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グランドスラム・バクー第2日4階級レポート

(2017年3月17日)

※ eJudoメルマガ版3月17日掲載記事より転載・編集しています。
第2日4階級(男子73kg級、81kg級、90kg級、女子63kg級、70kg級)レポート
グランドスラム・バクー
■ 73kg級・ガンバータル・オドバヤルが優勝、中矢力はルスタン・オルジョフを下す活躍を見せるも決勝で苦杯
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73kg級決勝、中矢はガンバータル・オドバヤルと対戦

(エントリー19名)

【入賞者】
1.GANBAATAR, Odbayar (MGL)
2.NAKAYA, Riki (JPN)
3.ORUJOV, Rustam (AZE)
3.UNGVARI, Miklos (HUN)
5.SHAVDATUASHVILI, Lasha (GEO)
5.HEYDAROV, Hidayat (AZE)
7.KANIVETS, Dmytro (UKR)
7.VALIYEV, Telman (AZE)

中矢力にルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)、ラシャ・シャヴタトゥアシヴィリ(ジョージア)と非常に役者の揃ったハイレベルトーナメント。その中で第3シードにランクされたガンバータル・オドバヤル(モンゴル)が快進撃、決勝で中矢を隅落「技有」で破って優勝を果たした。

ガンバータルは今大会がワールドツアー初優勝。以前から階級上位の実力者ではあったが、初日に行われた2階級の勝者と同様に袖口グリップを駆使することで自身のレベルを一段引き上げていた。もともと体の強さは階級随一のガンバータルだが袖口を握ることで相手を拘束する力が飛躍的にアップ、柔道スタイルとルールが噛み合う形で驚異的な安定感が生まれ、トップレベルの強豪と連戦した準決勝以降もほとんど崩れる場面を見せなかった。今季新ルールを味方につけた他選手の例に漏れず技の取り味も増しており、8月の世界選手権では日本勢にとって非常に厄介な相手となりそうだ。

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73kg級準々決勝、中矢力がルスタン・オルジョフから右内股「技有」

中矢は前述の通りガンバータルに決勝で敗れたが、この陣容での2位確保は堂々たる成績、久々に存在感を示したと言って良いかと思われる。今大会で結果を残したことで2月シリーズで代表を務めた立川新(東海大1年)や土井健史(ダイコロ)を強烈に牽制、選抜体重別の結果次第では3番手の座を固められる位置まで序列を戻すことに成功した。今大会においては先に組んでは先制攻撃を仕掛け、組み負けると寝技に引き込むという泥臭い柔道スタイルを披露。不調から脱しようという強い意志が感じられる戦いぶりだった。

この泥臭さとともに今大会で目立っていたのは、中矢の一見トリッキーな、異次元的な柔道センス。勝負どころとなった準々決勝ではリオデジャネイロ五輪銀メダリストの強豪オルジョフから作用足を真横に上げる、通常であれば掛かるはずのない右内股で「技有」を奪って優勢勝ち。準決勝でもミコロス・ウングヴァリ(ハンガリー)を右袖釣込腰の失敗から強引に仕掛けた引込返「技有」(GS1:23)で投げて勝利し、変調の面白さを見せてくれた。

もともと中矢の投げは独特なものが多い。寝技中心の選手であった中矢が自身の柔道を脱構築するなかで見出した技術体系ということであろうが、これら「変」な技の幅と取り味が27歳となった今も止まることなく上がり続けているのは驚異的、そしてまことに興味深い。

成長し続けることをテコに世界の頂点まで登った中矢が、現在の両輪である泥臭さと独特の技術体系を噛み合わせて今年は一体どんな柔道を生みだしてくれるのか。これも非常に面白い観戦ポイントではないだろうか。

決勝ラウンドの結果、および決勝と日本選手全試合の戦評は下記。

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73kg級上位入賞者。左から中矢、ガンバータル、オルジョフ、ウングヴァリ。

【敗者復活戦】
ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)○反則(0:55)△カニヴェツ・ドミトロ(ウクライナ)
※いわゆる「ブリッジ反則負け」
ヒダヤト・ハイダロフ(アゼルバイジャン)○反則[指導3](3:33)△テルマン・ヴァリエフ(アゼルバイジャン)

【準決勝】
中矢力○GS技有・引込返(GS1:23)△ミコロス・ウングヴァリ(ハンガリー)
ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)○反則[指導3](2:28)△ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)

【3位決定戦】
ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)○GS技有・小外刈(GS1:55)△ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)
ミコロス・ウングヴァリ(ハンガリー)○裸絞(3:55)△ヒダヤト・ハイダロフ(アゼルバイジャン)

【決勝】
ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)○優勢[技有・隅落]△中矢力
中矢が右、ガンバータルが左組みのケンカ四つ。中矢はこれまでの試合と同様に担ぎ技による先手攻撃で試合に入る。組み合うとすぐに技を仕掛け、組み負ければすかさず巴投で寝勝負に引き込むこの戦法が功を奏して、序盤はひとまず中矢のペース。しかし、1分を過ぎたあたりからガンバータルが引き手で袖口を握って組み手をコントロールするようになり、中矢は思うように技を出すことが出来なくなる。1分33秒、中矢はガンバータルの引き手を嫌うあまり足を使ってこれを切ってしまい1つ目の「指導」を失う。以降もガンバータルの組み手を打開できないまま時間が過ぎ、2分27秒には技の出ない中矢に対して2つ目の「指導」が追加される。手詰まりとなった中矢は3分間際に右の「韓国背負い」で勝負に出るが、これはガンバータルに読まれており背中から引き落とされて隅落「技有」失陥。スクランブルを掛けて追い上げを図りたい中矢だが、ガンバータルの袖口グリップと体の強さの前に攻撃のきっかけをつかむことができず、残り5秒には反対に右一本背負投で「技有」を追加されてしまう。投げ終わった時点で時間は数秒しか残されておらず、そのまま試合終了。体の強さと袖口グリップを噛み合わせて一段強さのレベルを上げたガンバータルが結果としては中矢を圧倒、みごと優勝を果たした。

【日本代表選手勝ち上がり】

中矢力(ALSOK)
成績:2位


[2回戦]
中矢力○[指導3](3:23)△モハマド・モハマディ=バリマンロウ(イラン)
右相四つ。中矢は先手攻撃と寝勝負を徹底、組み合うなり先に担ぎ技や捨身技を仕掛け、そこから引き込んで寝技を狙う隙のない試合運び。中矢が一方的に攻める展開が続いたことで相手に「指導」が積み重なり、残り2分の時点でモハマディ=バリマンロウの反則累積は「2」となり早くも後がなくなる。ここまでは完全に中矢のペースだが、2分35秒に様相一変。モハマディ=バリマンロウが釣り手をクロスグリップに叩き入れると中矢は抱きついて右大内刈を狙うが、十分に距離を詰めきれなかったためにそのまま右払巻込で巻かれてしまい「技有」失陥。思わぬビハインドを負った中矢はしかし冷静、3分すぎに奥襟を持ってあおると相手はあっさり腰を引いた防御姿勢に逃げ込み、この形での膠着が続いた3分23秒に主審はモハマディ=バリマンロウに3つ目の「指導」を宣告する。ここで試合終了、相手の戦術レベルの未熟さに助けられた形ではあるが、中矢が逆転で初戦を突破することとなった。

[準々決勝]
中矢力○優勢[技有・内股]△ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)
中矢が右、オルジョフが左のケンカ四つ。お互いに警戒し合ってなかなか組み合おうとせず、オルジョフが奥襟を得るとすかさず中矢が右背負投に潜り込み展開をリセットするという膠着が中盤まで続く。1分50秒、オルジョフが奥襟を叩きに来たタイミングで中矢が「やぐら投げ」のよろしく真横に足を上げる変形の右内股に飛び込む。中矢の腰に乗る形となったオルジョフは対応仕切れずそのまま転がり落ちて「技有」。ここからは会場の悲鳴にも近い声援を背に猛攻を仕掛けるオルジョフと、それを凌ぎながらカウンターを狙い続ける中矢という構図で試合が進行する。2分40秒には右背負投で伏せた中矢をオルジョフが抱分でめくり返す場面が現出して会場は大歓声、ポイントが想起される一撃だったが中矢はこれを紙一重で回避する。以降もオルジョフは前に出て追い上げを図るが、中矢は「指導2」を失いながらもしっかりとこれを凌ぎ切ってクロージング。

[準決勝]
中矢力○GS技有・引込返(GS1:23)△ミコロス・ウングヴァリ(ハンガリー)
右相四つ。開始直後の13秒、中矢の組み手を嫌って場外に出たウングヴァリに1つ目の「指導」。1分間際に中矢が右袖釣込腰を仕掛けるとウングヴァリは「コーレイカ」の形から寝技を開始、中矢は転がされながらもこれを凌ぎ切る。以降は中矢が先手攻撃を仕掛け、ウングヴァリが寝技を狙うという構図で試合が進行。2分45秒、主審は中矢の立ち勝負における攻勢を認めてウングヴァリに2つ目の「指導」を追加する。後のなくなったウングヴァリはペースを上げて追い上げを図り、3分39秒には右一本背負投を空振りしてしまった中矢に偽装攻撃の咎で1つ目の「指導」が与えられる。結局本戦では勝負がつかず、スコア「指導1」対「指導2」のまま試合はGSの延長戦へ。延長戦でもウングヴァリの攻勢は継続され、GS23秒には相手の圧を嫌って巴投に引き込んだ中矢に2つ目となる「指導」。双方が「指導2」を失う、まさに後のない状況となる。GS1分23秒、中矢が右袖釣込腰を失敗して自ら伏せてしまうピンチ。偽装攻撃と判断されてもおかしくない場面であったが、しかしここで中矢は寝技を狙って被さってきたウングヴァリの勢いを自らの引込返に変換するという意外な選択、そのまま後方に転がして勝負を決する「技有」を獲得する。ギリギリの勝負どころで非凡な柔道センスを発揮した中矢が、みごと決勝進出を決めた。

[決勝]
中矢力△優勢[技有・隅落]○ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)

※前述のため戦評省略

■ 81kg級・大荒れのトーナメントをルファト・イスマイロフが制す、小外刈の冴えた小原拳哉は3位を獲得
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81kg級決勝、ルファト・イスマイロフが釣腰でサイード・モラエイを攻める

(エントリー19名)

【入賞者】
1.ISMAYILOV, Rufat (AZE)
2.MOLLAEI, Saeid (IRI)
3.OTGONBAATAR, Uuganbaatar (MGL)
3.KOHARA, Kenya (JPN)
5.IVANOV, Ivaylo (BUL)
5.UNGVARI, Attila (HUN)
7.PAPUNASHVILI, Giorgi (GEO)
7.DE WIT, Frank (NED)

ここ最近の81kg級の様相を受け継ぎ、今大会もトーナメントは大荒れ。決勝はともに無名と言って良いルファト・イスマイロフ(アゼルバイジャン)とサイード・モラエイ(イラン)の対決となり、イスマイロフが一本背負投「技有」を奪って勝利を得た。イスマイロフは地元アゼルバイジャン勢から今大会初の優勝、会場は大いに沸いた。

イスマイロフは準決勝で小原拳哉(東海大4年)を変形の浮落「一本」(0:32)で破っており、これは帯取返(通称「ハバレリ」)の形から掬投に近い理合いで仕掛ける面白い技。言うまでもなく帯取返は現在大流行中の技術であり、同じ形から試みることが出来るこの技は欧州を中心に今後多用される可能性も十分あるのではないだろうか。

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81kg級3決定戦、小原拳哉がアッティラ・ウングヴァリから左小外刈「一本」

小原は前述のとおり準決勝でイスマイロフに敗れてトーナメント本戦から脱落。それでも3位決定戦では先月のグランプリ・デュッセルドルフ大会で2位を獲得しているアッティラ・ウングヴァリ(ハンガリー)を下して表彰台を確保、しっかり結果は残した。渡邉勇人(了徳寺学園職)が怪我によって冬季欧州シリーズを欠場している状況下、空白域となっている2番手の確保に向けて大きなアピールに成功した形だ。

この日の小原は非常に足技が冴えており、これが勝ち上がりの原動力となっていた。今大会の締めが3位決定戦で見せた切れ味鋭い左小外刈「一本」であったあたりにこれは端的。この日の戦いぶりを観察する限り、小原の足技は既に実力差を無効化して相手を刈り取るレベルにまで達しつつあり、いずれ実現するであろう強豪との対戦が非常に楽しみ。駆使する技術が直接的なポイント獲得だけでなく展開上の優位確保にも有効な、汎用性の高いものであることも大いに買える。

グランドスラム・パリ大会覇者のフランク・デヴィト(オランダ)は準々決勝でモラエイと対戦、相手を抱き込んだところから肩車「技有」と「やぐら投げ」による「一本」(2:09)を立て続けに奪われて敗れた。回った敗者復活戦でもウングヴァリにクロスグリップへのカウンターの右大内刈で「技有」2つを奪われ、焦って抱きついたところをまたもや右大内刈で叩き落されて「一本」(3:49)失陥。初戦敗退に終わったグランプリ・デュッセルドルフ大会に続き、今回も表彰台に手が届かなかった。

決勝ラウンドの結果、および決勝と日本選手全試合の戦評は下記。

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81kg級上位入賞者。左からモラエイ、イスマイロフ、オトゴンバータル、小原。

【敗者復活戦】
イヴァイロ・イヴァノフ(ブルガリア)○優勢[技有・背負投]△ジョルジ・パプナシヴィリ(ジョージア)
アッティラ・ウングヴァリ(ハンガリー)○大内刈(3:49)△フランク・デヴィト(オランダ)

【準決勝】
ルファト・イスマイロフ(アゼルバイジャン)○浮落(0:32)△小原拳哉
サイード・モラエイ(イラン)○横四方固(3:45)△オトゴンバータル・ウーガンバータル(モンゴル)

【3位決定戦】
オトゴンバータル・ウーガンバータル(モンゴル)○[技有・大内返]△イヴァイロ・イヴァノフ(ブルガリア)
小原拳哉○小外刈(2:22)△アッティラ・ウングヴァリ(ハンガリー)

【決勝】
ルファト・イスマイロフ(アゼルバイジャン)○優勢[技有・一本背負投]△サイード・モラエイ(イラン)
左相四つ。イスマイロフは右組みで試合をスタート、モラエイがこれにケンカ四つで応じると瞬時に体を入れ替えて左一本背負投「技有」を獲得する。ビハインドを負ったモラエイは得意の右袖釣込腰で度々惜しい場面を作り出し、一方のイスマイロフも攻撃の手を緩めず真っ向から応戦、以降は常に投げの予感が漂う緊張感のある試合が繰り広げられる。結局、イスマイロフがモラエイの猛追を「指導2」までに抑えて試合終了。地元アゼルバイジャン勢として今大会初となる優勝を果たした。

【日本代表選手勝ち上がり】

小原拳哉(東海大4年)
成績:3位


[2回戦]
小原拳哉○反則[指導3](3:07)△エドゥアルド=ユウジ・サントス(ブラジル)
小原が左、サントスが右のケンカ四つ。地力に勝る小原が優位に組み手を展開、まずは25秒に場外へと押し出して「指導」を獲得する。しかし57秒には相手の引き手を足を使って切った咎で「指導」を失うミスを犯してしまい、変わらず展開優位もスコア上はタイ。しかし直後の1分10秒には左小外刈から「横三角」の形で寝技を展開して主導権を明確に奪回、ここからは一方的な組み手と攻めを続けて、1分52秒にサントスに2つ目の「指導」、3分7秒にはサントスに3つ目となる「指導」が与えられる。小原は危なげなく初戦突破決定。

[準々決勝]
小原拳哉○優勢[技有・谷落]△ジョルジ・パプナシヴィリ(ジョージア)
小原が左、パプナシヴィリが右組みのケンカ四つ。釣り手を突いて距離を取りたい小原と、背中を叩いて密着したいパプナシヴィリという構図で試合が進行。パプナシヴィリの技で終わる展開が続いたことで2分37秒に主審は小原に「指導」を宣告する。直後の2分39秒、小原は相手が奥襟を叩いて来たタイミングに合わせて谷落に滑り込んで「技有」を獲得。そのまま横四方固で抑え込む。これはすぐに逃げられてしまったが、「待て」の時点で残り時間はわずか33秒。リードを許したパプナシヴィリは必死の追い上げを見せるが、3分51秒には片側を持ち続けた咎で反対に「指導」を失ってしまう。このままタイムアップ、小原が「技有」優勢で準決勝進出を決めることとなった。

[準決勝]
小原拳哉△浮落(0:32)○ルファト・イスマイロフ(アゼルバイジャン)
左相四つ。小原はこの日切れている左小外刈でまず相手を伏せさせ、好調な立ち上がり。しかし直後の32秒、イスマイロフは釣り手をクロスグリップに叩き入れると引き手を小原の腹側に回して「立ち姿勢からの秋本返し」とでも呼ぶべき変形の浮落を仕掛ける。横変形の形で耐えようとしていた小原は自身の力を利用される形で右肩から勢いよく一回転。珍しい形だったが審判は冷静、的確に「一本」を宣告する。好調の小原であったが、変形技一発に沈む形で本戦トーナメントから脱落。

[3位決定戦]
小原拳哉○小外刈(2:22)△アッティラ・ウングヴァリ(ハンガリー)
小原が左、ウングヴァリが右組みのケンカ四つ。小原は得意の左小外刈で度々相手を畳に伏せさせる。49秒には早くもウングヴァリに「指導」が与えられ、試合の主導権は小原の側。ウングヴァリは小原の足技を警戒して組み合おうとしないが、小原は組み手争いに足技を混ぜながら少しずつ相手を追い詰めていく。2分22秒、ウングヴァリが右袖釣込腰を失敗するとその戻り際に小原が左小外刈。軽く当ててから二の矢で一気に刈り上げる、完璧なタイミングで繰り出された二段アクションにウングヴァリは勢いよく背中から畳に落ちて「一本」。小原が華麗な足技を見せて今大会を総括、見事3位を獲得した。

■ 63kg級・アリス・シュレシンジャーが圧勝、バクー大会2連覇飾る
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63kg級決勝、アリス・シュレシンジャーがアンドレイア・レスキ(スロベニア)から腕挫十字固「一本」

(エントリー7名)

【入賞者】
1.SCHLESINGER, Alice (GBR)
2.LESKI, Andreja (SLO)
3.KATIPOGLU, Busra (TUR)
3.HUSEYNOVA, Khanim (AZE)
5.AKHUNDOVA, Nuriyya (AZE)
5.KARIMOVA, Gulsadaf (AZE)
7.HAJIYEVA, Nargiz (AZE)

参加者がわずか7名という超小規模トーナメント、その中にあって唯一最大の目玉選手である第1シードのアリス・シュレシンジャー(イギリス)が出場した2試合いずれも「一本」を奪う圧勝で優勝を果たした。シュレシンジャーは準決勝から登場すると、まずはハニム・フセイノワ(アゼルバイジャン)を「技有」3つを奪った末の崩上四方固「一本」(3:02)で一蹴。決勝では準決勝でツアー常連のブスラ・カチポグル(トルコ)を破って勝ち上がってきたアンドレイア・レスキ(スロベニア)と対戦、体の力が強い相手に手を焼いたものの、最後は寝技に持ち込んで腕挫十字固「一本」(2:59)。昨年に続くグランドスラム・バクー大会連覇を達成した。

今大会の優勝によってシュレシンジャーは大量1000ポイントを獲得、わずか2試合を戦ったのみでワールドランクを4位まで上げることに成功した。大会のレベルを考慮すると実力評価という観点からはさほど価値はないが、国内にライバルがおらず既に十分な実績を残しているシュレシンジャーにとっては獲得ポイントがすべて。隙を見せず、かつ大量ポイントを獲得してと、世界選手権に向けた布石としては完璧すぎる大会であった。ティナ・トルステニャク(スロベニア)とクラリス・アグベニュー(フランス)の2強が他を大きく引き離している63kg級において、世界選手権で入賞するための鍵はいかにこの2人と戦わずに勝ち進むかにある。今後の大会スケジュールを眺めてもこのままシュレシンジャーが世界選手権のAシード枠を獲得する可能性は高く、イスラエル籍時代の2009年ロッテルダム世界選手権以来となるメダル獲得に向けて大きく前進した大会となった。


決勝ラウンドの結果、および決勝の戦評は下記。

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63kg級上位入賞者。左からレスキ、シュレシンジャー、カチポグル、フセイノワ。

【敗者復活戦】
グルサダフ・カリモワ(アゼルバイジャン)○不戦△ナルギズ・ハジエワ(アゼルバイジャン)
※出場者が8人に満たないため1試合のみ

【準決勝】
アリス・シュレシンジャー(イギリス)○崩上四方固(3:02)△ハニム・フセイノワ(アゼルバイジャン)
アンドレイア・レスキ(スロベニア)○GS技有・大外巻込(GS0:58)△ブスラ・カチポグル(トルコ)

【3位決定戦】
ブスラ・カチポグル(トルコ)○浮腰(2:42)△ヌリーヤ・アフンドワ(アゼルバイジャン)
ハニム・フセイノワ(アゼルバイジャン)○反則[指導3](3:51)△グルサダフ・カリモワ(アゼルバイジャン)

【決勝】
アリス・シュレシンジャー(イギリス)○腕挫十字固(2:59)△アンドレイア・レスキ(スロベニア)
シュレシンジャーが左、レスキが右組みのケンカ四つ。シュレシンジャーは序盤から左釣込腰に左袖釣込腰と持ち味である力強い技を連発、守勢となったレスキには1分42秒に「指導」が与えられる。3分間際、シュレシンジャーは左への支釣込足で相手を伏せさせると引き込んで腕挫十字固。うつ伏せ方向に転がりながら相手の腕を伸ばすとレスキは堪らず「参った」を表明する。シュレシンジャーが全試合一本勝ちの圧勝で優勝を決めた。

※日本代表選手の出場はなし

■ 70kg級・ユリ・アルベールが全試合「一本」の圧勝で優勝、次元の違う強さ見せつける<
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70kg級決勝、ユリ・アルベールがエルビスマール・ロドリゲスから右小外刈「一本」

(エントリー9名)

【入賞者】
1.ALVEAR, Yuri (COL)
2.RODRIGUEZ, Elvismar (IJF)
3.MATIC, Barbara (CRO)
3.SAMARDZIC, Aleksandra (BIH)
5.BEKTASKYZY, Zere (KAZ)
5.MIRZAZADA, Valida (AZE)
7.BAKHISHOVA, Aida (AZE)
7.IBRAHIMOVA, Nargiz (AZE)

63kg級と同様に参加者がわずか9名の超小規模トーナメント。その中にあってリオデジャネイロ五輪銀メダリストのユリ・アルベール(コロンビア)が別次元と評すべき圧倒的な強さを発揮、復帰戦をみごと優勝で飾った。これまでに3度世界選手権を制して2度五輪の表彰台に登っているアルベールだが、ワールドツアーを調整の場と位置づけて大会出場を絞って来たこともあり、意外なことにこれがツアー初優勝。トーナメントのレベルは決して高くなかったが、嬉しい初タイトル獲得となった。

アルベールの勝ち上がりはまさに圧巻。初戦となった準々決勝ではアイダ・バヒショワ(アゼルバイジャン)を横三角からの崩上四方固「一本」(0:51)で一蹴。準決勝のアレクサンドラ・サマルジッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)戦では相手が逃げ回ったために少々時間が掛かったが、それでも横四方固「一本」(2:18)でしっかり仕留めて決勝進出を果たした。迎えた決勝の相手は近頃すっかり表彰台の常連として定着した同じパンナム地域のパワーファイター、エルビスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)。この難敵を相手にアルベールがどのようなパフォーマンスを発揮するのか非常に興味深い一番であったが、結果はなんと右小外刈「一本」(0:23)による「秒殺」。あまりに早く、圧倒的な勝利であったためにほとんど試合をする姿を見ることができなかったが、わずか23秒の間にもハイレベルな足技のコンビネーションを披露しており(戦評をご確認いただきたい)、五輪前と比べて意欲、技術ともに全く錆びついていないこと周囲に示してみせた。

今大会の素晴らしい出来を見る限りアルベールの世界選手権に対するモチベーションは十分、初優勝を狙う新井千鶴(三井住友海上)の最大の障壁となることは間違いないだろう。アルベールは今大会の優勝によってワールドランクを2位まで上昇させており、もともと大会への出場を絞って調整を行うタイプであることを考慮するともはや世界選手権までワールドツアーに出てこない可能性も高い。今大会の圧倒的な戦いぶりからはむしろ余裕すら感じられ、新ルールへの対応も含めてこれからの半年間でどのような上積みをしてくるのか、柔道ファンとしては楽しみであると同時に背筋が寒くなる、そんなアルベールの圧勝劇だった。

決勝ラウンドの結果、および決勝と日本選手全試合の戦評は下記。

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70kg級上位入賞者。左からロドリゲス、アルベール、マティッチ、サマルジッチ。

【敗者復活戦】
ゼレ・ベクタスカイジ(カザフスタン)○腕挫十字固(0:46)△アイダ・バヒショワ(アゼルバイジャン)
ヴァリダ・ミルザザダ(アゼルバイジャン)○反則[指導3](2:31)△ナルギズ・イブラヒモワ(アゼルバイジャン)

【準決勝】
ユリ・アルベール(コロンビア)○横四方固(2:18)△アレクサンドラ・サマルジッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
エルビスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)○横四方固(3:55)△バルバラ・マティッチ(クロアチア)

【3位決定戦】
バルバラ・マティッチ(クロアチア)○内股(1:07)△ゼレ・ベクタスカイジ(カザフスタン)
アレクサンドラ・サマルジッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)○横四方固(2:45)△ヴァリダ・ミルザザダ(アゼルバイジャン)

【決勝】
ユリ・アルベール(コロンビア)○小外掛(0:23)△エルビスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)
右相四つ。奥襟を得たアルベールは左大内刈を軽く当てて相手の重心を自身の釣り手側に移動、引き手で相手の右脇を掬い上げながら強烈な右小外刈を叩き込む。体重が掛かった左足を刈られる格好となったロドリゲスは勢いよく背中から畳に落ちて「一本」。ここまでわずか23秒、アルベールが絶妙な足技のコンビネーションを見せて秒殺の圧勝で優勝を決めた。

※日本代表選手の出場はなし



文:林さとる
編集:古田英毅

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