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混戦世代の優勝候補筆頭は桐蔭学園、対抗一番手は崇徳高・全国高等学校柔道選手権大会男子団体戦プレビュー

(2017年3月16日)

※ eJudoメルマガ版3月16日掲載記事より転載・編集しています。
混戦世代の優勝候補筆頭は桐蔭学園、対抗一番手は崇徳高
全国高等学校柔道選手権大会男子団体戦プレビュー
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今年も聖地・日本武道館に各都道府県の代表が集う

高校生の春開幕。高校「三冠」タイトル最初の一、全国高等学校柔道選手権は3月19日と20日の両日、今年も聖地・日本武道館に47都道府県の代表が集って開催される。

eJudoでは10月の朱雀杯武道大会から冬季シリーズまで各種招待試合を直接取材、また各地の識者の情報提供をもとに各校の戦力を分析し続けて来た。これをもとに、まず体重無差別、五人制の抜き勝負で争われる男子団体戦の展望を試みたい。

■ 有力校

8校のシードチームは下記。

Aシード校 桐蔭学園高(神奈川)、崇徳高(広島)、大成高(愛知)、足立学園高(東京)
Bシード校 延岡学園高(宮崎)、神戸国際大附高(兵庫)、国士舘高(東京)、、埼玉栄高(埼玉)

のっけに一言だけシード校の選定について言わせて頂く。今年は久々の大混戦状況であることに加え、選定委員が大幅に変わった模様で情報収集の精度が落ちたか(過去の情報収集体制の凄まじい厚みを聞くだに、今回はこの感想を抱かざるを得ない)、率直に言って詰めの甘いピックアップだ。一貫したポリシーも、歴代選考委員の長所であった現場にコミットした高い見識も感じられない。具体的には本戦レギュレーションで戦うブロック大会の結果を無視して近畿大会優勝の東海大仰星高(大阪)を外し、直接対決で敗れた神戸国際大附属高(兵庫)を入れたこと。それにも関わらず東京ブロックの勝敗を尊重して招待試合シリーズで結果を残せなかった足立学園高を国士舘高の上に入れるというダブルスタンダードを行ったこと。もう1つは、イキの良いチームや結果を残しているチームが多数あるにも関わらず、招待試合シリーズで結果を残せず元気のない戦いを続けた埼玉栄高(埼玉)を最後の1枠に入れたこと。前者は例えば「近畿の結果が出る前に決めていたから」「他を調整していたらそうなってしまったから」というような消極的理由しか見い出せず (ただし神戸国際にはシードにふさわしい実力があることを付記しておきたい)、後者に関しては前回大会の成績をもとに消去法的に決めたくらいにしか、ちょっと理由が考えられない。選択に幅はあって然るべきだしその「揺れ」自体が面白さそのものなわけだが、せめて持っているポリシーが透けて見れるような、最低限周囲が「なるほど」と納得できるような精度の選考は行って欲しい。今の時代にあってなお、明確な基準を出さない密室討議を敢えて周囲が黙認している理由は、これまでの選考チームが為して来た仕事の精度が高くて面白く、周囲が納得できるレベルにあったからだと思う。改善を強く求めたい。

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優勝候補筆頭は桐蔭学園高

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「エイリアン」村尾三四郎の柔道は間違いなく今大会最大の見どころ

さて、本題。

優勝候補筆頭は桐蔭学園高(神奈川)。対抗馬は崇徳高(広島)で、これに第3シードの大成高(愛知)が続き、以下は例年にない大混戦となっている。きちんと今季の高校柔道をウォッチしているファンであれば、ここまで3校のピックアップとその位置関係までは基本的な「合意事項」かと思われる。

桐蔭学園高は戦力、個性ともに揃った非常に魅力的なチーム。昨夏のインターハイで100kg級3位に入った主将・関根聖隆をエースに村尾三四郎、賀持喜道、千野根有我の才能豊かな1年生3枚に、73kg級の佐藤虎太郎に66kg級の湯本祥真という軽量の仕事師2人を揃えた陣容は強さだけでなく、柔道自体に「魅せる」魅力が溢れている。

関根は尽きぬ攻撃意欲が最大の売りで、主戦武器は担ぎ技。片襟、片袖、一本背負投に袖釣込腰と左右形を問わずにどこからでも威力のある投げを打ち込んで来る。これに同型の上体アクションから繰り出される大外落と小内刈を組み合わせ、手数と優位確保に「取り味」を盛った現在のスタイルはまさしく「試合向き」の一言。全国大会出場権獲得後は二本持っての王道柔道を志して稽古を積んでいるとのこと、これが即座に効力を発揮するかはともかく地力の向上に益していることであろうことは間違いない。地力が上がり、いざとなれば前述の手数と取り味を両立させたスタイルに躊躇なく切り替えて来るこの選手の存在は打倒桐蔭を目指す各校にとっては非常に厄介。関根を倒さねば勝利なしとの壁は、なかなかに厚い。

昨年度全国中学大会81kg級王者・村尾三四郎の柔道はファンにとっては今大会最大の「見もの」になるかと思われる。しっかり二本持ち、釣り手の手首を巧みに動かし、足技で崩し、掛け潰れることなく大技にさらに大技を継いで最後に一発投げ切るそのスタイルは、多くの人間が志す「出来ないけど、やりたい柔道」そのもの。まったく表情を変えず、機と見るや長い手足を利して遠間から一気に相手を体ごと刈り取るその様は圧巻。そのスピード感、力感、特殊な体型、そして正統派柔道にも関わらずなぜか漂うモンスター的な異次元感を敢えて一言で表現するとすれば、その様「エイリアンの捕食」とでも言うべきか。まだ体力が足りず組み負ける場面もあるが、それでも一発投げ切ってしまうのではないかという、常に「何か」を期待させる大物感溢れる選手だ。

同じ1年生、81kg級で神奈川県個人代表を務める賀持喜道も取り味と柔道の質を両立させた面白い選手。村尾同様、組み負けても二本持ち続け、釣り手操作とステップワークの良さを軸に常に大技の「一本」を狙う柔道は、もはや競技力を超えてスタイル自体が眩しい。100kg超級全国中学大会王者の千野根有我は、秋口までは横腹の弱い巨艦という印象で強さと脆さが同居する選手だったが課題の体力面が改善されつつあり、抜き役としてだけではなく上位対戦において「エース潰し」的なロールを担えるところまでレベルを上げている。佐藤虎太郎と湯本祥真の軽量コンビも「自分の体重、体格に引け目はないのか」とこちらが驚かされるほど、どんな大型相手にも常に「一本」を狙い続ける怖い選手。佐藤の際の強さ、湯本の体躯に似合わぬ体幹の強さと担ぎの威力はこれまた大会の華として輝く可能性があるレベルにある。

というわけで泥臭く取り味ある関根、「剛」の村尾に「切れ」の賀持という天才肌の1年生2人、超大型の千野根に加えて佐藤と湯本の試合ぶり逞しい軽量コンビと、競技力だけでなく非常にキャラクターが立った面白いチームだ。しかし今回弊サイト「一押し」の最大の所以はその戦力ではなく、実はその成長力の高さにある。今代チームスタート期は崇徳高らと並ぶ有力候補の一という存在だった桐蔭学園は、そのままであれば「来年輝くチーム」としてベスト4シード当落線上にステイする可能性もあった。しかし招待試合シリーズと、若潮杯優勝で追いすがって来た県内のライバル・東海大相模高との激戦を経てチームが急成長。個はもちろんチーム総体としての「伸び率」で他校を大きく上回る。単に個人戦を並べたような朱雀杯の勝ちぶりから、黒潮旗(大成高に敗れ2位)の敗戦を経た招待試合期に、個々が役割を理解してチームがまとまっていく、その成長は非常に興味深かった。事実上の全国大会決勝とすら評された神奈川県予選を経た後に高松正裕監督が掲げた「全国の相手はこのレベルを目指してやってくる、本番までにさらに一段上に上がる」との方針も評価に値する。駒の体格的な凹凸や柔道自体の豊かさゆえソリッドな競技力という観点で見ると実は隙もあり、防御力の脆さも垣間見えるが、それを超えるだけの絶対値を獲得しつつあるのではないか。

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崇徳高は総合力の高さで頂点を目指す

対抗馬の崇徳高は、今季スタート時点では優勝候補の筆頭に挙げられていた強豪。長岡季空と神垣和也の得点力抜群のエース級2枚が看板で、これに安定感があってここ一番では長岡や神垣に劣らぬ取り味を発揮する兼藤仁士の3人がポイントゲッター役と位置付けられる。やはり5枚の総合力では大会随一であろう。長岡、神垣とも一方的な組み手支配から大技を繰り出し、粘られると見るや密着系の大技で投げに掛かるという2つのモードを駆使した取り味の高さが最大の武器。最初のモードが噛み合う相手には数秒で豪快な投げを決める場面も多々あり、一瞬も目の離せない面白い選手だ。ただし加美富章監督自ら認める通りその攻撃力の高さに比してチーム全体として意外に失点が多く、このあたりが最大の課題。長身で柔道に大物感漂う枇杷木勇樹は失点もするがその柔道の性格からしていきなり良い方向に「化ける」可能性もあり、その場合盤面も戦力構成もすべてが崇徳のものになる。上位対戦におけるキーマンはこの枇杷木ではないかと見る。

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東部直希をワントップに初の全国制覇を狙う大成高

キャラクター豊富な桐蔭、総合力の高い崇徳という2強と性格打って変わったチームが大成高。こちらはエース東部直希の絶対的な攻撃力を前面に押し出した明らかなワントップチームであり、東部が取り、周囲が粘るという大戦略の浸透度の高さそれ自体が強み。12月の黒潮旗武道大会ではこの形がしっかり機能し、決勝の桐蔭学園戦では東部が千野根有我(大将戦)、村尾三四郎(代表戦)の2人を立て続けに破ってみごと優勝を果たしている。東部がこの大会で見せた取り味の高さを、今回も勝負どころで発揮出来るかどうかが最大のカギ。上位対戦まで東部を温存出来るかどうか、周囲の奮闘にこそ初の全国優勝の行方が掛かると言って良いだろう。周辺戦力には圧倒的な取り味はないが、稽古量の多さで鍛え抜く大成らしく「負けない」選手が揃っており、対桐蔭学園という一点に絞れば崇徳以上に面白い存在。

前述の通りこの3チームが優勝に絡むと目される有力候補。以下シード順に簡単に有力校を紹介させて頂く。

足立学園高は唯一の最重量級選手であるエース山本瑛介の得点力の高さが最大の売り。体幹が強く、遠間からの大内刈、体を密着させての大技、さらに足技とフィニッシュに至る道筋も豊富だ。他選手は軽量揃いだが、インターハイ王者・武岡毅と今代の東京代表・上領教史郎の60kg級コンビは相手が大きい方が取り味を発揮するタイプであり、総体としてはなかなかの好チーム。今季負傷続きで元気のない白石隼人の出来が上位進出のカギを握る。

延岡学園高は今期の九州ブロック王者、四つ角シード評価を受けてもおかしくない強豪だ。羽田野竜輝と吉野弘人の2枚は上位対戦でも十分勝利が見込め、点取りレギュレーションで九州を制したことでもわかる通りチームの総合力も高い。前述3強を崩す可能性も十分、今季の地方チームではもっとも夢を託せる期待の存在と評しておきたい。

神戸国際大附高(兵庫)は若潮杯武道大会でエース村上優哉を欠きながら3位入賞を果たした近畿地区の強豪。今季は100超級を4人揃えた大型陣容となった。この4枚には同校が鮮烈な「全国デビュー」を果たした前々代ほどの尖りはないが、育成力の高い神戸国際らしく、やるべき行動はすべて抑えて力を発揮するという「大きい選手の手堅さ」が練られている。これに73kg級の村上という個性を加えて良い方向での不確定性を確保。面白いバランスのチームである。

国士舘高は高校カテゴリ最強を誇った前二代と比べるとかなりの小粒チーム、最重量級選手が1年生の酒井陸1人のみと体格的にも小型だ。本来エースに成長すべき清水雅義がインターハイで負った負傷が癒えず停滞、軸のないまま、しかしチーム全体が意地と危機感で成績を残し続けてシード権を勝ち取ったという努力型のチームである。寝技への移行の早さと得意の横三角で招待試合シリーズ連続入賞の原動力となった三谷大、受けの脆さを抱えつつも度々豪快な「一本」を披露してチームを鼓舞した長島光希らが今回も「試合替わりのヒーロー」になり続けるかどうか、出場者全員の緊張感の持続が上位進出のカギ。

埼玉栄高は前代から残った岩田歩夢の攻撃力と今大会屈指の「汗をかける選手」である1年生・西願寺哲平の奮闘が上位進出のカギ。招待試合シリーズの出来は今一つだったが、全国3位の成績を残した前代同様の「本番で強い」属性が受け継がれているかどうかに、勝ち上がりの成否が掛かる。

ここまでがシード校。ほか、明らかに上がり目にある東海大浦安高(千葉)、招待試合シリーズでは本領を発揮出来なかったが関係者の評価が非常に高い長崎日大高(長崎)、京都学園高(京都)ら好チームは多いが、ダークホースとして特に注目しておきたいのは東海大浦安。変調で突如高い取り味を発揮する高橋倫太郎のほか、山中堅盛に浜豊将といった「強いものにこそ強い」良い意味でのムラ気がある選手が揃い、今大会にあっては数少ない大物食い属性をはらむチームである。久々の全国大会出場で勢いもあり、実は12月以降4度出場したハイレベル招待試合で敗れたのは今大会のAシードチームのみ(大成、崇徳、崇徳、桐蔭学園)と実力的なエビデンスもある。これまた無粋なことに、上位進出を期待したい地方の有力校がズラリ居並ぶBブロックに配されてしまったが、逆にこれはシナリオ次第では十分上位進出があり得るということ。シード8校とともに、序盤から特に注意を払っておくべきチームではないかと思われる。

■ 組み合わせ
前述の通り、Bブロック、特に下側に「下剋上」狙いの面白いチームが集中した。他ブロックは上位対戦に向けて比較的シード校の困難度カーブは緩やかだが、Cブロックでは国士舘高と近畿ブロック王者の東海大仰星高が2回戦で早くも激突。序盤戦の山はここではないかと思われる。

【Aブロック】

Aシード校:桐蔭学園高(神奈川)
Bシード校:埼玉栄高(埼玉)

桐蔭学園は今年一気に小型化した天理高(奈良)と初戦、黒潮旗大会で奮闘した好チーム東海大静岡翔洋高(静岡)と3回戦を戦う可能性が濃厚。天理高は昨夏手術して以後試合に出ていない大型1年生中野寛太の復帰の有無という不確定要素があるが、大枠として桐蔭学園の勝ち上がり自体は揺るぎなしと見る。

下側の山はシード校埼玉栄に、長崎日大高(長崎)、修徳高(東京)らが挑む。ここはどこが勝ち上がってもおかしくない混戦。ただし桐蔭学園を崩すだけの戦力と、アップセット性には欠けるのではないかと考える。

【Bブロック】
Aシード校:足立学園高(東京)
Bシード校:延岡学園高(宮崎)

上側の山からは足立学園のベスト8入りが最有力視される。中島大貴の充実が伝えられる国東高(大分)を迎えるであろう初戦(2回戦)が山場。

下側の山は延岡学園がシードされているが、ここに前述の東海大浦安、チームワーク抜群の四日市中央工高(三重)、全日本柔道選手権出場を決めたばかりのエース松村颯祐を擁する開星高(島根)ら面白いチームが集められた。東海大浦安と延岡学園による3回戦はトーナメント全体を通じた大きなみどころの一。体格に勝る延岡学園有利も、こういうチームにこそ今代の東海大浦安の良さが発揮されるという側面もあり、勝敗の行方は予断を許さず。

準々決勝はまず仮に足立学園と延岡学園の対戦を予想しておきたい。足立学園の前衛が繰り広げる「粘りと大技」の構成に延岡学園が付き合い過ぎれば足立学園に勝機あり、組み手を塗りつぶすような地力主体の勝負が出来れば延岡学園に大きく流れが傾くように思われる。延岡学園は「上から目線」の試合を貫くことが勝利の必須条件、特に羽田野と吉野の2枚が「エースでエースを倒す」責任感を自分に課すことが出来るかどうかがカギだ。勝敗の行方は、この段階では読みがたし。

東海大浦安と足立学園の試合となった場合。東海大浦安の勝利シナリオは、足立学園の実は精神的支柱として機能している前衛を崩してリードを得ながら徐々にその気持ちを挫いていくこと。山本に「あきらめさせる」ような事前作りが必要と見る。逆に試合がジワリとタイスコアで進めば、奇襲タイプにも強い山本がその属性と取り味を発揮して足立学園が最後に勝利を得ると考える。

【Cブロック】

Aシード校:崇徳高(広島)
Bシード校:国士舘高(東京)

上側の山、崇徳のベスト8入りの障壁は初戦で対戦濃厚な京都学園高(京都)。奥田將人を機能させずに勝利を得るという、のっけから高いミッションが与えられた格好だ。勝利自体は揺るがないと思われるが、疲労困憊で戦った招待試合シリーズから2か月、現在の仕上がりがシビアに問われる一番。

下側の山は前述の通り、国士舘と東海大仰星による2回戦が大山場。近年の東海大仰星は柔道の質が良く、ゆえに国士舘に「長所を消される」シナリオもありえるが取り合いになれば勝負はどちらに転ぶかわからない。東海大仰星としてはつぶし合いではなく、取り合う展開に持ち込むべく最初からペースを上げて臨みたい一番。

ベスト4入りの最有力候補はもちろん崇徳だが、崇徳は若潮杯で国士舘に勝利も全試合通じて4つポイントを奪われており、実は個々の乱戦を無理やり逆転で塗りつぶし続けるという危うい試合内容であった。国士舘が東海大仰星に勝って勢いよく乗り込んでくる場合、かなりの消耗戦を強いられる可能性もあるかと思われる。

【Dブロック】

Aシード校:大成高(愛知)
Bシード校:神戸国際大附高(兵庫)

厳しい組み合わせに置かれることが続いた大成だが、例年に比すれば戦い易い位置。2回戦で対戦濃厚な白鴎大足利高は招待試合シリーズも図太く上位に居残り続けた強豪だが、今年はアップセット要素を孕む型のチームではなく、大枠序列通りに試合が進むものと思われる。ただし白鴎大足利が2戦目である一方、大成が初戦であること、そして大成の「周辺戦力」に1年生が多いことはかなり大きな不確定要素。前衛を崩し続けて動揺を誘い、リードを得たまま東部を引っ張り出す展開となれば面白い。「栃木のリネール」こと身長197cmの浅沼亮太と、身長171cmながら大会屈指の抜き役を務める東部の対決の実現に期待したいところ。

下側の山はシード校神戸国際の勝ち抜け濃厚。2回戦の作陽戦は、今代の神戸国際が「やるべきことをしっかりやる重量級」という一種作陽的な属性のある大型選手を揃えているという観点では面白いが、今代の作陽は例年ほどの力をまだ練れていない印象で神戸国際の有利は否めず。村田大征の大暴れが作陽勝利の数少ないシナリオだが、最終的には神戸国際が勝ち上がると見る。

大成と神戸国際大附による準々決勝は、最終的には大成が勝利するのではと考える。ただしこのあたりから東部の消耗度がシビアに問われ始めるはず。また、ここ数年の大成は遠征を控えて地力錬成にスケジュールを割く傾向があり、よって蓋を開けてみるまで仕上がりが読めないところがある。東部はともかく、周辺戦力が地力を大きく上げているのか、それとも停滞しているのか。ここまでの勝ち上がりの中で東部以外の4枚が地力向上を確信して「乗っている」状態ならば大成、逆に昨年のように自身の実力に疑問を芽生えさせたまま「名前」に頼って対峙してしまうようならば神戸国際にもチャンスありと考えておきたい。

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桐蔭学園-崇徳ここまで唯一のエース対決となった水田杯準決勝、関根聖隆が長岡季空を攻める

【準決勝-決勝】

準決勝カードは、

桐蔭学園高(神奈川) ― 足立学園高(※延岡学園高)
崇徳高(広島) - 大成高(愛知)

と仮に予想しておきたい。
そして桐蔭学園と崇徳の決勝進出が濃厚とみる。

桐蔭学園は、延岡学園が相手であれば「エース2枚に仕事をさせない」方針を徹底して
取りどころと我慢のしどころをシビアに区分ける戦略を採ることだろう。多少の対戦順のズレは吸収してしまえるだけの駒数があり、例えば「前衛に桐蔭学園の”線の細い駒”が偏り、そこに延岡学園の得点が集中する」というような超極端なシナリオが現出しない限り、最終的な勝利は揺るがないと見る。ただし、桐蔭学園としては今回の組み合わせ上、最大の山場もここになると見ておきたい。サイズに劣り、柔道の質の良さによるディティールの凹凸がその谷間に逆に相手の良さを染み込ませてしまうリスクもある桐蔭学園にとって怖いのは、体があって、かつ良い意味で「物分かりの悪い」、自軍を高く買っているチーム。もし延岡学園が足立学園を下して準決勝に出てくるようであれば、この条件を満たしている可能性が高いはずだ。桐蔭学園の最終的な有利は揺るがないが、控えめに言って桐蔭学園の長所短所色々な面がさらけ出される試合になるのではないだろうか。

足立学園が来た場合、実は足立学園の必須要素である「軽量2枚の活躍」に、まさしくその軽量級フィールドで戦える湯本と佐藤がその良さを消してしまうことが濃厚。足立学園の駒と質から考えれば採れるオーダーのバリエーションは限定的で(具体的には山本をどこまで前出し出来るか)、であれば桐蔭学園はこの策で足立学園の橋頭保である軽量級の良さを削り取ってしまうのではないか。足立学園の中盤2枚に、桐蔭学園のエース級を止める役割は難しく、かつおそらくここまでかなり体力を使っているであろう山本に複数枚抜きを求めるのは酷だ。最終的な星勘定としては桐蔭学園に軍配が上がる。

崇徳-大成は、崇徳の分厚い戦力を、大成の周辺戦力がタイで耐え抜くことが難しいのではないかと見る。東部1人の勝敗が試合をそのまま決する状況を作るのが大成勝利のシナリオだが、そこまで場を煮えさせることは難しい。桐蔭学園にとって最も怖いのは実は大成ではないかと思うが、ここは崇徳の勝利を推す。

というわけで、決勝カードは桐蔭学園-崇徳と予想。過去2戦はいずれも桐蔭学園が勝利しており、スコアはそれぞれ2-1(松尾杯準決勝)と2-2(水田杯準決勝)で、いずれも小差。様相は読みがたいと考えておくべき。

ただしこの2試合に桐蔭学園のポイントゲッター賀持喜道が不在であったことと、エース級同士の対決が1試合のみで、水田杯で実現したこの関根聖隆-長岡季空戦に関根が勝利していることを考えれば、桐蔭学園の有利を予想しておくのはまず順当なところかと思われる。この試合は関根の一本背負投「技有」による勝利であるが、長岡も序盤に右背負投で関根を転がし(「有効」取り消し)ており、攻撃力では負けていない。ただしより重視すべきはビハインド後スクランブルを掛けた長岡を関根がほぼ危なげなく捌いた後半戦であり、この時間帯を見る限り、関根は長岡の柔道を封殺しながら攻めることにかなりの自信を持ったのではないかと見る。エース対決におけるロジック的な優位は抜き試合レギュレーションにおいてはもちろん大きく、かつこれをバックグラウンドに前衛戦を戦えることが選手の心理に与えるプラス効果は大きい。順当に試合が進めばわずかながら桐蔭学園が有利、崇徳の勝利にはある程度不確定要素の上積みが必要ではないかと考えておきたい。

観戦にあたり、現時点で展望として語るべきことはこのくらいに留めておくべきかと思われる。例年にない駒不足と心配された今代の高校柔道界だが、桐蔭学園と崇徳の躍進に代表される各校の「チャンスあり」とのモチベーション高い奮闘によって、かなり面白い構図で大会が迎えられることとなった。熱戦を楽しみに待ちたい。


文責:古田英毅

※ eJudoメルマガ版3月16日掲載記事より転載・編集しています。

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