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連覇狙う王子谷剛志中心にシード選手4人が優勝争いの軸、本気で無差別挑む73kg級大野将平に期待・平成29年全日本柔道選手権大会展望

(2017年4月29日)

※ eJudoメルマガ版4月28日掲載記事より転載・編集しています。
連覇狙う王子谷剛志中心にシード選手4人が優勝争いの軸、本気で無差別挑む73kg級大野将平に期待
平成29年全日本柔道選手権大会展望
■ 有力選手
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今年も聖地・日本武道館に精鋭たちが集う

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連覇を狙う王子谷剛志

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リオデジャネイロ五輪では銀メダルを獲得した原沢久喜

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リオ五輪73kg級金メダリストの大野将平は復帰戦にこの全日本を選んだ

無差別で柔道日本一を争う全日本柔道選手権がきょう29日、日本武道館で全国の精鋭43名が集って行われる。

今年度の優勝争いはシードの栄を受けた王子谷剛志(推薦)、原沢久喜(推薦)、七戸龍(九州)、上川大樹(推薦)の4人が軸。注目選手は枚挙に暇がないが、特に五輪金メダリスト枠で出場する73kg級の大野将平(推薦)を挙げておきたい。

連覇を狙う王子谷は昨年優勝しながら、リオデジャネイロ五輪への出場は叶わず。悔しさをバネに11月の講道館杯、12月のグランドスラム東京、2月のグランドスラム・パリ、そして今月初頭に行われた全日本選抜体重別と、今年度世界選手権(8月28日~9月3日、ハンガリー・ブタペスト)の予選として組まれた全大会に優勝、現在世界選手権代表レースの一番手につけてもいる。当初は内容低調ながらもしぶとく結果を残すという体であったが、徐々に勝ちぶりも向上。前述4人の中で現在唯一その戦いぶりが安定していること、既に賜杯獲得の経験があること、なによりこれまで発揮して来た比類なき「全日本の畳での強さ」を勘案すると今大会は優勝候補の第一と挙げて良いのではないだろうか。前日会見での受け答えにも、良い精神状態で調整出来ていることが十分に伺われた。

リオデジャネイロ五輪で銀メダルを獲得した原沢は、実績実力ともに戴冠の資格十分。誰もが認める日本重量級の第一人者だが、休養期間を経ての復帰後はグランプリ・デュッセルドルフ(2位)、全日本選抜体重別(3位)といずれもタイトル奪取に失敗している。両大会通じて原沢が敗れたのは影浦心(東海大3年・今大会は出場せず)のみでこれは原沢の低調というよりも相性的な問題に帰せられるところもあり、今大会への影響があるとすればそれはむしろ精神面。「そろそろこのあたりで勝っておかねば」という前日会見の表情には余裕も感じられたが、昨年五輪代表決定を目前したのプレッシャーでいきなり柔道が硬くなってしまった来歴を持つ原沢がこの2敗をどう吹っ切って畳の上に上がることが出来るか。原沢が「全日本」のタイトルの重みを良く知るタイプであることもあり、これが気負いに転化されてしまう可能性も十分。まず序盤戦で原沢らしい柔道を披露出来るかどうかがカギとなりそうだ。五輪の激戦を経て一段大きくなった原沢の姿に期待したい

七戸と上川は実績十分ながら賜杯を手にした経験はなし。悲願の初優勝に向けて、これ一本に絞って調整して来た模様。

世界選手権銀メダリストの七戸は長きに渡ったリオデジャネイロ五輪代表争いの影響か、以降のパフォーマンスは振るわず。膝の故障ゆえなかなか詰めた稽古が出来ない状況であったようだが、選抜体重別の戦いぶりからは、前述の通りむしろ全日本にフォーカスしての調整を行っているという印象が強く漂った。長い手足を利して、遠い間合いから一気に飛び込む大内刈は重量級相手の取り味十分。初戦で組まれる香川大吾(東京)戦がこの日を測る基準点になる。

上川は相変わらず技の切れ味十分。昨年はその魅力を存分に発揮して決勝まで進出したが、準決勝の原沢戦であまりにも疲労、王子谷の軍門に下って悲願の初優勝を逃すこととなった。初優勝の可能性を測る上で最大の要素は、上川の体重。昨秋以来20kg近い減量をしたとのことで、現在の体重は140kg台。最大時165kgありながら抜群の技の切れ味を誇る「動ける大型」であった上川だが、この減量が「技の切れ味を増し、スタミナを増す」という良い方向に働くのか、それとも上川もう一面の良さである「受けて、投げる」という柔道的な質量の大きさを減殺する方向に働いてしまうのか。後者を具体的に言えば、例えばかつて王子谷を大外刈に誘って吸い込むような大外返で投げつけた、ああいう上川ならではの「芸」が可能なのかどうかということだが、このあたりは非常に気に掛かるところ。選抜体重別では初戦で影浦心に敗れてしまい、原沢たち一線級のライバルたちと「新モード」で組み合う試運転が出来ず。果たして減量は上川の良さを増す方向に働くのか、勝負どころであろう準々決勝(順当に行けばウルフアロンとのマッチアップが濃厚)までに見極めておきたいところだ。

そして今大会最大の注目ポイントと言っても差し支えないのが、大野将平の全日本挑戦。世界選手権王者として臨んだ平成26年大会は王子谷剛志に「指導」で敗れたが、王子谷の大外刈を真向返しかかる場面も作り出して会場を大いに沸かせた。この年王子谷は対大野以外の全試合を一本勝ちで優勝、この時点でもその強さにファンは唸ったものだが、今大会を目指して積んだ猛稽古の様相の一端を聞く限り、大野の無差別での強さはどうやら本物。重量選手と真向から組み合い、その技を受け、投げつけるその地力の強さから考えて、ひいき目なしに全日本ベストエイト級の力があるのではないかと見る。リオ五輪からの復帰戦という選手キャリアのターニングポイントにこの全日本を定めたその意気や良し。非常に厳しい組み合わせに置かれてしまったが、その戦いぶり自体に注目したい。

以下、トーナメントを4つのブロックに割って、その様相を簡単に展望したい。

■ 組み合わせ
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七戸龍は今大会に復権を掛ける

【Aブロック】

王子谷がシードされた山。下側の山で目玉になるべきベイカー茉秋(推薦)が欠場したため少々空白域の感あり、王子谷のベスト4進出の可能性は非常に高い。

注目カードとしてはまず1回戦の長尾翔太(近畿)対青山正次郎(九州)戦。試合中異様な動きを入れることでも会場を沸かすパフォーマー・長尾は大会切っての「曲者」、一方のベテラン青山は体重170kgで保有技も含めて典型的過ぎるほど典型的な重量級選手。非常に全日本らしい攻防が見られるのではないだろうか。

王子谷はまず2回戦で佐藤大地(東北)と戦い、3回戦ではおそらくは青山と長尾の勝者と対戦、そして準々決勝は下和田翔平(関東)とのマッチアップ濃厚。前述の通り勝ち上がり自体は揺るがぬと見るが、もし腰が重く担ぎ技が得手の尾崎央達(東京)が勝ち上がってくるようなら面白い試合が見られるかもしれない。

【Bブロック】

七戸の山。いきなり香川大吾(東京)戦という大きな関門が組まれた。長身痩躯のアスリートタイプである七戸と、昭和の柔道家的に肉付き豊かな香川と見た目も対照的であるが、ゆえに七戸の仕上がりが非常に測りやすいカードである。七戸のコンディションが、体幹強く腰重く後の先も上手い香川に、後退せずに技を仕掛けられる域まで仕上がっているかどうか、つまりは上位対戦で勝ち抜く力があるかどうかが早くも問われる大一番。事前予測としては七戸を押すが、予断を許さないカードだ。七戸はここを勝ち抜いても東京予選で輝きを見せた丸山剛毅(東京)、そして準々決勝で小川雄勢(東京)と非常に厳しい戦いが続く。

下側の山は前述の通り小川雄勢の勝ち上がりが濃厚だが、ここも小川竜昂(近畿)、垣田恭兵(九州)らなかなかにうるさい選手が揃う。柔道の質が良い小川竜昂は逆に小川雄勢の圧に捕まってしまう可能性大、勝敗が揺れるとすればかき回して戦うタイプの垣田とマッチアップした場合かと思われる。垣田には東京予選を勝ち抜いた日本大期待のホープ・一色勇輝(東京)と1回戦が組まれており、これは1回戦ではAブロックの青山-長尾戦に匹敵する好カード。全盛時に比べ成績が安定しない垣田の仕上がりを見極める上でも、将来間違いなく上位で戦うであろう一色の力の見積もりという文脈でも見逃せない一番。

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悲願の初優勝を目指す上川大樹

【Cブロック】

上側の山からは上川が準々決勝に勝ち上がるはず。ただし3回戦で用意される刺客は制野龍太郎(東北)、阪本健介(関東)、赤迫健太(近畿)といずれが上がって来ても相当な歯ごたえあり。変調の制野、筋力強く機動力のある阪本、重量選手らしい破壊力のある赤迫とタイプ異なるこれらの選手をどう抜くか、以後を考える上のスタミナ面でも、そして前述の肉体的な仕上がりという観点からも非常に注目される一番。

下側の山は一言で言って非常にもったいない山。世界選手権100kg級代表に決まって乗っているウルフアロン(東京)、73kg級五輪金メダリスト大野将平、そして高校生で出場する松村颯祐(中国)とそれぞれ別文脈から大会の華として注目されるべき選手が密度高く詰め込まれた。これが興行であれば主催者は胴元失格との誹りを免れない無粋な組み合わせ。復活気配の池田賢生(東京)と松村が1回戦を争い、勝者が大野と対戦。その勝者を次戦で待ち受けるのはウルフという過酷な山だ。

池田の機動力と技術を抜くことは、いかな松村といえど高校生には厳しいと思われる。池田が1回戦を勝ち上がり、続いて組まれる2回戦の大野-池田戦は大野の勝利を予想する。

難しいのは3回戦。大野の地力はトップクラスの重量選手とガップリ組み合って一発投げつけることが十分可能な域にあるが、相手の良いところを塗りつぶし、かつ機動力とパワー十分のウルフはかなり相性が悪そう。ここはウルフの勝利を予想せざるを得ないところだ。大野勝利のシナリオとしては、大野の受けの強さと攻め込むたび湧き上がる会場の歓声に焦れたウルフが釣り手の四指で後襟を掴んでの、あるいは帯を持っての小外掛に体を捨てるが体幹強い大野が揺るがず、浴びせ返すというところか。持ってさえいれば大野にはチャンス大いにあり、健闘に期待したい。

準々決勝が上川-大野であればすんなり上川のベスト4入りを予想。上川-ウルフであれば上川が嫌になるほどの前進-掌握-後退のルーチンを繰り返すであろうウルフが大いに勝敗を揺らすと考えておきたい。この戦いは凌ぐ側にとって有利なケンカ四つであり、ウルフが相当の時間帯を塗りつぶし、一発でこれを覆すべき上川には有事にそれを放つべき形とスタミナが与えられないと見る。どう上川がこれを突破するのか、期待したい。

【Dブロック】

原沢の山。比較的戦いやすい滑り出しのはずで、2回戦は新井信吾(関東)、3回戦の対戦相手は奥村達郎(近畿)、百瀬優(九州)、北野裕一(東京)のいずれかだ。本番一発で危険な相手はむしろ奥村と北野だが、力関係的にはこれを塗りつぶして百瀬が上がって来そうな気配。であれば、原沢の勝利は揺るがない。

下側の山の目玉は、関東予選を圧勝し選抜体重別(2位)でも得意の固技を次々決めた加藤博剛(関東)。上位に割って入り大会を食い荒らす候補としては、この人がトーナメントナンバーワンであろう。3回戦の後藤隆太郎(東京)戦が山場だが、問題なく勝ち上がって準々決勝は原沢-加藤という序盤戦最大級の好カードが組まれるはず。

原沢の勝ち上がりを押しておくが、組み手の粘り、嵌め技、陽動、立ちから寝の連携とあらゆるところに罠を張る加藤との戦いはまさしく見応え十分のはず。ケレン味のない原沢が加藤を乗り越えるには実力の絶対値の高さと技の威力をもってするほかはない。これぞ全日本という熱戦に期待したい。

【準決勝-決勝】

以上により、事前予測として順当な準決勝カードは、

王子谷剛志 - 七戸龍
上川大樹(ウルフアロン) - 原沢久喜

と考えておきたい。

以降の勝敗は、最高レベルの戦いで既に4戦をこなしているこれまでの勝ち上がりの様相に掛かる。変数が多すぎて現段階ではなんとも言えないが、トーナメントを見る限り、もっとも力を残して勝ち上がって来るであろう選手は間違いなく王子谷。上川(ウルフ)-原沢の側の準決勝が後半であり、王子谷側の勝者が1試合分多く休養出来ることも相当優位に働くはずだ。準決勝の相手が七戸でなく、苦手のケンカ四つでかつ高圧力の小川雄勢が来た場合は勝敗自体が揺れる可能性もあるが、それでも総合的な消耗は逆側の山の比ではない。

決勝カードは王子谷対原沢と考える。そしてここまでの来歴、トーナメントの組み合わせを見る限り王子谷がやや有利ではないだろうか。原沢には対王子谷の力関係や相性以前に、どれだけ力を残し、また精神的に前向きになれる勝ちを残せるかという「作り」がより重要。

熱戦の火ぶたが切られるのは本日10時30分、優勝候補の激突が始まる準々決勝は午後4時ごろ開始の予定だ。一時期の停滞を乗り越えて好役者の粒が非常に揃ってきた全日本、ファンの皆さまにはぜひ日本武道館に足を運んで頂き、勝ち負けでなく選手の一挙一動、素晴らしい攻防自体に観客席がどよめくあの素晴らしい空間の創出に一役買って頂きたい。筆者もその一端に連なり、今年も「全日本」を堪能するつもりである。熱戦を楽しみに待ちたい。


文責:古田英毅

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