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平成29年全日本選抜柔道体重別選手権・最終日男子4階級(81kg級、90kg級、100kg級、100kg超級)マッチレポート

(2017年4月27日)

※ eJudoメルマガ版4月27日掲載記事より転載・編集しています。
平成29年全日本選抜柔道体重別選手権・最終日男子4階級(81kg級、90kg級、100kg級、100kg超級)マッチレポート
■ 81kg級・永瀬貴規が安定感見せて大会四連覇、負傷押して出場の渡邉勇人は決勝で力尽きる
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81kg級1回戦、永瀬貴規が長島啓太を内股で崩す

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準決勝、永瀬が丸山剛毅から隅落「技有」

【決勝まで】

第1シードの永瀬貴規(旭化成)が順当に決勝進出。初戦の長島啓太(日本中央競馬会)戦は地力をテコにジワリと前へ、訪れる局面に丁寧に勝ち続けると長島に1分3秒と1分57秒にいずれも「取り組まない」咎による「指導」が与えられてスコア上の優位も確保。最後は3分29秒に消極的との判断で長島が3つ目の「指導」を受けてあっさり初戦の勝ち抜け決定。

準決勝では、前戦で春山友紀(自衛隊体育学校)をあっという間の内股「一本」で破り久々本領発揮の丸山剛毅(パーク24)と対戦。一発がある、かつ粘りの柔道を展開する丸山にも前戦同様落ち着いて試合を進め、GS延長戦53秒に焦れた丸山が放った内股を冷静に待ちかまえて隅落「技有」に切り返して試合終了。隙のない戦いぶりで今年も決勝まで勝ち上がった。

逆側の山からは渡邉勇人(了徳寺学園職)が勝ち上がり。膝の負傷を押しての出場だったが、1回戦はホープ藤原崇太郎(日体大1年)との長時間試合を集中を切らずに戦い抜き、腕挫十字固「一本」(GS3:33)で勝ち抜け。準決勝は佐藤正大(自衛隊体育学校)を相手に居合抜きのような鋭い背負投一発、泥臭い試合が身上の佐藤に粘る暇を与えず鮮やかな「一本」(1:00)で決勝進出を決めて見せた。

ということで決まった決勝カードは、永瀬対渡邉。永瀬は単独合宿のため、渡邉は膝の負傷のためともに欧州シリーズを欠場した有力選手2人によって今年の体重別日本一が競われることとなった。

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永瀬と渡邉勇人の決勝戦

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渡邉が巴投、永瀬は手を着いて自ら回転し回避

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永瀬の右内股が「技有」

【決勝】

永瀬貴規(旭化成)〇GS技有・内股(GS1:50)△渡邉勇人(了徳寺学園職)

決勝は永瀬が右、渡邉が左組みのケンカ四つ。
永瀬は探るように右内股、ペース緩やかながらジワリと前へ出てここぞの一発を放つ機を伺う。渡邉は釣り手を突き、あるいは永瀬に内股に食いつきつつ巧みな巴投も見せてこちらも加速のタイミングを測っている印象。

腰の差し合いと引き手争いが続き、2分30秒に渡邉がひときわ鋭い巴投。永瀬大きく浮くが、しかし自ら側転して着地し大過なし。以降も互いに決定打なく、3分2秒渡邉に片手の咎で与えられた「指導」が本戦唯一のポイント。試合はGS延長戦に縺れ込むこととなる。

渡邉が前へ。永瀬は時折左内股を呉れながらあるいは腰を抱き、あるいは敢えて相手の前進を受け入れる場面も作り渡邉の技を誘う気配。1分過ぎに永瀬が釣り手で腰を抱くと渡邉が思い切った左小外掛、試合が動いたかに思われたが永瀬片手を畳に着いての右内股で回避し「待て」。
なかなか勝負に出ない永瀬であったが、GS1分50秒に急加速。釣り手の位置を争いながら渡邉の左を内側にずらし避けるなり背中を抱えて右内股。半身で腕を内側に殺された渡邉は左小外掛の形で一瞬耐えるが、永瀬が引き手の牽引を利かせながら前に体を捨てるともろとも転がり、これは「技有」。

永瀬は4連覇達成。この日はすべての選手にターゲットにされながら、アクセルの踏みどころを的確に見極め非常に落ち着いた柔道。自身の地力と技術に対する絶対の自信が感じられた。爆発的ではないスコアがかえってその凄味を際立たせる、迫力十分の全3試合であった。

怪我に泣かされ続けた渡邉は昨年ようやく畳に復帰、11月の講道館杯ではついにポスト永瀬登場かと思わせる素晴らしい柔道で優勝したが、12月にまたもや左膝靭帯を負傷。選出されていたグランドスラム・パリという晴れ舞台を踏むことが出来なかった。今回も欠場濃厚と思われたが、時に脚を引きずりながら覚悟の柔道を披露。踏ん張りが効かぬゆえか11月のような素晴らしい出来は見せられなかったがここぞの際に見せる動きの鋭さはやは非凡。復活に期待したい。

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81kg級入賞者

【入賞者】
優 勝:永瀬貴規(旭化成)
準優勝:渡邉勇人(了徳寺学園職)

永瀬貴規選手のコメント
「1回戦から厳しい戦い。気持ちだけは負けないように戦おうと思っていました。勝てて良かった。スタミナはあるので、後半勝負と思っていました。競り勝てて良かったです。リオでは悔しい思いをしましたが、もう終わってしまったので4年後に勝つしかありません。まず8月の世界選手権でしっかり結果を残したいと思います」

【ブタペスト世界選手権代表】
永瀬貴規(旭化成)

【1回戦】
永瀬貴規(旭化成)〇反則[指導3](3:29)△長島啓太(日本中央競馬会)
丸山剛毅(パーク24)〇内股(0:29)△春山友紀(自衛隊体育学校)
渡邉勇人(了徳寺学園職)〇GS腕挫十字固(GS3:33)△藤原崇太郎(日体大1年)
佐藤正大(自衛隊体育学校)〇GS技有・大腰(GS3:42)△小原拳哉(パーク24)

【準決勝】
永瀬貴規(旭化成)〇GS技有・隅落(GS0:53)△丸山剛毅(パーク24)
渡邉勇人(了徳寺学園職)〇背負投(1:00)△佐藤正大(自衛隊体育学校)

【決勝】
永瀬貴規(旭化成)〇GS技有・内股(GS1:50)△渡邉勇人(了徳寺学園職)

■ 90kg級・向翔一郎が一気の戴冠、ベイカー茉秋は復帰戦飾れず負傷棄権
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1回戦、ベイカー茉秋が試合中に肩を脱臼して棄権

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1回戦、向翔一郎が帯取返で釘丸太一を崩す。向井はここから抑え込んで一本勝ち。

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1回戦、加藤博剛が西山大希から腕緘「一本」、西山に僅かに残された世界選手権代表の可能性はほぼ潰えた。

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準決勝、加藤は代名詞の後袈裟固で長澤憲大に一本勝ち

【決勝まで】

今大会を復帰戦に選んだリオデジャネイロ五輪金メダリスト・ベイカー茉秋に過酷な運命が待っていた。GS延長戦に縺れ込んだ小林悠輔(旭化成)との1回戦で肩を脱臼、棄権負けとなってそのまま畳を去ることとなってしまう。戦後ベイカーは手術を表明、リハビリ期間を考えれば2017年シーズン中の復帰は難しい状況。

この日のベイカーは決して動きが良いとは言えず、持ち前の連続攻撃も迫力に欠けた。代名詞になるような一撃必殺の得意技を持たないまま一気に世界の頂点まで辿り着いたベイカーだが、その躍進のエンジンは異常なまでの貪欲さと勝負勘の良さ、そしてその発動を可能ならしめる体力とスタミナだった。あくまで前進と掌握を繰り返し、双方が一呼吸取るはずの僅かな間合いにも間を詰め続け、リスクのあるはずの強気の組み手を繰り返すその戦い方がルールと90kg級の人員構成(相性的な)に噛み合ったのが最大の勝因と観察するが、このスタイルになにより必要なのは言うまでもなく肉体的、精神的なコンディションの整備。異常に高い位置でふたつが揃ったあのスタイルが復帰後も果たして保てるのか、それとも新たな勝利のエンジンを獲得するのか。その復帰の道程に注目したい。

ベイカーが脱落した上側の山からは昨季の学生王者向翔一郎が勝ち上がる。1回戦は釘丸太一(センコー)を相手に序盤で「指導」2つを失ったものの盛り返し、2分27秒に「指導」を奪回すると直後隅返で「技有」獲得。そのまま上四方固に抑え込んで勝利決定。

続く準決勝ではベイカーを退けた小林悠輔と対戦、「指導1」対「指導2」の累積反則差リードで迎えたGS2分過ぎに山場を作り、小林に消極的「指導」が与えられて試合決着。小林の「指導3」による反則負けを以て向の勝利が決まり、そのまま決勝進出の権利を得た。

下側の山からはベテラン加藤博剛(千葉県警)が決勝進出。初戦では形上ベイカー以外では唯一世界選手権代表争いの権利を持つ西山大希(新日鐵住金)を腕緘「一本」に仕留める真骨頂。躍進中の長澤憲大(パーク24)を畳に迎えた準決勝は40秒に巴投「技有」、さらに代名詞の後袈裟固に抑え込んで1分25秒「一本」獲得。3月の関東選手権で見せつけた凄まじい勝ちぶりは今大会も健在、これぞ寝業師・加藤という素晴らしい内容で見事決勝の舞台まで勝ち進んだ。

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加藤が巴投、向はみずから畳に飛び込んで回避

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向が加藤の帯を掴んで送り出すように崩す

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加藤への場外「指導」で試合決着

【決勝】

向翔一郎(日本大4年)〇GS指導2(GS0:41)△加藤博剛(千葉県警察)

決勝は向、加藤ともに左組みの相四つ。加藤巴投で先制攻撃も、向は自ら勢い良く跳び込んで回避し無力化。向井は引き手で襟、釣り手で奥を得ると内股フェイントで相手を下げて左背負投に打って出、加藤は乗り越えたところで崩れ伏せ「待て」。

中盤に差しかけるところで加藤は一方的に引き手で袖を掴む絶好の形を作り上げるが、向は過剰反応せずこれを受け入れて動きを鎮め、逆に加藤はチャンスが作れない。加藤は得意の寝技に引き込むも向は相手の繰り出す技術に半歩早く反応、決定的な形を作らせず自らの攻めに変換して「待て」。

残り1分30秒を過ぎたところで向が左小外掛、加藤浴びせ返すが「待て」。続いて向の左一本背負投を加藤が乗り越えるように捌いたところで加藤にのみ「指導1」が宣告される。

このあたりから戦い方を掴んだか向井がやや加速。釣り手で帯を掴んで回り込み、送り出すようにして崩すと左大外刈。さらに両襟の左大外刈と技を積むが、さりとて試合を壊すほど強くアクセルは踏みこまず、一方受ける加藤も淡々。畳上も会場も奇妙に静かなまま、試合はGS延長戦へ突入する。

向は横三角で攻め、立てばまたもや釣り手で帯を取って相手を送り出して伏せさせる。形を変えながらひたすら局面の有利を作り、加速のタイミングを伺い続けるこの柔道の前にGS47秒加藤思わず場外に出てしまう。

主審は加藤に場外による「指導」を宣告。結果、GS「指導2」を以て向の勝利が決まった。

向は絶好調の曲者・加藤の柔道を完全に封殺。絶対に頼るべき投げがあるわけでもなく、これしかないという形があるわけでもないが、相手の意図を素早く読み、一種過敏過ぎるほどに先手を打って敵の手立てを無力化し、自身の攻めに変換し続けた。かつて最大の長所であった技の切れ味ではなく、思い切りの良さや意外性が売りとなっていた感があった近年の向であるが、この試合は一種独特の「形のなさ」が生きた形だ。本格派を潰すことに長けた加藤だが、つかみどころなくかつ嫌な攻撃を淡々と積んで来る向の前にその力を出させてもらえなかったという印象だ。

優勝した向は全日本ジュニア、全日本学生体重別に続き、ついに最高峰タイトルである全日本選抜体重別選手権まで制覇。この先はかつてのように真向斬り下ろすような、警戒されてなお相手を投げつけるチャンピオンらしい技の錬磨に期待したい。

唯一の権利者と目されたベイカーの負傷、欧州国際大会で結果を残して形上次点にあった西山の初戦敗退を受け、ブタペスト世界選手権代表は発表されず。階級の現状と他有望階級のバランスを考えれば、このまま「代表なし」と結論づけられることが濃厚だ。

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90kg級入賞者

【入賞者】
優 勝:向翔一郎(日本大4年)
準優勝:加藤博剛(千葉県警察)

向翔一郎選手のコメント
「(-試合直前に加藤選手が笑いかけてきましたね?)ああやって話しかけて調子を狂わそうとするのかなと思ったので、それに乗らずにやりました(笑)。(-ベイカー選手と対戦したいと言っていましたが?)学生体重別のインタビューで色々大きく出てしまって怒られたので、もう言わないようにします。優勝でアピール出来たので良かったです。」

【1回戦】

小林悠輔(旭化成)〇棄権勝(GS3:09)△ベイカー茉秋(日本中央競馬会)
※負傷による
向翔一郎(日本大4年)〇上四方固(3:06)△釘丸太一(センコー)
加藤博剛(千葉県警察)〇腕緘(1:02)△西山大希(新日鐵住金)
長澤憲大(パーク24)〇GS技有・内股(GS1:32)△江畑丈夫(国士舘大4年)

【準決勝】

向翔一郎(日本大4年)〇GS反則[指導3]△(GS2:20)△小林悠輔(旭化成)
加藤博剛(千葉県警察)〇後袈裟固(1:25)△長澤憲大(パーク24)

【決勝】

向翔一郎(日本大4年)〇GS指導2(GS0:41)△加藤博剛(千葉県警察)

■ 100kg級・注目階級はウルフアロンが連覇、飯田健太郎と羽賀龍之介を直接対決で下す
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1回戦、羽賀龍之介が長尾翔太を攻める

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準決勝、羽賀が下和田翔平から小内刈と大内刈のコンビネーションで「技有」

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準決勝、ウルフアロンが飯田健太郎から内股「技有」

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飯田は頭から畳に叩き落とされ、決定的なポイント失陥

【決勝まで】

上側の山からは、これがリオ五輪以来の試合となる羽賀龍之介(旭化成)が順当に勝ち上がる。1回戦は曲者・長尾翔太(兵庫県警)の陽動に乗らず粛々「指導2」まで積み、迎えたGS17秒に急加速、前に崩し、深く捉え、体を前に捨ててと万全の左内股「一本」でフィニッシュ。

準決勝では下和田翔平(京葉ガス)を相手に1分20秒、小内刈に触っておいての左大内刈という得意の組み立てで「技有」獲得。残り時間を手堅く戦い切ってしっかり決勝まで駒を進めた。

下側の山では、準決勝で組まれた今大会随一の好カード、ウルフアロン(東海大4年)と飯田健太郎(国士舘大1年)のホープ対決に注目が集まった。羽賀とともに間違いなく東京五輪日本代表の座を争うであろう2人、直接対決の結果と過去の実績ではウルフが上だが、飯田は2月のグランドスラムパリという最高レベルの国際大会で現役日本選手としては唯一の優勝を、それも圧倒的な内容で果たしておりいまがまさしく伸び盛り。勝負は予断を許さない。

2連覇を狙うウルフは1回戦で安達裕助(旭化成)を「指導3」の反則(3:36)で退け、飯田は谷井大輝(新日鐵住金)の粘着をGS延長戦の末「指導2」対「指導1」で振り切って勝利。ぶじ準決勝で両者の対決が実現することとなった。

この試合はウルフが左、飯田が右組みのケンカ四つ。ウルフは得意の小外掛に肩車、飯田は右内股を度々放ってこれに対抗する。前のめりに距離を詰めるウルフ、内股で投げることでこれを剥がそうとする飯田という構図で試合は拮抗。

そして2分21秒、飯田が引き手を得て良い形を作るなりウルフが左内股。持ち上げて回すのではなく持ち上げながら相手ごと前のめりに突っ込むウルフ得意のこの形に、飯田は頭から畳に突き刺さってこれは「技有」。飯田は強気に両襟で組んで大内刈と内股で追い掛けるが、リードを背に戦うウルフを無理やり投げるだけの絶対値はなく、この試合はこのまま終了。結果、決勝には「技有」優勢で勝利を決めたウルフが進むこととなった。飯田は講道館杯でも相似の形でウルフに畳に落とされており、この技は次の両者の戦いのキーポイントととなる可能性あり。

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決勝は羽賀、ウルフ相譲らぬ攻め合いとなった

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【決勝】

ウルフアロン(東海大4年)〇GS指導2(GS8:14)△羽賀龍之介(旭化成)

東海大の先輩後輩対決となった決勝は羽賀、ウルフともに左組みの相四つ。
この試合はあまりにも互いをよく知ることで、展開上の差すらなかなか生まれない非常に難しい試合となった。羽賀は小内刈を多用、牽制、攻撃、あるいは組み手の橋頭保にこの技を使っておいて本命の左内股で攻め、ウルフは羽賀が優位を積み上げる気配ありと見るやすかさずあるいは切り、あるいは肩車に左大内刈で攻めて容易に展開を渡さない。1分13秒に双方に「取り組まない」咎による「指導」が与えられた後は、互いがアクセルを踏みこむ瞬間を狙って、しかし攻撃自体も休まぬという拮抗展開。あっという間に本戦4分が過ぎ去り、試合はGS延長戦へ。

GSも展開に差がつかない攻め合い。まったくのスローペースではなく羽賀は47秒に放った左大内刈に5分9秒の「やぐら投げ」、7分6秒の左内股をはじめとして勝負を決めるべく度々深く踏み込んだ大技を放つが、ウルフがことごとく自分の技に変換するためポイントを得るどころか展開にすら差がつかず。ウルフも支釣込足に背中を抱いての小外掛で度々勝負に出、主審が介入する隙のないままこの延長戦は8分を超える。

もはやテクニカルファウルで試合を終わらせるしかないという空気が漂い始めたGS8分14秒、羽賀の両襟をいなしたウルフが腰を抱くと羽賀思わずいったん潰れて回避。主審はこれに偽装攻撃の「指導2」を宣告し熱戦に幕。総試合時間12分14分の大消耗戦は「指導2」でウルフが勝利するに至った。

まさしく「便宜上勝者を決めざるを得ない」という形での決着であったが結果は結果。連覇を果たしたウルフはそのまま初の世界選手権代表の座を射止めることとなった。

羽賀は五輪銅メダリストの実力をしっかり示した形であったが、自身の年齢と、若手が、それも1人ではなく2人が揃って台頭して「その世代の世界」を作りつつある状況を考えると、実は常に世界の一線に出続けて実力と存在感をアピールし続ける必要がある、それなりに後のない状況のはず。少なくともアピールの場である世界の舞台の出場権を得ておくことは必須のはずで、その点に鑑みれば少々決勝は安定飛行に過ぎた戦いであったかもしれない。少なくとも「ここでウルフを潰しておかないと東京はない」というところまで巻き上がった、鬼気迫るような試合ぶりではなかった。この試合が両者の力関係の変化のターニングポイントになる可能性もあり、これは後世の判定が待たれるところ。

とまれ、ウルフ、そしてベテランの羽賀に新鋭の飯田と人材揃った100kg級は東京五輪に向け視界良好。世界選手権代表2枠目(4月29日に発表)の行使も十分あり得るのではないかという情勢だ。

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100kg級入賞者

【入賞者】

優 勝:ウルフアロン(東海大4年)
準優勝:羽賀龍之介(旭化成)

ウルフアロン選手のコメント
「グランプリ・デュッセルドルフの決勝に負けたので世界選手権に出るにはこの試合に勝つしかない。勝てて良かったです。決勝の相手は巧さや技術では遥かに上の先輩、根性とスタミナで頑張りました。挑戦者の気持ちを忘れず、『一本』を獲る柔道で頑張りたい。世界選手権代表に選ばれたら絶対に勝って、2020年の東京五輪にも出ます」

【ブタペスト世界選手権代表】
ウルフアロン(東海大4年)

【1回戦】
羽賀龍之介(旭化成)〇GS内股(GS0:17)△長尾翔太(兵庫県警察)
下和田翔平(京葉ガス)〇反則[指導3](3:36)△後藤隆太郎(三井物産)
ウルフアロン(東海大4年)〇反則[指導3](3:26)△安達裕助(旭化成)
飯田健太郎(国士舘大1年)〇GS指導2(GS0:49)△谷井大輝(新日鐵住金)

【準決勝】
羽賀龍之介(旭化成)〇優勢[技有・大内刈]△下和田翔平(京葉ガス)
ウルフアロン(東海大4年)〇優勢[技有・内股]△飯田健太郎(国士舘大1年)

【決勝】
ウルフアロン(東海大4年)〇GS指導2(GS8:14)△羽賀龍之介(旭化成)

■ 王子谷剛志が優勝、影浦心が上川大樹と原沢久喜を連破の殊勲
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1回戦、影浦心が上川大樹から小外刈「一本」

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1回戦、原沢久喜が小川雄勢から大内刈「一本」

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準決勝、影浦は原沢の右内股を待ち構えて透かし返し「技有」

【決勝まで】

上側の山に配された影浦心(東海大4年)が大活躍。原沢久喜(日本中央競馬会)をはじめ並みいる強豪を次々撃破して優勝した2月のグランプリ・デュセルドルフの勢いをそのままにまず1回戦で上川大樹を鮮やかな小外刈で「一本」(2:07)。会場をアッと言わせると、続く準決勝では優勝候補の筆頭である原沢を畳に迎える。

この試合は原沢が右、影浦が左組みのケンカ四つ。前回対戦では内股透「技有」で影浦が勝利しているが、原沢はこの日の1回戦で学生王者小川雄勢(明治大3年)を貫禄の大内刈「一本」(4:29)に仕留めており好調。原沢の優位は揺るがないかと思われた。

影浦はあくまで釣り手を下から持ち、原沢に距離を詰めさせないままジックリ試合を進める。これが影浦の誘い、業を煮やした原沢はこの遠い間合いからひと呼吸で距離を詰めて右内股。一気に胸を合わせて右前隅に押し込む、原沢が力に差のある相手を根こそぎ押しつぶすやり口だ。かつて影浦に決めた来歴もある技だが、影浦待ってましたとばかりに待ち構えて原沢の伸びた体を完全にコントロール、グランプリ・デュッセルドルフの再現ビデオを見るかのように股中で透かし返して「技有」奪取。嵌められた形の原沢は唇をかみしめる。

この時点で残り時間は僅か1分36秒。もはや前に出るしかない原沢だがこの手順を飛ばした前進志向はこれまた担ぎ技の得意な影浦の術中、残り26秒で肘抜きの左背負投を合わせてあまりにも決定的な2つ目の「技有」獲得。

旧ルールなら間違いなく合技「一本」の完璧な試合運び。影浦が「技有」2つを得る圧勝で見事リオ五輪銀メダリスト原沢を撃破、選抜体重別決勝進出の栄を得ることとなった。

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1回戦、太田彪雅が七戸龍を攻める

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1回戦、王子谷剛志が上田轄麻から小内刈「技有」

下側の山でも波乱、大学2年生になったばかりの太田彪雅(東海大2年)が初戦で七戸龍(九州電力)を破った。太田は互いにガッチリ持ちあうことを嫌う傾向のある七戸の性癖を見抜き、攻めと組み合いを織り交ぜながら図太く試合を構成。56秒に太田に「指導」、2分35秒双方に「指導」が与えられて本戦はスコア上七戸が有利だったが、GS延長戦に入ると七戸の息が上がり始め、GS1分21秒に片襟で、GS1分59秒には消極的との咎で立て続けに2つの「指導」を宣告されて試合終了。七戸の「指導3」による反則負けにより太田の準決勝進出が決まった。

そして上川、七戸、そして原沢と主役級が次々陥落する中、グランドスラム東京優勝、グランドスラム・パリ優勝と今選考シーズンもっとも良い成績を残している王子谷剛志(旭化成)が手堅く勝ち上がる。1回戦は上田轄麻(新日鐵住金)と対戦、「指導2」ずつを失って迎えたGS延長戦42秒に小内刈「技有」を奪って勝利、準決勝では太田を相手に本戦残り1秒支釣込足「一本」を奪って決勝進出決定。講道館杯に始まって今シーズンの世界選手権予選で続く連続タイトル奪取を「4」に伸ばすべく、影浦の待つ決勝の畳に向かう。

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決勝、王子谷が影浦を引き寄せて大外刈で攻める

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影浦が背負投、王子谷が絞めを狙って襟を牽引

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絞め上げて「一本」、王子谷の初優勝が決まった

【決勝】

王子谷剛志(旭化成)〇送襟絞(3:13)△影浦心(東海大4年)

決勝は王子谷が右、影浦が左組みのケンカ四つ。影浦は下から釣り手を得、王子谷は上から奥襟を掴んで引き寄せ右体落に右足車と先制攻撃。影浦は釣り手操作巧みに間合いを作り出して左背負投を試みるが王子谷は揺るがずに引き戻し、影浦の小外刈も自身の大外刈の連続攻撃に吸収。いったん攻防が止まった2分42秒、双方に「取り組まない」咎による「指導」。

残り1分を切ったところで影浦が片襟を差す形で右背負投。腕が頭上に残って首が空いたこの危うい形を王子谷見逃さず、間髪入れずに潰して送襟絞で絞め上げる。

一瞬で出来上がったあまりに深い襟の牽引と王子谷の巨体が作り出す圧力が乗算、強烈に絞められた影浦たまらず「参った」を表明。試合時間3分13秒、王子谷の選抜体重別初優勝が決まった。

日本人対決が続いたグランドスラム東京、強豪相手に勝利を重ねながら内容の煮え切らなかったグランドスラムパリと、「結果だけはしっかり残した形」の試合を続けていた王子谷であったが、この日は内容もまずまず。講道館杯以降「予選全勝」の圧倒的な実績をテコに、代表候補最右翼としていよいよ仕上げの全日本柔道選手権に挑む。

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100kg超級入賞者

【入賞者】

優 勝:王子谷剛志(旭化成)
準優勝:影浦心(東海大4年)

王子谷剛志選手のコメント
「最高の気分です。今日は緊張してお腹が痛くなるほどでしたが、やるしかないと覚悟をkめて戦いました。8月の世界選手権で勝って、2020年の五輪での金メダルを目指したいです」

【1回戦】

原沢久喜(日本中央競馬会)〇GS大内刈(GS0:29)△小川雄勢(明治大3年)
影浦心(東海大4年)〇小外刈(2:07)△上川大樹(京葉ガス)
王子谷剛志(旭化成)〇GS技有・小内刈(GS0:42)△上田轄麻(新日鐵住金)
太田彪雅(東海大2年)〇GS反則[指導3](GS1:59)△七戸龍(九州電力)

【準決勝】

影浦心(東海大4年)〇優勢[技有・内股透]△原沢久喜(日本中央競馬会)
王子谷剛志(旭化成)〇支釣込足(3:59)△太田彪雅(東海大2年)

【決勝】

王子谷剛志(旭化成)〇送襟絞(3:13)△影浦心(東海大4年)



取材・文:古田英毅
Text by Hideki Furuta

※ eJudoメルマガ版4月27日掲載記事より転載・編集しています。

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