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平成29年全日本選抜柔道体重別選手権・第1日男子3階級(60kg級、66kg級、73kg級)マッチレポート

(2017年4月26日)

※ eJudoメルマガ版4月26日掲載記事より転載・編集しています。
平成29年全日本選抜柔道体重別選手権・第1日男子3階級(60kg級、66kg級、73kg級)マッチレポート
■ 60kg級・永山竜樹躍動、世界王者髙藤から「一本」奪って初優勝飾る
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60kg級1回戦、髙藤直寿が田中崇晃から小内巻込「技有」

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準決勝、髙藤は米村克麻から腕緘「一本」

上側の山からは第1シードの髙藤直寿(パーク24)が順当に決勝進出。

1回戦では田中崇晃(ALSOK)と対戦。立て続けに2つの「指導」を奪うと2分4秒には左小内巻込で「技有」を奪って視界良好、クロージングに入った残り13秒から2つの「指導」を失ったが落ち着いて終了を待って勝ち抜け決定。

準決勝では前戦で大島優磨(旭化成)を背負投「技有」で破っている米村克麻(日体大4年)を相手にこれも非常に落ち着いて試合を展開、1分35秒に左袖釣込腰で「技有」を得ると、寝勝負に持ち込んだ2分9秒に腕緘で「一本」獲得。国内大会の髙藤としては一種珍しいほど安定した戦いぶりで、しっかり決勝へと駒を進めることとなった。

かつて永山とともに次世代のホープと期待された大島は前述の通り1回戦敗退。米村に背負投「技有」をリードされて以後猛攻、残り55秒では隅落で「技有」奪回もこれが取り消しとなり、そのまま陥落となった。再び代表戦線に挑むには必須と思われた髙藤越えへの挑戦権自体を得られず、復権は世界選手権以後の次シーズンに持ち越しとなった。

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1回戦、永山竜樹が青木大を攻める

下側の山では永山竜樹(東海大3年)と志々目徹(了徳寺学園職)の強者2人の激突が注目を集めた。永山はグランドスラム東京決勝で髙藤に一本勝ちして優勝を飾りながら欧州シリーズでは不首尾に終わり、目標である世界選手権代表権獲得には今大会でインパクトある活躍を見せることが必須。一方の志々目は長きに渡ったリオ五輪代表争いの影響か昨秋から元気がなかったが、新ルールで課題の組み手を克服した格好で迎えた3月のグランドスラム・バクーは好内容で優勝、今大会に完全復権を掛けるという背景を持つ。

永山は1回戦から動き良し。曲者・青木大(パーク24)に力を出させず左袖釣込腰に右「韓国背負い」、さらに裏投とポイント級の技を次々繰り出し、本戦4分で「指導2」をリードしたままGS延長戦突入。組み手巧みで「打てば必ず打ち返してくる」危険な選手である青木に対しそれでもあくまで攻め続けることで徐々に沈黙を強い、GS1分29秒の右背負投「技有」獲得でフィニッシュ。ぶじ準決勝進出を決めた。

一方志々目に立ちはだかるは昨年の学生王者・林浩平(日本エースサポート)。志々目は粘る林を相手に「指導2」ずつを失う形で本戦4分を終えるが、GS延長戦4分過ぎから攻めの密度を高め、GS5分59秒林に偽装攻撃の咎で「指導3」が与えられて大消耗戦に幕。結果、新鋭・永山とベテラン志々目による代表戦線生き残りを掛けた注目カードが準決勝で実現することとなった。

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準決勝、永山が志々目徹から小外刈「技有」

永山と志々目の準決勝は1分18秒双方に「取り組まない」咎での「指導」が宣告されて以後徐々に攻防加速。投げを狙い、あるいは組み手の優位確保や不利の打開のために左内股を繰り出し続ける志々目が手数上はやや勝る印象だったが、残り7秒志々目に偽装攻撃による「指導2」が宣告され、永山がスコアのリードを得て本戦4分間が終了。試合はGS延長戦へ。

そして延長1分27秒、永山の小外刈が閃いて激戦決着。これまでの丁寧な組み立てで溜めた力を一気に吐き出したかのような力強い一撃は「技有」、決勝には永山が進むこととなった。

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決勝、開始早々に永山が左一本背負投で髙藤を叩きつけるが、尻餅のためノーポイント

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永山が右小外刈、髙藤弾かれたように宙を舞う

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永山が中空の髙藤をしっかり制御、背中を着かせて「一本」

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永山が初優勝、長所である投げ一発の威力を存分にアピールした大会だった

【決勝】

永山竜樹(東海大3年)〇小外刈(1:38)△髙藤直寿(パーク24)

決勝は髙藤が左、永山が右組みのケンカ四つ。グランドスラム東京決勝では内股「一本」で永山が勝利しているという来歴のあるカード。

試合が始まるなり永山が左一本背負投。食らった髙藤が高々宙を舞う、「一本」すら想起される素晴らしい一撃だったが髙藤が尻餅をつく形で落ち、ノーポイント。以後も引き手を争いながら永山が「韓国背負い」、さらに相手の肘上げ動作に合わせての左一本背負投と連続で攻めて攻勢権を確保。髙藤が片手で放った左大内刈を永山が右小外刈に切り返し、さらに左一本背負投で投げに掛かった直後の1分0秒、髙藤に消極的との咎で「指導」。

そして1分38秒、釣り手で袖を得た永山が引き手を争いながら右小外刈。準備行動極めて静か、一見さして力を込めたようにも見えなかったが、引き手を餌にした相手の意識のずらし、タイミング、そしてインパクトの位置に方向と必須要素が完璧に揃った一撃に髙藤の体は銃撃に遭ったかのように弾かれ、高々宙を舞う。永山は眼前を舞う髙藤の肩口を空中で捕まえ、その体を制御して完璧なフィニッシュ。これは文句なしの「一本」。

互いに今は牽制行動の時間帯と無言で了解しあっているかのような平常運行から、唐突と言って良いタイミングで眼前に立ち現れた鮮やかな「一本」。静かな湖面から突如水柱が噴き出したかのような鮮烈なイメージを畳に残し、新鋭・永山の初優勝が決まった。

永山はこの日すべての試合で投技を決めて、最大の長所である「投げの威力」を大いにアピール。背負投という軸になる得意技を持ち、かつ跳ね技と刈り技があり、どこからでも打てる足技を含めてすべてが「一本」を獲れる骨の太い技。体の小ささを良い方向に生かした独特の間合いと投げのセンスはもちろんだが、この技構成の多彩さが永山の「結局は投げて勝つ」強さを支えている。二本持って仕掛ける王道の強みに、どこからでも攻められる入射角と保有武器の多さ。単に連続で技を放つ「線」の攻撃ではなく、どこからでも一本を生み出せるという「面」で相手を圧倒し続けるような永山の柔道は、身体能力とアドリブ技で世界を驚かせた髙藤とはまた別の、新しい軽量級選手の地平を開きつつあるのではないか。2枠目を行使しての世界選手権代表選出はまことに妥当、ハンガリーでの躍進に大いに期待したい。

敗れた髙藤だが、準決勝までの安定ぶりはもちろん、何よりその身体能力の高さはやはり非凡の一言。永山に投げられた場面は異常に派手に吹っ飛んでいたが、それも髙藤の能力あってこそ。崩された瞬間まず相手の側への回転回避を試み、永山の釣り手の拘束強くそれが叶わぬと見ると一転逆側への回転で逃れようとした。結局永山に拘束されて剛体で畳に落ちてしまったが、この2つの回転衝動はいずれも空中で行われたもの。行動も発想も異常、体と脳が刻んでいる時間単位自体が人間離れしていると言わざるを得ない。負けてなお、その凄さを示した決勝であったと評したい。

世界の頂点を狙える人材が2人揃った60kg級、以後東京五輪までいかなる軌跡が描かれるのか。2020年までの展望大きく開けた、日本柔道にとっても収穫大きな一日であった。

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60kg級入賞者

【入賞者】
優 勝:永山竜樹(東海大3年)
準優勝:髙藤直寿(パーク24)

永山竜樹選手のコメント
「決勝の技はタイミング良く決まりました。(髙藤には)直接対決になれば絶対勝つという自信がありました。東京五輪代表は髙藤選手と争う形になると思いますし、絶対に勝ちたかった試合でした。優勝して必ず代表になるという思いを持って戦いました。パリで負けて、自分を見つめ直したことが最後に生きたと思います」

【ブタペスト世界選手権代表】
髙藤直寿(パーク24)、永山竜樹(東海大3年)

【1回戦】
髙藤直寿(パーク24)〇優勢[技有・小内巻込]△田中崇晃(ALSOK)
米村克麻(日本体育大4年)〇優勢[技有・背負投]△大島優磨(旭化成)
永山竜樹(東海大3年)〇GS技有・背負投(GS1:39)△青木大(パーク24)
志々目徹(了德寺学園職)〇GS反則・指導3(GS5:59)△林浩平(日本エースサポート)

【準決勝】
髙藤直寿(パーク24)〇腕緘(2:03)△米村克麻(日本体育大4年)
永山竜樹(東海大3年)〇GS技有・小外刈(GS1:27)△志々目徹(了德寺学園職)

【決勝】
永山竜樹(東海大3年)〇小外刈(1:38)△髙藤直寿(パーク24)

■ 阿部一二三が圧勝、全試合「一本」で連覇達成
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1回戦、阿部一二三が竪山将から大外刈「一本」

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準決勝、阿部が藤阪太郎を袈裟固に抑え込む

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1回戦、髙市賢悟が丸山城志郎を攻める

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準決勝、髙市が丸山城志郎から不利を跳ね返す谷落「技有」

【決勝まで】

人材揃った大激戦階級。この中から第1シードの阿部一二三(日体大2年)が順当に決勝まで進出した。

連覇を狙う阿部は1回戦で難敵竪山将(パーク24)とマッチアップ。強気の組み手で主導権を得てまず1分48秒に「指導」ひとつを奪うと、2分26秒に右大外刈を豪快に決めて一本勝ち。

続く準決勝では、前戦で髙上智史(旭化成)をGS延長戦「指導3」で破る殊勲を挙げている藤阪太郎(大阪府警)とマッチアップ。中途で大内刈が藤阪の裏投に捕まり「技有」を失うがこれは映像確認の結果取り消し、直後右腰車から内股に繋いで「技有」を獲得するとそのまま袈裟固に抑え込んで「一本」(3:22)獲得。阿部らしく捻じ伏せるような力強い、そして欧州シリーズで見せた通りに思いのほか丁寧な柔道で、ぶじ決勝進出を決めた。

下側の山の1回戦、磯田範仁(国士舘大4年)と丸山城志郎(ミキハウス)による一番は大激戦。磯田は得意の足技と左大外刈、丸山は鋭い右内股と双方危険な技を放ち合い、ひとつの「指導」もない攻め合いのまま試合はGS延長戦へ。磯田が得意の小外刈から小内刈のコンビネーションで丸山を転がす場面があったが、流れが磯田に傾いたかと思われたこの直後丸山が小内巻込を決めて「技有」。若き講道館杯王者・磯田はグランドスラム東京の3位決定戦、グランプリ・デッュセルドルフの決勝に続いてまたもや勝負どころで敗れてしまい、突き抜けることが出来なかった。

続く試合も橋口祐葵(パーク24)と髙市賢悟(旭化成)がマッチアップする好カード。まず52秒橋口に「指導1」。そして迎えた2分31秒、引き手を確保した橋口がおそらくは得意の袖釣込腰を狙って出来上がった一瞬のエアポケットに、髙市が右背負投を叩き込んで決定的な「技有」奪取。投げ一発の切れ味が売りの橋口が相手だけに以後も勝負は予断を許さなかったが、髙市は自身の右背負投から作り出した寝勝負を粘り、後袈裟固に捉えることに成功。橋口動けず3分53秒「一本」。年下の若手の躍進の前にここのところ明らかに後退していた髙市が久々意地を見せた形で、準決勝進出を決めた。

髙市と丸山の準決勝は、髙市に対し1分55秒消極的との咎で「指導」、さらに2分38秒には偽装攻撃との判断で「指導2」が宣告され、スコア上は完全な丸山ペース。しかし勢いを得た丸山が終盤スライドステップを踏みながらの左内股に打って出るとカン良く読んだ髙市が攻防一致のタイミングで体を捨てて谷落、これが「技有」となる。以後両者にポイントの積み上げはなく、この「技有」ポイントを以て髙市の勝利が決まった。髙市の得点が生まれた場面は反則ポイントでリードしている丸山がそれでも攻めたことで隙が生まれた、投げを決意した攻防の結果であり、「指導」だけでは勝ちが決まらぬ新ルールの良い面が出た一番であった。

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阿部と髙市による66kg級決勝戦

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阿部が右一本背負投から右背負投、大きく浮かされた髙市は空中で身を捩じり、腹這いに落ちる

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阿部の右大外刈が「一本」

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阿部は圧倒的な強さを見せて連覇達成

【決勝】

阿部一二三(日本体育大2年)〇大外刈(2:02)△髙市賢悟(旭化成)

決勝は阿部、髙市ともに右組みの相四つ。阿部は釣り手を絞ってくる髙市に応じてまず両袖、次いで背中、さらに横襟と釣り手の位置を変えながら右背負投に袖釣込腰で攻める。さらに釣り手に絡みついてくる髙市の手を打点の高い右一本背負投で剥がし、ついで本命の右背負投。一瞬誰もが「一本」を想起したこの大技を髙市なんとか回避して腹這いに落ち、直後の59秒髙市に消極的との判断による「指導」。

髙市はこの攻防で負傷したか、一瞬顔を歪める。一方の阿部は打点の高い袖釣込腰に右背負投から作用足を畳にいったん落としての巻き込みと、高低差をつけながら自在に攻めて快走。髙市は相手の釣り手の袖を殺しておいての担ぎ技に活路を求めるが、阿部は崩れず自らが潰れてしまい「待て」。

2分2秒、髙市が思い切って釣り手で奥襟を叩くと、阿部はスイッチを押されたかのように首を抱え返し右大外刈。これが見事決まって髙市は背中から畳に真っ逆さま、「一本」。阿部が全試合一本勝ちという素晴らしい内容で選抜体重別連覇を達成することとなった。

好選手打ち揃う、世界屈指の激戦階級である「日本の66kg級」。その中にあって、かつ優勝候補の最右翼として徹底警戒を受けながら悠揚全試合一本勝ちで優勝を決めた阿部の力は凄まじいものがある。髙市をここまで一方的に片付ける選手など、国際大会でもほとんどまったく見当たらないのではないだろうか。

阿部はグランドスラム・パリでは今までの刹那的な組み手をおそらく意識的に制限、襟を持っての丁寧な戦いでしっかり優勝して見せた。今大会はその志向が継続されるかどうかが一つの大きなみどころであったが、結果は概ねこの好傾向を継続、というよりスタイルの是非など一種どうでもよくなってしまうほどの圧倒的な勝利であった。

丁寧な柔道に加えて勝負どころでは両袖、あるいはクロス、あるいは首を抱えての一発勝負を厭わず「一本」を連発。もはや勝敗という次元での揺れは考えようがなく、ある程度の失敗があっても勝利自体は動かず。よって阿部が何を考え、どう選択するかのみが焦点であったわけだが、しかしそもそもその発想や選択の所以を推測する材料となる「底」が見える場面自体を作らせなかった。「通常運行で勝ってしまった」と形容するしかなかった文句なしの勝ちぶりであり、凄まじい地力の高さであった。

ブタペスト世界選手権では間違いなく優勝候補の筆頭。初めての世界選手権だが、優勝どころか現時点での阿部の発想的「底」が見えるような戦いがそもそもあるのかどうか、これが最大の焦点になってしまうかもしれない。そう思わせるほどの圧勝劇、強者のオーラ漂う戦いぶりであった。

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66kg級入賞者

【入賞者】

優 勝:阿部一二三(日本体育大2年)
準優勝:髙市賢悟(旭化成)

阿部一二三選手のコメント
「すごくホッとしています。今日は『一本』取りに行く自分の柔道が出来た気がします。自分の成長を感じました。去年この大会で優勝して、そして五輪に行けなかったことが悔しくて、東京で金メダルを獲ろうと決めました。3年間を突っ走ります。今年の世界選手権も優勝します」

【ブタペスト世界選手権代表】
阿部一二三(日本体育大2年)

【1回戦】
阿部一二三(日本体育大2年)〇大外刈(2:26)△竪山将(パーク24)
藤阪太郎(大阪府警察)〇GS反則[指導3](GS2:01)△髙上智史(旭化成)
丸山城志郎(ミキハウス)〇GS技有・小内巻込(GS1:36)△磯田範仁(国士舘大4年)
髙市賢悟(旭化成)〇後袈裟固(3:53)△橋口祐葵(パーク24)

【準決勝】
阿部一二三(日本体育大2年)袈裟固(3:22)△藤阪太郎(大阪府警察)
髙市賢悟(旭化成)〇優勢[技有・谷落]△丸山城志郎(ミキハウス)

【決勝】
阿部一二三(日本体育大2年)〇大外刈(2:02)△髙市賢悟(旭化成)

■ 73kg級・好調橋本壮市が充実の柔道披露、2年ぶりVで世界選手権代表勝ち取る
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73kg級1回戦、橋本壮市が福岡克仁から一本背負投「技有

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準決勝、橋本が込山龍哉を小内刈「一本」に仕留める

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1回戦、中矢力が竹内信康から体落「技有」

【決勝まで】

リオ五輪金メダリストの大野将平は畳への復帰の場を全日本柔道選手権に定め、今大会の出場を敢えて回避。結果、グランドスラム東京とグランドスラム・パリに連勝して好調の橋本壮市(パーク24)が第1シードの栄に浴すこととなった。

昨年来の橋本の好調さはこの日も変わらず。まず福岡克仁(日本代3年)を相手に開始11秒で一本背負投「技有」を獲得、これをテコに2つの「指導」も積み上げる完勝で初戦を突破。準決勝は前戦で吉田優平(東海大3年)との同門同学年対決を体落「技有」優勢で制して来た込山龍哉(東海大3年)とマッチアップ、開始早々に小内刈を閃かせ僅か13秒の秒殺「一本」で勝利決定。欧州シリーズの勢いをそのまま畳に持ち込んだ格好で、しっかり決勝進出を決めて見せた。

下側の山ではもと世界王者の中矢力(ALSOK)が準決勝で敗れる波乱。初戦の竹内信康(新日鐵住金)戦は、「指導1」ビハインドの残り39秒に体落「技有」を得る中矢らしい勝負強さで勝ち抜けたが、準決勝では高校と大学の後輩である立川新(東海大2年)のしぶとさの前に沈黙。いずれも消極的との咎で57秒、2分27秒、そしてGS延長戦40秒と3つの「指導」を失って敗退した。

立川は初戦でも山本悠司(天理大4年)から一方的に3つの「指導」を奪って勝利(GS0:57)しており、投げの威力を増して躍進した昨年以前の売りであった「戦術性」というもう1つの長所を存分に発揮。ついに選抜体重別決勝という最高峰の舞台に辿り着くに至った。

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決勝、橋本が立川新を相手に取り味のある技を連発

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橋本の柔道を良く知る立川はひと呼吸早く対応、橋本に決定打を与えない

【決勝】

橋本壮市(パーク24)〇GS指導2(GS5:41)△立川新(東海大2年)

決勝は橋本が右、立川が左組みのケンカ四つ。橋本が「ハーイ!」と声を出して気合十分に前進、立川がこれをいったん弾き返して間合いを取るという攻防から試合がスタート。引き手争いをベースに攻めては離れる動的膠着が続くが、橋本が片手のまま右小内刈に左一本背負投、さらに右小外刈と右小内刈のコンビネーションで攻めた直後の1分48秒、片手の咎で立川に「指導」。

以後は橋本が足技と右体落、さらに左一本背負投を中心に攻めるがなかなか決定打には至らず。これらの技を落ち際で耐え続ける立川が要所で技を繰り出すため「指導」もないという状況のままあっという間に本戦4分が経過、試合はGS延長戦へ。

GS延長戦もこの構図は変わらず。橋本は延長47秒の膝車、1分0秒の出足払、2分35秒の右小内刈と良い技を繰り出すがバランスの良い立川はひたすらこれを耐え、あるいは自分の技で切り返してあくまで決定的な差を作らせない。しかし4分50秒に立川が良いタイミングで左大内刈、これを橋本が右体落に切り返したあたりから両者さすがに疲労し、技が止まり始める。

橋本はその後も膝車に左一本背負投と技を継いだが、主審どうやらもはや技による決着には期待できない状況と判断したか、GS延長戦5分41秒に試合を止めて両者に消極的との咎で「指導」を宣告。既に本戦で「指導」を失っている立川はここで脱落、橋本の勝利が決まった。

初の世界選手権代表権獲得に向けて総仕上げをすべく畳に向かった25歳の橋本に、この日立ちはだかった相手はいずれも若手。技の切れる福岡と込山、そしてしぶとさが売りの立川と決して楽な関門ではなかったが、業師タイプを投げて片付けた2戦にひたすら耐える粘戦派を「指導」差で畳から弾き出した決勝と、苦労人・橋本らしい心の強さと技術の幅を見せつけた大会であった。これまで積み上げた圧倒的な実績と国際大会における派手な勝ちぶりからすればむしろ大人しいスコアであったが、昨年五輪金メダリストを輩出した強国・日本の73kg級代表として十分資格ありと、しっかりその強さを示した大会だったと総括したい。待ち望んだ世界選手権の舞台での、健闘に期待したい。

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73kg級入賞者

【入賞者】

優 勝:橋本壮市(パーク24)
準優勝:立川新(東海大2年)

橋本壮市選手のコメント
「決勝で面白くない試合をしてしまったのが心残り。普段から稽古をしていて互いに手の内を知っているので『指導』差になるかなとは思っていました。実力差はないので、気持ちだけは負けまいと思って戦いました。世界選手権に出られるなら、今度はしっかり面白い試合をして勝ちます。」

【ブタペスト世界選手権代表】
橋本壮市(パーク24)

【1回戦】
橋本壮市(パーク24)〇優勢[技有・一本背負投]△福岡克仁(日本大3年)
込山龍哉(東海大3年)〇優勢[技有・体落]△吉田優平(東海大3年)
立川新(東海大2年)〇GS反則[指導3](GS0:57)△山本悠司(天理大4年)
中矢力(ALSOK)〇優勢[技有・体落]△竹内信康(新日鐵住金)

【準決勝】
橋本壮市(パーク24)〇小内刈(0:13)△〇優勢[技有・背負投]△込山龍哉(東海大3年)
立川新(東海大2年)〇GS反則[指導3](GS0:40)△中矢力(ALSOK)

【決勝】
橋本壮市(パーク24)〇GS指導2(GS5:41)△立川新(東海大2年)



取材・文:古田英毅
Text by Hideki Furuta

※ eJudoメルマガ版4月26日掲載記事より転載・編集しています。

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