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グランプリ・デュッセルドルフ2017最終日5階級レポート

(2017年3月4日)

※ eJudoメルマガ版3月4日掲載記事より転載・編集しています。
最終日5階級(男子90kg級、100kg級、100kg超級、女子78kg級、78kg超級)レポート
グランプリ・デュッセルドルフ2017
■ 90kg級・グヴィニアシヴィリが階級復帰後初優勝、ハルモルザエフとの大激戦をみごと制す
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90kg級決勝、ベカ・グヴィニアシヴィリがフセン・ハルモルザエフから右体落「技有」

【入賞者】
1.GVINIASHVILI, Beka(GEO)
2.KHALMURZAEV, Khusen(RUS)
3.NISHIYAMA, Daiki(JPN)
3.ZGANK, Mihael(SLO)
5.SHERAZADISHVILI, Nikoloz(ESP)
5.TRIPPEL, Eduard(GER)
7.MAJDOV, Nemanja(SRB)
7.USTOPIRIYON, Komronshokh(TJK)

ベカ・グヴィニアシヴィリ(ジョージア)とフセン・ハルモルザエフ(ロシア)、そして日本代表の西山大希がトーナメント事前予測における三強。このうちグヴィニアシヴィリとハルモルザエフが決勝まで勝ち上がり、大激戦の末にグヴィニアシヴィリが優勝を果たした。

この欧州シリーズから階級を本来の90kg級に戻したグヴィニアシヴィリは第5シードで大会をスタート、初戦でバンディクー・バットエルデン(モンゴル)に大内刈「一本」で勝利すると、ここからマルク・オーデンタール(ドイツ)にコムロンショフ・ウストピリヨン(タジキスタン)と強豪と連戦。これをそれぞれ大腰「技有」からの横四方固「一本」に、袖釣込腰と小外掛で挙げた2つの「技有」で勝ち抜くと、準決勝ではダークホースのエドゥアルド・トリッペル(ドイツ)を右小外刈「技有」で破って決勝進出。一方第3シードに配されたハルモルザエフは強豪との対戦ないまま、「指導3」の反則による勝利2つとGS延長戦「技有」による勝利1つをマークしてしぶとく決勝まで辿り着いた。

決勝は双方慎重で中盤まで低調も、形上「指導2」を失って後のなくなったグヴィニアシヴィリが防御をかなぐり捨てて攻めに出たことで残り1分から急加速、。これまでが嘘のようなノーガードの打ち合いの末、残り10秒にグヴィニアシヴィリの右体落とハルモルザエフの右大外刈がかち合うに至る。この正面衝突に勝利したグヴィニアシヴィリが「技有」獲得、そのまま抑え込んで優勝を飾った。

五輪後、ヴァーラム・リパルテリアニと入れ替わる形で階級を戻したグヴィニアシヴィリはこれが復帰後IJFツアー初優勝(※2016年11月の欧州U-23選手権で90kg級に復帰、優勝)。かつてに比べると技と戦術の引き出しが格段に増しており、8月の世界選手権は間違いなく優勝候補の一角。かつて若手の旗手として出世を競ったライバル・ベイカー茉秋との再戦が非常に楽しみだ。

決勝に進出した2人のほか目立っていたのは地元でIJFツアーデビューを飾った19歳エドゥアルド・トリッペル(ドイツ)。第1シードのアレクサンダー・クコル(セルビア)を2つの「技有」で食い、準々決勝では西山大希から3つの「技有」を奪ってベスト4入り。前述の通り準決勝ではグヴィニアシヴィリに敗れたが、「やぐら投げ」で高々グヴィニアシヴィリを持ち上げてあわやポイントという場面を作り出すなど会場を大いに沸かせた。3位決定戦では終了間際に逆転されて表彰台に上がることは出来なかったが、その存在感と対戦相手の大物ぶりからすれば、メダル獲得が妥当なところであった。線の細さに似合わぬ「投げる能力」はなかなかの魅力、以後も注目しておきたい選手。

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90kg級3位決定戦、西山大希がニコロス・シェラザディシヴィリを横四方固「一本」

西山大希はこの無名のトリッペルを相手に圧倒的に試合を支配し、2度「技有」を獲得しながら3度投げ返されて敗れるという失態。5戦4勝で3位に入賞したもののこれぞという強豪のマッチアップは1試合もなく、積年の課題である技出しの遅さも払拭できず。形上結果は残ったもののパフォーマンスから導き出される印象点は「5位以上、3位以下」が妥当というところ。到底首脳陣にアピール出来たとは思われない出来であった。

五輪金メダリストのベイカー茉秋がいまだ戦線復帰せず、吉田優也が畳に戻らぬ日本の90kg級は世界選手権を勝ち抜ける力のある選手が見当たらない状況。最悪、2014年の100kg級に続く「派遣なし」の選択を行う可能性も視野に入れるべきではないだろうか。

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90kg級入賞者。左からハルモルザエフ、グヴィニアシヴィリ、西山、ツガンク。

【3位決定戦】

西山大希○横四方固(2:58)△ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)
西山が左、シェラザディシヴィリが右組みのケンカ四つ。西山は下から釣り手を突き、シェラザディシビリは上から肩を抱くようにして組み手を開始。お互いに引き手争いに終始して技が出ず、1分6秒に両者に消極的との咎で「指導」が与えられる。西山は相変わらず技が出ないものの、技を匂わせながら組み合うこと自体が圧力となって勝手に相手が追い詰められていくという印象。2分35秒、展開に窮したシェラザディシヴィリが前技フェイントの谷落を試みると、西山は落ち着いてこれを潰して右浮落「技有」を獲得する。投げた時点で既に横四方固の形が完成しており、そのまま20秒抑え込むと主審は「一本」を宣告。西山は技らしい技を一度も仕掛けないまま一本勝ち。地力をテコにしっかり表彰台を確保した。

ミハイル・ズガンク(スロベニア)〇優勢[技有・隅返]△エドワード・トリッペル(ドイツ)
右相四つ。ズガンクは左構えでスタート、一方のトリッペルは右構えで右釣り手のみを持ち、ケンカ四つに近い形で試合が進むこととなる。トリッペルはここから得意の左外巻込で奇襲、51秒に「技有」を獲得。格上のズガンク意外な失点に色をなし、以後は本来の右構えで奥襟を叩く上から目線の柔道を展開。ここから無造作に右大内刈を差し入れ、さらに右大外刈に右一本背負投、引込返と粛々具体的に「取りに行く」大技を連発。トリッペル左腰車に巴投で対抗するが徐々に手が詰まっていく。しかしそれでもなんとか残り30秒まで辿り着くが、残り1分を切ってからあくまで奥襟を掴み続けていたズガンクがまず右大外刈の形で足を差し入れ右腰車に連絡。絶対に離さぬとばかりに首をガッチリ拘束して回し切り「技有」を獲得する。さらに残り7秒で隅返を閃かせ勝ち越しの「技有」、そのままタイムアップ。ズガンクが地力を見せつけた試合、あと一歩で地元大会での表彰台を逃したトリッペルはガックリ、膝を着いて顔を抑えしばし立ち上がれず。

【決勝】

ベカ・グヴィニアシヴィリ(ジョージア)○後袈裟固(4:00)△フセン・ハルモルザエフ(ロシア)
右相四つ。お互いに警戒し合ってなかなか組み合おうとせず前半戦は一貫して停滞。29秒には相手の引き手を嫌ったグヴィニアシヴィリのみに「取り組まない」咎での「指導」、2分36秒にはハルモルザエフの足技の前に守勢に回ったグヴィニアシヴィリに消極的の咎で2つ目の「指導」が与えられる。あと1つの「指導」失陥で戦う権利を失うグヴィニアシビリはさすがに奮起、左大腰の大技で攻め返して3分6秒ハルモルザエフに「指導」。残り試合時間は54秒、ここから試合は動き始め、勢いを得たグヴィニアシヴィリは再開するなり相手に食らいつき、振り回して、片襟の右払腰で放り投げる。後のないグヴィニアシヴィリがリスク覚悟で敢えて粗い柔道を始めたことでここから試合は一気に加速、喧嘩のような様相となる。3分30秒には奥襟を狙ったグヴィニアシヴィリの指が相手の目に入ってしまい、ハルモルザエフが暫し立ち上がれない場面までが現出。残り10秒、ハルモルザエフが奥襟を得て反時計回りに相手を振り回すとグヴィニアシヴィリは巻き返してクロスグリップを完成、そのまま双方一つの物体となって反時計回りの運動を続ける。そして双方満身創痍、どちらかが技を出せば確実にそのまま勝負が決まる予感漂うこの激しい円運動の渦中に双方が同時に行動を起こし、真っ向から技がかち合う。まずハルモルザエフが右大外刈、相手の着地の瞬間を捉えようとした技だが、同時にグヴィニアシヴィリが選んだ技は右体落。スピード自体に勝ったこと、そしてなにより相手の崩れが大きい後ろ回り捌きの技を選択したことで、これまでの回旋アクションすべて、そしてハルモルザエフの技の勢いまでもがすべてこのグヴィニアシヴィリの技の加速となって収斂。振り回されたハルモルザエフは激しく畳に落ちて「技有」。賭けに勝ったグヴィニアシヴィリはそのまま後袈裟固で抑え込むと雄叫びを上げる。「一本」を告げるブザーとともにグヴィニアシヴィリはハルモルザエフを引き上げて抱擁。熱戦にふさわしい幕切れの絵であった。2つの「指導」による試合の急加速、GSの「指導」決着を待っては勝ち目がないと判断したグヴィニアシビリの大技勝負、「指導」差勝ち逃げがないゆえに為されたハルモルザエフの迎撃行動、そして互いに投げるしかない「クロスグリップのままの円運動継続」と、これも新ルールの枠が試合の決着に大きく寄与した一番であった。

【日本代表選手勝ち上がり】

西山大希(新日鉄住金)
成績:3位


[1回戦]
西山大希○横四方固(4:00)△エヤラ・ルブー(コンゴ)
左相四つ。試合が始まるなりルブーが左背負投を連発するが、西山は動ぜず鷹揚に構えて試合を進める。西山は左大外刈を散発するものの、ルブーが腰を引いているため投げるまでは至らず。2分4秒にルブーに消極的の咎で「指導」、さらに2分28秒には西山の組み手を嫌ったルブーに2つ目の「指導」が与えられる。時間の経過とともに動きが鈍っていく相手を西山は冷静に観察、3分48秒に左内股を放つとルブーは力なく畳に転がり主審は「技有」を宣告。西山は横四方固で抑え込み「一本」。相手のレベルを考慮すると決して好内容とは言えないが、しっかりと「一本」を奪うまずまずの滑り出し。

[2回戦]
西山大希○反則[指導3](3:01)△シリル・グロスクラウス(スイス)
西山が左、グロスクラウスが右組みのケンカ四つ。まともに組んでは勝機なしと見たグロスクラウスはのっけから引き手を持っては自ら放し、釣り手を得ては一回離れる時間稼ぎの態勢。浅く片手の内股を入れるだけの試合姿勢を見て主審は22秒、片手の咎でグロスクラウスに「指導」を与える。西山釣り手一本で前へ、グロスクラウスが片手で煽るとそのまま場外に崩し出す。西山の圧倒的攻勢だがしかし具体的な技は出ておらず、主審は形上双方に消極的との咎で「指導」を宣告。以後は西山が両襟を交えながら前に出まくり、グロスクラウスは時折作る「サリハニ」に近い状態で拮抗を偽装するのがやっと。西山は2分11秒に支釣込足から繋いで左内股を引っ掛け、決定的な「技有」を得る。以後も西山は前に出続け、グロスクラウスは切り離しては潰れることを繰り返すのみ。西山が片手の大外刈で崩した3分1秒、主審さすがに仕方なしとばかりにグロスクラウスに3つ目の「指導」を宣告。「指導2」までは妥当、「指導3」までは2つか3つ「指導」が与えられてもおかしくない一方的な試合だった。

[準々決勝]

西山大希△GS技有・谷落(GS1:37)〇エドワード・トリッペル(ドイツ)
西山が左、トリッペルが右組みのケンカ四つ。西山が引き手を求めるとトリッペル簡単に押し込まれ相当力に差がある印象。しかし53秒、西山が片手状態を受け入れたところにトリッペルが思い切り左外巻込、組み手と逆に仕掛けたこの奇襲攻撃は見事決まって「技有」となる。思わぬビハインドとなった西山は前進、なかなか二本持たせて貰えないが1分50秒、釣り手を持ちながら巧みな左小外刈で斬り込み敢行。体を相手の正面に置いたまま左足を鎌のように曲げ、背後から真裏に刈りこんで鮮やか「技有」を獲得する。さらに2分27秒には左内股から左大外刈に繋いで激しく投げて主審は「一本」を宣告。しかしこれは「技有」に訂正となり試合終了とはならず。スコアで勝ち越され展開も一方的、地力に劣るトリッペルにはもはや手立てなしと思われたが、引き手で肩口を抑えて勇気ある接近戦を展開。西山やや持て余しひとまず左内股を打って形を整えようとするが、トリッペルはここに思い切り隅落。距離が近いこともあってこの技はまともに効き、西山制されて畳に落下「技有」。なんと試合はGS延長戦へもつれ込むこととなる。延長戦も西山が攻勢、40秒にはポイント級の内股を披露して一発の予感を漂わせてあとはしっかり試合を決めるばかり。一方のトリッペルは巴投に活路を見出すしかなく、得意の外巻込は全て予期され入り込むことすらできない苦境。しかし1分30秒過ぎ、トリッペルは背中を持って接近すると小外刈を絡ませながら粘着。西山が身を切るとそのまま体を捨てて谷落。西山ズルリと崩れてこれは「技有」。ドイツの控え選手トリッペルが、もと世界選手権銀メダリストの西山を3度投げて準決勝進出を決めた。

[敗者復活戦]

西山大希〇GS技有・内股(GS0:42)△コムロンショフ・ウストピリヨン(タジキスタン)
西山が左、ウストピリヨンが右組みのケンカ四つ。ウストピリヨンは引き手を争いながらなるべく組み合わず、ヒットアンドアウェイで様子を伺う。西山は30秒過ぎから二本持つことに成功するが技が出ず、1分0秒には双方に消極的との咎による「指導」。ここでウストピリヨン引き手で袖を得るがピストルグリップの一方的な形のまま安閑と試合を進め、1分25秒ウストピリヨンに絞って防御した咎で「指導2」。しかしウストピリヨンは怖じず、再びピストルグリップで一方的に袖を掴むと右内股、右袖釣込腰と今度は技をしっかり積み、1分47秒西山に消極的との判断による「指導2」。以後は引き手争い、ウストピリヨンは西山のラッシュをあるいは透かし、あるいは返し、あるいは体をゆすって組み手を切り離して時間を消費。本戦4分はそのまま終了し試合の決着はGS延長戦へ持ち越されることとなる。以後も西山懐の深いウストピリヨンをなかなか捕まえられないが、42秒にウストピリヨンが放った右体落の戻りに左内股。体を捨てながら回旋を呉れるとこれが「技有」。ようやく試合が終わった。攻めの遅さが課題の西山、本戦で2度消極の「指導」を貰うなど今回も煮え切らない試合ぶりであった。

[3位決定戦]

西山大希○横四方固(2:58)△ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)
※前述のため戦評省略

■ 100kg級・トマ・ニキフォロフが優勝、ウルフアロンは死のブロックを勝ち上がるも決勝で苦杯
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100kg級決勝、トマ・ニキフォロフがウルフアロンから片手絞「一本」

(エントリー29名)

【入賞者】
1.NIKIFOROV, Toma (BEL)
2.WOLF, Aaron (JPN)
3.ZANKISHIEV, Kazbek (RUS)
3.KORREL, Michael (NED)
5.FREY, Johannes (GER)
5.FLETCHER, Benjamin (GBR)
7.ARMENTEROS, Jose (CUB)
7.FREY, Karl-Richard (GER)

第6シードで2015年アスタナ世界選手権銅メダリストのトマ・ニキフォロフ(ベルギー)が優勝、2014年グランプリ・ハバナ大会以来となる2度目のワールドツアータイトルを獲得した。

この日のニキフォロフは1回戦以外の全試合で「一本」を奪うという正に出色の出来。ニキフォロフの柔道スタイルは欧州の主流である捨身技や寝技を中心としたオールラウンダースタイルに、本格派の持ち技である腰技や担ぎ技の投げを加えた魅力的なもの。一つ一つの技術の完成度はそこまで高くないものの、今大会では手札の多さとトーナメント配置の良さに背中を押される形で一気に表彰台の頂点まで登ってみせた。ニキフォロフは現在まだ24歳、東京五輪までの4年間で階級の主役級に成長する可能性も十分。継続してチェックする必要がある選手の一人だ。

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準々決勝、ウルフアロンがホセ・アルメンテロスから内股返「技有」

ウルフアロン(東海大3年)は強豪との連戦必須とされた死のブロックから見事決勝まで勝ち上がったが、決勝ではニキフォロフに左大内刈を空振りしたところから片手絞「一本」を奪われて敗れた。準決勝までの勝ち上がりは対戦相手のレベルの高さ、貪欲に勝利を求めた試合内容と完璧に近い素晴らしいものだったが、決勝戦で敗れたことであと一歩評価を上げ切れなかった。ウルフが現在代表を争っている飯田健太郎(国士舘高3年)がグランドスラムパリ大会で素晴らしい内容で優勝していることを考えると、評価は上げたが世界選手権代表からは半歩後退するという、なかなか厳しい結果となった。

90kg級から階級を上げ、グランドスラムパリ大会で3位を獲得したヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)は当日にエントリーを取り消し、試合に出場しなかった。

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100kg級入賞者。左からウルフ、ニキフォロフ、ザンキシエフ、コレル。

【準々決勝】

ベンジャミン・フレッチャー(イギリス)○GS肩車(GS0:22)△ヨアキム・フレイ(ドイツ)
ウルフアロン○内股(2:55)△ホセ・アルメンテロス(キューバ)
カズベク・ザンキシエフ(ロシア)○優勢[技有・小外刈]△ミハエル・コレル(オランダ)
トマ・ニキフォロフ(ベルギー)○GS腰車(GS0:24)△カール リヒャード・フレイ(ドイツ)

【準決勝】
ウルフアロン○GS内股(GS1:54)△ベンジャミン・フレッチャー(イギリス)
トマ・ニキフォロフ(ベルギー)○反則[指導3](3:00)△カズベク・ザンキシエフ(ロシア)

【3位決定戦】

マイケル・コレル(オランダ)〇後袈裟固(3:28)△ベンジャミン・フレッチャー(イギリス)
右相四つ。体力に勝るコレルが一貫して引き手で先に袖を掴み、フレッチャーはこれを切り離そうとするがコレルあくまで掴み続けて試合を優位に進める。このまま担ぎ技で攻め続け、1分56秒引き手で脇を突いて防御を続けたフレッチャーに「指導」。コレルは寝勝負も優位に進めるが抑え込み掛けては切所で決められず、一方的な試合の割にはスコア差つかぬまま試合は終盤へ。残り1分、コレルの左一本背負投をきっかけに幾度目かの寝勝負がスタート。フレッチャー背について必死に寝技を展開するがコレル鷹揚にいなして呼び込み、手首を脇で挟むと後袈裟固に捕まえる。故意に隙を作ったかのような確信的な動き、優位のはずが一転最悪の形となったフレッチャーほとんど動けず「一本」。力に差のある一番だった。

カズベク・ザンキシエフ(ロシア)○優勢[技有・小外刈]△ヨハネス・フレイ(ドイツ)
右相四つ。釣り手の絞り合いからザンキシエフが左袖釣込腰を狙うが不発。これ以降技の気配が感じられないまま試合が進行し、1分54秒に組み手を嫌ったフレイに「指導」が与えられる。直後、ザンキシエフは引き手のみを持った状態から片手の右袖釣込腰。腰が深く入った一撃にフレイは大きく崩れるが、背中が着くには至らずノーポイント。2分40秒、ザンキシエフは奥襟を得ると同時に右小外刈を放ち、押し込んで決定的な「技有」を獲得する。そのまま腕挫十字固を狙うが、ここはフレイがしのぎきって「待て」。後のないフレイは必死に追いすがるが、3分35秒にバランスを崩したところで寝技に持ち込まれて時間を大量に消費してしまう。「待て」の時点で試合時間は7秒しか残されておらず、そのまま試合が終了。ザンキシエフが3位を獲得した。

【決勝】

トマ・ニキフォロフ(ベルギー)〇片手絞(0:35)△ウルフアロン
ウルフが左組み、ニキフォロフが右組みのケンカ四つ。ウルフが低い左大内刈を空振りして伏せると、ニキフォロフは足を抱えながら前方に回って片手絞を仕掛ける。いわゆる「ボーアンドローチョーク」の典型。胴体も捩じり、足も抱えてと成立要素をほぼ完全に満たしたこの技にウルフは耐えることかなわず「参った」。衝撃的な「秒殺」でニキフォロフが優勝を飾った。


【日本代表選手勝ち上がり】

ウルフアロン(東海大3年)
成績:


[1回戦]

ウルフアロン○小外掛(1:32)△ミクロス・サーイエニッチ(ハンガリー)
ウルフが左、サーイエニッチが右組みのケンカ四つ。ウルフは釣り手を脇から背中に回し、相手の肩裏を逆手に握る得意の組み手。サーイエニッチ右大腰でいったんは試合を流すが、1分過ぎからのシークエンスでウルフが再び同じ形の組み手を作り出す。もっとも得意のとなったウルフは前技フェイントを入れると踏み込み深く左小外掛、サーイエニッチ吹っ飛んで「一本」。

[2回戦]

ウルフアロン○GS技有・内股(GS1:57)△ホルヘ・フォンセカ(ポルトガル)
ウルフが左、フォンセカ右組みのケンカ四つ。ウルフが引き手を求めるとフォンセカが嫌い、54秒フォンセカに片手の咎で「指導」。ここでフォンセカが釣り手で奥襟を叩くとウルフ脇から背を抱いて思わず頭を下げる。瞬間フォンセカ釣り手をいったん離し、低く構えたウルフのさらに下に潜り込み右一本背負投、初動に戸惑ったウルフ押し込まれてこれは「技有」、経過時間は1分9秒。ビハインドを負ったウルフはここからラッシュを掛けるがフォンセカは右背負投に右袖釣込腰、一本背負投フェイントの右小内刈と汗を掻き続け、結果圧力志向で後手に回ったウルフに2分9秒消極的との咎で「指導」。ウルフは得意の隅返を放つが予期してかわされ、相手に担ぎ技の弾幕を張られたまま残り1分となり非常に苦しい試合。しかし残り41秒、脇から背中を掴んでガッチリ拘束すると相手の右前隅へ浮技。相手が宙を舞うと隅返様に足を挙げてフォローしついに「技有」を得る。残り0秒にフォンセカが放った両袖の右大外刈にウルフが激しく崩れるシーンがあったがノーポイントに終わり、試合はGS延長戦へ。延長はウルフがあわやポイントという技を放ち続け、フォンセカが担ぎ技に座り込んでなんとか試合終了を避けるという構図。1分52秒、ウルフは大内刈フェイントのステップを切って左内股、粘るフォンセカを振り回し投げて「技有」獲得。大熱戦はウルフの勝利に終着した。

[準々決勝]

ウルフアロン○内股(2:55)△ホセ・アルメンテロス(キューバ)
ウルフが左、アルメンテロスは右構えのケンカ四つの形で対峙。引き手争いが続き19秒ウルフに片手の咎で「指導」。ウルフは右への横落を試みるが不発、1分3秒にはアルメンテロスの思い切った左外巻込をウルフが腕を持っていかれたまま伏せて耐える攻防があり、展開は予断を許さず。ウルフが片手で押し込むと、アルメンテロス敢えて一回呼び込んで、押し戻しながら左のケンケン大内刈。良い技だったがウルフ入れ替わるように相手を前に潰すと、伏せかけた相手をめくり返して「技有」奪取、経過時間は1分21秒。アルメンテロス左への外巻込で追い掛けるが既に見切ったウルフは動ぜず。2分49秒にはアルメンテロスの右内股の戻りに左小外刈を合わせて2つ目の「技有」奪取。これでアルメンテロスは完全に気持ちが切れ、再開直後ウルフが組むなり左内股を放つと見事に決まって「一本」。

[準決勝]

ウルフアロン○GS内股(GS1:54)△ベンジャミン・フレッチャー(イギリス)
ウルフが左、フレッチャーが右組みのケンカ四つ。ウルフ二本持つなり左小外掛でフレッチャーを大きく崩すが以後は引き手争いに巻き込まれてなかなか効く間合いで技を打つことが出来ない。フレッチャーは手足の長さを利して相手の間合いに決して踏み込まず、腰を切る動作で攻撃を偽装する。しかし主審はこれを見逃さず1分27秒フレッチャーのみに「取り組まない」咎で「指導」。ウルフは内股を中心に攻めに攻めるが、フレッチャーは距離を取ったまま透かし、逃れ、あるいは自らが肩車を仕掛けて攻撃を演出し決定的な場面を作らせず。試合はGS延長戦へもつれ込むこととなる。ウルフは引き手争いに嵌って29秒「指導」を受けるが、以後は腹を出しての左小外掛、左体落、浮技と技を止めずに堅実に攻め続ける。1分半を過ぎてからウルフ突進、場外際にフレッチャーを詰めると敢えて出口を与えて時計回りに誘導し、その動きに合わせて左内股。これでついにフレッチャーの懐の深さを無力化することに成功、豪快な「一本」。宣告直後、疲労困憊の両者は天を仰いでにわかに立ち上がれず。ウルフの尽きぬ攻撃意欲と集中力は見事であった。

[決勝]
ウルフアロン△片手絞(0:35) 〇トマ・ニキフォロフ(ベルギー)
※前述のため戦評省略

■ 100kg超級・絶好調の影浦心が決勝でも持ち味発揮、原沢久喜を破って優勝飾る
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100kg超級決勝、影浦心が原沢久喜から内股透「技有」

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準決勝、影浦心がルカシュ・クルパレクから左背負投「一本」

(エントリー22名)

【入賞者】
1.KAGEURA, Kokoro (JPN)
2.HARASAWA, Hisayoshi (JPN)
3.BOR, Barna (HUN)
3.SHYNKEYEV, Yerzhan (KAZ)
5.KRAKOVETSKII, Iurii (KGZ)
5.KRPALEK, Lukas (CZE)
7.HARMEGNIES, Benjamin (BEL)
7.KHAMMO, Iakiv (UKR)

グランドスラムパリ大会から出場メンバーはマイナーチェンジ、レベル自体はそれほど変わらないものの、今回はダニエル・ナテア(ルーマニア)やイアキフ・ハモー(ウクライナ)ら若手選手が中心のトーナメントとなった。

この中を決勝まで勝ち上がったのは優勝候補の原沢久喜(日本中央競馬会)とダークホースの影浦心(東海大3年)の日本勢2人。原沢は初戦から盤石の勝ち上がり、得意の右内股が警戒される中にあって冷静に右大内刈で勝利を重ねて決勝進出を決めた。一方の影浦も持ち前の戦術性の高さに加えてこの日は担ぎ技が非常に切れており、準決勝では今大会から階級を上げて参加したリオデジャネイロ五輪100kg級金メダリストのルカシュ・クルパレク(チェコ)から左背負投(GS0:12)を奪うなど素晴らしい内容での勝ち上がり。

迎えた決勝では開始直後に原沢が抱きつきながら放った右内股を影浦が股中で透かして内股透「技有」を獲得。以降は試合巧者ぶりを存分に発揮し攻守のテンポを巧みにコントロール、原沢に力を出させないままフルタイム戦い切って見事優勝を果たした。圧を掛けるだけでは満足せず、あくまで投げに出て影浦がもっとも得意な「際」を自ら作りに行った恰好となった、原沢の長所である攻撃志向が裏目と出た格好の試合だった。

原沢を破り、しかも欧州シリーズの「表通り」であるグランプリ・デュッセドルフを制するという最高の結果を残した影浦はもちろん評価大いにアップのはず。長所である試合運びの巧みさや相手の良さを吸収する図太さと柔らかさはもちろん、昨年長足の進歩を遂げた投げの「取り味」に際の強さと、良いところばかりが目立った大会だった。格上相手の方が力を発揮する柔道の特性、組み手と試合運びの巧さ、さらに対重量級ウェポンとしての担ぎ技の保有、そして日本のトップクラスになかなか現れなかった左組み、かつ低重心と、実は影浦は昨年五輪時に日本が「リネール対策」として抽出した要素をことごとく満たす。まだまだ地力を上積む必要もあり、また今後研究された場合に必ず挑まれる圧力偏重の消耗戦(影浦は圧力と攻勢権確保に特化した小川雄勢に国内で敗れている)をどう突破するかなど課題も多いが、日本の「手札」として非常に面白い存在になるのではないだろうか。

五輪前にリネールがもっとも嫌がっていたレヴァニ・マティアシビリ(ジョージア)が今シーズン肥大化、担ぎ技を減らして先輩アダム・オクルアシビリがかつて陥った巻き込み柔道に堕している中、リネールの弱点抽出の触媒としても、ツアーの好役者としても、国際的な重要度が高い存在ではないかと考える。継続派遣を強く要望したい。

一方の原沢は五輪後初戦となった今大会を勝利で飾ることが出来ず、復帰ペースはやや減速というところ。全開はもう少し先となりそうだ。

そして今回の結果を受けて相対的に評価を上げる形となったのが影浦の大学の先輩である王子谷剛志。グランドスラム東京大会とパリ大会を連続で制した王子谷だがその内容は結果ほどの高い評価を得られるものではなく、五輪代表を務めた原沢との距離を詰め切れずにいた。そしてこの状況下で今度は影浦が優勝したわけだが、影浦自身は世界選手権に出場するにはまだまだ実績が足りず、代表レースに及ぼす現象面としての今回の結果は「原沢の優勝奪取失敗」と読み下されるべき。これは王子谷には大きな追い風。2枠目の有無も含めてまだまだ誰が代表を射止めるのかは読み難く、4月の全日本選抜体重別を前にして100kg超級の代表争いはやや混迷の気配あり。

海外勢で目立っていたのはクルパレク。準決勝と3位決定戦を立て続けに落として表彰台には手が届かなかったが、100kg級時代よりもかなり体の厚みが増しており、戦いぶりにも最重量級の戦いへの適性が垣間見えた。なかでも2回戦、階級随一の巨漢であるダニエル・ナテアと正面から組み合って浮落「技有」から横四方固「一本」で勝ち抜けた試合は圧巻であった。もともと体格に頼った戦いをするタイプではなく、立って良し寝て良しの欧州型オールラウンダー。今回の戦いぶりを見る限り今後階級の中心選手に座るところまでは間違いないかと思われる。

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100kg超級入賞者。左から原沢、影浦、ボール、シンキエフ。

【準々決勝】

ユーリ・クラコベツキ(キルギスタン)○棄権△イアキフ・ハモー(ウクライナ)
影浦心○大外刈(1:28)△バルナ・ボール(ハンガリー)
原沢久喜○反則[指導3](2:22)△イェルザン・シンキエフ(カザフスタン)
ルカシュ・クルパレク(チェコ)○横四方固(3:31)△ベンヤミン・ハーメグニース(ベルギー)

【準決勝】

影浦心○背負投(GS0:12)△ルカシュ・クルパレク(チェコ)
原沢久喜○大内刈(3:27)△ユーリ・クラコベツキ(キルギスタン)

【3位決定戦】

バルナ・ボール(ハンガリー)○GS技有・一本背負投(GS4:10)△ユーリ・クラコベツキ(キルギスタン)
クラコベツキが右組み、両組みのボールは状況に合わせて組み手をスイッチしながら試合を進める。クラコベツキがキレのある左の支釣込足でボールを崩す展開が続き、短い膠着を経た1分31秒ボールのみに「指導」。2分4秒にクラコベツの右払巻込にボールが裏投を狙う攻防があり、この際下半身に触れた咎でボールに2つ目の「指導」が宣告される。ボールは早くも後のない状況。ここからは組み手争いによる膠着が続き、3分30秒にボールが肩車を仕掛けたところでクラコベツキにも「指導」が与えられる。このまま本戦が終了し勝負はGSの延長戦へ。この時点で双方の反則累積はクラコベツキが「1」でボールが「2」。クラコベツキは「指導」1つまでなら失ってもよい状況だ。延長戦に入るとリードしている側のクラコベツキが一段加速、今日キレている足技で度々ボールを崩すがポイント獲得には至らない。1分15秒にクラコベツキがボールの左背負投に抱分を狙い、自爆する形で背中から落ちると主審はボールの「技有」を宣告。しかし、これはすぐに取り消される。ボールはそのまま寝技を展開しており足さえ抜ければ抑え込める状態だったが、ここはクラコベツキがしのぎきって「待て」。GS2分28秒、ボールが肩車を仕掛けるとクラコベツキは大きく崩れて畳に伏せ、直後にクラコベツキに2つ目の「指導」が宣告されてスコアはついにタイ。GS3分23秒、主審はクラコベツキの優位を認めてボールにやや性急な「指導」を与えるが、やはりこれはすぐに取り消されて延長戦はついに4分目に突入する。GS4分10秒、ボールが右一本背負投を放つと疲労困憊のクラコベツキは堪らず転がって「技有」。合計時間8分に及ぶ大消耗戦を制したボールが表彰台を確保した。

イェルザン・シンキエフ(カザフスタン)○技有・内股△ルカシュ・クルパレク(チェコ)
左相四つ。クルパレクが先に引き手で袖を抑え、釣り手を高く晒して対峙するも決定的な位置がなかなか掴めず。奥襟を狙い、戻しては静観することが続く。37秒双方に「取り組まない」咎による「指導」。以後も同様の形が続くが1分過ぎに奥襟を叩き合った展開でクルパレクの頭が下がり、どうやら体重が重いシンキエフが組み力に勝ることが判明。クルパレク畳に潰れ、1分11秒「極端な防御姿勢」でクルパレクに2つ目の「指導」。苦しくなったクルパレクは隅返で打開を期すがシンキエフ余裕を持って被り潰して動ぜず。1分30秒過ぎからシンキエフが引き手で袖、釣り手で奥襟を持つ一方的な組み手を作り出すと、激しく動いてクルパレクを前に引きずり出す。クルパレクたまらずいったん切り離すが、その戻り動作をシンキエフが巧みに呼び込み左内股一閃、「技有」を獲得。クルパレクは捨身技と関節技の連携に光明を見出そうとするがいずれも効かず、終盤のラッシュもシンキエフが大枠余裕を持って対処。そのまま時間となる。階級アップ2大会目のクルパレクがついに重量級の壁にぶつかったと総括される一番。

【決勝】

影浦心○優勢[技有・内股透]△原沢久喜
影浦が左、原沢が右組みのケンカ四つ。組み合うなり原沢が「ケンカ四つクロス」の右内股で影浦を崩して攻勢を演出、まず陣地の確保に掛かる。15秒、一気の決着を狙った原沢が場外際で抱きつきながら右内股を狙うと影浦はこれを股中で透かして内股透。引き手で影浦の胴を抱いていた原沢は体が伸び切ってしまい堪らず背中から畳に落下、主審は影浦の「技有」を宣告する。まさかのポイント失陥となった原沢は、しかし以後もあくまで焦らず落ち着いて試合を進行。リードを得た影浦は決定的な形を先送りすべく釣り手を突いて引き手争いを演出するが、主審は的確に攻守の主導権を判断、58秒に試合を止めて影浦のみに「取り組まない」咎による「指導」を与える。得点、失点と続き、次のポイントがどちらに入るかが試合の大きな分水嶺になる時間帯が訪れたわけであるが、ここで影浦は攻撃時のみ引き手を持ち、攻撃が終わると引き手を離す巧みな試合運びを披露。原沢は影浦のこの組み手のためになかなか引き手を得ることができない。2分15秒、影浦は二段モーションの肘抜き左背負投で原沢を逆側に落として押し込む。ポイントには至らなかったがこの攻防で影浦は組み手管理による現状維持だけでなく具体的な攻撃行動という「プラス」側のアクションを積むことに成功、誰もが脳裏に描く「大枠は力関係に勝る原沢が優位のはず」という水面下の構図に現実の楔を入れて、試合のペースを完全掌握。
引き手を持てない原沢は釣り手一本で相手の左への肩車を放つが、予期した影浦は余裕を持ってこれを耐える。さらに原沢は釣り手のみの右内股に抱きつきの右大内刈とスクランブル行動に打って出るが、いずれの技も影浦を崩すに留まり投げ切ることができない。3分30秒に影浦に2つ目の「指導」が与えられたものの、原沢の追撃もここまで。このまま試合は終了し、影浦が原沢を破って見事表彰台の頂点へとたどり着いた。

【日本代表選手勝ち上がり】

影浦心(東海大3年)
成績:優勝

[2回戦]

影浦心○優勢[技有・背負投]△レヴァニ・マティアシヴィリ(ジョージア)

左相四つ。影浦はマティアシヴィリの釣り手を徹底して防御。動き続けることで相手に的を絞らせず、焦って相手が前に出たところに得意の左背負投を仕掛ける。下がり続けていたことで1分13秒に影浦に「指導」が与えられるが、直後の1分20秒に影浦は両袖の左背負投でマティアシヴィリの巨体を転がし「技有」を獲得。ここからは完全に影浦のペース。再び左背負投で攻めると2分13秒にはマティアシヴィリにも「指導」が宣告される。これ以降も影浦は攻めの手を緩めず、最後まで担ぎまくってマティアシヴィリを翻弄。「技有」を守り切って初戦突破を決めた。

[準々決勝]

影浦心○大外刈(1:28)△バルナ・ボール(ハンガリー)

影浦が左組み、両組みのボールは影浦と相四つになる左組みの形で試合を開始する。ボールが影浦の釣り手を落として足を飛ばしながら攻めると、45秒に主審は影浦に「極端な防御姿勢」の咎で「指導」を宣告。奮起した影浦は1分28秒、組み際に引き手で襟を得ると強烈な左大外刈に飛び込む。一本背負投様に腕を抱えた所謂「一本大外」、虚を突かれたボールはそのまま背中から畳に沈んで「一本」。

[準決勝]

影浦心○背負投(GS0:12)△ルカシュ・クルパレク(チェコ)
左相四つ。密着して隅返や引込返を狙うクルパレクとそれをかわしてカウンターの抑え込みを狙う影浦という構図で試合が進行。お互いポイントがないまま試合は終盤に差し掛かり、3分3秒に左背負投で座り込んだ影浦に偽装攻撃の咎で「指導」が与えられる。このあたりからクルパレクは本戦での決着を意図してペースアップ。3分15秒には組み際の右小内刈の奇襲で影浦を大きくのけぞらせる。本来の組み手と逆に放たれた、意表をつく一撃に影浦は危うく背中から落ちかけるがここは腹ばいで回避してノーポイント。以降もクルパレクが得意の捨身技で激しく攻め立て影浦がこれをしのぐ展開が続き、結局本戦では決着がつかずに勝負はGSの延長戦へと突入。この時点で影浦のみに「指導1」が与えられており、影浦に「指導」が入ると決着がつくが、クルパレクは「指導」1つまで失っても良い状況だ。GS12秒、本戦終盤に攻めていたクルパレクが一息ついたところで影浦が強烈な左背負投に飛び込む。クルパレクは堪らず一回転して背中から畳に落ち主審は「一本」を宣告。影浦が好機を見逃さぬ勝負勘と技のキレを見せて強敵クルパレクを退けた。

[決勝]

影浦心○優勢[技有・内股透]△原沢久喜
※前述のため戦評省略

原沢久喜(日本中央競馬会)
成績:2位


[2回戦]

原沢久喜○大内刈(2:11)△ミハル・ホヤック(チェコ)

原沢が右、ホヤックが左組みのケンカ四つ。原沢は余裕を持って組み手を展開、18秒には原沢の引き手を嫌ったホヤックに早くも「指導」が与えられる。原沢が奥襟を得て圧を掛けるとホヤックは何もすることができず、1分34秒には組み合わない咎でホヤックに2つ目の「指導」。後のなくなったホヤックが原沢の組み手に応じると、原沢は右内股を起点に組み手の優位を確立、最後は右大内刈で相手を追い込み、ケンケンの末に畳に叩きつけ「一本」。原沢は盤石の内容で初戦を突破。

[準々決勝]

原沢久喜○反則[指導3](2:22)△イェルザン・シンキエフ(カザフスタン)
原沢が右、シンキエフが左組みのケンカ四つ。原沢は腕を伸ばして奥襟を確保、29秒に原沢の引き手を嫌ったシンキエフに早くも「指導」が与えられる。二本を得た原沢が腰を切りながら圧を掛けるとシンキエフは防戦一方、1分28秒にはシンキエフに極端な防御姿勢の咎で2つ目の「指導」が宣告される。以降も原沢は一方的に攻め続け、2分22秒に引き手を持たせようとしないシンキエフに3つ目の「指導」が宣告されて試合終了。原沢の貫禄勝ち。

[準決勝]

原沢久喜○大内刈(3:27)△ユーリ・クラコベツキ(キルギスタン)
右相四つ。曲者クラコベツキは格上の原沢に対していきなり奥襟を叩き、さらには組み際に右小内巻込を狙うトリッキーな組み立て。原沢は自由にやらせておいては厄介と片襟を持って固定しようと試みる。しかし、これは裏目に出て44秒に片襟の咎で原沢に「指導」が。1分15秒、クラコベツキは左構えから釣り手をクロスグリップの位置に差し入れ、腕挫手固の形に原沢の釣り手を固めて右方向への浮落を仕掛ける。腕を取られた原沢は大きく崩れて思わず相手の下半身を抱えてしまうが、主審は気づかずこれをスルー。これ以降クラコベツキは左組みにスイッチしてケンカ四つの形で試合を進める。短い膠着が続いての2分ちょうど、クラコベツキが突如として思い切りのよい右払巻込を放つ。虚を突かれた原沢は危うく飛び掛けるが、クラコベツキの引き手が離れたことでなんとかポイント失陥を回避する。以降も原沢は組み手をスイッチして戦うクラコベツキに手を焼き、なかなか自分の形を作れない時間帯が続く。寝技の攻防を経ての3分過ぎ、クラコベツキに疲れが見え始めたところで原沢が奥襟を得るチャンスが出現。原沢は引き手を確保すると同時に得意の右ケンケン大内刈に飛び込む。両手の拘束が良く利いたこの技にクラコベツキは為す術なく吹っ飛び「一本」。原沢が曲者クラコベツキのらしさを出しての善戦に苦しめられつつも、最後は「一本」で勝利して決勝へと駒を進めた。

[決勝]

原沢久喜△優勢[技有・内股透] ○影浦心
※前述のため戦評省略

■ 78kg級・梅木真美が久々の優勝、髙山莉加は3位入賞果たす
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78kg級決勝、梅木真美がマドレーヌ・マロンガから横四方固「一本」

(エントリー17名)

【入賞者】
1.UMEKI, Mami (JPN)
2.MALONGA, Madeleine (FRA)
3.APOTEKAR, Klara (SLO)
3.AKAYAMA, Rika (JPN)
5.TEVENSON, Karen (NED)
5.OWELL, Natalie (GBR)
7.TURCHYN, Anastasiya (UKR)
7.AMANGELDIYEVA, Albina (KAZ)

トップ選手の参加はなく、20代前半の選手を中心とした若手ナンバーワン決定戦とでも呼ぶべきトーナメントとなった。

この中を決勝まで勝ち上がったのは梅木真美(環太平洋大4年)とマドレーヌ・マロンガ(フランス)の2人。奇しくも2015年シーズンにワールドツアーで主役級の活躍を見せながら以降は今ひとつ突き抜けられない、という共通項のある若手同士の対決となった。

梅木は組み合うこと自体で相手を追い詰めて最終的には寝技で仕留めるという「組み力」を生かした柔道、一方のマロンガは運動量豊富にガツガツ相手を攻めるパワー柔道とそれぞれが持ち味を存分に発揮、ともに「一本」を量産しての勝ち上がり。迎えた決勝も双方が持ち味を出し合う非常に「らしい」戦いとなり、最終的にはマロンガのパワーと運動量を組み合うことで塗りつぶした梅木が横四方固「一本」で優勝を手にすることとなった。この勝利で梅木は世界選手権代表レースに踏みとどまった形。

梅木のこの日の戦いぶりは前述のとおり、良くも悪くもこれまでの梅木の長所をそのままの方向で表現したもの。

よって今回の勝利の評価はなかなか難しい。梅木のここ1年半の停滞は、技術的側面から考えれば投げて決めるべき絶対的な得意技がないという弱点の表出でもあり、この解決手段が世界選手権奪取の所以となった「組み力と寝技」の再獲得であることには一定の賛否あってしかるべきだ。梅木の成長という長期的スパンで見ると、課題を克服しないまま決してレベルが高いとは言えないトーナメントで優勝という結果が先行してしまったことは、梅木を強制的な進化へと向かわせる適者生存の原理を滞らせてしまうとういう見方も、ひとつ可能ではある。

しかし、梅木の閉塞の最大の因は本来あるべき力を養う前にまず世界選手権優勝というこれ以上ない結果を残してしまったことによる煩悶、メンタルの問題に他ならない。迷いなく自分のスタイルを貫いて優勝した今回の戦いぶりは、この最大の問題を乗り越えて、2015年アスタナ世界選手権優勝時に精神的なプリセットを戻すことに成功したと評しておくべきではないだろうか。もっとも自分らしく戦える位置に「原状復帰」を果たした大会である。これから技術、戦術でどんな上積みを見せてくれるのか、まずは4月の全日本選抜体重別のパフォーマンスに期待したい。

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3位決定戦、髙山莉加がナタリー・パウエルから横四方固「一本」

もう1人の日本代表・髙山莉加(三井住友海上)は準々決勝でマロンガに敗れてトーナメントから脱落、しかし敗者復活戦を勝ち上がってしっかりと表彰台は確保してみせた。3位決定戦ではナタリー・パウエル(イギリス)に一本勝ちするなど「Bグループ以上」の水準点はしっかり超えたと総括されるべき大会である。
ただし勝ちも負けもすべて一方的であったその試合内容は今後に一抹の不安あり。寝技の得意な髙山だが、敗れたマロンガ戦では寝勝負に持ち込む前にパワー柔道に圧倒され、持ち味を発揮出来ぬまま敗れている。階級上位の選手たちが皆一様にパワーを全面に押し出したスタイルである78kg級において、中堅選手のマロンガにパワーで圧倒されてしまったことはやはり大きな問題。梅木と同様に結果は残したものの課題が残った大会となった。

前述の3人以外で目立っていたのはこの欧州シリーズ一貫して存在感を示している新鋭クララ・アポテカル(スロベニア)。準々決勝で梅木に得意の隅返を見切られ横四方固「一本」(1:30)で敗れたものの、敗者復活戦では若手世代のライバルであるアナスタシア・ターチン(ウクライナ)を「指導3」の反則(3:45)で下して3位決定戦に進出。3位決定戦ではアビゲイル・ヨー(ハンガリー)を倒して勝ち上がってきたダークホースのカレン・スティーフェンソン(オランダ)を長身を生かした隅落「技有」で下してしっかりと表彰台を確保した。ジュニア世代の選手がグランドスラム2大会で連続5位、さらにグランプリカテゴリの最高峰であるデュッセルドルフ大会で表彰台に上ったのだからこれは大戦果である。ただし上位常連として定着するにはこれからが大事。類まれな長身、寝技、長い手足を生かした「サリハニ」といった尖った特徴を生かして結果を残してきたアポテカルだが、梅木戦の戦いぶりをみる限りそういったいわば所与の条件だけで勝ち抜き続けるのはそろそろ難しくなってきた印象。以降どのような手立てを上積みして生き残っていくのか、注目したい。

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78kg級入賞者。左からマロンガ、梅木、アポテカル、髙山。

【準々決勝]

ナタリー・パウエル(イギリス)○横四方固(2:58)△アナスタシア・ターチン(ウクライナ)
梅木真美〇横四方固(1:30)△クララ・アポテカル
カレン・スティーフェンソン(オランダ)○GS背負投(GS0:29)△アルビナ・アマンゲルディエワ(カザフスタン)
髙山莉加△大内刈(2:02)○マドレーヌ・マロンガ(フランス)

【準決勝】
梅木真美〇袈裟固(3:42)△ナタリー・パウエル(イギリス)
マドレーヌ・マロンガ(フランス)○大内刈(0:21)△カレン・スティーフェンソン(オランダ)

【3位決定戦】

クララ・アポテカル(スロベニア)〇優勢[技有・隅落]△カレン・スティーブンソン(オランダ)

右相四つ。横変形で対峙する形が定まると、アポテカルは肘をこじ上げての右大外刈、スティーブンソンは座り込みの右背負投を繰り出して攻め合う。1分26秒にスティーブンソンが右外巻込、しかし長身のアポテカルにサイズが噛み合わず自分だけが座り込む形となる。中途で相手の回転を止めたアポテカルは釣り手側に引っ張り戻し隅落「技有」獲得。以後はスティーブンソンが座り込みの右背負投で追い掛け、アポテカルが寝技で攻めるという展開。アポテカルは二度縦四方固で抑え掛かり、二度腕挫十字固を極め掛かるがいずれも絡まれた足を引き抜く技術に欠け、取り切れず。そのまま時間となる。

髙山莉加○横四方固(2:42)△ナタリー・パウエル(イギリス)

髙山が右、パウエルが左組みのケンカ四つ。パウエルが背中を抱き、髙山が脇を差す形で試合が進行する。髙山が右浮腰を仕掛けるとパウエルは抱きついて横車を狙うが、これは髙山が伏せて耐え切る。1分過ぎ、髙山が右浮腰でパウエルを伏せさせ寝技を狙うが、パウエルがしのぎ切って「待て」。この直後の1分18秒、開始線に戻ると同時にパウエルに「指導」が与えられる。これ以降髙山はこれまでの「脇差し」をあらためて前襟や脇を突く形に組み手を変更、いったん距離を取って自分の間合いで試合を展開する。この形によりパウエルに攻撃の手立てが薄くなった2分15秒、勝負どころと見た髙山が相手の腕を下から抱えながら右内股。パウエルはまたもや横車を狙うが抱え込みの拘束が甘く、これは髙山が右大内刈で潰して「技有」。髙山は腕緘を極めながら横四方固で抑え込む得意の形で「一本」に辿り着く。

【決勝】

梅木真美〇横四方固(2:25)△マドレーヌ・マロンガ(フランス)
梅木が左、マロンガ右組みのケンカ四つ。マロンガが長い右腕で背中を掴むが梅木構わず前進。マロンガそこに右出足払を合わせ、引きずり込まれた梅木は大きく崩れる。伏せようと反転するがマロンガ肘を掴んでグイと引き戻し「技有」、ここまで開始僅か8秒。勢いを得たマロンガは続いて肩越しのクロス組み手から右大内刈、梅木はこの技を回避するとクロス組み手を嫌がり相手に背を向けて場外へ歩き出る。当然これは主審に見咎められ、23秒場外の「指導」。
ここまで良いところのない梅木、しかし続く展開からは気持ちを立て直して圧力志向を徹底。奥襟を叩いてゆすり、浅く左内股を入れると相手の頭が下がって48秒「極端な防御姿勢」でマロンガに「指導」。直後組み手を誤った梅木マロンガの圧に耐えかねて外巻込で自ら畳に這うが、続く展開からは立ち直って再び圧力。力関係に自信を得たかビハインドに背を押されたか、この日初めて深く左内股に入り込む積極性も見せて1分11秒頭を下げたマロンガに2つ目の「指導」。梅木もはや圧力志向に疑問なく、奥襟を掴み、ゆすり、マロンガの上衣が完全に脱げるまでアオリを止めず。再開後、梅木はクロス組み手から左払腰で激しく攻め、手の詰まったマロンガが右外巻込に体を捨てると余裕を持って引き戻し1分55秒隅落で「技有」奪回。梅木そのまま被り、絡まれた足を引き抜いて横四方固。2分25秒「一本」で試合終了。

【日本代表選手勝ち上がり】

梅木真美(環太平洋大4年)
成績:優勝


[2回戦]

梅木真美〇横四方固(2:27)△カリエマ・アントマルキ(キューバ)
左相四つ。梅木が奥襟を叩くとアントマルキも叩き返し、組み合ったまま体をゆすり合って圧力を掛けるという展開。アントマルキが左大内刈で先制攻撃、さらに32秒には思い切った左大外刈に踏み込む。梅木返すが投げ切れず「待て」。続く展開、梅木は再び圧力がかかる形を作りだすものの、左大内刈、左大外刈ともに探りを入れるにとどまり深く踏み込めず。中盤には梅木の大内刈をアントマルキが抱いたままガクリと崩れ、梅木がそのまま被って抑え込みを狙うが足を絡まれ「待て」。梅木はさらにアントマルキの左一本背負投を潰して得意の横三角を狙うが、警戒したアントマルキの脇は開かず「待て」。梅木が得意の寝技で2度獲り切れなかったことで戦線膠着の気配が漂うが、再開直後梅木は振り回すように左払腰。技のポイントは得られれなかったがアントマルキが空中で回避した時には梅木既に横三角の準備態勢に入っており、手順上の先行に成功。そのままめくり返し、腕緘の形に相手の肘を極めながら横四方固。最後までこの形を緩めず「一本」。

[準々決勝]

梅木真美〇横四方固(1:30)△クララ・アポテカル(スロベニア)
梅木が左、階級随一の長身選手アポテカルは右組みのケンカ四つ。アポテカルは出足払に内股、ここから戻りながら「サリハニ」様に足を差し入れて梅木を牽制。手ごたえを得たアポテカルは続くシークエンスでもこの形を作って隅返に飛び込むが梅木これは織り込み済み、潰し、上から正対し、後ろについてとしつこく寝勝負を展開する。幾度目かの攻防、梅木が「秋本返し」からジックリ体重を掛けてめくり、左に降りて崩袈裟固の形を作ったところで「抑え込み」が宣告される。アポテカルの長い体を持て余すと見るや、一回敢えてリスクを冒して横四方固へと移行。この一瞬の綱渡りは見事成功、以後は頭を抱えて拘束を強め、暴れる相手をコントロールし続け「一本」。

[準決勝]

梅木真美〇袈裟固(3:42)△ナタリー・パウエル(イギリス)
左相四つ。互いに奥襟志向の組み手争い。両袖、奥襟、切り離してと形を直し続ける攻防の中パウエルが首抜きを犯し1分1秒「指導」。続く展開では梅木が首を抜いて大外刈の形で潰れ逃れる場面があったが主審はスルー。続いて梅木が引き手で脇、釣り手で奥襟を握って小内刈と大内刈を浅く入れると、1分38秒パウエルに「極端な防御姿勢」の咎で2つ目の「指導」。反則ポイントながら形上のリードを得た梅木、続く展開では引き手を抱き込んで釣り手で奥襟を掴む完璧な形を作るが、体をゆするのみで勝負に出ず、浅く技を入れる消極的行動。2分6秒にはここから中途半端に大内刈を入れて返され掛かるという危機も迎え、試合ぶりはまったくもって煮え切らず。しっかり組むが浅く技を探るのみの梅木の試合姿勢はこの後も変わらなかったが、残り時間が少なくなってパウエルの側が一方的に焦り始める。残り30秒を過ぎたところでパウエルが不十分な体勢から左大内刈、梅木これを返して「技有」。そのまま袈裟固に抑え込むとパウエルが「参った」を表明。梅木一本勝ちで決勝進出決定。
[決勝]

梅木真美〇横四方固(2:25)△マドレーヌ・マロンガ(フランス)
※前述のため戦評省略

髙山莉加(三井住友海上)
成績:3位


[2回戦]

髙山莉加○縦四方固(0:45)△アントニーナ・シェメレワ(ロシア)
右相四つ。髙山相手の腕を抱えて外巻込、これは潰れて背についたシェメレワが寝技を展開するが、髙山は横に回って来たシュメレワの拘束を抜け出し、正対するや引込返。そのまま縦四方固に抑え込んで「一本」。秒殺の圧勝で初戦を突破。

[準々決勝]

髙山莉加△大内刈(2:02)○マドレーヌ・マロンガ(フランス)
右相四つ。パワーに勝るマロンガはクロスグリップで髙山を圧倒。45秒にマロンガが右大内刈を仕掛けると高山は伏せてしまい偽装攻撃の咎で「指導」を失う。1分すぎ、マロンガのクロスグリップに対して髙山も釣り手をクロスに差し入れ左大外刈を放つ。しかし、この技もマロンガに大外返で返されてしまい不発に終わる。ポイント失陥こそ回避したものの、髙山は依然として攻めのきっかけをつかむことができない。1分30秒、マロンガが組み際にクロスグリップの右大内刈を仕掛けると髙山は裏投でこれに対抗。この状態で短い膠着が生まれ1分47秒に主審はマロンガに片襟の咎で「指導」を宣告する。ポイントで並ばれたマロンガは再びクロスグリップの右大内刈に飛び込み、一度右小内刈に変化してから改めて右大内刈で髙山の足を刈り上げる。マロンガが巻き込むようにして体を捨てると髙山は堪らず背中から叩きつけられ「一本」失陥。髙山はマロンガの力押しの前にほとんどなにもできないまま敗れた。

[敗者復活戦]

髙山莉加○横四方固(0:58)△アルビナ・アマンゲルディエワ(カザフスタン)
右相四つ。髙山はクロスグリップから右払巻込を仕掛け、潰れたところから強引に相手を回しきって寝技を展開。転がるように相手を乗り越えると足を抜いて横四方固で抑え込む。完全に肩が極まっておりアマンゲルディエワはもはや為す術なし。髙山が格下を一蹴して3位決定戦進出を決めた。

[3位決定戦]
髙山莉加○横四方固(2:42)△ナタリー・パウエル(イギリス)
※前述のため戦評省略

■ 78kg超級・イリーナ・キンゼルスカがワールドツアー初優勝、日本勢はともにこの選手の前に屈す
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78kg超級決勝、イリーナ・キンゼルスカが田知本愛から右小外刈「技有」

イリーナ・キンゼルスカ(ウクライナ)がワールドツアー初優勝、田知本愛(ALSOK)と素根輝(南筑高1年)はともにキンゼルスカに敗れてそれぞれ2位と3位だった。

キンゼルスカは大味な柔道スタイルの選手が多い最重量級選手にあっては珍しい、左右両方の組み手が出来る面白いタイプ(ベースは左組み)。今大会では左右の組み手をスイッチする器用さと、巨体を生かして巻込技を叩き込む豪快さを二つながら発揮して極めて順調にトーナメントを登攀、キャリアハイと評して差し支えない素晴らしい出来であった。

キンゼルスカは決勝で田知本に勝利すると感極まって落涙。日本勢以外のトップ選手との対戦はなかったが、田知本と6分間にわたって組み合い続けて勝利した履歴は力の証明には十分、ヨーロッパから久々現れたトップレベル選手として上位戦線に留まることになるのではないだろうか。

田知本は前述の通り決勝で合計6分間におよぶ消耗戦を演じ、右小外刈「技有」(GS2:05)で敗れて2位。準決勝までは全試合で投技によるポイントを獲得する好内容であったが、惜しくも復帰戦を優勝で飾ることができなかった。久々の実戦であったことはもちろん、敗因としては以前から指摘されていた両襟スタイルであるがゆえの決定力不足が挙げられる。ギリギリのところで相手に与える回旋が足りず腹這いで逃れられる場面が散見(準決勝では「一本」が想起される投げが「技有」に留まってしまった)され、決勝のキンゼルスカ戦では相手のサイズの大きさの前に両襟の操作だけでは空間的なギャップを作り出せず、崩しが効かなくなってしまっていた。前者に関しては崩すと同時に体ごと飛び込む機動力の高さでこれをフォローしていたわけだが、復帰戦ということもあってかこれが少々噛み合わず、両襟スタイルの弱点の方が増幅されてしまっていた印象だ。とはいえ、重大な怪我からの1年ぶりの復帰戦であることを考慮すれば今回の結果は十分に合格点。今後に向けて好意的な観測が可能な戦いぶりであった。次戦に大いに期待したい。

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3位決定戦、素根輝がホシェリ・ヌネスから左大内刈「技有」

素根は準々決勝でキンゼルスカに左払巻込からの崩袈裟固「一本」で敗れて3位。プレビュー記事で書かせて頂いた通り今大会は大型選手との対戦が大きな課題であったが、この点でいえばまさしくキンゼルスカ戦がポイント。相手の持ち味である質量を生かした巻き込み技の前にひとまず弾き返されてしまった形となった。しかし、敗者復活戦に回った素根は同じ小型選手(といっても体重では向こうが数段上だが)の代表格であるスヴィトラナ・イアロムカ(ウクライナ)と「めくり」の上手さで近頃存在感アップが顕著なホシェリ・ヌネス(ブラジル)の強豪2人を立て続けに撃破。1回戦で破ったカロリン・ヴァイス(ドイツ)もドイツの一番手に躍り出ようかという今が旬の強豪であり、現時点でも第2グループが相手であればその力が十分に通用することを証明したのではないだろうか。しっかり表彰台に登ったことで評価は間違いなくプラス。高校生ということでスケジュール調整の難しさはあるだろうが、体が大きくない素根が国際戦線における立ち位置を把握すること、なにより「自分の戦い方」を発見するために継続的な派遣に期待したい。

今大会で田知本が優勝を逃したことで、世界選手権代表レースにおいてはグランドスラム2大会を連続で制した朝比奈沙羅が独走状態。現状では山部佳苗と田知本が朝比奈を差し置いて1枠目を獲得するとは考えにくく、かつ他階級の状況(今大会においてそれぞれGS東京時には2番手であった48kg級の渡名喜風南と52kg級の阿部詩の若手2人が圧倒的内容で優勝している)に鑑みても、この階級で2枠目が行使される可能性は決して高いとは言えないはずだ。今大会終了時点で山部と田知本の2人の世界選手権出場はかなり厳しいものになったのではないだろうか。選抜体重別はホープ朝比奈のパフォーマンスとともに、ベテラン2人の奮起にも注目したい。

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78kg超級入賞者。左から田知本、キンゼルスカ、セリッチ、素根。

【準々決勝】

田知本愛○優勢[技有・内股]△ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)
ホシェリ・ヌネス(ブラジル)○優勢[技有・足車]△ヤスミン・クルブス(ドイツ)
イリーナ・キンゼルスカ(ウクライナ)△崩袈裟固(3:07)○素根輝
クリスティン・ブッソウ(ドイツ)○縦四方固(3:34)△スヴィトラナ・イアロムカ(ウクライナ)

【準決勝】
田知本愛○優勢[技有・内股]△ホシェリ・ヌネス(ブラジル
イリーナ・キンゼルスカ(ウクライナ)○崩袈裟固(3:46)△クリスティン・ブッソウ(ドイツ)

【3位決定戦】

ラリッサ・セリッチ(スイス)〇反則[指導3](3:20)△クリスティン・ブッソー(ドイツ)
セリッチが左、ブッソーが右組みのケンカ四つ。セリッチは状況に応じて頻繁に左右の組み手を変えるリアクション柔道で腰定まらず。ブッソーが両襟をガッチリ掴むと左構えに戻してひたすら耐え、51秒双方に消極の「指導」。セリッチが両袖で抑えて前に出るとブッソー嫌うが、仕掛けたはずのセリッチの方もしっかりこの形から技を出すわけではなく左へ、右へと外巻込で掛け潰れるのみ。しかし主審試合に差をつけないわけにはいかなくなり、強いて試合を動かすならという体で2分12秒ブッソーに「指導2」。以後もセリッチが形を変えては膠着に持ち込み、主審は残り40秒で試合を止めて双方に消極の「指導」。結果反則累積「2」対「3」でブッソーの勝利が決まった。片手を観客席に揚げるセリッチの動作が空しい大凡戦、せめて主審が早い判断で試合を終わらせたのが救いという一番。

素根輝○横四方固(3:52)△ホシェリ・ヌネス(ブラジル)
左相四つ。ヌネスは密着を志向するが、素根はインサイドワーク巧みにこれをさばく。1分過ぎ、素根が低い右袖釣込腰を放つとヌネスは得意の隅落でめくり返して「技有」を獲得する。そのまま腕挫十字固を狙うが、ここは素根が耐えきって「待て」。リードを得たヌネスは腕を突いて距離を取り、守りの態勢。2分2秒、素根は片襟の左背負投に飛び込むと一度耐えたヌネスを股中で担ぎ直して「技有」奪回。さらに2分40秒には左背負投フェイントの片襟の左大内刈で2つ目の「技有」を得て勝ち越しに成功する。しかしここから素根はヌネスに奥襟に屈する形で守勢に回ってしまい、3分7秒には素根に極端な防御姿勢の咎で「指導」。少々雲行き怪しい展開だが、直後の3分22秒、素根は作用足を引っ掛けて引きずるような左大内刈で3つ目の「技有」を獲得。相手の腕を掬って横四方固で抑え込むと、ヌネスはもはやもがくこともできず為す術なし。素根が一本勝ちで見事表彰台を確保。

【決勝】

イリーナ・キンゼルスカ(ウクライナ)〇GS技有・小外刈(GS2:05)△田知本愛
左相四つ。田知本は両襟を掴んで左払腰で先制攻撃、やる気十分。頭を下げられたキンゼルスカは上衣が頭部に引っかかってしまい「待て」。再開後、キンゼルスカはいったん右に構えてから左釣り手を田知本の奥襟に叩き込み、今度は田知本の上衣が頭に引っかかり「待て」。ともに上衣が脱げた「絵」に序盤の展開は端的、両者一歩も譲らず。以後田知本は一貫して両襟を同時に掴み払腰と体落で攻めて主導権を握るが、キンゼルスカのサイズを攻略出来ず試合は膠着気味。残り49秒に右体落でキンゼルスカを場外にはじき出した直後に「指導」1つを得たものの、本戦のポイントはこれのみで試合はGS延長戦へ突入する。延長も形上は様相変わらずも、キンゼルスカのサイズの前にもう失敗出来ないサドンデスを戦う田知本はやや精神的に圧が掛かり始めた感あり。キンゼルスカと両襟の突き合いになったGS42秒、田知本に防御した咎で「指導」。田知本は払腰と体落を交互に繰り出して積極点に攻めるが、両襟組み手の限界かサイズのあるキンゼルスカに高低差を作り出せずどうしても崩し切れない。GS2分5秒、田知本ひときわ大きく「ハンドル操作」を利かせて左体落、しかしここから戻ろうとしたところにキンゼルスカが右小外刈を合わせるとガクリと崩落、背中から畳に落ちて「技有」。勝利が決まったキンゼルスカはその場に寝転がり、顔を覆って感涙。田知本は復帰戦を飾ることが出来なかった。

【日本代表選手勝ち上がり】

田知本愛(ALSOK)
成績:2位


[1回戦]

田知本愛○出足払(0:55)△マクシム・ブラウズヴェター(ドイツ)

田知本が左、ブラウズヴェターが右組みのケンカ四つ。田知本は両襟を握って試合をスタート、まず挨拶代わりの左内股でブラウズヴェターを畳に伏せさせる。続く展開、田知本は釣り手と引き手を得る完璧な組み手をつくると力強い左出足払一閃、ブラウズヴェッターは勢い良く背中から畳に落ちて「一本」。田知本、ブランクを全く感じさせない完璧な立ち上がり。

[準々決勝]

田知本愛○優勢[技有・内股]△ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)
左相四つ。田知本は両襟、セリッチは右構えに構えてそれぞれ組み手をスタート。まずは田知本が左内股でセリッチを畳に伏せさせる。ここからセリッチの左払巻込で終わる展開が続き、1分34秒に主審は田知本に「指導」を宣告。しかし、勝負どころを弁えている田知本は直後の1分40秒に両襟の左内股ですぐさま「技有」を得る。以降はセリッチが左払巻込を仕掛け、田知本がこれを立ったまま余裕で受け止めるという構図が続き、ポイントの変動がないまま試合終了。田知本が「技有」優勢で勝利し、準決勝進出を決めた。

[準決勝]

田知本愛○優勢[内股]△ホシェリ・ヌネス(ブラジル)
左相四つ。この試合も田知本は両襟で組み手を開始。ヌネスが奥襟を持って密着を狙うと田知本は引き手で脇を突いてこれをしのぐ。この形が続いたことで1分17秒、田知本に極端な防御姿勢による「指導」。直後、田知本は左大外刈でクロスグリップの形をつくると強引な左払巻込に飛び込む。待ち構えていたヌネスに得意の隅落で返されかけるが、田知本は腹ばいで落ちてなんとか回避。1分37秒、直前の攻防で田知本の下半身に触れたとしてヌネスに「指導」が与えられる。1分50秒、田知本は左払腰を仕掛けてまず釣り手の位置を上げると本命の左内股で追い込んで「技有」を獲得。これはすぐに取り消されてしまったが、どうやらエンジンがかかってきた模様。続く展開、田知本は組み際に抱きつきの左大内刈に飛び込み、ケンケンをしながら左内股に連絡。この技でヌネスを大きく跳ね上げて決定的な「技有」を獲得する。ここから田知本はヌネスの追撃を足技を出していなしながらクロージング。「技有」優勢で勝利して決勝進出決定。

[決勝]

田知本愛△GS技有・小外刈(GS2:05) 〇イリーナ・キンゼルスカ(ウクライナ)
※前述のため戦評省略

素根輝(南筑高1年)
成績:3位


[1回戦]

素根輝○優勢[技有・大内刈]△カロリン・ヴァイス(ドイツ)
左相四つ。技一発の威力があるヴァイスに対して、素根はインサイドワーク巧みに釣り手を落として組み手を展開。ヴァイスが強引な左払巻込を仕掛けると的確に左大内刈や左背負投を打ち込んで試合の流れを渡さない。1分25秒、袖の絞り合いを続ける両者に「指導」が宣告される。ここから素根は詰将棋のように組み手を管理しながら前進、2分13秒には手立てがなくなったヴァイスが左払巻込で掛け潰れて2つ目の「指導」が追加される。2分50秒、素根が組み際に片襟の左大内刈、決定的な「技有」を獲得する。奮起したヴァイスがペースを上げて攻勢に出ると素根は守勢に回ってしまい、3分40秒には素根にも2つ目の「指導」。しかし、ヴァイスの追い上げもここまで。「技有」の優勢で素根が初戦を突破した。

[準々決勝]

素根輝△崩袈裟固(3:07)○イリーナ・キンゼルスカ(ウクライナ)
左相四つ。素根は釣り手を突いて距離を取り、キンゼルスカは右構えで引き手を確保しつつ、釣り手で素根の奥襟を狙う。1分20秒に素根が左背負投を仕掛けるとキンゼルスカは崩れるがポイント獲得の予感はなし。直後にキンゼルスカが両手で引き手側の袖を持って左大外刈、巻き込まれた素根はたまらず転がってしまいあわやポイントという危ない場面が現出する。素根はすかさず左背負投でやり返すがキンゼルスカは立ったまま受けきって動ぜず。キンゼルスカは続いて放たれた肘抜きの左背負投もあっさり潰し、技が通じない素根は苦しい状況。2分40秒、キンゼルスカが素根の引き手を切ると返す刀で強烈な左払巻込。完全に肩を固められた素根は堪らず転がってしまいこれは「技有」。キンゼルスカはそのまま崩袈裟固で抑え込み3分7秒「一本」で試合終了。大型選手の壁に弾き返された素根は敗者復活戦へ。

[敗者復活戦]

素根輝○体落(0:53)△スヴィトラナ・イアロムカ(ウクライナ)
素根が左、イアロムカが右のケンカ四つ。素根は強引に仕掛けた左背負投を返され掛けるが腹ばいで回避。続く展開、素根は釣り手をアロムカの首横まで移動させると左体落に飛び込む。上体の崩しがよく効いたこの技にイアロムカは堪らずゴロリと転がり落ちて「一本」。大型の典型であるキンゼルスカに屈した素根、「小型」のトップ選手の代表格であるイアロムカをキッチリ倒して3位決定戦進出決定。

[3位決定戦]

素根輝○横四方固(3:52)△ホシェリ・ヌネス(ブラジル)
※前述のため戦評省略


本文・戦評:林さとる/古田英毅

※写真は権利者の許諾を得て掲載しています

※ eJudoメルマガ版3月4日掲載記事より転載・編集しています。

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