
ラファエラ・シウバ(ブラジル)○GS技有・隅落(GS1:44)△ティムナ・ネルソンレヴィ(イスラエル)

【3位決定戦】
ジェシカ・クリムカイト(カナダ)○GS技有・背負投(GS0:26)△ダリア・メゼトカイア(ロシア)
ラファエラ・シウバ(ブラジル)○反則[指導3](3:36)△ルハグヴァトゴー・エンフリーレン(モンゴル)

【決勝】
ミリアム・ローパー(パナマ)○小外刈(3:23)△宇髙菜絵
右相四つ。宇髙組み手にてこずり、34秒「指導1」失陥。宇高は前戦同様に奥襟を狙いながらの右大外刈で相手を大きく崩すが、ローパーは徹底的に宇髙の釣り手を絞り、あるいは手先を絡めてその前進を押し留めることで展開を渡さない。1分54秒にはローパーが巴投、宇髙は威力なしと見たかなぜか棒立ちで受けてしまい、ローパーは両脚を股中を越えるところまで差し込み、横に落として「技有」獲得。リードを得たローパーは手先を左右順繰りに出して宇髙を押し返し、もはやまともに柔道する気なし。その中でもともかく技を出すローパーに対して宇髙は攻めが遅れ、2分24秒には2つ目の「指導」を失ってしまう。しかしさ直後の2分40秒に片襟の右大外刈から巻き込んで相手を制し「技有」奪回、ともかくこれで本戦での負けはないかと思われた。しかし残り37秒に試合は意外な結末、決着を焦ったか片襟の大外刈を狙って宇髙が刈り足を振り上げるも踏み込みが中途半端、その動き出しにローパーが突っ込んで左小外刈を放つ。技自体はコツリと「当たっただけ」に見えたが片足状態で相手の突進をまともに受けた宇髙は意外なほどに大きく崩れ、背中から畳に落ちて「一本」。ローパーはパナマ移籍後初優勝、好調宇髙はこの試合に限って動きが硬く、思わぬ敗退となった。

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大一番の準々決勝、宇髙菜絵がラファエラ・シウバから勝利を決める大外刈「技有」

【日本代表選手全試合戦評】

宇髙菜絵(コマツ)
成績:2位

[2回戦]
宇髙菜絵〇縦四方固(2:34)△アイグル・クツェンコ(ロシア)
宇髙が右、クツェンコ左組みのケンカ四つ。クツェンコは宇髙の投げを警戒し、釣り手一本を持って後に下がる粘戦志向。しかし宇髙落ち着いて右小外刈で抜き上げ24秒「技有」奪取。以降も一方的に組み手を支配し続け、クツェンコは掛け潰れで時間を稼ぐのがやっと。3分を過ぎ、宇髙が引き手から先に組んで袖を一方的に持つとクツェンコは慌てて畳に自ら体を投げ出し内股巻込。宇高慌てず先ほどまで幾度か試みた「脚三角」で相手の両脚を纏め、首を抱えて縦四方固。「一本」で試合は決着、宇髙の完勝だった。

[準々決勝]
宇髙菜絵○GS技有・大外刈(GS0:43)△ラファエラ・シウバ(ブラジル)
宇髙が右、シウバが左組みのケンカ四つ。引き手争いが続き、47秒と2分0秒に両者に消極的との咎で「指導」。以降も双方我慢の試合展開が続くが、スコア上後のない状況とあってさすがに攻撃を加速、宇髙は二段で抜き上げる右小外刈を度々放って相手を崩し、シウバは残り1分で迫力十分の「跳び十字」を見せる。残り30秒から宇髙がさらに一段ギアを上げ右小外刈に右大外刈と連発したところで本戦が終了、試合はGS延長戦へ。そして両者の思い切った大外刈による攻め合いを経た30秒過ぎ、宇髙が引き手で袖を織り込み、釣り手で奥襟を握る完璧な組み手を完成。シウバはこの肝心な場面で持ち前のムラ気が出てしまい、頭を下げて手を相手の腰に置く中途半端な組み手のまま待ちに入る決定的なミス。宇高が時計回りに引き寄せるとシウバこの形のままフラフラと追随、待ち構えた宇髙の右大外刈が閃き「技有」。強敵相手の快勝に宇高は思わず拳を握りしめる。勝負を決めた大外刈も見事であったが、我慢の展開となった本戦終盤に小外刈を撃ち続けて展開を保ったことが大きかった。膠着に付き合って試合を失う癖のあった宇高が、これまでの課題にひとつ答えを出したと言える一番であった。

[準決勝]
宇髙菜絵〇GS反則[指導3](GS2:06)△ジェシカ・クリムカイト(カナダ)
右相四つ。宇髙の右大外刈を警戒するクリムカイトは両袖で絞って腰を引き、とにかく宇髙に釣り手を与えない構え。しかし宇高は焦らずじっくり接近、釣り手を挙げて奥襟を得ては小外刈と大外刈の鉈を振るう。徐々に地力の差が展開に反映され始め、クリムカイトが捌き切れなくなった2分50秒に消極的との咎での「指導」。さらに3分24秒には苦し紛れの背負投で両手を離してしまい偽装攻撃で2つ目の「指導」が与えられる。GS延長戦に入ると頃合い良しと宇髙は加速、得意の右大外刈を連発するがクリムカイトはこれに怖じたか手先を順繰りに出しては離れることを繰り返す露骨な回避行動。35秒には宇髙の背中について素早く「ボーアンドアローチョーク」を試みる見せ場を作ったが、以降はまったく勝利への成算見えぬ消極柔道。そしてGS2分6秒、宇髙の右大外刈を受けて自ら膝を屈したところで偽装攻撃による3つ目の「指導」が宣せられて試合終了。力に差があり過ぎた一番であり、歩留まり良く寝技に力を見せるが投技の魅力に決定的に欠けるというカナダ勢の平均的特徴が、わかりやすく出た試合だった。

[決勝]
宇髙菜絵△小外掛(3:23)〇ミリアム・ローパー(パナマ)

※前述のため戦評省略

■ 63kg級・大本命トライドス全試合一本勝ちで久々のV、対抗馬シウバは3位に終わる
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決勝、マルティナ・トライドスがエカテリーナ・ヴァルコワの谷落に被り返し「一本」

(エントリー17名)

【入賞者】
1.TRAJDOS, Martyna(GER)
2.VALKOVA, Ekaterina(RUS)
3.LIVESEY, Amy(GBR)
3.SILVA, Mariana(BRA)
5.DAVYDOVA, Daria(RUS)
5.TREMBLAY, Stefanie(CAN)
7.DZHIGAROS, Diana(RUS)
7.TSEND-AYUSH, Tserennadmid(MGL)

70kg級の強者キム・ポリング(オランダ)の衝撃的なエントリーに沸いたこの階級だが、結局ドロー直前に出場取り消し。国際シーンのAグループと呼べる強豪は第1シードのマルティナ・トライドス(ドイツ)のみ、対抗馬として挙げるべきはツアー優勝経験のないマリアナ・シウバ(ブラジル)という完全に一強構図のトーナメントとなってしまった。

トライドスは2回戦でベテランのケトレン・クアドロス(ブラジル)から左大内刈「技有」からの袈裟固「一本」(2:53)で順調に大会を滑り出し、準々決勝ではステファニー・トレンブレイ(カナダ)を崩袈裟固「一本」(2:01)、準決勝はエイミー・リバシー(イギリス)から得意の左小内刈で「技有」を奪うとそのまま袈裟固「一本」(1:26)と万全の試合運び。決勝では準決勝でシウバを下した地元ロシアのエカテリーナ・ヴァルコワ(ロシア)と対戦、得意の「サリハニ状態」から相手の谷落に合わせて左小内刈で体ごと乗り込む形で「技有」を奪い、そのまま袈裟固に抑え込んで「一本」(2:36)。全試合一本勝ちという圧倒的なスコアで優勝を決めた。

トライドスの国際大会優勝は2015年12月のグランドスラム東京以来。勝ちまくった2015年シーズン以後は苦戦が続き、リオデジャネイロ五輪でもマリアナ・シウバを相手にまさかの初戦敗退を喫するなど一貫して不調だったが、今大会は格の違いを見せつけた格好だ。復活のきっかけとなり得るか、以後の戦いを注視したい。

※日本選手の出場なし

【準々決勝】
マルティナ・トライドス(ドイツ)○崩袈裟固(2:01)△ステファニー・トレンブレイ(カナダ)
エイミー・リヴェシー(イギリス)○片手絞(3:29)△ディアナ・ツィガロス(ロシア)
エカテリーナ・ヴォルコワ(ロシア)○優勢[技有・一本背負投]△ダリア・ダヴィドワ(ロシア)
マリアナ・シウバ(ブラジル)○優勢[技有・小外刈]△ツェンドアユシュ・ツェレンナドミド(モンゴル)

【準決勝】
マルティナ・トライドス(ドイツ)○袈裟固(1:28)△エイミー・リヴェシー(イギリス)
エカテリーナ・ヴァルコワ(ロシア)○巴投(0:17)△マリアナ・シウバ(ブラジル)

【敗者復活戦】
ステファニー・トレンブレイ(カナダ)○横四方固(1:30)△ディアナ・ツィガロス(ロシア)
ダリア・ダヴィドワ(ロシア)○横四方固(1:09)△ツェンドアユシュ・ツェレンナドミド(モンゴル)

【3位決定戦】
マリアナ・シウバ(ブラジル)○GS反則[指導3](GS2:29)△ステファニー・トレンブレイ(カナダ)
エイミー・リヴェシー(イギリス)○優勢[技有・裏投]△ダリア・ダヴィドワ(ロシア)

【決勝】
マルティナ・トライドス(ドイツ)○袈裟固(2:38)△エカテリーナ・ヴァルコワ(ロシア)
トライドスが左、ヴァルコワが右組みのケンカ四つ。23秒、組み手にこだわり組み合わない両者に「指導」。以降トライドスが組み手で有利を得るとヴァルコワが隅返でリセットするという形で試合が進む。2分間際、トライドスがいわゆる「サリハニ状態」で圧を掛けるとヴァルコワが谷落。トライドスは相手の作用足を透かすとそのまま押しつぶし、足を抜いて袈裟固で抑え込む。実力者トライドスが危なげなく「一本」を奪って優勝を決めた。


文責:古田英毅/林さとる

※写真は権利者の許諾を得て掲載しています

※ eJudoメルマガ版5月26日掲載記事より転載・編集しています。

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