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第39回全国高等学校柔道選手権男子団体戦マッチレポート⑤準決勝

(2017年4月5日)

※ eJudoメルマガ版4月5日掲載記事より転載・編集しています。
第39回全国高等学校柔道選手権男子団体戦マッチレポート⑤準決勝
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先鋒戦、賀持喜道が吉野弘人を攻める

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1人差リードで襷を受けた村尾三四郎は小島孝太から「指導」3つを奪って優勢勝ち

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村尾が副将棚橋慎之介から内股「一本」

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羽田野竜輝が内股で猛攻も、村尾はいずれも力の圏外で体を捌いて回避

桐蔭学園高(神奈川)○三人残△延岡学園高(宮崎)
(先)賀持喜道○優勢[僅差]△吉野弘人(先)
(先)賀持喜道×引分×岩佐哲汰(次)
(次)村尾三四郎○優勢[僅差]△小島孝太(中)
(次)村尾三四郎〇内股(0:54)△棚橋慎之介(副)
(次)村尾三四郎×引分×羽田野竜輝(大)
(中)佐藤虎太郎
(副)千野根有我
(大)関根聖隆

九州ブロック王者の延岡学園という難敵を畳に迎えた桐蔭学園だが、この試合は快勝。先鋒賀持喜道が相手方の抜き役吉野弘人を相手に飛び込みの左内股、さらに前技フェイントの小外掛と後の先も強い吉野に怖じず取り味のある技を連発。2分過ぎにはステップを切っての左内股で腰に乗せ掛かる場面も作り出し、残り25秒でついに2つ目の「指導」を得て僅差の優勢勝ちを果たす。賀持は続く岩佐哲汰戦は手堅く戦い、ともに「指導」2つずつを失う形で引き分け。リードを保って後衛に襷を繋ぐ。

続いて畳に上がった村尾三四郎はケンカ四つの小島孝太を左内股で追い詰め、3つの「指導」を奪って優勢勝ち。村尾はさらに相手方の副将棚橋慎之介との戦いも積極的、ケンカ四つの相手が距離を詰めようと寄せを試みた瞬間先んじて左内股。あっという間に体を捨てて、両者ともに畳から一瞬浮き上がる鮮やかな「一本」。

第5試合はここまで大車輪の活躍でチームをベスト4まで牽引した延岡学園の大将・羽田野竜輝がケンカ四つの村尾の背中を掴んで、あるいは両襟で固定して右内股を連発。しかし村尾は動ぜずいなし続け、羽田野は1分15秒に「指導」ひとつを得るものの以後村尾を崩す新たな手立てはなし。残り48秒、羽田野の右内股に村尾が右体落を合わせた場面以降は攻防が静まり、この試合は結局引き分け。桐蔭学園がスコア三人残しという大差で決勝進出を決めることとなった。

桐蔭学園は前衛の1年生2枚だけで、それも無敗で準決勝の大一番を賄うという快勝。4試合目にしてついに演じた、まさしく会心の試合であった。3勝のうち2勝が僅差の優勢勝ちと内容は決して圧倒的なものではなかったが、個々が凄まじい取り味を発揮した冬季シリーズとの距離感がようやく掴めて来た印象、落としどころとしての「全国大会のやり方」に沿った戦い方が出来た試合であったのではないだろうか。前日に個人戦を決勝まで戦い、前戦で長崎日大・山口と大熱戦を演じたばかりのエース関根を温存出来たことも大きい。ここまでの苦しい戦いを乗り越え、決勝に向かう態勢ついに整った一番であったと評したい。

敗れた延岡学園は、ベスト4入りという大仕事を果たし、今大会大活躍を見せた九州勢の顔役としての役割を全う。九州ブロック王者の実力を存分に見せつけた、充実の大会であった。

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準決勝第2試合、大成高が円陣を組んで気合いを入れる

崇徳高(広島) - 大成高(愛知)
(先)枇杷木勇樹 - 三輪魁星(先)
(次)兼藤仁士 - 大西陸斗(次)
(中)安井彪翔 - 弓削凛月(中)
(副)神垣和也 - 藤鷹裕大(副)
(大)長岡季空 - 東部直希(大)

第2試合はAシード校同士の激突。互いにここでの対戦を予測し、十分対策して来たはずの鉄板カードだ。

盤面解読のカギは、大成のエース東部直希の存在。ここまでの戦い方でわかる通り今代の大成は東部のワントップチームであり、崇徳としては東部に何枚をどう手当てするか、大成としてはどこまで崇徳の戦力を削って東部に襷を渡すかがこの試合を戦う上での一大指針。

崇徳のオーダー順はこれまでの試合と相似。シーズン開始当初今代最強の駒の一と目された長岡季空をまたもや大将に据え、ダブルエースの神垣和也を副将に配置。大成の前4枚を削り取る役を担った前衛には先鋒に突貫タイプの長身選手・枇杷木勇樹、次鋒には腰が重く展開の揺れに対応して攻防いずれの駒としても機能する好バランサー・兼藤仁士を送り込んだ。

一方の大成は前戦で東部投入直前の防波堤として機能した長身選手・藤鷹裕大を副将に再起用。重心の低い弓削凛月を中堅に据えたこの2枚で襲い来るであろう崇徳の前衛に対する消波ブロックを形成し、前衛には三輪魁星と大西陸斗と機動力のある2枚をまとめて並べて戦線の活性化を図った。元気のある三輪と大西でひっかきまわし、弓削と藤鷹で抑えるだけ抑えて最後に東部を送り込みたいという3ブロック配置。特にこの日動きが良い大西の奮闘には期待したいところ。

しかし東部以外の4枚の戦力を比較すると、副将に神垣という絶対値の高い抜き役を置く崇徳がやはり上。神垣を抜きにしても両軍選手の冬季招待試合シリーズの出来と具体的な得点力を考える限りでは、この4ポジションにおける崇徳の優位は動かない。枇杷木と安井の不安定さゆえシナリオは読みがたいところがあるが特に前者は爆発力十分、もっとも極端な展開としては枇杷木と兼藤の2人で副将までの4枚を消費させてしまうことすら十分にあり得る。この日神垣以外の面々の出来がいま一つであることは不安材料だが、少なくともリードを保って東部を引っ張り出すことまでは決して難しいミッションではない。大駒として期待された長岡が前日の個人戦で不出来であったが、この日崇徳は長岡をここまで1試合もさせずに温存しており休養は十分。盤面は明らかに崇徳が有利だ。

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先鋒戦、枇杷木勇樹が三輪魁星から小外刈「一本」

先鋒戦は枇杷木勇樹が猛攻、試合終了直前に粘る三輪魁星をついに捕まえ小外刈「一本」で崇徳が先制。しかし枇杷木が追い掛けに追い掛けて出来上がった畳上の沸騰を大成の次鋒大西陸斗が見逃さない。枇杷木の大外刈にいち早く反応、僅か7秒の大外返「一本」であっという間に抜き返す。

苦労して得たリードを僅か7秒で失ったこの状況あってか、崇徳のバランサー兼藤仁士はどこか試合を安定させる方向に思考の舵を切った感あり、「指導」1つが大西に与えられたのみで続く第3試合は引き分け。互いに後衛に大駒を置くことを意識したか、続く安井彪翔と弓削凛月による中堅同士の対決も安井が「指導」ひとつを奪ったのみで引き分けに終わり、スコアはタイのまま試合は終盤戦へと突入する。

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副将同士の対戦、崇徳・神垣和也が大成・藤鷹裕大から支釣込足「一本」。

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東部直希が腕を抱えて支釣込足、神垣を大きく崩す

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東部が神垣を抑え込んで「一本」、勝負は大将同士の対決へ持ち込まれる

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東部と長岡季空による大将対決

ここで崇徳はダブルエースの一である神垣和也が登場。いよいよ神垣、長岡-東部という大物3枚の絡む「本戦」がスタートする。副将同士の対決はまず神垣和也が早々に得意の支釣込足を決め37秒藤鷹裕大から「一本」。最低限の1人差ではあるが、崇徳はひとまずリードを持って大成の大将・東部直希を引きずり出すことに成功。

大成の大将・東部と崇徳の副将・神垣による第7試合は左相四つ。東部は終盤神垣が高く釣り手を握って来たことを利して、肩でこの手首を固定したまま両手で肘を抑えて支釣込足。前日の個人戦準決勝の関根聖隆戦でも一時「一本」を奪った(関節を極めながら投げたと判定されてノーポイント)この得意技で神垣を崩し、まだ相手が倒れ切らない中空から寝技をスタートする形で腕を制して抑え込む。最後は崩上四方固に体勢を整え2分49秒「一本」。

ここでスコアは再びタイ。勝敗の行方はついに大将同士、東部直希と長岡季空という今代切っての大駒による直接対決に持ち込まれる。

左相四つのこの対戦は双方が奥襟を叩いては釣り手を噛み殺し合い、釣り手を下げられてはいったん切ってリセットし合うという意外なほど静かな展開。長岡が力を発揮出来るのは、組み手を一方的に作った時と組み手を飛ばして体を寄せた「際」という両極の形であり、よって組み手争いには妥協し難い。一方東部も長岡の際の強さは良く知っており慎重な試合運び、双方見せ場ないまま1分10秒双方に「指導」。

奮起した長岡が組み際の右背負投、さらに前戦の東部ばりに相手の腕を抱えての支釣込足を見せるが決まらず。残り1分を切ってからは東部が払巻込に大外刈と技を積むが、長岡早々に潰して回避し決定的な場面はなし。残り38秒で手先を争いながら下がった長岡に「取り組まない」咎による「指導2」が宣告されるが、以降ポイントなくこの試合は終了。大将同士による第7試合は引き分けに終わり、勝敗の行方は代表者1名による決定戦へともつれ込むことになった。

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代表戦、神垣渾身の大内刈を東部が抱き返す激しい攻防

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神垣が内巻込気味に首に腕を抱えて一本背負投、東部が釣り手を離さず襟が首に引っかかる

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東部見逃さず腰を切って絞め上げる

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神垣の「参った」で劇的決着、大成が決勝進出を決めた

大成は東部が当然のように畳に居残る。連続3試合目、そしてこれがこの日の7試合目、前日から通算すると実に11試合目という大車輪ぶり。一方の崇徳は1試合休ませた形で副将の神垣を畳に送り込む。

この対戦は左相四つ。神垣は巴投で先制攻撃、さすがに疲労を隠せない東部は左大外刈を掛け潰れ、展開に手ごたえを得た神垣は左の内巻込で投げに掛かる。これは決まらなかったが主審が攻勢を評価し1分15秒東部に「指導1」。

東部は長岡戦の3分と代表戦のここまで取り味のある技をほとんどまったく放つことが出来ておらず、一方着実に技を積み続ける神垣は視界良好。以後も「ハンドル投げ」で東部を潰し、内股で攻め、そして1分45秒には左大内刈で体を寄せて思い切り投げに掛かる。一発に掛けるしかない東部は待ち構えて大内返を打つが、神垣も勝負を譲らずつば競り合いの末これはブレイク。神垣はさらに前に出て来た東部を右一本背負投で転がし掛かり、直後ついに東部に「指導2」が宣告される。神垣は勝敗に繋がるポイントを得た後も矛を収めず、奥襟を叩いては支釣込足で攻め立て、危なげのない試合ぶり。

東部の消耗、着実な技出し、そしてなにより単に「指導」を掠め取るのではなく返し技上等の大内刈で投げに掛かる積極姿勢。もはや神垣勝利の条件は完全に揃ったかと思われた。

しかしここで大どんでん返し。神垣が左の一本背負投で低く反転しようとした動作が中途半端になり、東部が釣り手を離さず引き戻すと、この時点で神垣の襟が首に食い込み半ば絞めの形が完成。ワンチャンスに掛ける東部がこれを見逃すはずはなく、すかさず乗り込んで「腰絞め」の形で絞め上げると、神垣耐え切れず衝撃的な「参った」。

場内地鳴りのような大歓声。東部は崇徳のダブルエースを1人で抜き去る完勝。結果、大成が栄光の決勝の舞台へと名乗りを上げることとなった。

大成高(愛知)○代表戦△崇徳高(広島)
(先)三輪魁星△小外刈(2:58)○枇杷木勇樹(先)
(次)大西陸斗〇大外返(0:07)△枇杷木勇樹(先)
(次)大西陸斗×引分×兼藤仁士(次)
(中)弓削凛月×引分×安井彪翔(中)
(副)藤鷹裕大△支釣込足(0:37)○神垣和也(副)
(大)東部直希○崩上四方固(2:49)△神垣和也(副)
(大)東部直希×引分×長岡季空(大)
(代)東部直希○片手絞(2:23)△神垣和也(代)

まず、東部の凄さを称える他はない。2日で通算11試合目、おそらく腕がパンパンに張っているであろう消耗状態でまさしくその腕に負荷が掛かる絞技を選び、「一本」取り切ったその執念と勝負勘、そしてスタミナは絶賛するしかない。前衛の奮戦も東部への絶対的な信頼感が生んだものであり、これぞエースという活躍であった。

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勝利目前で運命暗転、優勝候補・崇徳は準決勝で武道館を去る

勝利目前だった崇徳の運命は一瞬で暗転。確かにこの日、チームは不調だった。招待試合シリーズでの絶対値の高さを発揮し切れず、枇杷木や安井の「取っても取られる」弱点が露出して試合ぶりも不安定だった。しかしこの準決勝に関しては為すべきことはすべて為したはず。1人差リードで神垣と長岡のダブルエースを手当し、不調の長岡をここまで取り置いて1戦集中の万全の準備で送り出し、それでもダメとなれば長岡でフルタイム戦わせて東部を消耗させたのちに、1試合休ませて再度神垣を送り込むという三段構え。しかも目論見通りに東部は疲労困憊、神垣が「指導2」を得た上に、この手の試合で起こしがちな「手数だけで逃げ切ろうとする」ミスを犯さず堂々腰を寄せた大技を放って、勝利のために賭けるべきものを出し惜しみせずきちんと賭場に張っていた。主力がことごとく不調の中にあってそれでもチームを勝ちのシナリオに乗せてしまう加美富章監督の采配と練り上げた戦力の厚みの勝利と思われたが、それでもたった1つのミスに泣いた。打てるべき手を打ち、最後のピースであるべき勇気というディテールも積んだはず。この日ここまで、そしてこの準決勝で戦った計8試合の終盤を迎えるまで粛々積み上げに積み上げたものが一瞬にして瓦解してしまったこの結末は崇徳にとっては酷。まさしく呆然というところであろう。

総括すれば、崇徳は兼藤と長岡、特に個人戦と合わせて今大会通算1勝1敗1分けに終わった長岡の不調が最後まで響いた。好調選手が神垣のみという中でここまで勝ち上がった総合力の高さを、むしろさすがと評すべきかと思われる。また、神垣が「手数を積む」安易な行動に出たのは代表戦のただ1度でこれは攻め切れない。それを見逃さなかった東部の凄まじい集中力をこそ称えるべきだ。

大成、みごと決勝進出決定。結果決まった第39回全国高等学校柔道選手権男子団体戦、決勝カードは、

桐蔭学園高(神奈川) - 大成高(愛知)

となった。

※ eJudoメルマガ版4月5日掲載記事より転載・編集しています。

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