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グランドスラム・バクー最終日5階級レポート

(2017年3月17日)

※ eJudoメルマガ版3月17日掲載記事より転載・編集しています。
最終日5階級(男子90kg級、100kg級、100kg超級、女子78kg級、78kg超級)レポート
グランドスラム・バクー
■ 90kg級・第8シードのイスラム・ボズバエフが優勝、日本勢2人はともに2回戦敗退
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90kg級準々決勝、イスラム・ボズバエフがノエル・ファンテンドを右背負投で攻める

(エントリー18名)

【入賞者】
1.BOZBAYEV, Islam (KAZ)
2.MEHDIYEV, Mammadali (AZE)
3.NHABALI, Quedjau (UKR)
3.MARGIANI, Ushangi (GEO)
5.RASULLU, Abdulhagg (AZE)
5.SAFGULIYEV, Tural (AZE)
7.VAN T END, Noel (NED)
7.KUUSIK, Mattias (EST)

階級屈指の難剣使いであるノエル・ファンテンドが第1シードに座り、ママダリ・メディエフ(アゼルバイジャン)やウサンギ・マルギアニ(ジョージア)といった曲者タイプが顔を揃えたトーナメント。決してレベルが高いとは言えないが、日本勢2人の参加もあり陣容に比して優勝の難易度は高めとなった。これらひと癖ある選手の多さことが影響してか、普段比較的順行運転で進むことの多い90kg級にしては珍しい荒れ模様のトーナメントとなり、結果第8シードから大会をスタートしたイスラム・ボズバエフ(カザフスタン)が優勝を飾った。

ボズバエフは準々決勝で優勝候補のファンテンドを右背負投「技有」で破るアップセットを演じてベスト4入り、準決勝ではツラル・サフグリエフ(アゼルバイジャン)を右背負投「一本」(GS1:08)で下して決勝へと駒を進めた。決勝では地元アゼルバイジャンのメディエフと対戦、試合運びの上手い相手に苦戦したものの、「指導2」ビハインドで迎えた最終盤に立て続けに右背負投で2つの「技有」を奪い、見事表彰台の頂点へと登りつめた。

勝ち上がりからも分かるとおりボズバエフは右背負投を得意とする担ぎ技ファイター。しかし、昨今主流である担ぎ技を仕掛けること自体で試合を組み立てるタイプではなく、66kg級のミハエル・プルヤエフ(ロシア)のような、「相手を投げるための手段」として担ぎ技を用いる古風なタイプの選手だ。今大会では姿勢良く構えて二本持ってから担ぎ技を狙うというオーソドックスな柔道を貫き、格上であるファンテンドやメディエフといった曲者たちを次々と撃破していった。勘の鋭い皆さんは既にお気づきと思うが、ボズバエフ躍進の因もやはり新ルールにある。60kg級で優勝した志々目徹(了徳寺学園職)を見ても分かるとおり、正統派にとって引き手を得るということはそれだけで大きなアドバンテージになりうる。選手個人としてボズバエフが今後も活躍できるかは未知数だが、これまでほとんど無名であったボズバエフがツアー常連選手を相手に右背負投を決めまくって優勝したことは、戦術派に煮え湯を飲まされてきた正統派にとって大きな希望となるのではないだろうか。

釘丸太一(センコー)と小林悠輔(旭化成)の日本勢2人はどちらも初戦(2回戦)でつまずき予選ラウンド敗退。釘丸は第1シードのファンテンドを相手に「指導2」を奪うなど優位に試合を進めたが、最終盤に仕掛けた不用意な左大外刈を返されてしまい大外返「技有」で敗れた。一方の小林もマルギアニの密着柔道の前にほとんどなにも出来ないまま「指導3」(3:19)を失い敗戦。釘丸と小林が揃って結果を残せなかったことで、今シリーズにおける日本の90kg級は、内容的にはまったくの不出来であったデュッセルドルフ大会3位の西山大希(新日鐵住金)が最高成績者という一種の非常事態に陥ってしまった。リオデジャネイロ五輪金メダリストのベイカー茉秋(東海大4年)が4月の選抜体重別にエントリーしているものの、故障からの回復具合や調整状況はいまだ明確ではない。2014年の100kg級に続く「派遣なし」というシナリオを意識せずにはいられない、この階級の厳しい現状を色濃く反映した結果となった。

決勝ラウンドの結果、および決勝と日本選手全試合の戦評は下記。

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90kg級上位入賞者。左からメディエフ、ボズバエフ、ナーバリ、マルギアニ。

【敗者復活戦】
クエジョ・ナーバリ(ウクライナ)○内股(2:50)△ノエル・ファンテンド(オランダ)
ウサンギ・マルギアニ(ジョージア)○片手絞(1:28)△マティアス・クーシク(エストニア)

【準決勝】
イスラム・ボズバエフ(カザフスタン)○GS背負投(GS1:08)△ツラル・サフグリエフ(アゼルバイジャン)
ママダリ・メディエフ(アゼルバイジャン)○優勢[技有・隅返]△ラスル・アブドゥルハグ(アゼルバイジャン)

【3位決定戦】
クエジョ・ナーバリ(ハンガリー)○大外落(3:47)△ラスル・アブドゥルハグ(アゼルバイジャン)
ウサンギ・マルギアニ(ジョージア)○隅落(0:38)△ツラル・サフグリエフ(アゼルバイジャン)

【決勝】
イスラム・ボズバエフ(カザフスタン)○優勢[技有・背負投]△ママダリ・メディエフ(アゼルバイジャン)
ボズバエフが右、メディエフが左組みのケンカ四つ。密着したいメディエフと距離を取りたいボズバエフという構図で試合が進行。20秒にボズバエフに片襟を握り続けた咎で1つ目の「指導」が与えられる。さらに1分31秒には組み合わない咎で2つ目の「指導」が累積。2分半を残してボズバエフは早くも後がなくなってしまう。このままメディエフが試合を決めるかと思われたが、もはや投げるしかないボズバエフが攻勢に出ると展開は拮抗、決定打がないまま残り1分まで試合が進行する。残り50秒、勝負を急いだメディエフが奥襟を持ってあおると、ボズバエフはタイミングよく右背負投に飛び込み「技有」を獲得。さらに残り20秒には追い上げを図るメディエフを再度右背負投で転がして2つ目の「技有」を追加する。新鋭ボズバエフが地元選手であるメディエフを下して、見事優勝を飾った。

【日本代表選手勝ち上がり】

釘丸太一(センコー)
成績:2回戦敗退


[2回戦]
釘丸太一△優勢[技有・大外返]○ノエル・ファンテンド(オランダ)
釘丸が左、ファンテンドが右組みのケンカ四つ。ファンテンドは右組みから左技を狙う得意の変則スタイル。18秒、釘丸の引き手を嫌ったファンテンドに早くも1つ目の「指導」。ファンテンドは得意の左一本背負投を連発して主導権を握りに掛かるが、釘丸も要所で技を仕掛けて展開を譲らない。この構図のまま試合は終盤まで進行、時間の経過とともに地力に勝る釘丸優位の時間帯が増えていく。3分7秒には釘丸の指を握った咎でファンテンドに2つ目の「指導」。後のなくなったファンテンドは雑な技で決着の引き伸ばしを図り、この段階に至って試合は完全に釘丸のペースとなる。しかし、残り20秒に釘丸は釣り手のみの不十分な体勢から左大外刈を仕掛けるミスを犯してしまう。当然ファンテンドは大外返でこれを迎撃、巻き込まれる形で転がった釘丸は致命的な「技有」失陥。「待て」の時点で残り時間は僅か7秒、もはやスクランブルを掛ける間はなくそのまま試合は終了となる。釘丸は大枠で優位を確保しながら、最終盤で詰めの甘さが出て初戦敗退。勿体ない一番であった。


小林悠輔(旭化成)
成績:2回戦敗退


[2回戦]
小林悠輔△反則[指導3](3:19)○ウサンギ・マルギアニ(ジョージア)
小林が左、マルギアニが右組みのケンカ四つ。小林は左右関係なく密着してくるマルギアニに大苦戦。背中を持たれて押し込まれ、1分10秒に極端な防御姿勢の咎で1つ目の「指導」を失う。直後の1分34秒には小林の組み手を嫌ったマルギアニにも「指導」が与えられるが、この「指導」によりマルギアニの圧殺戦法はかえって加速。2分9秒には圧を受けて場外に出た小林に2つ目の「指導」が累積する。あと1つ「指導」を奪えば勝利できるマルギアニは両袖を絞って膠着を演出、時折背中を叩きながら自身の優位を確保し続ける。3分19秒、背中を叩かれた小林が畳に伏せると、主審は極端な防御姿勢の咎で小林に3つ目の「指導」を宣告。小林はほとんどなにもさせてもらえないまま畳を去ることとなった。

■ 100kg級・好調のミハエル・コレルが決勝でエルマー・ガシモフを破りグランドスラム初優勝
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100kg級決勝、ミハエル・コレルが一本右背負投でエルマー・ガシモフを攻める

(エントリー11名)

【入賞者】
1.KORREL, Michael (NED)
2.GASIMOV, Elmar (AZE)
3.CIRJENICS, Miklos (HUN)
3.MAMMADOV, Elkhan (AZE)
5.PALTCHIK, Peter (ISR)
5.KOTSOIEV, Zelym (AZE)
7.MINASKIN, Grigori (EST)
7.NIKIFOROV, Toma (BEL)

リオデジャネイロ五輪銀メダリストのエルマー・ガシモフと2013年リオデジャネイロ世界選手権チャンピオンのエルハン・ママドフの地元アゼルバイジャン勢2人がトーナメントの柱。これにグリゴリ・ミナシキン(エストニア)、ミハエル・コレル(オランダ)、トマ・ニキフォロフ(ベルギー)といった直近の大会で好成績を残している中堅選手が挑むという構図のトーナメントとなった。

このなかを決勝まで勝ち上がったのはガシモフとコレルの2人。決勝は合計7分36秒に及ぶ大消耗戦となり、コレルが「指導2」(GS3:46)で勝利してグランドスラム初優勝を飾った。

23歳のコレルは今まさに売り出し中の若手選手。昨年来少しずつ結果を残すようになって来ていたが、今回の優勝でついにワールドランクは2位まで上昇した。さすがにこの位置に留まり続けることは難しいと思われるが、これまで長年にわたりオランダの1番手を張ってきたヘンク・フロル(オランダ)が31歳であることを考慮すると、今後はコレルが同国の1番手に座ると見ておいたほうが良いだろう。コレルの強みは柔道着の上からでも分かるほどに鍛え上げられた鋼の肉体と延長戦に入っても攻め続けることができる無尽蔵のスタミナ。今大会の決勝でも組み合うこと自体でガシモフの消耗を誘い、7分半に及ぶ長期戦を戦っても最後までほとんど疲れた素振りを見せなかった。試合が長引きがちな新ルールにおいてコレルの体の強さはその優位性を増しており、今後トップ層の一人として定着することは間違いないだろう。

決勝ラウンドの結果、および決勝と日本選手全試合の戦評は下記。

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100kg級上位入賞者。左からガシモフ、コレル、サーイエニッチ、ママドフ。

【入賞者】
1.KORREL, Michael (NED)
2.GASIMOV, Elmar (AZE)
3.CIRJENICS, Miklos (HUN)
3.MAMMADOV, Elkhan (AZE)
5.PALTCHIK, Peter (ISR)
5.KOTSOIEV, Zelym (AZE)
7.MINASKIN, Grigori (EST)
7.NIKIFOROV, Toma (BEL)

リオデジャネイロ五輪銀メダリストのエルマー・ガシモフと2013年リオデジャネイロ世界選手権チャンピオンのエルハン・ママドフの地元アゼルバイジャン勢2人がトーナメントの柱。これにグリゴリ・ミナシキン(エストニア)、ミハエル・コレル(オランダ)、トマ・ニキフォロフ(ベルギー)といった直近の大会で好成績を残している中堅選手が挑むという構図のトーナメントとなった。

このなかを決勝まで勝ち上がったのはガシモフとコレルの2人。決勝は合計7分36秒に及ぶ大消耗戦となり、コレルが「指導2」(GS3:46)で勝利してグランドスラム初優勝を飾った。

23歳のコレルは今まさに売り出し中の若手選手。昨年来少しずつ結果を残すようになって来ていたが、今回の優勝でついにワールドランクは2位まで上昇した。さすがにこの位置に留まり続けることは難しいと思われるが、これまで長年にわたりオランダの1番手を張ってきたヘンク・フロル(オランダ)が31歳であることを考慮すると、今後はコレルが同国の1番手に座ると見ておいたほうが良いだろう。コレルの強みは柔道着の上からでも分かるほどに鍛え上げられた鋼の肉体と延長戦に入っても攻め続けることができる無尽蔵のスタミナ。今大会の決勝でも組み合うこと自体でガシモフの消耗を誘い、7分半に及ぶ長期戦を戦っても最後までほとんど疲れた素振りを見せなかった。試合が長引きがちな新ルールにおいてコレルの体の強さはその優位性を増しており、今後トップ層の一人として定着することは間違いないだろう。

決勝ラウンドの結果、および決勝と日本選手全試合の戦評は下記。

【敗者復活戦】
ピーター・パルチク(イスラエル)○GS大外落(GS0:16)△グリゴリ・ミナシキン(エストニア)
ゼリム・コトソイエフ(アゼルバイジャン)○優勢[技有・隅落]△トマ・ニキフォロフ(ベルギー)

【準決勝】
エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)○反則[指導3](3:56)△エルハン・ママドフ(アゼルバイジャン)
ミハエル・コレル(オランダ)○優勢[技有・一本背負投]△ミコロス・サーイエニッチ(ハンガリー)

【3位決定戦】
ミコロス・サーイエニッチ(ハンガリー)○後袈裟固(1:34)△ピーター・パルチク(イスラエル)
エルハン・ママドフ(アゼルバイジャン)○反則[指導3](3:34)△ゼリム・コトソイエフ(アゼルバイジャン)

【決勝】
ミハエル・コレル(オランダ)○GS指導2(GS3:46)△エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)
コレルが左、ガシモフが右組みのケンカ四つ。ガシモフは釣り手で相手の上腕部を持つ得意の形で試合を進める。2分すぎにコレルが切れ味鋭い右小内刈を放つとガシモフは大きく崩れて畳に落下。ポイント獲得には至らなかったものの、直後の寝技の攻防を経た2分31秒に主審はガシモフに1つ目の「指導」を与える。これ以降は大きな動きがないまま試合が進み、勝負はGSの延長戦へと突入。GS35秒には右一本背負投が抜けてしまったコレルに偽装攻撃の咎で「指導」が与えられ、両者「指導1」でポイントが並ぶ。追い付くことに成功したガシモフだがこの辺りからスタミナが切れ始め、「待て」の度に座り込むことを繰り返すようになる。いつガシモフに「指導」が来てもおかしくない状況が続く中、地元判定に助けられる形で試合が延長。しかしGS3分46秒についにガシモフに2つ目の「指導」が宣告され、コレルの優勝が決まった。

※日本代表選手の出場はなし

■ 100kg超級・担ぎ技の冴えた新鋭グラム・ツシシヴィリがワールドツアー初優勝
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100kg超級決勝、グラム・ツシシヴィリが変形の左背負投でバルナ・ボールから「技有

(エントリー13名)

【入賞者】
1.TUSHISHVILI, Guram (GEO)
2.BOR, Barna (HUN)
3.BONDARENKO, Stanislav (UKR)
3.BUGHADZE, Onise (GEO)
5.ULZIIBAYAR, Duurenbayar (MGL)
5.KOKAURI, Ushangi (AZE)
7.SILVA, Rafael (BRA)
7.MEYER, Roy (NED)

参加人数は13名と少ないものの、リオデジャネイロ五輪銅メダリストのラファエル・シウバ(ブラジル)を筆頭にバルナ・ボール(ハンガリー)やロイ・メイヤー(オランダ)といった強豪が複数参戦。なんとかグランドスラム大会としては最低限のレベルを保った、なかなかの好トーナメントとなった。

この中を最後まで勝ち抜き表彰台の頂点に登ったのは22歳の新鋭グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)。ツシシヴィリはシウバ直下の第8シードという厳しい配置から大会をスタート。1回戦ではアイハン・ジャハロフ(アゼルバイジャン)をあっという間の腕挫十字固「一本」(0:20)に仕留める圧勝。シウバとマッチアップした準々決勝では袖口グリップと機動力を生かしてインサイドワークの権化とも言うべきシウバを圧倒、一方的に攻め続けた末に左袖釣込腰「一本」(3:33)を奪って勝利。準決勝でははウサンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)と対戦、力自慢の相手を袖口を握っての左袖釣込腰「一本」(1:06)で畳に沈めてついに決勝進出。迎えた決勝の相手は逆側の山をしぶとく「指導」ポイントのみで勝ち上がってきたバルナ・ボール(ハンガリー)。ツシシヴィリはこの試合でも袖口をつかんで相手をコントロールし、左背負落「一本」(1:00)の圧勝。みごと優勝を決めた。

もはや語る必要もないだろうが、ツシシヴィリが今大会で優勝を果たした最大の要因はやはり袖口グリップの使用。戦術派として鳴らしているシウバとボールがなにもできないまま翻弄される姿は、新ルールにおける「流派の交代」の絵として象徴的であった。シウバがワールドツアーにおいて立技で「一本」を奪われるのは、2014年グランプリ・デュッセルドルフ大会準々決勝の上川大樹(京葉ガス)戦以来実に3年ぶり。相手を手前でさばくのが得意なシウバであるが、袖口を深く握ったツシシヴィリのグリップ力の前に為す術なく転がってしまった。

アスリート体型で袖を絞られた状態からでも左右の袖釣込腰が使えるツシシヴィリは対リネールという意味でも非常に面白い存在。リネールの組み手に対するこだわりとルールへの適応力を考えれば難しいかもしれないが、もしリネールが新ルールに対応するのが遅れたならば勝利を得るのはツシシヴィリではないか。そんな想像を膨らませてくれる圧勝劇だった。

決勝ラウンドの結果、および決勝と日本選手全試合の戦評は下記。

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100kg超級上位入賞者、左からボール、ツシシヴィリ、ボンダレンコ、ブグハゼ。

【敗者復活戦】
オニセ・ブグハゼ(ジョージア)○足車(3:48)△ロイ・メイヤー(オランダ)
ウルジバヤル・デューレンバヤル(モンゴル)○反則[指導3](2:11)△ラファエル・シウバ(ブラジル)

【準決勝】
グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)○袖釣込腰(1:06)△ウサンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)
バルナ・ボール(ハンガリー)○反則[指導3](3:44)△スタニスラフ・ボンダレンコ(ウクライナ)

【3位決定戦】
スタニスラフ・ボンダレンコ(ウクライナ)○反則[指導3](3:09)△ウルジバヤル・デューレンバヤル(モンゴル)
オニセ・ブグハゼ(ジョージア)○優勢[技有・浮落]△ウサンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)

【決勝】
グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)○背負落(1:00)△バルナ・ボール(ハンガリー)
ツシシヴィリが左、ボールが両組み。ボールは自身も左組みに構えて相四つで組み手をスタートする。28秒、ツシシヴィリは手をクロスさせるように持つ変形の左背負投でまずは「技有」を奪取。1分ちょうどには相手の足を大外刈のように刈り込む片襟の左背負落で「一本」を獲得する。ツシシヴィリが1分間に相手を2度投げつける圧勝で見事優勝を果たした。

※日本代表選手の出場はなし

■ 78kg級・フッシェ・ステインハウスがマルヒンダ・フェルケルクとの決勝を制して優勝、吉村静織は3位を獲得
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78kg級決勝、フッシェ・ステインハウスがマルヒンダ・フェルケルクから左払巻込「技有」

(エントリー12名)

【入賞者】
1.STEENHUIS, Guusje (NED)
2.VERKERK, Marhinde (NED)
3.JOO, Abigel (HUN)
3.YOSHIMURA, Shiori (JPN)
5.AMANGELDIYEVA, Albina (KAZ)
5.SOARES, Samanta (BRA)
7.HASANLI, Gunel (AZE)
7.TSEND-AYUSH, Naranjargal (MGL)

フッシェ・ステインハウス(オランダ)とマルヒンダ・フェルケルク(オランダ)のオランダ勢2人がトーナメントの中心。これに吉村静織(三井住友海上)とアビゲイル・ヨー(ハンガリー)がそれぞれ準決勝で挑むというのがこの階級の大枠の構図だ。トーナメントは順当に進行、事前の予想どおりこの4人が準決勝まで勝ち上がり、ステインハウスとフェルケルクが決勝進出を果たした。決勝では若くて勢いのあるステインハウスがベテランのフェルケルクを終始圧倒。左払巻込「技有」から後袈裟固「一本」(3:13)を奪う快勝で優勝を決めた。敗れたフェルケルクは負傷したのか立ち上がることが出来ず、ステインハウスの手を借りて開始線に帰投。この絵は同国の世代交代を印象付けるものとして象徴的であった。

ステインハウスは2015年シーズンに一気に台頭してきた若手選手で、昨年は国際大会でフェルケルク以上の結果を残しながらこの躍進が代表選考に間に合わず、実績の差でリオデジャネイロ五輪出場を逃している。両者が揃って派遣されたことからもオランダが今大会を世代交代の場として設定したであろうことは推測でき、その期待にステインハウスが見事応えて見せた形だ。

吉村は前述のとおり準決勝で優勝したステインハウスに敗れて3位。1週間前に皇后盃の東京予選で決勝まで戦っていることを勘案すれば十分に立派な成績だ。今大会では敗れた試合以外の全試合で寝技による「一本」を奪う吉村らしい柔道を披露、得意の寝技が世界にも通用することを証明してみせた。とはいえ、これは同時に立技に大きな課題を残していることの証明でもある。準決勝のステインハウスでは相手が寝技を徹底警戒、吉村は1度しか寝勝負に持ち込めず、最後は無理やり引き込もうとして仕掛けた巴投で偽装攻撃の「指導」を失って敗れている。1回戦では中堅選手のアナスタシア・タルチン(ウクライナ)にも組み負けて苦しい状況を作ってしまっており、寝技の強さを十分に発揮するためにも立技の強化は急務であると言えるだろう。

決勝ラウンドの結果、および決勝と日本選手全試合の戦評は下記。

◆      ◆      ◆
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78kg級3位決定戦、吉村静織がサマンタ・ソアレスを崩上四方固で抑え込み「一本」

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78kg級上位入賞者。左からステインハウス、ヨー、吉村。
※フェルケルクは負傷のため表彰式を欠席

【敗者復活戦】
アルビナ・アマンゲルディエワ(カザフスタン)○片手絞(1:06)△グネル・ハサンリ(アゼルバイジャン)
ツェンドアユシュ・ナランジャルガル(モンゴル)○釣込腰(1:05)△サマンタ・ソアレス(ブラジル)

【準決勝】
フッシェ・ステインハウス(オランダ)○GS指導2(GS1:12)△吉村静織
マルヒンダ・フェルケルク(オランダ)○優勢[技有・支釣込足]△アビゲイル・ヨー(ハンガリー)

【3位決定戦】
アビゲイル・ヨー(ハンガリー)○大内刈(2:02)△アルビナ・アマンゲルディエワ(カザフスタン)
吉村静織○崩上四方固(1:42)△サマンタ・ソアレス(ブラジル)

【決勝】
フッシェ・ステインハウス(オランダ)○後袈裟固(3:13)△マルヒンダ・フェルケルク(オランダ)
左相四つ。地力に勝るステインハウスが奥襟を持って圧を掛け、試合巧者のフェルケルクが担ぎ技を仕掛けながら凌ぐ構図で試合が進行。時間の経過とともにステインハウスの圧が効き始め、2分47秒に左大外刈から腕を抱え直して左払巻込に連絡するとフェルケルクは陥落、勢いよく背中から畳に落ちる。「一本」級の一撃だったが、主審は「技有」を宣告。ステインハウスはそのまま後袈裟固で抑え込み「一本」に辿り着く。あまりに強烈な一撃にフェルケルクは負傷、ステインハウスの手を借りて開始線へと戻った。

【日本代表選手勝ち上がり】

吉村静織(三井住友海上)
成績:3位


[1回戦]
吉村静織○GS肩固(GS0:55)△アナスタシア・タルチン(ウクライナ)
左相四つ。タルチンが奥襟を持ち、吉村が釣り手や脇を突いて距離を取る構図で試合が進行。20秒にタルチンが左外巻込で掛け潰れると吉村は「横返し」からの肩固を狙い、この攻防で40秒近くが消費される。吉村の出血で試合が中断した後、続く展開でも吉村はタルチンの左大内刈を潰して「横返し」。今度も決め切れなかったが、寝技を警戒したタルチンは手数が減り、組み手での優位確保に注力するようになる。パワーに勝るタルチンが組み手圧殺を志向したことで、これ以降吉村は組み手では劣勢。しかし、強引な左内股込や左払巻込を放つことで流れは渡さない。残り30秒には反対に技の出ていないタルチンに「指導」が与えられる。以降はポイントの変動がないまま本戦が終了、勝負はGSの延長戦へ。GS25秒、タルチンが左外巻込で潰れると吉村は再三試みている「横返し」からの肩固を試み、ついに抑え込むことに成功する。完全に肩が極まったこの技にタルチンはもがくこともできず万事休す。吉村が得意の寝技で初戦を突破した。

[準々決勝]
吉村静織○肩固(1:18)△アルビナ・アマンゲルディエワ(カザフスタン)
左相四つ。吉村は支釣込足で反時計回りに相手を伏せさせ、得意の「横返し」から縦四方固で抑え込む。これは足を絡まれてしまい「解けた」となるが、上体の拘束を緩めず足を抜くと今度は肩固で抑え込み直す。20秒が経過する直前、諦めたアマンゲルディエワが「参った」を表明して試合が決着。吉村が初戦に続いて得意の寝技で勝利した。

[準決勝]
吉村静織△GS指導2(GS1:12)○フッシェ・ステインハウス(オランダ)
左相四つ。試合開始からステインハウス優位の膠着が続き、20秒に吉村に1つ目の「指導」が与えられる。これ以降はステインハウスが奥襟を持ち、吉村が釣り手や脇を突いてこれを凌ぐ構図で試合が進行。寝勝負を挑みたい吉村だが、体幹の強いステインハウスを崩すことができず、なかなか寝技まで持ち込むことができない。2分すぎ、左大外刈を狙ったステインハウスが畳に伏せる千載一遇のチャンスが到来。吉村はすかさず寝技に移行し得意の「横返し」から抑え込みを狙う。足さえ抜ければ抑え込める形まで寝技を展開するが、ここはステインハウスが凌ぎ切って「待て」。吉村は絶好の勝機を逃してしまう。これ以降大きな動きがないまま本戦が終了し、勝負はGSの延長戦へ。延長戦に入ってもステインハウス優位での膠着状態は継続。GS1分すぎに吉村は巴投を放つが、手が離れたために技が浅くなってしまう。主審はこれを偽装攻撃と判断して吉村に2つ目の「指導」を宣告。これでステインハウスの勝利が決まった。吉村は寝技のチャンスを生かすことができず、地力で押し切られる形で敗れた。

[3位決定戦]
吉村静織○崩上四方固(1:42)△サマンタ・ソアレス(ブラジル)
左相四つ。吉村が左外巻込で伏せるとソアレスは絞め技を狙う。しかし、これは吉村が凌ぎ切って「待て」。ここから組み手争いによる膠着が続き、1分10秒にソアレスが吉村の左出足払に燕返を合わせて「技有」を獲得する。リードを許した吉村だが、腕挫十字固を狙ったソアレスが腕を離してしまうミスを犯すと過たず相手に被さり崩上四方固で抑え込む。そのまま20秒が経過し主審は「一本」を宣告。初歩的な失策により逆転負けを喫したソアレスは空を見つめてしばし立ち上がれず。吉村が相手のミスを逃さず逆転勝ち、自身初となるワールドツアーの表彰台に辿り着いた。

■ 78kg超級・テッシー・サフェルコウルスがワールドツアー初優勝
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78kg超級決勝、テッシー・サフェルコウルスがカイラ・サイートを袈裟固で抑え込み「一本」

(エントリー9名)

【入賞者】
1.SAVELKOULS, Tessie (NED)
2.SAYIT, Kayra (TUR)
3.KALANINA, Yelyzaveta (UKR)
3.IAROMKA, Svitlana (UKR)
5.PAKENYTE, Santa (LTU)
5.CERIC, Larisa (BIH)
7.YAMAKAWA, Camila (BRA)
7.JABLONSKYTE, Sandra (LTU)

階級の第2グループに属している選手のみで構成された、第7シードまでの全員に優勝のチャンスがある戦国トーナメント。その中をテッシー・サフェルコウルス(オランダ)とカイラ・サイート(トルコ)の2人が決勝まで勝ち上がり、サフェルコウルスが左一本背負投「技有」からの袈裟固「一本」(2:21)で勝利して自身初のワールドツアー優勝を果たした。

サフェルコウルス優勝の原動力は他階級の例に漏れず、袖口グリップの使用によるアドバンテージ。準々決勝と準決勝では自分より地力が上のサンタ・パケニテ(リトアニア)とラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)をどちらも袖口グリップで完封、「指導3」の完封で勝利している。バクー大会に至ってこの「グリップ」の威力のすさまじさが一線の選手たちに知れ渡るようになり、力関係がまったく変わる試合が各階級で続出。ついに女子にもその影響が及び始めたということになる。ここまで試合の様相が変わってしまうようだと再度禁止されるのではないかと心配になってしまうほどだ。

100kg超級でラファエル・シウバ(ブラジル)が袖口を握られて何も出来ないままグラム・ツシヴィリ(ジョージア)に敗れていることからも分かるとおり、階級内の体格差が大きい最重量級においてアスリートタイプの選手が袖口グリップを使用することは軽量級のそれよりも大きな効果を発揮する。階級の序列が一気に変わってしまう可能性さえ感じさせる、サフェルコウルスの優勝だった。

この日サフェルコウルス以外で目立っていたのは、3位になったイェザヴェータ・カラニナ(ウクライナ)。これが自身初のワールドツアーの表彰台でもある。カラニナは1回戦で同国の1番手であるスヴィトラナ・イアロムカ(ウクライナ)と対戦。短躯で重心が低い相手を長い手足を生かした縦四方固で破って初戦を突破し、サイートに敗れて回った3位決定戦では昨年のグランドスラム・アブダビ大会で体格差によって一蹴されているサンタ・パケニテ(リトアニア)を右内股「技有」(GS1:02)で真正面から撃破、見事3位を獲得してみせた。これまでは2メートルの長身をコントロールし切れていなかったが、今大会ではこの点が大きく改善された印象だ。アンコ型の選手が多い78kg超級において均整の取れた体型のカラニナは貴重な存在。パケニテを破った地力は本物であり、今後どのような選手に成長していくのか非常に楽しみだ。

決勝ラウンドの結果、および決勝と日本選手全試合の戦評は下記。

eJudo Photo
78kg超級上位入賞者。左からサイート、サフェルコウルス、イアロムカ、カラニナ。

【敗者復活戦】
サンタ・パケニテ(リトアニア)○反則[指導3](2:36)△カミラ・ヤマカワ(ブラジル)
スヴィトラナ・イアロムカ(ウクライナ)○足車(1:37)△サンドラ・ヤブロンスキーテ(リトアニア)

【準決勝】
カイラ・サイート(トルコ)○優勢[技有・外巻込]△イェザヴェータ・カラニナ(ウクライナ)
テッシー・サフェルコウルス(オランダ)○反則[指導3](3:11)△ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴビア)

【3位決定戦】
イェザヴェータ・カラニナ(ウクライナ)○GS技有・内股(GS1:02)△サンタ・パケニテ(リトアニア)
スヴィトラナ・イアロムカ(ウクライナ)○反則[指導3](2:51)△ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴビア)

【決勝】
テッシー・サフェルコウルス(オランダ)○袈裟固(2:21)△カイラ・サイート(トルコ)
右相四つ。距離を取って担ぎ技を狙いたいサフェルコウルスと、密着してパワーを生かしたいサイートという構図で試合が進行。組み合っての膠着が続き、49秒に両者に「指導」が与えられる。2分すぎ、サフェルコウルスは相手を反時計回りに回しながら左一本背負投に飛び込み「技有」を獲得。そのまま袈裟固で抑え込む。完全に固められてしまったサイートは途中で諦め「参った」を表明。サフェルコウルスが「一本」で勝利して自身初となるワールドツアータイトルを獲得した。


※日本代表選手の出場はなし

※ eJudoメルマガ版3月17日掲載記事より転載・編集しています。

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